著者
桝井 文人 宮越 勝美 伊藤 毅志 山本 雅人 松原 仁 柳 等 竹川 佳成 河村 隆
出版者
北見工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01 (Released:2015-04-16)

今年度は,戦術要素の収集と解析および戦術推論手法の開発,デリバリーロボットおよびスウィーピング動作測定技術の精緻化に取り組んだ.以下,各項目別に報告する.(1)戦術要素の収集と解析においては,新たに日本選手権,ユニバーシアード選手権での開催試合情報を追加して分析を行い,チームショット率と得点の関係,ポジション別ショット率と得点の関係についての知見を得た.(2)人間判断要素の収集と解析においては,試合中に発生し得るストーン配置画像を提示し,状況に対する選択ショットとその思考過程を調査する認知心理学実験を実施した.また,戦略書に基づきデジタルカーリングAIにおける序盤定石の構築を行った.(3)ストーン挙動要素の収集においては,昨年度に開発した移動型ストーンロボットを用いて赤外線画像処理に基づくストーン動作解析手法の有用性を検証する評価実験を実施した.その結果,複数のカメラを用いることで一定範囲内の誤差で移動するストーンの位置測定が可能であることがわかった.氷上実験については,キャリブレーション用シートを氷上に設置する際に氷上に影響を与え得るという課題が顕在化したため実験は見送った.(4)戦術推論手法の開発では,ストーンの配置状態を離散化した座標で表現し,あるショットによって生成される結果に関する評価値の期待値によりショット選択を行う人工知能アルゴリズムを提案し,デジタルカーリング上で実現した.(5)デリバリーロボットの開発では,ロボットについては,カーリングストーンの滑走時の荷重分布測定を行った.(6)スウィーピング計測装置の開発では,スウィーピング計測については,カーリング場での実証実験結果に基づき測定性能の精緻化を進めた.
著者
小谷 明 荒起 清 荒木 清
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000 (Released:2000-04-01)

フィチン酸金属錯体の構造-特性の基本的性質を明らかにし,これまでに全く未解明なフィチン酸金属錯体の持つ特性が生体系でどのように利用されているかを解明した。1.フィチン酸と金属イオンとの相互作用これまでに得た金属錯体の存在種,その安定度定数,さらにその配位構造を説明できる統一的見解を得た。すなわち,生理的条件下では,リン酸間距離の大きなリン酸部位に金属が配位し,残る未配位のリン酸はプロトンがついてリン酸間水素結合により錯体全体が安定化する。2.フィチン酸加水分解酵素フィターゼ酵素活性の金属イオン依存性生理活性発現の源である受容体結合のモデルとして,近年解明されたフィチン酸加水分解酵素フィターゼを用い,各種金属イオン共存下でフィチン酸の加水分解反応速度を調べ,基質認識,反応活性について各種金属イオンの及ぼす役割について統一的見解を見出すことができた。結果的には金属錯体を基質とする酵素反応であることが明らかになり,金属酵素以外の金属基質という新しい世界を切り開くことができた。3.フィチン酸-金属錯体の生理活性フィチン酸ナトリウムを用いた研究から報告されている抗ガン活性について,各種金属錯体について抗ガン活性を調べ,生体内で金属錯体として生理活性が発現されていることを明らかにし,これまでに報告されているフィチン酸ナトリウムの抗ガン活性がカルシウム錯体の可能性が高いことを示した。安定度定数を用いたシミュレーションから生理活性種がCa2(フィチン酸)H3と示唆された。生理活性機構として,細胞内液の銅濃度ESR測定から,フィチン酸金属錯体の膜通過の容易性が示された。本研究で得られたフィチン酸金属錯体の知見は,フィチン酸の医薬品への応用のみならず,環境に無害な特性を有するフィターゼの農業,工業的応用など各種応用への基礎的知見を提供することがと期待される。
著者
小池 健一 上松 一永 上條 岳彦 蓑手 悟一
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002 (Released:2002-04-01)

小児がんの発症率、原発部位、病理組織像、転移などの臨床所見に関する調査を行い、チェルノブイリ原発事故後に発症した小児がんの生物学的特性を明らかにするため、本研究を行った。1989年から2004年までに238名の小児の骨腫瘍患者が発生した。男児113名、女児125名(男女比1:1.1)であった。年代別発生数をみると、甲状腺がんのような明らかな増加傾向はみられなかった。ベラルーシ共和国の中で、ゴメリ州、モギリョフ州、ブレスト州を汚染州、ミンスク州、グロズヌイ州、ビテフスク州を非汚染州とし、骨腫瘍の臨床所見を比較した。汚染州における男女比は1:1.1で、非汚染州は1:1.57であり、有意差はみられなかった。次に発症年齢を比較した。9歳以下の小児の比率は汚染州では、102例中34例(33.3%)であったのに対して、非汚染州では、136例中29例(21.3%)であり、汚染州において有意に年少児の割合が高かった(p=0.0377)。骨腫瘍の種類は、両群とも骨肉腫とユーイング肉腫が80%以上を占めた。TNM分類で腫瘍の進展度を比較した。両群ともほとんどの例は隣接臓器に浸潤していた。遠隔転移のみられた例は、汚染州では22.5%で、非汚染州では26.5%と同等であった。11例の骨腫瘍内の^<90>Srを液体シンチレーションカウンターを用いて測定したところ、陰性コントロールに比べ、5例が高値を示した。以前の調査で、ゴメリ州立病院に入院した小児の急性リンパ性白血病患児の臨床的特徴として、ビテフスク州立病院に入院した対照患者に比べ、2歳以下の幼若児の比率が高いこと、LDHが500IU/L以上を示す患者の頻度が高いことが明らかとなった。小児期、特に2歳くらいまでの白血病発症は胎児期に始まることが報告されていること、ゴメリ州での放射能被曝は胎児期から始まる低線量の長期間にわたる体内被曝様式をとっていることから、幼若発症例が多い要因として、出生前からの母体内被曝が重要な因子となっている可能性が考えられた。今回の骨腫瘍の調査結果でも白血病と同様な傾向を示したことは注目に値する。現在、がん抑制遺伝子などの遺伝子解析を行っている。
著者
大場 裕一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-11-18 (Released:2013-05-15)

ホタルルシフェリンが、1分子のハイドロキノン(またはベンゾキノン)と2分子のL-システインから生合成されること実験により初めて明らかにした。また、毒性のあるハイドロキノンはそのままの形ではホタル体内には存在せず、そのかわりグルコースが付加したアルブチンの存在が認められた。このことはホタルが体内でハイドロキノンとシステインからルシフェリンを生合成していることを示している。
著者
護山 真也 小野 基 稲見 正浩 師 茂樹
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01 (Released:2015-04-16)

インド仏教論理学研究と東アジア仏教論理学(因明学)の最新の成果を統合しながら,仏教論理学研究の新しい方法論の構築を目指す本研究では,昨年度に続き,合同研究会を中心として,以下の実績を達成した。1. 8月29-30日に信州大学で開催された第3回因明科研研究会には,中国・台湾における因明学研究の第一人者である林鎮圀(Lin Chen-kuo,国立政治大学),湯銘鈞(Tang Mingjun,復旦大学)の両名を招待し,『如実論』英訳研究,『正理門論』漢文校訂研究の最新の成果が示された。また,室屋安孝氏から『正理門論』の日本古写経に関する研究報告を受けた。また,小野・師(分担研究者)が中心となり,『集量論注』他からの『正理門論』「過類」段の梵語原典の復元作業と翻訳研究,沙門宗の注釈に基づく解読研究を実施し,「無異相似」までの検討を終えた。2. 3月23日に稲見(分担研究者)の運営により,東京学芸大学で開催された第4回因明科研研究会では,ウィーン大学にて室屋安孝・渡辺俊和両氏と研究打ち合わせを行った小野が中心となり,『正理門論』「過類」段の科段についての新解釈が提示された。また,師から沙門宗の注釈文献から回収される定賓の科段についての報告がなされ,合わせて,「可得相似」まで解読研究が進められた。この研究会には,程氏をはじめ複数の中国人研究者の参加があり,研究会の活性化が進んだ。3. 上記とは別に,各研究者は個別に因明学関連の研究を進め,その成果を日本印度学仏教学会(9月3-4日,東京大学)・国際シンポジウム(12月10-11日,復旦大学)などで発表した。4. 護山は,『因明入正理論疏』における四相違の箇所に関する解読研究の成果を論文として公刊した。また,稲見は,仏教論理学における論証式の形式の歴史的変遷について,インド・中国・日本の文献を解読しながら,再検討した。
著者
加藤 良平 近藤 哲夫 中澤 匡男 大石 直輝
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01 (Released:2013-05-21)

20歳以下の若年甲状腺乳頭癌 (P-PTC) 81例と21歳以上の成人甲状腺乳頭癌 (A-PTC) 83例について、臨床病理学的に比較検討するとともに、BRAFV600E突然変異とTERT promoter突然変異を解析した。その結果、P-PTCはA-PTCよりも、腫瘍径が大きく、リンパ節転移率が高いことがわかった。一方、BRAFV600E突然変異率は、P-PTCは37%で、A-PTCの82%よりも低く、TERT promoter突然変異はA-PTCでは13%が陽性を示したが、P-PTCでは全例陰性となった。以上より、若年甲状腺癌はその臨床像とともに遺伝子背景も成人とは異なることが示唆された。
著者
岡田 克彦 羽室 行信 加藤 直樹
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01 (Released:2013-05-21)

本研究では、ニュースデータ、ブログデータ、SNSなどのソーシャルデータを大規模に収集し、それらがどの銘柄について語っているものなのかを自然言語処理の諸技術を用いてデータベース化した。この結果、全上場企業約3600社それぞれについて、ニュースおよびソーシャルメディアの情報を紐付けていることになる。次に、市場に流れるコメントやニュースについて、ポジティブな文脈で語られているのか、あるいはネガティブなのかについて、評価表現辞書を作成することでスコアリングした。こうして作成した指標をセンチメント指数として時系列で捉え、金融市場における様々なアノマリー現象と、センチメント指数との関連性を明らかにした。
著者
清田 勝 井上 伸一 山田 雅彦
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002 (Released:2002-04-01)

本研究では子供達が自動車とすれ違ったり追い越されたりするときに、どの程度危険を感じるかを行動学的および生理学的に評価する手法の開発を試みた。その結果、自動車とすれ違う歩行者の危険回避行動調査と心拍実験から、30km/hの制限速度は歩行者にとって安全ではなく、20km/h程度に抑制する必要があることが明らかになった。この結果を踏まえて、通過交通の削減と走行速度の抑制を目的とした二つの安全対策を検討した。一つは対象地区(佐賀市日新・新栄地区)のほとんどの道路に20km/h速度規制を掛けるとともに、速度抑制デバイスの一種である高さ8cmのハンプを設置する対策である。二つ目は、対象地区への4箇所の流入部に通学時間帯(7:00-8:30)に限って指定方向外進行禁止(進入規制)を掛ける対策である。前者は主に車の走行速度を低減させるための対策であり、後者は通過交通を排除するための対策である。これらの安全対策がどの程度対象地区の交通環境の改善に有効であるかを検証するために社会実験を実施した。その結果、高さ8cmのハンプは車の走行速度を6.5〜20km/h減速させる効果があることが分った。特に、高速の車を排除するのに有効である。しかしながら、通過交通の排除にはほとんど機能しなかった。また、指定方向外進行禁止が掛かった流入部では流入交通量が激減し、対象道路の交通環境は改善されたが、他の道路では迂回した自動車の増加によってかえって環境が悪化する事態を招いた。指定方向外進行禁止は部分的には通過交通の進入を抑えることが可能であるが、経路を変更して進入して来る車を防止することはできないことが明らかになった。児童はもちろんのこと、地区住民や保護者もハンプの継続を強く要望していたにもかかわらず、騒音や振動の被害に悩まされている沿道住民の強い反対で22基のハンプのうち14基が撤去された。騒音や振動の問題を解決しない限り、本格実施に結びつけるのは難しい。騒音・振動が発生しにくいハンプの開発や狭さくなどの他の速度抑制デバイスとの組み合わせを検討する必要がある。
著者
安冨 歩 若林 正丈 金 早雪 松重 充浩 深尾 葉子 長崎 暢子 長崎 暢子 福井 康太 若林 正丈 金 早雪 鄭 雅英 三谷 博 北田 暁大 深尾 葉子 久末 亮一 本條 晴一郎 與那覇 潤 千葉 泉
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007 (Released:2007-04-01)

「魂」という学問で取り扱うことを忌避されてきた概念に、正当な地位を与えることができた。それは人間の創発を支える暗黙の次元に属する身体の作動であり、本来的に解明しえぬ(する必要のない) ものである。学問はそれを喜びをもって受け入れ、尊重し、その作動を抑圧するものを解明し、除去する役割を果たせばよい。そのような学問は、抽象的空間で展開する論理や実証ではなく、「私」自身を含む具体的な歴史的時空のなかで展開される合理的思考である。このような生きるための思考を通じた「私」の成長のみが、学問的客観性を保証する。この観点に立つことで我々は、日本とその周辺諸国におけるポスト・コロニアル状況の打破のためには、人々の魂の叫び声に耳を傾け、それを苦しませている「悪魔」を如何に打破するか、という方向で考えるべきであることを理解した。謝罪も反論も、魂に響くものでなければ、意味がなく、逆に魂に響くものであれば、戦争と直接の関係がなくても構わない。たとえば四川大地震において日本の救助隊が「老百姓」の母子の遺体に捧げた黙祷や、「なでしこジャパン」がブーイングを繰り返す観衆に対して掲げた「ARIGATO 謝謝 CHINA」という横断幕などが、その例である。我々の協力者の大野のり子氏は、山西省の三光作戦の村に三年にわたって住み込み、老人のお葬式用の写真を撮ってあげる代わりに、当時の話の聞き取りをさせてもらうという活動を行い、それをまとめて『記憶にであう--中国黄土高原 紅棗(なつめ) がみのる村から』(未来社) という書物を出版したが、このような研究こそが、真に意味のある歴史学であるということになる。
著者
関沢 まゆみ 新谷 尚紀 関沢 まゆみ 新谷 尚紀 トーマス Pギル
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009 (Released:2009-04-01)

フランスではA. V.ジェネップの『フランス民俗学』(1949)に記述のある「五月の木」や「五月の女王」等の伝統行事の現在の伝承実態を追跡する調査を継続し、伝承が途絶えた例と維持されている例とが確認された。伝承維持の事例がプロヴァンス地方をはじめ計4カ所で確認され、その存否の背景に一定のリーダー的人物の関与が考察された。また伝承維持の力学の中に民俗信仰と聖人信仰との習合が認められた。一方、イギリス南西部においては現在も盛んに五月の木馬祭が行われており、観光化の促進という聖俗混淆の動態が英仏間で対比的にとらえられた。
著者
樋口 雄彦 宮地 正人 熊澤 恵里子 遠藤 潤 樋口 雄彦
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003 (Released:2003-04-01)

1.平田篤胤関係資料の整理・目録作成これまで総合的な調査がなされたことがない平田篤胤関係資料(東京都渋谷区代々木・平田神社に伝来し、本研究期間中に一部を除き国立歴史民俗博物館に譲渡された)について、すべてを調査・整理し、目録を完成させた。2.重要史料の翻刻・刊行平田篤胤関係資料のうち、今後の研究において基礎的史料として位置づけられる日記(文化13年〜明治4年)や明治初年の両親宛延胤書簡などについて翻刻作業を行い、それを『国立歴史民俗博物館研究報告』第122集、第128集に掲載した。また、日記に次ぐ重要度を持つ金銭出納簿についても翻刻・刊行準備を進めた。3.国立歴史民俗博物館での資料公開国立歴史民俗博物館では、特別企画「明治維新と平田国学」(平成16年)やフォーラムを開催し、展示・図録・講演会といった形で一般への普及・啓蒙をはかるとともに、同館所蔵に帰した資料のマイクロ撮影を進め、研究者に対する閲覧利用に供することとした。4.周辺資料の調査長野県・岐阜県・秋田県・千葉県など、主要な平田門人が存在した地域を調査し、門人側に残された関係資料の所在情報について収集を行った。また、国立歴史民俗博物館に寄託された幕臣出身の国学者・神道家秋山光條関係資料の調査・整理も実施した。
著者
河合 靖 佐野 愛子 小林 由子 飯田 真紀 横山 吉樹 河合 剛 山田 智久 杉江 聡子 三ツ木 真実
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01 (Released:2015-04-16)

本研究は、東アジア圏の国際的な人口流動性が高まり、欧州のような複言語主義的多層言語環境が出現するという予想のもとに、多言語社会香港の言語教育政策、日本人子女教育、第二言語教育、使用言語の言語学的考察、香港と日本の学生による言語交換などを通して、日本が多層言語環境化する際の課題に示唆を得ることを目的としている。香港の言語教育政策は、学校群に分けて英語、広東語を教育言語としてどの割合で用いるか差をつけてきている(バンドシステム)が、その変遷の実態については不明な点が多い。今回、各年齢層の香港在住者にインタビューを実施することで、これまで報告資料による伝え聞きであった状況を徐々に脱却できる可能性が見えてきた。また、日本人コミュニティへの聞き取り等をもとに、香港では教育の選択肢が豊富で、また、香港の人々が複数言語能力を身に付けることに貪欲な様子が見えてきた。あわせて、香港の日本語学習者が日本のポップカルチャーに対する興味を学習の強い動機づけにしていることや、日本語と広東語の終助詞に相似的特徴が見られるなど、日本と香港をつなぐ興味深い事実を考察できた。さらに、香港と日本の大学生が言語交換学習を行うことで、第二言語不安の解消や積極的な言語活動への参加が促進される可能性が示唆された。この2年間に、英国のEU離脱、米国・仏国大統領選などで、言語・文化の多様化に対する反動的な動きが世界的に顕在化してきているとされる。科学技術の発達にともない、人口移動と異文化・異言語の交流が加速度的に進む時代である。人類がアフリカ大陸から拡散する過程で、異なる言語集団と交流する必要性が生まれたはずである。多層言語環境は、太古の人類が直面した進化上の問題であって、そこには種としての人類の発展や人間社会理解の鍵が含まれていると思われる。この研究が、そうした視点で言語と人類の関係をとらえる発端になることを願う。
著者
橋本 伸也 野村 真理 小森 宏美 吉岡 潤 福田 宏 姉川 雄大 梶 さやか
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01 (Released:2013-05-21)

東中欧諸国・ロシアで深刻の度を増している第二次世界大戦と社会主義時代の歴史と記憶をめぐる政治化と紛争化について、現地調査や国際研究集会の開催などを通じて、実相解明を進めた。6回の国内研究会の開催、個別研究論文の執筆に加えて、2014年度にはエストニアのタリン大学で夏季ワークショップを開催して成果をproceedingsとして公開するとともに、2015年には関西学院大学で国際会議を開催して、東アジアの歴史認識紛争との対比により問題構造の多元的把握に努めた。研究代表者の単著(既刊)や雑誌特集号に加えて、2017年中に国際的な論集と研究分担者らの執筆した共著書2点の刊行が決まっている。
著者
池内 恵 御厨 貴 牧原 出 宮城 大蔵 鈴木 均 小宮 京
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01 (Released:2014-04-04)

本研究課題では、国家間の公式の制度の枠内で行われる交渉だけでなく、民間を含めた人的つながりに多くを依存する国際的な非公式の協議ネットワークを通じて行われるアジェンダ・セッティングや利益・不利益配分に特に注目してきた。特に資源エネルギーと通貨の問題を対象に、日本の経済外交において、国際的な非公式の協議ネットワークにいかなる形で参加してきたのか、中東や東南アジアの地域研究と、日本政治史のオーラル・ヒストリーの手法を共に用いて解明を進めてきた。地域研究者と日本政治史・行政学研究者が協力し、非公式協議をめぐる国際行政学の開拓につなげることが研究の目的である。非公式の協議ネットワークの実質的な重要性は、一部のジャーナリズムの報道で漠然と知られておりながら、秘匿性の高い対象の性質上から資料の制約が多々あり、学術的に体系的な形で取り組まれたことはほとんどなかった。そのため、本研究課題の推進に際しては、オーラル・ヒストリーの採取や、過去の秘蔵資料・音声テープ・私的メモなどの発掘に傾注してきた。それらの新資料を報告書として印刷し、適切な大学・研究所図書館等に順次所蔵して、今後の研究の基礎資料を構築することが、現在までに本研究課題の遂行を通じて行ってきた主な成果である。第3年次は「日本経済外交史プロジェクト オーラル資料編別冊」として、『尾崎三雄日記‐アフガニスタン編‐』(アジア経済研究所)を刊行し、本プロジェクトでの通算の資料集刊行は4冊目となった。
著者
松木 邦裕 大山 泰宏 立木 康介
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01 (Released:2011-04-06)

日本の精神力動的心理療法のトレーニングの質を高めるための具体的な方策を検討すべく,米国,ドイツ,イギリス,フランスの力動的心理療法家養成のシステムおよびその実態に関して,養成に関わる人物の招聘やシンポジウム,および研究者による現地の訪問での参与観察や資料の収集を行ない,日本におけるトレーニングの問題点を明らかにした。とりわけ日本では,スーパービジョンや実地研修の不足,事例を見立てる上での構造の不在が指摘された。そして,日本の文化的文脈等を自覚化しつつ,その改善の方向を具体的に討議し,より適切な訓練のモデルを構想した。また,見立て,臨床像記述の方法論等を検討し,実際の訓練に適用した。
著者
仙石 愼太郎 AVILA Alfonso 末松 千尋
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01 (Released:2014-04-04)

本研究課題は、学際・融合を盛り込んだ大型公的助成プログラム事例の観測に基づく実証研究を旨とし、日本及び欧州において国際的に実施する。学際・融合の業績サイドの科学計量学的評価アプローチとしては、引用-被引用関係に加え、共著関係や閲覧回数等のより即時性の高い指標の導入を試みた。学際・融合の広がりに関しては、所与の分野分類に基づく従前の規範的手法に加え、共引用構造分析や書誌結合分析による事実記述的な手法論、また、人材育成・教育成果等の非文献計量指標も考慮に入れた。学際・融合の活動サイドの経営組織論的評価アプローチとしては、コミュニケーション・インタラクション等を含むトランザクションに着目した測定手法1を援用した。即ち、学際・融合の研究開発の推進プロセスや鍵となる活動単位を特定し、観測軸・指標を設定し実測し活動実態を整理して把握する。更に、観測結果を分野・機関・中心的研究者・研究プロジェクト間で比較・検証することで、学際・融合研究開発の影響要因や行動類型を描出した。平成26年度の研究実績としては、学際・融合研究開発の業績・活動の観測手法を確立した。詳細は下記の通りである。1.業績評価の視点として、中心研究者等の主体(actor)、論文発表・特許出願等の成果(outcome)、人材育成・教育等の成果(people)を規定し、測定指標として整理した。2.活動評価の視点として、中心研究者等の主体(actor)、研究資金・設備、マテリアル等の投入資源(resource)、交流機会(opportunity)を規定し、測定指標として整理した。3.上記フレームワーク・指標に基づきパイロット観測を実施し、観測・測定面の実効性を検証する。必要に応じ、対照の観測事例を設置した。
著者
下河辺 美知子 巽 孝之 舌津 智之 日比野 啓
出版者
成蹊大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01 (Released:2010-08-23)

本研究はモンロー・ドクトリンの文化的・政治的意味を検証してきた。モンロー大統領の言葉は歴史を通して行為遂行的効果を発揮し、西半球・東半球という概念を喚起した。この洞察は19世紀アメリカの政治的無意識への理解を深め、20世紀ポストコロニアル研究へ有効な視座を与え、球体として地球を見直す新たな視点につながり21世紀の世界情勢分析のための有効な概念であることが証明された。研究成果は、国内海外の学会発表(61件)、論文(41件)著書(31件)として発表されており、2014年3月にはシンポジウムを行った。テロと核を抱える21世紀世界における惑星的共存への提言として成果物出版計画が現在進行中である。
著者
澤田 誠 小野 健治 今井 文博
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004 (Released:2004-04-01)

ミクログリアが血液脳関門を崩壊させること無く脳に浸潤できることを見いだし、この性質を模倣することができるペプチド分子を単離することに成功した。この分子と薬物、タンパク、遺伝子、人工担体などを結合して脳を標的化した薬物送達を目指した開発を行った。まず培養血液脳関門モデルを構築して対象とする化合物やタンパク質などが脳移行するかどうかをin vitroで判定することができるようになった。次にリコンビナントタンパクを脳移行型に改変するベクターを作成し、アザミグリーンを発現させて脳移行性が付与されたことを証明した。また、化学修飾により酵素や化学物質に標的化ペプチドを結合させ脳移行型に改変するシステムを検討し、高分子量の酵素(HEX)や抗体分子を血液脳関門透過型に改変することに成功した。さらに、この分子を特殊なナノ粒子と結合することによって神経細胞にだけ目的物を導入することも可能となった。脳移行性の個体レベルの評価としてペプチドのポジトロン標識体を合成しPETによる脳移行性を測定した結果、ペプチド単体でも水溶性のペプチドではこれまでに無い高率の移行を示すことができ、さらに脳移行性の無い化合物(NMDAアンタゴニスト)を結合することによって脳移行型に改変することができた。このときの脳移行性は1.34%であった。以上のように化合物やタンパク質、人工単体の脳移行型改変が可能となったので、今後実用化に向けた開発を行っていく。
著者
眞溪 歩
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009 (Released:2009-04-01)

本研究は,注意・不注意,意識・無意識に関する事象関連電位/磁界(ERP/ERF)計測を行うことを目的としていた.そこで,本研究を,目的を直接的に追求するための認知行動実験と,認知行動実験時のERP/ERFを計測・解析する手法の両面から構成した.計測解析手法では,脳領野間の方向付き位相共振を定量化する解析法を確立し, IEEE Tr BME誌に論文発表した.これらを用いた注意・不注意,意識・無意識が介在するERP/ERF解析では,無意識下での認知行動モデルの生成とそれが律動成分の位相共振によって実現視されていることを示唆する結果を得た.
著者
福間 良明 杉本 淑彦 山登 義明 上杉 和央 吉村 和真 山口 誠
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009 (Released:2009-04-01)

本研究では、戦後の大衆的なメディアに焦点を当てながら、大衆文化にあらわれる戦争体験の継承と断絶の変容について、考察してきた。具体的には、個々の大衆メディア(映画,テレビ,マンガ,戦跡・資料館)における「戦争体験」を比較対照し、そこにおける戦争理解やその社会背景について考察した。なお、そのうえでは、沖縄、広島、長崎、グアム(大宮島)など、戦場ごとの描写の相違にも注意を払った。