著者
神尾 真樹
出版者
鹿児島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

子宮内膜症は生殖年齢の約10%に発生する原因不明の良性疾患である。本研究では、子宮内膜症におけるシグナル伝達(JAK-STAT系、RAS-MAP系)に関して検討した。子宮内膜症、コントロール群各々50例での検討を行った。15症例でJAK-STAT経路の活性化を認めたが、年齢、鎮痛剤の使用、罹患期間、について一定の傾向は見られなかった。術前のGn-RHa投与群において活性が低い傾向が認められた。RAS-MAP経路については明らかな傾向を認めなかった。
著者
大島 久雄 勝山 貴之 古屋 靖二 中村 未樹 高森 暁子 道行 千枝
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

『テンペスト』受容におけるテキストと言説の関係性とその役割を受容事例分析により明らかにし、受容におけるインターテキスチュアリティの重要性を検討し、インターテキ・スチュアリティ受容批評理論の構築を目指した。特に植民地主義・労働、記憶・歴史、モンスター・異常出産、所有・支配、階級・衣服、メタシアター、王政復古期性・政治等の諸言説とのインターテキスチュアリティの受容に意味機能を具体的に検討し、原作上演当時から現代の翻案『プロスペロの本』や『蜷川テンペスト』に至るまでの個々の『テンペスト』受容について、その歴史性・地域性を重視した事例研究を行った。研究成果としては、The VIII World Shakespeare Congress(Brisbane,2006)において"The Discourse of Master-Servant Relationships in The Tempest"(大島)、第46回シェイクスピア学会(早稲田大学,2007)において「『テンペスト』における衣服」(高森)等、研究発表を行い、各分担研究は報告書兼論集『「テンペスト」受容研究:テキストと言説とインターテキスチュアリティ』(2008)に論文としてまとめ、国内外関連研究機関・研究者に配布した。各時代・地域でのテキストと言説が織り成す多様なインターテキスチュアリティの中、近年のシェイクスピア国際化の加速により、『テンペスト』は、多岐に分化するシェイクスピア受容の典型であり、受容研究におけるインターテキスチュアリティの重要性は益々高まっている。The 7th Triennial Shakespeare Congress(Rhodes University,2007)での"Location and Intertextuality in Ninagawa Tempest:Zeami/Prospero on a Sado Noh Stage"、シェイクスピア協会主催マクラスキー教授セミナー(同志社大学,2006)での"The Throne of Blood and Kurosawa's Intertextual and Crosscultural Transplantation of Macbeth"等のシェイクスピア受容事例研究を行い、受容研究へのインターテキスチュアリティ批評理論の有効性を検証した。
著者
蜷川 順子 並木 誠士 ノーマ レスピシオ
出版者
関西大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

フィリピン国セブ市にあるサント・ニーニョ像は、ヨーロッパ南北および洋の東西の文化交流の結節点に位置づけられる。本研究はその実体を解明し、キリスト教における聖母に伴われない単独幼児像登場の、近代における意味の探究を目的とした。西欧内の交流は宮廷間の強い結びつきを背景としていた。また、同彫像が改宗に際して果たした役割は、フィリピンを含むアジア全域に分布する神話世界と関係する可能性があることがわかった。
著者
新井 宏朋 中村 洋一 生地 新
出版者
山形大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

従来の成人病検診における眼底検査は働き盛りの脳卒中予知を主たる目的としていたが、高齢化社会においてはこれに加えて脳卒中による寝たきりや動脈硬化によるぼけ老人の予知が重要な課題となる。本研究では、まず最初に山形県F町における70〜75歳の在宅高齢者の眼底所見の有病率を検討した。Keith,Wagener分類O群は男39.3%、女39.8%、I群は男39.3%、女42.0%、IIa群は男18.9%、女12.7%、さらにK、WIIb群に相当する典型的な動脈硬化性網膜症が男2.5%、女5.5%に見られた。同時に実施したBenton視覚記銘検査との関連性を検討した結果、Keith,Wagener分類とBenton検査の正確数の間には統計的に有意の関連性は認められなかった。次に眼底所見を中心に血圧、心電図の循環器検査所見及びBenton検査の正確数、誤謬数等との関連について林の数量化III類を用いて検討した。第1軸は循環器所見の有無と解釈できたが、第2軸については解釈できなかった。また眼底所見はBenton検査の正確数、誤謬数と近接した関係は見られなかった。次いで、Y町で65〜74歳の在宅高齢者を対象に循環器検診5年後の日常生活動作、ぼけに関する症状等19項目の質問調査を実施した。Keith,Wagener分類と日常生活動作との関連では、全体的な傾向としてKeith、Wagener分類O,I群がIIa以上群に比較して良好な比率が高く複数の項目で有意差が認められた。ぼけに関する症状等については、各項目とも有意差は認められなかった。次に、この調査から精神科医のスクリーニングで痴呆の可能性が疑われた者(症例群と略)と対照群に柄沢式及び長谷川式簡易知能評価スケールを実施した。柄沢式では「ぼけあり)が症例群4.8%対照群0.01%であったが、長谷川式では症例群(平均26.3点、標準偏差6.4点)と対照群(28.0点、4.1点)に有意差は認めなかった。また両群の眼底K、WIIa以上出現率にも有意差を認めなかった。
著者
谷津 三雄 山口 秀紀 落合 俊輔 吉井 秀鑄 石橋 肇 渋谷 鉱 馬渡 亮司 坂本 嘉久 吉田 直人 吉村 宅弘 米長 悦也
出版者
日本大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988

「東西医学融合」の観点から歯、顎、口腔領域における東洋医学療法の基的的並びに臨床的研究を行うことを目的として本研究を企図し、次に述べる項目について検討を加えた。1.基礎的研究(1)脳波から見た鍼灸の効果・針刺激は大脳皮貭の広範囲な部位に作用しB波帯域の減衰と日波およびの波帯域が増大することから、針刺激は心身のリラックスと精神の集中効果が期待される。また、効果時間は比較的早く出現(10〜15分)することも確認できた。(2)針麻酔の効果判定に関する研究:パルス(低周波)通電器の最適刺激量,低周波通電時と笑気吸入鎮静法の鎮痛効果の比較,ソフトレ-ザ-の疼痛閾値へ及ぼす影響ならびにその効果についてサ-モグラフィを用いて観察した。その結果、パルス通電量には「通刺激」量のあること、通電針麻酔と10%笑気吸入との併用は20%笑気吸入鎮静法と同程度の鎮痛効果のあることがわかった。また、ソフトレ-ザ-の照射は断続照射よりも連続照射が効果があり、一側の合谷の照射は反対側の合谷の皮膚温をも上昇させ経絡現象の一端を思わせた。2.臨床的研究(1)咬合異常関連疾患への鍼灸療法の応用(2)全身麻酔後の咽喉頭障害への応用(3)歯科領域への鍼灸および漢方療法の応用について研究した。(1)については貭問紙法による「愁訴」の改善効果と顎関節痛と開口障害の改善が著明であった。(2)において「嗄声」への著効を示した。(3)の項目では、急性開口障帰,特発性三又神経痛、アフタ性口内炎に対する刺絡療法,葛根湯の効果,針麻酔による下顎骨骨折の治療,咽吐反射の抑制などに応用しその効果が確認された。
著者
七田 恵子 矢部 弘子 巻田 ふき
出版者
(財)東京都老人総合研究所
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

本研究の目的は、痴呆性老人のケアのための評価項目を探査することにある。看護婦は、痴呆性老人の身体的異常を早期に、的確に、察知し、対応しなければならないが、熟練した看護婦はあまり意識せずに適切に対処している。そこで、痴呆性老人の健康状態の変化を、看護婦がどのように察知し、どう判断するか、幾つかの方法により分析を試み、ケアにつながる評価項目を見出だそうとした。(1)老人専門病院の病歴から精神症状および身体症状が記載してあるものを探し、どう対処したか拾い出す、(2)臨床場面での看護婦の判断とその根拠について討議した、(3)老人専門病院の入院患者記録から入院時症状と確定診断名との関連を分析した。その結果、痴呆性老人の健康状態が悪い時は、表情、会話、意識状態、活動性、日常生活の変調といった全身状態として表現されることがわかった。ぼんやりしている、会話が少なくなった、日常生活での動きが悪くなったなど、身体症状というより、生活上に変調をきたす現れ方をした。痴呆群では、自覚的訴えができないためか、歩行困難、出血、発熱、喘鳴、黒色便、転倒、呼吸困難といった他覚症状で入院していた。家族は相当重い他覚症状が発現しないと受診しないようである。痴呆患者は、自覚症状の訴えが少なく、他覚症状、全身症状、生活上の変調に注意して観察し、評価しなければならないと結論された。
著者
山崎 秀夫 吉川 周作 南 武志 長岡 信治 國分 陽子 井上 淳 藤木 利之 辻本 彰 村上 晶子
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

研究成果の概要:明治維新以降のわが国の産業近代化と環境汚染の歴史的変遷を,古くから造船業などの重工業が盛んで,原爆にも被災した長崎市をフィールドにして検討した.人為的に環境に排出された汚染物質は海洋や湖沼などの底質に蓄積されるので,本研究では水圏底質コアに記録された汚染の歴史トレンドを時系列解析した.わが国の代表的な工業地域である京阪神や首都圏と長崎市の環境汚染の歴史トレンドは大きく異なり,また長崎市では原爆による汚染物質の飛散の影響も残存していることが明らかになった.
著者
吉村 浩太郎 岡崎 睦 長瀬 敬 吉村 浩太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

ヒト頭皮から採取した毛乳頭細胞の遺伝子発現解析を、マイクロアレイおよびRT-PCRにより行った。マイクロアレイにより繊維芽細胞と比較したところ、ケモカインリガンドやインターロイキン、細胞周期関連遺伝子、プロテオグリンカンに有意な発現増強が認められた。またRT-PCRでは既知の毛乳頭細胞マーカー14種の遺伝子発現を検討したところ、繊維芽細胞と比較して2種の遺伝子で有意な発現増強、1種の遺伝子で有意な発現低下を認めた。これらの遺伝子群の発現パターンにより、毛乳頭細胞と繊維芽細胞を識別することが可能になった。毛乳頭細胞に対して21種のリコンビナント蛋白および化合物を与えて培養したところ、このうち数種の物質には増殖促進作用があることが判明した。またこのうち2種の成長促進因子は特に増殖促進作用が強く、毛乳頭細胞増殖培地用添加物質として使用できる可能性が示唆された。FACSを用いてヒト毛包の上皮系細胞の表面抗原解析を行った。表皮角化細胞と毛包内角化細胞を比較したところ、後者のみにCD200陽性細胞とCD34陰性または弱陽性細胞が10%以上含まれており、毛包組織切片に対する免疫染色における染色パターンを鑑みて、この細胞集団に毛幹細胞が多く含まれることがわかった。また、この細胞集団におけるケラチンの発現を見たところ、バルジマーカーとされているケラチン15の陽性率は60%程度であった前年度までにラット足裏皮膚に毛乳頭細胞を移植する方法(サンドイッチ法)を検討し、毛包誘導能を検定するモデルとして有用であることがわかった。毛乳頭細胞の移植法の検討を行った。サンドイッチ法の他、チャンバーを用いた移植法、注射による移植法、皮膚切開に埋入する移植法などを比較検討した。サンドイッチ法は、表皮・毛乳頭間の相互作用が良好に担保され、毛包誘導には優れた方法であることがわかったが、臨床応用は困難であり、その他の移植法を開発していく必要があることがわかった。
著者
毛受 矩子 林田 嘉朗 前川 厚子 佐藤 拓代 中嶋 有加里 小松 洋子
出版者
四天王寺大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

女子大生の健康支援を目的に睡眠障害と自律神経動態の調査を行った。女子大生 471 名についての質問紙調査結果から、起立性調節障害といわれる不定愁訴有は 34.8%で、睡眠障害、精 神衛生について不定愁訴有無群で有意差が有った。一方、女子大生 30 名の臥床から起立時の 血圧等の計測から血圧、血圧調整能力において不定愁訴の有無で有意差は見られなかったが睡 眠障害の有無では有意差があった。以上から睡眠障害に注目した健康支援が求められる事が示 唆された。
著者
玉井 昌宏 竹見 哲也
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、近年の都市温暖化と降雨形態の変化傾向の相関の実態を地上気象観測のデータから把握し、実際に降雨形態がどのように変遷してきたかを解明した。その中でいくつかの典型的な事例を抽出し、気象モデルによる数値シミュレーションを実施し、異なった気候状態から計算を開始することで都市域での降雨形態がどのように変化するかの将来予測を行った。調査対象は大阪都市圏とした。本研究は大きく分けて次の3段階に分けて実施した。1)地上気象観測データによる近年の都市温暖化傾向と降雨形態の実態の把握2)高解像度雲モデルを用いた現象,特に過去に甚大な洪水被害をもたらした降雨現象の再現実験3)都市気候変化の降雨現象に及ぼす影響予測のための数値シミュレーション約30年間の地上気象データにより大阪都市圏における夏季の降雨形態の変遷過程の実態を都市温暖化との関連に注目して解析し、その結果に基づき、気象予報モデルにより大阪都市圏における夏季の局地循環の再現数値シミュレーションを行った。都市気候変化の降雨現象に及ぼす影響を検討するため、地上気象データの解析から明らかになったこれまでの気温上昇傾向を加味するとともに、現時点での降水時の特徴的な条件を付加することで仮想的な将来の都市大気環境を作成した。現在状態と将来状態との数値シミュレーションを行い、その差異から都市化が降雨に及ぼす影響を評価した。想定される都市化の度合いの様々なシナリオに基づき感度実験を行った。
著者
谷田貝 亜紀代
出版者
総合地球環境学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

乾燥地域の水資源への温暖化の影響を評価することは、重要な課題となっている。乾燥地域の水資源は近接する(流域の)山岳地域への降水が重要な役割を占める。そのため、対象地域には物理モデルによるダウンスケーリングだけでなく、山岳地域への降水を適切に評価した上で、統計的なダウンスケーリング手法を適用することが、期待される。そこで本研究は、山岳降水を衛星データを利用して評価し、統計的な手法により温暖化影響のダウンスケーリングを行うことを目的としている。対象地域は中国北部とトルコの乾燥地域である。平成17年度は、平成16年度に作成した、山岳の効果(山の上の方で雨が多く降るなど)を考慮した日降水グリッドデータを用いて、ダウンスケーリング手法を開発した。衛星データについては、熱帯降雨観測衛星(TRMM)と、NOAA/CPCで作成されたCMORPHという、マイクロ波による推定降水量と静止気象衛星による雲風ベクトルを組み合わせて算出される降水量データセットを利用した。TRMM/PRデータは雨量計データから作成されたデータセットに対し、強い雨に対して系統的な誤差がみられることがわかった。また、GPCP1DDなど他のいくつかの衛星による降水プロダクトと比較してCMORPHの降水量や、TRMM3B42プロダクト(マイクロ波TMIとSSMIによる)は量的にも経年変動の点でもよい見積もりを示していることがわかった。これらのことから、ECMWFによる1.125度解像度の客観解析データと、TRMM/PRおよびCMORPH降水量により、対象地域についての、水蒸気輸送場・大気循環場と降水分布について比較研究を行った。また気象庁気象研究所の温暖化実験結果と本研究により作成されたデータセットやこれら衛星データを比較することにより、ダウンスケーリング手法を開発した。
著者
羽賀 敏雄 佐渡 君江 中岡 泰子 有内 則子 知野 光伸
出版者
四国大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

大学教育において,伝統技術と関わった体験的な科学教育を行い,地域リーダーを育成する方途を検討した。その具体的な方法として、北方寒冷地の津軽の伝統技術である「こぎん」と南国阿波の伝統技術である藍染や「しじら織」のそれぞれの物性を対比しながら科学的・基礎的に解明し、その結果を踏まえて教材化して大学教育に実践し、知識・理解、及び問題発見・解決能力を高める学習効果を挙げることができた。実践は「染色化学」をはじめとする4つのアパレルに関する授業を統合的に組織することによって行った。藍草の特徴、徳島県における「すくも」生産の盛衰、藍染に関わる徳島県と他地域との現時点での交流等を概観した。また伝統技術と関わった地域リーダーの一般的資質要件を事例から抽出した。失意からの回帰力、共感力、利他性、先見性、創造性、コミュニケーション力、意思決定力、現状認識の正確さ等である。四国大学生活科学部の学生は、適切性や同調、快適を重視した落ち着いた被服行動をとり、天然藍で藍染することにより、現実の生活に向き合い、かつ活発になる傾向がある。広く伝統的工芸品の近代化とイノベーションの具体例を述べた。伝統技術の後継者育成の現状についても言及した。伝統技術を題材とする科学教育を大学で実践することによって、地域リーダーとしての資質要件の主要部分が育成できることを述べた。
著者
鈴木 正人
出版者
岐阜工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

平成16年度には,手法の提案と試算を,平成17年度にはその手法の適用を行なった.時間的集中度については,都市化の進んでいる都市と進んでいない都市との比較という観点から県庁所在地の人口密度の上位10都市(東京特別区および大阪,横浜,など)と下位10都市(佐賀,長野,静岡など)の計20都市を対象とし,各都市における地上気象観測所の1976〜2003年の8月の時間降水量を抽出した.一雨(降水量が観測されてから降水量が0mmになるまで)を全て抜き出し,一雨総雨量,一雨中の時間最大降水量,降雨の継続時間,時間的集中度,のそれぞれについて,経年変化を線形と仮定し,得られた線形トレンドの有意性検定により,経年変化の有無とその程度を調べた.その結果,経年変化が5%または1%有意と検定されたのは,時間最大降水量の増加傾向として東京,横浜,さいたま,千葉,鳥取の5地点,継続時間の増加傾向として大阪,総雨量の増加傾向として福岡,であった.すなわち,人口密度の上位10都市のうち4都市で時間降水量が年々大きくなっていることが示された.しかし,本研究の主眼である雨の降り方を表す時間的集中度については,有意な経年変化は認められなかった.また,空間分布ついては東京および岐阜のアメダス観測点の8月の時間降水量を用いて,降雨が空間的にばらついている程度の経年変化を求めたが,経年変化は減少傾向(空間的に集中傾向)ではあったものの有意とはならなかった.なお,降雨の時空間分布を検証するのに従来より用いられているDAD解析におけるDA関係と,レーダーアメダスを用いた本研究で提案した手法を比較したところ,両者は同様の傾向を示すことが分かった.
著者
三浦 宏文 小松 督 飯倉 省一 下山 勲 TADASHI Komatsu
出版者
東京大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1992

本研究は,宇宙機(宇宙ロボット,人工衛星など)の姿勢制御に関するものである.平成4年度は微小重力を模擬するために,剛体を6自由度で支える実験機構を設計し,作成した.平成5年度は主に垂直成分の微小重力模擬装置の制御について詳細な研究を行った.これまでは,微小重力を3次元的に模擬するのは難しいので,空気軸受けなどで2次元的な支持装置を作って実験するのが普通であった.そこで,本研究では,特別の創意工夫によって,3次元的に空中に浮遊する物体の模擬装置を開発した.姿勢についてはジンバルによって3方向に自由に,重心周りに回転できるような構造にし,重心の移動に関しては,水平方向には空気軸受けによって2次元の自由度を与え,垂直方向にはカウンタバランスを備えること(平成4年度)、およびロードセルを備えて加速度を検出してフィードバックをかけること(平成5年度)で重さをキャンセルした.空気軸受けのための空気は,ボンベを装置に搭載することによってチュウブによる外乱を防いだ.宇宙機の姿勢制御には,本研究ではまったく新しい方法を提案しようとしている.それは,宇宙機を複数個に分割し,それらをユニバーサルジョイントで結合し,このジョイントには内力が発生できるようなアクチュエータが備えられていて,相対運動を引き起こすことによって全体の姿勢を制御しようというものである.平成4年度は、おもにこの研究を行い、最終年の平成5年度はロードセルによる微小重力制御系についてのより実用を目指した研究を行い理論と実験の良い一致を見た.
著者
山本 宏
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

針葉樹5種の各部成分化合物を、樹病感染時と健康時で比較した。また、それらの主要な化合物の病原菌成長への影響を調べ、次のことがわかった。1.ヒノキアスナロ樹皮成分は、高級脂肪酸メチルエステルから、漏脂病に罹病後にはabietinolやabieta-7,13-dieneのジテルペンとなった。2.ヒノキ樹皮成分は、ジテルペン二量体や高級脂肪酸から、漏脂病に罹病後にはtorulosolやferuginolなどのジテルペンとなった。材成分では、罹病後より酸化が進んだ構造のテルペンが得られた。3.樹脂胴枯病ヒノキ樹脂の主化合物はtorulosolとcupressic acidであり、樹脂胴枯病ローソンヒノキ樹脂の主化合物はacetyl isocupressic acidとisocupressic acidであった。前者2ジテルペンは病原菌菌糸成長を促進し、後者2ジテルペンは抑制した。4.キバチにより変色したスギ材の特徴的な化合物はabieta-7,13-dieneとacetyl-sandaracopimarinolであった。5.漏脂病ヒノキの樹皮化合物の樹木分布を調べると、目立った増加をしめすt-communic acidが感染段階をしめす基準物質となることがわかった。6.樹脂胴枯病に感染したローソンヒノキの樹皮と材かち、抗菌性テルペンtotarol, nootkatin, nootkatone,13-hydroxynootkatoneを分泌していた。ローソンヒノキはテルペンに基づく防御メカニズムを有していた。7.樹脂胴枯病に感染したレイランドヒノキ樹脂からがcommunic acidやtotarolのジテルペンを単離した。これらは病原菌の菌糸成長を抑制した。レイランドヒノキはテルペンに基づく防御メカニズムを有していた。
著者
塩見 淳 中森 喜彦 酒巻 匡 高山 佳奈子 安田 拓人 堀江 慎司 塩見 淳 中森 喜彦
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

組織犯罪の刑事的規制に特殊な配慮が必要であるとしても、伝統的な刑法の枠組を越えて犯罪の成立を早期化したり、国際協調の名の下に国内の人権保障の水準を切り下げたりするのは大きな問題であり、また、犯罪収益の剥奪といっても無原則に行われるべきではない。組織犯罪を捜査、起訴、審理する際の手続についても、制度趣旨等の根本理解に立ち返って慎重にその内容を確定すべきである。これらのことが明らかになった。
著者
宮坂 正英 久留島 浩 青山 宏夫 日高 薫 小林 淳一 松井 洋子
出版者
長崎純心大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、ヨーロッパ各地の博物館、大学、図書館ならびに末裔宅に所蔵されるシーボルト関係文書並びにシーボルトが日本滞在中に収集した日本産業・生活文化資料を横断的に調査・研究し、シーボルトがヨーロッパでどのような構想をもとに日本を紹介しようと試みたのか、その一端を復元的に研究しようする試みであった。今回の調査でミュンヘン国立民族学博物館にシーボルトが死の直前まで行っていた日本展示の構成を具体的に示す目録が発見され、これをもとに展示品を抽出した。その結果、シーボルトの日本紹介は従来の美術・工芸を中心とした日本紹介と異なり、日本の産業とその産業に従事する日本人の生活文化の紹介に主眼が置かれていることが分かった。このことから、シーボルトが意図した日本紹介は、独自の発想にる異民族およびその文化の理解の方法に基づいて行われていることが分かり、今後シーボルトの民族学的な思想を解明する手がかりを得ることができた。また、本研究を通じて、ヨーロッパ各地の関係諸機関に分散して所蔵されているシーボルト関係資料を横断的に調査・研究する方法が必要不可欠であることが認識された。このためには、画像付きデジタル・データベースの共有化が最適であるため、最初の試みとして、ミュンヘン国立民族学博物館所蔵のシーボルト・コレクションおよびシーボルトの末裔フォン・ブランデンシュタイン家所蔵のシーボルト関係文書の画像付きデジタル・データベースの構築を開始した。
著者
寺岡 靖剛 永長 久寛
出版者
九州大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

Sr_2AlNbO_6はペロブスカイト(ABO_3)型構造を持ち、Al^<3+>とNb^<5+>がBサイトを占有している。これら2種類の金属イオンは焼成温度の増加に従いBサイト内で規則配列し、結晶内に-Al^<3+>-O-Nb^<5+>-交互規則配列結合を形成する割合が高くなる。したがって、Sr_2AlNbO_6を用いることで化学組成や結晶系を変えることなく、金属イオン規則配列構造と触媒機能との相関を評価することが可能と考えられる。そこで、金属イオン規則配列構造に由来する協奏的触媒機能の発現に対する知見を得ることを目的とし、規則配列度の異なるSr_2AlNbO_6を合成し、結晶構造を評価した。さらに、結晶構造が吸収スペクトルや光触媒活性に与える影響を検討した。規則化度の異なる試料の吸収スペクトルからEg値を見積った結果いずれも4.1eVとなり、Eg値と規則化度との相関はみられなかった。一方、メタノール水溶液を用いた光触媒活性評価の結果、長時間焼成することでH_2生成活性は低下することがわかった。触媒の比表面積は約3~4m^2・g^<-1>と同程度であったことから、活性の差は比表面積では説明できないと考えられる。このような光触媒活性の低下はAg光還元反応にも同様に認められ、反応の種類に依存しなかった。以上の結果から、Sr_2AlNbO_6の光触媒活性は規則化度の向上により低下することが示唆された。このように協奏的触媒機能の発現には至らなかったが、バルクの金属イオン配列の規則化と触媒機能の関連を初めて明らかにした。またバルクの規則配列構造を反映した多金属協奏活性的構造表面の創製として、立方晶のBa_2CoWO_6と単斜晶のCa_2CoWO_6を比較した。その結果、Ca_2CoWO_6において(-201)面上の金属イオン規則配列構造を反映した表面構造が形成され、それが触媒活性向上に関連する可能性が示唆された。
著者
安浦 寛人 佐藤 寿倫 松永 裕介 井上 創造 池田 大輔 石田 浩二 馬場 謙介 吉村 正義 ウッディン モハマッド・メスバ 稲永 俊介
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

社会に不可欠になっている「価値」や「信用」を搭載するLSIについて、ディペンダビリティの定義と評価尺度を提案し、その阻害要因の明確化と要因間の関係の解明を行った。また、LSIのディペンダビリティを向上させる対策を提案し、ディペンダブルLSIの設計フローを提示した。独自技術によるICカードを大学の学生証・職員証として発行し、設計から運用まで一貫してディペンダビリティの一万人規模の社会実験を行える環境を実現した。
著者
山田 朋人
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

近年,世界各地で極端現象による被害が頻発しており,対策および予測精度の向上は喫緊の課題である.本研究は大陸スケールで発生した旱魃を対象事例とし,全球気候モデルにおける陸面初期情報が与える準季節スケールの予報スキルの評価を行った.人間活動の影響を考慮した陸面初期データを予報実験に用いたところ, 1988年夏に北米大陸において発生した旱魃の準季節スケールの予報スキルは向上し,高い精度で旱魃の事前把握の可能性を示した.また大陸河川の河川流量に与える陸面初期情報の影響についても検討を行い,人為的な河川流量の調整がない場合, 1か月先の河川流量の挙動は陸面初期情報に強く依存するという結果が得られた.