著者
岡野 友彦 永村 眞 漆原 徹
出版者
皇學館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、室町時代の幕府発給文書に焦点を絞り、古文書がその「もの」として有する料紙などの非文字列情報と、古文書の上に書かれた文字列情報との間に、どのような有機的関連性があるのかを検討した。具体的には透過光を用いた古文書の顕微鏡撮影などによって、不純物をきれいに除去した紙と不純物の残る紙、わざと米粉を入れた紙と入れなかった紙に大別できること、その二つの組み合わせから、4種類の料紙に分類できることを確定した。これら4種類の紙が、それぞれ文字列情報としてどのような古文書に使用されているかの確定にまでは至らなかったが、一定の見通しを得ることはできた。
著者
青木 孝義 谷川 恭雄 中埜 良昭 湯浅 昇 岸本 一蔵 丸山 一平 高橋 典之 松井 智哉 濱崎 仁 迫田 丈志 奥田 耕一郎
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は、2009年にイタリアで発生した地震により被害を受けた文化遺産建築の被害調査を実施して、被害状況と応急処置方法を系統的に整理し、1970年代以降に文化遺産建築に対して行われたRC補強の効果を検証し、モニタリングにより補強前、補強途中の構造的安定性と補強後の補強効果を検証することにより、また、関連する国内外の文化遺産建築の調査を通して、文化遺産建築の有効な修復・補強方法、地震によるリスクから文化遺産建築を保護する方法に関する海外学術調査を実施したものである。
著者
荒島 康友 加藤 公敏 熊坂 一成 河野 均也 古屋 由美子 池田 忠生
出版者
日本大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2000

1.東京地区の大学病院におけるCoxiella bumetti(Cb)感染の状況の把握について:慢性疲労症候群(CFS)の患者138名について、Coxiella burnetti(Cb)DNAの検出をnested PCR法により行った。その結果、30例(21.7%)が陽性となった。健康人対照52例では5例(9.6%)が陽性となり、CFSで陽性率が有意に高かった(P=0.027)。また、CFSの基準に満たない、発熱、倦怠感等の不定愁訴を示した患者48名中20例(41.7%)がCb抗体価陽性となった。2.Q熱患者における抗生剤の投与方法や投与期間など治療法の検討:この20例に対し、MINOを中心とした抗生物質で治療を行ったところ効果の発現まで1〜3ヶ月と、個人差は有ったものの、20例の全ての患者に解熱、倦怠感の改善が認められた。3.登校拒否児についての検討:登校拒否児の症例は、研究協力者が転勤となったために、積極的な協力が得られず、4症例ではあった。しかし、1例が抗体価が陽性となりMINOの投与により症状が改善した。4.患者飼育ペットの検討:3症例の患者のペット(イヌ3頭)の検査を行ったところ、2頭がPCR陽性となった。また、1頭はMINOによりPCR陰性となった。5.学会発表:以上のCFSについては、第7回慢性疲労症候群研究会において発表を行った。また、3月の日本内科学会で発表予定である。さらに、招請講演において、今回のQ熱に付いて広く理解を得るべく説明を行っている。6.論文発表:現在、今回の内容でCIDに投稿中である。7.マスコミ報道:NHK2002年3月4日クローズアップ現代、8chアンビリーバボー以上、現在までの研究の概略を述べたが、予定の約80%には達していると考えている。
著者
岡田 博 塚谷 裕一
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

DNAによる分子系統解析の結果、中国大陸には多くの系統が分布していること、特に昆明省では多様なことが20年度の調査で明らかになった。21年度の調査ではそれらの中のごく限られた遺伝子型がマレー半島、ジャワ島、ボルネオ島、台湾などにそれぞれ、ボトルネック効果によるとみられるようなばらばらな分布を示すらしいことがわかってきた。今までの調査と今年度の調査を総合すると、日本に分布する、いわゆるヤブガラシには染色体数でみると2倍体と3倍体があり、2倍体には南西日本型、北西九州型、そして広く日本の関東以南に分布する型の3型があること、3倍体には日本に広く分布する型と沖縄本島に分布する型の2型あることがわかった。そして前者は広く日本に分布する2倍体から、後者は南西日本型から派生したものと推測される。これらの5型はDNAによる分子系統解析によって詳細に比較検討され、それぞれの遺伝的関係も明らかになってきた。記載分類学的にみると北西九州型はツンベルグによってCayratia japonica(これは和名ではヤブガラシとされてきている)の原記載をされたもので、これをヤブガラシと認めるならば、日本に広く分布するものとは形態的にも区別可能なものである。したがって、日本に広く分布するものは形態的にも、遺伝的にも別の未記載の分類群であることがわかった。そこで、日本に分布する「ヤブガラシ」の遺伝的関係を考慮しつつ分類学的に再検討するために北西九州型がどのような分布を示すのか調査したところ、非常に複雑な分布をしていることが明らかになってきた。
著者
大橋 鉱二 宗綱 栄二
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

フルクトースは「果糖ブドウ糖液糖」として多くの飲料の甘味料として利用され、先進国では生活習慣病の原因として注目されている。多くの研究により「フルクトース対する脆弱性」が示されている。申請者らも、これまでにフルクトース過剰摂取により誘発される生活習慣病の作用機序を研究している (J Pineal Res 2012)。しかし分子メカニズムにおいては不明な点が多い。申請者らはエピジェネティックな制御に着目し研究を進めてきた。エピジェネティックな制御を司る機構として、DNAのメチル化、ヒストン修飾、miRNAがある。この中でも申請者はDNAのメチル化に焦点を当て研究して来た。DNAのメチル化とは塩基配列に変化を伴わず遺伝子の発現を調節する。申請者はフルクトースを過剰摂取した成獣ラットにてDNAの高メチル化と遺伝子発現の異常を確認している(Life Sci 2016)(BBRC 2015)。本研究の目的はフルクトースの過剰摂取が胎内環境を介して仔の糖代謝・インスリン感受性に与える影響を「エピジェネティック」な観点から解析することを目的とする。申請者はこれまでエピジェネティクスの中でもDNAメチル化に焦点を当て研究して来た。本研究ではDNAメチル化に加え、ヒストン修飾やmiRNAによる遺伝子発現のエピジェネティックな制御にも焦点を当て解析する。本年度は妊娠させたラットに出産までフルクトースを過剰摂取させた、仔ラットを用いて解析している。現在、このモデルを用いて以下2点について解析している。A.過剰フルクトース母獣から生まれた仔肝臓のDNAメチル化・ヒストン修飾変化の解析B.過剰フルクトース母獣から生まれた仔肝臓のmiRNA発現変化の解析特に、過剰フルクトース母獣の仔の肝臓組織におけるmiRNA発の異常が示唆される結果が得られつつある。
著者
村上 貴聡 立谷 泰久
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究はスポーツ審判員を対象とした心理的ストレスに注目し,審判員のストレッサー並びにストレス反応を明らかにする.そして,審判員のストレスの実態とその効果的対処を理論的,実践的に検討することを通して,審判員を対象としたストレスマネジメントプログラムの開発とその評価を行うことを目的に推進している.具体的には,審判員のストレスに関わる国内外の文献的研究を行い(研究1),面接調査を実施することにより審判員のストレッサー及びコーピングの実態を明らかにする(研究2).次に,審判員のストレッサー並びにコーピングを測定する評価尺度を開発し,その関連性を検討することにより審判員の心理的ストレスモデルを構築する(研究3).最後に,審判員に対するストレスマネジメントプログラムを考案し,その効果を検証する(研究4).2017年度は研究1及び2を実施した.調査対象者の収集においては,複数の競技団体と十分に連携して研究を実施することができた.実施にあたっては,国際審判員の資格を有するテニス審判員5名,ハンドボール審判員3名,サッカー審判員2名を対象として,「審判員のストレッサーとコーピング」について半構造化面接を行った.その結果,審判員のストレッサーとして,ジャッジへの不安,選手や観客からの抗議,時間的負担,金銭的負担,パフォーマンスの評価,対人関係などの内容が報告された.また,報告されたストレッサーに対して,どのようなストレスコーピングを活用しているかを分析した結果,認知的方略,メンタルスキル,ソーシャルサポート,回避などの内容が示された.さらに,サッカーの1級審判員52名を対象にして,メンタルヘルスの調査を行った結果,心理的ストレスや身体的ストレスは低いものの,社会的ストレスがやや高い傾向がみられた.2018年度はこの成果を踏まえ,審判員のストレッサー並びにコーピングを測定する評価尺度を開発する.
著者
寺田 孚 柳谷 俊 松本 義雄 斎藤 敏明
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

研究成果の概要は次のようである。1.ある垂直応力状態のもとでせん断を行うと、不連続面の凹凸の周波数成分のうちある周波数の凹凸を境に、それより高周波の凹凸はその特性に変化があり破壊が生じていると思われるが、それより低周波の凹凸には変化がなかった。2.せん断変形の進行とともに、高周波の凹凸から破壊が進行し、破壊が生じない限界の周波数の凹凸で乗り越えが起こり、残留せん断強度を示すと考えられる。3.ピ-ク強度を示すまでは剛性の強い高周波域の凹凸がせん断荷重を受持ち不連続面の凹凸はしっかりかみこんで変形しているが、ピ-クに達すると高周波域の凹凸のある領域にわたって一挙に破壊する。4.ピ-ク強度を過ぎると破壊と乗り越えを繰り返しながら徐々にせん断荷重を受け持つ周波数帯は低周波側に移動し、それにつれてせん断強度も低下する。完全な乗り越え状態に達すると一定の残留強度となる。5.残留状態までは、削り取るにたらない低周波の凹凸の上をすべりつつも、その上に存在する小さな凹凸を破壊して平滑化するので、垂直方向の膨張量がわがかずつ減少し、それに呼応してせん断強度も小さくなる。これは岩石の鉱物粒径にはあまり関係がなく、垂直応力にのみ依存する。6.残留強度は乗り越える凹凸の周波数に大きく依存するが、ピ-ク強度はさらに供試体の強度特性などにも影響を受けるので、ピ-ク強度の方が残留強度よりばらつきが大きい。
著者
森脇 淳 中島 啓 望月 拓郎 立川 裕二 吉川 謙一 入谷 寛 尾高 悠志 向井 茂 並河 良典
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2016-05-31

本年度は数理物理学と代数幾何学との結びつきを重要視し,ミラー対称性とそれの周辺に関するシンポジュームを11月11日から11月15日にかけて京都大学にて国際シンポジュームを開催し,多くの最新の知見の交流を行うことに成功した.それ以外にも2班から構成する研究グループは活発に研究を進めており,以下のような成果をあげている.第一班:(中島)アファイン・グラスマン多様体上の構成可能層の性質を抽象化し、ring object として定式化した.特に,幾何学的佐武対応を通じて正規表現に対応する ring object を構成要素として,Moore-立川によって予想されていた新しいシンプレクティック多様体の構成を与えた.(並河)錐的シンプレクティック多様体の中で複素半単純リー環のべき零軌道閉包の特徴付けを行った.(望月)円周と複素直線上の特異モノポールについて,``一般化されたCherkis-Kapustin型(GCK型)''という条件を導入し,そのような特異モノポールと安定パラボリック差分加群との間の小林-Hitchin対応を確立した.(入谷)トーリック軌道体の標準類を保たない双有理変換の下での量子コホモロジーD加群の変化を研究した.(立川)様々な次元の超対称場の理論の数理の研究を続けるとともに,超対称場の理論とトポロジカルな場の理論の関連をしらべることをはじめた.第二班:(森脇)Paris7大学のHuayi Chen氏との共著の本の執筆を中心に研究を進め,非被約なスキームに対する半ノルム付き拡張定理の証明に成功した,(向井)2変数クレモナ群の研究を続け、射影平面内の6直線の分解群や上野・CampanaのCoble曲面の自己同型群を決定した.(吉川)高次元エンリケス多様体の不変量を解析的捩率を用いて構成し、それにより,ヴェイユ・ピーターソン計量のポテンシャル関数が得られた.
著者
藤ヶ谷 剛彦 佐田 貴生 堤 優介
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

CNTに、磁性ナノ粒子 (MRI造影剤として臨床応用されているガドリニウムや酸化鉄など) を内包させることでラジオ波吸収効率を高める高機能化を行った。短尺化CNTの使用や高沸点溶媒の使用により高い内包率を持つ鉄内包CNTの作製に成功した。収率向上に課題が残った。体内導入のために、ラジオ波応答性CNT複合体へ生体親和性を付与する必要がある。そこでSWNTを溶液中に均一に分散させるために、CNTを分散した界面活性剤ミセル内部空間を利用して重合を行うことにより、表面が強固なポリマーネットワーク構造で被覆された新規CNT複合体作製法の開発を行った。
著者
高橋 哲哉 山脇 直司 黒住 眞 北川 東子 野矢 茂樹 山本 芳久 古荘 真敬 信原 幸弘 石原 孝二
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

旧約聖書の「殉教」物語の検討から、ユダヤ教的「殉教」観念が靖国思想に酷似した犠牲の論理から成り立っていること、キルケゴールがアブラハムによるイサク犠牲の物語に読みこんだ「悲劇的英雄」と「信仰の騎士」の区別は厳密には成り立たないことを確認した。ニーチェがナザレのイエスに見た「根源的キリスト教」は、罪からの解放のためにいかなる贖いも求めない「犠牲の論理なき宗教」だという結論を得た。
著者
新家 利一 中堀 豊
出版者
徳島大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1999

Y染色体はその大半の部分が父から息子へと伝達される.したがってY染色体上の多型を解析することはヒトの父系起源の解明につながる.我々はY染色体上に存在する.SRY遺伝子およびDXYS5Y部位に多型を見いだし,以前にHammerらによって報告されたYAP多型との組み合わせにより,日本人男性を4つのハプロタイプに分類した.これらの多型を利用して他民族と日本人との関係を研究すると共に,男性間の表現型に違いがないかどうか検討している.我々は従来行ってきたY染色体に関する分子遺伝学的研究から,Y染色体構造の多様性がヒトの精子数と関連しているとの仮説をもった.この仮説を検証すべく,Y染色体上の3種類のDNA多型マーカーを用いて,日本人Y染色体を4種類のタイプに分類し,疫学的手法を用いて,おのおののY染色体ハプロタイプと子供のいる健常男性の精子数との関連を検討した.子供のあるボランティア成人の精子濃度を調べたところ,Y染色体のタイプによって精子濃度が異なることがわかった.また男性不妊の重要な原因の一つである,無精子症の頻度もY染色体のハプロタイプによって異なっていた.この事実は,(1)Y染色体のタイプによって精子数が異なる,(2)無精子症の起こり易さは特定のY染色体のハプロタイプと関連している,ということを示している.精子数が少ないタイプおよび無精子症の頻度が高いグループはHammerらにより縄文系とされている男性であった.
著者
桑原 聡
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ノヴァーリスからパウル・シェアバルトに至るドイツ近代文学における庭園モチーフにおいては自然と人工の対立が問題になることはよく知られている。一般にドイツ・ロマン派に始まる人工庭園の系譜(たとえばE.T.A.ホフマン)は、芸術の象徴としてS.ゲオルゲに極まると関連研究は指摘している。しかし、本研究は、ドイツ近代文学における人工庭園のモチーフには二種類あり、一つは芸術の象徴としての庭園であり、もう一つがユートピア(=楽園)としての人工庭園の系譜であることを解明した。後者がノヴァーリスからシェアバルトに至る系譜であり、その指標が「光」にあることを明らかにした。
著者
相田 慎 箕輪 はるか
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

原発事故時による放射能リスクへの国民の不安は和らいでいるものの、企業・行政・報道への不信感は根強く、不安が解消されたとは言い難い。人々は、折に触れてこの問題について語らっていたであろうが、これは「人によって見解が異なる切実な問題」であり、「語ることへの躊躇い」があったと予想される。本研究課題では、日常会話に表出する(放射能リスク等の)科学の話題を「日常の科学コミュニケーション」と捉え、その場面獲得手法を提案し、話題が科学へ遷移する前後を詳細に分析する。 そして、「日常の科学コミュニケーション」の過去から今後とを観察し、放射能リスクという「時と共に変わりゆく問題」が変化する局面を俯瞰する。
著者
堀井 健一
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

18世紀末から19世紀初頭にかけてのギリーズ『古代ギリシアの歴史』とミトフォードの著作『ギリシア史』におけるクレオンの記述の仕方を見れば,2人は明らかにアテネ民主制がデマゴーグに操られた衆愚政治であるかのように記述していることが分かる。また,アメリカ建国期の『フェデラリスト』の記述においてはクレオンなどの政治家の名前は登場しないものの,アテネ民主制が感情的な大衆による愚かな政治であることが度々指摘されている。従って,18-19世紀の英米の歴史家や政治家は概して,アテネ民主制を衆愚政治と見ていたに違いない。他方では,ギリーズやミトフォードが史料として参照したはずの古代ギリシアの歴史家トゥキュディデスによるクレオンに関する記述を検討すると,やはり彼が明らかにデマゴーグぶりを発揮しているとは読み取れない。他方では,古代ですでにクレオンは同時代人のアリストファネスの諸喜劇の中で嘲笑の的になったし,それらの作品をギリーズらの近代人は知り得ていた。それゆえ,ギリーズやミトフォードの著作にみられるクレオンのデマゴーグぶりには明らかにアリストファネスの諸喜劇の影響がうかがえる。だが,アリストファネスの諸喜劇は,ソクラテスの事例に鑑みれば,喜劇作品であるがゆえに問題がある。それゆえ,政治家クレオンについて,歴史家は,その真相を喜劇作家に求めるべきではなく,トゥキュディデスの史料に求めるべきであるので,ギリーズやミトフォードにおける政治家クレオンの像は再検討の必要があろう。かかる再検討の作業を行なうならばクレオンが彼らが描くほどデマゴーグではなかった可能性が見出せるかもしれない。
著者
杉山 あかし
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

マス・メディアは直訳すれば、「人々(大衆)を媒介するもの」である。実際、新聞は、新聞記事を通して人々を媒介し、その新聞の読者という集団を生み出し、他のメディアもそれぞれの視聴者、聴取者といったものを生み出してきた。インターネットの普及は、この状況に大きな衝撃を与えた。新聞記事もテレビ番組も、インターネットで見えるようになってしまい、今や人々は自らの好き嫌いによってコンテンツに接するようになり、メディアの区分けに拘束されなくなった。もはや従来のメディア概念で社会を分析するのは困難である。本研究はメディアを技術別ではなく、社会的媒介の広がりとして定義し直すことを目指し、3つの実証研究を行なった。
著者
上野 修 米虫 正巳 近藤 和敬
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

1960年代後半から80年代にかけて、現代フランス哲学思想に到来したスピノザ・ルネッサンスの源流を、フランス・エピステモロジーの系譜上に位置づけた。カヴァイエスからカンギレムへと続くエピステモロジーの系譜上に、アルチュセールととラカンの強い影響下にあった60年代後半のエピステモロジー・サークルがある。彼らの『分析手帖』は構造主義を背景に科学・主体・生命に関する理論的問題の分析を展開したが、これを活気づけていたのがカヴァイエスの「概念の哲学」という理念であり、この理念がスピノザ主義の名のもとに当時のアルチュセール派やラカン派を様々な仕方で活気づけていたことが明らかとなった。
著者
神園 巴美
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究では、ブトキシブチルアルコール(BBA)の作用を明らかにするために、(1)実験条件をそろえた精度の高い実験系を確立し、次に(2)その実験系でブロイラーの筋肉タンパク質代謝とエネルギー代謝に対するBBAの効果を調べ、最後に(3)BBAによる代謝連鎖機構について調べることとした。平成25年度は、主に上記(2)と(3)の一部を中心に研究を進め、すなわち、0日齢ブロイラー(オス、Ross、16羽)を供試し、基礎飼料給与の対照区、BBA添加飼料(30mg/kg基礎飼料)給与のBBA区に2区に分け、各試験飼料で27日齢まで飼育して屠殺・解体した。その結果、BBAには体重・筋肉重量の増加による成長促進効果、飼料効率の改善、ならびに、脂質過酸化とタンパク質酸化損傷の抑制、α-トコフェロール濃度上昇による酸化ストレス軽減効果があることを明らかにした。BBAによる成長促進効果、特に筋肉タンパク質代謝に対する影響に関しては、タンパク質分解の抑制だけでなくタンパク質合成能の上昇も関与した。これらはμ-calpainとatrogin-1 mRNA発現量の低下、さらにIGF-1 mRNA発現量の上昇の結果として捉えることができる。また、BBAによる飼料効率の改善効果は、ATPを必要とするユビキチン・プロテアソーム系(IGF-1とatrogin-1が関与)によるタンパク質分解抑制によってATPが節約され、その結果、エネルギー変換効率が上昇したとの仮説が成り立つ。一方、BBAが酸化ストレスを軽減することを考え合わせると、酸化ストレスの原因となる活性酸素を消去し、またはミトコンドリアでの活性酸素産生量を抑えることで酸化的リン酸化効率を高めている可能性も否定できない。このように、BBAはタンパク質代謝だけでなくエネルギー代謝にも影響し、それらが相互に連関して成長促進効果を発揮している可能性を明示した。
著者
吉川 裕之 前田 平生
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

1.子宮頸がん症例、一般コントロールからのリンパ球のsampling:症例登録施設9施設(筑波大および研究協力者施設;東北大、癌研、慶応大、千葉大、近畿大、佐賀大、琉球大、東大)において、新たに全体として子宮頸がんおよびコントロールからのリンパ球と子宮頸部擦過検体のsamplingを行い、病理標本とともに提出した。2.HLAクラスIおよびクラスIIアレルの決定:HLAはgenotypingでgroup-specific primersを用い、PCR産物をSSCPおよびRFLPで同定した。前癌病変であるCIN I/II 570例のHLAクラスIおよびIIアレルを同定したことに加えて、子宮頸がん279名とコントロール203名の解析が終了した。3.HPV型の同定:consensus primer-mediated L1-PCRでのPCR-RFLP法と積水メヂィカルのクリニチップで解析した。子宮頸癌266名とコントロール188名が対象であるが、後者の方法では全体で300検体が終了した。4月末には全検体で終了する見込みである。がんで88%、コントロールで26%の陽性率である。4.統計解析:子宮頸がんの症例対照研究について検査がほぼ終了しつつある。まず、HLAとHPVのデータから約200ペアで解析する。暫定的な解析で複数のアレルで有意差が出ているが、最終解析を待ちたい。2011年秋頃には投稿できる見込みである。5.中央病理診断;コントロールが得られなかったがん症例も含めて、HPV型と組織型について検討する予定である。暫定的には神経内分泌型においてHPV18型陽性が多いことが判明している。
著者
深見 達基
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ヒトアリルアセタミドデアセチラーゼ(AADAC)が肝毒性や腎毒性が副作用として報告されている前立腺癌治療薬フルタミド、解熱鎮痛薬フェナセチン、抗結核薬リファマイシンの加水分解を触媒することを明らかにし、薬物代謝においてもAADACが重要であることを明らかにした。また、HNF4・、SHP、FXRなどの転写因子および核内受容体を介して胆汁酸によりAADAC発現量が低下することが明らかとなった。