著者
ハヤシ ブライアン マサル 安武 留美
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は戦後のアジア系アメリカ人の「白人化」(whitening)プロセスに対し、第二次世界大戦期間中にOSS(Office of Strategic Services戦略情報局)に加入したアジア系アメリカ人はアメリカエリートとのコネクションをもっていたにもかかわらず、大きな影響を与えていなかったことを判明した。
著者
松枝 美智子 安酸 史子 中野 榮子 安永 薫梨 梶原 由紀子 坂田 志保路 北川 明 安田 妙子
出版者
福岡県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

独自に作成した精神障害者社会復帰促進研修プログラム(案)を、後述の1)-4))は看護師3-5名、5)は看護師3-4名、臨床心理士0-1名、精神保健福祉士1名(2回目は代理者)、作業療法士1名で、各2回計10回のフォーカスグループインタビューで検討した。研究協力者のグループから出された、(1)言葉の定義を明確に、(2)簡潔明瞭な表現に、(3)研修対象者を明確に、(4)コース間に順序性がある可能性、(5)フォローアップ研修の期間や頻度を明確に、(6)タイトルを短く興味をひく表現に、(7)受講生がエンパワーメントされるようなグループワークに、(8)受講生の募集方法が課題、(9)受講生同士のネットワーク作りも同時にできると良い、などの意見をもとにプログラムを修正した。各コースの名称は、1)看護観と援助への動機づけ育成コース、2)システムを構築し改良する能力の育成コース、3)直接ケア能力育成コース、4)患者イメージ変容コース、5)ケアチームのチームワーク促進コース、である。本プログラムの特徴は、(1)受講希望者のレディネスや興味に従って受講できる5つのモジュールで構成されている、(2)グループワークを重視した参加型の研修である、(3)On-JTとOff-JTを組み合わせて実践に直接役立つ、(4)フォローアップ研修と大学の教員のコンサルテーションや受講生同士のピアコンサルテーションにより受講生やケアチームの継続的な成長を支援する、(5)現在精神保健医療福祉の分野で急務の課題であるケアチームのチームワークを促進する、(6)精神障害をもつ人の社会復帰の経験に学ぶ内容が含まれている、(7)一つの研修を受けることで他の研修で目的としている各種の能力育成に波及効果が期待できる、の7点である。本研修プログラムは、院内研修、職能団体での研修、教育機関によるリカレント教育など、様々な場や状況に応じて修正して活用できる可能性があり、実施により精神科に10年以上入院している人々の社会復帰促進につながることが期待できる。
著者
山口 泰雄 野川 春夫
出版者
神戸大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

平成7年度は、まず、平成6年度に実施した「ふるさと創生一億円事業」に関する質問紙調査によって回収したデータ分析を行い、内容を検討した。その結果、ふるさと創生一億円事業の社会効果と経済効果が明らかになった。続いて、市町村における「体育の日」のスポーツ行事の実施状況および都道府県民「スポーツの日」の設定資料を文部省生涯スポーツ課から入手した。さらに、体力つくり優秀組織として表彰(内閣総理大臣賞、総務庁長官賞、体力つくり国民会議議長賞)を受けた自治体に関する資料を(財)健康・体力づくり事業財団から入手した。平成六年度に続き、スポーツ都市づくりを積極的に進めている都市に対して、現地調査とヒアリングを行い、関係資料を収集した。また、スポーツ都市宣言を行っている自治体に関する資料を集めた。この資料は、平成元年度までのデータであったため、47都道府県の教育委員会に対して「スポーツ・健康都市宣言」に関する質問紙調査を実施した。調査の結果、スポーツ・健康宣言都市は351市町村あり、全国の自治体の10.7%が宣言を行っていることが解明された。また、スポーツ・健康に関する自治体宣言の内容を分析し、それぞれ8つのタイプに分類した。これらのデータを総合的に分析し、スポーツ都市の類型化を行った。すなわち、1)イベント型、2)施設・キャンプ型、3)スポーツリゾート型、4)スポーツ種目型の4つのタイプである。これまでの研究成果をもとにして、4つのタイプに類型化される代表的な市町村を抽出し、一覧表を作成した。平成6年度と平成7年度の研究成果を総合して、研究報告書を発行し、関係団体・機関へ送付した。これらの研究成果は、学会発表をするべく準備を行った。
著者
宮本 寛子
出版者
千葉大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

2006/2007年のシーズンまでに、IceCube検出器は計22本のストリングが建設され、2007年8月より完成時の約30%の体積でデータを取得し続けている。2007/2008年のシーズンでは、18本のストリングが完成し、昨年度の建設速度を更に凌ぐ勢いで進められた。データを解析する際、頻度の少ない高エネルギー事象を確実に取り出すため、膨大なバックグラウンドの除去が必要であるが、そのために、再構築された事象の始点と角度を用いて、その事象がIceCubeのターゲットボリューム内で起こった事象かどうかを判断するプログラムを開発し、シミュレーションデータと合わせて解析を進めた。昨年に引き続き、AMANDA-II、9ストリングIceCube(IC-9)での解析を進め、共同で論文を発表した。また、詳細に較正した光検出器(GoldenDOM)を南極へ送り出し、同様に氷中に設置されたスタンダードキャンドルである窒素レーザーからの信号のデータを合わせて、氷の特性を含めたデータの解析手法を構築すべく解析が進行中である。また、これまでに詳細な測定を行って来たPMTの較正に関する測定、解析の方法、及びデータ、系統誤差などをまとめた論文を近々発表する予定である。
著者
木村 拓也
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

テストによる品質保証が教育において求められている中で、「テストの専門家」は戦後減少の一途を辿り、「テストの専門家」の供給源も1 大学と限定されてきた現状が明らかとなった。結果、日本の公的テストを支える人材は限られており、少数の者の労苦と彼らのマンパワーに支えられている現状が浮き彫りになった。テスト学会会員対象に行った調査では、多種多様な分野からの参入が浮き彫りになり、様々なレベルでの「テストの専門家」の養成に努めなければならない事態であることが確認された。
著者
木村 拓也
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

近年、高等教育の質的保証が求められてくる中、今後、継続的な大学生調査が学内外で行われることを前提とし、学内外での調査同士の結果を比較可能なように等化したり、異なる年度に行われた調査を等化したりして、学習成果の経年変化を統計的に妥当な方法で検証できるようなアセスメント・モデルを構築した。試みに、大学満足度を例に、その経年変化及び学年毎の変化する満足度の状況を明らかにした。その結果、全国的な傾向として、満足度が1年次から2年次に向けて落ち込むことが分かった。ただし、1年次には、大学満足度が低くとも、学年進行が進むにつれて上がっていく大学も見られた。
著者
尾城 隆 竹山 春子
出版者
東京水産大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

1.産卵ホルモン(CDCH)の筋収縮作用の検討:精製CDCHを用いたin vivo投与では、排卵誘発効果を確認できなかったが、CDCHを多量に含む脳交連(COM)のリンゲル液抽出物は、in vitroで両性生殖腺(一部)から放卵を誘起した。さらに、両性生殖輸管後端部の生体外収縮・弛緩を電気生理学的手法で記録し、その筋収縮効果を直接証明できた。2.卵母細胞の減数分裂抑制因子のin vitroでの解析:排卵された卵細胞は、体内受精後輸卵管に入る直前まで不定形で胚胞を有するが、摘出して生殖腔液よりやや低張なリンゲル液、ヘモリンパ液、および蒸留水中に移すと、直ちに吸水して球形となり、続けて正常な成熟分裂と発生とを行った。しかし、実際のGVBDは産卵直前まで、極体放出と卵割は産卵直後まで抑制された。この抑制は、卵細胞を包むカプセル構造(囲卵腔液+卵膜)によることが判明した。産卵直後の卵をカプセルごと0〜1000mMのマンニトール液に浸すと、極体放出・発生は体液より高張の140mM以上で起こらず、低張液でのみ起こった。また種々の溶液への浸漬実験では、卵膜は卵白など高分子物質を通さず、低分子物質のみを速やかに通した。すなわち、体内では種々の電解質や低分子物質による浸透圧差は生じず、囲卵腔液はコロイド物質で周囲の体液より高張となる。実際、輸卵管内で卵膜は常に膨張状態を保ち、囲卵腔液は体液より高張で、その結果極体放出・発生は体内では抑えられるが、淡水中に放卵されカプセル内の浸透圧が低下すると誘発されると考えられる。3.卵白腺に対するエクジソンの分泌促進効果の検討:産卵中の親貝をβ-エクジソン溶掖に浸漬すると、産出卵のカプセル容積全体が増加する傾向を示すことから、エクジソンが卵白分泌を促進するものと推定された。4.エクジソンレセプクー遺伝子のクローニング:卵白腺を含む生殖器官系からmRNAを抽出し、RT-PCR法で増幅したcDNAをクローニングし、そのシークエンスを解析した。その結果、Drosophilaにおけるエクジソン応答タンパク質(E74B)、および接着タンパク質(Lgp-1)などに相同性の高い配列を得たが、エクジソンレセプクー遺伝子そのものは得られなかった。5.ヘモリンパ中のエクジステロイドの変動(HPLC-EIA法):CDCH放出推定時刻より、ヘモリンパ中のβ-エクジソン濃度は急激に増加し、卵の梱包(packaging)初期、すなわち卵白腺の分泌期に最大となり、以後急激に減少した。α-エクジソン濃度は遅れて増加し、卵莢膜腺分泌期から産卵直前にかけて最大となった。β-エクジソンは卵白による卵の梱包を促すことを介してそのGVBD・発生を抑制し、α-エクジソンは産卵直前のGVBDを直接・間接的に誘起する可能性が示唆された。
著者
阿部 正紀 半田 宏 日比 紀文
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

1.粒径を制御したフェライト・ナノビーズの開発:10-100nmの範囲で粒径を制御したFeフェライト(Fe_3O_4-γFe_2O_3固溶体)ナノ微粒子を作製する共沈法、部分酸化法、種成長法を開発した。2.ポリマー被覆ポリマー被覆フェライト・ナノビーズの開発:フェライト・ナノ微粒子を、たんぱく質の非特異的吸着が少ないポリGMAで被覆する共重合法および、乳化剤を用いない重合法を開発した。3.ポリマー被覆Feナノビーズの開発:フェライトより2倍も強い磁化を持つ金属Fe微粒子(粒径7-20nm)をポリGMAで被覆して、バイオスクリーニングに適した磁性ビーズを作製した。4.バイオスクリーニングによる分析の応用展開:ポリGMA被覆フェライト・ナノビーズ表面に、抗ガンや、タグ付きプロテインGを含む組み替えたんぱく質などを固定し、それらと相補的に結合するレセプターや抗体を高効率で単離することによって、我々のビーズが高速・高収率バイオスクリーニングに適している事を示した。5.ホール・バイオセンシングによる診断への応用展開:ポリGMA被覆フェライト・ナノビーズ表面にNA単鎖を固定し、これをホールセンサー表面に固定した相補的DNA単鎖と結合させて検出し、我々のビーズがDNA診断に活用できる事を示した。6.MRI造影剤による診断への応用展開:フェライト・ナノ粒子表面を多彩に修飾・加工する技術を開発した。その結果、粒径が約20nmで、表面が特定組み換えたんぱく質で被覆された新たなMRI造影剤候補物質を開発した。7.抗ガン磁気ハイパーサーミアへの応用展開:フェライト粒子を用いて、大腸癌細胞を非侵性の周波数180Hzの交流磁界によって誘導加熱してその殺傷効果を確認し、非侵性抗がんハイパーサーミアへの応用の可能性があることを明らかにした。
著者
岩佐 和晃
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

物質の性質・新機能を明らかにする基礎科学分野において、温度などの環境の変化に伴う物質の状態変化である相転移の研究が必要である。磁性や電気伝導性の相転移に伴い物質の原子配列(結晶)構造をも変化する現象が見られる。本研究では、希土類元素と隣接原子から供給される電子が互いに強く混ざり合う化合物における電子相転移と結晶構造変化の物理的機構について、構造的なダイナミクスの観測から明らかにすることを試みた。
著者
渡部 真人
出版者
株式会社林原生物化学研究所
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

目的:モンゴル国ゴビ砂漠に分布する白亜系から採集された恐竜の卵殻化石の内部微細構造を観察し、その分類学的位置を同定すること。方法:採集した卵殻化石標本の薄片(プレパラート)を製作し、それを偏光顕微鏡で観察した。また、卵殻の外部、内部表面、破断面を実体顕微鏡で観察し、顕微鏡写真を撮影して、そのデータに基づき記載した。さらに、従来報告されているモンゴルおよび中国産の恐竜卵殻化石と比較し、モンゴルの卵殻化石標本の分類学的所属を同定した。成果:従来モンゴルの中生界から発見されていなかった新しい種類の卵化石の存在を明らかにした。それは、ゴビ砂漠東部、バインシレ産地に露出する部白亜系下部から発見されたものである。その新発見の卵化石は、中国の下部白亜系および上部白亜系から発見されているDictyoolithus属に同定された。しかし、卵殻の内部の多層構造およびサイズにおいて中国産のものとは区別され、新種である可能性が高い。詳細に卵殻の内部構造を薄片において観察したところ、従来の記載ではその種類の分類群の特徴を説明するのは不十分であることが判明した。新しい形質(特徴)を認めることができた。この成果は、2011年1月、高知大学で開催された日本古生物学会第160回例会で口頭発表した。それをもとに、現在、海外の学術雑誌に投稿するべく論文を執筆中である。また、同産地からさらにもう1種類新しい分類群を発見した。この標本については、東京学芸大学佐藤環准教授の卒論生2名の研究テーマとして提供した。その成果は、今年の6月の日本古生物学会総会で発表予定である。さらに、モンゴル卵殻標本を、岡山理科大学西戸教授の卒論生の研究テーマ(微細構造についてのカソードルミネッセンス分析)として提供し、その内部構造を元にした分類手法を指導した。内部構造において、結晶構造の変化および軽元素の濃集を発見した。この研究テーマについては研究代表者と大学との共同研究として継続していく予定である。
著者
小川 亜弥子
出版者
福岡教育大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

研究実施計画にもとづき調査をすすめ、史料をフィルムに撮り、焼き付け(A5・CH版)を行い、整理・解読・検討を遂行した。最大の成果は、幕末期洋学の軍事科学化を飛躍的にすすめた存在として不可欠である長崎海軍伝習所について、その教育の具体的内容を明らかにできたことである。同所におけるオランダ人教師による実地教育については、主に、勝安房『海軍歴史』巻之三・四・五(海軍伝習之上・中・下)、カッテンディーケ『長崎海軍伝習所の日々』、赤松範一『赤松則良半生談』、秀島成忠編『佐賀藩海軍史』、島津家編纂所編『薩藩海軍史』上巻、藤井哲博『長崎海軍伝習所』などに収められた資史料に依拠して、教師及び直伝習生の氏名・構成、伝習期間・方法、教授科目・時間割・規則・心得などを明らにすることができよう。しかし、教育実態の究明には、根本的に史料上の制約が大きく、研究の遅滞が生じていたというのが現状である。こうしたなかで、調査実施の一環として、佐賀県立博物館において、同所での軍艦運用術の伝習内容と思われる史料「操練所伝習」を発見し収集できたは意義は大きい。本史料は、保存状態は良好で、「ブラムステング之揚方」「パルヅーン之成立」「ワント之成立」「ブレガット之ワント掛様ノ図」「セール之区別」「帆木綿之用法」などについて、それぞれ図入りの詳細な説明がみられ、軍艦運用術の直伝習の模様をつぶさに知ることができる貴重なものである。これまで、同所に関する新史料の出現は皆無に近かっただけに、幕末期洋学の軍事科学的展開を究明する上で、その基盤拡大に大きく資することができるものと考えられる。技術的な内容が高度に専門化しているため、現在、科学史家と連携した研究体制を継続中であるが、近く成果を打ち出す予定である。
著者
松田 厚範
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

今年度は、高温相を持たない硫酸水素カリウム(KHSO_4)とリンタングステン酸(WPA)の複合体をミリング処理により作製し、得られた複合体の構造および導電率をCsHSO_<4->WPA系複合体と比較し、ヘテロポリ酸-硫酸水素塩系複合体の構造とプロトン伝導性について検討を行った。χKHSO_<4->(100-χ)WPA複合体の無加湿条件における導電率の導電率は、KHSO_4含量によって大きく変化した。WPA(χ=0)およびKHSO_4(χ=100)の無加湿条件下における伝導性は低く、100℃での導電率はそれぞれ、1×10^<-7>S/cmおよび5×10^<-6>S/cmの値であった。しかしながら、KHSO_4含量が80mol%以上になると、導電率が上昇し、χ=90および95の複合体では、160〜50℃の範囲で1×10^<-2>〜1×10^<-3>S/cmの非常に高い導電率を維持することがわかった。伝導の活性化エネルギーは23kJ/molと見積もられ、先に報告した90CsHSO_<4->10WPA複合体よりも低いことも明らかとなった。超プロトン伝導相を持たないKHSO_4とWPAの複合体が、高温超プロトン伝導相を持つCsHSO_<4->WPA系複合体と同様に、室温から160℃程度の広い温度範囲で高いプロトン伝導性を維持したことから、WPAのケギンアニオンPW_<12>O_<40>^<3->とKHSO_4あるいはCsHSO_4のHSO_4^-アニオンがブレンステッド酸-塩基対の形で水素結合を形成することが導電率の向上に関係していると考えられる。以上の結果より、中温無加湿条件下で高いプロトン伝導性を示す材料を合成するには、オキソ酸とヘテロポリ酸の間に形成される、水素結合ネットワークを設計することが、本質的に重要であり、必ずしも超プロトン相が関与する必要はないことが実証された。
著者
丹尾 安典 青木 茂 岩切 信一郎 谷田 博幸 森 仁史 安松 みゆき 阿利 直治 岡谷 公二 奥間 政作 尾崎 有紀子 河田 明久 喜夛 孝臣 顔 娟英 向後 恵里子 迫内 祐司 志邨 匠子 瀧井 直子 滝沢 恭司 増野 恵子 村松 裕美
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、日本の近代文化における「南方」概念の形成を、その視覚表現において分析し、日本の造形文化の展開に及ぼした影響を考察する基礎的な研究である。調査の対象は、沖縄、台湾、東南アジア等をふくむ広範囲な地域にわたる「南方」である。そこで生成した多様な「南方」の視覚表象を、データベースの作成をすすめながら総合的に検証し、これらの成果に基づいて「南方」イメージの形成と変遷を具体的に考察した。
著者
窪寺 恒己 天野 雅男 篠原 現人 西海 功 天野 雅男 篠原 現人 西海 功
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、大型トロールネットや深海探査艇による大規模な調査とは異なり、日本の先進技術であるマイクロ電子機器を組み込んだ超小型・軽量の水中撮影システムおよび赤色系LEDを用いた照明機器を用い、深海環境への撹乱を最小限度に止めることにより、中深層性大型頭足類のみならず深海性動物の自然状態に限りなく近い生態を撮影・記録し、それらの実態に迫ることを目的としている。平成18~20年度の3年間、後藤アクアティックスと共同で開発した深海HDビデオカメラシステム3台を用いて小笠原父島周辺海域において、地元の漁船を傭船して各年9月から12月にかけて約4週間の野外調査を実施した。水深600~1100mの3層にシステムを降し、延べ120時間を超す撮影を行い、アカイカ、ヒロビレイカ、ソデイカ、カギイカなど中・深層性大型イカ類の遊泳行動や餌を捕獲する行動などがハイビジョン映像とした詳細に記録された。また、ヨシキリザメ、シュモクザメなど大型魚類の遊泳・攻撃行動も撮影された。これらの映像をコンピュータに取り込み、フレーム単位で詳細に行動様式の解析を行い、それら中深層性大型頭足類の行動生態に関する多くの新たな知見が得られた。また、平行して行われたマッコウクジラの潜水行動を探る超小型バイオロガーを用いた調査では、数回にわたりロガーの装着に成功し、マッコウクジラが日中は水深800~1000mに繰り返し潜行し、夜間は500~600mと浅い水深に策餌層を変える行動が明らかにされた。さらに、三次元加速度データから餌を襲う際の詳細な行動様式に関する新たな発見がなされた。
著者
三浦 佑之 栃木 孝惟 中川 裕 荻原 眞子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

多くの民族や地域において、口承文芸が衰亡に瀕し忘れられようとしている現在、一方では、国家的、民族的なアイデンティティ発揚のために英雄叙事詩が見直されている場合もあり、英雄叙事詩を学際的に考察することは緊要の課題である。しかも、ユーラシア大陸の西の果てから日本列島に至るまでのさまざまな民族に語り継がれてきた英雄叙事詩を考えることは、単に口承文芸研究という狭い領域にとどまらず、それぞれの民族や地域の言語・文化・歴史・生活の総体を見通すことだという点において重要であり、今回の共同研究「叙事詩の学際的研究」によって、我々は多くの知見を得ることができた。4年間にわたる研究期間に、我々は、20回以上の研究発表を行い、さまざまな議論を交わすことができた。そこで取り上げられた地域(あるいは民族)は、カザフ・ロシア・モンゴル・シベリア・中国東北部・アイヌ・日本など、ユーラシア全域を覆っていると言っても過言ではない。そして、その議論の中で、叙事詩や口承文芸の様式や表現について、多くの時間を割いて議論をくり返したのは当然であるが、その他にも、語り方や語り手、伴奏楽器の有無、その継承の仕方、語ることと書くことなどについても意見交換を行うことで、それぞれの地域や民族における差異と共通性について、多くの有益な成果を得ることができたのである。もちろん、今回の共同研究だけで、ユーラシアの叙事詩や口承文芸のすべてを理解したとは言えないが、興味深い研究発表と長時間の質疑を通して、我々が、今後の研究の大きな足掛かりを手に入れたのは間違いないことである。その成果の一端は、報告書『叙事詩の学際的研究』に収めた研究論文5篇と、口承資料の翻刻4篇に示されているが、今後も、その成果を踏まえて叙事詩研究を深めて行きたいと考えている。
著者
足立 幸男 竹下 賢 坪郷 實 松下 和夫 山谷 清志 長峯 純一 大山 耕輔 宇佐美 誠 佐野 亘 高津 融男 窪田 好男 青山 公三 小松崎 俊作 飯尾 潤 飯尾 潤 立岡 浩 焦 従勉
出版者
関西大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

環境ガバナンスを支える民主主義の理念と制度について検討をおこない、その結果、以下の点が明らかとなった。第一に、適切な環境ガバナンスを実現するには、将来世代の利害に配慮した民主主義の理念や制度のあり方を生み出す必要がある。第二に、政治的境界と生態系の境界はしばしば一致しないため、そうした状況のもとでも適切な環境ガバナンスが実現されるような制度的工夫(いわゆるガバナンス的なもの)が必要となるとともに、民主主義の理解そのものを変えていく必要があること。第三に、民主主義における専門家の役割を適切に位置づけるためにこそ、討議や熟議の要素を民主主義に取り込む必要があるとともに、そうした方向に向けた、民主主義の理念の再構築が必要であること。第四に、民主主義を通じた意識向上こそが、長い目でみれば、環境ガバナンスを成功させる決定的に重要な要因であること、また同時に、それを支える教育も必要であること。以上が本プロジェクトの研究成果の概要である。
著者
曽根 悟 水間 毅 高野 奏
出版者
工学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

純電気ブレーキの第一段階としての,電動車の電気ブレーキを停止まで用いることについては,新京成電鉄に続いて小田急電鉄,東急,名鉄,JR東日本など,採用に踏み切る鉄道が急速に増えている。しかし,このことは本研究がねらっていることが既に不要になって実用化が進んでいる訳ではなく,現状は全て狭義の「純電気ブレーキ」である,通常の運転に摩擦ブレーキを使わないものではなく,広義の純電気ブレーキの一種である停止まで電動車の電気ブレーキを使う方式であって,今後の本格的な「純電気ブレーキ」化にむけて,本研究の重要性が一層増してきたことを意味している。最初の2年間の研究で過走に対する対策の確立に向けての議論がほぼできあがったので,最終年度である平成15年度には,回生ブレーキの能力を有効に発揮させるための対策としての,饋電システムのあり方や列車群の運転法などに議論の中心を移し,併せて車両が持つべき回生能力やMT比についての検討を進めた。純電気ブレーキが順調に普及している現時点では,これらのことを含めた総合的な報告にまとめることの必要性が高いと判断されるので,報告書には本研究期間の3年間以前からの分も含めて,現時点での純電気ブレーキ化に必要と思われる主要な技術情報を網羅する形で,以下のようにとりまとめることにし,多くの鉄道事業者やメーカに配布する予定である。1.「純電気ブレーキ」とその実用化のステップ2.停止までの電気ブレーキの実現3.回生モードの電気ブレーキの確実性・信頼性4.回生失効対策5.純電気ブレーキによる特性改善の可能性6.純電気ブレーキ能力の現実的制約7.滑走の発生とその対策8.速度・位置検知誤差の問題とその対策9.高速回生能力の制約と現実的活用法10.MT比と使用可能な減速度11.高速回生能力を格段に高める方法12.運転特性改善のための簡易自動運転の提唱13.運転特性改善のための手動運転の補助14.純電気ブレーキの将来構想
著者
柴田 久
出版者
福岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

平成18年度における研究実績は以下の2点にまとめられる.1.道路整備事業における環境アセスメントの現状と課題に関する研究本研究では先進国の環境アセスメントの現状把握と福岡高速5号線を事例とした実態調査から,道路整備事業に対する環境アセスメント手続の課題について検討を行った.本研究で得られた知見を以下にまとめる.(1)整備区間の長い道路事業においては,計画路線全区間における連続的な環境影響評価が不可欠であり,道路がもつ広範な影響を考慮しても重視すべきと考えられる.また,住民のアセス書に対するアクセス性の向上や事業者の持つ情報の分かりやすさと透明化を吟味する必要性が改めて重要と考えられる.(2)事例調査より面的に区間内の基準値を重視する現行の環境アセスメント方法において,断面的観点からの分析が不十分であり,高さごとの影響予測に関しては限界が指摘される.事業推進と共に,都市計画決定手続の際に行われた環境アセスメントの結果を周辺土地利用や高さ規制などの施策に反映させることが重要と考えられる.さらにアセス情報を地域住民に早い段階から前もって周知しておくことで,事業を巡る周辺環境の変化から起こる予測誤差を防ぐなど,住民とのコンフリクト予防に寄与することが考察された.また都市計画に対してアセス知見を効果的に反映させるためには,事業内容の決定前にアセスを行うことが肝要であり,簡易アセスとティアリング(ただし環境アセスメント結果の有効期限の設定が必要)による環境アセス一連の流れが不可欠と考えられる.2.成果のまとめと発表06年度土木計画学研究発表会(春大会)において「合意形成プロセスと完成した空間デザインの質的事後評価にみる参加型整備事業の課題に関する考察」を発表,さらに土木学会論文集に「都市基盤整備におけるコンフリクト予防のための計画プロセスの手続的信頼性に関する考察」が掲載された.
著者
小澤 紀美子 原子 栄一郎 樋口 利彦 小川 潔 森茂 岳雄
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究は、1999年より北京師範大学と東京学芸大学の共同研究で持続可能な社会の構築をめざした環境教育の推進のための教師研修の内容、実施体制などの課題を分析し、さらに国際的な環境教育の理論的根拠などを歴史的背景も含めて分析し、教師への意識調査、具体的な授業実践の比較などから、日本及び中国における環境教育の理論、内容、方法などに関する到達点とその課題の明確化を目的に進めてきた。中国の環境教育は大きく4段階でその進展がとらえられるが、環境教育推進の原点は、1996年12月に制定された「全国環境宣伝教育行動綱要(1996年〜2010年)」にある。そのカリキュラムはイギリスの影響を受け、統一的なカリキュラム展開となっている。その原則は、啓発性の原則、参加性の原則、浸透性の原則、批判性の原則となっている。日本の環境教育は、50年代に始まるが、70年代後半から80年代前半の国際的な動向に後れをとり、90年代後半から大きな進展がみられる。日本では特に社会科、理科、家庭科等の教科と「総合的な学習の時間」での環境教育の実践が多いが、中国では浸透教育や選択教科などで展開されている。日本では、環境教育の推進の主体が多様化している。また、その内容の多様性、各種主体(教育界、行政、市民、NGOなど)の協働による新局面が期待されており、教員研修における方法、内容、評価システムを確立が望まれる。報告書は、1章:日本及び中国における環境問題と環境政策の変遷、2章:環境教育の概念の変遷、3章:教育課程の変遷とその背景、4章:教育課程における環境教育の動向、5章:環境教育にかかわる教師の意識調査、6章:環境教育の実践と分析、7章:教師研修の現状と課題、8章:日本及び中国の環境教育の方向、といら構成で各国の言語と英文で構成されている。
著者
藤光 康宏 江原 幸雄 西島 潤
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、まず熱収支法の中で用いられる地熱流量係数の正確な決定のために、微気象データを連続的にかつ自動で測定する装置を製作した。この微気象連続観測装置を用いて、雲仙地熱地域内の旧八万地獄で観測を行い、熱収支法による放熱量の高精度評価を試みた。その結果、地熱流量係数を連続的に求めることに成功し、得られた地熱流量係数は、時間変化が非常に激しく、分単位もしくは秒単位で変化する値であるということが示された。ヘリコプターに搭載した装置で雲仙地熱地域上空から赤外熱映像を撮像し、得られた地熱流量係数を用いて放熱量を求めたところ、旧八万地獄5.82MW、清七地獄8.87MW、八万地獄9.96MW、お糸地獄9.72MW、大叫喚地獄2.18MW、小地獄1.84MW、雲仙地獄全体では38.39MWとなった。Yuhara et al.(1981)により評価された1978年の放熱量と比較すると、雲仙地獄全体では今回のほうが約5倍大きな値となった。本研究では、地熱流量係数の変動を考慮しているため、今回算出した放熱:量は現在の値を精度よく見積もっていると言える。また、地熱異常面積と放熱量の両者には一般的に良い正の相関が認められるが、今回の結果にも良い正の相関が見られた。さらに、微気象観測で測定される各項目や地熱流量係数の時間変化を把握するために、大分県小松地獄、熊本県阿蘇火山、福岡県九州大学箱崎キャンパスでも微気象観測を行った。その結果、地熱流量係数は短時間に変化しながら日変化が現れるが、地熱異常地域と通常地域とでは日変化のパターンが異なる傾向が見られた。地熱流量係数は時間と共に大きく変動することが判明したため、熱収支法による放熱量測定における過大評価、過小評価を避け、高精度に見積もるためには、現段階では本研究で製作したような微気象観測装置を用いる必要があると考える。