著者
志村 洋
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

従来、諸藩の約4割を占める2万石未満の小藩領の大庄屋については、ほとんど研究がなかった。本研究では、信濃国佐久郡・小県郡の譜代小藩である岩村田藩と播磨国揖東郡の外様小藩である林田藩などを取り上げて、異なる地域における大庄屋制の特質を比較検討した。その結果、①岩村田藩では、割元としての職掌は一部に限られており、陣屋元村名主としての機能が中心であったこと、②林田藩では、大庄屋の職掌は比較的広かったが、藩政に介入するほどの職権は有していなかったことが明らかになった。
著者
古賀 崇
出版者
天理大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、「政府のオープンデータをいかに保存し、その長期的アクセスをいかに保障するか」という観点での制度・政策的課題、および米国連邦政府を中心とした課題解決の試みを明らかにした。研究成果の中で提示したポイントは、以下のような点である。(1)「オープン・ガバメント時代」のもとで政府情報は「メディアとしての多様化」を示しており、その全体像を把握していく必要がある。(2)オープンデータが有する「機械可読性」を、保存においても考慮する必要がある。(3)政府のオープンデータや、官・民によるその加工物の保存は、「ガバナンス」すなわち官・民が交わる統治状況を遡及的に検証することにつながり得る。
著者
大石 学
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

年度計画にもとづき、東京都、群馬県、山梨県、長野県などの史料保存利用機関において、江戸幕府の公文書に関する文献と史料の調査を行った。具体的には、幕府・朝廷間、幕府・藩間、幕府・旗本間、幕府・寺社間、幕府・町間、幕府・村間でやりとりされた史料に注目して調査・収集を行った。今年度は最終年度であるため、これまでの調査の成果を、文献と史料に大分類したうえで、上記のやりとりをもとにした小分類を用いて目録化した。地域史研究の進展の差や、調査地の制約などにより、目録は必ずしも完成されたものにはなっていない。しかし分類法を整理と、基礎的文献や基礎的史料を把握した意義は大きいと思われる。今後、対象地域や機関を拡大することにより目録を充実化させていきたい。これらの史料調査・分析の過程で、日本近世において、18世紀前半に8代将軍徳川吉宗によって展開された享保改革が、江戸幕府の公文書管理の重要な画期であったことが、あらためて確認されるとともに、吉宗の腹心ともいうべき大岡忠相が公文書政策に重要な役割を果していたことが明らかとなった。すなわち、大岡は町奉行時代に江戸の法令を集め、整理した『撰要類集』を編さんするなど幕府の情報蓄積に努め、その後寺社奉行に異動するとともに、公文書の持ち回りシステムを確立したのである。全国の代官所への公文書作成の指示もあわせて、享保改革の重要性があらためて確認された。
著者
ROBERT F.RHODES SARAH J.HORTON
出版者
大谷大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

平安時代中期から後期にかけて、仏教が民衆の間に広まったことは、従来より指摘されている。しかし、仏教の拡大において、比叡山などで行われた「講」が大きな役割を果たしたことは、あまり注目されてこなかったように思われる。本研究では仏像の宗教的・社会的役割を解明するために、平安時代から鎌倉時代に行われた各種の講に焦点を当て、仏教儀礼の研究を行った。その結果、平安・鎌倉時代における仏像の宗教的・社会的役割がごある程度把握できたと考える。この研究を進める上で、二つの方法を採用した。一つは文献的研究である。この一年間をかけて研究分担者のホートン教授とともに、いくつかの講式(仏教儀式の時に用いられる式次第)や説話集に散見する仏像や仏教儀礼の記述をに関する解読作業をおこなった。取り上げた文献の主なものは『日本霊異記』、『法華験記』、『今昔物語集』、永観の『往生講式』などであったが、それに加えて『源氏物語』や『枕草子』に見られる仏像に関する記述や『矢田寺縁起絵巻』なども検討した。第二の方法として、平安時代・鎌倉時代の仏像を安置する寺院で行われている儀式に参加し、調査を行った。特にホートン教授は、ほぼ毎週近畿圏で行われている各種仏教儀礼に参加し、その様子を写真やビデオに納めた。また、その際には住職や一般信者に聞き取り調査も行った。特に興味深かったのは、奈良の薬師寺や京都の知恩院と清浄華院で行われる仏像の身拭い式であったが、その他にも奈良の伝香寺の有名な年中儀礼である裸地蔵の着替え式や京都の本能寺で行われる放生会にも参加することができた。
著者
吉川 泰弘 稲葉 睦 浅井 史敏 尾崎 博 遠藤 大二 澁谷 泉 山下 和人 北川 均 新井 敏郎 高井 伸二 杉山 誠 上地 正実 鎌田 寛
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

わが国の全16獣医系大学における参加型実習に入る段階の学生の質を全国一定水準に確保することを目的とし、知識を評価するCBT (Computer-Based Testing)と技能と態度を評価するOSCE (Objective Structured Clinical Examination)の二つからなる獣医学共用試験について、CBT問題作成システム、問題精選システム、問題出題システム、評価システムを開発し、平成25年と26年に渡り、16大学を対象としてCBTトライアルを実施した。同時に、OSCE試験の態度と技能を確認する医療面接試験並びに実地試験を開発した。
著者
荒川 隆史 木村 勝彦 山田 昌久 赤羽 正春 吉川 昌伸 吉川 純子 高田 秀樹 大野 淳也 布尾 和史 向井 裕知 門口 実代 益子 貴義 千代 剛史 市村 真実 猪狩 俊哉 沼田 早織 根本 麻衣
出版者
(財)新潟県文化振興財団(歴史博物館)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

縄文時代においてクリは重要な食べ物のひとつであり、建物の柱にも多数利用されていた。しかし、クリの木を切ると実は採れなくなってしまう。縄文人はこのバランスをとるためクリとどのようにつき合っていたのか? この謎を解き明かすため、縄文時代のクリ材の加工技術や年輪の特徴を調べるとともに、現代におけるクリ林の利用方法や年輪・花粉などの基礎的データを収集した。これらをもとに縄文時代のクリ利用システムを研究するものである。
著者
柴田 愛子 曽山 典子 岡村 誠 森 徹
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

我々の研究は、法や規則やモラルに反した行為、例えば、いじめが行われている状態を考える。この違反行為を知りながら傍観する傍観者達の行動を進化的非協力ゲームとしてモデル化し、実験で検証した。この理論によれば傍観者が(1)いじめを報告する(2)報告しない(3)確率p^*で報告するの3つの状況はNash均衡である。しかし、3番目の均衡は進化的不安定な均衡(evolutionarily unstable equilibrium)である。そして、日本人大学生を対象とした8回の実験結果から、いじめを排除するサービスは公共財であり、傍観者の生徒からのいじめについての報告が増える条件は、(1)いじめを報告したときの費用(仕返し等)が小さい。(2)生徒がいじめを傍観することから受ける不効用が大きい(3)教師がいじめを取り上げるのに至る必要な最小報告生徒数が少ないことなどが判明した。しかし、最も重要な結論は、(4)クラスの規模が小さくなれば、協力的行動が増え傍観者が減る結果である。この結論は学校のクラスの小人数化政策を支持する。3回の国際学会で報告され、カルフォルニア大学のDaniel Friedmanとイエール大学のShyam Sunderが高く評価した。(論文は英文で投稿中)これらの結果が、日本人に特有なものか否かを調べる為に、現在までに3回の国際混合実験が行なわれた。実験1は関西学院大学(1998.9.24)で、日本とドイツの大学生10名ずつ、実験2はドイツAugsburg大学(1999.9.6)で、日本人大学生10名、ドイツ人大学生8名日本人留学生2名、実験3が天理大学(2000.11.8)で日本、中国、台湾の大学生を40人集めて実施された。その結果、事前協議効果は同国人と外国人に関係なく存在する。また、異なる国籍のメンバーが同一グループを形成する場合、信頼感が薄くなることが判明した。
著者
奥野 淳一 三浦 英樹
出版者
国立極地研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

南極周縁域の大陸棚の深度は,一般的な大陸棚の深度より著しく深いことが知られている.この原因は,南極氷床が地球表層における荷重として作用することで,その縁辺域を沈降させているという仮説がある.本研究では,地球の粘弾性的変形を考慮したグレイシャルアイソスタシーのモデルを用いて,南極氷床荷重を変動が大陸棚深度に与える影響を調査した.数値シミュレーションの結果,現在の氷床分布を表面荷重と仮定すると,南極縁辺域の大陸棚深度の異常を説明することができないことが判明した.しかし,過去に現在の氷床分布より拡大した時期があると仮定した場合,南極縁辺域の大陸棚深度異常を説明できる可能性を示した.
著者
横井 彩 山中 玲子 森田 学 山崎 裕 柏﨑 晴彦 秦 浩信 友藤 孝明 玉木 直文 江國 大輔 丸山 貴之 曽我 賢彦
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

舌の上に白い苔のように付着している汚れ(舌苔)の面積と、口の中のアセトアルデヒド濃度について、健常者65人(男性51人、女性14人)で調査し、舌苔の付着面積が大きい人は、付着面積が小さい人に比べ、口の中のアセトアルデヒド濃度が高くなることを明らかにしました。その理由として、舌苔に含まれる細菌がアセトアルデヒドの産生に関与していると考えられ、舌苔を取り除く舌清掃を行うと、口の中のアセトアルデヒド濃度が減少することも確認しました。
著者
佐藤 幹代 高橋 奈津子 濱 雄亮 城丸 瑞恵 本間 真理 佐藤 りか (佐久間 りか) 射場 典子 別府 宏圀
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は、慢性の痛みを患う人や家族に面接調査を行い、わが国の文化、社会、保健医療福祉制度背景を踏まえた身体的・精神的・社会的苦悩の体験世界や疼痛対処および医療者-患者・家族の相互理解のありかたを探究する。「慢性の痛みの語りデータベース」を構築する(https://www.dipex-j.org/chronic-pain/)。これらは慢性痛に関する看護学、医学、社会学、保健福祉医療分野における教育および、研究資源として期待できる。
著者
DIPESH KHAREL (2015) DIPESH Kharel (2014) DIPESH Kharel (2013)
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

My PhD research project "A case study of Nepali migrant workers in Japan" will examine the unique characteristics of Nepali migrants working as cooks in Nepali restaurants in Japan, who are categorized by Japanese immigration authority as "skilled labor (cook)". There are already more than a 500 Nepali restaurants in Tokyo, and that number is still increasing.Based on my research plan, I have been in Nepal to conduct my research fieldwork in April 2015. When I was conducting the fieldwork in Nepal, the devastating earthquake hit Nepal in 25th April and 12th May 2015. In the earthquake disaster, I got injured and have lost my fieldwork data as well as fieldwork equipment, however I luckily survive. My house, located in Dolakha district Nepal has completely collapsed due to the earthquake. Because of this unexpected circumstance of the earthquake I could not collect fieldwork data as my research planed. I have again conducted fieldwork in Nepal (Kathmandu and Malma village) for a month (October 2015) to recover my fieldwork data on the migrants’ families’ situation in Nepal. Finally, I have almost completed my fieldwork and task of collecting data. However, I could not write my thesis in the last year because of the earthquake disaster. I was suffered from PTSD (Post Trams Stress Disorder) and still could not concentrate on writing the thesis.I have attended at fives international conferences/workshops/seminars to present my research findings. Using the fieldwork data, currently I am writing my PhD dissertation. I am planning to complete it by next year.
著者
川嶋 周一
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、欧州統合史研究と国際関係史研究を接合し、20 世紀前半における欧州統合認識の形成と変容を、世界認識との関わりから再検討するものである。具体的には、ベルギーの書誌学者・平和活動家のポール・オトレ、機能主義者、連邦主義者の国際秩序観ならびに欧州統合観を取り上げ、その思想の展開に影響を与えた国際状況の相互関係に焦点を当てることで、欧州統合を20 世紀史の中に位置付けることを最終的な目標とする。2017年度においては、ベルギー、モンス市の文書館ムンダネウムに保管されているポール・オトレの個人文書を調査した。そもそもわが国において、オトレを対象とする研究は書誌学および建築学以外において存在せず、本研究で課題とする彼の国際政治認識に関する史料状況を明らかにすることから始めなければならなかった。個人文書調査において、2000頁に渡る所蔵史料の複写を行った。またこの作業と並行して、20世紀前半、とくに戦間期における連邦主義ならびに国際主義に関する先行研究文献の精読を進め、連邦主義と国際主義がヨーロッパ統合や国際秩序への構想に対して、いかなる思想的貢献や影響を与えているかについて検討を重ねた。その部分的成果として、2018年3月初頭に世界政治研究会(於東京大学弥生キャンパス)で研究報告、報告タイトル「ローマ条約の成立とは何だったのか:三次元統合と20世紀史の中の欧州統合の位置付けをめぐって」を行った。この研究報告の準備の中で、欧州統合を20世紀史の中に位置付けるためには最終的に1957年に成立するローマ条約を終点として検討することの必要性を強く痛感した。当初は、20世紀初頭から戦間期を経て1940年代までを研究対象年代として想定していたが、今後は、1950年代後半まで拡張したうえで、ローマ条約に結実する欧州統合を支えた思想についても解明を進めることとする。
著者
杉浦 健之 祖父江 和哉
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

神経絞扼性モデル動物では、温冷水を用いた行動実験では、水への接触の影響が出た。マウス足底皮下へのDiI注入後数週間で脊髄後根神経節細胞までDiIは輸送された。足底に分布する培養神経細胞では、カプサイシンへの反応性からTRPV1を発現した細胞の頻度は比較的少なかった。皮膚と内臓へ分布する神経では、TRPV1の関与と酸に反応するイオンチャネルも異なることが示唆された。最近TRPA1阻害が神経原性炎症を抑制することが報告され、TRPA1の神経分泌能への関与が示唆される。
著者
古荘 真敬
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

初年度以来、我々は、"言語主体としての<私>もまた動物的生命との連続を欠いては生成しえない"という原始的事実の意味を明らかにし、そのことによって、"人間存在と動物存在との絶対的断絶"を語るハイデガー的思考の枠組みを流動化することを目指してきた。昨年度、日本現象学会編『現象学年報20』に発表した論文において、我々は、こうした問題意識のもと、後期ハイデガー哲学におけるラチオ(ratio=理由)概念の批判に学びつつ考察を展開し、いわゆる「理由の空間」の生成こそは、「ニヒリズム」と「Gestell」の結実を準備し、「戯れ」としての本来的「自然」の概念を切り捨てて、我々の「生」と「死」の意味を空洞化した存在史の展開点であったと推察するに至った。今年度、我々は、上記のラチオ概念の批判を承けつつ、1936年から38年に成立した『哲学への寄与論稿』におけるハイデガーのロゴス論の帰趨を検討することを試み、そこにおいて「存在者トシテノ存在者on he onを一者henとするギリシア的な解釈」(GA65,459)へと向けられた彼の批判が、畢竟、いわゆる「共同体」概念を脱構築することを狙うものとして了解しうることを見出した。ギリシア的に根源的なロゴス概念の基底を掘り崩しつつ、彼が狙っていたのは、別言すれば、「我々」という表象を繋ぎとめている「一ニシテ共通ノ世界」(ヘラクレイトス断片89)を、むしろ本質的に「各自的」で「固有ナモノidion」へと一旦散乱させ、その錯綜的多様体の力動性のうちに「存在」の要求を反復させることであったと解釈される。ハイデガー自身の意図を超えて、この洞察を拡張すれば、それはまた、人間的生(bios)と動物的生命(zoe)の差異が再流動化するさなかにおいて、我々の意味の秩序と自然の秩序との差異の根源が反復され、ある「底無しの没根拠Abgrund」としての「時間」の根源が闡明されることを意味している。『山口大学哲学研究』第13号に発表した拙論「時の過ぎ去り-人称的世界の時間的構造の探究のための準備的考察-」において、私は、この最後の時間論的観点を、狭義のハイデガー解釈の枠組みにはとらわれない仕方で、一般的に展開し、「時の過ぎ去りVergehen」の重層的経験のうちに、我々の「生」と「死」の意味あるいは無意味を、照らし出すことを試みた。
著者
辻 英明 木本 眞順美 比江 森美樹
出版者
岡山県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

大豆アレルゲンGly m Bd 28Kおよび小麦アレルゲンTri a Bd 28Kの糖鎖構造について検討を行い、いずれのアレルゲンもマンノース、N-アセチルグルコサミンを含み、キシロースおよびフコースを含有しており、これらの糖鎖はアスパラ銀結合型糖鎖であり、N-アセチルグルコサミン部分にフコースおよびキシロースが結合していることが示された。しかも、この糖鎖を含むペプチドがこれらのアレルゲンと反応するIgE抗体と特異的に発現することが明らかになった。また、Gly m Bd 28Kのタバコ培養細胞での発現過程で、すでにGly m Bd 28KのcDNAがクローニングされているが、そのcDNAはシグナルぺプチドを含んでいるものの、まだ5'側の非翻訳境域を含め全長構造は不明であり、その構造の解明が必要となり、検討を行った。その結果、従来知られていたシグナルペプチドに新たに3個のアミノ酸残基が追加され、さらに非翻訳領域20塩基が明らかになった。この結果は、タバコ培養細胞での当該アレルゲンの発現の基盤を提供するものである。
著者
加藤 文男 寺田 宙 柴田 尚 杉山 英男 桑原 千雅子
出版者
東邦大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

1.キノコ生息土壌の調査:富士山麓のキノコ生息土壌を採取し、土壌pH,^<137>Cs, Cs, K量を測定した。土壌pHは3.5-5.5と大きく酸性に偏っていた。2.キノコ生息土壌に生息する微生物のCs感受性:13の土壌サンプルについて、生息微生物のCs感受性を調べ、一般に細菌のCs感受性は低く、放線菌は感受性が高いという結果を得た。三宅島で採集した土壌より200mMCsで増殖可能な高度耐性株Streptomyces sp TOHO-2を分離した。3.分離培地のpHの影響:分離培地のpHを5,6,7に調製し、分離される細菌、放線菌の数を測定した.細菌数はpH6で最も多く、pH7の1.6倍、pH5ではpH7の1.15倍であった。放線菌数はpHの低下と共に菌数が減少し、pH7のおよそ50%であった。4,キノコ生息土壌より分離した放線菌のCs取込:これらの菌株に蓄積されるCs量は20mg/g dry wt mycelia程度であった。K202株について菌体内Cs, K量および増殖についてpH5と7で比較すると、Csによる増殖阻害はpH7の方で強く現れ、Cs蓄積量の増加とK量の減少もpH7の方が強く現れた。5.チャンネル阻害剤4-aminopyridine(4-AP)の影響:4-AP存在下でのCs取込量の変化を調べた。4-APによる阻害作用はpH7で強く認められたが、pH5では4-APによるK量の減少は認められたが、Cs量は増加し、増殖にも影響は認められなかった。6.キノコ生息土壌より分離した細菌のCs取込:生息環境に近いpH5でCsによる増殖抑制が強く見られた。また、細胞内Cs蓄積量は調べたいずれの菌株でも5mg/g dry wt前後であり、放線菌の1/4程度であった。7.細胞内Csの局在化:土壌分離放線菌、細菌、いずれの場合も低真空SEMで輝点が観察され、輝点部分にはP. OとともにCsが認められた。輝点以外の領域には、Csのシグナルは観察されず、局在化による毒性の軽減が示唆された。8.ポリリン酸の関与:^<31>P-NMRによりS.lividanns TK24にポリリン酸が存在する事を確認した。ポリリン酸合成に関わるpolyphosphate kinaseをコードする遺伝子ppkの破壊を試みている。
著者
杉山 勝三
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

1ヒスタチン類の唾液内性状: ヒト唾液中のヒスタチン5がヒスタチン3から生成することをin vitroで証明した。ヒスタチン3にα-キモトリプシンを作用させると20分以内にヒスタチン5を生成し、その後更に分解が進み、小さい断片に分解した。この断片化したペプチドは正常のヒト唾液中にも認められた。この知見は腺房細胞で生合成されたヒスタチン3から分泌の過程においてヒスタチン5が生成することを示すものである。2)ヒスタチンのリポタイコ酸に対する作用: グラム陽性菌の表層成分であるリポタイコ酸(LTA)の種々の生物活性に対してヒスタチン類が中和的に作用することを見い出した。この知見は唾液中のヒスタチンがグラム陽性菌に対しても防御的に作用していることを示唆するものである。3)唾液リゾチームの迅速精製法の開発: ヒスタチンの精製過程において唾液リゾチームを迅速に高収率で精製する方法を開発した。この方法はヘパリンカラムクロマトと高速液体クロマトによる2段階法によるもので、精製した唾液リゾチームの分子量は14,690であり、その比活性は卵白リゾチームに比べて約3倍強い活性を示した。4)ヒスタチンの細菌凝集能とリゾチームの増強作用: ヒスタチン類がグラム陰性および陽性細菌を凝集することを見い出し、この凝集が唾液リゾチームによって顕著に増強されることを発見した。これらの知見はヒスタチン類がリゾチームとの協働作用によって口腔内の細菌排除の機構に関与していることを示すものである。
著者
橋本 康弘 土井 真一 根本 信義 佐伯 昌彦 小山 治 橋場 典子 吉村 功太郎 桑原 敏典 磯山 恭子 中原 朋生 渡部 竜也 三浦 朋子 小澤 昌之
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の目的は、日本の中・高校生の持つ法的知識や意見に基づいた法教育プログラムの開発にある。本研究では、日本の高校生を対象とした質問紙調査を実施した。その調査結果では、法知識は正しく有していても、法意見は反対の考え方を示すなど、「法知識と法意見の乖離」が生じている項目が散見された。本研究では、「法知識と法意見の乖離」が生じている「黙秘権」と「自白強要の禁止」について、授業を開発し、それを実施した。
著者
黒河内 宏昌 稲蔭 博子 池内 克史 吉村 作治
出版者
東日本国際大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、エジプト・ギザ遺跡のクフ王ピラミッド足元のピットに解体して埋納されている、今から約4600年前の世界最古の木造船「クフ王第2の船(仮称)」(紀元前2600年ころ)の復原考察を行うことを目的としている。「第2の船」は鉄の無い時代に造られた後世とはまったく異なる構造を持つ船であり、当初は約40メートルの長さを持っていたと思われる大型木造構造船である。またピット内に保管されていたため、部材が100%残存しており、人類の木造構造物の歴史上極めて貴重な遺構である。本研究の方法は次のとおりである。A.まずギザ遺跡の現場において部材をピットから取り上げ、保存修復する。B.次に部材をマニュアル測量し図面とスタディ模型を用いて復原考察を行う。C.また一方で部材を三次元測量し、専用のシステムを開発してコンピューター内で組み立て復原のシミュレーションを行い、B.の結果と比較考察する。D.復原像を表現する方法を研究し、CG、イラスト、模型などで実際に表現する。ギザ遺跡のクフ王の船は2つのピットにそれぞれ1隻ずつ、合計2隻埋納されており、「第1の船(仮称)」はすでにエジプト考古省によって1980年代までに取り上げ、組み立て復原を終えている。我々の対象となる「第2の船」の部材総数は、その「第1の船」と同様であると考えると約1200点と推測される。現場では甲板室や甲板など船の上部構造に属する部材の諸作業を2016年度までに終了し、2017年度からは船の下部構造すなわち船体を構成する大型部材の取り上げを開始した。しかしピット内の保存環境が劣悪であったため、「第2の船」の部材は予想以上に劣化しており、大型部材の取り上げと保存修復、測量の作業のためには、専用の設備を新たに製作し、極めて慎重に行わなくてはならなかった。
著者
斉藤 雅英
出版者
愛媛女子短期大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

1.PHA(後催眠健忘)暗示の潜在記憶への影響について検討することを目的として,催眠感受性検査中に提示された単語についてPHA暗示を与え,PHA解放前およびPHA解放後に単語完成課題をおこなわせた。PHA解放前のターゲット単語の単語完成率を比較すると,催眠感受性高群と低群との間で差は認められず,PHA暗示解放後のターゲット単語の単語完成率を比較しても,高群と低群との間に差は認められなかった。つまり,PHA暗示は,潜在記憶課題に影響しなかったと考えられる。この結果は,先行研究を支持する結果である。ただし,本実験の単語完成率をみると完成率は非常に低く,先行研究の未学習時の完成率と同レベルである。このことから,今回の実験結果は実験手続き上の問題によるプライミング効果の消失であるという解釈の可能性を否定できない。2.被暗示性の測度として状況的な欲求圧力による記憶の変容から被暗示性を測定することができるGSSを用い,被暗示性と催眠感受性との関連を検討することを目的とした。集団式催眠感受性検査(GTHS)とGSSの各得点の記述統計量および両者の相関関数を算出したところ,shiftのタイプII項目においてのみ催眠感受性との間に弱い正の相関が認められ,タイプIIの質問において反応が変遷する人ほど催眠感受性が高いという関連がみられた。しかしながら,GSSの他の得点は催眠感受性との関連は認められなかったことを鑑みれば,総じてGSSにおける被暗示性と催眠感受性は関連しないということが示されているという結論が得られた。3.基本的には記憶に依存している態度や性格について,催眠との関連を検討するためのツールを開発した。催眠が潜在記憶を外部から制御する手続であるととらえた場合,潜在的態度の変化を催眠の使用によりコントロールすることが可能と考えられる。このことから,Web版潜在連合システムにより,今後,催眠と催眠に対する潜在的態度との関連を検討することが可能となった。