著者
澁澤 栄 荻原 勲 千葉 一裕 南石 晃明 小島 寛明
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

土壌情報及び農作業の記録データに基づき,農家の判断プロセスを模倣した農業AIシステムと知農ロボットスキームを提案した。農産物流通プロセスの記録技術を基礎にして,情報付き農産物の新流通スキームとアグロメディカルフーズの生産構想を提案した。本庄PF研究会が生産出荷する「本庄のトキメキ野菜」のブランド化に成功した。生産者と仲買・卸および小売の役割や利害関係の裏付けを入手するのが困難であった。
著者
辻本 豪三 平澤 明 木村 郁夫 奥野 恭史 輿水 崇鏡 足達 哲也 寺澤 和哉
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2007

研究対象(各種がん株化細胞)に対する包括的トランスクリプトーム解析による疾患・治療関連のcRNA/ncRNA群の抽出、それらのネットワーク解析に基づく機能予測、細胞レベルにおける遺伝子発現調節の検証と生物機能学的効果の同定、更にこれらを統合する新たな生命制御機構の発見を目的とする。平成22年度は(1)cRNA/ncRNA包括的トランスクリプトーム解析:昨年度までに構造決定した約2,000種のncRNAに関して、通常のマイクロアレイDNAチップでは検出感度の問題から、低発現量のcRNA/ncRNA群に関してはその量的変化が正確にモニター出来ない可能性があることから、企業と共同研究開発した超高感度DNAチップをプラットフォームに用いて、主としてncRNA,それらの機能対象候補cRNAの量的変化をモニターする新たなチップ解析用ツール開発技術を用いてオリゴDNA合成により相補的プローブを合成してDNAチップに固相化し、miRNAを含む包括的トランスクリプトーム解析チップを作製した。このチップと従来型のチップの機能に関しての比較検証を行った。(2)解析の対象:対象としては、疾患関連cRNA/ncRNA群の解析実験には、各種患者検体より株化された食道がん細胞や乳がん細胞を用い、細胞増殖と各種抗がん剤による作用の経時変化と同時に採取された組織から抽出されるRNAの包括的トランスクリプトーム解析用DNAチップによる発現プロファイル解析を行い、更に各種薬物治療によりこれらの遺伝子群がどのような発現変動を行うかを経時的にモニターし、個体における発現型変動(生理、生化学パラメーター)との相関を一部解析した。食道がんよりバイオマーカー候補を同定し、知財化した。
著者
小野 玲
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、食道癌の診断による食道切除再建術施行患者について、術前より行動変容技法を用いた術前運動指導プログラムを実施することが術後呼吸器合併症予防につながるかを検討することである。対象は、当院食道胃腸外科にて食道癌と診断され、食道切除再建術を施行した患者100 名(男性87 名、女性13 名、平均年齢66.5±8.6 歳)であった。これらを、7 日以上運動プログラムを実施できた群(実施群)63 名(男性44 名、女性9 名、平均年齢67.0±9.3 歳)と実施できなかったまたは7 日未満しか実施できなかった群(非実施群)31 名(男性28 名、女性3 名、平均年齢64.6±7.9 歳)の2 群に分け、術後呼吸器合併症の発症率を比較検討した。主要アウトカムは術後呼吸器合併症の発症率とした。2 群間の比較にはχ2 検定とロジスティック回帰分析を使用し、交絡要因で調整を行った。術後呼吸器合併症は実施群で4 名(6.4%)、非実施群で9 名(24.3%)と実施群において有意に術後呼吸器合併症が低下(p = 0.01)しており、その関係は交絡要因で調整を行っても同じであった(オッズ比; 0.14)。食道切除再建術施行患者において、術前からの積極的な呼吸リハ介入により術後呼吸器合併症が予防できることが示唆された。
著者
高坂 史朗
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

日本は植民地朝鮮と台湾の地に帝国大学を設立した。1924年に京城帝国大学が、1928年に台北帝国大学が設置され、日本の教育制度がそのまま適用され運営された。これは1945年の日本の敗戦まで続いた。その地で「哲学・哲学史」講座を担当した安倍能成と務台理作を中心に「植民地教育」が日本の知識人の思索のどのような影響を与えたかを論じた。また李光来著『西洋思想受容史』を翻訳出版し、その「解題」に東アジア(中国・朝鮮・日本)の西洋思想受容の特色を比較する考察をなした。
著者
森河 裕子 三浦 克之 西条 旨子 中西 由美子 中川 秀昭 北岡 和代 西条 旨子 中西 由美子 中川 秀昭 北岡 和代
出版者
金沢医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

交代勤務特に深夜勤務への適応・不適応(耐性)に伴う健康問題と、適応・不適応に関連する要因を検討した。一製造工場の男性夜勤交代勤務者を対象に全体調査と抽出調査を行った。夜勤交代勤務への適応に最も強く影響したのは年齢であり、慣れによって不適応感が軽減していくものではないことが示された。客観的睡眠モニターから深夜日の睡眠はコマ切れであり、効率の悪い睡眠であることがわかった。不適応者における睡眠以外の健康影響として、疲労蓄積による自然免役能の低下が示唆された。夜勤交代勤務による健康影響の最小化のためには、特に不適応感を抱いている者に対する適切な対応が必要である。
著者
有森 直子 堀内 成子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

人工妊娠中絶につながる出生前検査や母乳を介して病気が感染する可能性のあるヒトT細胞白血病ウィルスI型(以後HTLV-1)の栄養方法選択は、当事者にとって苦渋の選択となる。本研究は、患者やその家族がよりよい決定ができるように支援する看護職のための教育プログラムを検証した。本プログラムは情報提供のみではなく、患者の価値観を考慮した支援のあり方を重視している。受講した看護職は支援について理解が深まり、今後このプログラムがより広く活用されるための示唆が得られた。
著者
谷古宇 尚
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

おもに13世紀から14世紀にかけてのゴシック期のフランシスコ会修道院の建築と絵画を取り上げて, これまであまり研究の対象とされなかった修道院参事会室や修道女席, また回廊などに描かれる絵画図像について, 建築的文脈や当時の宗教的・政治的状況を考慮に入れながら考察した。特にナポリのサンタ・マリア・ドンナレジーナ修道院とサンタ・キアーラ修道院, シエナのサン・フランチェスコ聖堂については, 全般的な調査に基づき, 絵画の図像的な意味と建築の役割を明らかにすることができた。
著者
山口 由二 山口 不二夫
出版者
大東文化大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

研究調査国内の地方自治体について、自治体財政運営の実態調査ならびに資料収集を実施した。特に10月には財政破綻・財政再建準用団体移行を表明した北海道夕張市を訪れ、経理担当者にインタビューするとともに、市の運営する施設を見学した。この調査に関しては『環境創造第10号』「自治体が財政破綻にいたるまでの分析-赤池町と夕張市の財政分析による比較-」(2007年5月刊行)に論文として公表している。データベースの作成本研究の主要課題であるバランスシートのデータベース化に関しては総務省方式でバランスシートを作成し、公表している44都道府県で完成させた。分析結果このデータベースを活用して、山口不二夫の「総務省方式自治体バランスシートの経営分析方法」で、まとめられている、従来の分析指標、柳田(2004)が提案している総務省方式のバランスシートのもとづく分析指標、山口不二夫ならびに山口由二が新たに提案する分析指標を算出した。この結果については報告書巻末に掲載し、利用可能な状態にある。「格付け」などの評価の作業もこのデータベースと分析結果にから可能であり、利用価値の高いものである。今後、このデータベースを毎年更新して、各自治体の時系列分析も可能となる。最近の動向地方自治体のバランスシート作成状況は2006年公表では都道府県レベルでは100%市町村レベルで52%となり、初めて過半数となりかなり浸透してきている。しかし「第三世代の方式」といえる連結バランスシートの作成に関しては市町村レベルではわずか4.1%にすぎず、データベース化して比較分析できる状態にはない。今後の進展に期待する。
著者
神谷 研二 笹谷 めぐみ 飯塚 大輔 増田 雄二
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

最新の突然変異誘発機構の研究成果を応用して、低線量放射線被ばくに対する分子レベルの生物線量計の開発を試みた。生物線量計として、突然変異を誘発する Rev1 トランスジェニックマウスとヒト家族性大腸腺腫症のモデルマウスを交配した F1 マウスを使用した。その結果、F1 マウスは、自然誘発がんのみならず、放射線誘発がんを高頻度に発症した。このマウスを使うことで放射線発がんリスクを評価できる可能性があると考える。
著者
田中 良明 斉藤 勉 藤井 元彰 斉藤 友也 前林 俊也
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

難治性悪性腫瘍に対する放射線治療において、進行固形癌や再発癌は通常の放射線照射単独では十分な治療効果が得られない場合が多い。そこで、三次元原体照射による優れた線量分布と、放射線増感作用を有する温熱療法併用することにより、局所一次効果と臨床症状に改善が得られるかを検討した。対象は平成15年1月以降の4年間に温熱併用放射線化学療法を行った消化器系の癌腫25例(男/女=18/7、平均年齢59.4歳)で、内訳は、膵癌8例、胆嚢癌2例、胆管癌4例、小腸腫瘍2例、S状結腸癌2例、直腸癌7例で、現症別では局所進行・手術不能12例、術後再発12例、その他1例である。放射線治療は可能な限り三次元原体照射、多門照射を適用し通常分割で50〜60Gy、温熱療法はRF波誘電加温装置(Thermotron-RF8)を用い、病巣部41℃、30分以上で週1回、計4回以上を目標に実施した。化学療法は膵癌にはGEM(800-1000mg)、結腸・直腸癌には5-FU/LV、UFT、TS-1もしくはFOLFOXを適用した。結果は、治療内容について予定の70%以上実施できた症例を完遂例とすると、完遂率は68%(17/25)で、臓器別では膵癌(7/8)、結腸・直腸癌(7/9)で完遂率が高かった。画像診断や臨床症状による治療効果は、著効7例、有効12例、無効6例であり、臓器別の奏効率は膵癌(6/8)、結腸・直腸癌(8/9)で高く、胆道癌(4/6)、十二指腸・小腸癌(1/2)では相対的に低かった。完遂率別の治療効果は完遂例で著効6、有効10、無効1(奏効率94%)、非完遂例で著効1、有効2、無効6(奏効率38%)であり、完遂例の方が奏効率が高かった。臨床的に疼痛の軽減、異常分泌物の排泄減少など、QOL(生活の質)の向上が得られる例が多かった。有害事象として、2例に急性胃潰瘍がみられたものの、局所の疼痛、熱感などは軽微であった。以上、本法により奏効率の向上と一次効果持続期間の延長ならびに患者のQOLに改善がみられ、難治性腫瘍に対して有効な治療法であることが明らかとなった。
著者
藤巻 正己 江口 信清 生田 真人 平戸 幹夫 山下 清海 田和 正孝 祖田 亮次 ルスラン ライニス タールミジー マスロン
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、(1) 人口・社会経済地図による俯瞰的分析、(2) クアラルンプル大都市地域やパハン州などの農山漁村、サラワク州内陸部の先住民族居住地域における虫瞰的現地調査を通じて、マレーシアにおける貧困問題の表出状況とその差異や要因について、地域的・民族集団的多様性という観点から探究した。その成果については、公開セミナーの開催、他の研究組織との国際シンポジウムの共催、そして研究報告書(180頁)の刊行をもって公開された。
著者
井関 邦敏
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

日本透析医学会の調査によるとわが国の慢性透析患者数は増加の一途をたどっている。2005年度には国民500人に1人の割合を超え、沖縄ではすでに400人に1人の高頻度である。透析導入の原因疾患は1998年度よりそれまで首位であった慢性腎炎から糖尿病(DM)に移行した。前者が減少しつつあるのに対し、後者は直線的に増加し続けている。透析患者増加の背景には膨大な数の透析予備軍が予想される。健診データ数の変動にもかかわらず2mg/dl以上のCKD頻度は約0.2%前後(千人に2人)と一定である(沖縄県総合保健協会の資料)。CKDは多くの場合、自覚症状がなく検尿異常(またはGFR低下)から始まり、徐々に腎機能が低下して末期腎不全に進行する。これまでに報告された透析導入の発症危険因子のなかで最も鋭敏で簡便な検査法は試験紙法による検尿(蛋白尿)である。透析導入の発症率は蛋白尿が多いほど高い。加齢に伴い腎機能は低下するが、蛋白尿を伴わなければ透析導入が必要になるほど低下しない。検尿以外の項目では血圧が重要で、血圧値は高いほど、性別に関係なく透析導入が増える。高血圧は患者数が多いこと、降圧薬で治療可能であることを考慮すると、血圧コントロールの重要性が伺える。肥満は蛋白尿発症および透析導入の有意な危険因子で、とくに男性において肥満の影響が大である。男女差の要因は不明であるが、男性では女性に比し生活習慣、治療コンプライアンスに問題があるのではと考えられる。空腹時血糖値:126mg/dl以上では糖尿病の可能性が高く、透析導入率も高くなる。CKDの発症、進展にメタボリック症候群、肥満が関与していることは明らかとなっている。禁煙、適度な運動、食事指導(蛋白質、食塩、カロリー)が必要である。肥満者では体重減少によって蛋白尿が低下する。生活習慣の改善は末期腎不全予防に有効である。
著者
大方 昭弘 伊藤 絹子 片山 知史 本多 仁 大森 迪夫 菅原 義雄
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

砂浜浅海域に生息するアミ類は、沿岸魚類の生活上不可欠の食物源であり、浅海域魚類群集の生産構造の中核的地位を占めている。しかし、水深3m以浅の砂質海岸の砕波帯に生息するアミ類の生物生産過程および沿岸物質循環系における機能については明らかではない。本研究は、仙台湾砂質海岸の波打ち際斜面に生活し、数量的にも多いアミ類Archeomysis kokuboiの示す物質経済の特異性を明らかにし、浅海域生物群集との機能的結合関係を見いだすことを目的に行われ、下記のような結果が得られた。1.砕波帯における水深5m以浅に出現するアミ類のほとんどはArchaeomysis属であり、特に水深3m以浅にはA. kokuboi、3m-5mにはA. grebnitzkiiが卓越し、5-15mの水域にはAcanthomysis属が多い。魚類の胃内容組成にも、このような水深によるアミ類の分布状態の違いが反映している。2.汀帯の砂質斜面に生息するA. kokuboiの高密度分布域は、潮汐とともに移動するが、汀帯下端部からの距離はほぼ一定である。アミが潜砂するこの高密度域の砂の中央粒径値は2.0-2.3の範囲にある。日中は汀帯砂中に潜砂するものが多く、夜間には汀帯の沖側、水深1-2m付近を群泳しながら鞭毛藻やCopepodaなどを摂食している。3.水温15℃、照度0-100luxの条件におけるA. kokuboiのアルテミアを食物とする日摂食率は、湿重量で24.8%、乾重量で39.7%であった。1日24時間の摂食量のうち夜間は74.9%、昼間は25.1%であった。4.摂取されたアルテミアのアミ体物質への転化効率は、15℃において他の温度条件におけるよりも大きく、体長別にみると、小型が24.6-44.2%、中型が15.4-36.4%、大型が8.9-13.8%であり、成長とともに低下する。放射性同位元素Cでラベルしたアルテミアの投与量とアミ体内残留量との比は、12時間後52%、24時間後38%であった。5. A. kokuboiは一生の間に少なくとも2回以上産卵する可能性があり、個体群としては年間6発生群以上であることが確認された。4-6月生まれの群は成熟が速く小型で産卵し、11-1月生まれの群は成長が遅く、春季に大型群となって産卵に参加する。このように、本種は周年にわたって砕波帯魚類群集の生産構造の中核種として重要な役割を果たしていることが明らかにされた。
著者
鳴海 多恵子
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、衣服の着脱における負担を軽減することにより、運動機能に障害のある人の衣生活を改善することを目的として、既製服の効果的な修正方法を提案するとともに、その修正方法の効果を心拍変動スペクトル解析による数値的評価を行い実証した。まず、健常者を対象に心拍変動スペクトル解析を用いた評価の有効性を確認し、その上で、運動機能に障害がある人を対象に評価を行った。被験者は健康な女性5名(21〜23歳)と脳性マヒがある男性1名(18歳)である。健康な女性5名は、異なる2つのタイプの長袖Tシャツ(着衣しやすいTシャツと着衣しにくいTシャツ)の着衣を行った。そして、介助を必要とする脳性マヒ患者は、既製服の長袖Tシャツを基本として、それを着やすくするために修正を加えたもの2種を作製し、3種の試験着を着衣した。自律神経活動は、それぞれのタイプのTシャツを着衣する前と着衣後3分間で、心拍変動スペクトル解析を用いて評価した。その結果、健常者、脳性マヒ患者とも着にくい服を着衣した際に、着衣1分後にLF/HFが明らかに増加し、HF/TPは著しく減少を示し、心拍変動スペクトル解析を着やすさの評価に用いることの有効性が示唆された。また、それを用いて衣服の修正効果が実証できた。さらに、心拍変動スペクトル解析による実験精度を高めるために、試験着の着衣順序の影響や従来、着用実験の評価として用いられている官能検査と心拍変動スペクトル解析との関係について確認したところ、着衣後の心拍変動反応は着衣の順序効果があることが認められ、解析において配慮すべきであることが明らかとなった。また、官能検査では身体的な負担が評価されることが認められ、着衣動作による負担の評価においては心理的な評価が可能な心拍変動スペクトルを併用することが適切であるといえた。
著者
武石 みどり
出版者
東京音楽大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

伊藤道郎が1916年4月にイェーツの舞踊劇『鷹の井戸』に出演した背景には、その前段階として、ロンドンの芸術家達との出会いと共同制作があった。1915年5月にコロシアム劇場で日本的舞踊を披露したことが、一方ではホルストによる『日本組曲』の作曲へと結びつき、また他方ではパウンド、イェーツ、リケッツ、デュラック、コバーンといった芸術家達との出会いへ結びついたのである。前者は二人の共同制作ではなく、伊藤が提供した旋律によりホルストが独自に管弦楽曲を作曲した。伊藤は『日本組曲』の完成を知らなかったものと思われる。後者の芸術家達は特に日本の浮世絵や能に大きな関心を抱き、伊藤から日本の芸術を学ぼうとし、反対に伊藤は、彼等の関心に刺激されて日本の芸術を新しい目で捉えるようになった。1915年秋から1916年初頭にかけて、伊藤はリケッツとデュラックが作った日本的衣裳で日本の伝統芸能の主題を強く意識した舞踊を踊り、1916年8月にニューヨークに移ったのちも、この日本的舞踊が伊藤の基本レパートリーとなった。日本的舞踊の伴奏音楽については不明な部分が多い。しかし、「狐の踊り」の音楽の原型は、おそらく『日本組曲』の終曲に近いものであったと推測される。ニューヨークでも、1917年以降は伴奏に積極的に日本旋律を用いた。能に対する興味はアメリカでも大きく、1918年に『鷹の井戸』を再演したほか、『田村』を英語版で上演、その後も幾つかの能と狂言を英語で上演した。『鷹の井戸』のニューヨーク再演では山田耕筰の音楽が用いられたが、現存するピアノ版楽譜が実際にはどのような編成で演奏されたのか、不明な部分も多い。能の英訳上演に関しても、謡と伴奏楽器が実際にどのようなものであったのか、今後さらなる追究を要する。1920年代前半を境に、能と狂言の要素が伊藤のレパートリーから排除されていった理由も今後の検討課題である。
著者
南 範彦 西田 吾郎 吉村 善一 古田 幹雄 夏目 利一 島川 和久
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

Gを位相群、X, YをG-空間とする時、XからYへのG写像全体のG-ホモトピー類全体の集合[X, Y]^Gが空集合で無いための極めて普遍的な障害類として、G空間対X, Yのオイラー類e(X, Y)∈[X_+,S^O*Y]^G_*を定義し、何時これが完全に忠実な障害類になるか(つまり、e(X, Y)が自明なら[X, Y]^G≠0が帰結できるか)など、幾つかの性質を得た。この問題に関しては、現実的に計算しやすい(一般に忠実とは限らない)障害類を原靖浩氏とともに開発した。このような考え方は、Farberによって定義されたロボットアームなどのモーションプラニングの困難度を測るトポロジカル・コンプレクシティーの考察や、また抽象ホモトピー論としてのモデルカテゴリー的な観点からVoevodsskyらのA^1-ホモトピー論や関する幾つかの知見も得るのに用いられた。またHELPを通した特異点論におけるThom多項式の一般化にも着手し進歩が得られた。古田幹雄氏は、適当なコホモトピー群に値を持つ境界のない4次元可微分多様体に対する安定ホモトピーSeiberg-Witten不変量と違い、境界のある4次元可微分多様体に対する安定ホモトピーSeiberg-Witten-Floer不変量は、Fredholm Universeというproスペクトラムという、代数的位相幾何学での伝統的なMay流のuniverseの手法を用いてcoordinate freeなスペクトラムで表そうとすると対応するuniverseがtwistされたものを用いて表されることに注意した。これは従来の代数的位相幾何学には存在しなかった現象で、極めて興味深い。また、期間中には以下の多くの研究集会を主催し、活発な研究連絡を行った。1.国際会議"International Conference on Algebraic Topology"(2003年07月27日〜08月01日)2.名工大代数的位相幾何学国際ワークショップ03(2003年08月03日〜08日)3.名工大ホモトピー論集会01(計1回),02(計4回),03(計1回),04(計1回)。
著者
尾形 隆彰 犬塚 先 桜井 厚 片桐 雅隆 中澤 秀雄 米村 千代 渋谷 望 出口 泰靖
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

千葉地域における新しい文化の創出や、海という自然環境を生かしたレジャー、ディズニーという人気観光スポットを生かした地域づくり、また都心からの地の利を生かした移住による「田舎暮らし」といった可能性を明らかにした。またそうした地域に住む住民の意識や行動の変化を捉えることにも成功した。
著者
田中 克己 チャットウィチェンチャイ ソムチャイ 田島 敬史 小山 聡 中村 聡史 手塚 太郎 ヤトフト アダム 大島 裕明
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

ウエブからの同位語等の概念知識の抽出,ウエブ検索クエリの意図推定・自動質問修正,ウエブ情報の信憑性分析,ユーザインタラクションやウエブ1.0情報とウエブ2.0情報の相互補完による検索精度改善に関する技術開発を行った.
著者
今井 晴雄 岡田 章 渡邊 直樹 堀 一三
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

協力ゲーム分析の中心概念である提携について、多様な制約下での提携契約のあり方を比較検討し、これが非協力ゲームとのギャップを埋める上で重要であることを、理論を中心に実験や現実的な観察も交えて例証した。とくに、配分や行動についての提携機能の制限やその有効期間、不完備情報、動学的問題が影響することを一連の研究によって確認した。
著者
加藤 昌英 辻 元 田原 秀敏 横山 和夫 青柳 美輝 山田 美紀子 谷口 肇
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本年度(補助金が交付されてきた期間を含む)に行った研究によって得られた結果は以下のとおりである。1.複素3次元射影空間のある種の領域(「広い領域」)の商多様体の分類に関して次のことが分かった。すなわち(1)この問題を(複素1次元の)クライン群理論の高次元化(奇数次元のみ可能)と考えた。特に複素3次元の場合には、Grassmann多様体G(4,2)に作用する群と考えることによって、うまく問題の定式化(2)クライン群理論における初等型の群に対応する部分の複素3次元版がほぼ完成した。ここで初等型の群とは3次元射影空間の稠密な領域に作用する「端点(end)」が有限である群と定義する。特に固有不連続な開集合の商空間が正の代数次元を持つコンパクトな成分を少なくともひとつ持てば、固有不連続な開集合は3次元射影空間の稠密な領域であって、クライン群は初等型になることが示された。同時に商多様体も有限不分岐被覆を除いて分類された。ここの議論では、(非Kaehler多様体を含む)複素多様体への正則写像の、S.Ivashkovichによる拡張定理が有効に用いられる。現在、発表のための草稿の作成と、証明の改良(なるべく概念的な証明に直すこと)を行っている。が出来ることがわかった。これによって基礎になる種々の概念が固まった。2.複素多様体がprobableになるための良い十分条件を求める問題についてはまだ手がついていない。複素射影構造が特異点集合の持つ場合の考察についても進歩がなかった。ともに今後の課題である。