著者
渡邊 悠志 岡田 佳那子
出版者
日本酒学研究会
雑誌
日本酒学ジャーナル (ISSN:2758142X)
巻号頁・発行日
vol.2023, pp.1-31, 2023-11-07 (Released:2023-11-07)

清酒容器には、四合びんが一般的な規格として存在しているが、その容量の由来にはいくつかの説がある。本稿では、ガラスびんの導入と国内生産体制確立の過程、清酒業界におけるびん詰酒の導入及び発展過程、そしてその効果を概説し、これらを踏まえ四合と300mLの容量の由来と定着の要因について、史料に基づいて推論を行った。明治時代に導入されたガラスびんは、当初は輸入洋酒の空びんを使用しつつ、明治20年頃から国内生産体制が整備され始め、明治39年頃には機械化が進展し大正期にかけて段階的に生産力が強化された。清酒業界においては、明治末頃から本格的にびん詰製品が着手され始め、大正期にびん詰製品市場が拡大した。こうした状況の中で、空びんを回収して販売する「びん商」という業態が成立し、酒類や醤油に特有なびんを再使用する構造が成立した。四合びんの容量は約750mLが規格である洋酒びん(「通称クォート」びん)に由来し、300mLびんの容量はメートル法への対応により誕生したと考えられる。これらの容量は、国内外産のびんの併存と「びん商」等によるびん再使用により定着したと推測される。
著者
保井 啓志
出版者
日本中東学会
雑誌
日本中東学会年報 (ISSN:09137858)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.35-70, 2019-01-15 (Released:2020-04-01)

This article examines how Israeli publicity for LGBT friendliness works effectively in the international arena from the perspective of gender and sexuality studies. This publicity, which is also criticized as “pinkwashing,” is to be regarded within homonationalism by Jasbir Puar. This term succinctly describes that political attempts practiced by some countries to advocate protections for the human rights of sexual minorities are related to Islamophobia. The publicity by Israeli government should be regarded not only as a result of the practical politics in which certain nations use their attitudes toward sexual minorities as a strategy for the images of their nations, but also as a result of the politics of representation. By analyzing some cases of the publicity, it is concluded that although the perspective of homonationalism describes the Israeli publicity, there is a characteristic in Israeli publicities. It is the twisted use of “liberal” in Israeli publicity, which enables to pull the image of homophobia in Islamic countries out from the readers and to posit its own country distinctive from other Islamic countries as well. This twisted use of “liberal” is one of the results of not only homonationalistic actual politics but also the representative politics.
著者
村上 栄造 並木 則和 鍵 直樹
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会 論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.216, pp.37-43, 2015-03-05 (Released:2017-09-05)
被引用文献数
2

室内環境改善において、換気と空気清浄機の併用を検討することがあるが、導入にあたっては効果を事前に予測して装置選定することが望ましい。そこで、瞬時一様拡散モデルにより室内汚染物濃度を計算し、空気清浄機のワンパス除去率と室内空気の通過回数の関係から、換気量に応じた空気清浄機の導入効果を大まかに予測する線図を作成した。その結果、計画段階において空気清浄機の必要能力(清浄空気供給率、相当換気回数)を容易に算出できるようになった。
著者
吉崎 智一
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.117, no.10, pp.1245-1248, 2014-10-20 (Released:2014-11-21)
参考文献数
7

ウイルスが地球上に登場したのは少なくとも30億年前と考えられている. 太古の生物の誕生以来, 生物とウイルスは共存しながら, 互いの進化に影響を及ぼしつつ, 長い時間を過ごしてきた. ウイルスの病原性は細胞内絶対寄生性に起因する. このようなウイルス感染が生じた際にウイルスおよび感染細胞に生じる現象は, 細胞溶解感染, 不稔感染, 持続感染, 発癌感染, に分類される. Epstein-Barr ウイルス (EBV) が発見されて今年で50年, これまでに, 分かってきた上咽頭癌発癌機序として, まず, 一般に上皮細胞に EBV が感染すると, ウイルス複製が亢進して, 発癌どころか感染細胞が溶解してしまうことから, EBV が潜伏感染状態を維持することが必須である. 次に EBV 潜伏遺伝子発現が起こる. 中でも EBV 癌遺伝子 LMP1 は単独で線維芽細胞や上皮細胞を形質転換する. やがて遺伝子変異が蓄積して癌化する. そして, その間, 感染細胞が免疫監視機構, 特に NK 細胞や細胞障害性 T リンパ球から逃れることが必要である.
著者
岸本 章宏
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.1257-1263, 2007-11-15

よく知られたボードゲーム「チェッカー」は,両プレイヤが最善を尽くせば引き分けになることが,アルバータ大学(カナダ)のJonathan Schae er教授を中心とする研究チームによって,計算機を用いて証明された.本稿では,チェッカーの解明に利用した技術と筆者がプロジェクトの一員として参加した経緯,およびチェッカー解明までの道程について述べる.
著者
田中 慧 佐藤 康仁 岩﨑 直子
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.742-749, 2023-10-30 (Released:2023-10-30)
参考文献数
31

MODY患者に対する個別化医療の血糖コントロールならびに糖尿病関連医療費に及ぼす影響を検討した.遺伝学的診断後も通院継続中のMODY1患者2名とMODY3患者5名,計7名のMODY患者を対象とした.個別化医療開始前と12ヶ月後のHbA1c,1ヶ月の糖尿病関連医療費を検討した.平均HbA1cは開始前7.37±1.10 %から12ヶ月後6.29±0.48 %(p<0.05),糖尿病関連医療費は同様に20,153±6,665円/月から8,671±8,817円/月(p<0.05)と有意に低下した.当初7名中6名がインスリン投与中であったが,5名(83 %)が最終的にはインスリン離脱に至り,うち4名が経口薬単独治療となった.MODY1とMODY3患者に対する個別化医療はスティグマの改善にも影響することが示唆された.さらに,MODY3患者では高率に肝細胞腺腫を疑う所見が認められた.
著者
福長 秀彦
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.71, no.7, pp.2-27, 2021 (Released:2021-08-20)

新型コロナワクチンの高齢者への接種開始(2021年4月)を前に、接種をめぐる社会心理をインターネット調査によって探り、ワクチン報道のあり方を考察した。調査と考察の結果は次の通り。 ■接種の意向と属性:“接種派”が73%を占めた。20代、30代で“接種派”の割合が低下。“未定派”は女性が圧倒的に多かった。インフルエンザの予防接種の習慣がある人は接種の意向が強い。 ■ワクチンの安全性と有効性の信頼度:「ある程度は信頼する」が多く、全幅の信頼は得られていない。「あまり信用していない」人でも45%が“接種派”であった。感染の不安から仕方なく接種しようという心理が読み取れる。 ■接種・非接種・未定の理由:“接種派”では「集団免疫の効果」が3番目に多かった。“非接種派”・“未定派”では「安全性への不安」「有効性への疑問」が多かった。 ■“安全性に不安”の理由:“非接種派”“未定派”とも「未知の強い副反応に対する不安が」最多。ワクチンがこれまでにないタイプのもので、短期間で開発されたことによると見られる。 ■安全性をめぐる報道:十分な信頼を得られていない。“非接種派”“未定派”では、テレビ・ラジオを視聴して安全性に不安を覚えた人が多かった。接種後のアナフィラキシーや死亡事例の報道が「不安を煽っている」として批判されている。そうした報道に際しては、公的機関の見解(発症の確率・接種との因果関係など)・対応を先ずは的確に伝え、接種に対する無用な不安が拡がらないようにしなければならない。
著者
佐藤 卓己
出版者
日本メディア学会
雑誌
マス・コミュニケーション研究 (ISSN:13411306)
巻号頁・発行日
vol.97, pp.47-63, 2020-07-31 (Released:2020-09-26)
参考文献数
28

In the works of the author, Takumi Sato, who has been changed from aGerman modern history scholar to a media historian, the concept of “Mass” hascrucial importance. This paper examines the role of the active masses who supportedthe Nazi regime, collating the arguments of George L. Mosse, Thenationalization of the masses; political symbolism and mass movements in Germanyfrom the Napoleonic wars through the Third Reich (1975=1994) andTakumi Sato, The Fascist Public Sphere; Media Studies of Total War (2018).The Nazi regime did not succeed due to manipulation of the masses throughpropaganda, but was instead supported by voluntary movements by the massesfor national consensus building. From this viewpoint, the framework of mediastudies on the fascist movements should be changed from “Nazi propaganda” to“Nazi public relations.” As an outstanding analysis during the time of Nazi propaganda,Serge Chakotin, The Rape of the Masses; The Psychology of TotalitarianPolitical Propaganda (1939) can be reread. In recent years, the book hasbeen republished and translated around the world, including an edition in Japanese(2019). What does the revival of this book mean? It shows that the bulleteffect theory functions as an excuse for the active masses who take part in thepolitical public sphere. Theoretically, the bullet effect theory was denied in the1950s by the limited effect theory. However, it is thought that its popularity hasnot abated because of the support by the nationalized masses in the informationsociety.
著者
永井 亜貴子 李 怡然 藤澤 空見子 武藤 香織
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.554-567, 2022-07-15 (Released:2022-07-13)
参考文献数
24

目的 厚生労働省は,都道府県と保健所設置市への事務連絡で,新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)を含む感染症法上の一類感染症以外の感染症に関わる情報公表について,「一類感染症が国内で発生した場合における情報の公表に係る基本方針」(以下,基本方針)を踏まえ,適切な情報公表に努めるよう求めているが,自治体が公表した情報を発端として生じた感染者へのスティグマへの懸念が指摘されている。本研究では,都道府県・保健所設置市・特別区におけるCOVID-19の感染者に関する情報公表の実態を明らかにする。方法 47都道府県,保健所設置市(87市),特別区(23区)の公式ウェブサイトで公表されているCOVID-19の感染者に関する情報を収集した。2020年2月27日以前,基本方針に関する事務連絡後(3月1~31日),緊急事態宣言期間中(4月8~30日),8月の各時期で最も早い日にちに公表された情報を分析対象とし,基本方針で公表・非公表とされている情報の有無や,公表内容に感染者の特定につながる可能性がある情報が含まれていないかを確認した。結果 個別の感染者に関して情報公表を行っていたのは,都道府県では全自治体,保健所設置市等では84自治体であった。自治体が公表していた感染者に関する情報は,自治体間で項目や内容にばらつきが見られ,公表時期によっても異なっていた。基本方針で非公表と示されている感染者の国籍,居住市区町村,職業を公表している自治体があり,居住市区町村と職業は,感染拡大初期の1~3月に比べて,4月以降で公表する自治体が増加していた。一部では,感染者の勤務先名称や,感染者の家族の続柄・年代・居住市区町村などの情報が公表されていた。結論 自治体が行ったCOVID-19感染者に関する情報公表を調査した結果,自治体間や公表時期によって情報公表に用いられる様式や公表内容に違いがみられ,一部に感染者の個人特定につながりうる情報が含まれている事例があることが明らかとなった。COVID-19の疾患の特徴や感染経路などが明らかになってきた現状において,感染者の個人情報やプライバシーを保護しつつ,感染症のまん延防止に資する情報公表のあり方について,再検討が必要と考えられる。さらに,再検討を経て決定した情報公表の方法や内容について市民や報道機関に丁寧に説明し,理解を得る必要があると考えられる。
著者
A. Pusztai S. Bardocz 荒田 洋一郎
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.8, no.41, pp.149-165, 1996-05-02 (Released:2010-01-05)
参考文献数
40
被引用文献数
43 90

食物に含まれるレクチンは、生理活性を持つ成分として重要であり、強力な外来性のシグナルとなる。食物中のレクチンの含量は大きく異なるが、消化管全体に劇的な影響を与え、消化管内の細菌の数、体の代謝、健康にも大きく影響する。レクチンの強い効果は、腸におけるタンパク質分解に対する抵抗性、腸の上皮細胞表面 (高等動物から下等生物に至るまで) に発現している内在性受容体に対する特異的、かつ高い化学反応性に由来する。経口であれ、非経口的であれ、取り込まれたレクチンは強力な免疫原となり、その生理作用が複雑にからみあって免疫機能に干渉することもある。しかし、レクチンの初期効果やバイオシグナルとしての能力は、糖鎖との特異的な化学反応の直接の結果である。こういった反応を想定すれば、レクチンを臨床医学的に、病原体、免疫系刺激物質、ホルモン調節因子、代謝活性化物質の阻害剤として利用したり、トランスジェニック植物における内在性の殺虫剤として利用するといったことが将来的に見込める。
著者
斎藤 清二
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.7, pp.1463-1468, 2019-07-10 (Released:2020-07-10)
参考文献数
9
被引用文献数
2

Narrative based medicine(NBM)は,1998年に英国のGreenhalgh T,Hurwitz Bらによって提唱された医学/医療の概念であり,evidence based medicine(EBM)を補完する概念として一定の関心を集めてきた.本邦では,EBMとNBMは「患者中心の医療を実現するための車の両輪」と理解されている.近年,医療構造の急激な変化に伴い,改めてNBMの重要性が注目されている.また,2000年にCharon Aによって米国で開始された医学教育のムーブメントであるnarrative medicine(NM)は,医療者に必要な物語能力を涵養する教育法として,本邦の医学教育にも取り入れられつつある.本稿では,医療におけるナラティブ・アプローチとしてのNBMとNMの歴史・変遷を概観すると共に,現代の医療,特に地域包括医療,多職種連携ならびに医療人教育等の分野における最新の動向を加えて紹介したい.
著者
梅野 巨利
出版者
国際ビジネス研究学会
雑誌
国際ビジネス研究 (ISSN:18835074)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.133-145, 2009-09-30 (Released:2017-06-30)
参考文献数
14

本稿は、1970年代初頭に立ち上げられた後、数々の苦難に直面して挫折したイラン・ジャパン石油化学プロジェクト(通称IJPCプロジェクト)の誕生過程を史的に分析するものである。IJPCプロジェクトは完成を見ることなく終わったことから、これまで「失敗プロジェクト」として見なされることが多かった。そうしたことが強く影響しているためか、本プロジェクトに関係した日本企業は、本件に関する企業資料の開示を一切行っていない。そのため、これまでIJPCについて書かれたものの大半はマスコミやジャーナリズムの手によるものであり、学術的視点からこの問題を取り上げ分析したものはほぼ皆無であった。本稿はこうした資料的制約を克服し、本課題に関する研究上の空白を埋めるべく、IJPC関係者への面談取材を積み重ねることで、これまでの既存文献資料では明らかにされなかった本プロジェクト誕生過程の事実関係の詳細と、そこにおける諸問題に焦点を当てようとするものである。本稿の結論は以下の3点である。第1点は、IJPCプロジェクトは、その誕生過程においてイランの突出した交渉イニシアチブに押される形で実現へと向かったということである。イランの積極的かつ巧みな交渉力に、日本側は石化事業の実行へと突き動かされた。第2点は、本プロジェクトの立ち上げ段階において、すでに日本側関係企業内部において利害相克や思惑の相違などが存在しており、本プロジェクトの立ち上げ初期段階において日本側が一枚岩ではなかったということである。したがって、日本側企業グループの代表的立場にあった三井物産は、イランとの関係ばかりでなく、同社自身の関連部門組織間ならびに参加化学メーカーどうしの利害調整という難しい課題を抱えながらプロジェクトをスタートさせたのである。第3点は、上述の状況下、本プロジェクトが不確かなフィージビリティを抱えたまま前進したのは、これが三井物産トップの持ち込んだ重要案件であったことに加え、石油資源確保という日本にとっての至上課題が優先されたこと、そして三井物産がイランとの条件交渉面において、後に何らかの譲歩が得られるであろうという希望的観測を持っていたためであった。加えて、三井物産とともに日本側パートナーを構成した化学メーカーは、自らの利害と三井物産との企業間関係を考慮して三井物産の意思決定に追随したのである。
著者
磯崎 行雄 丸山 茂徳 青木 一勝 中間 隆晃 宮下 敦 大藤 茂
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.6, pp.999-1053, 2010-12-25 (Released:2011-03-17)
参考文献数
145
被引用文献数
26 74

The geotectonic subdivision and relevant definitions of geotectonic units in the Japanese Islands are revised on the basis of new data, particularly with detrital zircon dating of U-Pb ages and seismic profiling of the deep arc crust across the islands. In addition to the final confirmation of the subhorizontal structures of the Paleozoic to Cenozoic accretionary complexes and their high-P/T metamorphosed equivalents, several new aspects were recognized; i.e., detection of the eastern extension of the collisional suture between the Sino-Korean and Yangtze cratons in the Higo belt with medium-pressure-type metamorphism in SW Japan, and separation of the traditional Sanbagawa belt into two distinct metamorphic belts characterized by mutually different ages of protolith AC-formation and peak metamorphism. The occurrence and consumption of 4 Paleozoic to Mesozoic granite batholiths, as major provenances for the ancient Japanese Islands, are documented by detrital zircon dating of Paleozoic–Mesozoic sandstones. With respect to these new findings, the definitions of unit boundaries were thoroughly revised in terms of chronological spectrum in “ocean plate stratigraphy–metamorphism”. The geological significance of 5 major tectonic lines (faults) of the Pacific-type (or Miyashiro-type) orogen in Japan, i.e., the Nagato–Hida marginal TL, Osayama–Omi TL, Ishigaki–Kuga TL, Paleo–Median TL, and Butsuzo TL, is discussed. The current revision of the geotectonic subdivision and definitions of component units and their mutual boundaries leads to the following conclusions, which challenge the conventional understanding of the orogenic history of the Japanese Islands. (1) Proto-Japan in the Early Paleozoic was located closer to the South China (Yangtze) craton rather than the North China (Sino–Korean) craton. (2) Ever since 520 Ma, subduction of past Pacific ocean floors formed mature arc-trench systems with a full set of granite batholith, fore-arc basin, accretionary complex, and high-P/T metamorphosed equivalents at least 5 times; however, the former 4 sets were almost completely destroyed, with the exception of smaller tectonic blocks that currently occur within serpentinite mélange. (3) Tectonic erosion played a significant role in consuming ancient fore-arc crusts including 4 granite batholiths of the Paleozoic to mid-Mesozoic. (4) Serpentine mélange represents the former Wadati–Benioff plane along which tectonic erosion took place. (5) The Japanese Islands, which basically developed along the Yangtze continental margin, have experienced multiple episodes of oceanward growth and continentward retreat due to alternating subduction-accretion and tectonic erosion. (6) Net production of juvenile crust occurred on a large scale along the Japan margin during the 500 million year-long oceanic subduction regime since the Cambrian; however, intensive tectonic erosion effectively erased the older crusts from the surface and enriched the underlying sub-arc mantle with heat-generating continental material.
著者
谷口 洋 藤島 一郎 大野 友久 高橋 博達 大野 綾 黒田 百合
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.249-256, 2006-12-31 (Released:2021-01-10)
参考文献数
10

【目的】ワレンベルグ症候群(WS)による嚥下障害はしばしば左右差を認める.本研究ではWSにおける食塊の下咽頭への送り込み側と食道入口部の通過側について検討した.【対象と方法】対象は嚥下造影検査(VF)を施行したWSの24症例で,24症例はVFを平均2.0回おこなっており,各検査を独立した47施行として後方視的に検討した.頸部正中位での嚥下を正面像で観察し,下咽頭(梨状窩のレベル)への食塊の送り込みを左右差なし,患側優位,健側優位に,食道入口部の通過を左右差なし,患側優位,健側優位,不通過に分類した.下咽頭へ患側優位に送り込まれた例では,健側に食塊を誘導する目的で健側を下に側臥位をとるか(一側嚥下)患側へ頸部回旋しての嚥下(嚥下前横向き嚥下)をおこない咽頭通過の改善を評価した.【結果】下咽頭への送り込み側は左右差なし15施行(32%),患側優位24施行(51%),健側優位8施行(17%)であった.食道入口部の通過側は左右差なし6施行(13%),患側優位9施行(19%),健側優位16施行(34%),不通過16施行(34%)であった.食塊が患側優位に下咽頭へ送り込まれた15施行に一側嚥下か嚥下前横向き嚥下をおこない,12施行(80%)で食塊が健側の下咽頭へ誘導されることで咽頭通過の改善をみとめた.【考察】従来の報告と同様に食道入口部の通過は健側優位が多かったが,下咽頭への送り込みは患側優位が多く対照的な結果となった.これまでWSにおける食塊の咽頭への送り込み側の報告はない.患側の下咽頭に送り込まれやすい機序として,健側の口蓋筋群がより強く収縮して食塊が患側に偏筒して口峡を通過することや,咽頭収縮筋が健側でより強く収縮して食塊が患側に送り込まれることが推察された.WSではこれらのことを考慮して体位調節により下咽頭への送り込みをコントロールすることが時に重要であると思われた.