著者
北門 達男
出版者
近畿大学商経学会
雑誌
商経学叢 (ISSN:04502825)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.265-281, 2011-12

[要約] スマートフォンとクラウドコンピューティングサービスの登場はICT業界が25年かかって到達した新しいパラダイムの始まりを示唆している。パーソナルクラウドサービスおよびiPhoneアプリ市場の拡充と共に, iPhoneアプリを開発できる人材の育成が急務となっている。本稿では2年間にわたる少人数教育で改善を続けてきたiPhoneアプリ開発教育方法の研究について述べたい。iPhoneアプリ開発環境はMVCモデルとしてとらえるとXcodeのフレームワークを理解するのに役立つ。また, iPhoneアプリ開発には3つのハードルがあるが, これらを修得すると飛躍的にスキルが向上する。一方, 開発プロセスを理解し, 実機テストを通じてアプリケーションプログラムが改善されていく過程も理解しておく必要がある。 [Abstract] The advent of smart phone and cloud computing implies the beginning of a new paradigm shift after 25 years of technological advancement in the ICT industry. With the increase of personal cloud services and the number of iPhone applications, it is expected to increase the number of personnel who can develop iPhone applications. In this paper I would like to describe the result of iPhone application development education methodology which was revised through educating several students for 2 years. Conceptual understanding of iPhone development environment as MVC model will help us grasp the Xcode frameworks. There exist three hurdles to get over before we acquire the skills of iPhone development. In addition, it is necessary to grasp practical development skills. This is because an application has to be continually revised through trial usage on real iPhones.
著者
久恒 晃代 Hisatsune Akiyo
出版者
金沢大学大学院人間社会環境研究科
雑誌
人間社会環境研究 = Human and socio-environmental studies (ISSN:18815545)
巻号頁・発行日
no.36, pp.97-107, 2018-09-28

ウパニシャッドは, 四つの部門で形成されるヴェ ー ダ文献の最後部であり, ヴェ ーダ思想の集大成に位置づけられる文献である。 加えて, ヒンドゥ ー教の思想の根幹でもあり, 梵我一如や輪廻転生の思想とも深く関わっている。その内容の性質から. 祭式神秘主義と神話の両者から独立した本格的な哲学書と評されることもあった。 そのような哲学害ウパニシャッドにおいて, 神々の性質や神話はどのように変遷をとげていたのか, プラーフマナと同系統の神話を比較すること で明らかにし七いく。まず, 『ジャイミニーヤ ・ プラ ーフマナ』と『タイッティリーヤ・ウパニシャッド』ではヴァルナ神と息子プリグの物語が記されている。 そこにおいて, ヴァルナの性質のうち水神を除く , 司法神と至高神の要素はウパニシャッドに至ると消失してしまっている。 また.『カタ ・ウパニ シャッド』には『タイッティリ ーヤ ・ プラ ーフマナ』の「ナチケ ー タス物語」と同系統の神話が継承されている。 この両者の比較により, 祭式の重要性を説く内容から,哲学的教義へと変遷し ていることが分かる。このことは,「プリグの物語」でも同様である。従ってウパニシャッドでは, ヴェ ー ダの多くの神々がその性質を消失し, 地位を低下させ, 祭式至上主義から知識の習得に重 きを置く風潮へと推移していた。その一方で, 中性的な哲学的原理プラフマンが男性神プラフマー に神格化し, ウパニシャッド の知識を会得する者であるバラモンが人間の範喀を越える存在にまで昇華している。これらのこ とは, 哲学的思考が大きくはたらくウパニシャッドにおいて,神話的思考も多分に機能している ことを示している。以上のことから, ウパニシャッドは哲学的思考と神話的思考が未分化な状態 にあると言える。
著者
濱田 康行 川島 一郎
出版者
北海道大学大学院経済学研究院地域経済経営ネットワーク研究センター
雑誌
地域経済経営ネットワーク研究センター年報 (ISSN:21869359)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.65-91, 2021-03-26

状況(2021年初頭)を見れば,まさに大災害:Disasterに見舞われている。世界のコロナ感染者数と死者数をみるだけで,それは明らかである。そして,経済は深刻な不況であり,2021年が明けて一段と深まる気配だ。しかし,2020年11月,あらゆる状況が悪化する中でダウ平均株価は“夢の3万ドル”を達成した。この状況を理論に基づいたフレームワークの中で,かつデータに基づいて分析するのが,一連の研究の目的である。課題は二つに分けられる。第一は,株式市場の繁栄が人々の幸福・経済の状況とあまり関係がないように見えるが,それはなぜか?国際決済銀行(BIS)のレポートの表現を借りれば,Disconnected(非関連)なのはなぜか。第二は,そもそも,この高株価を生み出した要因は何か,特に内的要因を探ることである。第一のテーマは,2020年8月に発表した論文が,そして第二のテーマを本稿が扱っている。第1節では,株価を決定するのは,基本的に当該企業の業績・収益の状況によるとする株価第一原則について解説する。第2節は,過去のデータから株価の算定式を導き,この式でダウ平均3万ドルを判定している。今回の株高がバブルなのかどうか,それを問う試論である。第3節では,株価第一原則だけで説明できなくなった時に浮かび上がってくる要因について述べ,さらに,この要因の説明力を強める状況を示す。ここで従来の株価理論へのいくつかの疑問も呈示している。第4節では,マクロ的視点から,以上展開したことを総括する。金融概念図を使って株式市場の概念的位置の移動があったこと,その原因のひとつが株式市場の巨大化であることを主張している。最後に,全体のまとめ,および今後の研究方向を示してむすびとしている。
著者
大坪 知樹
出版者
日経BP社
雑誌
日経パソコン (ISSN:02879506)
巻号頁・発行日
no.679, pp.68-73, 2013-08-12

ヘッドホンは用途と好みで/スピーカーで音楽を楽しむ/スピーカーも無線で接続/無線LAN経由のAirPlay/車内でもスマホをフル活用
出版者
日経BP社
雑誌
日経エレクトロニクス (ISSN:03851680)
巻号頁・発行日
no.1083, pp.59-66, 2012-05-28

HD映像を無線で飛ばす「無線HD映像伝送」を使い、携帯端末とテレビを連携させる動きが、ここにきて相次いでいる。例えば、米Apple社は2011年10月に実施したiOS5.0へのアップデートで、iPhoneやiPadの映像/音声をApple TV経由でテレビに出力する「AirPlay ミラーリング」の機能を追加した。
著者
伊藤 朝輝
出版者
日経BP
雑誌
日経パソコン = Nikkei personal computing (ISSN:02879506)
巻号頁・発行日
no.834, pp.69-74, 2020-01-27

ほかのスタイラスペンとは一線を画す快適な手書きを実現する「Apple Pencil」はiPad最大の特徴だ。iPadの手書きを活用するためのTipsを紹介しよう。
著者
井手 博文 野中 健史 藤木 達雄 佐藤 政弥 遠藤 英仁 須藤 憲一
出版者
一般社団法人 日本人工臓器学会
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.332-336, 2000-05-15
参考文献数
13

PCPS装着時に, 左室後負荷軽減の為に併用される経大動脈弁的左室ベントカテーテルの挿脱着が可能な, 新しいIABPカテーテルを開発し, 臨床応用に向けて評価を行った。対応するベントカテーテルはthin wall, 外径12F, 全長95cm, テフロン製。IABPカテーテルの構造として, 容量35ccバルーンおよびバルーンガス給排管としてのカテーテル (外径7F, 全長65cm) に加え, 左室ベントカテーテルが通過可能な, 全長約20cm, 外径5mm, ポリウレタン製の挿通管を, バルーン部のみに有し, その先端にベントカニューラ抜去後閉鎖するシリコンゴム製弁を有する。ベントカテーテルは, 同挿通管を介して, 経大動脈弁的に左室に挿入される。ベントカテーテル操作向上の為, 同挿通管内面をシリコンコーティングすることにより, 滑り抵抗は約1/2に軽減した。ベントカテーテルは, モック試験にて, 最大流量, 約600m1/minが可能であった。
著者
山内 一也 原田 亮介
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1235, pp.124-127, 2004-03-29

答 鳥インフルエンザのウイルスは、本来は野生のカモが持っているウイルスです。ウイルスは腸管の中で増えるため、糞便を介して感染します。インフルエンザのウイルス自体はカモにほとんど病原性を起こさないため、野生のカモとウイルスは共存していると言えるのです。 ところが、カモがニワトリの飼育されている所に飛んできて糞をすると、ウイルスがニワトリに感染してしまう。
著者
崎田 嘉寛
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.86_2, 2016

<p> 第10回オリンピック競技大会(1932、ロサンゼルス)は、国内外の情勢変化を背景に、オリンピックに対する日本社会の意識が変化する起点として位置づけられている。そのため、この変化に深く関与したメディアを視点とした先行研究が包括的に蓄積されている。ここでの主たる資料は、新聞や雑誌等の印刷メディアである。一方で、国内の映像会社やフィルムライブラリーには大会に関する動的映像(以下、映像)が散逸的に蔵置されている。また、今日では典拠を不問にすれば、インターネットを介して簡易に映像を視聴できる。そして、これらの映像からは、印刷メディアによる記述を上回る情報を導出することができよう。しかし、体育・スポーツ史研究において、映像資料を活用する方法論および史料批判に関する知見は十分に確立されているとは言い難い。そこで本研究は、第10回オリンピック競技大会に関する市販のニュース映画「キネマニュース」を対象として、フィルムの復元から映像処理過程を報告し、資料批判について試論を提示するとともに、映像内容を分析する際の歴史的視点について検討することを目的とする。</p>
著者
宇佐美 まゆみ
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.4-22, 2008-08-31 (Released:2017-05-01)

本稿では,これまで,いわゆる「ポライトネス研究」としてまとめて言及されることが多かったものを,その目的の違いによって,「ポライトネス記述研究」と「ポライトネス理論研究」に分けて整理し,従来明確に区別されることなく論じられてきた両者を含む「ポライトネス研究」の約30年間の流れを,その違いを明確にする形で概観する.「ポライトネス記述研究」とは,各個別言語におけるポライトネス,敬語体系や敬語運用の研究,それらの比較文化的研究などを指し,「ポライトネス理論研究」とは,言語文化によって多岐・多様にわたるポライトネスの「実現(realization)」の基にある動機とその「解釈(interpretation)」のプロセスを,統一的に説明,解釈,予測しようとする「理論(theory,principle)」に重点をおいた研究である.それぞれの意義と役割,問題点などを確認した上で,本稿では,後者の「ポライトネス理論研究」のほうに焦点をあて,Brown&Levinson(1978/1987)のポライトネス理論が普遍的であるとして提唱されて以降,他の研究者から提起された問題点や,普遍理論追究のために重要だと考えられる新しい捉え方のポイントをより具体的にまとめる.その上で,「ポライトネス理論研究」の今後の課題をまとめ,これまでに指摘されてきた様々な問題点を克服する形で構想されている「対人コミュニケーション理論」としての「ディスコース・ポライトネス理論」(宇佐美,2001a,2002,2003)の最新の構想の一部を提示する.
著者
Kyutaro Kishimoto
出版者
The Japanese Society for Horticultural Science
雑誌
The Horticulture Journal (ISSN:21890102)
巻号頁・発行日
pp.UTD-268, (Released:2021-05-22)
被引用文献数
4

Many cut flowers are treated with an ethylene action inhibitor, silver thiosulfate (STS), to delay senescence and are shipped by dry transport that involves relatively easy loading. In addition, cut flowers are often treated with a mixture of sugar and germicide to improve their vase lives. Exogenous treatments of these compounds or drying by transport are thought to have various effects on cut flowers. This study investigated the effects of these post-harvest management methods on the scent emission of carnation (Dianthus caryophyllus L.) cut flowers. Under all the management conditions, the total scent emissions of cut flowers were highest on harvest days and then decreased, but major changes in their compositions were not observed. The decreases in scent emissions were thought to occur earlier than the known ethylene induction in carnation cut flowers, which is equivalent to the 4th day after harvest. The STS treatment had no effect on the scent emissions for some time after harvest, but suppressed the decreases in scent emission 4–8 days after harvest under the wet transport condition. It is likely that the decreases in scent emissions in carnation cut flowers occur in an ethylene-independent manner, but ethylene induction a few days after harvest further promotes decreases under wet transport conditions. STS may have suppressed the promotion of decreases due to ethylene. On the other hand, the treatment that assumed dry transport for one day dramatically promoted the decreases in scent emissions. Since the promoting effects were not affected by the STS treatment, they were considered to be ethylene-independent. A common sugar treatment with 1% glucose, sucrose, or fructose did not affect the scent emissions in the cut flowers. An isothiazolinonic germicide, which is a common cut flower germicide, did not affect the treatment. Considering the current post-harvest process, the duration of a noticeable scent in carnation cut flowers can be expected to be extended by adopting wet transport instead of dry transport.
著者
戸谷 智明 鈴木 健 藤井 義晴
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.373-379, 2020 (Released:2020-12-31)
参考文献数
16
被引用文献数
2

ニホンナシでは前作樹の残根がいや地現象の発生要因であるかが明らかになっていない.そこで,本研究ではニホンナシ根を混和した土壌のいや地リスクの経時変化に加え,根を混和した土壌に定植したニホンナシ1年生苗木の樹体生育への影響を調査した.まず,ニホンナシ未植栽土壌にニホンナシの生根もしくは乾燥根を混和した区を設け,土壌をニホンナシのいや地リスクを評価できる根圏土壌アッセイ法を用いて経時的に測定した.その結果,ニホンナシでは根の乾燥条件にかかわらず,土壌の阻害率は根を混和しない区と差がなく,根の分解過程では生育阻害物質が放出されない可能性が高いことが示唆された.次に,ニホンナシ未植栽土壌にニホンナシ乾燥根を混和し,ニホンナシ1年生苗木を定植した区を設け,根を混和していないニホンナシ未植栽土壌やいや地現象が発現する連作土に定植した区と樹体生育を比較した.その結果,連作土区では樹体生育が抑制されたが,根を混和した区の生育は混和していない区と同様に抑制されなかった.以上の結果から,ニホンナシでは,土壌への根の混和は,いや地現象の発生要因ではない可能性が高いことが明らかになった.一方で,ニホンナシ1年生苗木をニホンナシ未植栽土壌に定植後,土壌を根圏土壌アッセイ法で経時的に測定した結果,樹の生育が進むに従い土壌の阻害率が上昇した.これらのことから,ニホンナシでは樹が生育する過程で根から生育阻害物質が分泌され,土壌に蓄積されることでいや地現象が発現する可能性があることが示唆された.
著者
チャンドララール ディリープ 後藤 亜樹 Dileep Chandralal Goto Aki 沖縄大学人文学部 沖縄大学地域研究所
出版者
沖縄大学地域研究所
雑誌
地域研究 = Regional studies (ISSN:18812082)
巻号頁・発行日
no.17, pp.73-87, 2016-03

沖縄スリランカ友好協会により企画・実施された「スリランカ命の水プロジェクト」が2年間の月日を経て完了した。これまで、なぜ、バルンガラ村に水道設備が設置されなかったのか、村の人々の経済事情、生活はどのような状態であるかを明らかにするためインタビュー調査を実施し、記録した。
著者
外岡 慎 本間 義之 貫井 秀樹 大場 聖司 市村 一雄
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.101-108, 2021 (Released:2021-03-31)
参考文献数
19
被引用文献数
2

ガーベラはハサミを用いずに引き抜いて収穫する.湿式輸送では切り戻しにより調整するが,乾式輸送では切り戻しによる調整は行わずに出荷する.ガーベラ切り花において,調整(切り戻し)の有無が花茎からの糖質および電解質の溶出,生け水の濁度および日持ちに及ぼす影響について検討した.ガーベラ ‘ミノウ’ における収穫時の平均切り花長は57 cmだった.‘ミノウ’ では,生け水の電気伝導率,糖質濃度および濁度は花茎を切断する位置と方法に影響された.調整しない場合および基部近くで切り戻した場合には,花首から40 cmの部位で切り戻した場合よりも低くなった.また,生け水の電気伝導率と濁度,電気伝導率と糖質濃度および濁度と糖質濃度との間には正の相関関係が認められた.7品種を用いて日持ち,電気伝導率,濁度および吸水量を調査したところ,有意な品種間差がみられた.また日持ちと濁度との間には負の相関関係がみられた.次に最も日持ちの長かった ‘ピンタ’ と短かった ‘ピクチャーパーフェクト’ において,切り戻しの有無が生け水の濁度,糖質の溶出および日持ちに及ぼす影響を調査した.‘ピンタ’ では,調整により生け水の濁度と糖質濃度の上昇はわずかであり,日持ちが延長した.それに対して,‘ピクチャーパーフェクト’ では調整により濁度と糖質濃度が上昇し,日持ちが延長しなかった.以上の結果から,調整したガーベラ切り花から糖質と電解質が溶出し,この量の違いが日持ちの品種間差に関与している可能性が示唆された.
著者
林 健太郎 杣川 知香 林 之茂 岩永 充人
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
脳血管内治療 (ISSN:24239119)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.149-154, 2020

<p>【目的】脊髄硬膜動静脈瘻に対する経動脈塞栓術は外科手術に比して侵襲が少なく,試みられる治療である.動静脈瘻の部分に液体塞栓物質を到達させて塞栓することで根治が得られるが,注入に際しては流入動脈が細く屈曲していることも多いため,カテーテルの挿入が困難なことがある.挿入できたとしても椎骨動脈から流入動脈が分岐する場合には塞栓物質の椎骨動脈への逆流や血管ネットワークを介しての迷入などの危険性がある.【症例】54 歳女性.脳性麻痺のため全介助の状態であった.くも膜下出血にて発症した.右椎骨動脈造影で C4-6 レベルの根動脈から流入血管を受け,前脊髄静脈に流出する硬膜動静脈瘻を認めた.流出静脈には静脈瘤を認め,くも膜下出血の原因と考えられた.液体塞栓物質を用いて根治的に塞栓する方針とし,バルーンガイディングカテーテルを併用して右椎骨動脈の血流を逆流させた状態で液体塞栓物質を注入した.流出静脈から動静脈瘻にかけて塞栓した.術後,新たな神経学的異常はみられず,脳梗塞などの合併症もみられなかった.【結論】脊髄硬膜動静脈瘻に対する経動脈塞栓術における近位部バルーンテクニックは有用である.</p>