著者
北山 研二 一之瀬 正興 川上 善郎 村瀬 鋼 木村 建哉
出版者
成城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、「らしさ」の概念を中核とする表象の問題(表現することと現れることの関係性)に関して、理論研究と実証事例研究を交差させて、国際シンポジウム、研究会、調査を実施しながら討論を重ねた。理論研究次元では、存在と現象、自然と文化、一般性と個別性という哲学的対立概念を表象次元で交錯させる「らしさ」の位置づけについて包括的な考察をした。実証研究次元では、社会心理学的事例研究によって、情報社会における事件と事件らしさ、ニュースとニュースらしさの相互関連性が実証された。文学的事例研究によって、演劇では真実らしい人物造型が重要であること、また地方色を出す文学が現地事情よりは文化的コード(らしさ)によって形成されること、さらに美術的事例研究によって、実物(真なるもの)より表象性(真らしきもの)が問題であることが、論証された。映画的事例研究によっては、「自然さ」の文法「真らしさ」が映画的リアリティーであるだけではなく、その多くが身体的反射性に由来することが確認された。さらに歴史テレビ映画や写真映画の事例研究によって、「真なるもの」と「真らしきもの」の明快な判別ができないことも証明された。文化論的事例研究つまり文化としてのらしさの研究では、それぞれの「らしさ」が文化的多層性の産物であり、その反映であるはずの実物(真なるもの)を特定できないことが確認された。こうして本研究の目的、「らしさ」という概念を軸に、表象文化の成立と変遷を「自然」の成立との交替として捉え直し、近現代の表象文化の諸展開について具体的・包括的な見取り図をつくることは、おおむね達成された。
著者
黄 梅英
出版者
尚絅学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

日本の教育型大学における卒業研究の教育実態に関する研究(人文社会科学を中心に)について、2017年度は主に学生のアンケート調査の分析と、インタビュー調査の追加・内容分析を行った。アンケート調査の(重回帰)分析結果から卒業論文の完成度は下記の要因に影響されている。①教育側の要因として、学生の卒業論文の完成度は3年次までのアカデミックライティングのトレーニングの有無・頻度、4年時の卒業研究での個人指導の回数と正の相関をもっている。②学生側の要因として、学生の卒業論文の完成度は高校での平均成績分布と正の相関、4年時の履修単位数と負の相関をもっている。上記の分析結果は学生のインタビューからもある程度の裏付けが得られた。例えば3年時までの授業の中で小論文の指導、添削を受けた場合、また、社会調査やフィールドワーク、国内外の実習など(大学外主催のものも含む)のプログラムに参加した際に報告書が課されたり、指導を受けたりした場合、何らかの力が身につき、卒業研究を進める中でも活かされたというケースが幾つもあった。それに加え、高校の在学中に模試などのために小論文のトレーニングを受けたり、また入試形態によって特別指導を受けたりした学生の中で一定の力を身につけたと感じた学生もいた。つまり、卒研にかかわる基礎的な学習・トレーニングは重要であるといえよう。一方、完成度の比較的高い学生は4年時に卒業研究のほかに履修する(しなければならない)単位数が比較的少ない者が多い。つまり、履修状況が比較的よくて、単位を落とされたケースがあまりない場合、卒業研究も比較的うまく仕上げている。そこから通常の授業での学習姿勢や成績が卒業研究の質も影響していると読み取ることができる。上述の分析を通して教育型大学の卒業研究の教育実態は、学生と教員の両側の取り組み状況に影響されていることは明らかにされた。
著者
牛島 佳代 成 元哲 守山 正樹 田中 美加
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は、福島原発事故が母子の心身の健康に与えた影響を明らかにし、支援策を構築することである。分析には、2013年から毎年実施している福島県中通り9市町村の2008年度出生児の母親に対する社会疫学調査と面接調査データを用いた。結果、一貫してSQDで評価されるうつであった人は12.7%、うつ維持には低収入、放射能の対処をめぐる認識のずれ、経済的負担感が関連していた。また、うつ状態を脱した人も事故により生じた新しい日常への適応のあり方を模索していた。福島の母子がレジリエンスを獲得するためには、母親が抱く将来の健康不安に対して真摯に向き合い、継続的な医療補償システムを構築することが必要である。
著者
成 元哲 牛島 佳代 松谷 満 阪口 祐介 西崎 伸子 永幡 幸司 三上 直之 守山 正樹 荒川 雅志 石原 明子
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

未曾有の原発災害における人間経験を生活変化と健康影響に焦点を当て長期的に追跡し、実態解明を行うとともに、社会的亀裂を修復するために次の二つの取り組みを行った。第1に、福島県中通り9市町村の2008年度出生児とその母親を対象に、原発事故が与える影響を生活と健康に焦点を当て継続的に記録するための大規模の調査票調査を行った。第2に、上記の福島県内の調査対象者への半構造化面接を行った。これは、当事者の語り部活動を行うための準備作業である。放射能の健康影響についての不安の度合いやリスク対処行動において温度差がある母親が、原発事故後の経験を広く社会と共有できることを目指している。
著者
松谷 満 成 元哲 大瀧 友織
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は、原発事故によって、被災地福島の政治にどのような変化があったのかを明らかにすることである。本研究では、福島市民を対象とする質問紙調査、市会議員などを対象とする聞き取り調査を行った。その結果、福島では他地域と比較して政治不信が高まっていること、政治の側では結果的にさほど大きな変化が生じておらず、世論とのあいだに乖離がみられることが明らかとなった。
著者
矢澤 修次郎 伊藤 公雄 長谷川 公一 町村 敬志 篠原 千佳 油井 清光 野宮 大志郎 山本 英弘 細萱 伸子 陳 立行 金井 雅之 L.A Thompson 菊澤 佐江子 西原 和久 Pauline Kent
出版者
成城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

二つのこれまでに行われたことの無い質問紙調査を行い、世界における社会学の国際化に関する基礎データを取得することができた。そのデータを分析することによって、ヨーロッパ社会学と東アジア社会学の間には社会学の国際化に関してはそれほど大きな差は認められないこと、しかし社会学の国際化の形態に関しては、ヨーロッパの場合には国際化が研究者のキャリアにおいて通常のことになっているのに対して、東アジアでは最大限のコミットメントを要する出来事であること、また東アジア内部では、台湾・韓国タイプ(留学と研究者になることがセットである)と中国・日本タイプ(両者がセットではない)とが分かれることが明らかになった。
著者
今坂 藤太郎
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究はレーザー光の輻射圧により微粒子を捕捉・分離し、粒径を精密測定する新しい計測法研究である。微粒子捕捉のため空間光変調器を用い、ラゲールガウシアンビーム等微粒子捕捉ビームを生成する研究を行った。角運動量を持つラゲールガウシアンビームにより捕捉した微粒子を円運動させ捕捉精度を高めることができることを明らかにした。そして2つのビームを組み合わせた粒径分離の実証研究を行った。円環状のビームによって微粒子を捕捉し、次にガウシアンビームを円環の中心へ照射し、2 umと6 umの粒径の異なる微粒子を分離する研究を行い、実証した。本法はその発展により精密粒径測定を可能とする有力な手法となると期待される。
著者
牧角 俊郎
出版者
山口大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

1. これまでの研究から、ラットに覚醒剤に対する逆耐性現象を形成する実験プロトコール及び、興奮性アミノ酸系NMDAレセプターアンタゴニストであるMK-801が逆耐性現象の発現を抑制することも明らかにしたので、今回は、これまでの研究に従い、ラットに覚醒剤(塩酸メタンフェタミン)5mg/kgを2、3日おきに5回腹腔内投与する際に、MK-801を前投与した群と非投与群とに分けた。最終の覚醒剤投与より24時間後にラットを深麻酔下に灌流固定後脳を摘出し、摘出脳を凍結後ミクロトームにて薄切し、切片に対して、一次抗体にanti-GAP(Growth-associated protein)43及びanti-MAP2(Microtuble-associated protein 2)を用い、二次抗体にはanti-mouse monoclonal IgGを用いて、ABC法に則り免疫染色を行った。2. MK-801非投与群(逆耐性群)では、線条体及び前頭皮質部においてMAP2の染色性の低下が見られ、カテコールアミン神経終末の変性が示唆され、一方でGAP43の染色性は亢進していた。MK-801投与群(非逆耐性群)では逆耐性群と同様に、線条体及び前頭皮質部においてMAP2の染色性の低下が見られ、カテコールアミン神経終末の変性が示唆されたが、一方でGAP43の染色性は低下していた。3. 以上の結果より、覚醒剤に対する逆耐性現象形成時にはカテコールアミン神経の可塑性が亢進していることが示唆され、覚醒剤に対する逆耐性現象の形成と、記憶形成のメカニズムの類似性が明らかとなった。
著者
篠原 一之 西谷 正太 土居 裕和 尾仲 達史
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

父親、母親に見られる脳とホルモンの特徴を調べ、父性、母性をもたらす生物学的基盤を明らかにするべく、乳児表情に対する脳活動は、親と非親間で異なるか、ホルモン受容体遺伝子多型により親集団で異なるかを調べた。結果、父親特徴的な脳活動を明らかにした。また、妊娠~産後2年の母親を調べ、産後のホルモンや経験が母親脳の変化に貢献することを示唆した。一方、母性へのオキシトシン受容体遺伝子多型の影響を明らかにした。
著者
飯田 泰之
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2000

昨年、一昨年は景気循環の中でも在庫変動の役割に注目した研究を行ってきたが、本年度は特定の需要項目に注目せず景気循環全体に関する政策課題としての金融政策を中心に研究を進めてきた。80年代以降の日本経済の動向にとり金融政策が非常に大きな影響力を持ったことは数多くの論者により指摘されている。90年代、特にその後半のデフレ期に至ってその重要性はさらに増しているといえるだろう。実証的なアプローチでは80年代以降の日本経済に関し、信用乗数の変化、為替レートを通じての金融政策の波及が期待インフレ率に大きく依存することがわかった。両研究「信用乗数の変化はいかにして説明されるか」(飯田泰之・原田泰・浜田宏一)、「金融政策の波及チャネルとしての為替レート」(寺井晃・飯田泰之・浜田宏一)は2月に内閣不経済社会総合研究所で報告し、3月末にDiscussion Paperとして同研究所より発行される。また、90年代の日本経済を考えると言うことはデフレーションと失業の問題を考えることに他ならない。前者の「デフレ経済」に関しては戦後の事例が無く、その特性を確かめるためには戦前期、特に昭和恐慌期にさかのぼる必要がある。そこで、1920年代の市況等に関し新聞データを用いた再現を交えながら同時期の期待インフレ率を推計した。本研究「戦前期日本経済の期待インフレ率推計」は昭和恐慌研究会(於東洋経済新報社)での発表へのコメントなどをうけて現在改稿を進めている。後者の、失業の問題に関しては労働者の部門間移転を容易にする賃金体系はなにか、という問題意識を元にサーチ理論を用いたモデル化を試みた。本研究は論文「産業構造の変化と労働力配分のrestructuring-Search理論によるモデル化」(飯田泰之・寺井晃)にまとめられ、2002年度日本経済学会秋季大会にて報告し、現在投稿準備中である。
著者
山田 嚴子
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

第二次世界大戦下のオシラサマ信仰と民間巫者の活動を、戦前の影響と戦後の動向を考慮に入れながら調査した。その結果、以下のことが明らかとなった。(1)津軽地方では、明治以降、オシラサマは寺社信仰との関わりで信仰されてきた。(2)戦時中に民間巫者は「英霊」の口寄せを行っており、このような巫者たちは、1970年代に、新たな形で注目を受けていた。
著者
志磨 裕彦 中内 伸光 井上 透 内藤 博夫
出版者
山口大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1993

甘利は確率分布族の空間が不変な幾何学構造として双対接続を持つことを発見し、情報幾何学の必要性を提唱した。これは双対接続を持った多様体上での情報理論の研究である。一方、この双対接続の概念はBlaschke流のアフィン微分幾何学においても見出されていた。また、志磨は、Kahlerian多様体との関連においてHessiann多様体の概念を得ていたが、これはまさに平担な双対接続を持った多様体のことである。このように双対接続は純粋数学上、また応用上も重要な概念であり、これを共通のキーワードにして、微分幾何学と情報幾何学の境界領域を総合的に研究することを目的とした「幾何学シンポジウム」を開催した。会期は4日間で、18件の招待講演の他、参加者全員による自由な討論と情報交換が行われた。その結果は「幾何学シンポジウム講演記録」として印刷され冊子にまとめられた。甘利は情報幾何学の統計学、システム理論、ニューラルネットワーク、統計物理学、量子観測、可積分力学系等への応用の可能性を示唆し、江口はコントラスト関数を定義し、それから双対接続が得られることを示したが、松本は逆に双対接続からコントラスト関数を構成した。黒瀬は双対接続が定曲率のとき自然なコントラスト関数(ダイバージェンス)を定め、Pythagoras型の定理を証明した。志磨はHessian曲率が一定のHessian多様体を構成し、これらが、確率分布族として実現されることを示した。野口は双対接続とLevi-Civita接続が一致するための条件を考察し、長岡は古典・量子Cramer-Rao不等式の微分幾何学を展開し、江口は相対エントロピーと数理進化について論じた。その他、長野、金行等による対称空間論や、いくつかの興味あるトピックスに関して研究発表が行われた。
著者
赤穂 昭太郎 神嶌 敏弘
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

情報幾何の枠組みから新たな分散・統合データ解析法の構築を行った.まず,基礎となる指数分布族における次元圧縮法に基づいて,指数分布族には属さない混合分布族にも適用可能な手法への拡張,確率モデルとしての定式化によるベイズ推定の枠組みへの拡張,次元圧縮とクラスタリングの同時最適化への拡張という3つの拡張を行った.また,新たな学習パラダイムとして,少数の高品質データと大量の低品質データの統合を行う飼い慣らしという枠組みを転移学習に基づき開発した.
著者
八木 年晴 戸田 勝巳
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ビタミンB_6の仲間であるピリドキサミン(PM)には抗糖尿病合併症機能がある。PMを多く含む食品は抗糖尿病合併症機能が期待される。そこで、まず食品中のPMを定量できる高感度の定量法を開発した。そして、代表的な食品中の含有量を明らかにした。ついで、PMの機能の機構を明らかにするため、ラットにPMを投与して分析をおこない、PMには大量に投与すると糖新生を昂進する作用があることがわかった。
著者
鈴木 準一郎
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、「植物個体は、地下部(根)から分泌される化学物質を介して、自己と非自己を認識し、自他の識別を行う」という仮説を設定した。その仮説から導かれる予測、「遺伝的に異なる個体間の競争では、根の成長方向は他個体の存在に影響をされないが、クローン個体間あるいはキメラ個体間での競争では、根は他個体と反対の方向へ成長し、根の競合を回避する」の実験的な検証を試みた。キメラ作成の可否に関する予備実験を行い、材料としてナス(Solanum melongena L.)を選定した。ナスを用いて、接ぎ木の手法により、キメラ個体を作成し、予測の検証を試みた。しかし、接ぎ木の成功率のバラツキが予想以上に大きく、とくに成長につれて枯死が非常に多くのキメラ個体で見られた。また、接ぎ木自体は成功しても成長量にバラツキが大きいことがわかった。さらに接ぎ木の操作を行った個体でウイルス感染による枯損が発生するなど予想外の事故も生じた。栽培が可能な季節の間、繰り返し実験を行ったが、当初予定していた反復数のデータ採集が出来なかった。接ぎ木処理により成長量のバラツキが大きくなることから、反復数を減らすことは出来なかった。さらに、反復数の不足を補う解析手法の開発も試みたが、反復数の不足を補い、当初予測していた仮説の検証を試みることは残念ながら出来なかった。そこで、栽培条件を検討するために行った予備実験の結果を、2報の論文として取りまとめ、投稿しそれらが現在審査中である。
著者
月村 辰雄 浦 一章 葛西 康徳
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
1999

本年度は研究対象をもっぱら近世・近代のフランスにおけるレトリック教育、とりわけディセルタシオン(論文作成)とエクスプリカシオン・ド・テクスト(テクスト購読法)という二つの主要教育メソッドの展開の過程に焦点を絞って研究を進めた。ディセルタシオンは18世紀半ばのパリ大学の教授資格試験から採用されたディスクール形式で、スコラ学の論述形式の近代版といえる。初め哲学の問題が扱われたが,19世紀以降は順次ラテン文学,フランス文学研究の問題の解答形式ともなり,正-友-合という論旨の展開が義務付けられて現在に及ぶ。一方、エクスプリカシオン・ド・テクストは、初めはルネサンス期の古典語購読の方法として出発し,17〜18世紀には主としてイエズス会のコレージュでラテン語購読の方法として精錬され,次いで19世紀にはフランス語古典の解説法として発展する。ひとつひとつの語釈,難語解,構文説明,その部分の著作全体における意味,またその著作の著作家において占める意義,さらには時代との関係という具合に,1節から始まって文学史にまで話が及ぶスタイルが確立するのは1880年代である。
著者
向井 茂 金銅 誠之 森 重文 中山 昇 井出 学 大橋 久範 髙木 寛通
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

Enriques曲面は古典的で非常に興味深い代数曲面である.ルート不変量にE7型格子をもつものを詳しく調べ、モジュラー不変量を用いて標準的楕円fibrationの定義方程式を書き下した.大橋久範と共同で,Enriques曲面にMathieu 型の半シンプレクティック作用をもつ有限群を分類し,Nikulinと金銅による有限自己同型Enriques曲面の分類の発展として,自己同型群が概アーベルなEnriques曲面を分類した.どの研究もEnriques曲面のルート不変量の厳密な定式化が成功の鍵である。高次数偏極K3曲面については,種数16のK3曲面のモジュライの単有理性を証明した.
著者
越久 仁敬 岡田 泰昌 平田 豊 池谷 裕二
出版者
兵庫医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

吸息活動は、延髄内のpre-Botzingercomplex(preBotC)という場所で起こる。従来の説では、呼吸リズムはpreBotCの神経細胞(ニューロン)が作り出しており、脳のもう一つの主要な構成細胞であるグリア細胞は、ニューロン周囲の細胞外環境を維持する程度の役割しか演じていないと考えられていた。本研究において、我々は、吸息時に活動するニューロンに先行して活動を開始するアストロサイト(グリア細胞の一種)を発見した。ニューロン活動のみを抑えるフグ毒のテトロドトキシンを投与すると、ニューロン活動および呼吸神経出力は消失したが、これらのアストロサイトの周期的な自発活動は残った。さらに、光を照射すると細胞を活性化させるイオンチャネルであるチャネルロドプシン2を、アストロサイトにのみ発現させた遺伝子改変マウスを用い、preBotC領域のアストロサイトを光照射で興奮させると、吸息性ニューロンの活動を惹起させることができた。これらの結果は、アストロサイトがpreBotC領域において呼吸リズム形成に積極的に関与していることを示唆している。
著者
山田 太造
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では日本史学研究における研究過程支援のため,史料目録・テキスト等から史学的知識を抽出し,知識間・知識-史料間・史料間などの関係を明確にしながら,内在する史学的知識・暗黙知を外在化する研究を行うため,特に(1)史学的知識の抽出・蓄積,(2)史学的知識間,史料学的知識-史料間,史料間の関連性の検出,(3)知識表現・関連表現とそれらを用いた検索手法の確立を目指した.
著者
津村 文彦
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では現代タイにおけるタトゥーの社会的布置と動態を分析した。サックヤンと呼ばれるタイの伝統的タトゥーは、僧侶などの宗教専門家によって、特別な文字と図像を身体に刻むことで呪術的な力を発揮するとされる。しかし現在ではファッション目的でサックヤンが用いられ、西洋の意匠が多く導入されている一方で、50年以上前からタトゥーが呪術でなく装飾のためにもしばしば用いられていた。タイのタトゥーをめぐる様々なフィールドデータより、魅惑と暴力という両義的な力こそがタイのタトゥーのもつ特徴であることが明らかになった。