著者
吉村 貴之
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

第二次世界大戦後に約10万人の在外アルメニア人がソヴィエト・アルメニアへ移住したのは、ソ連邦が、戦勝国として世界に離散するアルメニア社会の盟主として宣伝を行った結果である。しかし、折からの冷戦の昂進で在外アルメニア人社会は親ソ派と反ソ派に分裂し、この運動も下火となる。一方で、ソヴィエト・アルメニア政府は、この在外同胞の社会統合を進め、対外宣伝を強化するために、在外同胞の祖先の多くが被った第一次世界大戦にオスマン帝国下で発生したアルメニア人虐殺・追放事件から50周年にあたる1965年4月に大規模な追悼集会を首都エレヴァンで催した。だが、これが反トルコ・ナショナリズムを国内に浸透させる結果となる。
著者
横山 正 鈴木 創三 渡邉 泉 木村 園子ドロテア 大津 直子
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

福島県二本松市の放射性Csによる農耕地汚染実態の解明と植物-微生物相互作用によるその除去の加速化を検証した。二本松の優占粘土の雲母は、有機酸で固定したそれを放出した。阿武隈川流域の河川堆積物のその濃度は、秋季に減少し春季に増加した。水田ではオタマジャクシでその濃度が高く、イノシシ筋肉中のそれは自然減衰以上の減少を示した。また、鳥類の精巣や卵巣にその蓄積が見られた。畑の可給態のそれは2013年には1~5%に減少したが、森林土壌では3~13%を示した。植物はPGPR接種で、その吸収量を増大させたが、雲母が固定した分を吸収できず有機酸を生成するカリウム溶解菌の併用で、植物の吸収量を増加させられた。
著者
宮下 直
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

東京大学農学部付属演習林田無試験地に環境条件の異なる3調査地を設け(林内・林縁・草地)、それぞれに底辺5m×5m、高さ2.5m、メッシュ2cmの鳥が侵入できない網室を設置した。網室内には鉢植えにした高さ約1.8mのマツの苗木を6本づついれた。また、対照区として、各網室の外に同数のマツの鉢植えを設置した。各実験区に7月6日にジョロウグモとナガコガネグモの幼体をそれぞれ24および15匹づつ放して、その後の個体数の変化を調べた。ナガコガネグモはジョロウグモに比べて減少速度が速かったが、いづれの種についても網室の内と外で顕著な差はみられなかった。したがって、鳥類の捕食はこれらのクモ類にとって重要ではないと判断された。トラップにより捕獲した飛翔性の昆虫類の量は、草地>林縁>林内となったが、クモ類の体サイズもほぼこれに対応していた。ナガコガネグモでは生残率でも同様な傾向が見られたが、ジョロウグモでは全く逆の関係にあった。次に、クモの捕食により餌となる飛翔昆虫が減少するかを調べるため、上記の実験のうちでジョロウグモが多く定着した3調査区と、それぞれに隣接したクモのいない場所に飛翔昆虫捕獲用のトラップを設置した。その結果、クモの存在する区では飛翔昆虫類が少ないことが分かった。したがって、ジョロウグモの様な大型の造網性クモは、局所的に昆虫類の量を減少させうることが示された。今回の結果から、鳥、クモ、飛翔昆虫の3者間の関係は前2者間の関係の欠如により成立していなかったが、今後鳥類の繁殖期に当たる春期における同様な実験が必要であろう。
著者
梶本 裕之
出版者
電気通信大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究は情動を引き起こす触覚体験の単位要素の同定および情動を引き起こす触覚体験に必要な触覚ディスプレイの設計論構築を行った.応用事例として,音響スピーカを用いた触覚提示装置,鉛筆削りを模した触覚提示装置,笑い増幅器,音響コンテンツに合わせた耳触覚,歯磨き振動変調による心地よさ増幅,立毛による驚き感覚の増幅,擬似心拍の提示による親近感の増幅を行い,さらに触聴覚間の和音の存在を明らかにした
著者
只木 孝太郎
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

私は、Chaitinらによって創始されたアルゴリズム的情報理論を拡張して、それを量子力学系の測定理論に適用し、量子測定に対するGodelの不完全性定理を導出しようと試みている。本研究課題は、この全体構想の一環であり、平成19年度後半に私が創始した新しい学問分野であるアルゴリズム的情報理論の統計力学的解釈を徹底的に理解することが、本研究課題の具体的な目的である。
著者
スチュアート ヘンリ 岸上 伸啓 窪田 幸子 大村 敬一 齋藤 玲子
出版者
放送大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

4年間の研究調査機関で、1)カナダおよびグリーンランド政府の先住民メディア政策の歴史と現状に関する調査を行った、2)同国およびヨーロッパ7ヶ国の博物館・美術館展示におけるかつての植民で支配されていた先住民の表象に関する比較研究を実施した、3)映画、ビデオなどの媒体による過去の先住民の表象と、先住民自ら制作している映像に関する比較研究によって、古いステレオタイプが改められている一方で、先住民が提示するステレオタイプがあることを明らかにした、4)極北のイヌイト村でのテレビ、ラジオ、電話というメディアの利用に関する調査研究の成果として、そうしたメディアには社会的な役割が認められた、5)北アメリカ先住民文学について、資料収集および作家のインタビューを行ない、新しい動向を探った。以上の調査を通じて、先住民メディアにおいては文字媒体が低調になりつつある一方、インターネットやハンディキャム(ビデオ・カメラ)による電子媒体を通じて自らを表象する傾向が顕著になっていることが明らかになった。また、博物館・美術館学の視点からではなく、メディアとして調査した新しい試みを実施した。その視点から調査した結果、先住民の表象は、植民地史のあり方によって大きく異なっていることがわかった。
著者
江島 泰子
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は複雑に交錯する19世紀の政治・社会さらに文学の様相に対して、聖職者像というテーマによって補助線を引くことで、個々の作家の特異性を浮かび上がらせるとともに、ひいては19世紀文学の多様性を新たな角度から検証することを企図した。19世紀のカトリック教会の状況を制度の面から考察するとともに、実在の司祭像をとおして当時の精神性を考究した。司祭像研究については、個々の作家に特化したもの、あるいはマイナーな作者までも含めての概説書は存在するが、本研究のようなかたちでの先行研究は未だない。本研究の構成は、以下のとおりである。第一部「政教条約下の教会と聖職者」では収集した宗教・社会関連資料を駆使してカトリシスムの組織・動向・精神性研究を行い、文学が描いた司祭像のより深い理解を意図した。第二部「反自然としての聖職者縁」では、ミシュレとゾラを結びつけて検討することで、19世紀反教権主義の一系譜を示し、二人の作家の共通性と差異を明確にした。第三部「『絶対』の人、過去の人」は、ユゴーとルナンの「司祭なるもの」をめぐる思索に関する考究である。第四部「信仰あるいは信仰の誘惑と聖職者像」では、サント=ブーヴとユイスマンスを取り上げ、肉欲の懊悩と信仰と関連して司祭像がどのように把握されているのかを調べた。複数の作家の司祭像をまとめて検討したことで、19世紀フランス文学のダイナミズムの一端を明らかにできた。なお、ルナンに関する論文は、『ルナン学会誌』(Bulletin de la Societe des etudes renaniennes)に掲載することができた。またその論文が認められ、2009年7月のフランス学国際協会(AIEF)のルナン分科会での発表を依頼された。
著者
大澤 義明 鈴木 敦夫 白波瀬 佐和子 古藤 浩 田村 一軌 大津 晶 宮川 雅至 古藤 浩 田村 一軌 大津 晶 宮川 雅至 尾崎 尚也
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では, 高速道路や新幹線など空間的に線的に伸びる社会基盤施設整備に関して, 選挙民が投票で集団意志決定する場合, 施設がどこにどれだけ配置されるのかを空間的に導出し, どの程度経済的に効率的なのかあるいは公平なのか, を考察した. 投票ゲームによる配置と社会的な最適配置とを比較するなどを通して, 投票という集団意志決定がどの程度経済的に悪化させるのか, そして不公平にするかを理論的に評価した. さらには, 道路という社会基盤建設では, ステークホルダーは多様である. ゲーム理論のナッシュ均衡, 多目的計画問題でのパレート最適, 地理ネットワーク評価での地理値を用いて, 高速道路建設の影響を均衡という複眼的見地から理論的に論じた.
著者
土谷 敏治 井上 学 大島 登志彦 須田 昌弥 田中 健作 田中 耕市 山田 淳一 今井 理雄 中牧 崇 伊藤 慎悟
出版者
駒澤大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

超高齢社会において,モビリティ確保は重要な課題である.自動車依存が進展する中,公共交通維持の困難性が高まっている.本研究では,大都市圏縁辺部を中心に,市民の日常的な移動行動と公共交通機関の利用実績などの分析を通じて,公共交通機関の現状と問題点,公共交通機関利用促進の課題,新たな公共交通機関の可能性などについて検討した.その結果,茨城県ひたちなか市,埼玉県滑川町,徳島県上勝町,北海道函館市の調査によって,公共交通機関の利用者特性や利用実態,公共交通機関に対する市民の評価とその地域差,市民への情報提供の必要性,NPOによる新たな交通サービスの可能性,市民活動の重要性が明らかになった.
著者
仲村 匡司
出版者
京都大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

環境問題および資源の有効利用の点から木製品の有利性を論じるとき,その炭素ストック性が強調される傾向にある.この主張は木製品が物理的寿命を全うすることを前提としているため,使用者によって規定される心理的寿命と生産者が設定した物理的寿命は必ずしも一致しない.本研究は「木製品の心理的寿命の客観的評価の実現」を目指して,木製品の第一印象および記銘性に影響する諸因子を,心理応答および生理応答計測によって抽出することを目的とする.1)そもそも我々は,身の回りの木材や木製品の存在をどのくらい正確に把握しているのだろうか?そこで,木材部分の割合が既知の住宅内装画像(インテリア画像)を種々用意し,見た目の木材率(心理的木材率)を調査した.その結果,我々は意外なほど正確に木材の存在量を見積もれることがわかった.また,柱や梁,桟など木材が軸的(線的)に使われている場合には,木材量評価のばらつきが大きくなる傾向が見いだされた.2)上記の知見をさらに系統的に究明するために,広さや調度品は同じで,内装部材として用いられる木材だけが種々変化するインテリア画像をコンピュータ・グラフィックスで表現し,これらの心理的木材率を調査した.調査票を用いた調査においても,ヘッドマウンテッドディスプレイを用いた調査においても,我々は木材量を概ね正確に把握していることが明らかになったが,木材量が多いほどその内装が好ましいわけではなく,適度な木材量とともにその使い方(面的か,軸的かなど)も考慮する必要があることがわかった.今後,木質インテリアのデザイン性評価に使用可能な要因を抽出し,これを数量表現するための手法を考えるべきといえる.
著者
阿部 希望
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究は、農業史研究において等閑視されてきた近代日本農業の展開に関する研究であり、農業の基盤となる種子生産、特に研究蓄積のなかった民間主導の野菜種子の生産・流通に焦点を当てた研究である。わが国の資本主義経済の確立に伴う近代都市の成長により、消費者人口が増加し、都市近郊に野菜産地が形成された。こうした近代市場の成立に対応した新たな野菜生産の発展には、高品質な種子(固定種)の大量供給が不可欠であり、これを支えたのが「野菜種子屋」であった。本研究では、明治中後期以降の野菜生産の近代化という新たな動向の中で、「種子屋」がどのような役割を果たし、展開したのかを実証的に解明することを目的とした。本年度は主に、昨年度から調査研究を進めてきた「採種管理人兼種子仲買商」の経営分析を中心に、新たに発見した「採種農家」の史料を分析し、それらとこれまでの研究成果を総合的に検討することで、近代日本における民間育種家の役割とその歴史的展開を明らかにした。この成果を社会経済史学会、経済制度センターセミナー・経済発展研究会、首都圏形成史研究会において口頭発表するとともに、「近代における野菜種子需要拡大に伴う種子屋の機能分化と連携-『採種管理人』と『種子仲買商』の役割-」としてまとめ、現在、社会経済史学会『社会経済史学』に投稿中である。また、昨年度に引き続き、野菜育種に関する一次史料所在調査を蓄積する一方で、今年度は野菜以外の作物育種(稲・蚕種・果樹等)にも分析対象を広げて、複数の重要史料を入手した。
著者
濱田 麻矢 宇野木 洋 松浦 恆雄 福家 道信 絹川 浩敏 西村 正男 今泉 秀人 藤野 真子 三須 祐介 星名 宏修 大東 和重
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-11-18

日中戦争勃発の1937年から東アジアに冷戦体制が確立する1952年までを対象にして、中華圏における文化文芸の諸相に、文学テクスト・メディア分析・体制分析という三つの角度からアプローチした。2011年には移民研究についての勉強会を行い、2012年には40年代の女性形象についてシンポジウムを行った。また2013年は名古屋で、2014年には北京で研究集会を行い、文学、映画、演劇、音楽、などのメディアについて、日・中・台・米・シンガポール・マレーシアの研究者が集まり、横断的な討論を行った。なお、この研究成果は現在翻訳中で、2015年に論文集として出版予定である。
著者
片岡 勝子 洲崎 悦子 安嶋 紀昭 馬場 悠男
出版者
広島大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

江戸時代に医学教育研究のために10体余の木製人体骨格模型(木骨)が制作された。現存するのは星野木骨(身幹儀,1792年制作),各務木骨(1810年頃),奥田木骨2体(1820年頃),及び各務小木骨である。私たちは科研費により前4者と関連事項について調査研究した。真骨は全て刑死人のものであり,全ての木骨で舌骨が欠損している。星野木骨は医師,星野良悦が工人,原田孝次に制作させた等身大の成人男性骨格模型で,全ての模骨が揃っている。各骨は原則として別々に作られ,〓と〓孔で結合できる。骨は薄い茶色に,軟骨は白く塗られている。頭蓋冠は切っていないが,X線撮影及び内視鏡観察により,頭蓋内の構造も作られ,ほとんどが正確に頭蓋内外を連絡していた。各務木骨は医師,各務文献が田中某に作らせた等身大の成人男性骨格であるが,かなりの骨が欠損している。各骨は〓と〓孔で連結する。頭蓋は木片を繋ぎ合わせて作り,表面に和紙を張って薄茶色に彩色している。頭蓋冠は斜めに切られ,頭蓋内構造を観察できる。奥田木骨2体は同じ骨をモデルとし,奥田万里が細工師・池内某(またはその工房)に彫らせた等身大の成人女性骨格である。桧材を精巧に彫って形作り,一部の軟骨のみを白または褐色に彩色している。頭蓋は頭蓋冠を水平断し,内部構造が見える。奥田木骨は椅座位で展示できるように専用の台座や支柱があり,胸郭や骨盤は一体化し,組み立ての装具に工夫が見られる。各部の精粗については,それぞれの木骨で長短があるが,当時の日本にあった解剖学書の図に比べて極めて正確である。木骨は人骨を座右において観察できなかった江戸時代の医師が作らせた我国特有の医学資料で,正確・精巧に作られており,当時の医師の探究心,工人の観察眼の確かさ,技術の高さを伝える貴重な資料である。
著者
富田 純子
出版者
愛知学院大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

日本におけるBongkrekin acid(BA)毒素産生菌の分布状況を明らかにするために生息調査を行ったところ、日本の農業環境から分離されたBurkholderia gladioli数株がBA毒素産生能を有していることが明らかとなった。抽出した毒素をマウスに投与したところ、マウスは亜急性に死亡し、胃の膨張が確認された。毒素は胃の運動に何らかの影響を与えていることが示唆された。
著者
垂水 浩幸 林 敏浩 八重樫 理人
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

スポーツや音楽分野でのエンタテイナーの実演を遠隔の視聴者にインターネット中継で送れるようになったが、視聴者が現場に対して送ることのできる情報は現状では文字に限られている。本研究は主にスポーツの応援を遠隔から送り、選手に伝え、また選手から更に反応を返すことができるシステムを構築して実際のプロスポーツ公式戦で運用評価し、選手から高い評価を得ることができた。一方視聴者からの評価にはまだ課題が多く今後の課題である。
著者
成田 奈緒子
出版者
文教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

自閉症スペクトラム障害児者における前頭葉高次機能が、より効率的に発現するための刺激入力の工夫を実験的・実践的両側面から検証した。実験的には、刺激入力のない状態で大脳皮質に起こるdefault mode networking(DMN)に着目した脳機能実験によって、ASD児者が健常群と異なる前頭葉血流変化を示すことを予備実験で確認した。また、実践的には特別支援学級に在籍する児への継続的前頭葉刺激活動が学習等に及ぼす効果を示した。
著者
吉澤 寛之
出版者
岐阜大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では、犯罪や非行、攻撃行動などの反社会的行動に至る行動決定過程を意図性の観点から分類し、各過程による説明力の差異を明らかにした。さらに、行動決定過程と常習反社会性との関連を、再犯者と非再犯者や一般少年との比較分析や、サイコパシーとの関連分析により明らかにした。続いて、再犯性の予測や矯正プログラムの改善への貢献を視野に入れ、行動決定過程についての査定バッテリーを開発した。
著者
土田 龍太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

大叙事詩マハーバーラタの複雑な語り構造を分析調査し、その結果、叙事詩テキストの成立過程とおよその成立年代を明かにし、さらに他のテキストすなはちラーマーヤナなどとの関連について良き手掛りを得ることができた。
著者
馬越 徹
出版者
桜美林大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は,近年,大学の経営力の強化が叫ばれていることに鑑み,大学経営の中枢を担う大学職員に焦点を当て,彼らの職能向上,とりわけ専門職化(プロフェッショナル化)の方法としての大学院教育の役割に注目し,その実態と有効性を検討することを目的とした。その際,この分野で50年以上の歴史と実績をもつアメリカ,日本に先駆けて大学職員を対象とする専門職大学院を立ち上げている韓国の事例と日本のそれを比較研究することにした。研究を通じて得られた知見は以下のとおりである。(1)アメリカでは大学拡張期(1960年代)に大学職員の専門職化が進み,専門職大学院(教育大学院高等教育プログラム)が大量に創設されるとともに,専門職種(トップマネジメント,中級マネジメント)に応じた各種の短期プログラムの開発も行なわれてきた。一方,日本や韓国における職員の職能開発は,大学内および大学団体(協会)などにおける研修事業として行なわれてきたに過ぎない。(2)2000年以後,日本でも大学職員の職能開発のための大学院教育(通信制含む)がスタートしたが,まだ緒についたばかりであり,プログラムや開講形態(夜間,週末,夏季・冬季集中等)の面で改善の余地が多い。(例:桜美林大学・大学アドミニストレーション専攻,名古屋大学・高等教育マネジメント・コース,東京大学・大学経営・政策コース)(3)韓国の場合は,国公私立を包含する大学団体(韓国大学教育協議会)が,大学評価認定制度の運用と連動させて職員研修を体系的に行なってきているが,近年,専門職大学院(教育大学院)における大学職員の教育が本格化している。(亜州大学教育大学院・大学行政管理専攻)(4)これらのケース・スタディに加え,職員研修に関する文献目録を作成し,本テーマに関するデータベース構築の基礎作業をすることができた。
著者
青木 健一 木村 亮介 川崎 廣吉 若野 友一郎 小林 豊
出版者
明治大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-04-01

新学術領域研究「交替劇」は、ネアンデルタールの絶滅およびヒトによる置換(交替劇)を両者の文化水準の違いによって説明する(学習仮説)ことを目的とした。社会が到達する文化水準は、文化進化のあり方に依存する。このため、領域傘下の我が計画研究班では、文化進化の決定要因およびこれを支える学習戦略の進化に関する理論研究を行った。得られた多くの成果は、査読付の国際学術雑誌や著書に発表済みであり、国際的にも文化進化および学習戦略進化の研究に大きく貢献している。また、ネアンデルタールとヒトの学習戦略に違いがあるならば、両者の認知に関わる遺伝子にも違いが認められるはずとの立場から、分子人類学的な研究も少し行った。