著者
北澤 毅 有本 真紀 間山 広朗 間山 広朗
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

教育の場において大人と子どもは非対称的な関係にある。そこには子どもへの<まなざし>ともいうべき文化的・社会的規範があり、それは教育事象自体を成り立たせているものである。本共同研究は主に社会構築主義・エスノメソドロジーの方法を駆使し、教育実践現場における相互行為場面から今日流通する教育言説、さらには歴史的資料までをも射程にとらえ、「子どもへの<まなざし>」に関する総合的研究を行った。
著者
立岡 浩 林 紘一郎 山崎 茂雄 高 榮洙 梅村 修 福冨 忠和 牛木 理一 大角 玉樹 佐藤 薫 岩瀬 真央美 雑賀 忠宏 杉田 このみ 上田 学 家島 明彦 山口 芳香
出版者
花園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、映像コンテンツ産業におけるNPO(非営利組織)と、NPO・行政・企業・住民の複数利害関係者の参加によるPPP(公民協働事業体)及びその支援機関にかかる、権利・契約管理及び関連する振興政策と協働経営、そしてこれらの評価システムについて、産業ビジネス観・文化芸術観・社会エンパワメント観という3つの世界観及びそれらの調和バランスとを関係づけながら、理論と実証の両面から総合的多角的に解明する国際比較研究として行ったものである。
著者
藤枝 重治
出版者
福井大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

エクソゾームは、ドナー細胞の細胞質内にある親水性の蛋白、細胞膜、その近傍にある蛋白とともに小胞体を形成し、MHC class I、IIの抗原情報を含んでいる。この情報が隣接した細胞内に取り込まれたり、細胞表面の受容体を刺激したりする。そこで舌下免疫療法にて著効した患者血漿中からエクソゾームがそのような効果があるか調べることを目的として、まず血漿中からエクソゾームの分離を試みた。その結果15μgから80μgのエクソゾームが分離できた。さらにウエスタンブロットを行うとMHCクラスIIα鎖、CD9、CD86のバンドが検出できた。しかし抗CryJ1抗体では、バンドは検出できなかった。以上からエクソゾームの回収は可能であるが、やはり量が少ないことが問題であり、更なる検討には、回収量の改善と検出感度の向上が必須であることが判明した。
著者
水多 陽子
出版者
総合研究大学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

両候補遺伝子の相補性検定が終了し、日本晴とカサラス間で雑種花粉の不発芽を引き起こしている遺伝子は第1染色体上のDOPPELGANGER(DPL)1,第6染色体上のDPL2と名付けた機能未知の新規遺伝子であることが証明された。DPL1とDPL2は被子植物で高度に保存された重複遺伝子であり、遺伝子構造とRNA・タンパク質の発現解析からはカサラスアリルのDPL1遺伝子と日本晴アリルのDPL2遺伝子は機能欠損型であることが分かった。また、相補性検定の結果からはカサラスアリルのDPL2遺伝子と日本晴アリルのDPL1遺伝子は機能型であることが明らかとなった。リアルタイムRT-PCRとin situ hybridizationの結果から、機能的なDPLのmRNAは二核期の花粉内に蓄積されており、花粉発芽に対し何らかの重要な役割を持っていることを示唆している。また、ゲノム解析が終了した四種の被子植物(ヤマカモジグサ、ソルガム、トウモロコシ)とのシンテニーを元にDPLと名付けた原因遺伝子周辺のゲノム配列を比較することで、DPL遺伝子の重複はイネとヤマカモジグサが分岐した後に起きたことが分かった。本研究は種分化を隔離遺伝子の進化と隔離機構の成立という観点から種や属を超えて検証できた数少ない例である。発現解析からもこの遺伝子は花粉伝達に重要な新規遺伝子であることが示されており、今後DPLの機能を解明することはイネだけでなく、被子植物の生殖過程について有用な知見をもたらすことが予想される。現在、これまでの結果をまとめ、論文を投稿中である。
著者
渡辺 正夫 鈴木 剛
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

アブラナ科植物B.campestris(syn.rapa)の自家不和合性は、1遺伝子座S複対立系によって制御されており、S遺伝子の表現型が雌雄で一致したとき、自己花粉が拒絶され、受精に至らない。この現象は、柱頭上での自己・非自己の認識反応である。しかしながら、従来の研究が、S遺伝子を中心とした研究であったことから、S遺伝子の下流、つまり、SP11のシグナルをSRKが受容した後に機能するシグナル分子は、M遺伝子を除けば、ほとんど明らかになっていない。これまでの研究過程で単離したB.rapa自家和合性変異系統を材料として、自家不和合性系統との分離世代に対して、様々な分子マーカーを用いて、原因遺伝子単離を試みた。予備的な実験から、この自家和合性は、単一の遺伝子変異によるものではないことを明らかにしているので、QTL解析を導入することで変異を規定する原因遺伝子の数と存在位置を特定し、寄与率の高い遺伝子から単離を開始した。B.rapaに使用できる分子マーカーについては、SSRマーカーが種を超えても保存されていることから、SSRマーカーをベースとして、マーカー探索を開始した。さらに、ファインマッピングに利用されることが多いAFLPマーカー、シロイヌナズナマーカーとの同祖性の利用、国際コンソーシアムのアブラナゲノム情報の利用の可能性の検討を開始した。分離世代の表現型と分子マーカーとを組み合わせて、GTL解析を行い、染色体上のどのよう力の寄与が大きいかを検討する。その領域について、シロイヌナズナ、アブラナゲノム情報とリンクさせることを開始した。以上の実験を開始して数週間後に、本研究が廃止決定なったことから、研究を中止した。
著者
石井 徹
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

我々はふだん、一方では他者と向かい合って協力したり、逆に競争したりしている。しかし他方では結構長い時間、他者に身を委ねたり、逆に自己を主張したりして暮らしている。前者を「向かい合う信頼」、後者を「並んで座る信頼」と呼ぶ。本研究は、Garfinkel(1963)を直接の起源とする。一度崩壊した「信頼」を放ったとき、あらたにどのような「信頼」が生まれるかを探った。本研究は仮想状況を用いた実験的調査である。すなわち(a.)パーソナル・コンピュータのディスプレイ上に展開する仮想迷路と仮想アドバイザーへの対応データに基づいた(b.)具体的な意志決定パターンの変化から、(c.)信頼の形成・崩壊過程を実証的に描き出すことを試みた。本研究は平成6年度から平成8年度にかけて、実験による資料収集とその基礎解析を行った。また平成8年度は、さらに全体的分析を行った。被験者は132名(6年度49名、7年度45名、8年度38名)。18歳から25歳までの男女大学生(男子45名、女子86名)および男子社会人(38歳)1名。練習試行の後、被験者は、5回迷路をさまよった。被験者は第4試行と第5試行では迷路内に発生する「火災」を避けながら脱出した。このとき行われる「相棒」の誘導を受け容れるか否かは自由だった。第4試行で火災に3度遭遇し脱出に失敗した98名(男子28名、女子70名)のデータを分析した。分散分析の結果から、第5試行において被験者が第4試行と同様の誘導パターンを示したことを見いだした。これは特に第5試行の第2四半期以降に現れた。既知のものに対する安心と、心理的慣性の法則という二つの観点を提案し、直前に脱出失敗をもたらした意志決定パターンを被験者が再度くり返した現象について考察した。
著者
門野 敏彦 重森 啓介 弘中 陽一郎 佐野 孝好 藤岡 慎介 境家 達弘 杉田 精司 黒澤 耕介 大野 宗祐 松井 孝典 中村 昭子 荒川 政彦 近藤 忠 藪田 ひかる
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

高出カレーザーを用いてサブミリメートルサイズの弾丸および平板飛翔体を加速した.従来の加速方法ではこのサイズの飛翔体は秒速数kmまでしか加速できなかったが,本研究では秒速10km以上(最高秒速60km)に加速することに成功した.この技術を使って岩石標的に対して超高速度衝突実験を行い,衝突によって発生する高圧状態での岩石物質の状態方程式,高圧から解放後に発生する蒸気の組成や熱力学状態,クレーターサイズ,放出破片,クレーター深部の状態,など,これまで全く実験的データの無かった未知領域での知見を数多く得ることが出来た.
著者
本勝 千歳
出版者
宮崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究ではヒュウガナツ枝変わり系統である'西内小夏'の生殖特性を明らかにするために受粉試験、果実の形質調査、胚珠および種子成長の組織観察を行った。まず、普通系ヒュウガナツ(普通系)、'西内小夏'、ハッサク、スイートスプリングを種子親として、'西内小夏'ならびに普通系、ハッサクの花粉をそれぞれ受粉し、結実率、果実成長を調査した。その結果、'西内小夏'を花粉親として使用した場合、全ての種子親について果実が得られた。一方、'西内小夏'×普通系は受粉後10週目までにすべて生理落果を起こした。ヒュウガナツの自家不和合性が雌ずい側と花粉側の複数の因子に関係していると仮定するならば、この普通系と'西内小夏'の正逆交雑の結果から、'西内小夏'は花粉側因子に何らかの異常が発生したと考えられた。また、収穫果の含有種子についてみると、各種子親における'西内小夏'花粉受粉果は、他の花粉受粉果と比較して完全種子数は有意に減少し、しいなの数は有意に多くなった。種子親が普通系および'西内小夏'の場合、'西内小夏'花粉を受粉して得られた果実内の種子はほとんどしいなとなったのに対して、種子親がハッサクおよびスイートスプリングでは正常種子としいなが果実中に混在して確認された。特に種子親がハッサクの場合は、一つの果実内に見られる正常種子としいなの割合が、果実毎によって異なっていた。次に普通系ヒュウガナツおよび'西内小夏'の果実発育中の種子を取り出して観察したところ、種子のしいな化は受粉後8週目〜12週目の間に起こっていた。胚発生の組織観察の結果、'西内小夏'受粉果において胚の初期成長が観察されたことから、'西内小夏'花粉受粉果でも受精がおこるものと推察された。しかし、受粉後8週目〜12週目にかけて胚の異常発達や胚の消失が確認され、このことが種子のしいな化に影響していると考えられた。
著者
伊達 洋至 小池 薫 板東 徹 庄司 剛 陳 豊史 藤永 卓司 岡本 俊宏 佐野 由文 大藤 剛宏 山根 正修
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、京都大学(呼吸器外科および救急医学分野)と岡山大学(呼吸器外科)の共同研究により、心停止ドナーからの肺移植臨床応用をめざすものである。体外肺還流(ex-vivo lung perfusion, EVLP)の実験系を用いて、両大学で大動物実験を継続した。京都大学では、EVLP還流液としてのET-Kyoto液の有用性とEVLPによる肺水腫を来したグラフト肺修復の可能性を報告した。一方、岡山大学では、EVLP中に吸着膜を使用して炎症性サイトカイン(TNFαとIL-8)を除去する効果を検討し、サイトカイン以外の因子がグラフト肺の傷害に関与している可能性を示した。
著者
伊藤 光利 (2006) 五百旗頭 真 (2005) VICTOR KUZMINKOV
出版者
神戸大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

研究の第2部を構成するソ連解体後,エリツィンとプーチン時代の日ロ関係について研究を行った。まず,特徴なのは,ソ連時代と異なって新生ロシアと日本には,民主主義と市場経済の原理を信頼するという共通の価値観ができたことである。ソ連の解体とともに戦後に形成された二極支配の国際体系が崩壊し,日ソ間に存在したイデオロギーと体制上の対立がなくなった。第二に,1992年に登場したビル・クリントン政権はこれまでロシアに対して消極的であったブッシュ政権とは異なったロシアにおける民主化を積極的に指示することにした。また同盟国の日本の対ロシア政策の変化を求めた。第三に,国際情勢が変化するなかで,エリツィン・橋本の間で日ロは幅広い協力関係への転換を試みた。ロシアの政策が欧米との協調だけではなく,プリマコフ外相の下でアジアとの協力をも求める政策へと転換した。これを受けて日本はロシアに対する政経不可分の原則に基づいた「拡大均衡」政策から,更なる幅広い関係の発展を目指す「重層的アプローチ」の政策へと進んだ。日本政府は,アジア太平洋地域における安全保障のために,強いロシアの必要性を認めた上で,ロシアをG8の正式メンバーとして歓迎した。そしてエリツィンと橋本の両首脳の間に信頼関係が築かれ,それを基礎として,両首脳はクラスノヤルスクと川奈の非公式会談において画期的な合意を達成し,日ロ関係を新たな協力関係の段階に乗せた。しかし,二人のリーダシップによって築かれた日ロ関係はリーダの退場によってモメンタムを失い足踏みすることになった。日ロ両国を分断する国際構造は消えたが,両国共通の関心と利益を築くことは容易ではなかった。
著者
礒崎 初仁 田口 一博 金井 利之 田口 一博 阿部 昌樹 礒崎 初仁 伊藤 正次 亀井 源太郎 阿部 昌樹 伊藤 正次 亀井 源太郎
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

自治体の不祥事は多様であるが、(1)組織的不正行為、(2)組織的失敗行為、(3)職務上の個人的不正行為、(4)職務外の個人的不祥事に分けられる。その原因としては、(1)職務の複雑さと責任の拡大、(2)人材育成不足と職務環境の劣化、(3)社会からの要求の厳格化等がある。そこで対策としては、(1)事務執行の手続整備、(2)検査・監査体制の実質化、(3)関係者通報の促進、(4)人事政策・組織改革が必要である。今後の法令遵守には、(1)地方分権による決定権の拡大、(2)政策法務の発想の浸透、(3)情報公開・説明責任の仕組みが重要である。法令遵守は、自治体の自己改革と住民自治を促進する意味をもつのである。
著者
福永 伸哉 高橋 照彦 寺前 直人 清家 章 都出比 呂志 伊藤 聖浩 禹 在柄 朴 天秀 ロラン ネスプルス
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、おもに1990年代以降の新たな考古資料の分析と効果的なフィールドワークを結合させることによって、古墳時代政治史を考古学的に考察した。その結果、弥生終末期から古墳後期まで、中央性を持つ政治権力が畿内地域に一貫して存在したが、その内部では主導権の数度の移動が認められ、これが「政権交替」と呼ぶべき政治変動であったという理解に到達した。そして、この政治変動の背景には、大和盆地と河内平野に基盤を置く2つの地域集団の対抗関係が存在したのではないかという仮説を提示した。
著者
金崎 雅之
出版者
九州産業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

政策決定過程の応用ミクロ経済分析として、政治献金と情報が政策決定、ひいては住民の厚生に与える影響を明らかにした。さらにこの観点から地域間の統合の可能性を明らかにした。また、官僚の将来利得獲得の誘因と政治家の再選の誘因が両者の政策にまつわる業務を行う上での努力水準の決定に与える影響を明らかにし、さらに政策決定に関する権限の配分の決定権の所在の在り方を制度の違いとして捉え、それら制度の違いが政治家や官僚の政策業務上の権限分割と投入する努力に与える影響について分析を加えた。
著者
数馬 広二 KAZUMA Koji
出版者
工学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、江戸幕末期、関東農村で農民の身体文化の一部と位置づけられる剣術の普及とその意義を明らかにすることを目的とする。とくに、上野国(馬庭念流)・下野国(神道無念流)農村における武術流派運営の実態を調査した。(1)上野国甘楽郡の馬庭念流門人調査上野国甘楽郡内の馬庭念流門人は78村域。門人は七日市藩士(前田家)、小幡藩士(織田家 松平家)、「関守」「僧」「医師」「農民」などであった。とくに「砥石」「蒟蒻」信州米、上州絹の商取引で栄えた宿場町(下仁田町・一宮町・富岡町)に門人が多く確認された。また門人であった関守・神戸家、市川家は信濃国佐久郡への新田開発や藩への献金も行っており、馬庭念流が信濃国への門人を拡大する上で大きな役割を果たしたと考えられる。また馬庭念流が伊勢神宮へ姓名額を奉納した件では、18世樋口十郎右衛門定伊が七日市藩士として中山道の交通上の特権に恵まれ、滞りなく行われたことがわかった。このことは近世剣術流派の一事業である奉額活動が藩によって支えられた事実を示す初めての研究であった。(2)下野国太平山神社の奉納額の調査栃木県大平町にある太平山神社に奉納された武術姓名額(倉庫に保管)について枚数、姓名などにつき調査を行い、的確な番号付けと再配置を行った。作業は5日間合計作業人足は26名となった。合計84枚の額のうち剣術は、神道無念流(文政6年・嘉永7年・慶應丁卯年)の計3枚、弓術は日置流・大和流(明治28年)・奉納弓術会(明治35年)、砲術は、武衛流(慶応3年)、外記流(年代不明)であった。
著者
宮本 有紀
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

医療に対する「患者満足度」という概念の重要性については近年多くの医療関係者が認めており、関心の高まつているテーマである。精神科領域でも患者に対する処遇の改善や環境の改善が熱心に行われており、また、退院促進活動と関連して効果的な医療の利用が促進されている現在、患者による精神科医療の評価は、今後さらに広く試みられる必要がある。そこで、精神科疾患を有する患者の患者満足度に影響を与える因子を明らかにするために、平成17年度から平成18年度にかけて、精神科の入院医療を利用したことのある者に対し、インタビュー調査を実施した。調査対象は、精神科の入院医療を利用したことのある者で、研究協力に同意した者である。研究協力者は、調査対象者に次の対象者の候補となる者を紹介してもらう、精神科疾患を有する人の利用する施設等で募集するなどして研究者がアクセスすることのできた者である。調査の実施にあたり、研究の主旨と、研究への協力は自由意思によるものであり、答えたくないことを答える必要はないこと、いつでも協力を取り下げることができることを対象者に口頭および文書にて説明し、文書による同意を得た。また、インタビュー時に対象者から許可を得ることができた場合にはインタビュー内容を録音した。本研究で対象となった全ての者がインタビュー内容の録音に同意したため、その音声データを逐語録にした。対象者によって語られた内容を継続的に比較し、分析を行った。その結果、患者の精神科入院医療に対する満足に関連する要因として、医療者との関係性、疾患や症状の改善、入院環境や治療の構造などが抽出された。
著者
小川 博久 神田 伸生 岩田 遵子 杉山 哲司 樋口 利康 岡 健 小川 哲男
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、現代の学校において、子ども達が学校生活を快適に過ごしているか、学校は子ども達にストレスの無い生活の場を提供しているか、といった問題意識を追究するために、幼稚園や小学校においてフィールドワークを行い、自由な活動の場である遊びに焦点をあて、子ども達の姿を追い、その実態を分析することによって、現代の学校(幼稚園を含む)の課題の解決の方向を探ったものである。当初、小学校における学校の余暇時間における子どもの遊びに着目していたが、学校の居場所性を追求するためには、結局、子ども達の学校生活全体を把握せざるを得ず、われわれの課題は、小学校においては、学級における個と集団の問題を焦点にフィールドワークを続けることになった。その結果、この研究を通して明らかになったことは、幼稚園の室内遊びにおいては、室内に遊びのコーナーの設定がなされ、そこで日常的に繰り返し遊びを続けることで、幼児たちの間に同型的同調や応答的同調の「ノリ」が生成し、遊びが盛り上がり、幼児たちに成立する遊びの内部的秩序感覚(「ノリ」)を通して、個と集団のよき関係が成立すること、同じことが園庭では、エンドレスリレーやサッカーにおける循環や応答の動きのパターンを通して言えることが明らかとなった。また、小学校におけるフィールドワークからは、以下の点が明らかになった。現代の学校の本質として、教授活動を中心に、学業成績の階層的序列化によって、子ども達の能力も差異化され、特に「問題児」は、学級から排除される可能性をはらんでいるが、学級の個と集団の関係が子どもたちにとって豊かな居場所性を獲得するためには、物的・空間的環境の豊かさによって、子ども達の身体的同調を図るよりもこ教師と子どもとの間の相互的な言語コミュニケーションによって「ノリ」を確立することが重要であることが明らかとなった。
著者
村本 健一郎 播磨屋 敏生 久保 守 藤田 政之 椎名 徹
出版者
金沢大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2000

雲の中で成長した雪結晶は自分の重みで落下が始まり,雲粒の中を落下していく途中で雲粒が雪結晶に付着して種々の形に成長するが,落下速度は遅いので,すぐに空間密度が高まり互いに接触する割合が高く,しかも枝の構造が機械的にからみやすいため,いくつもの結晶の合体した雪片となる.この雪片同士が衝突併合には,雪片輪郭線の複雑さや落下運動の不規則さが関与していることが報告されているが,実際に雪片同士が衝突した瞬間の映像は捉えられていない.また,雪片が複雑な運動を伴って落下する理由も十分には解明されていない.本研究では,できるだけ自然に近い状態で落下中の雪片の映像を録画するシステムを製作し,次にそれらの映像を画像処理技術を使って定量化し,降雪現象の物理的特性を定量的に解明するシステムを開発することを目的として以下の実験を行った.(I)降雪雪片撮影システムの開発できるだけ自然現象に近い状態で落下中の雪片を観測するために4m(縦)×5m(横)×13m(高さ)の観測塔内で,地面に対して水平方向に1台,および鉛直方向に4台のCCDカメラを設置し,降雪雪片の落下中の運動を2方向から同時に撮影するシステムを開発した.(I)降雪観測と解析実際に、降雪中の切片を5台のカメラで撮影した.撮影した画像から降雪雪片の形状と3次元的な落下運動軌跡を求めた.
著者
長尾 大輔 玉井 久司 喜多 英敏 田中 一宏 岡崎 文保 斎藤 幸恵
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2008

非球形粒子として雪だるま型あるいはダンベル型の異方性複合粒子を 合成した。本複合粒子は、粒子を形作る有機ポリマーと、そのポリマー内部に埋め込まれた球無機成分に外場応答性を与えれば、外場に応答する異方性複合粒子も合成できる。このような特徴を有する異形複合粒子に対して磁場、電場等の外場を適切に 印加すると、異方性粒子が向きを揃えた状態で集積することを顕微鏡観察により実証した。
著者
雪江 明彦
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究においては, 以前完成させた結果を出版することが一つの目的だった. 直近に完成した三つのプレプリントのうち二つは, 今回の研究期間中に出版することができた. 三つめは改訂中である. その結果を得る過程において, ジョルダン分解の概念を拡張する可能性に気がついた. それを遂行するのが, もう一つの目的であった. それはプレプリントという形では実現していないが, 研究は進行していて, 近い将来プレプリントになる予定である.
著者
木戸 利秋 平野 隆之 伊藤 文人 丹羽 啓子 丹波 史紀 谷口 由希子
出版者
日本福祉大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

社会的排除への政策対応が課題になっていることをふまえ、イギリスと日本の政策プログラムの評価研究を行った。その結果、イギリスでは社会的排除対策の進展もみられるが、同時に現代社会において貧困や排除に対応すべきソーシャルワークが岐路にたっていることも明らかになった。他方、日本では都市部での貧困調査、子どもの貧困調査、そして過疎地域の高齢者実態調査から貧困・社会的排除対策の現状と課題を明らかにした。