- 著者
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横澤 一彦
河原 純一郎
齋木 潤
熊田 孝恒
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2000
高次視覚研究用の実験ソフトウェアと実験データベースの作成を行った。新たな実験環境を実現するにあたり、様々な環境で動作することを念頭に置き、Jaba環境で動作する実験ソフトウェアと実験データベースを作成し、インターネットで公開した。更に、シミュレーション・モデル構築を目指す高次視覚研究を展開した。線運動錯視探索のモデル(Kawahara & Yokosawa,2001)では、探索の誤答率を,線運動がおのおの独立して生起するという仮現運動モデルによって予測した。その結果、様々な状況での探索成績がこのモデルで予測可能であることを確認すると共に、線運動錯視が視覚的注意によって起こる場合と,独立して画面内の複数の位置で起こる仮現運動によって起こる場合があることが示唆された。視覚的選択過程モデル化(Kumada & Humphreys, in press)を試みた結果、従来の認知心理学における反応時間の分析では、正答反応のみが分析の対象として用いられてきたが、誤答の反応時間が、正答の反応時間の分布と比較した場合に極めて有意義なデータをもたらすことを発見し、それらを可視化する手法としてLOC分析(Latency Operation Characteristics analysis)を開発した。パルスニューラルネットワークモデル(齋木,2002)を使って、選択的注意のモデルとして,CrickとKochの提案した視覚的注意の時間タグ付け仮説を実装し,視覚的注意の神経生理学の古典的知見であるMoran & Desimone(1985)の結果をシミュレートした。第2標的への遅延マスキングがない場合にも注意の瞬きが見られる場合があることを実験的に見いだしたので、表象減衰による注意の瞬きモデル(Kawahara, in press)を提案し、第2標的の視覚表象は時間経過とともに減衰することによって、注意の瞬きが起こる過程の説明をした。