著者
新谷 浩一 今井 昭夫 石原 良晃
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究課題では,折りたたみコンテナの導入が港背後地でのコンテナトレーラ輸送において,コスト削減効果をもたらすか否かについて検討した.具体的には,折りたたみコンテナを導入することによって,トレーラの使用台数と走行距離,荷役回数を減らすかどうか数理計画的手法を用いて検証した.近年,大規模コンテナ港の背後地では,空コンテナの過不足問題が深刻化している.その問題の緩和に,空のときに輸送容量を縮小できる折りたたみコンテナの導入に期待される.しかし,折りたたみコンテナはいまだ本格的な実用化にいたっていない.なぜなら,折りたたみコンテナがコスト削減効果をもたらすかどうか明確になっていなかったからである.
著者
吉田 祥子 穂積 直裕
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

自閉症または神経変性誘発が疑われる化学物質である、バルプロ酸(VPA)、トリコスタチンA(TSA)、クロルピリホス(CPF)、リポポリサッカライド(LPS)、グリホサート (GLY)を胎生期ラットに曝露し、VPA、TSAで神経死の過剰抑制、CPF、LPS、GLYで過剰神経死を観察した。神経死は炎症性サイトカイン発現と相関があり、特にGLYでは発達依存的にサイトカインの上昇が見られた。同時に現れる小脳褶曲の変化は別の機序を持つことが示唆された。VPA曝露動物の行動はADHD様、GLY曝露動物はASD様を示した。VPA曝露へのオキシトシンの投与、GLY曝露への酪酸投与で神経発達異常が軽減した。
著者
藤井 徹也
出版者
愛知県立看護大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

平成15年度は、14年度に引き続き、尿道留置カテーテル挿入時の在宅療養患者の陰部清潔ケア方法を明らかにするために、在宅で活用できる陰部の清潔方法の検討および在宅療養における陰部清潔保持についての実態調査に用いる質問紙内容を作成するために、陰部清潔保持について、援助を実施している医療職者から、現状についてインタビューを行った。セルフケアが行えない患者に対して、陰部に関する清潔保持の方法などの指導が行われていない状況があった。このことから、尿道留置カテーテル挿入患者に加え、陰部に関する清潔保持の援助を受けている患者についても実態調査が必要と考えられ、質問内容の検討を行い、今後調査実施の予定である。また、在宅において、陰部の清潔が必要とされる患者の多くは臥床状態にあることから、ベッドレスト実験の被験者(健康な青年期男子6名)の陰部清潔保持を目的として、殺菌効果のある酸性電解水(pH2.7,ORP1110mV,残留塩素30ppm)を用いて陰部洗浄を20日間実施した。洗浄前後の陰嚢部横の皮膚のpH,油分の測定および1日目、7日目、14日目、20日目の洗浄前後の尿道口および中間尿の細菌の同定を行った。分析方法は、pHおよび油分について対応のあるt検定を行った。その結果、酸性電解水での洗浄によりpHは6.0±0.5から4.9±0.5と有意に酸性(P<0.001)となり、また、物理的効果により油分についても103.8±31.8から74.3±30.5と有意に減少していた(P<0.001)。また尿道口および中間尿の細菌について、Satphylococcus spp.(コアクラーゼ陰性)、Corynebacterium spp.などが認められた。尿道口と中間尿の細菌は同種であった。20日間に皮膚の異常などの訴えはなく、発赤なども認めなかった。尚、研究参加の同意については、研究内容、プライバシーの保護及び研究協力を拒否できる権利とともに個別に説明を行い、同意を得た。
著者
柴田 大輔 河合 望 中町 信孝 津本 英利 長谷川 修一 青木 健 有松 唯 上野 雅由樹 久米 正吾 嶋田 英晴 下釜 和也 鈴木 恵美 高井 啓介 伊達 聖伸 辻 明日香 亀谷 学 渡井 葉子
出版者
筑波大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-06-28

現在の西アジア諸国において戦争・政争を引き起こす重要なファクターとしてイスラームの政教問題が挙げられる。西アジア政教問題の重要性は万人が認めるところだが、一方でこの問題は単なる現代情勢の一端として表層的に扱われ、しかも紋切り型の説明で片付けられることも多い。本研究は、文明が発祥した古代からイスラーム政権が欧米列強と対峙する近現代にいたる長い歴史を射程に入れ、政教問題がたどった錯綜した系譜の解明を目指した。ユダヤ・キリスト教社会、紋切り型の説明を作ってきた近現代西欧のオリエント学者たちが西アジアに向けた「眼差し」も批判的に検討したうえで、西アジア政教問題に関する新しい見取り図の提示を目指した。
著者
宇田津 徹朗 木下 尚子 藤原 宏志
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

1.琉球列島における稲作の始まりと伝播ルートの存否について琉球列島に所在する34の遺跡について調査分析を実施し、琉球列島におけるグスク時代と貝塚時代後期における稲作の存在について検討を行った。その結果、グスク時代の遺跡については、稲作の存在を分析的に確認することができたが、貝塚時代後期については、稲作の存在を示すデータは得られなかった。特に、グスク時代には琉球列島全域で稲作が営まれていたことを示すデータが得られている。また、プラント・オパール形状解析の結果、栽培されていたイネはジャポニカであることも明らかとなっている。以上の結果から、貝塚時代における稲作および南方ルート成立の可能性は低く、列島に稲作が定着したのは、グスク時代であると考えられる。なお、この結果は、現在までの考古学的な調査所見とも矛盾のないものとなっている。2.北部九州における縄文後期、晩期における稲作の存在とその広がりについて南方ルートを除く2つの伝播ルートの可能性を検討するために、これらの共通の窓口である北部九州における縄文後晩期の稲作の存在とひろがりについて調査を行った。具体的には、北部九州に所在する13の遺跡の土器や土壌についてプラント・オパール分析を実施し、検討を行った。その結果、7つの遺跡で、縄文後期あるいは晩期の試料からイネプラント・オパールが検出され、北部九州における縄文後晩期の稲作の存在とその広がりについて確認をすることができた。今回の結果は、北部九州を窓口とする伝播ルートの可能性を支持するものであり、今後、さらに調査事例を増すことにより、検証を進める必要がある。
著者
西村 誠次
出版者
金沢大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

【目的】末梢神経損傷を伴う外傷手で,示指各関節の屈曲あるいは伸展による各関節トルク値を算出し,示指屈曲・伸展運動における手内筋の関与を検討した.【対象】末梢神経損傷を伴う外傷手4例8手(年齢23.8±4.8歳)の示指を対象に健側手と対照させた.症例1と2は手内筋の回復が見られない手内筋マイナス群で,症例3と4は回復が見られる手内筋プラス群とした.【方法】4枚の歪みゲージ(日本電気三栄社製,N11-FA-10-120-11)を用いた自作の指押し力測定器具で指押し力を測定し,各々の関節からの距離との積によって各関節トルク値を算出した.各々測定は3回おこない最大値を記録した.【結果と考察】屈曲トルク値は,手内筋マイナス群ではDIPで最も大きく,PIPとMPはDIPの約1/3であった.PIPのトルク値が減少したのは,虫様筋の麻痺により深指屈筋の収縮力が有効に作用しなかったためと考えられたが,その機序は解明できなかった.またMPトルク値の減少はMPの屈筋群である第1背側骨間筋の麻痺によるものとも考えられる.伸展トルク値は,健側では,MP(IP伸展位),MP(IP屈曲位),PIP,DIPの順で大きく,患側では,MP(IP屈曲位),MP(IP伸展位),PIP,DIPの順であり,健側ではMPのIP伸展位が,患側ではMPのIP屈曲位が最も大きい値を示した.MP伸展力は指伸筋で作られるが,健側のIP伸展位では虫様筋が収縮しFDP腱を遠位方向に引き,FDPによる拮抗作用を減少させることでIP伸展位が大きい値を示したと考える.一方,患側では虫様筋が収縮しないため,PIP関節の肢位によってFDPによる拮抗作用は減少せず,IPI屈曲位で指伸筋は他動的に伸張され,その分収縮力が有効にMPに作用し大きい値で測定されたと考える.すなわち,手内筋の麻痺によってPIP,MP関節の屈曲力と伸展力はともに減少することが示唆された.
著者
鈴木 道生 鈴木 庸平 アーサン ナズムル
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

黄鉄鉱ナノ粒子を合成したという報告は数多いが、再現性および安定性の面から実用化は困難であった。応募者らはウロコフネタマガイが特定の生体高分子タンパク質と黄鉄鉱ナノ粒子が共に含まれることに着目し、市販のタンパク質を用いて水系の溶液で非常に効率よく粒径の揃った黄鉄鉱ナノ粒子を合成することに成功した。本研究ではウロコフネタマガイ由来のタンパク質を組み換え体として準備し、より粒径の小さい黄鉄鉱ナノ粒子を、高効率で大量に合成する手法を検討し、太陽光発電のデバイス開発に応用する。
著者
江島 伸興 徳丸 治
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

インフルエンザ感染システムを長期(20年)に亘るのサーベイランスデータ分析と説明変数(原因と成りえる項目)が結果に与える影響評価のための統計的方法の開発の両面から研究を行った。1999年から本邦で観測されている週報データによる分析を行い、インフルエンザワクチン接種量の増加に対して、報告患者数が増加傾向にあることを統計的に結論付けた。また、RSウイルス感染症とインフルエンザの感染での干渉の研究成果も得た。これらの成果からインフルエンザ感染対策に向けた研究課題を示唆する結論が得られた。説明変数が応答変数に与える統計的方法の研究ではパス分析の基礎的方法を提唱した。
著者
松本 和健 坂口 直志
出版者
釧路工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では,下層土の土壌インピーダンスの大きさと位相を三次元的なデータとして取得するために,四探針電気探査法とRMS法(無線磁気探査法)による計測システムを構築する。土壌の含水率を電気回路モデルから解析する方法について提案し検証している。本方法で,土壌粒子の粒径や密度,水分含有量の深さ方向のデータが非破壊で得られると期待でき,従来よりも簡便に災害時の土壌特性を明らかにできる。非破壊的な下層土の土壌インピーダンス計測が災害時の土壌評価として有用であることを検証する。
著者
谷口 正信 山下 智志 青嶋 誠 阿部 俊弘
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2018-06-11

広汎な観測に対して、一般化因果性指標の導入と、その最適推測論の構築、その膨大な応用をもくろむ研究推進である。本年度は、まず、2次モーメントを持たない安定過程からの因果性解析について、応答行列を用いて、一般化因果性を導入し、経験尤度統計量に基づいた因果性検定を提案し、その漸近分布を明らかにして、有用性を数値的にも検証した。また、安定過程も含む確率過程に対して L^p ノルムでの予測子、補間子を求めることができ、安定過程に対するL^p ノルムでの、因果性導入の基礎研究も前進させた。位相データに対しては、まず、パーシステントランドスケープに基づく位相指標を用いた実際の金融解析で、国内、米国、欧州の総合指標に適用し、金融危機以前に、この位相指標が、大きく動くことを観測した。この結果は、位相指標に基づいた因果性解析は、将来の予期できない危機への因果性抽出のポテンシャルが期待できることを意味し、今後の該当分野の研究発展への一里塚となった。高次元時系列解析においては、種々の設定での自己共分散行列の推定や、Whittle 推定量の漸近性質を明らかにした。またこの設定での時系列判別解析での基礎理論構築や、時系列分散分析における古典的検定統計量の漸近分布の導出もでき、福島県の多地域の放射線データに適用された。これらの諸結果は、高次元時系列に対する因果性研究の基礎となる。高次元観測においては縮小推定量が有用であるので、時系列縮小推定量の諸性質も明らかにされた。時系列観測を 0 と 1 の2値に変換したデータに基づき時系列解析を行うことができる。この場合、情報を失うので、推測の効率は失われるが、種々の頑健性を示すことができた。この流れで、スペクトルに基づく離反度を導入し、これに基づく因果性指標の推定量から因果性検定統計量が導入できる、これにより、この検定は、外れ値に対して頑健性を持つ。
著者
吉田 明日香
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

近年、歯周炎は、循環器疾患のリスクとなる可能性があることが報告されてきた。我々は以前、基礎実験から、特定の歯周病原細菌感染が圧負荷心肥大、心臓の間質の線維化、血管周囲組織の線維化を促進し、心機能を低下させ、炎症性マーカーの発現を亢進させることを明らかにした。本研究の目的は、実験的モデルマウスを用い、歯周病原細菌感染が心肥大に与える影響とその機序を検討することとした。結果として、他の特定の歯周病原細菌感染によって心臓肥大を悪化させてしまうことと、特定の細胞表面に存在するタンパク質受容体を介して、心臓の間質の線維化の抑制と、炎症性マーカーの発現の抑制が起こることを明らかにした。
著者
鈴木 基史 飯田 敬輔 石黒 馨 岩波 由香里 栗崎 周平 多湖 淳 石田 淳 小浜 祥子 中山 裕美
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

主な実績として以下の3つを挙げる。最も重要な成果は、本研究計画に即して初年度から進めてきた分析をまとめあげるため、代表者・分担者が下記の題目の論文の作成に着手し、進めたことである。その過程として、9月に研究会を開催して代表者が方向性を提示し、その後、調整を経て各論文の題目と構成の決定を行った。いずれの論文も科研題目「国際制度の衰微と再生の政治経済分析」に合致し、研究計画で予定されている方法を駆使して作成されるものである。石黒馨「貿易協定と貿易戦争の緩衝」、石田淳「事前協議制度と同盟ディレンマの緩和」、岩波由香里「国連平和維持活動と部隊派遣」、鈴木基史「国際開発援助制度の危機とポピュリズムの台頭」、栗崎周平「外交使節制度の進化と国際システムの形成」、飯田敬輔「グローバル貿易レジームと米国リーダーシップの言説」、中山裕美(土井翔平との共著)「 国際難民制度の危機のテキスト分析」、鈴木基史(松尾晃隆・宇治梓紗との共著)「国際金融サーベイランス制度の比較テキスト分析」、多湖淳「非核三原則と国民の認識変化」、小濵祥子(大槻一統との共著)「核抑止制度と第二撃」第二の実績として、2019年6月28日に京都大学において日本学術会議の主催、本科研研究共催の学術フォーラム「グローバル政策ネットワークと国際機関」を主導した。同フォーラムは、本研究課題と合致し、代表者の鈴木が責任者として趣旨説明を行い、分担者の飯田敬輔教授が本科研課題に関連する研究報告を行った。第三に、研究協力者の宇治梓紗京都大学講師が、本科研研究の方法として掲げているサーベイ実験を気候変動制度を対象として実施した。これらの研究の進捗状況の確認と関連研究報告を行うことを趣旨とした研究会の開催を2020年3月に予定していたが、感染問題で中止とせざるを得なかった。その後、メール審議によって進捗状況の確認を行った。
著者
三浦 徹 越川 滋行 林 良信
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

環形動物門多毛綱シリス科の種では、出芽のように個体の一部から生殖腺を持つ個体(ストロン)が繁殖のために出現し、親個体から分離したのち遊泳し、放 卵・放精を行う(ストロナイゼーション)。本研究課題では、シリスの示す無性生殖様式であるストロナイゼーションの発生機構を明らかにすることを目的としている。特に後胚発生 において体軸の途中に頭部ができる仕組みについて焦点を当てる。2019年度は、ミドリシリスにおいて確立した飼育誘導系を用いて、効率的にストロナイゼーションを誘導し、その過程で起こる組織学的な変化について詳細に観察した結果、ストロンの 頭部になる部分の内部の神経節が肥大成長し、「脳」に相当する神経節を形成することで、自律的な遊泳活動や異性の認識などが行えるようになることが明らかとなった。また、トランスクリプトームデータに基づいた遺伝子データベースが構築され、発生や再生、繁殖に重要な役割を果たす遺伝子群の配列を網羅的に把握することができた。2020年度は、ストロナイゼーションの過程において、主要な発生制御因子の発現解析を、リアルタイム定量PCRを用いて行った。その結果、本体(親個体)の前部側において、幼若ホルモンの合成系遺伝子が発現上昇し、繁殖系列の遺伝子群の発現がそれに続き起こり、その下流で、ストロンのボディプラン形成が誘導されることが示唆された。また、佐渡において前年度に採集した分岐するタイプのシリスは、形態学的および分子生物学的解析の結果、新種であることが明らかとなり、現在論文を作成中である。また、このタイプのシリスは隠岐においても確認され、日本海側に広く分布する可能性が考えられている。この分岐するシリスにおいてもトランスクリプトーム解析を推し進めている。
著者
青柳 有利子
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

近世能楽史の究明を目的として、徳川御三卿旧蔵資料を調査した。徳川御三卿は、幕府御抱え役者の有力な後援者として能楽界に少なからぬ影響力を持っていたことが知られ、その旧蔵資料を調査することで江戸後期能楽界の様相を窺い知ることが出来ると考えられるためである。本研究の特色は膨大な歴史資料を調査対象とした点にあり、これにより従来の能楽資料を中心とした断片的な考察に、歴史的な裏付けを与えることが可能となる。一橋家については、昨年度収集した写真資料を翻刻し、当該データの論文化を進めた。中でも近代一橋家の日記に、明治期の能界や一橋家旧蔵の能装束、徳川家周辺の能楽愛好の様子などを示す有用な記事が見られたため、計画段階では対象外としていたが、今年度も調査を継続した。調査は、茨城県立歴史館所蔵の近代一橋家日記108冊から能楽に関わる記事を抽出し、デジタルカメラで撮影をした。その成果の一部は平成23年1月24日の能楽学会例会(於早稲田大学)で「明治期の華族と謡講-一橋徳川家旧蔵史料をもとに-」の題目で発表し、近代一橋家日記に見える能楽関連記事の概略や、謡講の具体的な記事、明治17~40年頃にかけて徳川宗家・田安家・一橋家・徳川慶喜・蜂須賀家・酒井忠惇等を中心に十徳会なる謡講の会が催されていたこと等について報告した。また近世についても、田安家旧蔵『獻英楼畫叢』の注記と一橋家日記の演能記録が一致することや、文政十年から文久二年に一橋家に出入りしていた役者名、および演能記録が明らかになっている。さらに国文学研究資料館「田藩文庫」の能楽関連資料の収集・整理も行なったので、それぞれ成果がまとまり次第発表する予定である。なお清水家については、旧蔵資料が所在不明のため調査は行なっていない。以上
著者
深澤 龍一郎 村上 裕章 長谷川 佳彦 稲葉 一将 山下 竜一
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2018-06-29

本研究は、札幌(北海道大学)、名古屋(名古屋大学)、大阪(大阪大学)、福岡(九州大学)に研究拠点を設け、平成30年度から令和3年度までの合計4年間、全国各地の行政不服審査会の答申を収集・整理・分析することを主な手法として、行政不服審査会の審理を継続的観察の対象とすることにより、目下のところブラックボックス化している行政不服審査の審理原則を実証的に解明しようとするものである。
著者
北郷 実 板野 理 中塚 誠之 松田 祐子 大西 彰 淵本 大一郎
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

膵腫瘍疾患に対する最も治療効果の高い治療法は切除による外科手術であるが、膵臓の外科手術は高侵襲かつ術後合併症の頻度が高いことで知られる。そこで我々は治療効果が高くかつ低侵襲である局所療法として期待される凍結融解壊死療法を膵臓に応用するため、その安全性と有効性を検討し、臨床応用に向けた基礎的エビデンスの創出を目的として実験を行った。ブタを用いた実験により、本手法は開腹または腹腔鏡手技で安全に実施可能であり、有効な膵組織の壊死が得られること、少なくとも膵炎を含めた重篤な合併症を引き起こさないことが示され、実臨床における治療選択肢に応用しうる可能性が示唆された。
著者
松村 暢隆 西村 優紀美 小倉 正義 田中 真理 桶谷 文哲 柘植 雅義
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

発達障害/学習困難児者の、得意・興味等の才能面を活かせる支援の体制・方法と、学校間の連携の在り方に関して、多方面の視点から調査、資料収集、プログラム実施を進めた。(1)シアトル市の教育委員会及び公立小中学校を訪問して、2E教育プログラムの実践研究の実態調査を進めた。2E教育として、才能教育と特別(支援)教育担当部署が連携して、家庭環境や障害の多様性のある児童生徒に公正なプログラムが実施されている様子が見て取れた。発達多様性のある「不協和感のある才能(GDF)児者」の特性を把握するために、自己評定「GDFチェックリスト」を開発して、6因子が見出された。(2)富山大学で発達障害のある高校生に向けた大学進学プログラム「チャレンジ・カレッジ」を開催した。「大学の障害学生支援」について説明を行い、発達障害学生から当事者の視点で大学の授業の一端が説明された。大会シンポジウムで、このような大学体験イベントは、支援ニーズのある高校生・保護者が大学に主体的に繋がれる貴重な場であることが共有された。また発達障害のある生徒の中で病弱や精神的な不調により入院・在宅を余儀なくされる生徒とその家族へのインタビューを行った。学習保障とクラスの仲間意識を育てるための取り組みの必要性を感じた。(3)一昨年度から実施してきた徳島県内の高校での教育相談体制・特別支援教育体制、および鳴門教育大学での体制整備・教職員への啓発・学外連携の在り方の検討を継続して行い、進展が見られた。加えて本年度は読み上げソフトなどのICTの通常学級への導入を促進するための研究、およびGDF児者に関する研究を開始し、一定の成果を得た。(4)大学進学を目指す中学生を対象として、自分の障害特性に関する理解とそれに基づいた事例検討を進めた。自己評価、他者に映る自己評価、他者評価との関連の中で、自己理解の様相を把握していくことの意義が示された。
著者
岡井 崇 桑原 慶紀 海野 信也 上妻 志郎 岡井 崇
出版者
東京大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1990

人工羊水中胎児保育装置の開発を目的として、装置及び管理方法の改良を行いながらヤギ胎仔を対象とした動物実験を行ってきた。平成2年度において新たに安定したincubationを行う為のsystem構築を行い、平成3年度より、胎仔の各生理的パラメーターの厳密な観測に基づいた胎仔保育実験を続行した。その結果、子宮外保育中の胎仔の状態悪化が、未熟動物を対象とした体外循環による生命維持systemに本質的なものではなく、むしろ、胎仔の活発な生命活動に起因する可能性が高いことが示唆された。これを証明する目的で平成4年度に胎仔の胎動抑制による長期間子宮外保育実験を行い、これまでの記録を大幅に延長する20日間以上の安定した子宮外保育とそれに続く肺呼吸への移行を実現した。これにより、我々の開発してきたsystemが、未熟個体の長期間の維持に適したものであることが示され、今後の臨床応用の可能性が示唆された。
著者
吉野 裕顕 田村 真通 蛇口 達造 加藤 哲夫
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

[方法]正常羊胎仔群(N=6):胎令125〜140日の羊胎仔に対し、頸動静脈を介し、膜型肺を用いたV-A ECMOを施行、臍帯を遮断後、胎仔を人工羊水槽へ移し、6〜24時間保育した。横隔膜ヘルニアモデル群(N=3):胎令75〜80日に横隔膜ヘルニアを作成、胎令135日にV-A ECMO下に横隔膜ヘルニアを修復後、正常羊胎仔と同様に人工子宮にて6〜24時間保育した。上記2群について、ECMO前、臍帯遮断後人工子宮内保育時、肺呼吸開始さらにECMOからの離脱時と経時的に血液ガスの変化を測定するとともにドップラーエコーにて動脈管径と肺動脈の血流量を測定し、正常羊胎仔群ならびに横隔膜ヘルニアモデル群について胎児循環より新生児循環への適応状況について検討した。[結果]1、頸動静脈V-A ECMOを用いた人工子宮内保育では正常羊胎仔、横隔膜ヘルニアモデルとも動脈管の径は減少し両方向性のシャントを呈したが、胎仔の循環動態は良く保たれていた。2、肺呼吸により、正常羊胎仔では動脈管の右-左シャントは、左-右優位となり、肺動脈の血流量は増加したが、横隔膜ヘルニアモデルでは有意な肺動脈血流量の増加は認めなっかった。3、胎令135日以上の胎仔では肺呼吸後の循環動態の適応は良く、人工子宮からの離脱が可能であったが、135日未満の胎仔および横隔膜ヘルニアモデルではPaO_2の上昇は不良でECMOフローを低下させると容易に胎児循環遺残へと移行し、早期のECMOからの離脱は困難であった。4、人工子宮内保育羊胎仔の肺組織には出血、無気肺、肺硝子膜症などの所見はなく、人工子宮内保育による明らかな傷害は認めなかった。[まとめ]V-A ECMOによる人工子宮内保育は胎児期の動脈管の変化の影響が少なく、肺呼吸後は胎児ECMOから新生児ECMO管理へと速やかに移行でき胎児治療の上で有用と思われた。また横隔膜ヘルニアモデルでは今後、修復後の人工子宮内保育による肺の発育、成熟に関する検討が必要である。