著者
高橋 正平
出版者
新潟国際情報大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は17世紀英国におけるピューリタン説教家による火薬陰謀事件説教である。火薬陰謀事件は1605年11月5日国会開会中にカトリック教の過激派ジェズイットによるジェームズ一世暗殺未遂事件である。従来火薬陰謀事件説教は英国国教会派の説教家によって事件後毎年11月5日に行われていた。英国国教会派説教家による火薬陰謀事件説教については科研費による研究として行ったがその研究過程で私はピューリタン説教家も火薬陰謀事件説教を行っていることを知った。1640年代にピューリタン説教家も11月5日に記念説教を行うことになった。しかし、ピューリタン説教家は英国国教会派説教家とは著しい違いを見せる。英国国教会派説教はジェームズ一世体制擁護のために王賞賛、カトリック教批判に集中する。これに対してピューリタン説教家は新しい社会建設が彼らの目的であるためジェームズ一世及び息子チャールズ一世を批判する。彼らにはもはや王賞賛、体制維持の姿勢は見られない。彼らにとって時の王チャールズ一世打倒による共和国樹立が急務となるが父ジェームズ一世を賞賛することはない。ピューリタン説教家の事件日における説教は事件よりもチャールズ一世体制打破を直接論ずるのである。たとえば彼らは王党派との各地での戦いでの勝利を聴衆に確約し、また勝利をおさめればその記念に戦勝記念説教をも行う。本研究では英国国教会派説教家 William Barlowe, Lancelot Andrewes, John Donne等から始め、その後ピューリタン説教家による説教へと転じ、 Cornerius Burges,John Strickland,William Spurstowe, Mathew Newcomen等の火薬陰謀事件説教を論ずることによって両派の相違、ピューリタン説教家による火薬陰謀事件説教の真の目的の解明にあたった。
著者
森 覚
出版者
大正大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成29年度は、仏教絵本の表現に反映された近代仏教研究の学術的知識を読みとるというテーマのもと、1970年代の仏教絵本が表現したブッダの表象について、「変容」という観点から考察した。また、新たな着眼点として、近代文学との関連性、キリスト教からの影響といった点を視野に入れながら、古代インドの仏教説話であるジャータカ(本生譚)を題材とした絵本をとりあげ、それらの作品が近現代におけるブッダの表象形成に果たした役割を、実証主義的な歴史思想研究が創りあげたブッダ像とは異なる系譜の流れとして探究した。当初の計画では、日本真理運動本部が1950年に刊行した『佛敎聖典おしゃかさま』等の諸作品から、絵本のブッダ像に反映されたプロテスタント自由主義神学と近代仏教の影響関係、キリスト教の聖画を典拠とする仏教絵本の図像表現といった、近代における仏教とキリスト教の結びつきを浮かびあがらせようとした。しかしながら、『こどものくに別冊 おしゃかさま』に見られるキリスト教からの影響については、すでに昨年度、形の文化会機関誌『形の文化研究』第10号へ論文「仏教絵本『こどものくに別冊 おしゃかさま』にみるブッダのイメージ」を掲載することができた。そこで今年度は、日本の仏教絵本に表現されたブッダのイメージから読みとれる近代西洋仏教学の影響を明らかにするというテーマを別視点から取り組むため、仏教保育・口演童話・仏教日曜学校といった児童伝道の領域に考察範囲を設定し、仏教絵本で表現されるブッダ像の「変容」に着目した。また、仏教の教主である釈迦が、小国の王子としてこの世に生まれる以前の前世で為した善行功徳を伝えるインド説話であるジャータカの絵本で表現されたブッダの表象についても読解し、現在の近代仏教史研究で特にクローズアップされる歴史学的観点から捉えるブッダとは異なるイメージが存在していることを指摘しようと考えた。
著者
丹野 清人
出版者
首都大学東京
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

外国人労働者またはその家族として日本でやって来た者で、何らかの罪を犯してしまった者、しかしその犯した罪が軽微なものであって、刑務所には収監されておらず、執行猶予判決であったにもかかわらず、日本滞在に必要なビザの更新の際に、その軽微な犯罪を根拠に退去強制令が発令されたケースの事例研究を行った。法務省が公示する司法統計にも現れない部分のケースであり、極めてセンシティブな問題を扱うため、調査は弁護士事務所に通い、弁護士にあらかじめ見ていいと許可を受けた資料で、その資料で個人情報が記載されている部分に予めマスキングしてもらってケーススタディを行った。なお、弁護士事務所内でとったノートを事務所外に持ち出す際には、弁護士にノートを確認してもらい、個人情報の持ち出しに当たる部分がないことを確認した。また、本年度に発表した公刊物『「外国人の人権」の社会学」や論文等において公表する際にも、今一度弁護士に全てをチェックしてもらってから公表した。また、日系人の少年で少年非行に走ってしまい、その少年非行での犯歴が原因となり退去強制令が発布されて、ブラジルに強制送還された少年3人にサンパウロ市内でインタビューをしてきた。日本から出国するときには少年であったが、インタビュー時点ではいずれも23歳以上になっていた成人であったが、ブラジルでのインタビューは首都大学東京が学術交流協定を持っているサンパウロ大学に来てもらい、サンパウロ大学の倫理規程にあった形でインタビューを行った。当初、少年期に強制的に帰国させられて、帰国後の適応がうまくいっていないことを想定していたが、単純にはそのように想定できないものであることがブラジル調査で確認された。
著者
西村 玲
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

本研究は、僧侶普寂の思想を通して、日本近世思想史上における仏教思想の内実と展開を追い、近世から近代にかけての思想的水脈の一つを示した。3年間の研究成果は、単著『近世仏教思想の独創-僧侶普寂の思想と実践』(トランスビュー社)として、本年(平成20年)5月に出版された。初年度は、受入教授である末木文美士教授の指導により、近世思想史における大乗非仏説論への応えである、普寂の華厳思想を解明した。初年度後半から第2年度前半には、プリンストン大学宗教研究センターに一年間留学して、宇宙像をめぐる近世護法論の発表を行うことにより、日本国内では得難い、時代と地域にまたがる広い思想史的知見を得た。第2年度後半から第3年度前半には、近世的宗派意識の分析という視点から、普寂の伝記と近世浄土教団の戒律観を明らかにした。同時に末木教授の指導によって、丸山眞男に始まる日本近世思想史が政治思想史のみで推移してきたことを批判し、宗教思想史を組み込んだ全体的な思想史像を提言した。第3年度後半からは、博士論文と任期3年間に発表した論文原稿をもとにして、それらに大幅な加筆と修正を加える出版作業を行った。3年間で学問的視野が広がり、従来の日本一国政治思想史に対して、東アジア全域を視野に入れた宗教思想史を対象化するに至った。従来の日本思想史の空隙であった、仏教を中心とする宗教思想を思想史に組み込む研究の視点を得た。
著者
清水 邦義 中村 崇裕 大貫 宏一郎 松本 雅記
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

霊芝キノコのゲノム編集について、霊芝特異的プロモーターの単離、ターミネーターの単離、霊芝ゲノム編集用ベクターの構築等の実験を行ってきた。その中で、ゲノム編集に用いるプロトプラストの遺伝子導入効率の低さと、遺伝子発現効率の低さは新規キノコ作成において、ボトルネックとなっていた。この状況に変化をもたらしたのは、刑部らのキノコゲノム編集に関する論文であった(Scientific Reports (2017)。これまで、ある一定の形質を有するプロトプラストを用いると効率が上がることが判明していた。よって我々は、霊芝プロトプラストを用いたゲノム編集には、菌糸体を用いた予備的実験の中で、細胞融合・ゲノム編集を効率的に行うためには扱い易いプロトプラストの採取が必須という結論に至り、セルソーターにより最適なプロトプラスト採取の条件を探索している。我々はこれまでに、霊芝子実体の有用成分のLC/MSを用いた網羅的解析技術を確立しており、新規の菌糸体の作成に成功すれば霊芝トリテルペノイドの数十種類を同時に同定できるシステムを構築している。また、我々はこれまでに、ゲノム編集に必要なプロモーター、ターゲット遺伝子(コーデイングシーケンス)、ターミネーター領域のDNAを霊芝特異的遺伝子としてPCR法により探索し、有望領域を決定した。ターゲット遺伝子としてP450遺伝子群のコーディング領域をゲノム編集している。但し、これらの遺伝子セットが実際に作動するかは未定であるのでキノコゲノム編集で使用された遺伝子も併せて探索している。
著者
添野 光洋 澤瀬 隆 平 曜輔 伊藤 修一 江越 貴文
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

有機質コラーゲンを化学的に除去した象牙質表面に対する、ビタミン剤含有新規プライマーを開発し、その作用機序を明らかにするとともに、コラーゲンを高分子材料で置換することによって、接着耐久性が改善できることを証明した。そして、長期的な歯質の保存可能な表面処理法の臨床応用を実現した。
著者
三木 かなめ 福井 誠 伊藤 博夫
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-10-21

平成29年度は、天然植物キャッツクロー抽出物による歯周病原関連細菌に対する抗菌作用およびヒト歯肉線維芽細胞(HGF)の培養系における抗酸化作用・抗炎症作用について、本格的に評価することを目的として行ってきた。またキャッツクロー抽出物による抗動脈硬化作用の評価についても行ってきた。それらの結果について、抗菌作用の評価は、BHI broth培養系に、キャッツクロー抽出物を連続2倍段階希釈法で投与し歯周病原菌を24時間培養した後、菌の生育度への影響を調べた。生育度を濁度として吸光度計で測定したところ、P.g. とP.i. に対して、生育抑制が確認され、抗菌性が示された。HGFにおける抗酸化作用の評価は、キャッツクロー抽出物が過酸化水素の添加による酸化ストレスを抑制するかどうかを調べた。細胞内で酸化をうけて蛍光発色するプローブを用いて、共焦点レーザー顕微鏡にて検出を行ったところ、キャッツクロー抽出物の添加によって、蛍光発色が抑制されてくることがわかり、HGFでのキャッツクローの抗酸化作用が示唆された。次年度では、再現性を確認してゆく。また抗炎症作用の評価は、P.g.LPS刺激による炎症性サイトカインの発現増強を抑制するかどうかを調べるために、条件の検討を行っており、次年度引き続き行ってゆく。マクロファージ培養系を用いたキャッツクロー抽出物による抗動脈硬化作用の評価は、その前に、酸化ストレスで産生した酸化型LDLによるマクロファージの泡沫化促進モデルを構築することができた。次年度は、平成29年度で構築したマクロファージ培養系を用いて、キャッツクローによる泡沫化抑制効果を調べてゆく予定である。本年度までの検討から、キャッツクロー抽出物の歯周病予防および治癒への利用にむけての有用な基礎研究の結果が認められはじめてきている。
著者
小泉 政利 安永 大地 木山 幸子 遊佐 典昭 行場 次朗 酒井 弘 大滝 宏一 杉崎 鉱司 玉岡 賀津雄 金 情浩 那須川 訓也 里 麻奈美 小野 創 大塚 祐子 矢野 雅貴 八杉 佳穂 上山 あゆみ
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究プロジェクトの目的は,マヤ諸語とオースロネシア諸語のなかのOS言語(特に,グアテマラのカクチケル語と台湾のタロコ語)を対象に,談話内での1.文理解過程,2.文産出過程,3.言語獲得過程,ならびに4.言語の語順と思考の順序との関係を,聞き取り調査やコーパス調査,行動実験,視線計測,脳機能計測などを用いて,フィールド心理言語学の観点から多角的かつ統合的に研究することである。より具体的には,1~4における個別言語の文法的要因と普遍認知的要因が文脈に埋め込まれた文の処理に与える影響を明らかにし,脳内言語処理メカニズムに関するより一般性の高いモデルを構築することを目指す。本年度は特に以下の研究を実施した。[文法理論部門]タロコ語の文法調査を行った。[理解部門・神経基盤部門]文脈と語順が文処理に与える影響を調べるために事象関連電位を用いたタロコ語の実験を実施した。[産出部門・思考部門]タロコ語の文散出時に動詞のレンマがどのようなタイミングで活性化されるかを調べる実験の準備(予備実験を含む)を行った。また,タロコ語話者の思考の順序やタロコ語の文産出に与える非言語的文脈や話者自身の動作の影響を調べるためのジェスチャー産出実験と文産出実験を行った。[全部門共通]トンガ語の調査・実験の実行可能性を調べるためにトンガ王国で現地見分を行った。また,ジャワ語の専門家を招いて,ジャワ語の調査・実験の実行可能性についての検討会を開催した。
著者
國府 寛司
出版者
京都大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究では3次元ベクトル場におけるホモクリニック軌道の分岐によるカオスの出現の検証について以下のような成果を得た。(1)余次元2のホモクリニック軌道からのカオスの発生の数学的証明:inclination-flip型ホモクリニック軌道については[Homburg-Kokubu-Krupa]の論文で解決され、orbit-flip型ホモクリニック軌道については現在準備中の論文で解決された。これらは共に余次元2のホモクリニック軌道に沿ったポアンカレ写像を構成し、それがSmaleの馬蹄型写像を含むことを示すことによって証明された。またこの結果の副産物として、ある種のベクトル場の退化特異点の開折に幾何的Lorenzアトラクタが存在することがinclination-flip型ホモクリニック軌道の解析によって証明できた。これは論文[Dumortier-Kokubu-Oka]にまとめられた。(2)ホモクリニック軌道の分岐の計算機を用いた研究:小室、岡との共同研究で区分線型ベクトル場におけるorbit-flip型ホモクリニック軌道の大域的な分岐を計算機を用いて精密に解析した。これによりある条件の下ではorbit-flip型ホモクリニック軌道からは従来の研究によって知られていたものよりもはるかに複雑な分岐が見られることが示された。この結果は現在準備中の論文に発表される予定である。一方、3次元で余次元3の退化特異点の標準形を与える常微分方程式の族における分岐の解析も行った。特にAUTOと呼ばれる分岐解析のために開発されたプログラムを用いて、ホモクリニック軌道の存在する分岐曲線を2次元パラメータ平面内で追跡し、その大域的構造についての興味深い現象を発見した。これは今後の研究の重要な課題となるであろう。この研究は西山、岡との共同研究で現在論文を準備中である。
著者
江藤 一洋 土田 信夫
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

組織切片上でmRNAの発現を観察できるin situ hybridization(以下ISH)法を確立し, 顎顔面の形態形成におけるoncogeneの発現と細胞の増殖, 文化, 細胞死との関連について解析することを目的とし実験を行ってきた.61年度は, 各種V-onc及びC-oncのDNA断片を分離精製し, このうち, H-ras, fas, masについて32P標識DNA断片をプローブとして, ラット胎仔, 胎盤組織切片に対しISHを行った. その結果すでに報告されている胎盤でのfasの発現が観察されたが, 各プローブに共通して胎仔膜等への非特異的吸着が見られた. この軽減のためmRNA(正鎖)と相補的RNA(逆鎖)を合成しプローブとすることにした. この利点として(1)mRNAとhybridizeしないプローブをRNA分解酵素で除去でき, 非特異的吸着が軽減されること, (2)正鎖をプローブとすればhybridizeしないので, negative controlとして特異的結合を検証できること, 等が挙げられる. そこで各種oncogene DNA断片について標識RNAをin vitroで合成可能なベクター(PGEM3,4)へ組み込み, 保存した.62年度は, このベクターより合成した35S標識RNAのうち細胞増殖期に発現の高いC-mycをプローブとしてマウス胎仔組織切片に対してISHを行ったが, 満足な結果が得られなかった. そこで技法の確立に重点を置き, 系を簡略化するためにmycを導入した腫瘍細胞に対してISHを実施した. 種々の条件を検討した結果, mycの発現をconstantに観察できるようになったが, 検出効率の上昇, 組織切片との相異などの問題が残されている. 今後顎顔面領域の発生過程をこのISH法を用いて観察し, ひいては唇裂, 口蓋裂の原因解明へのアプローチとして役立てる方向で進めていく予定で, 現在マウス胎仔組織, 特に顎顔面領域での各種oncogeneの発現を解析中である.
著者
和田 仁 小林 俊光 高坂 知節
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

我々はこれまで、主に耳小骨連鎖離断・固着の診断を目的とする診断装置MIDDLE EAR ANALYSER(MEA)の開発を行ってきた。しかし、従来型インピーダンスメータ同様外耳道に挿入したプローブで測定するため、測定結果に及ぼす鼓膜の影響が大きく、アテレクタシスや鼓膜が薄い場合にはMEAによる耳小骨連鎖異常の診断は難しい。そこで本研究では、超音波を利用した、鼓膜物性値および厚さの測定手法を開発し、鼓膜物性値および厚さを定量的に測定することを試みる。これまでに1.外耳道に挿入できる超小型センサを試作し、内視鏡付きのマニピュレータ、カメラおよびモニタを組み合わせることにより、外耳道内を観察しながらセンサを自在に動かし、測定が行えるシステムを構築した。2.物性の異なる境界面での、超音波の反射と透過の割合を求めることができる、インピーダンス理論を適用し、システムの出力に対する式の導出を試みた。その結果、鼓膜密度を既知とすることで、鼓膜の厚さおよびヤング率を求めることが理論上可能であることが明かとなった。今後の計画1.構築したシステムを用いて、人工中耳モデル、側頭骨標本、正常者および鼓膜疾患例を測定する。2.測定および数値計算結果より、鼓膜物性値および厚さの定量的測定可能性について検討する。
著者
青木 栄一 北村 亘 村上 裕一 河合 晃一 曽我 謙悟 手塚 洋輔
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

(1)研究代表者、研究分担者、連携研究者が参加するグループウェアを十二分に活用し、研究活動に関する情報共有や連絡調整を行った。また、研究会を年度内に3回開催した。第1回(5月)では今年度の研究活動の方針を決定し、前年度に実施したサーベイ調査の分析作業を今年度の研究活動の柱とした。第2回(8月)では分析結果の報告を行った。第3回(11月)では研究成果の公表方針の打ち合わせ、分析結果の報告を行った。(2)研究課題に関連する先行研究をレビューし、必要な文献を収集した。第1に、国内外の官僚制に関する書籍、論文を収集した。第2に、国内外の教育・科学技術行政担当機構に関する書籍、論文を収集した。(3)文部科学省の課長以上の幹部職員全113人に対するインタビュー形式のサーベイ調査(中央調査社への委託、一部留置式、回収率約7割)の分析を行った。政策過程に関する認識、弘道、各関係者との接触態様に関する分析結果が得られた。これは本課題研究の中核に位置づけられる成果であり、本年度の研究実績として特に強調したい。(4)『文部科学省 国立大学法人等幹部職員名鑑』を用いて、文部科学省幹部職員のキャリアパスの電子データ化を行い、一部分析作業に着手した。さらに、文部科学省から地方政府への出向人事のデータベースを構築し、分析結果の一部を学内紀要に投稿した(印刷中)。(5)庁舎配置からみた旧文部省と旧科学技術庁の大臣官房における融合の状況、科学技術行政に関する聞き取り調査等を行った。
著者
斎藤 多佳子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2015

中高生の理系科目への興味喚起や理科志向の動機付けを実験・体験を通じて行う際に主題の理解を深める為、五感を介して認識するようなモデル実験系の構築を目指し本研究を遂行した。日本人にとって最も身近な樹木のひとつであるサクラの葉を材料として、サクラ葉成分のクマリン酸配糖体が糖分解酵素β-グルコシダーゼにより分解される過程で生じる香気成分(クマリン)の分析や、酵素反応での分子構造変換による分子構造と物性の変化を、クロマトグラフィーでの検出に加えて、蛍光性、匂いの変化として感知する系を検討する。1 構内のサクラ葉を6月、10月の2回採集し、水洗浄後-30℃で保存しサンプルとした。2 標品(クマリン酸配糖体(メリロトシド)、β-グルコシダーゼ、クマリン)を用いて、蛍光スペクトル、薄層クロマトグラフィー(TLC)を測定手段として酵素反応の経時変化、物性、等を検討し、反応条件を決定、生成物を同定した。結果、(1)クマリンの蛍光は325nm励起で、395-420nmの範囲に濃度、溶媒条件による蛍光極大を示す。β-グルコシダーゼによる糖分解反応は、37℃、0.1M酢酸ナトリウムー酢酸、pH5.6(pH3.2-11.0の緩衝液で検討)が至適条件である。(2)クマリン酸配糖体の酵素分解ではまずクマリニック酸が生成し、その後徐々に閉環してクマリンとなる。クマリニック酸は500nmに強い蛍光を示し、反応開始30秒で検出され、クマリンは、60分以降で検出されてくる。(3)TLC分画 : シリカゲルを担体として2種類の溶媒系(酢酸エチル/ヘキサン)、(エタノール/アンモニア/水)で展開すると、メリロトシドと、中間生成物、クマリンの分離同定ができる。(4)上記反応進行により、クマリン芳香を感知できる。本研究により、モデル実験系を構築する基礎条件が得られた。
著者
田口 徹 水村 和枝 メンゼ ジークフリート ホハイセル ウルリッヒ
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

1)遅発性筋痛における筋機械痛覚過敏にTRP(Transient Receptor Potential)チャネルや酸感受性イオンチャネルが関与することを明らかにした。2)遅発性筋痛にブラジキニンB2受容体の活性化、および神経成長因子が極めて重要な役割を果たすことを示した。3)遅発性筋痛では筋よりも筋膜への侵害刺激に対する感受性が高まっていることを示した。4)筋侵害受容器の機械感受性は加齢により亢進し、一方、皮膚侵害受容器の機械感受性は加齢により低下することを示した。5)脊髄後角ニューロンの細胞外記録により、腰部筋・筋膜に起因する腰痛の脊髄機構を明らかにした。6)圧迫刺激による骨格筋からのATP放出を定量化した。7)繰り返し寒冷ストレス負荷により慢性筋痛動物モデルを作成した。8)骨格筋機械感受性C線維の半数はアクロメリン酸-Aに対して興奮作用を示し、侵害受容器終末にアクロメリン酸-Aに特異的な新規受容体が存在する可能性を示唆した。
著者
木口 倫一 岸岡 史郎 雑賀 史浩
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

前年度は坐骨神経部分結紮による神経障害性疼痛モデルマウスを用い、主に後根神経節において神経炎症依存的に発現変動する因子に着目した検討を行った。本年度は、傷害坐骨神経に集積するマクロファージが担う末梢性感作と中枢性感作の機能的連関を詳細に検討した。炎症性マクロファージ抑制薬であるニコチン性アセチルコリン受容体α4β2サブタイプ特異的リガンドを傷害末梢神経に局所投与すると、神経障害性疼痛が改善した。また神経傷害後の脊髄におけるミクログリアの形態的活性化ならびに炎症関連因子(IL-1β、CCL3、CD68、IRF5など)の遺伝子発現増加は、マクロファージ抑制薬の末梢局所投与により減少することを見出した。これらのマクロファージ抑制薬は神経傷害の3週間後から投与しても有効であり、その際に脊髄ミクログリア関連因子の減少効果も同時に認められた。すなわち、神経障害性疼痛の形成および維持機構のいずれにおいても炎症性マクロファージによる末梢性感作が重要な役割を果たすことが示唆される。さらに、糖尿病性や抗がん薬誘発性などの異なる神経障害性疼痛モデルにおいても、同様の機序の関与を示唆するデータが得られている。昨年度までの結果を踏まえると、炎症性マクロファージ由来のサイトカインやケモカインが後根神経節における中枢感作調節因子(サイトカインおよび神経ペプチドなど)の発現を亢進させ、脊髄グリア細胞の活性化を調節することを明らかにできたといえる。
著者
江藤 一洋 KANOK Sorate NARONGSAK La PIYAWAT Phan SITTICHAI Tu VISAKA Limwo 石川 烈 黒田 敬之 大山 喬史 天笠 光雄 SORATESN Kanok LAOSRISIN Narongsak PHANKOSOL Piyawat TUDSRI Sittichai LIMWONGSE Visaka
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

1.〈顎顔面の発生と発生異常に関する調査研究〉頭部神経堤細胞(NC)が神経上皮上の領域によってその分化運命が異なるかどうかを細胞培養系で検索した。その結果、(1)ニューロンは中脳領域由来のNCから前脳領域より多くしかも早期に分化した、(2)軟骨細胞に分化すると思われる細胞は中脳領域由来のNCに限定されていた、(3)色素細胞は前脳領域由来のNCに限定されていた。以上より、NCは神経上皮上から移動を開始する前に分化運命はその領域毎ですでに決まっていると考えられた。2.〈顎顔面外科に関する調査研究〉チュラロンコン大学および東京医科歯科大学の口腔顎顔面外科における1985年〜1994年の10年間の口腔悪性腫瘍、良性腫瘍、顎顔面裂奇形、顎骨骨折および顎関節疾患について調査、比較研究を行った。悪性腫瘍中最も頻度の高かったのは両国とも扁平上皮癌であった。扁平上皮癌は男性に多く、タイでは60〜70歳台に、日本では50歳台に好発していた。タイで下顎歯肉癌が多かった(42.1%)のに対し日本では舌癌が高頻度であった(46.6%)。良性腫瘍中タイで多かったのはエナメル上皮腫(51.4%)、血管腫(20.0%)であり、日本では血管腫(18.8%)、多形性腺腫(13.1%)の順であった。裂奇形については両国ともに片側性唇顎口蓋裂が多かった(タイ42.1%、日本33.3%)。顎骨骨折は20歳台の男性に好発しており、その原因はタイでは交通事故が圧倒的に多く(72.5%)、日本では転倒によるものが多かった(30.0%)。顎関節疾患のうち外科的処置を受けたものはタイでは顎関節強直症(87.5%)が主であったが、日本では顎関節内障(42.1%)、強直症(28.1%)、習慣性脱臼(10.5%)など多疾患にわたっていた。3.〈顎顔面補綴に関する調査研究〉両国間の症例数を可及的に同一とするため、チュラロンコン大学では1985年〜1994年の間の188症例、東京医科歯科大学では1992年〜1994年の間の425症例を最終的な分析対象症例とした。症例を口蓋裂、腫瘍、外傷、炎症、その他に分類し、年度別患者数、男女比、年齢分布、主訴、症例別患者数、最終補綴物について分析を行い、さらに、口蓋裂症例については裂型、腫瘍症例についてはその部位、外傷症例についてはその部位と原因についても分析を行った。その結果、両国間での共
著者
江藤 一洋 太田 正人 井関 祥子 飯村 忠彦 池田 正明 中原 貴
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2001

1.神経堤細胞の細胞増殖/細胞死制御の分子機構Twist遺伝子を欠失したマウスは胎齢12日にて胎生致死となることが報告されている。しかしながら、頭部神経堤細胞が遊走を開始し最終到達部位にて細胞増殖および細胞分化を解析することは可能である。そこで、Twist-/-胚を用いて細胞増殖、細胞死、細胞分化、パターニングへの影響を解析したところ、細胞増殖の抑制及び細胞死の亢進、細胞分化の抑制、神経分布パターニングの異常を観察した。特に、細胞死の亢進は顕著であり、その影響で細胞分化の抑制が生じる可能性が強く示唆された。2.頭部神経堤幹細胞による組織再生への応用の可能性の検討細胞とscaffoldによる歯周組織のin situ tissue engineering近年、医学研究では細胞移植が注目を浴び、今後自家の細胞を利用したcell-based-therapyは、臨床医学において中心的な役割を担うと考えられている。われわれは、歯周組織のcell-based therapyの可能性を検討するため、自家の歯根膜細胞とcollagen sponge scaffoldを組み合わせて、歯周組織のin situ tissue engineeringを試みたところ、これまでに行われている細胞播種実験に比較して有意に実験的に作製した露出歯根面周囲の歯周組織における新生セメント質の形成が確認された。3.頭部神経堤幹細胞の遺伝子プロファイリングの試み分離細胞の潜在的分化能や、微小組織における多数の遺伝子発現を同時に解析することにより、頭蓋顎顔面領域の間葉に存在すると考えられる頭部神経堤幹細胞を同定する方法の開発が必要となった。現在、マウスの神経上皮の初代培養による頭部神経堤細胞の分離法とマイクロアレイ解析法を組み合わせ、神経堤幹細胞で発現する遺伝子のプロファイリングを行っているところである。
著者
二宮 皓 石井 明 森泉 豊栄 江藤 一洋 長谷川 淳 谷口 吉弘 木村 裕
出版者
広島大学
雑誌
特別研究促進費
巻号頁・発行日
2001

本研究はポスト留学生10万人計画において、どのような留学生施策を講ずるべきかについて、諸外国における動向も参考にしながら、調査研究を行ってきたものである。途上国支援、途上国の人材育成支援、あるいは平和・親善友好の増進、などの留学生政策目標をレビューし、本研究では、わが国の国際競争力、とりわけ大学の国際競争力や研究力を著しく改善するための留学生政策・施策のあり方を中心とする研究とすることとした。そこで優れた大学において大学院を担当する教授を文橡とし、そうした観点から「優れた留学生」の特性(能力・資質)や属性に関する意見を調査し、どうすれば「優れた留学生」をひきつけることができるか、について研究してきた。また大学院で学ぶ留学生自身の優秀性に関する自己評価などに関する調査を行った。その結果、わが国も、留学生政策・施策を「戦略的」に構想する必要があり、ある意味でODA型留学生交流の推進に加えて、ODAを超えたわが国の国際競争力を高める留学生交流のための特別な施策を講ずる必要があることを明らかにしている。また同時に「質の高い留学生受入れ」という観点から留学生の満足度を規定する要因についての分析も行い、顧客ニーズに応える質の高い留学生受入れ施策のあり方を研究してきた。こうした成果をまとめて報告書で公開すると同時に、平成15年12月6日には、東京で「21世紀の留学生戦略シンポジウム」を開催し(200名以上の参加者)、中央教育審議会留学生部会中間報告を基礎とする基調講演をお願いし、パネルディスカッションとして、21世紀の留学生戦略について討議を行った。そうした一連の研究や成果の公開活動をふまえて、「21の提言」として留学生施策における戦略的方策に対する総合的な提言を行った。主としてODA事業や高等教育における留学生施策の意義や役割をふまえた提言、留学生の生活支援や教育・研究活動に関する提言、教育の貿易という観点からみた留学生施策の戦略に関する提言などを行った。
著者
江藤 一洋
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1986

哺乳類神経堤細胞の研究は、従来、in vivoの材料を用いた形態学的手法や、primary cultureなどによりなされてきたが、全胚培養法を導入することにより、より実験発生学的な研究が可能になりつつある。全胚培養法は、母体の因子を取り除いた状態で胚操作を行うことができ、また、発生段階を揃えて短時間の処理を行うことも可能であるため、発生学的研究にたいへん適した方法である。とくに、マウスを材料として用いることは、顔面形成に異常のあるミュータントを用いることもできるため、より有利であるといえる。62年度までは、主としてラットを用いて全胚培養法の基礎的な条件を検討してきたが、63年度においては、胎齢10日目からのマウス全胚培養法を用いて、以下のような化学的あるいは物理的処理を胎仔に加える実験を行った。1.サイトカラシンD(CD)による顔面形成の阻害妊娠10日目のマウス胎仔を、全胚培養下で150ng/mlのCDに2時間暴露したのち、通常の培養液に戻して24時間の培養を行い、顔の形成を観察したところ、CD処理の胎仔においては、17例中12例(70.4%)に顔の形成異常が認められた。処理群の胎仔鼻板上皮をローダミン-ファロイジン染色により観察すると、鼻板上皮のapical siteのアクチン線維束の部分的な断片化、すなわち分布の乱れが認められた。2.早期卵黄嚢膜開放による一次口蓋形成異常(口唇裂)の誘導卵黄嚢膜開放(OYS)は、全胚培養を行う上で必須の操作であるが、C/57BL/6マウスの場合、尾体節数8以下で行うと、口唇裂のみ100%誘導されることが分かった。OYSを早期に行って数時間経過した培養胎仔の癒合予定部位を走査電子顕微鏡により観察すると、正常発生でみられる微絨毛の消失が起きず、上皮細胞の表面は球形となり、また、球状物質も多く認められた。