著者
佐藤 武 柴崎 達雄 伊津 信之介 根元 謙次 柴崎 逹雄 星野 通平
出版者
東海大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1984

第一鹿島海山の地形を検討すると、いくつかの地形面に区分することができる。そのうちで特徴的なものは、山頂部(水深3,700〜4,000m)の平担面と山体西半分を構成する鞍部(水深5,100〜5,500m)の平担面である。また、山体斜面部には、水深4,700m付近をとりまくように発逹する平担面と水深6,000m付近に同一深度をもつ平担面が識別できる。これらの面のうち、山頂部平担面と鞍部平担面とに礁性石灰岩の分布が確認されていること、さらに各面がほぼ同一深度に水平に発逹することから、これらの面の形成が過去の海水面の位置を示すものと考えることができる。さらに、それぞれの面には、その面を切り下位に開口する谷地形の存在が知られている。これらのことは海水面の変化が複雑な過程を経ていることを示している。これらの地形面(平担面)と谷地形を解析して白亜紀初期からの海水準変化を明らかにした。つぎに、山頂部平担面から採取した礁性石灰岩はチョーク,ウーライトを含み、石灰岩岩石学、古生物学的検討の結果、この石灰岩は一つの独立したbarrier reefの原形を残したまま沈水したものと考えられる。山頂部石灰岩の地質時代は前期白亜紀のlower Albianに対比される。また、鞍部石灰岩からも多数の二枚貝類,腹足類,石灰藻などが発見されているが、保存がわるく、同定が困難である。しかし、前期白亜紀のBarremianに特有な底生有孔虫が発見されていることから、山頂部石灰岩よりも古い時代に形成されたものと考えられる。鞍部の礁性石灰岩は未発達な礁を形成していたものと考えられる。音波探査,堆積物分析,岩石学的検討の結果も上記の古生物学検討の結果を支持している。
著者
窪薗 晴夫 梶 茂樹 岩田 礼 松森 晶子 新田 哲夫 李 連珠
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究の目的は世界の諸言語(とりわけ韓国語諸方言、中国語諸方言、アフリカのバンツー諸語)と比較することにより類型論的観点から日本語諸方言のアクセントを考察し、その特質を明らかにすることである。この目的を達成するために年度ごとに重点テーマ(借用語のアクセント、疑問文のプロソディー、アクセント・トーンの中和、アクセント・トーンの変化)を設定し、それぞれのテーマについて諸言語、諸方言の構造・特徴を明らかにした。これらのテーマを議論するために4回の国際シンポジウムを開催し、海外の研究者とともに日本語のアクセント構造について考察するとともに、その成果をLingua特集号を含む国内外の研究誌に発表した。
著者
三木 則尚 PRIHANDANA Gunawansetia PRIHANDANA GunawanSetia PRIHANDANA GUNAWANSETIA
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、ナノ多孔質ポリマーを用い、マイクロデバイスの界面をバイオメディカル用途に適するよう制御することであった。特に、ナノ多孔質ポリマーとしてパリレンならびにフッ素添加ダイアモンドライクカーボン(F-DLC)を、マイクロデバイスとして携帯型人工透析システムのためのマイクロフィルタリングデバイスおよび、脳波検出用フレキシブル針電極を研究対象とした。マイクロフィルタリングデバイスは、ナノ孔を有するポリエーテルサルフォン(PES)膜をフィルタとして用い、透析を行うが、膜表面に血液成分が固着する問題を有していた。これを、PES薄膜をナノ多孔質パリレンならびにF-DLCにより被覆することにより解決した。血液成分の固着による透析性能の低下を実験的に導出し、これをナノ多孔質ポリマーによる表面改質により防止できることを明らかにした。本結果を複数の国際論文誌ならびに国内外の学会において発表した。また、フレキシブル針電極においてはフレキシブルなポリマー上に銀薄膜を成膜するが、銀薄膜とポリマーとの密着性が悪い。そこで、銀薄膜上にナノ多孔質パリレンをコーティングすることで、導電性を有しつつ、刺入などの機械的な負荷に対して銀の剥離を防ぐことができた。また脳波検出に必要とされる10Hz程度の低周波数においてインピーダンス10kΩ以下を実現した。これらの結果を国際論文誌ならびに複数の国内外の学会において発表した。本研究の成果は、マイクロデバイスのバイオメデイカル応用において不可欠な生体適合性の付与手法として、極めて効果的と考えられるナノ多孔質ポリマーの成膜技術を確立、またその効果を実証したものであり、大きな意義を有するものである。
著者
川本 竜彦
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

水に富む流体と(1)堆積岩、および、水に富む流体と(2)高マグネシウム安山岩との間の臨界終端点を決定した。その結果、(1)火山フロントの下のスラブ直上では、沈み込む堆積岩層からマントルに付加される流体は、たっぷりとケイ酸塩成分を溶かし込んだ超臨界流体で、(2)マントルウェッジ内を上昇する高マグネシウム安山岩質成分を溶かし込んだ超臨界流体は、マグマと水流体に分離しマントルとそれぞれ反応し、2種類のマグマを作る仮説を提案する。
著者
宮本 淳 久留 友紀子 仙石 昌也 橋本 貴宏 山森 孝彦
出版者
愛知医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

医学部初年次チュートリアル教育においてクラウドを用いたレポート課題を課し,剽窃行為を中心に,学生のレポート作成過程の調査を続けている。レポートの作業過程を確認していくと,一見して質の低いと思われるWeb上の情報をコピペによって組み合わせ,体裁を整えただけのレポートが少なからず存在する現状が依然としてある。先行研究では,このようなレポートについて学生がどの程度コピペ剽窃をしているかについて,文字数の増加やコピペの頻度などの量的なデータに注目して調査を続けてきたが,コピペ剽窃情報の質については検討してこなかった。どのような教育的介入がコピペ剽窃だけに頼らないレポートの質の向上に繋がるかを考える上で,学生がどのような質の情報に頼ってレポート作成しているのかを調査することは非常に重要な視点であろう。そこで平成28年度の研究では,初年次学生がどのような情報に依拠してレポートを作成しているか,特に情報源の信頼性に着目して調査した。その結果,初年次学生のレポートにおいては情報源として書籍よりもWebを数多く引用していること,Web資料については,四次資料,すなわち三次資料にも該当しない,大学生以上のレポートの根拠として利用できる信頼性を有していないと考えられる資料を多くの学生が利用していることが明らかになった。平成29年度の研究では,こういった問題のあるWeb上の資料をどのように引用,あるいは「コピペ」しているかについてプロセス分析での調査をした。その結果,一次・二次・三次資料からのコピー&ペーストの場合にはその殆どが正しい形式で引用されているのに対して,四次資料の場合は半数以上がその出典は「不記載」であった。レポートを作成する際に,四次資料に依拠する場合には Webページ上の情報をそのままコピペして使用されることに繋がりやすく,その出典は明記されない傾向が明らかになった。
著者
小川 登紀子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

疲労ストレスを受けたラットの下垂体では、ホルモン分泌細胞の機能に異常を生じることを見いだした。中間葉のメラノトロフには、視床下部からの持続的な刺激により引き起こされたストレスに起因した細胞死が起こることを、前葉のソマトトロフは、増殖刺激に対する反応性が失われることを報告した。また、これらの機能異常の分子メカニズムについて研究を行い、関連する分子を明らかにした。
著者
小原 功任
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

多変数超幾何関数について数式処理を利用して新しい公式を導出した。超幾何関数の有理変換公式、A-超幾何多項式の特殊値をグレブナー基底を使わずに高速に計算する手法の開発、パラメータ付きホロノミーD加群に対するアルゴリズム(b-関数)や、グロタンディーク留数の計算アルゴリズムなどの結果を得た。アルゴリズムは、数式処理システムRisa/Asir上にプログラムとして実装した。
著者
堀口 良一
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

戦前期日本の安全運動の誕生・発展の過程で中心的役割を果たした蒲生俊文(1883~1966)に関する大量の資料-その多くが未出版、未公開の状態にある-についての綿密な調査を踏まえて、本研究では、蒲生の生涯が1914年から亡くなるまでの間、一貫して安全運動に捧げられていたことを、一次資料に基づく史料を駆使しながら示した。とくに、その成果として重要ものに、履歴書各種、著作目録(全461点)および伝記がある。
著者
岸 玲子 吉岡 英治 湯浅 資之 佐田 文宏 西條 泰明 神 和夫 小林 智
出版者
北海道大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

いわゆる化学物質過敏症を疑って札幌市内1医院を受診した患者全員(30人)に基本調査票の記入を依頼し、男性2名を含む26名から回答を得た。平均年齢は44.5歳、発症からの経過年数は2-5年が10人、発症時と比べて症状が悪化した11名、症状頻度が増加した13名だった。ドイツのBeilerらが開発した化学物質過敏症尺度(IEI尺度)を用いた結果、主訴は「においを強く感じる、頭痛、集中力の低下、疲労感、眠気」であり、原因物質は「ある種の香水、塗料または希釈液、タバコや葉巻、ガソリンのにおい、整髪料、マニキュア」だった。化学物質曝露による「健康状態、職場や学校での能力、余暇、家庭生活、身体的能力」への影響の有訴が高かった。この結果、先行研究同様に本研究対象者にとってもいわゆる化学物質過敏症は複数の身体症状が長く続く状態であるといえた。このうち同意が得られた18名(内男性1名)に芳香療法(アロマセラピー)の介入を、無作為化クロスオーバー比較試験として実施した。IEI尺度、および不安尺度については、介入期間前後と対照期間前後の得点差には統計学的有意差は見られなかったが(p>0.05)、各回のアロマセラピー前後では気分尺度の6つ全ての下位尺度に有意な改善が認められた(p<0.05)。化学物質過敏症は臨床的な疾病概念が定義されていない。しかし患者にとって身体症状は事実であり、症状コントロールが必要であるにもかかわらず、現在までに有効性が示された療法はない。本研究は化学物質過敏症へのアロマセラピーの効果を初めて検討した。対象者数が少なく、アロマセラピー介入による症状改善効果は本研究では明らかにならなかったものの短期には気分の改善が認められ、対象者の多くは機会があればこれからもアロマセラピーを受けたいと答えたことから、本研究の課題を改善することでさらなる研究の可能性が示唆された。
著者
ローベル 柊子
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では外国語で執筆する越境作家が出身地の言語的文化的要素をいかに別の言語で表現し、外国においていかに作家としてのアイデンティティを形成したかを検討した。特にミラン・クンデラのケースに注目し、これをもとに他の作家との比較検討を行った。外国語執筆の契機は亡命、移民、旧植民地出身、個人的な選択など多様だが、多くの越境作家において地域に根差した表現が顕著に見られ、越境の経験が創作の源となっている。クンデラにおいては世界的に読まれることへの意識が強く、ローカルな要素の表現に抑制が見られた。国内外での学会発表、ワークショップ、著作を通して成果を広く公開した。
著者
鈴木 秀典 齋藤 文仁 坂井 敦 永野 昌俊
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

自閉症スペクトラム症(ASD)を含む広汎性発達障害の発症機構を研究するため、ASD患者の染色体重複を模倣した病態モデルマウス(patDp/+)を用いて、ミクログリアの役割を検討した。生後7日のpatDp/+マウスの扁桃体基底外側核でミクログリアの活性化マーカーIba1の発現が低下していた。周産期のミノサイクリン投与によってIba1の発現は対照と同程度に回復し、成熟期の不安行動も改善した。ミクログリアへの直接作用が報告されているセロトニン再取り込み阻害薬を新生仔期にpatDp/+マウスに投与すると、成熟期の社会的行動が改善した。以上の結果はミクログリアの発達障害病態への関与を示している。
著者
市川 哲雄 誉田 栄一 矢儀 一智 南 憲一
出版者
徳島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

アンケート調査でフレイル得点もオーラルフレイル得点も年齢とともに一様の増加傾向を示した.歯が悪いこと,唾液,食べこぼしがフレイル得点に関係していた.食生活と摂食行動は 40歳以降で適正な方向に推移した.オトガイ舌骨筋断面積と開口力,舌圧,嚥下の持続時間に比例し,筋量と咀嚼・嚥下機能との関連性が示された.咬合支持喪失群においては,速筋化が見られた.生体電気インピーダンス分析で,上腕と咬合力に相関が,舌圧は認められなかった.以上の結果,筋量関係が最も有効であり,バイオマーカーとしても筋量を示す指標が重要であり,当初予想した速筋,遅筋等の運動速度については指標になり得る知見は得られなかった.
著者
松田 幸子
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

オーラルフレイルの前兆を予測するための評価の1つとして、舌骨の位置を側方セファロ分析によって水平および垂直的位置の推移について評価した。加齢とともに舌骨が垂直方向の下方に推移する傾向があること、特にそれは男性において著明であったことを国際学会において発表した。同様の発表は少なかったが、ディスカッションの場で、海外でも患者が加齢によりむせやすくなる傾向があるという情報を共有することができた。現在英文誌に投稿中である。簡易的に舌骨の評価を行うことができないかを評価するために、歯科治療においてよく用いられているパノラマエックス線写真を用いることができないか評価した。パノラマエックス線写真における舌骨の見え方を評価した。顎変形症や症候群、口蓋裂などの顎骨の変形を主とした患者を除いた333名(25本以上の歯を有している22-69歳までの矯正治療を予定している患者)のパノラマ分析と側方セファロ分析を行いった。パノラマエックス線写真で舌骨の見え方を前回同様に6群に分けて評価した。舌骨が一部ないしほぼ見えない群では、側方セファロ写真でも舌骨が低い位置にある傾向を示した。ただし、パノラマエックス線写真上で舌骨が完全に見えている症例でも、側方セファロ分析では舌骨が低い位置にある症例も認められたことから、パノラマエックス線写真で舌骨が一部しか見えない患者は舌骨が低位にある傾向が高いが、パノラマエックス線写真で舌骨がすべて見えている症例でも側方セファロ分析では舌骨が低い位置に認められる症例があることが明らかになった。この研究成果を国際学会にて発表した。咬合高径の低さとの関連性について検討した。リケッツの分析の下顔面高(LFH)と舌骨の上下的な位置について分析を行ったが、有意な傾向は認められず、咬合高径と舌骨の垂直的な位置の関連性は低いことが示唆された。
著者
吉川 峰加 栢下 淳 津賀 一弘 木村 浩彰 吉田 光由
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

背景:本研究では,全身の機能と口腔機能との関連を横断調査で確認し,希望した者に栄養指導または口腔リハビリテーションを8週間実施することで,半年毎に平成31年秋まで全身・口腔機能に変化があるか否かを確認することを目的とした.方法:対象者は自分の歯または義歯等で咬合の安定している41名(男性17名,女性24名,68-90歳)とした.全身疾患,服薬状況,日常生活に関する質問票,MMSE,EAT-10,MNA-SF,口腔機能評価としてディアドコキネシス,最長発声持続時間,3オンステスト,口腔湿潤度,咬合力検査,舌圧検査,咀嚼能率検査を実施した.また握力,歩行速度,膝伸展力を計測し,栄養調査とINBODYによる体組成調査を行った.結果:協力者は皆高血圧等の全身疾患を有するものの自立して日常生活を送っていた.前向き調査へ参加できている者は,対照群18名(男性9名,女性9名),栄養指導群13名(男性6名,女性7名),口腔リハ群8名(男性3名,女性5名)であった.第一回目の調査結果より,MNA-SFで低栄養の疑いのあった者は8名(男性2名,女性6名),サルコペニアの者は7名(男性3名,女性4名)であった.これら低栄養やサルコペニアを呈する者は舌圧やEAT-10との相関が認められなかった.また舌圧が20kPa未満の者において,EAT-10 の錠剤服用困難感の項目で関連を認めた.加えて,女性において舌圧と膝伸展力に有意な相関を認めた.まとめ:本研究協力者は日常生活を自立して送る,健康に自信のある者が大多数であったものの,サルコペニアやオーラルフレイルを有する者が存在した.また栄養調査より,高齢者の栄養や運動に関する知識に偏りを認め,今後我が国の健康寿命延伸の上で,大きな課題が浮き彫りとなった.
著者
森田 学 丸山 貴之 竹内 倫子 江國 大輔 友藤 孝明
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

高齢者をターゲットとした研究は、日本をはじめとする先進国の喫緊の課題である。これまでの歯科領域における研究対象としての“高齢者”は、主に“要介護高齢者”あるいは“要支援高齢者”である。これに対して近年、“オーラルフレイル(口腔機能の虚弱)”という口腔機能の軽微な衰えを表す概念が注目されている。現実には、日常生活で口腔機能に不自由を感じていない高齢者(前オーラルフレイル期高齢者)は多数存在する。しかし、このような高齢者を対象に歯・口の機能の継時的変化(機能の衰え)を追跡した研究は少ない。本研究では、オーラルフレイルに関連する要因とオーラルフレイルに至るまでのプロセス(パス)を解明することとした。岡山大学医療系部局研究倫理審査専門委員会で承認を得たのちに大学病院外来患者を対象に、オーラルフレイルと関連する身体的、精神的、社会的指標を調査した。オーラルフレイルの判定には、オーラルディアドコキネシス、舌圧、口腔乾燥、咀嚼能力、咬合接触面積、細菌検査、質問票の結果から総合的に判定した。オーラルフレイルと関連している可能性のある指標として、全身の老化指標(BMI、栄養状態、日常生活動作)、生活のひろがり(活き活きとした地域生活を送っているか否か)、精神・心理状態(WHO Five Well-Being Index)など調査した。総計150名の患者が調査に参加した。現在35名(平均年齢74.3±5.0歳、男性10名、女性25名)について入力し、分析を開始している。舌圧、口腔乾燥、咀嚼能力、質問票については正常の者が多かった。しかし、細菌検査、咬合接触面積、オーラルディアドコキネシスについては、正常以下の者が多かった。総合的に判断した口腔機能低下症が認められる群(6名)と認められない群(29名)との間で、全身の老化指標、生活のひろがり、精神・心理状態を比較したところ、2群間で有意に異なる指標はみられなかった。
著者
近藤 祐介
出版者
九州歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

フレイルとは高齢者の筋力や活動が低下している状態であり,歯科口腔領域においては食環境の悪化から始まる筋肉減少を経て生活機能障害に至るものをオーラルフレイルと呼ぶ.オーラルフレイルを引き起こす要因は様々であるが,加齢に伴う唾液腺の機能低下も一因となる.超高齢社会に突入した本邦ではフレイルに陥る高齢者は飛躍的に増加することが予想される.そこで我々は,高齢者における唾液腺機能低下のメカニズムを解明し治療法を開発することにより,オーラルフレイルを予防することを目的とし,本研究を立案した.研究には16週齢と48週齢の老化促進モデルマウスであるSenescence-Accelerated Mouse Prone 1 (SAMP1) を用いた.In vivo 解析において16週齢と48週齢のSAMP1を比較すると,耳下腺唾液量は同等であったが,顎下腺唾液量は48週齢で有意に低下した(p=0.005).Ex vivo顎下腺灌流モデルにおいても,副交感神経刺激による顎下腺からの分泌量は48週齢で有意に低下したが(p=0.036),副交感神経刺激と交感神経刺激を同時に行ったところ唾液分泌量は16週齢と48週齢で同等であった.一方,細胞内Ca2+濃度を評価したところ,副交感神経単独刺激および副交感神経,交感神経同時刺激のいずれにおいても16週齢と48週齢で同等であった.HE染色においては,顎下腺では48週齢でのみリンパ球浸潤の増加が確認され,耳下腺では16週齢と48週齢いずれにおいてもリンパ球浸潤は認めなかった.免疫組織化学では耳下腺,顎下腺ともに16週齢と48週齢においてAQP5,NKCC1,TMEM16Aそれぞれの発現に明らかな差はみられなかった.
著者
宇津木 安来
出版者
東京藝術大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2017-04-26

本研究の目的は、日本舞踊の「体幹部」の技法について、その具体的な動きをモーションキャプチャを用いて明らかにすることである。日本舞踊において、「体幹部」の技法は日本舞踊のパフォーマンス全体を支える基盤であり、最中心となるべき重要な技法であるにも関わらず、非明示的であるために、これまで感覚的に伝承されてきた。本研究では、熟練した指導者が行う「体幹部」の動きを解明することで、より具体的な技法の習得を可能にし、日本舞踊の伝承水準の向上に繋がることを目指している。今年度は、平成27年度、28年度に東京藝術大学日本舞踊部屋で光学式モーションキャプチャシステム(Motion Analysis MAC3D System)、赤外線カメラ16台(Raptor-12HS×8台/ Kestrel×8台 )、反射マーカ81個を使用して計2回実施した計測データのポストプロセス作業(編集作業)と解析作業を行った。研究は「体幹部」の技法の中でも特に日本舞踊の要と言われる「腰」の技法を中心に行った。モーションキャプチャデータと指導言語とを併せて参照し、指導言語の背景にある指導者の実際の腰の動きについて明らかにすることで、これまで考えられて来た「腰」の技法に対する指導言語への解釈を新たにする結果を得た。 研究成果については、国際学会や国内の学会、論文などで発表した。また、一般公開のワークショップや発表の場で研究成果の発表と踊りの実演を併せて行うなど、多様な形でのアウトリーチ活動を行った。
著者
小野 永貴
出版者
日本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、日本の高校教育の高度化の動向に応じ、図書館連携による高校生への学習支援可能性を検証することを目的としている。特に本研究では「学校図書館と大学図書館・専門図書館の連携」という枠組みに注目し、今まで検証されてこなかったその実態や効果を分析することを予定する。高度な学習を行う高校生に対し、大学図書館や専門図書館の資料利用権も与えることで、有効な支援となり得るのではないかという仮説を検証し、次代の高校教育を支える新たな連携モデルを構築することを目指す。研究初年度の平成29年度は、国内外における高大図書館連携の事例動向調査を開始した。特に、スーパーグローバルハイスクールや国際バカロレア等の指定・認定をうけている学校は、これらの枠組みの中で高大連携や図書館活用が強く促進されている場合があるため、これらの学校および枠組みに特化し報告書や専門書の収集と分析を行った。国内においては図書館連携にフォーカスして言及している文献は少ないものの、海外の専門書では高等学校図書館を大学図書館での学術活動への導入機能として捉え、シームレスに接続するための高度機能が必要との言及が早期から見受けられた。そのほか今年度は、日本の高校生の学習活動における大学図書館専門的資料のニーズ調査を実施するために、調査協力機関への交渉や相談を開始している。貸出履歴情報を活用するための各種手続きをすすめるほか、貸出履歴データの統計処理手法に関する先行事例調査も進めている。
著者
篠原 徹 飯田 浩之 井上 透 金山 喜昭 杉長 敬治 濱田 浄人 佐久間 大輔 戸田 孝 桝永 一宏 松田 征也 佐々木 秀彦 五月女 賢司 半田 昌之 守井 典子 田中 善明 石川 貴敏 水澤 喜代志 佐々木 亨 柏女 弘道 大川 真 高田 みちよ 神田 正彦 岩井 裕一 土居 聡朋
出版者
滋賀県立琵琶湖博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

博物館を対象に全国規模で定期的に実施されている2つの調査の1つである「博物館総合調査」を継承する調査を、全国の4,045館を対象に平成25年12月1日を調査基準日として実施した。そして、その結果を分析すると共に、博物館の経営・運営と博物館政策の立案上の緊急を要する課題(現代的課題)の解決に貢献できる、「博物館の使命と市民参画」「指定管理者制度」「少子高齢化時代の博物館に求められる新しい手法の開発」「博物館の危機管理」の4つのテーマ研究を行った。これらの成果は報告書としてまとめ、Webサイトに掲載して広く公開している。