著者
土谷 信高 柴田 知之 芳川 雅子 足立 達朗 中野 伸彦 小山内 康人
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

オマーンオフィオライト中の珪長質岩類は,海嶺期のもの,後期火成岩類に伴われるもの(衝上開始期),オフィオライト層序の下部に貫入する花崗岩質小貫入岩類(大陸衝上期)の3種類に区分できる.本報告では,これらのうちワジ・フィズ上流ザイミ付近のマントルかんらん岩中に貫入するものと,南部のハイレイン・ブロックのワジ・ハイミリアのマントルかんらん岩に貫入する大陸衝上期の花崗岩質小貫入岩体について,年代と岩石化学的特徴を述べる.これらの珪長質岩類の年代は,これまでに得られていた海嶺期および衝上開始期のものとほぼ同じかやや若い.また全岩化学組成は,海嶺期および衝上開始期のものと著しく異なることから,これらとは全く起源物質が異なることが分かる.詳細な検討から,ザイミのものは基底部変成岩類の白雲母を含むものの脱水分解溶融で,またワジ・ハイミリヤのホルンブレンドを含む岩石は角閃岩の部分溶融で説明可能である.
著者
中野 享
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会誌 (ISSN:13405551)
巻号頁・発行日
vol.139, no.6, pp.352-355, 2019

<p>1.はじめに</p><p>温度は日常的によく計られており,室温23℃,体温36.5℃,あるいは,最低気温10℃というように,セルシウス度(℃)を用いることが多い。しかし,この「℃」というセルシウス温度の単位や,普段測定している温度の目盛がどのように定められているのかなど,意識することな</p>
著者
中野友文 木下雄一朗 郷健太郎
雑誌
第76回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, no.1, pp.201-202, 2014-03-11

近年イラストでのコミュニケーションを主体としたSNSが普及している。最大手であるpixivには500万人以上のユーザが登録しており、趣味としてイラストを描きたいと考えるユーザは増加傾向にある。しかし、適切な指導を得られない環境ではイラスト上達の効率は著しく低下する。本稿では初心者が容易に人物イラストの技術を習得できることを目的とした学習支援システムを構築した。ユーザの描いた線からユーザの習熟度を推定し、それに応じた手本や補助線を提示することで効率よく技術を習得することを目指した。またユーザ調査実験を行い、本システムを使用することでユーザのイラスト技術が向上したことを確認した。
著者
壱岐尾 優太 佐賀里 昭 中野 治郎 近藤 康隆 小田 太史 大賀 智史 長谷川 隆史 東 登志夫
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.331-338, 2020 (Released:2020-12-21)
参考文献数
33

【目的】化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)を呈したがん患者の痺れおよび疼痛に対する破局的思考と,自覚症状,上肢機能,生活障害との関連を調べること.【方法】上肢にCIPNを認めた造血器腫瘍および消化器がん患者の破局的思考(PCS:合計得点,反芻,無力感,拡大視),痺れおよび疼痛に対する自覚症状,上肢機能,生活障害を評価し,Spearmanの順位相関係数を求めた.【結果】破局的思考と生活障害との間に有意な相関関係を認め,上肢機能との間には有意な相関関係は認めなかった.PCSの下位項目別では,反芻のみ自覚症状と有意な相関関係を認めた.【結論】上肢にCIPNを認めたがん患者の生活改善のためには,機能面に対する評価やアプローチだけでは不十分な場合があり,破局的思考などの認知的側面に対する評価やアプローチも考慮する必要がある.
著者
清水 紀宏 春日 晃章 中野 貴博
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、家庭の社会経済的条件と子どもの運動・スポーツ習慣、体力・運動能力との関係を明らかにするとともに、そうした体力・スポーツに関わる格差が、子どもたちの学校生活や社会関係に及ぼす悪影響を検討した。主要な結果は次の通りである。1.世帯収入が多く、学校外スポーツに多くの投資をしている家庭の子どもほど、体力・運動能力は高かった。また、家庭の社会経済的条件は、スポーツ機会の格差を通じて、体力格差や意欲格差を生じさせていた。2.体力の高さは、学校満足感や孤独感などの学会生活変数にもつ大きな影響を及ぼしていた。
著者
後藤 真孝 中野 倫靖 濱崎 雅弘
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.739-749, 2014

本稿では,初音ミクとN次創作に関連した音楽情報処理の研究事例として,歌声合成技術VocaListenerと音楽視聴支援サービスSongriumを紹介する。VocaListenerは,初音ミク等の歌声合成ソフトウェアを用いて,録音された人間の歌声の事例からその歌い方(声の高さと声の大きさ)をまねて自然な歌声を合成する技術である。Songriumは,オリジナル楽曲とそれらのN次創作結果である派生作品といったさまざまな関係性を可視化できる音楽視聴支援サービスである。本稿ではさらに,より未来を見据えて自動創作と自動鑑賞の可能性を考察することで,音楽がもたらす感動の本質的な要因についても議論する。
著者
中野 茂夫 斎藤 英俊 中島 伸
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.73, no.629, pp.1617-1624, 2008-07-30 (Released:2009-09-30)
参考文献数
7

The purpose of this paper is to clarify an architectural history and character of Chateau Kamiya. Chateau Kamiya designed by Okada Tokitaro(1859-1926) was built by Kamiya Denbee(1856-1922) in September 1903. This building was the oldest comprehensive wine distillery in brick in Japan. In Chateau Kamiya, administration building, wine distillery and wine storage in brick extant. That three buildings stay almost unchanged after the construction. Chateau Kamiya is the only comprehensive wine distillery constructed in the Meiji era. Chateau Kamiya is a precious industrial heritage.
著者
中野 収
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.308-318,383, 1984-12-31 (Released:2009-11-11)
被引用文献数
1 1

社会の情報化に伴って、文化の各領域での変容が進行する。しかし、情報化は必ずしも原因ではない。文化の変容によって情報化が進行し、情報化が文化変容を促す。というか、むしろ、情報化と文化変容は、産業社会の変動のふたつの側面なのである。'60年代以降、人々の生活様式の変化が著しい-衣食住の形から社会的移動のパターンまで。特に、テレビの普及にはじまるさまざまなメディアの生活への浸透は、社会や生活の中での人間の条件を変えてしまった。人々は孤立し、メディアを擬人化し、メディアに知識情報を求めなくなった。この現象は、いわゆる価値の多様化と併行して進行した。さまざまな社会的規範が弛緩し、価値の多様化が進み、社会的逸脱が常態化した。その結果、社会的表象を解読するコードが、不安定になり、流動化した。こうした社会的規範の極度に弛緩した時代に、文化創造は、どのような形で、いかにして可能なのだろうか。新しい生活様式は、明らかに文化の創造であった。たしかに、, 60年代は文化的に多産な時期であった。しかし、現在、音楽、絵画、文学、映画、演劇における創造の主要な形態は、引用と模倣と剽窃とパロディにとどまっており、創造の名に値する創造は、極めてマイナーな領域で行われているにすぎない。
著者
島津 貴幸 柴田 哲成 中野 優恵 前田 英児
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101163, 2013

【はじめに、目的】変形性膝関節症(以下:OA) において、大腿脛骨関節(F-T joint)のみでなく膝蓋大腿関節(P-F joint)の重要性について報告が散見される。臨床でも、OAのF-T jointよりP-F joint に問題を抱える症例を経験する。一方、レントゲン画像 (X線) 評価では、関節裂隙の狭小化と骨棘形成の重症度分類,下肢アライメント評価が主に用いられている。そこで今回、変形性膝関節症と診断され膝関節鏡視下術の術前X線を用いて膝関節周囲の骨アライメントについて内側広筋の機能を加え比較・検討したのでここに報告する。 【方法】対象は、平成24年1月から8月までに当院で膝関節鏡視下手術を施行したOA群29膝(女性20名・男性9名、平均年齢60.5±14.7歳)、コントロール群として膝に既往のない当院スタッフ10膝(女性5名・男性5名、平均年齢26.2±2.66歳)を健常群とした。レントゲン評価は、腰野によるOA分類、Femorotibial(FTA)、Q-angle、膝蓋骨の形態の分類(Wiberg)、膝蓋骨高位(Patella height)、滑車面角(Sulcus angle)、適合角(Congruence angle)を計測し健常群と比較した。加えて、超音波にて内側広筋筋腹の収縮前後を計測し除算したものを収縮率とし各々X線との関係性を検討した。統計学的分析では、Mann-Whitney U検定、ピアソンの積率相関係数を用い危険率を5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】対象者には事前に研究の十分な説明の上、レントゲン画像の使用の同意を得た。【結果】OA分類の内訳はGrade0:27.6%,Grade1:44.8%,Grade2:27.6%だった。Patella heightはOA群1.05±0.14健常群0.95±0.11、Sulcus angleはOA群134.7±6.09°健常群129.2±5.51° 、Congruence angleはOA群20.44±8.99°健常群11.4±3.86°と有意差(p<0.05)がみられた。Q-angle、FTA、Wibergには有意差はみられなかった。内側広筋の収縮率と比較するとPatella heightとの間に有意な相関(r=-0.49、p<0.05)がみられた。【考察】今回、初期OAのX線ではF-T jointよりP-F jointに有意差がみられ、パテラアライメントに問題を抽出しやすいと示唆された。特に、Patella heightでは内側広筋の収縮が起こりにくい結果となった。OAは内側広筋機能不全を伴い大腿直筋・外側広筋・腸脛靭帯の短縮または過剰収縮が起こると報告があり、膝蓋骨の位置を構成する組織として大腿四頭筋・膝蓋靭帯・膝蓋大腿靭帯・半月大腿靭帯・腸脛靭帯とされている。今回の結果から、従来軽視されていたX線でのパテラアライメント評価が、筋・靭帯の異常の指標の一つとなると考えられる。今後、パテラ位置の評価から運動療法の効果判定まで一連しての研究を行っていきたい。【理学療法学研究としての意義】本研究により初期OAのレントゲン画像上、膝関節周囲の骨アライメントはP-F jointに異常所見を抽出されやすいことが示唆された。このことから、パテラの位置の確認が一評価として重要であり、考慮した運動療法のプログラム立案が必要だと考える。
著者
楊 耕 富岡 理知子 中野 求 金 東海
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.113, no.5, pp.579-586, 1993-05-20 (Released:2008-12-19)
参考文献数
11
被引用文献数
34 63

A permanent magnet synchronous motor can be controlled as a DC brushless motor, for which the position sensor is needed for detecting the rotor position. In this paper, the research on speed control system without position and speed sensors is reported, where the rotor position and speed of the motor are estimated by means of an adaptive observer. To make the state equations linear, two new state variables are introduced. Consequently, based on the Iinear control theory, an adaptive observer is designed by which the estimated speed and position are converged to real ones. The system is verified to be asymptotically stable. The operation of the system at zero speed and the effects of the mismatched parameters used in the observer are also discussed. Finally, the speed control of the system is implemented. The computer simulation and the experiments show that the system is valid.
著者
及川 輝樹 中野 俊 荒井 健一 中村 圭裕 藤田 浩司 成毛 志乃 岸本 博志 千葉 達朗 南里 翔平
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

飛騨山脈南部の岐阜県・長野県県境に位置する乗鞍火山の最近約1万年間の噴火史を,テフラ層序とAMS 14C年代測定を基に明らかにした.なお本報告は,乗鞍岳火山防災協議会が行った調査を基にして,その後検討を加えたものである.かつて乗鞍火山における最近1万年間の活動中心は,火口縁に最高峰の剣ヶ峰(3026m)がある権現池火口の他,恵比須岳火口にもあるとされていた.しかし,恵比須岳火口起源のテフラとされていた噴出物は,年代や記載岩石学的特徴から,その火口起源のものではないことが明らかとなった.そのため,最近1万年間の活動中心は権現池火口周辺に限られる.最近1万年間における乗鞍火山の噴火活動は,テフラ層序に基づくと,少なくともマグマ噴火を2回,水蒸気噴火を10回行っている.マグマ噴火は,いずれも水蒸気噴火に始まるが,その後火山灰を放出する噴火とスコリアを放出する噴火がそれぞれ発生した.スコリアを放出する噴火は,その初期に小規模な火砕流も発生した.総テフラ噴出量は数100~1000万/m3オーダである.なお,権現池火口周辺から流れ出た溶岩のうち,保存のよい微地形が残存する溶岩も3ユニットあることから,溶岩を流す噴火も完新世に3回発生した可能性がある.また,個々の水蒸気噴火の総噴出量は,数10~数100万m3オーダとなる.最新の噴火は,約500年前に発生した水蒸気噴火である.およそ7300年前に降下した鬼界アカホヤ火山灰より上位のテフラユニットの数から算出した噴火頻度は,800年に一回となる.近隣の焼岳火山(100~300年/回)と比べると噴火頻度は少ないが,桁違いに少ないわけではない.
著者
日比野 啓 神山 彰 井上 優 中野 正昭 大原 薫 川添 史子 鈴木 理映子 舘野 太朗 袴田 京二 和田 尚久
出版者
成蹊大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

主として商業演劇に携わった三十五人の演劇人・評論家・研究者に聞き書きを行った。一回の聞き書きに費やした時間は二時間から四時間で、聞き書きとして記録に残された文字数はそれぞれ二万字から五万字にのぼる。その後、研究協力者による編集・再構成を経て、研究代表者・研究分担者による歴史史料との付き合わせとイントロダクション執筆、最後に当事者チェックをしていただき、その一部はウェブサイト・日本近代演劇デジタル・オーラル・ヒストリー・アーカイブに公開された。こうした聞き書きを積み重ねてきた結果、商業演劇を中心に人間関係のネットワークが築かれていき、日本近代演劇全体に通底する美学が構築されたことを明らかにした。
著者
国本 正彦 星野 保 中野 道紀
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.1097-1102, 1989-06-25 (Released:2008-02-29)
参考文献数
24
被引用文献数
2 3

In east Asia, some species of mold have been inoculated on materials in the processes of liquor and seasoning production. The materials molded have been called “Koji” in Japanese.In the present study, in order to decompose the lipid in sardine meal; first, the lipid in “Koji” inoculated with Aspergillus oryzae was determined at various molding stages. The lipid content in the “Koji” decreased from 8.4% at 0h to 2.1% at 60h on dry matter basis. From the results of both thin-layer chromatography and densitometry at different stages, it was roughly estimated that an amount of triglyceride decreased, while free fatty acid increased. This finding showed the possibility that lipase was active in the “Koji”.Second, the lipolytic activity of crude extract from the “Koji” was determined in case of using substrate of olive oil emulsion. A maximum activity was observed after 48h of molding. The activity depended on pH and temperature.
著者
羽田 清貴 加藤 浩 井原 拓哉 中野 達也 深井 健司 辛嶋 良介 宮本 崇司 森口 晃一 嶋村 剛史 岡澤 和哉 奥村 晃司 杉木 知武 川嶌 眞之 川嶌 眞人
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0237, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】臨床において,歩き始めに膝痛や不安定感などの症状を訴える変形性膝関節症(以下,膝OA)患者は少なくない。膝関節へのメカニカルストレスの指標として外部膝関節内反モーメント(以下,KAM)が注目されており,膝OAの病態進行の危険因子の1つとして考えられている。また,膝OA患者に対して体幹や骨盤の回旋運動を改善させる理学療法を実施すると,歩容の改善だけでなく膝痛が減少する患者を経験する。そこで本研究の目的は,膝OA患者の歩き始めにおける胸椎・骨盤回旋運動とKAMとの関連性について検討することである。【方法】対象は膝OA患者7名(平均年齢70.3±10.9歳。以下,膝OA群)と健常成人15名(平均年齢35.0±11.7歳。以下,対照群)で全例女性であった。課題動作は5mの歩行路上の自由歩行とした。計測下肢から一歩目を踏み出し,床反力計を踏むように指示した。一歩目の歩幅の距離は被検者の身長の40%になるように設定した。歩行時は目の高さに設置した前方の目標物を注視させた。動作は5回実施した。計測方法は,赤外線カメラ8台を備えた三次元動作解析装置Vicon-MX13(Vicon Motion Systems社製)と床反力計(AMTI社製)1基を用いて実施した。三次元動作解析装置,床反力計のサンプリング周波数は100Hzとした。直径14mmの反射マーカーを身体51箇所に貼付した。得られたマーカー座標から胸椎セグメント,骨盤セグメント,両大腿セグメント,両下腿セグメント,両足部セグメントの8剛体リンクモデルを作成し,胸椎・骨盤の絶対及び相対回旋角度変化量,KAM第1ピーク値と第2ピーク値を算出した。統計学的解析はDr.SPSS II for Windows 11.0.1 J(エス・ピー・エス・エス社製)を用い,正規性の有無に従って,2群間の比較には2標本の差の検定を,KAMと胸椎・骨盤回旋角度変化量の関連性の検討にはPearsonの積率相関係数,またはSpearmanの順位相関係数を用いた。なお有意水準は5%未満とした。【結果】KAMの第1ピーク値と第2ピーク値[Nm/kg]は,対照群でそれぞれ0.35±0.09と0.31±0.09,膝OA群でそれぞれ0.57±0.16と0.53±0.16であり膝OA群が有意に高値を示した。胸椎相対回旋角度の変化量及び骨盤絶対回旋角度の変化量[deg]は,対照群で18.39±7.20と14.89±6.57,膝OA群で10.79±3.97と7.79±5.05であり膝OA群が有意に低値を示した。また,胸椎相対回旋角度の変化量及び骨盤絶対回旋角度の変化量は,KAMの第1ピーク値及び第2ピーク値と負の相関関係が認められた。【結論】歩き始めにおけるKAMは膝OA群が大きかった。臨床において,歩き始めに膝痛を訴える膝OA患者は,KAMの増大が疼痛の誘発原因の1つになっている可能性が示唆された。また,胸椎や骨盤の回旋可動域の低下は,KAMを増大させる一要因になる可能性が示された。膝OA患者のKAMを減少させるための理学療法戦略として,歩行時の胸椎や骨盤の回旋運動に着目する必要性があるかもしれない。