著者
氏家 等 朝倉 敏夫 村上 孝一 山田 伸一 池田 貴夫 會田 理人
出版者
北海道開拓記念館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

日本時代から現在に至るサハリン朝鮮民族の生活文化の変遷について、サハリン州や帰還者の住む韓国安山市において、約30名のサハリン朝鮮人の方々から基礎的情報を収集し、記録にとどめてきた。その結果、朝鮮文化のなかでも、オンドルや頭上運搬のような日本時代ないしソ連時代初期に失われた文化要素が少なくない一方で、日本→ソ連→ロシア時代を通じて、(1)日本時代を経験した多くの朝鮮人がウズベキスタンの朝鮮人から餅米を取り寄せ、臼と杵を使って餅を掲き続けてきたこと、(2)ロシア人の墓とは対照的に朝鮮人の墓は盛り土の前に墓石を立てる朝鮮半島方式を守ってきたこと、(3)還暦の行事を朝鮮方式で行い続けてきたなど、継続して守ってきた文化があったことを確認し、食文化や精神文化に関する文化要素は残り、住生活、衣生活などにおいてはその継承が難しかったことを明らかにした。一方、サハリン朝鮮民族は、多様な民族的関係史のなかで、韓国スタイル、北朝鮮スタイル、日本スタイル、ロシア・スタイルをそれぞれ重層的に取り入れた多重化したライフスタイルを構築してきた。また、ペレストロイカ以降の自由主義経済の展開を通じ、韓国人、北朝鮮人、沿海州の朝鮮人、中国人、日本人との交流関係が定着し、そのライフスタイルはより多角化の傾向にあることがわかってきた。日本時代を経験した朝鮮人、ソ連時代に生まれ育ち多くを社会主義経済下で過ごした朝鮮人、ペレストロイカ前後に生まれ育ち多くを自由主義経済下で暮らした朝鮮人など、世代間でそのライフスタイルの指向に違いが見られる事実も浮かび上がっている。韓国安山市等に帰還した元サハリン在住者の間では、周囲にロシア文化を流入させ、韓国文化を拒否する人々が相次ぐなどの課題も生じている。これら新たに生じた課題に踏み込むことにより、サハリン朝鮮民族の文化に対する理解がより深まることとなる。
著者
西田 佳史 相澤 洋志 堀 俊夫 柿倉 正義
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2002, 2002
被引用文献数
7

日常環境において人を中心とした情報処理サービスを提供するには, 日常活動を認識することが不可欠である。日常活動を認識するアプローチとして, 従来, 環境側に埋め込まれたセンサの情報を利用して, 人の活動を推定する手法が試みられてきた。本稿では, ホッチキス, パンチといったその空間的な位置や構成要素間の状態が変わる対象物をセンサ化し(センサライゼーション), これらの対象物型センサを用いることで人の日常活動を認識するシステムを提案する。また, 対象物センサ化システムを低コストで具現化できるシステムとして, 超音波センサを対象物に1つ以上取り付け, 日常環境中の多数の対象物をセンサ化するシステムについて述べ, このシステムを用いた日常活動の認識実験について報告する。
著者
星 永進 青山 克彦 村井 克己 池谷 朋彦 金沢 実 杉田 裕 高柳 昇 生方 幹夫 倉島 一喜 松島 秀和 佐藤 長人
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.391-393, 2002
被引用文献数
2

目的.良性気道狭窄病変に対する気管・気管支形成術の成績について検討する.方法.過去11年間に当センターで手術を施行した良性気道狭窄8例を対象として,外科治療成績について検討した.自覚症状を有し,気管支鏡所見でpinhole状の狭窄あるいは閉塞を示す場合に手術適応とした.性別は女性7例,男性1例.年齢は23歳から58歳(平均40歳)であった.原因疾患別では結核性4例,necrotizing sarcoid granulomatosis(NSG)1例,気管内挿管後3例,病変部位は結核性では左主気管支3例,左上幹1例.NSGでは右主気管支ならびに中間気管支幹1例.挿管後では頸部気管3例.手術アプローチは結核性とNSGは側方開胸,.挿管後では頸部襟状切開.術式は結核性では左上葉管状切除1例,左上幹管状切除1例,左主気管支管状切除2例.NSGは右中下葉管状切除,挿管後では気管管状切除3例.吻合は吸収性モノフィラメント糸を用いて端々吻合した.手術時間は結核性は244〜328分(平均288分),NSG252分,挿管後97〜150分(平均124分).術中出血量は結核性150〜833ml(平均416ml),NSG385ml,挿管後40〜200ml(平均97ml).結果.吻合部狭窄,縫合不全などの術後合併症を認めなかった.狭窄病変の再発はなく,全例元気に社会復帰している.結論.良性気道狭窄病変に対する気管・気管支形成術は,安全で有用な術式である.
著者
窪田 幸子 曽我 亨 高倉 浩樹 内堀 基光 大村 敬一 杉藤 重信 丸山 淳子 PETRRSON Nicolas ALTMAN Jon
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、20 世紀末から力を持つようになった国際的なイデオロギーとしての「先住民」概念を視野に入れつつ、国際世論と国家の少数民族政策のもとで、少数者である当事者の人々が、どのように先住民としての自己のアイデンティティを構築していくのかをあきらかにすることを目的とするものである。その結果、先住民としてのアイデンティティを選び取る・選び取らないという選択の幅がみられる現状には、グローバリゼーション、なかでもネオリベラルな経済的影響が大きいことが明らかになった。最終年に開催したとりまとめの国際シンポジウムではこのスキームをベースとして、代表者、分担者そして海外研究協力者の全員が研究発表を行った。
著者
Zelazny Roger 浅倉 久志
出版者
早川書房
雑誌
SFマガジン
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.66-90, 2010-08
著者
登倉 尋実 緑川 知子 登倉 尋実
出版者
奈良女子大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1996

実験1)平成8年度の実験で両大腿部加圧時に唾液消化能力への被服圧の影響が大きいことがわかったので、今回は両大腿部に10mmHg,2mmHg,30mmHgの圧力を加えて加圧量により唾液消化能力・自律神経機能がどの様な影響を受けるかを調べた。被験者の両大腿部に血圧測定用カフを巻いただけの非加圧期間30分の後、60分カフに空気を送り加圧を行った。唾液消化能力の低下がすべての加圧時に、唾液分泌速度の低下、唾液中アミラーゼ濃度の低下が20mmHg,30mmHg加圧時に見られた。唾液中カルシウム濃度の上昇が30mmHgで、コルチゾール濃度の上昇は20mmHgで顕著に見られた。光に対するボタン押し随意反応時間は20mmHg、音に対する随意反応時間は30mmHg加圧時に遅延する傾向が見られた。皮膚圧迫により心臓における副交感神経活動の有意な亢進と交感神経活動の抑制が認められ、心拍数は有意に減少した。今回の加圧量と加圧部位においては交感神経系地域性能のより、加圧が唾液腺への副交感神経活動を抑制していたことが示唆された。実験2)実験において唾液腺への副交感神経が加圧により抑制されていることが示唆されたので、今回はさらに加圧によるストレスが唾液腺に影響を与えた可能性があると考え、ストレス下での加圧を試みた。ストレスとして環境温35±0.5°C,相対湿度60±3.0%の人工気候室内で暑熱負荷を行い体温調節反応も併せて測定した。その結果加圧時には発汗量が抑制され深部体温の上昇度が有意に多くなった。唾液中コルチゾール・尿中カテコールアミン類・アンケートによる疲労感・不快感が加圧時に上昇を示した。唾液分泌量の減少が認められた。以上のことから、被服圧は加圧部位における直接的な影響からは計り知れない生理的影響を,自律神経系ストレス系を通して体中に生じていることが示唆された。
著者
安部 巌 和泉 圭二 倉本 成史 武者 宗一郎
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.31, no.8, pp.427-431, 1982-08-05
被引用文献数
2

屋久杉をその年輪に沿って紬かく裂き,外皮側より1084年から1474年内での8箇所でそれぞれ,アミノ酸を分離し,光学活性固定相を用いたガラスキャピラリーガスクロマトグラフィーでその挙動を観察すると,アラニン(Ala),バリン(Val),アスパラギン酸(Asp),フェニルアラニン(Phe)の4種がラセミ化しており,特にAspでは年輪の増加に伴うD/L比の規則的な増大がみられた.屋久杉年輪の年代はAsp D/L比よりの次の2方式すなわち(I)1本の年代を既知として作成した検量線,及び(II)2本の年代を既知として作成した検量線,により求め,年輪年代との比較を行った.推定値標準誤差は,それぞれ(I)39.8年,(II)29.6年となり,方式(II)は年輪年代により接近した測定年代を示した.
著者
増倉 秀一 端浦 宏俊 長谷 隆
出版者
日本流体力学会
雑誌
ながれ : 日本流体力学会誌 (ISSN:02863154)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.55-63, 2009-02-25

速度制限区間を設けた場合の交通流への影響を研究する.二車線交通モデルでは車線変更を考慮した拡張最適速度モデルを適用する.速度制限区間を設けることによって交通状態や交通特性は大きく変化する.速度制限区間を設けた一車線交通は自由流,飽和流,混雑流と三つの異なる交通状態を示す.二車線交通においては車線変更条件を考慮すると交通状態は六つの領域に分けられる.一車線ならびに二車線交通では渋滞が発生する密度で交通流量が飽和し,速度制限区間の手前に不連続面が発生する.この不連続面前後の車間距離間の関係を明らかにした.
著者
鍋倉 淳一 住本 英樹 渡部 美穂 江藤 圭 金 善光
出版者
生理学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

中枢神経における長期シナプス再編とその制御機構について生体イメージングを主な手法として検討をおこなった結果、障害神経細胞において、ミクログリアは直接の接触により、過剰興奮による細胞障害死を抑制していること。幼若期においてミクログリアは直接接触によりシナプス形成に寄与していることが判明した。慢性疼痛モデル動物を用いて検討した結果、大脳皮質においては長期固定シナプスと可変シナプスが存在し、痛覚入力持続などの環境が変化する場合、可変シナプスがより高率に再編されることが判明した。グリア細胞は発達期や脳障害後の回復期など脳機能が大きく変化する時期の神経回路の変化に重要な役割を持っていることが判明した。
著者
大倉 昭人 川上 博 井原 武 三浦 章
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.274, pp.31-34, 2004-08-26

次世代移動体通信網としてIPネットワークの検討が進んでいる。IPネットワークでは様々なトラヒックの品質要求に応じたQoS制御が必要であるが、移動体通信網は花火など端末集中による輻輳や、地震など災害地への呼集中による輻輳の影響を受けやすい。本研究ではIPセルラ網に向けたロバストなQoS制御方式に関し、トラヒック異常検出に基づく予測制御と、線形最適化を応用したマルチパス制御を提案し、シミュレーション評価により方式の有効性と適応範囲を明らかにした。
著者
大倉 昭人 川上 博 井原 武 三浦 章
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.272, pp.31-34, 2004-08-26

次世代移動体通信網としてIPネットワークの検討が進んでいる。IPネットワークでは様々なトラヒックの品質要求に応じたQoS制御が必要であるが、移動体通信網は花火など端末集中による輻輳や、地震など災害地への呼集中による輻輳の影響を受けやすい。本研究ではIPセルラ網に向けたロバストなQoS制御方式に関し、トラヒック異常検出に基づく予測制御と、線形最適化を応用したマルチパス制御を提案し、シミュレーション評価により方式の有効性と適応範囲を明らかにした。
著者
中村 哲 翠川 裕 波部 重久 松田 肇 翠川 薫 渡部 徹 中津 雅美 二瓶 直子 鈴木 琴子 黒倉 壽 風間 聡 三好 美紀 桐木 雅史
出版者
独立行政法人国立国際医療研究センター
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

ラオス国との共研究の主対象となったラオスの消化管寄生虫感染症に関して、現地調査により山岳部と平地とで寄生虫相が異なることを示唆した。特に淡水魚類の生食を介して感染するタイ肝吸虫類の感染が都市周辺域において顕著に高いことを示した。さらに、山岳地居住民の感染率と健康調査データの解析からリスク因子として、年齢や識字率、集落での衛生的な飲み水の利用割合、民族の比率を見出した。そして、これらの因子による重回帰で得られるリスクマップを含めた、地区内または広域でのリスク管理手法を示した。
著者
中島 淳 垣見 和宏 村川 知弘 深見 武史 倉知 慎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

【目的】治療困難・予後不良な肺癌再発例に対して自己活性化γδ-T 細胞(γδT)による免疫療法を試み、安全性および有効性について明らかにする。【対象と方法】原発性肺癌、非小細胞肺癌治療後再発例、本研究に同意された方。評価可能病変を有し、除外基準を持たないことを条件とした。【結果】腺癌8例・扁平上皮癌1例・大細胞癌1例計10例を対象とした。γδTは3-12回投与された(中央値6回)。全有害事象はGrade1のべ3回、Grade3のべ2回(細菌性肺炎・放射線肺炎)であった。いずれもγδT 治療と関連は無かった。投与後240-850日(中央値445日)観察され、最終観察時生存6、死亡4例であった。γδT投与中死亡は見られなかった。死因はいずれも肺癌再発増悪であった。RECICS 判定では5回投与後CR/PR/SD/PD=0/0/5/4であった。後観察期間では0/0/3/5判定不能2であった。CR+PR+SDの割合を病勢コントロール率とすると5回投与後では50%,後観察期間では30%であった。投与後末梢血中のVγ9-γδT 細胞数は次第に増加傾向にあった。FACT-BRM total score の経時的測定においてはGrade 3有害事象症例をのぞき、投与期間中はスコア値が安定ないし上昇し、治療期間中のQOLは良好に保たれた。【考察】非小細胞肺癌表面に過剰発現するMICA/B0を認識するNKG2DをγδTは発現しており、isopentenyl pyrophosphate をTCR/CD3のリガンドとして認識し、癌細胞に接触・破壊する。体内に多量の自己γδT を投与した場合の安全性ならびに有効性について明らかにしたが、さらに今後はこの細胞障害活性をより効果的に体内で発現させるための方策について検討を進めたい。
著者
河田 博昭 町野 保 南條 義人 岩城 敏 下倉 健一朗
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MVE, マルチメディア・仮想環境基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.748, pp.35-40, 2005-03-17

遠隔作業支援において, 映像だけでは伝え難い力情報などを効率的に伝達する手法の実現を目指す. 伝統技術の伝承や, スポーツの分野では微妙な力加減を擬音語で表現して伝達していることに注目し, 音による力情報提示により遠隔地からの作業支援を行う手法を提案する. カメラとプロジェクタとを用いて双方向コミュニケーション環境のプロトタイプを構築し, その上で, 一自由度の力加減を, 周波数変調を行った音で提示する基礎実験を行った. 実験結果から, ゆっくりと加えられる力加減の伝達において音による提示が有効であることを確認した.
著者
嶋田 容子 板倉 昭二
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.337-339, 2007-07

母親による乳児の泣きの音声の擬音語でのとらえ方,また擬音語表現と解釈との関連を質問紙によって調査した。比較的単純な擬音語が欲求として解釈され,この解釈には共通性が高かった。多様な変化を含む擬音語表現は,感情と解釈され,さらに乳児の手足の動きを伴うことが高い頻度で記述された。
著者
熊倉 誠一郎
出版者
順天堂大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

挿管し陽圧呼吸で管理する全身麻酔施行前後に、気道上皮被覆液中(以下ELF)のインターロイキン-8(以下IL-8)濃度の測定を行った。揮発性吸入麻酔薬であるセボフルランに亜酸化窒素を併用投与すると、併用しない場合と比較し、術後ELF中のIL-8の濃度が有意に上昇した。しかし静脈麻酔薬であるプロポフォールに亜酸化窒素を併用投与した場合には、IL-8濃度の上昇は有意には高まらなかった。以上から今回の研究によりセボフルランと亜酸化窒素を併用投与することで肺局所に炎症を惹起する可能性が認められた。