著者
朝岡 誠 林 正治 藤原 一毅 岩井 紀子 船守 美穂 山地 一禎
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.168-175, 2020-05-23 (Released:2020-06-26)
参考文献数
18

研究データの再利用を促進するためには,単純な公開だけではなく,条件付き公開(制限公開)に対するニーズを満たしたシステム基盤の整備が不可欠である.本研究では,制限公開データを提供している機関のワークフローを調査し,研究データを提供するフローの類型化を行った.さらに,汎用的なリポジトリシステムWEKO にその機能を実装し,JGSS 研究センターの制限公開ワークフローをシミュレートすることでその運用を検討した.
著者
岡原 一徳
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
pp.ra.2019-0004, (Released:2019-08-30)
参考文献数
28

要 旨:フレイルとは「加齢に伴い各種臓器の機能が低下し,身体の予備能力が低下した状態」を指す疾患概念である.一方,認知症の行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia: BPSD)のうち「食欲低下などの摂食障害と意欲低下(アパシー)」が顕在化している特徴的な患者群が存在し,これらの患者ではフレイルが併発している場合がある.フレイルは認知症の発症要因および悪化要因とされているため治療介入が必要であるが,薬剤療法はまだ確立されていない.人参養栄湯[TJ-108 ツムラ人参養栄湯エキス顆粒(医療用)]は,古来より健忘のある高齢者の虚弱(フレイル)に用いられてきた処方の一つで,術後の体力低下,疲労倦怠,食欲不振,貧血などに対する効能効果を有する.実際,最近になり人参養栄湯がフレイルなアルツハイマー病患者の食欲低下やアパシー,さらには認知機能を同時に改善することが報告された.本総説では当院における知見も含めて,フレイルな認知症患者に対する人参養栄湯の効果,またその作用メカニズムについて概説する.
著者
中岡 慎治 滝 久雄 合原 一幸
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.235-240, 2010-05-01 (Released:2010-09-22)
参考文献数
20

本研究解説では,免疫学における定量数理モデルを用いた研究の紹介を通じて,理論免疫学(theoretical immunology)分野における最近の研究動向についてレビューする.続いて,各研究グループによって独立に構築されてきた数理モデルを横断的に検討し,それら数理モデル間に共通性・類似性が存在することを示す.
著者
三高 裕 島袋 盛洋 松隈 憲吾 髙木 俊輔 外間 宏人 三原 一雄 近藤 毅
出版者
九州精神神経学会
雑誌
九州神経精神医学 (ISSN:00236144)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.83-87, 2017-08-15 (Released:2020-03-26)
参考文献数
8

CADASIL(cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy)とは皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性遺伝性脳動脈症であり,随伴症状として,抑うつなどの精神症状を来たすことも多い。そのため,精神科受診当初はうつ病や双極性障害などの疾患と誤って診断される可能性も高いため,片頭痛や脳卒中の家族歴など,精神症状以外にCADASILを疑わせる症状や病歴があれば,速やかに頭部MRIを撮影すべきである。その結果,多発性脳梗塞や白質脳症を認めれば,CADASILを積極的に疑い,Notch3変異に関する遺伝子解析や,皮膚/筋生検を行って確定診断に繋げることが望ましい。
著者
森田 尚樹 佐藤 幸男 櫻井 裕之 横堀 將司 石川 秀樹 梶原 一 海田 賢彦 松村 一 福田 令雄 濱邉 祐一 磯野 伸雄 田上 俊輔 藤原 修 副島 一孝 新井 悟 佐々木 淳一
出版者
一般社団法人 日本熱傷学会
雑誌
熱傷 (ISSN:0285113X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.76-89, 2022-09-15 (Released:2022-09-15)
参考文献数
17

東京都熱傷救急連絡会は熱傷救急ネットワークとして参画施設よりデータを収集, 分析し熱傷に関する啓発活動等を行っている. 今回1991年から2020年の30年間分9,698症例のデータを5年ごとに分け分析し, 熱傷症例の傾向を検討した.  総症例数に大きな変化は認めず, おもな受傷原因はflame burn, scald burn, inhalation injuryの順に多かった. 平均熱傷面積は有意に減少を認め, 平均年齢は有意に上昇し, 死亡率は有意に低下を認めた. 死亡症例の平均年齢は有意に上昇し, 平均熱傷面積は減少した. 死亡症例のBIは有意に減少したが, PBIは変化を認めず, 100をこえると死亡率は60%以上となった. 原因別症例数推移は, scald burnは増加傾向を, inhalation injuryは有意に増加した. これに対し, flame burnは有意に減少を認めた. Flame burnでは火災, コンロ等, 自傷行為, scald burnではポット・鍋の湯・油, 熱い食べ物, 風呂・シャワーがおもな受傷原因であった.  年齢別症例数は, 年少年齢 (0~14歳) ではポットの湯や油によるscald burn症例が増加傾向にあり, 対して火災によるflame burn症例は減少傾向を示した. 生産年齢 (15~64歳) では火災や自傷行為によるflame burn症例は減少傾向を認めた. 老年年齢 (65歳以上) では火災, コンロによるflame burn, 熱い食べ物, ポットの湯によるscald burnで症例数の増加を認めた. 出火原因はタバコの火の不始末 (不適当な場所への放置), 焚火, コンロが多く, 今後高齢者人口の増加に伴い, タバコの火の不適切な場所への放置, 焚火への注意喚起や, コンロ等のIH化や難燃性の衣類の推奨, ポットや鍋等の熱い食べ物による熱傷に対する啓発活動が重要であると考える.
著者
松尾 知明 蘇 リナ 笹井 浩行 大河原 一憲
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.219-228, 2017-11-20 (Released:2017-11-30)
参考文献数
19
被引用文献数
6 9

目的:労働安全衛生総合研究所(JNIOSH)では疫学調査での活用を企図し,労働者の座位行動評価を主目的とした「労働者生活行動時間調査票(Worker's Living Activity-time Questionnaire)(JNIOSH-WLAQ)」(以下WLAQ)を開発した.本研究の目的はWLAQの再検査信頼性と基準関連妥当性を検討することである.方法:国内在住の労働者138名が本研究に参加し,WLAQによる質問紙調査を1週間の間隔をあけて2回おこなった.妥当性の基準値評価のため,対象者には1週間,身体活動量計(activPAL)の装着と生活行動に関する日誌記録を求めた.WLAQにより,勤務時間,通勤時間,勤務間インターバル,睡眠時間および一般的な労働者を想定し分類した4つの時間区分,すなわち,(A)勤務中,(B)通勤中,(C)勤務日の余暇時間,(D)休日それぞれにおける座位時間が算出される.本研究では,信頼性の評価値として級内相関係数(intraclass correlation coefficients:ICC)を,妥当性の評価値として順位相関係数(Spearman's ρ)を算出した.また,系統誤差の分析にBland-Altman図を用いた.結果:ICC値は,勤務時間,通勤時間,勤務間インターバル,睡眠時間,座位時間すべてにおいて良好(0.72-0.98)であった.Spearman's ρ値は,勤務時間(0.80)と勤務間インターバル(0.83)が“strong”,通勤時間(0.96)が“very strong”,睡眠時間が勤務日(0.69),休日(0.53)ともに“moderate”,座位時間は,勤務中(0.67)と勤務日の余暇時間(0.59)が“moderate”,通勤中(0.82)が“strong”,休日(0.40)が“low”であった.Bland-Altman分析では,勤務中の座位時間に有意な加算誤差が,休日の座位時間に有意な加算誤差と比例誤差がみとめられた.結論:WLAQで得られる勤務時間,通勤時間,勤務間インターバル,睡眠時間および座位時間の信頼性や妥当性は一定水準を満たすものである.今後の疫学調査での活用が期待される.
著者
立原 一憲 蛭子 亮制 塚島 康生
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.1479-1488, 1993 (Released:2008-02-29)
参考文献数
15
被引用文献数
29 31

The spawning, embryonic development, and morphological changes of the purplish amberjack Seriola dumerili were observed using specimens reared at the Aquaculture Research Laboratory of Nagasaki Prefectural Institute of Fisheries. Spawning was induced by intra-mascular injection of pituitary homogenate of the chum salmon Oncorhynchus keta and the genital hormone. Spawning occurred 36 hours after hormone treatment and 1, 400, 000 and 7, 000, 000 eggs were obtained in 1990 and 1991, respectively. The eggs were pelagic, spherical, and 1.05-1.20mm in diameter with a single oil globule of 0.22-0.28mm. The larvae hatched out 37 hours after spawning (W. T. 24.6°C). The newly hatched larvae were 2.7-3.1mm in length with 26 myotomes and a single oil globule. The yolk was mostly absorbed on the 4th day after hatching when the larvae attained 3.9mm in length and began to feed on rotifers. In the postlarval stage (6.3mm B. L.) the rudiments of ventral, dorsal, and anal fins began to develop and the vertebra was well ossified. In the juvenile stage (11.2mm B. L.) the membranous fins disappeared and fish gathered around drifting algae. Later in the juvenile stage (35.0mm B. L.) six or seven lateral bands appeared in the trunk as well as a band from the eye to the anterior part of the dorsal fin base. At a body length of 100mm, they reached the stage of young fish, while at a size of over 170mm in body length a yellow vertical stripe appeared from behind the operculum to the caudal peduncle. The smallest size of sexual maturation was thought to be about 600mm. Notochord or standard length at each growth stage was as follows: 2.7-3.9mm (yolk sac stage), 3.9-4.7mm (preflexion stage), 4.8-8.5mm (postflexion stage), 10-100mm (juvenile stage), 100-600mm (young stage), and over 600mm (adult stage).
著者
榊原 一也
出版者
日本経営学会
雑誌
經營學論集 第85集 日本的ものづくり経営パラダイムを超えて (ISSN:24322237)
巻号頁・発行日
pp.F55-1-F55-8, 2015 (Released:2019-09-25)

従来の撤退戦略は,主に事業ポートフォリオ理論に依拠し,衰退段階に至った事業のキャッシュを再配分するという点に重きが置かれていた。だが本研究は,経営環境の変化への適応のため,あるいは将来の事業構想のために,積極的に事業ポートフォリオを調整し,断行する「能動的撤退」に注目する。事業売却を除けば,この撤退には,事業撤退が起点となって製品差別化を果たす「適応的撤退(撤退した事業で培った知識を既存事業において活用するもの)」と,新規事業創造を果たす「創造的撤退(撤退した事業で培った知識を事業創造において活用するもの)」の2つが存在する。本研究は,キヤノン株式会社の3つの撤退事例(シンクロリーダー事業,パソコン事業,ディスプレイ事業)から,これらの能動的撤退プロセスを明らかにした。
著者
松本 凌 西澤 侑吾 片岡 範行 田中 博美 吉川 英樹 田沼 繁夫 吉原 一紘
出版者
一般社団法人 表面分析研究会
雑誌
Journal of Surface Analysis (ISSN:13411756)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.155-167, 2016 (Released:2016-05-31)
参考文献数
15
被引用文献数
9 9

XPSスペクトルのバックグラウンド推定の方法は任意性が高く,バックグラウンドの形状によってピークの強度が変わるため定量分析の結果に大きく影響する.特に,最も多用されているiterative Shirley法では,指定されたXPSスペクトルの始点と終点でのデータ点の強度に大きく依存してバックグラウンド形状が変わる.本研究では,この依存性を低減する為,バックグラウンド推定をピークフィッティング中で行う動的Shirley法に着目し,これをCOMPROに組み込んで銅酸化物超伝導体のCu 2pスペクトルやSiO2薄膜のSi 2pスペクトルに対して適用した.その結果,バックグラウンドの端点位置やピークの関数型を変化させてもバックグラウンドの形状やピーク面積について変動の少ない安定した解が得られることが明らかとなった.
著者
髙橋 瞭介 桐原 一輝 桐生 徹 大島 崇行
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.25-28, 2020-03-07 (Released:2020-03-04)
参考文献数
8

本研究では,空間認識力を育むことができる教材を開発し,ドローンを使った授業をデザインし実践した.分析1では,授業前後に行った空間認識力評価テストの得点を分析し,低位層と中位層において事後テストでの点数が有意に向上したことが明らかになった.分析2では,評価テストの誤答分析を行い,授業後に三面図に書かれたドローンの動きについて視点移動を行うことができる児童が増えたことが明らかになった.分析3では,授業以前から視点移動を獲得していた児童,授業後に視点移動を獲得した児童は授業の中で開発した教材を活用する場面が見られた.以上から,開発した教材と授業デザインは空間認識力を育む一要因になると結論づける.
著者
中村 和芳 須加原 一昭 一安 秀範 江崎 紀浩 堀尾 雄甲 浦本 秀志 松岡 多香子 今村 文哉 小松 太陽 天神 佑紀 松本 充博 杉本 峯晴 興梠 博次
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.223-229, 2015-03-25 (Released:2016-10-29)

背景.メンソールタバコが原因と示唆された急性好酸球性肺炎(acute eosinophilic pneumonia : AEP)の2例を経験した.症例1. 16歳.男性.非メンソールタバコを2年間喫煙していたが1カ月間の禁煙後, 1カ月前からメンソールタバコの喫煙を再開した.突然の発熱と呼吸困難のため受診し,胸部X線写真およびCTにて右肺優位にすりガラス陰影,小葉間隔壁の肥厚,両側胸水貯留を認めた.症例2. 18歳男性.メンソールタバコの喫煙を開始し, 3週間後,乾性咳嗽,発熱のため受診した.胸部X線写真およびCTにて両肺にすりガラス陰影,小葉間隔壁の肥厚,両側胸水貯留を認めたため入院となった. 2症例とも気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid : BALF)中に著明な好酸球増多を認めたためAEPと診断し,ステロイド投与により解熱し,呼吸困難,すりガラス陰影は速やかに消失した.結語.メンソールタバコによると推測されるAEPの2例を経験した. AEPの原因としてメンソールタバコが考えられ,重要な症例と考えられたため文献的考察を含めて報告する.
著者
川口 なぎさ 笠原 聡子 江原 一雅
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.496-504, 2021-08-31 (Released:2021-08-31)
参考文献数
12

目的:院内迅速対応システム(rapid response system;RRS)導入後の内容拡充と,看護師の行動との関連を明らかにする。方法:2013〜2018年にA病院の一般病棟に入院した成人患者のうち,専門チームが初回対応した863件を対象とした。システム拡充(ラウンド経験病棟数,研修受講者数)と看護師の行動(コール要請割合など)6項目を設定した。システム拡充の年次変化を認めたため暦年を代替指標とし,看護師の行動との関連を多重ロジスティック回帰分析と重回帰分析にて検討した。結果:看護師の行動のうち「コール要請割合」と「呼吸数測定割合」が増加し,「気づきからチーム要請までの時間」と「起動基準該当からチーム要請までの時間」が減少する年次効果がみられた。結論:RRS導入後のシステム拡充に伴い看護師の行動が変化し,RRSの迅速な起動の促進が認められた。
著者
川原 一郎 浜田 智弘 金 秀樹 高橋 進也 高田 訓 大野 敬 小板橋 勉 三科 正見
雑誌
奥羽大学歯学誌 (ISSN:09162313)
巻号頁・発行日
vol.38巻, no.4号, pp.219-223, 2011-12

68歳男。口底部の腫瘤を指摘され、精査・加療目的に受診した。口底部に境界不明瞭な腫瘤を認めた。パノラマX線写真では、下顎前歯部に骨吸収を認めた。CT、MRIでは、口底部に境界不明瞭な病変を認めた。PET-CTでは、口底部に集積を認めた。臨床診断は口底部悪性腫瘍であった。腫瘤部より生検を施行し、扁平上皮癌の病理組織学的診断により、全身麻酔下に両側上頸部郭清術、下顎骨辺縁切除術、腫瘍切除術、植皮術を施行した。術後は、疼痛管理目的にNSAIDsの錠剤を粉砕して胃管より投与した。術後12日、突然の大量下血とともに意識消失した。上部消化管内視鏡検査にて胃体上部後壁に血管露出を伴う潰瘍を認めた。出血性消化性潰瘍の診断のもと、エタノール局注による内視鏡的止血治療を施行した。止血後はランソプラゾールおよびクエン酸第一鉄ナトリウムの投与を開始した。その後再出血することなく、術後35日目、経過良好で退院した。