著者
井原 雄一郎 深谷 千絵 笠井 俊輔 中川 種昭
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.25-32, 2016-03-28 (Released:2016-04-15)
参考文献数
15

本研究は,毛先が歯間部に届きやすくするために,長さの異なる毛束を植毛したブラシヘッド(インターケアブラシ)と,毛束の密度を高くしたブラシヘッド(ダイヤモンドクリーン)を使用した音波式電動歯ブラシのプラーク除去率を比較検討した。被験者は,補綴物がなく,歯肉退縮や小帯の付着異常を認めない歯科医19名とした。実験2日前に全顎的にスケーリングを実施し,プラークフリーとした。その後2日間ブラッシングを停止させ,PCR100%として実験を行った。インタケーケアスタンダードブラシ(IS群),インターケアミニブラシ(IM群),ダイヤモンドクリーンスタンダードブラシ(DS群),ダイヤモンドクリーンミニブラシ(DM群)の4群を設定し,刷掃時間は2分間とした。プラーク除去率はO'LearyのPCRの改良法6点計測を用いて評価した。4群間において全顎,部位別に比較した結果,統計学的に有意なプラーク除去率の差は認めなかったが,平均値,中央値においてIS群,IM群はDS群,DM群と比較して高い傾向にあった。
著者
榊 佳之 金久 實 小原 雄治 大木 操 中村 桂子 高久 史麿
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1996

本研究は平成2-12年度に行われた特定領域研究「ゲノムサイエンス」の研究成果をまとめ、公表し、我が国のゲノム解析計画を新段階へと発展させることを目指すものである。そこでは「ヒトゲノムの構造解析」、「ゲノムの機能解析」、「ゲノムの生物知識情報」の3項目を中心に各々に成果を取りまとめ、公開シンポジウムなどを通して社会にゲノム研究の現状、意義と今後の展望を示すことを目標とした。研究成果の報告書は、既に平成12年度の研究成果報告と共に5年間のまとめを合わせて研究成果報告書として世に出したので、今年度は公開シンポジウムに焦点をあてて研究成果を社会に公開することとした。公開シンポジウムは日本科学未来館の協力のもと、関東一円の中高生を中心に若者世代を対象として行われ、約300名が参加した。「ゲノムから見たヒト」、「ゲノム科学の医学への応用」、「ゲノムから見た発生分化」などをテマとした。講演と共にパネル討論会も開催した。また未来館長の毛利衛氏の挨拶も頂いた。この公開シンポジウムの企画は文科省ヒトゲノム計画の中核となる本研究班の班会議で決定されたが、その内容は、我が国のバイオサイエンス全般、特に多くの国民の健康に直接かかわる疾患の医学研究の発展にとっても重要なものであり、その社会的意義、必要性、緊急性はきわめて大きいと言える。
著者
田原 雄一郎 神谷 桜 渡部 泰弘
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.101-107, 2011-06-15 (Released:2011-12-15)
参考文献数
10

粘着トラップによる3種ゴキブリ(チャバネゴキブリ,ワモンゴキブリおよびトビイロゴキブリ)の捕獲率「(捕獲数÷放飼数)×100」は日ごとに低下した.これは粘着トラップを避ける個体が増加したことによると判断した.チャバネゴキブリでは令別,雌雄での比較で♂>♀>老齢>若令の順に捕獲率は高かった.特に,若令は捕獲されにくかった.一週間にわたり捕獲をまぬがれた個体(経験群)と新しく放飼された個体(未経験群) では,常に前者の捕獲率が低かった.これは,経験ゴキブリ群が粘着トラップに捕獲されないような行動を「学習」したものと推察した.経験群をしばらくトラップから避けて飼育する中断期間を与えたところ,トラップを避ける行動は5週間まで維持された.粘着板を避けるには触角の働きが大きいと思われる.触角の先端部の微毛は粘着面を感知するだけでなく,粘着面への付着を防いでいると考えられる.生きている間は触角を空中に保持し,死亡すると付着した.モニタリングや殺虫剤の効果判定の目的で,粘着トラップを連続して使用したり,頻繁に使用したりすると,トラップ捕獲率が低下し,得られたゴキブリ指数がその場のゴキブリ生息状況を正しく反映しない可能性があることに留意すべきである.
著者
諸原 雄大 近藤 邦雄 島田 静雄 佐藤尚
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.329-337, 1995-02-15
被引用文献数
8

人がデザイン画についての善し悪しなどの印象を受け取るとき、その基準となる物理的特徴は大きく分けると色と形の二つである。著者らの研究の目的は、色と印象との関係を求めることである。このために、イメージ・カラーを選定する方法を提案する。イメージ・カラーとはデザイン画において用いられている色のうち、特に印象に影響の与える度合が強い色の組合せをいう。イメージ・カラーを選定することによる利点は、デザイン画を見ることにより得られる印象が、イメージ・カラーを見ることにより得られる印象とほぽ同じものとなることである。デザイン画のイメージ・カラーの抽出の方法は配色カードを用いて求めており、経験を必要とする作業である。もしも・イメージ・カラーの自動選定が行えれば、誰にでもデータベースに登録されている画像のイメージ・カラーを求めることができ、新しいデザイン画に他のデザインのイメージを与えることが簡単にできるようになる。本論文においては、デザイナーのイメージ・カラー選定法を参考に、計算機におけるイメージ・カラーの選定法を提案する。デザイン画像はRGBの3原色、各8ビット階調により表現されているものを用いた。このデザイン画像において便用されている色を色空間上でまとめていくことにより色の限定を行い、その中から目立つ色を取り出した。この方法により、計算機においてイメージ・カラーを選定することができるようになった。
著者
横田 俊平 宮前 多佳子 森 雅亮 相原 雄幸 伊部 正明
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

インフルエンシザ関連脳症は5歳以下の乳幼児に好発し、その約30%が予後不良となる重天な疾患である。原因は不明で米国との共同の調査研究でもReye症候群とは異なりわが国独特の疾患であることを平成12年度の研究で明らかにした。またこの研究から中枢神経障害は全身への致死的病態の波及前に出現していることも明らかになり、平成13年度の研究では中枢神経内に誘導される炎症性サイトカインの異常産生に焦点を当てた。Wisterラット(8〜12週齢、雌)の脳室内にInjection Pype(IP)を留置した後、髄腔内へlipopolysaccharide(LPS ; E.coli由来)を30ugまたは300ug投与し、径時的にIPより脳室液を採取して液中の炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6、 TNFα)をELISA法にて測定した。その結果、髄液中のIL-1β、IL-6、TNFαは投与2時間後に著しく上昇した。血清中ではLPS300ug投与により同様にIL-1β、IL-6、TNFαの上昇をみたが、30ug投与では上昇しなかった。このことはLPS髄腔内投与が脳内に高サイトカイン状態を惹起することを示したが、LPS30ugでは高サイトカイン状態は脳内に留まり、LPS300ug投与により脳血管門の破綻が生じ全身性の高サイトカイン状態に至ることが推察された。次に脳組織からmRNAを抽出しIL-1β、1L-6、TNFαそれぞれのmRNAをRPA法により検討した。いずれのmRNAも著しい発現増強を認め、脳内サイトカインは脳実質細胞に由来することが判明した。脳実質内においてLPS受容体をもつ細胞はGliaであることが知られており,以上の実験結果から炎症性サイトカインはGlia活性化に由来することが想定され、インフルエンザ関連脳症では脳内Glia細胞の異常活性化と脳血管門の破綻が病態を形成していることが推定された。
著者
田原 雄一郎 望月 香織
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.139-143, 2005
参考文献数
9
被引用文献数
2

33種のハーブのエタノール抽出液をベニヤ板製のゴキブリのシェルター(5cm×5cm, 5mm隙間)に浸漬させ, チャバネゴキブリ10頭(♂または♀)を放ったプラスチック円形容器(半径15cm, 高さ17cm)に無処理シェルターとともに対角の位置に置いた.それぞれのシェルター区に48時間で落下した糞の数から忌避性を求めた.その結果, デイル, セロリ, キャラウェイ, クミン, コリアンダー(以上, セロリ科), シナモン(クスノキ科), メース(ニクズク科)およびトウガラシ(ナス科)を処理したシェルター区には糞の落下数が極めて少なく, 無処理区のシェルターに90%以上の糞が落下した.これは, これらのハーブを処理したシェルターを忌避したからと判断した.忌避性は1ヵ月以上持続した.また, ハーブ抽出液を80倍程度希釈しても効力は維持した.他方, アニス, サンショ, オニオン, ユーカリなどの抽出液では誘引性が確認された.
著者
藤原 雄太 佐々木 翔 岩倉 敏夫 松岡 直樹 小林 宏正 日野 恵 古川 裕 石原 隆
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.9, pp.1101-1109, 2013-09-15 (Released:2014-09-17)
参考文献数
20

背景:アミオダロンはヨードを大量に含有するため,甲状腺機能異常をしばしば起こす.さらに末梢および下垂体でサイロキシン(thyroxin;T4)の代謝と甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone;TSH)分泌に影響するため,甲状腺機能の正確な解釈が困難になる.対象:2009年6月から2010年6月までにアミオダロンを1カ月以上処方されていた341名を対象とした.方法:対象患者の2003年1月から2010年6月までの甲状腺機能検査結果を調査し,また診療録より臨床的特徴を検討した.結果:測定キットの正常域では血中FT4とTSHはともに高値となり解釈不可能な異常値を呈する症例が多数あったため,両者の分布に基づき基準域を1.0≦FT4<2.4 ng/dL,1.0≦TSH<20.0 µU/mLと設定した.機能低下症例は疑いを含めて34名(10.4%)認めた.中毒症例は17名(5.2%)認め,type 1(機能亢進)例はなく,ほとんどの例がtype 2(破壊性)であった.死亡例とバセドウ病合併例を認めた.考察:アミオダロン治療中には甲状腺機能低下症も破壊性中毒症も高頻度に発症するが,軽症例では通常の正常域を用いて正確な診断を行うことは非常に難しい.アミオダロンによるT4代謝とTSH分泌への影響が大きく,甲状腺機能解釈時には従来の正常域にとらわれず本病態を考慮した特別の基準域を用いたほうが甲状腺機能を正しく評価でき,適切な対応が可能になると考えられる.
著者
高橋 知代 久志本 彩子 小長谷 貴昭 田原 雄一郎
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1-4, 2006-06-30
参考文献数
7

Biodegradable packaging buffers made from corn or wheat starch have replaced plastic foambuffers as packaging materials. The German cockroach, Blattella germanica, the smoky-brown cockroach, Periplaneta fuliginosa, and the brown-banded cockroach, P. brunnea consumed the biodegradable packaging buffers as food when they were kept in an arena with water, yet they hesitated to eat a urethane buffer. The cockroaches could survive and most of them could propagate for generations feeding on packaging buffer. Therefore, the biodegradable packaging buffers should be removed from factories immediately to avoid cockroach infestation.
著者
中原 雄二
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
衛生化学 (ISSN:0013273X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.100-108, 1990-04-28 (Released:2008-05-30)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

World trends and problems of amphetamine and methamphetamine abuse, were described. Since the world seizures of the controlled drugs such as opiates, heroin, cocaine, cannabis and other psychotropic substances have rapidly increased in recent years, the author focused on the world-wide spread of amphetamine abuse. The world seizure of stimulant including amphetamines in 1987 has increased by 5-6 fold over in 1982. The trends of amphetamine abuse in many countries were summarized and this report pointed out the past and present problems of amphetamine abuse in U.S.A., Sweden, and Japan. In west coast regions of U.S.A., methamphetamine abuse has surprisingly spread in recent years. The increases of clandestine laboratory have become a big problem in US western states. The trends of amphetamine abuse patterns were introduced. Because of the great risk of acquired immunodeficiency syndrome with intravenous injection drug use, abuse patterns have been changing from injection to inhalation of amphetamines. About a new smokable methamphetamine, so-called "ice", its chemical and pharmacological characters were discussed and its toxicity also described. Additionally, concerning psychotropic drugs chemically and pharmacologically similar to amphetamines, their histories and hallucinogenic activities were described. In paticular, the epidemiologic topics of 3, 4-methylenedioxymethamphetamine (MDMA) called the rivival of LSD was described.
著者
杉原 雄一 上野 秀人 平田 聡之 荒木 肇
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.222-228, 2014
被引用文献数
3

トマト生産においてカバークロップとしてのヘアリーベッチ(<i>Vicia villosa</i> R.,以下 HV)と化学肥料の効率的な施用方法を確立するために,HV,速効性肥料(Fast)および緩効性肥料(Slow)から放出された窒素のトマトへの吸収について,安定同位体 <sup>15</sup>N を利用して調査した.窒素の速効性肥料(硫安)と緩効性肥料(LP-S100)を供試して,両者の混合割合を 2 : 8(Fast + Slow)と 0 : 10(Slow-only)とした.窒素施肥量を 240 kg N·ha<sup>-1</sup> として,土壌培養試験を行うと,培養 4週間において Fast + Slow では高濃度の無機態窒素環境が形成された.同様の施肥条件を用いて,1/2000 a のワグネルポットでトマト'ハウス桃太郎'を栽培すると,<sup>15</sup>N でラベルした HV(0.89 atom% excess)を土壌中にすき込むことで,定植12 週後のトマトの植物体乾物重は HV 無添加より有意に増加したが,窒素肥料の混合割合による差異は認められなかった.HV 由来窒素は主に定植 4 週後までに吸収され,その吸収量には Fast の有無による差異はなかったが,吸収した全窒素に対する HV 由来窒素の含有率(%N<sub>dfhv</sub>)は Fast を施用しない Slow-only で有意に高くなった.しかし,この差異も定植 8 週以降は認められなかった.トマトによる窒素吸収は栽培終了時の定植 12 週後まで続いた.以上の結果から,HV 由来窒素は速効的であった.生育初期においては,トマトへの窒素吸収に土壌・肥料由来窒素と HV 由来窒素の間で競合関係があり,多量の土壌・肥料由来窒素が存在すると HV 由来窒素の吸収が抑制される.この試験で得られた知見は,トマト生産における HV と化学肥料の適切な混合体系の確立に寄与する.
著者
住友 伸一郎 笠井 唯克 本橋 征之 足立 誠 江原 雄一 太田 貴久 稲垣(伊藤) 友里 渡邉 一弘 安村 真一 榑沼 歩 村木 智則 大橋 たみえ 村松 泰徳
雑誌
岐阜歯科学会雑誌 = The Journal of Gifu Dental Society (ISSN:24330191)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.27-32, 2016-07

亜鉛イオンを含む製品である GZ-08の口腔内噴霧により、その口臭抑制作用および抗菌効果を検討した。健康な成人ボランティア30人をランダムに GZ-08噴霧群(20人)と対照群(10人)の2群に分け、GZ-08あるいは生理食塩水を口腔内に噴霧し、その前後で口臭の原因である口腔気中の揮発性硫黄化合物(VSC)濃度および舌背の細菌数を測定した。さらに、GZ-08使用後にその味や使用感、今後の使用希望についてアンケートを行った。噴霧前の両群および生理食塩水噴霧前後の対照群においてはVSC濃度および細菌数の有意差は認めなかった。GZ-08口腔内噴霧後では噴霧前と比較してVSC濃度および細菌数の有意な低下(P <0.05)を認めた。アンケート結果においてGZ-08は酸味と苦味が強く、総合的な味や使用感は悪いとの結果であった。これらの結果はGZ-08の口臭除去、口腔内の抗菌における有用性を示すものであり、GZ-08に含まれる亜鉛イオンとグルコン酸の作用と考えられる。しかし、実際に口臭予防スプレーとして使用する場合には、その味や使用感が問題となるために、酸味や苦味を低減する工夫が必要であろうと考えられた。
著者
濱田 哲 松原 雄 遠藤 修一郎 山田 幸子 家原 典之 中山 晋哉 伊丹 淳 渡辺 剛 坂井 義治 深津 敦司
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.541-545, 2009-06-28 (Released:2009-09-15)
参考文献数
6
被引用文献数
1

症例は,69歳女性で,食道癌手術目的で入院,初回血液透析終了後から発熱を生じるようになった.種々の原因検索の結果,先発医薬品(以後先発品),後発医薬品(以後後発品)両者の含めたメシル酸ナファモスタットが原因であることが分かった.詳細に臨床症状を検討した結果,両者では副作用発現様式に明らかな相違が認められた.後発品の場合,使用回数とともに発熱までの時間が短縮し,血圧低下も合併するようになった.一方,先発品に変更後は後発品と同様に発熱は認められたが,透析終了後一定時間を経過して生じるようになり,アナフィラキシー症状は認められなかった.この相違に対して可能な限りの血清学的検索を行った.DLSTでは後発品使用後116日目に陽性,先発品は128日目に陰性,以後は両者とも陰性であった.先発品でメシル酸ナファモスタットに対するIgE抗体は陰性,IgG抗体は陽性であった.後発品では抗体検索システムが確立されておらず測定不可能であった.以上の結果を総じて,透析関連性の発熱の原因としてメシル酸ナファモスタットが原因であること,先発品・後発品で明らかに発症状況に差があり,発症機序が異なっていることが示唆された.先発品ではIgGによる免疫反応が発熱の原因であると推測された.しかし後発品のアレルギー症状と免疫反応との関連が発症機序の理解に重要であると考えられたが,原因検索システムが整備されておらず解明できなかった.本症例のように,先発品,後発品両者の間で,アレルギー症状発現様式に相違があることを,詳細に分析した症例報告は検索した範囲内では認められなかった.後発品においても先発品同様副作用の原因検索システム構築が重要であることを指摘する上でも貴重な症例であると考えられた.
著者
江口 圭 宮尾 眞輝 山田 祐史 金野 好恵 金子 岩和 峰島 三千男 田岡 正宏 佐藤 隆 萩原 雄一 道脇 宏行 英 理香 細谷 陽子 田尾 知浩 土田 健司 水口 潤 谷川 智彦 宮本 照彦 森石 みさき 川西 秀樹 中川 章郎 岩隈 加奈子 吉田 友和 今井 陽子 小畑 日出登 松嶋 哲哉
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.42, no.9, pp.695-703, 2009-09-28 (Released:2009-11-17)
参考文献数
13
被引用文献数
2 1 1

全自動透析装置(GC-110N,JMS社製)の補液モードを利用した,逆濾過透析液による間歇補液血液透析(intermittent infusion HD, I-HD)を考案し,その臨床効果を多施設共同研究にて評価したので報告する.対象は維持透析患者20例で,通常の血液透析(normal HD, N-HD)とI-HDを同曜日に一回ずつ施行し,クロスオーバー試験にて評価した.検討項目は除去率,クリアスペース,クリアランスとし,尿素,クレアチニン,尿酸,無機リン,β2-microglobulin(β2-MG),α1-microglobulin(α1-MG),アルブミンの7種の溶質について検討した.また,透析中の循環血液量をヘマトクリットモニタにて,患者末梢血流量をレーザー血流計にて連続モニタリングし,間歇補液の有無との関係を調べた.結果として,すべての患者について間歇補液に同期した循環血液量および組織血流量の増加が観察された.治療時間平均の循環血液量減少率は,除水量がほぼ同等であるにもかかわらず,I-HDの方がN-HDにくらべ有意に低値であった.また,除去率に差違は認められなかったが,クリアスペースの平均値は全ての溶質でI-HDがN-HDにくらべ高値を示し,無機リン,α1-MGでは有意に高値であった.この結果は末梢循環が良好に保たれることにより,物質移動の推進力となる毛細血管の有効表面積やプラスマリフィリングが保持されたことにより,組織間液中に分布する溶質を効率よく移動・除去させたことによるものと考えられた.一方,α1-MGのクリアランスは,1hr値にくらべ4hr値でN-HD:73%低下したのに対し,I-HD:30%の低下にとどまった.これは間歇的な逆濾過補液により,膜への蛋白のファウリングが軽減されたため,溶質透過性が保持されたものと推察した.全自動透析装置の補液モードを利用した間歇補液血液透析は,安全かつ確実に施行可能であり,透析中の末梢循環動態の是正,患者からの溶質除去特性の改善に有用な治療であることが明らかとなった.
著者
小原 雄治 加藤 和人 川嶋 実苗 豊田 敦 鈴木 穣 三井 純 林 哲也 時野 隆至 黒川 顕 中村 保一 野口 英樹 高木 利久 岩崎 渉 森下 真一 浅井 潔 笠原 雅弘 伊藤 武彦 山田 拓司 小椋 義俊 久原 哲 高橋 弘喜 瀬々 潤 榊原 康文
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)『学術研究支援基盤形成』
巻号頁・発行日
2016

①総括支援活動では、支援課題の公募を行い、領域外有識者による審査委員会により選考し、支援を行った。経費上限設定など多くの採択ができるように努めた結果、応募188件、採択93件(採択率49.5%)となった。支援の成果として2017年度に54報の論文発表がなされた。②大規模配列解析拠点ネットワーク支援活動においては、最先端技術を提供するためにそれらの整備や高度化を進めた。遺伝研拠点では染色体の端から端までの連続した配列完成を目指して、ロングリードシーケンサー(PacBio Sequel)、長鎖DNA試料調製技術、さらに1分子ゲノムマッピングシステム(Irysシステム)の最適化を進め、実際の試料に応用した。東大柏拠点では、1細胞解析技術を整備し支援に供するとともに、Nanopore MinIONを用いた一連の要素技術開発を進めた。九大拠点では微生物ゲノムのNGS解析最適化を進めた。札幌医大拠点ではLiquid Biopsyによる体細胞における低頻度変異検出技術開発を進めた。③高度情報解析支援ネットワーク活動では、支援から浮かび上がった課題を解決するソフトウェアの開発を進めた。支援で特に活用されたものは、真核2倍体用denovoハプロタイプアセンブラPlatanus2(東工大)、染色体大規模構造変異高精度検出アルゴリズムCOSMOS、変異解析結果の信頼性を評価するソフトウェアEAGLE(以上、産総研)、エクソン・イントロン境界におけるスプライソソーム結合頻度の解析パイプライン(東大)、であった。また、CLIP-seqデータの解析パイプライン、高速オルソログ同定プログラムSonicParanoid、ロングリード向けアラインメントツールminialign(以上、東大)は今後の活用が予想される。高度化等の成果として48報の論文発表がなされた。
著者
川原 雄三
出版者
Japan Society of Corrosion Engineering
雑誌
Zairyo-to-Kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.183-194, 2005
被引用文献数
12

廃棄物発電プラントでは高効率, 低公害, メンテナンスフリーなどの性能向上を図る上で構成材料の高温腐食防止技術が鍵となっている. ごみの高カロリー化, 環境規制強化などの社会情勢変化に応じて腐食環境が過酷化し, 燃焼改善, 最適設計などによる腐食性の軽減がなされてきた. さらに, ボイラ蒸発管を主体に金属溶射, 溶接肉盛などの耐食コーティングを用いた寿命向上技術が開発, 適用され, また, 過熱器においても310系ステンレス鋼, 高Cr高Mo・Niベース合金管の利用と腐食メカニズムの解明により, 現在では673K/3.9MPaを超える蒸気条件が可能となっている. 本解説ではおよそ30年にわたる廃棄物発電プラントの腐食防止および耐食材料に関連した主な実用技術の開発と今後の課題について説明する.
著者
大槻 則行 木村 清次 根津 敦夫 相原 雄幸
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.318-322, 2000-07-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
12

インフルエンザウイルス感染に伴う急性脳症は一般的に予後が不良な例が多く, 従来の治療法では重篤な神経学的後遺症を残すことが多い. 今回, インフルエンザウイルス感染に伴って発症した急性脳症の2例に軽度低体温療法とステロイドパルスの併用療法を行った. 1例は中枢神経症状出現後の7日目に入院し, 顕著な脳浮腫および脳波の低電位化を認めたが死亡には至らず, 経口摂取可能の状態で退院できた. 他の1例は入院時に両側前頭部優位の皮質浮腫を認めたが治療の結果, 中等度の知能障害にとどまった. 上記の治療法は新たな一つの手段になると考えられた.
著者
中原 雄二
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
衛生化学 (ISSN:0013273X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.100-108, 1990
被引用文献数
1

World trends and problems of amphetamine and methamphetamine abuse, were described. Since the world seizures of the controlled drugs such as opiates, heroin, cocaine, cannabis and other psychotropic substances have rapidly increased in recent years, the author focused on the world-wide spread of amphetamine abuse. The world seizure of stimulant including amphetamines in 1987 has increased by 5-6 fold over in 1982. The trends of amphetamine abuse in many countries were summarized and this report pointed out the past and present problems of amphetamine abuse in U.S.A., Sweden, and Japan. In west coast regions of U.S.A., methamphetamine abuse has surprisingly spread in recent years. The increases of clandestine laboratory have become a big problem in US western states. The trends of amphetamine abuse patterns were introduced. Because of the great risk of acquired immunodeficiency syndrome with intravenous injection drug use, abuse patterns have been changing from injection to inhalation of amphetamines. About a new smokable methamphetamine, so-called "ice", its chemical and pharmacological characters were discussed and its toxicity also described. Additionally, concerning psychotropic drugs chemically and pharmacologically similar to amphetamines, their histories and hallucinogenic activities were described. In paticular, the epidemiologic topics of 3, 4-methylenedioxymethamphetamine (MDMA) called the rivival of LSD was described.
著者
鈴木 宏正 原 雄司 瀬戸 康史 森田 修史
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.161-162, 2010

本研究では,プラスチック製品の加飾法の一つである革シボについて,そのデザインから加工をコンピュータで支援する方法について検討している.本発表では,現状技術のレベルを見るためのフィージビリティースタディーを行ったので,それについて報告する.ここでは,シボの凹凸データを合成し,高品質表示を行い,さらには金型の直彫り加工によって試作品を作成した.