著者
田中 周 武藤 友和 吉田 真一 鈴川 活水
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.757-761, 2017 (Released:2017-12-20)
参考文献数
21
被引用文献数
3

〔目的〕長下肢装具(KAFO)完成から短下肢装具(AFO)へのカットダウン移行期間(カットダウン移行期間)に関連する入院時因子および影響度について検討すること.〔対象と方法〕回復期リハビリテーション病棟に入院し,KAFOが処方された後AFOへのカットダウンを行った脳卒中片麻痺患者43人を対象とした.カットダウン移行期間に影響を及ぼす関連因子の抽出として,カットダウン移行期間と年齢,病型,半側空間無視(USN)の種類,下肢Brunnstrom Recovery Stage(下肢BRS),USN重症度,motor FIM(mFIM),cognitive FIM(cFIM)について相関分析を行った.さらに,カットダウン移行期間に関連があった項目は各因子の独立した影響度を検討するため二項ロジスティック回帰分析を行った.〔結果〕カットダウン移行期間と関連を認めた項目は,USN重症度,下肢BRS,mFIM,cFIMであった.また,二項ロジスティック回帰分析の結果,USN重症度がカットダウン移行期間の独立した規定因子として抽出された.〔結語〕カットダウン移行期間の長期化に最も影響を及ぼす入院時因子は,USN重症度であることが示唆された.
著者
吉田 巖
出版者
日本人類学会
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.29, no.10, pp.397-409, 1914-10-20 (Released:2010-06-28)
著者
油尾 聡子 吉田 俊和
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.32-40, 2012-08-31 (Released:2017-03-01)
被引用文献数
2

This study examined whether the norm of reciprocity, which implies that people feel compelled to return favors, plays a role in deterring inconsiderate behavior. We predicted that both gratitude messages, such as "Thank you for parking your bike in a straight line," and knowledge of the sender's identity facilitate reciprocation and thus deter inconsiderate behavior. Participants (N=191) were randomly assigned to read one of four descriptions. These descriptions reflected a 2 (messages: gratitude vs. prohibition)×2 (sender identity: clear vs. ambiguous) between-participants design. The participants subsequently rated the extent to which they were likely to engage in inconsiderate behavior in a given situation. As predicted, when the sender's identity was clear, the participants exposed to a gratitude message tended to refrain from inconsiderate behavior by invoking the norm of reciprocity. We also discuss the effectiveness and implications of the norm of reciprocity as a deterrent of inconsiderate behavior.
著者
吉田 朋子
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、放射性廃棄物の有効利用への道を開くことを目標としており、その具体例としてγ線エネルギーを利用した水の分解(水素製造)を可能とするシステムを開発するものである。従来報告されているG(H_2)値=0.45から予想されるように、γ線による水の直接分解では水素生成量は僅かと考えられるため、γ線エネルギーを化学反応に有効な数〜数十eVへの光子・電子へ効率よく変換することが本研究の鍵である。前年度までに、γ線ー固体相互作用(主にコンプトン効果)によってγ線を適当な波長の光または電子に変換し、これを反応容器に入れた水に対して照射することによって水の分解反応を促進させることに成功している。本年度は共存させる固体金属の種類や体積、反応系での空間的分布を制御してγ線の低エネルギー光子・電子への変換効率を向上させることに重点を置き、理論計算(EGS、MCNPコード)によるエネルギー変換シュミレーションを行い、実際の分解反応結果を相互に比較検討することによって、本システムの逐次改良・構築を行った。シミュレーションの結果、水中に共存させる金属板を重ねて入れると、固体金属から放出される二次電子が何度も金属と衝突することによって、電子のエネルギーを段階的に低下させたり、水中に放出させる電子数を増倍させたりできることが明らかとなった。この知見を基に、共存金属の形状や金属同士の間隔を制御することによって、水のみの時に比べて約40倍の水素を発生させることに成功した。
著者
鴨井 久博 佐藤 聡 岡部 俊秀 岡田 裕香子 吉田 聡 鴨井 久一
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.253-262, 1993-03-27 (Released:2010-08-25)
参考文献数
36

正常歯肉を有する, 成人10名を対象とし, 実験群に1, 200~1, 300 gaussの歯ブラシ, 対照群に30 gaussの歯ブラシを使用させ, それぞれ歯ブラシ静置 (15秒・30秒・60秒), ブラッシング (15秒・30秒・60秒) 後の歯肉表層における血流の変化を, レーザースペックル血流計を用いて観察した。血流量の測定は, 上顎中側切歯の唇側中央部付着歯肉部とし, 測定を行った。実験群・対照群とも, 5分間経時的に測定を行い, 血流量の変化を比較観察し, 以下の結果を得た。1) 15, 30, 60秒静置群では, 全ての測定期間を通じ各対照群に比較して, 有磁気群では高い値を示し, 統計学的有意差が認められた (p<0.05, p<0.01) 。2) 15, 30, 60秒動置群では, 全ての測定期間を通じ各対照群に比較して, 有磁気群では高い値を示し, 15, 30秒ブラッシング群においては, 統計的有意差が認められた (p<0.05, p<0.01) 。
著者
三上 達也 吉田 英樹 浮城 健吾 千田 周也 吉田 俊教 大越 康充 前田 龍智
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.48-54, 2022 (Released:2022-08-20)
参考文献数
26

【目的】変形性膝関節症(以下,膝OA)における鵞足症状に対する超音波療法(以下,UST)の有効性を検討することとした.【方法】対象は,膝OAに伴う鵞足症状ありと判断された34例とした.34例は無作為に介入群,プラセボ群に振り分けられ,パフォーマンス評価(10 m歩行,起立着座,階段昇降)における所要時間,疼痛(VAS)がUST施行前後で評価された.【結果】二元配置分散分析の結果,階段昇降VASで交互作用を認めた.事後検定では,介入群で10 m歩行時間,起立着座時間・VAS,階段昇降時間・VASで有意に減少,プラセボ群で階段昇降時間が有意に減少した.【考察】膝OAにおける鵞足症状に対してUSTを施行すると,階段昇降時の疼痛が減少すると考えられた.また,動作速度(歩行,起立着座,階段昇降)が改善し,疼痛(起立着座,階段昇降)が介入群で軽減する可能性が考えられた.
著者
鈴木 啓悟 吉田 翔太 佐々木 栄一 竹谷 晃一 前田 健児 近藤 泰光
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_731-I_737, 2016 (Released:2017-01-29)
参考文献数
14

橋梁の腐食損傷は主として水分と塩化物の存在に影響を受ける.これらの腐食因子は風向,風速,気温,湿度,降雨,波浪などの気象外乱の複合作用により橋梁に来着する.本研究は,ACM センサで計測される腐食応答電流値を主とした1年間のモニタリングデータを基に,まず外乱となる気象データから重回帰式を求めた.次に重回帰式から過去5年分の気象データをもとにしたACM電流応答の推定値を算出し,その季節変動に伴う応答傾向の再現性を検証したうえで,最後に重回帰式の各係数のt値を評価することで,腐食応答に及ぼす原因について検証した.検証の結果,本研究の事例においては降雨と風の相互作用により,腐食応答が促進される可能性が示唆された.
著者
吉田 澪奈 山内 浩文 佐久本 真梨夢 吉見 昭秀
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.646-653, 2023 (Released:2023-08-04)
参考文献数
40

様々な腫瘍においてスプライシング因子をコードする遺伝子の変異が繰り返し見られ,グローバルなミススプライシングを受けた遺伝子が新規の蛋白質アイソフォームの産生やRNA分解による蛋白質喪失を通して発がんにつながる機序が近年の研究で一部明らかになってきた。ミススプライシングを受けた遺伝子の一部は,その発現の変化を通して発がんに関わるシグナル伝達や細胞内プロセスに影響を与え,また他の遺伝子発現制御機構の異常と協調的に働くことにより発がんを誘導する。スプライシング異常を有する腫瘍への治療戦略として,薬理学的なスプライシングの阻害が合成致死の機序により腫瘍の抑制に有効であることが期待されており,薬剤開発と臨床試験が進められている。本稿ではスプライシング変異の特徴,細胞内機構への影響と発がん機構,また標的治療について概説する。
著者
吉田 誠至
出版者
公益社団法人 低温工学・超電導学会 (旧 社団法人 低温工学協会)
雑誌
低温工学 (ISSN:03892441)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.349-354, 2018-11-20 (Released:2018-12-28)
参考文献数
3
被引用文献数
2 2

The space cryogenics cooling system for the X-ray spectrometer installed on the ASTRO-H is introduced in this report. ASTRO-H is an X-ray astronomy satellite that the Japan Aerospace Exploration Agency (JAXA) developed to support studying the evolution of the universe and other physical phenomena yet to be discovered. The primary scientific instrument installed on the ASTRO-H is a soft X-ray spectrometer (SXS). Its detectors are cooled to 50 mK using a complex cryogenic system with a multistage adiabatic demagnetization refrigerator (ADR) developed by the National Aeronautics and Space Administration (NASA), and a cryogenics system developed by Sumitomo Heavy Industries, Ltd. (SHI). SHI’s cryogenics system is needed to cool the heatsink of the ADR to 1.3 K or less while in orbit, and is capable of doing so for three years or longer. To meet these requirements, SHI developed a hybrid cryogenics system consisting of a liquid helium tank, a 4 K cooler, and two two-stage Stirling coolers. ASTROH was launched from Tanegashima Space Center on February 17, 2016. Initial operation of the SXS cryogenics system in orbit has been completed successfully. The cooling performance was as expected and may exceed the lifetime requirement of three years.
著者
細川 悠紀 福本 まりこ 吉田 陽子 岡田 めぐみ 藥師寺 洋介 上野 宏樹 川崎 勲 依藤 亨 三田 育子 中本 収 林下 浩士 細井 雅之
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.113-117, 2014-02-28 (Released:2014-03-11)
参考文献数
7

症例は20歳女性.非妊時BMI 32.0.妊娠28週に腹痛を発症,血清アミラーゼ上昇,高中性脂肪(TG)血症,高血糖,腹部超音波検査で膵腫大を認め,急性膵炎と診断された.治療を開始したが糖尿病性ケトアシドーシス(DKA),DICを併発,第3病日子宮内胎児死亡が確認された.帝王切開にて死児の娩出後,高TG血症,DKAに対しヘパリン,インスリン持続投与に加え血漿交換を施行,急性膵炎に対する治療を行い臨床所見の改善を得た.妊娠中はリポ蛋白リパーゼ(LPL)活性が低下するため,正常妊娠においてもTGは高値となるが,特に糖代謝異常合併妊娠においてはTGの上昇が顕著である.本症例は膵炎発症時,すでにHbA1cが高値(NGSP値 9.8 %)であり,未診断の糖代謝異常を基礎として高TG血症となり,急性膵炎に至ったと考えられた.妊娠初期に糖代謝異常を早期診断し適切な管理を行うことで胎児死亡を防ぐことができた可能性がある.
著者
帆保 誠二 山内 龍洋 植山 泰博 吉田 光平
出版者
獣医麻酔外科学会
雑誌
獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:09165908)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.17-22, 1995-01-31 (Released:2010-09-09)
参考文献数
13

喉頭蓋エントラップメント (EE) を発症した競走馬4頭に対し, 高周波焼灼装置, EE用鉤状カッターを用いた外科的療法を試みた。まず1頭においては, 鎮静下での高周波焼灼法による披裂喉頭蓋ヒダの切開をおこなったが, 嚥下反射を完全に抑制することが出来ず, 不十分なものであったため, 全身麻酔下でのEE用鉤状カッターによる切開を試みた。また他の3症例では, 前例での経過を考慮し, EE用鉤状カッターによる切開を試みた。これらの結果, 術後の経過は良好であり, 短期間の休養のみでトレーニングに供することができた。以上より, 競走馬に発症したEEに対しては, 休養期間の短さや, 術後の患部の経過等から, EE用鉤状カッターによる外科的療法が有効であることが示唆された。
著者
渡邊 法男 山田 卓也 吉田 知佳子 細川 佐智子 中川 千草 安村 幹央 山村 恵子
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.40-42, 2016 (Released:2016-03-25)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

症例は40代男性, 原発不明がん, 肺転移, 脊椎転移 (T5-6) . モルヒネ硫酸塩徐放錠, ナブメトン錠, アミトリプチリン塩酸塩錠で疼痛治療中に, 腫瘍の進展に伴う脊髄圧迫部位以下の麻痺が完成し, 同時期から, 高度の腹部膨満感, 便秘を認めた. 各種腸管蠕動亢進薬を使用したが症状は改善しなかった. そこで, モチリン受容体アゴニストとして, 自律神経系の麻痺による消化管運動障害改善効果が報告されているエリスロマイシン点滴静注 (1回500mg, 3回/日) を開始したところ, 症状が著明に改善した. その後, エリスロマイシン錠 (1回200mg, 3回/日) へ変更し, 良好な排便コントロールを得ることができた. エリスロマイシンは, 各種腸管蠕動亢進薬が無効な腫瘍の脊髄圧迫など麻痺性の消化管運動障害による便秘に対し有用な治療薬の一つであると考える.
著者
平野 実 進 武幹 吉田 義一 三橋 重信 吉田 哲二 大久保 洋
出版者
The Japan Broncho-esophagological Society
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.285-290, 1980-08-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
16
被引用文献数
8 3

Dynamic disorders of swallowing are caused by lesions of the neuro-muscular system that participates in swallowing. Aspiration resulting from such disorders can be classified into four types. This classification is helpful for selecting surgical treatments for aspiration as well as for difficulty in swallowing.Type I. In this type, aspiration occurs when the larynx is elevated and closed during swallowing. It results from incomplete laryngeal closure. Mediofixation of the paretic vocal fold, suture of the bilateral ventricular folds, and/or fixation of the larynx in a high position yields good laryngeal closure. Cricopharyngeal myotomy leads bolus easily into the esophagus.Type II. Aspiration takes place when the larynx descends and opens at the end of the second stage of swallowing. This type of aspiration results from a weak propelling force and/or a strong resistance at the entrance of the esophagus. The weak propelling force is attributed to an incompetent velopharyngeal closure, disturbances of tongue movement and/or a weak pharyngeal peristalsis. Pharyngeal flap operation, infrahyoid myotomy and/or reinforcement of the pharyngeal wall is the choice of treatment. In order to reduce the resistance at the entrance of the esophagus, cricopharyngeal myotomy and a fixation of the larynx in an antero-superior position are effective.Type III. Aspiration occurs in both phases of laryngeal rising and falling.Type IV. This type is observed in those patients who are unable to execute the movements of the second stage of swallowing. The inability of the second stage movements seems to be caused by one of the following two: a severe paralysis of the swallowing muscles and strong inhibitory stimuli to the swallowing center of the medulla oblongata. The latter is observed in those patients who would have a very severe aspiration if their swallowing center allowed them to execute swallowing. In this type, the bolus is transported from the mouth to the pharynx by the gravity and weak tongue movements. The larynx closes in reflex but does not present such rising and falling as are executed in normal second stage. When the larynx opens, the bolus staying in the pharynx enters the airway.
著者
橋本 良太 藤井 景子 吉田 和子 下路 静佳 正木 秀典 角山 香織 中村 敏明 恩田 光子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.138, no.9, pp.1217-1225, 2018-09-01 (Released:2018-09-01)
参考文献数
20
被引用文献数
3 3

The current study aimed to examine the outcomes of pharmacists' involvement with elderly people in special nursing homes. We analyzed 58 cases involving regular visits by community pharmacists to 41 residents. The residents' mean age was 87.8±6.9 years, and 68.3% were prescribed 6 or more types of medication. Antipsychotic and insomnia medication was taken by 24.4% and 31.8% of residents, respectively. Pharmaceutical consultation following medication use accounted for 60.3% of pharmacists' involvement with residents. The outcomes of these consultations included improvements in prescription content; the identification and prevention of adverse drug events; improvement in activities of daily living; and improvement in test results, sleep, and urination/bowel control. The results also suggested that pharmacists' intervention reduced drug costs. Information that facilitated involvement was most frequently acquired via conversations (67.2%) and conferences (24.1%) in the facilities. The most common information sources were care workers (72.4%), followed by nurses (37.9%), physicians (6.9%), and functional training instructors (6.9%). Information was also acquired from patients (3.4%) and their family members (5.2%). The findings indicated that regular visits by pharmacists to facilities for elderly people and conversations between residents, their family members, and physicians, nurses and various other professionals improved various pharmacotherapy outcomes.
著者
香川 正幸 吉田 悠鳥 鈴木 哲 栗田 明 松井 岳巳
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.85-94, 2010 (Released:2015-02-20)
参考文献数
18

電波防護指針に準拠した小電力24 GHzマイクロ波レーダーを使用して,高齢者を対象とした非接触の呼吸・心拍見守りシステムを開発した.寝具用マットレスの下部にレーダー装置を設置し,呼吸・心拍に伴う体表面の微振動を計測するシステムであり,精度を向上するため2つのレーダー出力信号を組み合わせる特徴をもつ.最大の課題は,目的とする微弱な呼吸・心拍信号を四肢などの不規則な体動信号から分離抽出することであった.呼吸信号最大値および心拍信号最大値を事前に設定し,その最大値より大きい信号を体動ノイズと判定し振幅減少するAutomatic Gain Control方式をFFT周波数解析の前処理として導入した.また,レーダー信号の出力電力強度から体動の継続を判定し,体動が継続していない時間帯の呼吸・心拍数をより信頼性の高い情報として区別することにより,全体として体動に強い高精度計測が可能となった.本システムを実際に特別養護老人ホームで評価し,非接触見守りシステムの有用性を確認した.高齢者の介護では,在宅の場合も施設介護の場合も高齢者の状態変化の早期検出と介護者の身体的精神的負荷の軽減が求められており,本システムは高齢者安否確認システムの新しい方法として期待される.
著者
宮野 加奈子 吉田 有輝 坂本 雅裕 上園 保仁
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
看護薬理学カンファレンス 2020東京 (ISSN:24358460)
巻号頁・発行日
pp.ES-2, 2020 (Released:2020-12-28)

オキシトシンは、9 つのアミノ酸から構成されるペプチドホルモンであり、子宮収縮を促すホルモンとして 1906 年に発見された。オキシトシンは視床下部室傍 核(PVN)および視索上核(SON)で合成後下垂体後葉から分泌され、当 初は "出産や子育てに関連するホルモン" として、子宮収縮や乳汁分泌などの 生理作用をもつと考えられていた。しかしその後多くの研究により、オキシトシン は母性・社会行動の形成、抗ストレス、摂食抑制など非常に幅広い生理作用 を持つことが明らかとなり、"愛情ホルモン" あるいは "幸福ホルモン" と呼ばれ るようになった。漢方薬「加味帰脾湯」は 14 種類の生薬で構成されており、神経症、精神 不安、不眠症、貧血などに対して処方され、その効果はオキシトシンの作用と 一部共通している。しかしながら、加味帰脾湯がオキシトシンシグナルに及ぼす 影響については不明である。本講演では、加味帰脾湯がオキシトシン受容体な らびにオキシトシン分泌に関わるイオンチャネルにどのような作用を有するかとい う私たちが最近行っている研究の一部を紹介する。加えて近年、オキシトシンは PVN および SON に加え、脳や脊髄に投射しているオキシトシンニューロンからも分泌され、鎮痛作用を有することが明らかに されてきた。オキシトシンの鎮痛作用には、オキシトシン受容体を介する経路お よび受容体を介さない経路が報告されている。後者はオキシトシン受容体に似 た構造をもつバソプレシン1A 受容体、ならびに痛みのセンサーのひとつである transient receptor potential Vanilloid 1 (TRPV1) などが関与しているこ とが報告されている。加えてオキシトシンの鎮痛作用に、オキシトシンによる内 因性オピオイドの増加、ならびに オ オピオイド受容体の関与が報告されており、 オキシトシンの鎮痛作用にオピオイドシグナルの関与が示唆されている。しかし ながら、オキシトシンのオピオイドシグナルに対する詳細な作用については不明 である。そこで、加味帰脾湯のオキシトシンシグナルに対する作用に加えて、オ キシトシンのオピオイド受容体を介するシグナルへの作用について、当研究室で の研究成果を紹介する。本講演がオキシトシンの多彩な作用を説明する一環 となれば幸いである。
著者
戸田 宏文 古垣内 美智子 江口 香織 山口 逸弘 吉長 尚美 森田 泰慶 上硲 俊法 田中 裕滋 吉田 耕一郎
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.93, no.3, pp.326-329, 2019-05-20 (Released:2019-12-15)
参考文献数
19

We report herein on two cases of bacteremia caused by daptomycin-resistant Corynebacterium striatum. In these cases, daptomycin-resistant C. striatum was detected after receiving daptomycin for the treatment of multidrug-resistant C. striatum bacteremia, and ERIC-PCR band patterns were identical among the isolates of C. striatum before and after daptomycin therapy. We performed an in vitro assay to determine whether daptomycin resistance is induced in nine clinical isolates of C. striatum, including our two cases, after exposure to daptomycin in broth culture, and seven isolates showed emergence of daptomycin resistance. To our knowledge, this is the first reported case of daptomycin-resistant C. striatum bacteremia in Japan. The use of daptomycin for the treatment of C. striatam infections should be avoided, considering the risk for rapid emergence of daptomycin resistance.