著者
岡本 竜 矢野 米雄
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.61-71, 1995-09-20
参考文献数
11
被引用文献数
10

従来の会話シミュレーションに基づく英会話学習システムでは,典型的なモデル会話を繰り返すスキット学習が多く,教育的支援は会話中断による教育的対話への切り替え方式が中心であった.この方式は,学習者は受動的な学習を余儀なくされ動機付けの面からも好ましくない.また,会話文脈が固定的であるため,システムのシミュレーション介入による積極的な教育支援も困難である.我々は明示的な教育的対話への切り替えを行わず,学習者に試行錯誤による現実感を伴った学習を行わせる対話グラフによる知識表現を提案する.本知識表現によるシミュレーションでは,学習者主導の対話進行のなかで,システムによる対話進行制御による教育的支援が可能である.本論文では,英会話学習を対象とした環境型知的CAIシステムにおける会話シミュレーションの実現のための,会話の構造化と知識表現について論ずる.
著者
鴨川 賢二 奥田 真也 冨田 仁美 岡本 憲省 奥田 文悟
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.485-488, 2010 (Released:2010-07-29)
参考文献数
10

症例は75歳男性である.短時間の失声と無動をくりかえすため入院した.垂直方向の眼球運動制限,頸部・体幹の筋強剛,四肢のパラトニア,開脚小刻み歩行を呈していた.発作時には発語と動作が停止し,強直肢位をとり,吹き出し呼吸となって1分以内に回復した.発作中の意識は保たれていた.頭部MRIは進行性核上性麻痺とラクナ梗塞を示唆する所見であった.脳波では前頭葉徐波がめだち,123I-iomazenil SPECTの3D-SSPで補足運動野近傍の集積が低下していた.カルバマゼピンにより発作は消失した.陰性運動現象を主徴とする補足運動野発作が高齢者においても発症しうることには留意すべきである.
著者
岡本 徹 枡富 龍一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

高移動度シリコン2次元電子系に対して、磁場に対する角度をその場制御しながら磁気抵抗効果の測定を行った。非整数のランダウ準位充填率においてランダウ準位交差を行ったところ、電子局在に相当する縦抵抗の明瞭なディップが観測された。直流抵抗で金属的温度依存性を示す同系に対して、低温下でサイクロトロン共鳴の測定を行った。緩和時間は、直流抵抗から得られるものと同様の温度依存性を示した。GaAs劈開表面に形成したPb単原子層膜における超伝導を調べた。実験結果は、大きなRashba分裂を持つ2次元金属に対して予想されていた空間変調を有する超伝導状態によって説明された。
著者
岡本 泰昌
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

うつ病はネガティブな情動刺激に対する自己関連付けをおこなう特徴を有する。これまでの画像研究の結果から、自己関連づけ処理と内側前頭前野(MPFC)と前帯状回(ACC)の機能の関連が指摘されているが、うつ病を対象としたこれらの機能異常は明らかになっていない。そこでわれわれはいくつかの検討を行い、以下のような知見を得た。ネガティブ刺激の自己関連付けにおいてうつ病患者の内側前頭前野・前帯状回の活動は対象健常者より有意な活動上昇が認められた。さらに、うつ病患者を対象として認知行動療法(CBT)後には、ネガティブ感情語の自己関連付けにおいてCBT後に内側前頭前野、腹側前帯状回の活動が有意に低下することが明らかになった。われわれの研究の結果は、CBTによって自己に対するネガティブな認知に関わる脳機能が変容することによりうつ病の症状が改善することを明らかにした。
著者
姫野 龍太郎 藤野 清次 阿部 邦美 小野 謙二 伊藤 祥司 岡本 吉史 今村 俊幸 片桐 孝洋 伊藤 利佳 中田 真秀
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

電磁界問題,量子化学計算,数値流体計算の大規模数値シミュレーションに向けて,大規模行列計算に向けた高速化,高精度化,安定化を実現し,従来手法では解きにくい問題に対する新たな求解アルゴリズムを提案した.さらに,そのようなシミュレーションを支援するために,応用問題の特性に応じたデータ構造を決定する自動チューニング技術,ジョブスケジューラによる最適な計算機資源割当て方式,任意高精度線形代数演算パッケージも開発した.
著者
BRINE John ヴァジェニン アレクサンダー 岡本 清美 モズゴヴォイ マキシム
出版者
会津大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、コンピュータ理工学の学生が複雑な専門的文章を読む際に助けとなる、モバイルデバイス上での読解注解ツールを開発した。WikiGlossは学生が文書をインプットして、読解の話題と関連するWikipediaにリンクし、情報を増加する。タブレット上で注解が読解内の選択した文章上で立ち上がり、学生に文脈内の意味を与えて理解を助ける。モバイルデバイス上で使用中、読解文章に付随したWikiGlossツールは、文章と他のアプリケーション、例えば意味検索の辞書等との置き換えを回避することができる。
著者
米津 遥 石井 大介 岡本 聡 大木 英司 山中 直明
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J94-B, no.10, pp.1323-1331, 2011-10-01

近年,インターネットの普及に伴いトラヒック量及びネットワークの消費電力が増加していることにより,ネットワークの省電力化が重要な課題となっている.そこで,ネットワーク内のトラヒックを特定リンク上に集約し,未使用リンクの電源を落とすことによって省電力化を実現するMiDORiが提案されている.MiDORiネットワークでは,一定時間ごとにトラヒック量に応じて物理トポロジーの最適化を行うために,実用的な省電力トポロジーの計算手法が必要となる.そこで本論文では,元のトポロジーから一定数のリンクを削減するごとに,ネットワーク性能を維持可能なトポロジーを局所最適解として選択することで,省電力トポロジーを導出可能な計算手法を提案する.また,トラヒック集約により,1リンク当りのトラヒック負荷が高い省電力ネットワークにおける障害回復方式として,protection方式及びrestration方式を提案する.計算機シミュレーションにより,提案する省電力トポロジー計算手法の省電力効果・計算時間における有効性を示し,二つの障害回復方式を比較検討する.最後に,自律的なトポロジー最適化を可能とするMiDORiネットワークのプロトタイプシステムを紹介する.
著者
山路 稔 岡本 秀毅 久保園 芳博
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

ベンゼン環同志が隣り合ってたくさん繋がった縮環化合物と呼ばれる分子は有機化学的の作成する事は大変手間と時間がかかる。本研究では、1)光を当てるだけで環縮環生成する反応機構を解明する、2)この反応機構を応用し、従来の有機合成では生成困難な多環芳香族化合物や窒素、酸素、イオウなどの原子を含む複素環芳香族化合物を新たに創成する、3) 作成した多環縮環化合物を電子・発光デバイスや超伝導材料としての可能性、について研究を行った。
著者
岡本 肇
出版者
中部大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、市民版マスタープラン(以下「市民版MP」)を従来の提案手法としての活用だけでなく、市民自身のマスタープランとしての市民版MPの作成・活用方法を探求する研究である。研究成果として、既に市民版MPが作成されている13事例に対する調査による市民版MP作成後の活用の評価や、現在作成中の市民版MPの作成プロセスへの観察調査の分析によって、市民版MPが様々なまちづくりの場面で市民自身のマスタープランとして活用できうることを実証した。
著者
岡本 賢吾
出版者
山形大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

1.[本研究の主題]近世期の形而上学(ライプニッツ、ヴォルフ派、カント等)と現代の論理学(とりわけフレーゲ、ラッセル、ウィトゲンシュタイン等の論理哲学的考察)においては、「無限」「関係(秩序、順序)」「様相(必然性、可能性)」の概念が重要な共通の主題となっている。こうした共通性の背後にどのような哲学史的・概念的連関が含まれているかを、特に「可能性」の概念について検討した。2.[可能性と命題]ライプニッツからヴォルフ派に到る形而上学では「可能なもの(possibile)」の概念が体系全体の基礎となるが、これは〈矛盾律・排中律・同一律という伝統的な形式論理の諸原理を満たす限りの任意のもの〉として特徴付けられ、現実的なものをもその一部として含む包括的な領域を成すとされている。この「可能なもの」は、論理的原理によって形式的に規定され構造化されている限りで、実は、真偽の決定を受け入れうる客観的な判断内容(命題)に、あるいはそうした命題によって表象される「事態」に相当するものだと考えられる。この点は、既にB・ボルツァーノが「命題自体」の概念を提起する際にライプニッツに即して示唆したことであり、それ以降、フッサール、フレーゲ、ラッセル等を通じて様々に展開され、ウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』において完成した形で叙述されることとなっている。以上は、拙論『「可能なもの」の形而上学の意義』で詳述した。3.[今後の課題]以上との関わりで見ると、命題(とりわけ、概念記法の言語における「文(Satz)」によって表現された思想ないし判断)を分析することによって「概念の形成」が行われるとするフレーゲの議論が重要性を持ってくる。このような分析こそが、論理的シンタクスに適合した(従って、まさに強い意味で「可能」な)概念を与えるとされるからである。拙論『概念形成の媒体としての「文」』参照。
著者
杉井 康彦 西尾 茂 岡本 孝司 中野 厚史 南山 求 新見 英幸
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. B編 = Transactions of the Japan Society of Mechanical Engineers. B (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.70, no.691, pp.701-706, 2004-03-25
参考文献数
18
被引用文献数
2

Blood flow in microvessels, such as arterioles, capillaries and venules, whose diameter ranges from 5 to 50μm, is responsible for the maintenance of tissue and organ functions. The measurement of microvascular blood flow velocity with high measurement accuracy is essential for basic and clinical studies in the assessment of flow shear stress at the vascular wall in relation to substance exchange between blood and tissue. This paper aimed to evaluate the velocity field of blood flow in microvessels with high spatial and temporal resolution. By using micro PIV system, the velocity distributions of red blood cells flowing in rat mesenteric arterioles, including near the wall in the axisymmetric plane, were obtained. Ensemble averaged time-series of velocity profiles in the cross-sections were calculated for comparison. It was shown that the arteriole velocity profile was blunt in the center region of the vessel cross-section while it was steep in the near wall region.
著者
岡本 玲子 鳩野 洋子 岩本 里織 小出 恵子 草野 恵美子 津田 敏秀 浜田 淳 北脇 知己 芳我 ちより 合田 加代子 山川 路代 岡本 里香 福川 京子 長野 扶佐美
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究の目的は、住民と意思決定者に活動の必要性と成果を見せる公衆衛生看護技術を構築し、それを習得する学習プログラムを開発することである。2011年度は、「見せる公衆衛生看護技術」を定義し、①活動の必要性を見せる技術、②活動の成果を見せる技術、③保健師の存在価値を見せる技術について内容を体系化、2012年度はそれをもとにテキスト「見せる公衆衛生看護技術」を作成、2013年5月に出版(岡山大学出版会)。2013年度はテキストを用いた教育プログラムを検討・試行した。2014年度には成果普及に向けたWEB教材を作成・公開した(http://wwwmiseru.fhs.okayama-u.ac.jp)。
著者
岡本 玲子 塩見 美抄 鳩野 洋子 岩本 里織 中山 貴美子 尾島 俊之 別所 遊子 千葉 由美 井上 清美
出版者
日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.60-67, 2007-03-30
被引用文献数
9

本研究の目的は,今特に強化が必要な行政保健師の専門能力を明らかにすることである.データは,(1)学識経験者を対象としたフォーカスグループディスカッション(n=7)と,(2)保健師と関係他職種を対象とした個別面接(n=9)により収集した.専門能力は,研究者によるデータの解釈・分析によって抽出・精選した.専門能力の妥当性と優先度の検討は,(3)全国の現任保健師研修担当者への郵送質問紙調査により行った.(1)(2)を分析した結果,専門能力は次の5つにまとめられた.すなわち,a)住民の健康・幸福の公平を護る能力,b)住民の力量を高める能力,c)政策や社会資源を創出する能力,d)活動の必要性と成果を見せる能力,e)専門性を確立・開発する能力である.(3)の調査(n=225)では,a)〜 e)の専門能力は,被調査者の9割以上の賛同を得た.また,7割の者が優先度が高いとした専門能力は,c)d)であった.結果より,今回抽出した専門能力は,今特に強化が必要なものとしてコンセンサスを得られた.今後保健師がこれらの能力を獲得できるよう,とりわけ優先度の高い専門能力について,我々は早急に教育プログラムの開発や教育体制の整備を行っていく必要がある.