著者
木村 淳
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.792-797, 2008 (Released:2009-01-15)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

日本神経学会は1960年に設立されましたが,当時神経学を学べる施設は,東大,新潟大,九大などに限られていました.僕は,のちに京大総長を務められた平沢興先生の錐体外路系に関する解剖講義に憧れてこの道を志し,インターン修了後すぐ渡米しましたが,1)神経系が人体のもっとも重要な,人間が人間たるゆえんである脳の機能を主要な対象としていること,2)複雑難解にもかかわらず理路整然とした学問で,解剖学の知識に基づいて病巣の局在が可能であること,3)新しい領域で,将来への展望が明るいことなどにも強く魅かれました.半世紀近くを経た今も思いは同じですが,これに加えて分子生物学をはじめとする神経科学分野の目覚しい発展により,病態の確立のみならず以前は対症療法に甘んじていた多くの疾患にも新しい治療法が続々と開発され,4)患者の治る神経内科,が神経学の新たな魅力となり,これは僕達のスローガンでもあります.神経学の国内外の進歩にともない,この分野を目指す若い先生方への期待は日増しに大きくなってきました.わが国の神経学は僕がアイオワ滞在中に飛躍的な発展を遂げ,これに貢献された多くの先達が新しい世代に求めるところは,先生方の個人的な経験を踏まえ,千差万別かと思います.この機会に日米で神経学を学んだ者の一人として,僕の次世代への期待を纏めますと,1)国際的な視野で仕事をする,2)診断に役立つ新しい技術を開発する,3)臨床に直結する基礎研究を展開する,そしてそのすべてを集結して4)患者の治る神経内科をめざすことです.いずれも実現可能な目標ですが,いうはやすく,おこなうは難しの部類です.とくに,実力に見合った国際的な評価を確立するのはわれわれがもっとも不得手とするところで,僕自身の体験でも,海外の学会活動で欧米の学者と互角にわたり合うのはかなり難しく,常に意識的な努力が必要と実感しています.国際学会での論争で,実力は伯仲しているのにいつもこちらに分が悪いのは,主に発表態度の差によるものと考えられます.我が国は儒教の影響もあり,古くから「知るを知らざるとなすは尚なり」の考えが根強く,10を知って1を語るのが良いとされます.その逆にアメリカ人は,幼稚園での「Show And Tell」を手始めに,中学校で習う「Five Paragraph Essay」で鍛え上げられ,1を知って10を語る輩が多いようです.また,日本人は完璧主義ですから,とちっても平気な欧米人とはちがいアドリブの発表が苦手です.英語でも上手く話せなければ,我は黙して語らずと達観している人もありますが,外国語ですからBrokenでも当たり前です.僕の国際性の定義は,1)実力をつけて,あとは対等と自信をもつ,2)知ってることはどんどんいう,3)失敗しても愛嬌と思って気にしない,4)英語は意味がわかればよいので,あえて流暢に喋ろうとしない,ことです.若い先生方がこれからの国際舞台でますます活躍されることを願って止みません.
著者
滑川 将気 荻根沢 真也 木村 暁夫 下畑 享良 小宅 睦郎 藤田 信也
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001713, (Released:2022-04-26)
参考文献数
15

症例は,61歳男性.2年前と6か月前に全身けいれん発作を起こし,5ヶ月前からの歩行障害が悪化して入院した.認知機能低下,下肢痙性と体幹失調,自律神経障害を認めた.髄液細胞増多があり,MRIで大脳半卵円中心の点状造影効果を伴う白質病変と長大な頸髄病変を認めた.ステロイドパルス療法で軽快したが2ヶ月後に再燃し,新たに頸髄側索の病変を認めた.髄液の抗glial fibrillary acidic protein(GFAP)α抗体が陽性で,自己免疫性GFAPアストロサイトパチー(GFAP-A)と診断した.GFAP-Aは,亜急性で予後良好の経過が多いとされるが,慢性難治性の経過をたどった.
著者
相川 慎也 芦原 貴司 天野 晃 有末 伊織 安藤 譲二 伊井 仁志 出江 紳一 伊東 保志 稲田 慎 井上 雅仁 今井 健 岩下 篤司 上村 和紀 内野 詠一郎 宇野 友貴 江村 拓人 大内田 研宙 大城 理 太田 淳 太田 岳 大谷 智仁 大家 渓 岡 崇史 岡崎 哲三 岡本 和也 岡山 慶太 小倉 正恒 小山 大介 海住 太郎 片山 統裕 勝田 稔三 加藤 雄樹 加納 慎一郎 鎌倉 令 亀田 成司 河添 悦昌 河野 喬仁 紀ノ定 保臣 木村 映善 木村 真之 粂 直人 藏富 壮留 黒田 知宏 小島 諒介 小西 有人 此内 緑 小林 哲生 坂田 泰史 朔 啓太 篠原 一彦 白記 達也 代田 悠一郎 杉山 治 鈴木 隆文 鈴木 英夫 外海 洋平 高橋 宏和 田代 洋行 田村 寛 寺澤 靖雄 飛松 省三 戸伏 倫之 中沢 一雄 中村 大輔 西川 拓也 西本 伸志 野村 泰伸 羽山 陽介 原口 亮 日比野 浩 平木 秀輔 平野 諒司 深山 理 稲岡 秀検 堀江 亮太 松村 泰志 松本 繁巳 溝手 勇 向井 正和 牟田口 淳 門司 恵介 百瀬 桂子 八木 哲也 柳原 一照 山口 陽平 山田 直生 山本 希美子 湯本 真人 横田 慎一郎 吉原 博幸 江藤 正俊 大城 理 岡山 慶太 川田 徹 紀ノ岡 正博 黒田 知宏 坂田 泰史 杉町 勝 中沢 一雄 中島 一樹 成瀬 恵治 橋爪 誠 原口 亮 平田 雅之 福岡 豊 不二門 尚 村田 正治 守本 祐司 横澤 宏一 吉田 正樹 和田 成生
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.Dictionary.1, pp.1-603, 2022 (Released:2022-03-31)

2 0 0 0 將棋大觀

著者
木村義雄 著
出版者
誠文堂
巻号頁・発行日
1928
著者
遠藤 佳章 久保 晃 木村 和樹 三浦 寛貴
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.42-46, 2016 (Released:2017-02-20)
参考文献数
24
被引用文献数
1

【目的】超音波画像診断装置を用いて健常若年男性の腰椎各レベルの多裂筋横断面積の腰椎レベル高低での差異と左右差の2 要因を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は過去に腰部の疾病や外傷,腰痛の既往がない上下肢ともに右利きの健常若年男性55 名とした。超音波画像診断装置を用いて,腹臥位で左右の第5・4・3・2・1 腰椎レベルの多裂筋横断面積を計測した。【結果】多裂筋横断面積の左右比較では,第5・4 腰椎レベルで右側が有意に大きく,第3・2・1 腰椎レベルでは有意差は認められなかった。また,左右ともに下位腰椎にいくにつれて多裂筋横断面積は有意に増大した。【結語】腰部多裂筋横断面積は下方にいくにつれて大きくなり,利き側がより発達することが示唆された。
著者
木村 高宏
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.125-136,257, 2003-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
11
被引用文献数
4

本稿では不満な有権者の棄権を,ハーシュマン(Hirschman, Albert O.)の提示した「退出」であると考える。この理論枠組みを敷衍して,不満な者の投票参加がいくつかの要因によって影響を受けるという仮説を検証する。本稿の分析を通じて,不満であっても何らかの政治課題を重要だと考えれば投票し,あるいは,社会をよくするために何かができると考えれば投票する,という有権者の存在を示すことができた。このことは,有権者自身の態度形成を問題にしており,政策距離を中心に考える期待効用差からの研究に対して,有権者の政治を理解する能力が十分に成熟していない場合にも採用可能であるという利点があるだろう。また,分析において,政治的疎外感を示す質問と,「社会をよくする」というような有力感に関する質問とが,質的に異なることを示すことができた。
著者
谷本 博一 木村 健二 木村 暁
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.271-274, 2016 (Released:2016-09-27)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

The various molecules and organelles in a eukaryotic cell are suitably positioned within the cell to carry out their functions at the appropriate time. This intracellular positioning is accomplished through interplay among the active transport mechanisms, intracellular fluctuations, and physical properties of the components inside the cell. Here, we review the recent advances in research on how the nucleus moves toward, and maintains its position at, the geometrical center of the cell. This question has attracted researchers from various fields, and is a good subject for interdisciplinary collaboration.
著者
木村 清孝
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.947-961,iii, 2005-03-30 (Released:2017-07-14)

本論文は、近代日本において、西欧から移入された文献学的な仏教研究の軌跡を辿ることを基軸として、このおよそ百年間における仏教研究の歴史を顧み、その特徴を明らかにするとともに、それがもつ問題点を探り、合わせて今後の仏教研究のあり方について述べようとするものである。明治時代の初め、<近代的>な仏教研究の扉は、少なくとも表面的には伝統的な仏教学と切れたところで、南條文雄によって開かれ、高楠順次郎によって一応定着した。それが、文献学的仏教研究である。この伝統は、のちに歴史的な見方を重視する宇井伯寿によって新展開を見た。さらにその愛弟子の中村元は、宇井の視点と方法を継承しながらも、それに満足することなく、新たに比較思想の方法を導入し、「世界思想史」を構想し、その中で仏教を捉えることを試みた。この比較思想的な仏教研究が、西田哲学を継承する哲学的な仏教研究と並んで、現在も主流である文献学的な仏教研究に対峙する位置にあると思われる。最後に付言すれば、これからの仏教研究は、その中軸として、文献学的研究と、それを踏まえた思想史的研究、さらには、その思想史的研究によって明らかになる重要な「生きたテキスト」をよりどころとする比較思想的研究が遂行されることが望まれるのではなかろうか。
著者
木村 真人
雑誌
国際研究論叢 : 大阪国際大学紀要 = OIU journal of international studies (ISSN:09153586)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.147-159, 2022-03-31

" This study aimed to find out how university faculty and staff encourageuniversity students to use the student counseling center. A total of 78university faculty and staff members participated. They were presented withthe questions:“ What difficulties do you experience when encouraging studentsto use the student counseling center?” and “What do you do to encouragestudents to use the student counseling center?” The analysis of the open-endedresponses indicated that the answers fell into seven categories: 1)Forming atrusting relationship regularly, 2)Involving other departments, 3)Lowering thebarriers of use, 4)Explaining the benefits of use, 5)Emphasizing confidentiality,6)Respecting autonomy, 7)Recommending actual student utilization.Furthermore, the result indicated the various ways of encouraging collegestudents to use the student counseling center—before, during, and afterrecommending it. Finally, the implications of these findings are discussed."
著者
木村 透
出版者
大阪癌研究会
雑誌
癌と人
巻号頁・発行日
vol.29, pp.34-35, 2002-03-31
著者
木村 博之
出版者
日経BP社
雑誌
日経systems (ISSN:18811620)
巻号頁・発行日
pp.68-73, 2012-01

子供向け絵本のジャンルの一つに、「まちがいさがし」があります。一見して同じイラストが左右に並んでいるのですが、左右でいくつか異なる点があります。左のイラストに対して、右のどこが違うのか。子供は左右に目をきょろきょろ動かして、二つのイラストを見比べながら探します。たいていの場合、わずかな違いでも子供は見つけてしまいます。
著者
木村 昌紀 塩谷 尚正 北小屋 裕 Masanori KIMURA Takamasa SHIOTANI Yutaka KITAGOYA
出版者
神戸女学院大学研究所
雑誌
神戸女学院大学論集 = Kobe College studies (ISSN:03891658)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.29-44, 2021-12

119番通報の件数が膨大な数に上る中、市民が適切に通報できないことが救急現場の負担や救急隊や消防隊の到着遅延の原因となっている。本研究は、円滑な通報の実現を目指して、119番通報における市民の心理的要因を探索的に検討する。20代から60代までの各世代の男女約100名ずつからなる、全国1063名を対象にインターネット調査を実施した。119番通報の際、市民の感情的動揺が激しいほど通信指令員とのコミュニケーションは阻害される一方で、通報に対する正確な知識が多いほど円滑なコミュニケーションは促進されていた。特に、初めての通報で知識の効果は顕著だった。市民が119番通報の正確な知識を身につけることは、たとえ感情的に動揺していても、通信指令員との円滑なコミュニケーションにつながる。様々な機会や方法を通じて、市民に119番通報に関する情報を周知していくことが求められる。
著者
柳田 高志 清水 直人 木村 俊範
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.79-87, 2005-03-15 (Released:2010-06-08)
参考文献数
18
被引用文献数
2 2

熱帯プランテーションで毎年大量に廃棄されているバナナ茎・葉の有効利用が重要な課題となっている.私たちは, 未だ研究報告のないバナナ葉抽出物に注目し, 有効利用の指針となるようなバナナ葉抽出物の基礎資料を得ることと効果的な抽出操作を提案することを目的とした.バナナ新鮮葉・乾燥葉の抽出成分を脂質画分, 塩基性画分, 酸性画分, 中性画分およびフェノール性画分に分画した.その結果, バナナ葉抽出物には植物性ワックス, 抗菌性物質, 抗酸化性物質といった有用な成分が含まれていることが明らかとなった.脂質画分にはワックスが多く含まれており, 果実収穫後のバナナ葉には, 乾燥重量あたり約3%の収率での回収が見込まれた.さらに, 酸性およびフェノール性画分には抗菌および抗酸化性が確認できた.また, 効果的な抽出法として, 最初に新鮮葉を用いてワックスを抽出し, その後, 乾燥処理を行ってから抗菌, 抗酸化活性を有する画分を抽出し, 残渣を繊維として利用する手順を提案した.
著者
木村 淳
出版者
Societas Neurologica Japonica
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.792-797, 2008-11-01
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

日本神経学会は1960年に設立されましたが,当時神経学を学べる施設は,東大,新潟大,九大などに限られていました.僕は,のちに京大総長を務められた平沢興先生の錐体外路系に関する解剖講義に憧れてこの道を志し,インターン修了後すぐ渡米しましたが,1)神経系が人体のもっとも重要な,人間が人間たるゆえんである脳の機能を主要な対象としていること,2)複雑難解にもかかわらず理路整然とした学問で,解剖学の知識に基づいて病巣の局在が可能であること,3)新しい領域で,将来への展望が明るいことなどにも強く魅かれました.半世紀近くを経た今も思いは同じですが,これに加えて分子生物学をはじめとする神経科学分野の目覚しい発展により,病態の確立のみならず以前は対症療法に甘んじていた多くの疾患にも新しい治療法が続々と開発され,4)患者の治る神経内科,が神経学の新たな魅力となり,これは僕達のスローガンでもあります.神経学の国内外の進歩にともない,この分野を目指す若い先生方への期待は日増しに大きくなってきました.わが国の神経学は僕がアイオワ滞在中に飛躍的な発展を遂げ,これに貢献された多くの先達が新しい世代に求めるところは,先生方の個人的な経験を踏まえ,千差万別かと思います.この機会に日米で神経学を学んだ者の一人として,僕の次世代への期待を纏めますと,1)国際的な視野で仕事をする,2)診断に役立つ新しい技術を開発する,3)臨床に直結する基礎研究を展開する,そしてそのすべてを集結して4)患者の治る神経内科をめざすことです.いずれも実現可能な目標ですが,いうはやすく,おこなうは難しの部類です.とくに,実力に見合った国際的な評価を確立するのはわれわれがもっとも不得手とするところで,僕自身の体験でも,海外の学会活動で欧米の学者と互角にわたり合うのはかなり難しく,常に意識的な努力が必要と実感しています.国際学会での論争で,実力は伯仲しているのにいつもこちらに分が悪いのは,主に発表態度の差によるものと考えられます.我が国は儒教の影響もあり,古くから「知るを知らざるとなすは尚なり」の考えが根強く,10を知って1を語るのが良いとされます.その逆にアメリカ人は,幼稚園での「Show And Tell」を手始めに,中学校で習う「Five Paragraph Essay」で鍛え上げられ,1を知って10を語る輩が多いようです.また,日本人は完璧主義ですから,とちっても平気な欧米人とはちがいアドリブの発表が苦手です.英語でも上手く話せなければ,我は黙して語らずと達観している人もありますが,外国語ですからBrokenでも当たり前です.僕の国際性の定義は,1)実力をつけて,あとは対等と自信をもつ,2)知ってることはどんどんいう,3)失敗しても愛嬌と思って気にしない,4)英語は意味がわかればよいので,あえて流暢に喋ろうとしない,ことです.若い先生方がこれからの国際舞台でますます活躍されることを願って止みません.<br>
著者
大塚 愛 森高 初恵 福場 博保 木村 修一 石原 三妃
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.759-767, 2001-10-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

コーンフラワーを原料としたトルティーヤ調製において,炭酸カルシウムを添加すると,デンプン粒子の膨潤・崩壊,分子の膨潤・水和が促進されたが,変化の程度は小さかった,炭酸カルシウム添加では,加熱により空洞が組織中に観察され,吸水率が増加した.このため,炭酸カルシウム添加トルティーヤでは水分の多い具材を巻いて食べる際には,水分を良く吸収し食べ易さが向上すると考えられた.一方,水酸化カルシウムを添加した場合には,デンプン粒子の膨潤・崩壊,分子の膨潤・水和は炭酸カルシムを添加した場合よりも促進され,組織は緻密となった.従って,水酸化カルシウム添加では,調理操作上あるいは具材を包んで食べる際には破れにくくなり,これらの点で利便性は向上すると考えられたが,添加により強いアルカリ味が生じ,赤味の強い色調になるために,利用に際しては添加量に注意を払う必要があると考えられた.
著者
木村 めぐみ
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.45-53, 2008-08-01
被引用文献数
1

1982年に放送を開始したイギリス第四番目の地上波放送Channel 4は,組織設立当初から映画(テレビ映画,劇場公開用映画を含む)事業を主要な事業と位置づけ,1981年から現在に至るまで25年以上の間,年間数本の映画に出資などの方法で映画製作を行なっている。Channel 4による映画製作は,1970年代から1980年代にかけて疲弊していたイギリス映画産業だけでなく,英国国営放送(BBC)やインディペンデントテレビジョン(ITV)を含む放送産業に革命的な影響を与えた。長い低迷期間を経て1990年代にイギリス映画産業は再び活力を取り戻し,Channel4製作映画『トレインスポッティング』(1996)など,イギリス映画を代表する作品を多数生みだし,現往,放送産業はイギリス映画産業に欠かすことのできない重要な映画プロダクションとなっている。本稿はイギリス映画産業の歴史を製作本数の推移を中心に考察したうえで,Channel 4の独自の映画製作方法や1990年代の産業の再生の背景及びChannel 4の映画事業が映画産業に与えた影響,またその設立意義を追究する。
著者
木村 謙仁 柴田 智文 松尾 雄司 村上 朋子
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.15-26, 2022 (Released:2022-02-15)
参考文献数
20

In this study, we perform model analyses assuming the Japanese power supply portfolio in 2050 to evaluate the economic efficiency of nuclear power generation under mass introduction of variable renewable energy (VRE) ― such as solar PV and wind ― and of hydrogen power generation in 2050. As a result, this study shows that even if the unit cost of VRE falls significantly by 2050, not only existing nuclear power plants, but also new construction, will have economic efficiency. Its benefit would become much larger when 100% carbon-free generation is mandated, but in that case, the role of nuclear energy as the base load power generation would be changed. On the other hand, in the case where hydrogen power generation will be deployed, the nuclear energy would be smaller than those in other 100% carbon-free cases, but its base load operation would be maintained.