著者
河上 純輝 菊川 憲志 小田 勇一郞 森田 誠 橋本 憲蔵 田村 諭史 福間 裕子 高田 興志
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.552-555, 2018-09-25 (Released:2018-11-12)
参考文献数
4
被引用文献数
2

肩石灰性腱炎と診断されシメチジンを投与した症例について,臨床症状および単純X線の改善率を検討した.当科において肩石灰性腱炎と診断され,シメチジンを投与された33例35肩(男性6肩,女性29肩)を対象とした.病期分類としてDePalma分類を用いた.シメチジン内服後の疼痛を消失・軽快・不変に分け評価した.石灰化については,単純X線正面像で評価した.DePalma分類における急性期が25肩,亜急性期が6肩,慢性期が4肩であった.30肩(85%)で症状の改善(消失+軽快)を認め,24肩(69%)の症例で単純X線写真での石灰化改善を認めた.肩石灰性腱炎に対し,シメチジンの投与は有効な治療法の一つであると思われた.
著者
森 正人
出版者
一般社団法人 人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.1-22, 2009 (Released:2018-01-10)
参考文献数
98
被引用文献数
3 2

This article traces some trajectories of social and cultural geography since the end of the 1980s to the early 2000s and attempts to explain how the geography of materiality has become a matter in current Anglophone geography, especially in the United Kingdom. Although the new cultural geography of Japan redefines social and cultural geography and focuses on discursive practices and representations, in Japan there is low awareness of discussions on post-humanism, which is a topic in Anglophone geography. Anglophone geography consists of topics such as materiality, performativity, complexity theory, and actor-network theory. There is no paper in the Japanese or English literature in Japan that discusses such topics. Hence, this article attempts to establish a framework to facilitate the discussion of topics such as those mentioned above.To begin with, the process of development of the new cultural geography is detailed in order to review the questions raised towards the end of the 1980s on both sides of the Atlantic. The new social and cultural geography has progressed beyond the conventional understanding of culture, which is sustained by traditional cultural geography, stressing the complex relation between culture, economy and politics, and has also served to underline the crisis in geographical representations associated with anthropological discussions. In this consideration, moral geography, which forms webs of ideologies through space, place, and landscape, is examined. There have been criticisms of the new cultural geography, of which a problem of reification of the idea of culture is noted here. However, the controversy around this criticism seemingly still retains a problem of metaphysics, and rigidly assumes the existence of ‘subject’ and ‘object’. Phil Crang’s paper that intends to combine the cultural aspect with economic geography implies the idea of culture and economy as something performed. It states that there is no linearity or predetermined harmony among cultural, economic and political practices. This point of view was amplified in some lines of discussions in the late 1990s.Second, theoretical frameworks for performativity, hybridity, ethics, non-representational theory, complexity theory, and actor-network theory are outlined in this essay. The power of things, women, nature, etc. that have been objectified is included as these discussions revolve around the issue of western metaphysics which continually attempts to establish a rigid division between the subject and the object. The distinction has been always/already mediated by the corporeal. The traces left by the corporeal or things reveals the impossibility of the execution of the project of western metaphysics. Ethics are centered, instead of moral geography, to grasp the entanglement of humans and non-humans.Third, criticism of the material turn that occurred at the end of the 1990s is studied. The discussion on materiality became a critical vehicle to overcome the weakness of verbal analysis. Mike Crang’s papers on heritage show that materiality emerges in various practices and affects people’s memories. Materiality is not only an issue of matter. Subsequently, there is reference to a controversy between Daniel Miller, who influenced the material turn in geography, and Michel Callon, who proposed the actor-network theory. It demonstrates how Miller is captured by the classic Hegelian/Marxist concept: Miller assumes the linearity of ideology in a market and the predominance of the subject over the object. It is, therefore, understandable that some geographers were accused of continuing to retain Hegelian beliefs, i. e., the belief that there is a binary relation between subject/object, spirit/thing, and human/nature.(View PDF for the rest of the abstract.)
著者
平森 大規 釜野 さおり 小山 泰代
出版者
Japanese Council on Family Relations
雑誌
家族研究年報 (ISSN:02897415)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.5-25, 2023-07-15 (Released:2023-10-13)
参考文献数
18

本稿では、これまで筆者らが従事してきた研究を題材に、日本ではまだほとんど進められていない量的調査を通じた性的指向・性自認のあり方(SOGI) と家族研究の可能性を探った。日本の無作為抽出調査においてSOGIを測定する際の課題と測定方法を検討した研究、同性パートナーの有無の把握における課題を検討した研究、回答者のSOGIおよびカップルタイプ(女性間、男性間、男女間) 別に世帯・家族構成やジェンダー・家族意識等について検討した研究という3つの研究事例を提示した。日本では数少ない回答者のSOGIをたずねた無作為抽出調査である「大阪市民調査」およびその準備調査を用いてこれらの研究事例を検討した結果、既存研究の課題を乗り越えるべく、SOGIを分析軸にした家族研究を進めていくことの社会的・学術的意義が示された。
著者
森野 智子 戸畑 温子 溝口 奈菜
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.366-372, 2018-12-31 (Released:2019-01-31)
参考文献数
23

口腔機能の低下を防止することにより,身体フレイル予防効果が期待されている。しかし口腔機能向上訓練は単調であるうえ評価が困難であり,その継続には支援が必要である。そこで,美味しく楽しく医療費のかからない訓練飴を口腔機能向上訓練へ適用することを考え,健常者を対象に飴舐め訓練の口腔機能向上効果を検証するパイロットスタディを実施した。 研究対象は協力企業社員50歳以上男性職員30人で,はじめに基礎情報と口腔状況を調査した。口腔状況調査項目は,口腔不潔,口腔乾燥,舌口唇運動機能低下,低舌圧,嚥下機能低下である。被験者中から無作為に選んだ15人(介入群)に2週間介入を実施した。介入方法は毎日1本の飴舐め訓練である。被験者介入群への飴舐め訓練指導は,歯科衛生士が著者らの提案した飴舐め法を紙面で示し,実際に舐めてもらう個別指導形式で実施した。残り15人(対照群)には通常どおりの生活を送ってもらい,2週間後両群の口腔状況を調べた。二元配置分散分析の結果,実験条件(介入群と対照群)と測定時期(介入前と介入2週間後)に交互作用はなく,介入群と対照群に有意な差が認められたのは舌圧であった(F=6.510,p=0.01)。介入前舌圧値がこれまで報告されている低舌圧の基準値より高かったにもかかわらず,飴舐め訓練で短期間に機能向上が得られたことは注目に値する。舌圧の維持改善は,咀嚼,嚥下,コミュニケーションに重要であることから,訓練飴を用いた口腔機能訓練で舌圧が維持改善されることは,全身の健康に寄与することが期待できると考える。
著者
堀口 兵剛 大森 由紀 松川 岳久 小松田 敦 中嶋 克行
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

秋田県の北部・中部・南部のCd汚染地域の農業従事者は現在でもCd体内蓄積量は高く、健康影響が危惧される。これまでに北部Cd汚染地域での住民健康調査と各Cd汚染地域での医療機関におけるCd腎症スクリーニングにより多くのCd腎症患者や「イタイイタイ病」疑い患者を見出したが、調査対象を中部・南部のCd汚染地域まで拡大し、北部地域での追跡調査、湛水管理の米中ヒ素濃度への影響の観察なども実施する。それにより秋田県Cd汚染地域全体の実態把握、高齢でのCdの健康影響の解明、ヒ素に関する湛水管理の有効性と安全性の検討などを行い、地域住民のCdに関する健康問題の根本的な解決を目指す。
著者
森元 良太
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.165-176, 2021-03-25 (Released:2022-03-25)
参考文献数
33

心理学は心的概念を量産し続けている。その一方で、行動分析学は心を行動の原因として想定しない方略を採っている。心を想定する研究プログラムと心を想定しない研究プログラムはどちらがよいだろうか。哲学や科学では古くから、「オッカムのかみそり」と呼ばれる原理を用いて知的活動に邁進してきた。オッカムのかみそりは、対象を不必要に増やすべきではないという注意喚起であり、哲学や科学で使用され、多くの発見をもたらしてきた。人間の知的活動はその正当性にまでおよび、対象を不必要に増やすべきでない根拠を解き明かそうともしてきた。そして、20世紀の近代統計学の台頭により、その正当化の役割は統計学が担うことになる。本稿ではとくに統計的な検定理論に注目し、科学哲学の観点からその論理を分析し、心を想定しない研究プログラムは心を想定する研究プログラムよりもよいことを示す。そして、科学的方法論として、行動分析学がましであることを主張する。
著者
坪井 潤一 森田 健太郎 松石 隆
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.180-185, 2002-03-15 (Released:2008-02-01)
参考文献数
28
被引用文献数
14 15 9

北海道南部の4河川において,天然のイワナSalvelinus leucomaenisを用いて,キャッチアンドリリース後の成長,生残,釣られやすさを調べた。釣獲直後の死亡率は6.7%であり,過去の研究結果に近い値であった。一方,キャッチアンドリリースが行われた個体において,成長率や生残率の低下は認められなかった。また,釣られやすさは釣獲経験のある個体と無い個体で同程度であった。よってキャッチアンドリリースを行うことは資源量および釣獲量の増大に有効であることが示唆された。

14 0 0 0 OA ヒトの体温調節

著者
森本 武利
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.256-262, 2003-05-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
8
被引用文献数
1
著者
佐藤 悠子 藤森 研司 石川 光一 佐藤 一樹 石岡 千加史 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.156-165, 2016 (Released:2016-06-13)
参考文献数
20
被引用文献数
3 2

【目的】保険診療情報が格納されたナショナルデータベース(National Data Base,以下NDB)を用いた,終末期がん医療の質の評価の実現可能性と限界を検討した.【方法】NDBのサンプリングデータセット(Sampling Data Set,以下SDS)を用いて,2012年10月の死亡がん患者を対象に死亡14日以内の心肺蘇生術と化学療法の実施率を算出した.【結果】対象者1,233例を解析した.心肺蘇生術と化学療法の実施率は,入院死亡症例(n=1079)で8.2%,3.5%であった.SDSの仕様では,解析対象の化学療法薬剤の27-70%が匿名化されていた.【考察】SDSでは匿名化処理や入院と外来レセプトが紐付けされない等の問題から,過小評価の可能性があり結果の解釈に注意を要する.しかしながら,NDBの特別抽出であればこれらの問題の一部は解決でき,同様の手法で質の評価は可能と考えられた.
著者
佐賀 朝 松井 洋子 小野沢 あかね 人見 佐知子 横山 百合子 吉田 伸之 金 富子 吉田 ゆり子 塚田 孝 神田 由築 浅野 秀剛 米谷 博 杉森 哲也 初田 香成 松田 法子 本康 宏史 齊藤 俊江 松田 有紀子 屋久 健二 吉元 加奈美 武林 弘恵 ボツマン ダニエル
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、日本近世~近代における国内各地や植民地の遊廓の調査を進め、遊廓の開発や社会=空間構造を分析するとともに、一次史料を用いて、遊女屋・貸座敷の経営内部における女性たちへの抑圧と搾取の構造の解明も進めた。その結果、近世後期以降の遊廓の大衆化と全国的普及の過程で女性たちに対する搾取が強化される一方、明治維新に伴う公娼制度の改革を経て、女性たちが多様な手段を用いて搾取や暴力に直接・間接に抵抗し、それが遊廓社会の変容を促していくことも明らかになってきた。継続的な現地調査や研究会と研究者のネットワーク化、「遊廓・遊所研究データベース」の充実により、新しい遊廓研究が現れてきた点も重要な成果である。
著者
重森 雅嘉 佐藤 文紀 増田 貴之
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第9回大会
巻号頁・発行日
pp.48, 2011 (Released:2011-10-02)

一般的に多くの人に当てはまる事柄であっても、心理検査や占いの結果として提示すると、自分に特別な内容として受け取られやすい(バーナム効果)。この効果を注意や警告を強化するものとして用いることができれば、安全や教育においての有効な活用が期待できる。本研究では日常的な展望記憶課題(一連の実験セッションの最後にID札を返却する課題)を用い、展望記憶エラーに対する警告をおみくじのように被験者が選択することにより、同様の内容を実験者から与えられるよりも警告の効果が高まることを明らかにした。
著者
井森 萌子 常川 祐史 片岡 沙耶 伊藤 雅隆 大屋 藍子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.23-32, 2021-01-31 (Released:2021-05-18)
参考文献数
14

本研究は、先延ばし傾向のある大学生を対象に、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)が先延ばしに与える影響について、先延ばしの心理指標と行動指標の両側面から検討することを目的とした。対象者47名を60分のACTのプログラムを行う実験群、プログラムは行わない統制群に振り分けた後、先延ばしの行動指標として、7日間の課題達成率、先延ばしの心理指標として先延ばしを測定する質問紙への回答をプログラムの前後に求めた。同時に、ACTのプロセス指標であるFFMQとAAQ-IIも測定した。四つの指標の変化を分析した結果、実験群では課題達成率、先延ばし尺度がともに改善されたが、ACTのプロセス指標は変わらなかった。ACTに基づくプログラムが心理面、行動面ともに先延ばしの改善に効果的である一方、効果のメカニズムについては検討していく必要があることが示唆された。
著者
森川 洋
出版者
日本都市地理学会
雑誌
都市地理学 (ISSN:18809499)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.47-53, 2011-03-15 (Released:2020-12-31)
参考文献数
23

Da das Städtesystem eines Landes die aktuelle Situation seiner sozioökonomischen Entwicklung widerspiegelt, entsteht eine enge Beziehung zwischen beiden Seiten. Für eine gleichmäßige Entwicklung eines Landes ist ein Städtesystem des Typs „Rank-Size-Rule“ oder eine polyzentrische Struktur wie in Deutschland nützlicher und wertvoller als ein System des „Primate-City“-Typs. Sie spielen auch eine bedeutende Rolle in der heutigen Globalisierung, wo die Zentren der überregionalen Gebiete, und nicht mehr wie früher die Hauptstädte, das Netz der Städtesysteme untereinander knüpfen. Zudem ist es notwendig, dass – wie in Deutschland – die Unterzentren dicht verteilt und aktiv tätig sind, so dass sie die umliegenden ländlichen Regionen mit städtischen Dienstleistungen versorgen können.Viele Jahre lang war die gleichmäßige Entwicklung des ganzen Landes das wichtigste Ziel der japanischen Raumplanung, obwohl es nicht so klar ausgedrückt wurde wie das Ziel der gleichwertigen Lebensverhältnisse in Deutschland. Zwar hat man in Japan stets angestrebt, die unipolare Konzentration auf Tokyo zu reduzieren, allerdings haben die regionalen Disparitäten gar nicht abgenommen. So hat sich das Hauptkonzept der japanischen Raumordnung in letzter Zeit von der gleichmäßigen Entwicklung des ganzen Landes zur individuellen Entwicklung einzelner Gebiete verändert. Ich meine dagegen, dass am Ziel der gleichmäßigen Entwicklung des Landes festgehalten werden soll, und dass die entsprechenden Maßnahmen für das japanische Städtesystem durchgeführt werden sollen.