著者
森 雅紀 森田 達也
出版者
聖隷クリストファー大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

死亡直前期の患者が「今日亡くなる・今日は大丈夫である」ことの予測は重要である。本研究の目的は、1日以内の死亡を予測するモデルを開発・検証することである。国内23施設の緩和ケア病棟に入院したがん患者1896名の登録を行い、Palliative Performance Scale(PPS)≦20となった1396名の死亡直前期兆候を毎日取得した。再帰分割分析により予測モデルを開発し、交差検証を行った。1日以内の死亡率の最終モデルは、【尿量低下・下顎呼吸あり】(69%)、【尿量低下あり・下顎呼吸なし】(32%)、【尿量低下なし・意識低下あり】(15%)、【尿量低下・意識低下なし】(6%)だった。
著者
西森 早紀子
出版者
総合研究大学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2023-04-25

T2K実験でニュートリノ振動を精密に測定することで、物質優性宇宙の謎を解明する鍵となるレプトンにおけるCP対称性の破れの検証を行う。現在2σ以上の信頼度でCP対称性の破れを示唆しているが、今後統計数を確保することで統計誤差が改善される。本研究では、ニュートリノビーム生成過程のニュートリノフラックス不定性の最も大きな要因であるハドロン生成の精密測定を、スイスにあるCERN NA61実験により行い、ニュートリノ振動が最大となるエネルギー領域でのニュートリノフラックス不定性を改善させる。これによりニュートリノ振動解析の系統誤差を削減し、レプトンにおけるCP対称性の破れの発見に繋げる。
著者
梅﨑 さゆり 吉田 雅行 森 祐貴 来田 宣幸
出版者
日本コーチング学会
雑誌
コーチング学研究 (ISSN:21851646)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.125-137, 2021-03-20 (Released:2021-05-27)
参考文献数
33

The purpose of this study was to clarify visual search behavior and decision time in continuous decision tasks of the toss direction and spike course in volleyball. Volleyball players, ball game players, and non-ball game players (10 in each group) wearing eye-movement trackers watched video images of combination attacks from three directions and made decision about whether the toss direction was left or right and the spike course was straight or cross. The results revealed the following:     1) In comparison to ball game and non-ball game players, volleyball players had a faster decision time for toss direction and the spike course. Furthermore, volleyball players made excellent decision-making even in situations involving continuous decisions.     2) Volleyball players have quiet eye characteristics. In other words, they gaze for long periods at the body, including the face, and torso of players, including setters and spikers who pass the ball.     3) It was revealed that after deciding the toss direction, volleyball players quickly glance at the spiker before the spiker steps in with both his feet and decide the spike course from the opponentʼs upper-body turn or arm swing.
著者
羅 成圭 崔 英珠 赤澤 暢彦 大森 肇 前田 清司
出版者
国際タウリン研究会
雑誌
タウリンリサーチ (ISSN:21896232)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.40-42, 2016 (Released:2019-11-11)

本稿では、健常者における経口タウリン摂取が血 管内皮機能に及ぼす効果を、安静時および運動時に 分けて概説する。我々はまず、2週間の経口タウリ ン摂取(6 g/day)は、健常者の血管内皮機能を僅か ながら、有意に向上させることが初めて見出した。 次に、運動誘発性血管内皮機能の低下に対するタウ リン摂取の効果を検証したものの、2週間のタウリ ン摂取(6 g/day)では高強度レジスタンス運動によ る血管内皮機能の低下を抑制できないことが明ら かになった。本稿で示すこれらの結果は、少なくと も安静時においては、健常者においてもタウリン製 剤、もしくはタウリンを多く含む魚介類や海藻類の 摂取は血管内皮機能を良好に保つために有効であ ることを示していると考える。
著者
吉森 容子
出版者
一般社団法人 日本学校保健学会
雑誌
学校保健研究 (ISSN:03869598)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.166-178, 2018-08-20 (Released:2019-12-20)
参考文献数
27

Background: Adolescent sex education is important from the viewpoint of health education. In addition, the sexual behavior of children is diverse, and various forms of sex education exist.Objective: The objective of this study was to shed light on the meaning of the inner world of third-year junior high school students who attend sex education classes.Methods: The sample comprised five third-year junior high school students who attended classes in the author’s sex education program. The data were derived from semi-structured interviews and were analyzed with reference to Giorgi’s phenomenological methodology.Results: The following four points became clinically evident through our sex education program. First, the students became aware that they stand on the threshold connecting their own past events with their futures. Second, the students associated photographs of childbirth with their personal concerns. Third, the students re-evaluated their knowledge of sex and sexual experiences. Fourth, the students discussed their concerns about whether they would contract sexually transmitted infections (STI) ; however, they thought they would be the exception to the rule.Conclusion: The students associated their learnings from our sex education program with their past events and present concerns in chronological order. Through the process of integrating new knowledge based on our sex education program, the students were aware of the relationship between the content of our program and their personal lives. Our sex education classes provide the students with self-affirmation and prepare them for their future. However, our program did not have an effect on guarding against STI. Further studies should be pursued to plan sex education programs that promote safe sexual behaviors.
著者
森本 裕也
出版者
原子衝突学会
雑誌
原子衝突学会誌しょうとつ (ISSN:24361070)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.125-141, 2021 (Released:2021-11-15)
参考文献数
62

アト秒レーザーの開発により,物質内の電子の動きを実時間で計測することが可能となった.しかし,波長の制限によって,原子レベルの空間分解能でのアト秒計測は未だ困難である.本稿では,電子線が有する高い空間分解能に,アト秒の時間分解能を与える,アト秒電子線制御技術を解説する.特に,光電場による電子線の時間圧縮と,光周期ストリークによる電子パルスの時間形状測定を詳説する.アト秒電子パルスは,化学反応や原子衝突過程の超高速イメージングへの応用が期待される.
著者
安森 偉郎
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

半導体デバイスの製作実習は、半導体製造装置やドラフトチャンバ等の設備が完備された環境でないと学生実験実習は困難となる。そこで、これらの半導体製造装置等をほとんど備えていなくても、通常の実験室のような環境において製作実習を実施する方法について研究してきた。その結果,半導体製造装置やフッ酸などを使わないシリコン太陽電池の製作方法を考案した。本研究では製作条件と太陽電池の性能との関係について調べ,最適な製作条件を見出す予定である。また、製作方法を改良し更に簡単にシリコン太陽電池が製作できる方法を確立する。
著者
加藤 みゆき 田村 朝子 水落 由美子 大森 正司 難波 敦子 宮川 金二郎
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.561-565, 1993-07-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
12
被引用文献数
4

後発酵茶の一種である阿波番茶についてその製造工程中の成分の変化について検討した.浸出液の色については, 製造工程が進むにつれて380nmの比色値は高くなりポリフェノール含量も増加の傾向を示した.しかしカテキン含量は製造工程が進むに従って減少していた.呈味成分であるアミノ酸は, 阿波番茶では減少していた.有機酸としては修酸, クエン酸, 乳酸, 酢酸等が認められた.カフェイン含量についてはあまり変化は認められなかった.
著者
金 貞姫 菊地 良介 鈴木 敦夫 度會 理佳 横山 覚 森瀬 昌宏 八木 哲也 松下 正
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.554-561, 2020-10-25 (Released:2020-10-29)
参考文献数
5
被引用文献数
3

新型コロナウイルス感染症に対する抗体検査試薬は,SARS-CoV-2のnucleocapsid protein(N)あるいはspike protein S1 domain(S)を抗原として用いた2種類に大別される。本研究では,抗SARS-CoV-2抗体検査について,5社7種類のイムノクロマト法キットと3社4種類の自動分析装置用試薬による比較検討を行った。対象のイムノクロマト法キットとして,Kurabo社,RayBiotech社,Innovita Biological Technology社,LumiQuick Diagnostics社およびLepu Medical Technology社のキットを使用した。自動分析装置用試薬はAbbot社,Roche Diagnostics社,Ortho-Clinical Diagnostics社の測定試薬を用いた。対象試料には,COVID-19と診断された患者2例の検査後残血清を使用した。その結果,N 蛋白を抗原とした抗SARS-CoV-2抗体検査試薬ではIgG抗体はIgM抗体に比して早期に陽性を示し,S 蛋白を抗原とした抗SARS-CoV-2抗体検査試薬はIgM,IgG抗体両方が感染早期より検出可能であった。以上より,COVID-19のスクリーニング検査としてはS蛋白を標的とした抗SARS-CoV-2抗体検査試薬が有用である可能性が示唆された。
著者
小森 國寿 大塚 泰正
出版者
一般社団法人 日本産業精神保健学会
雑誌
産業精神保健 (ISSN:13402862)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.156-165, 2023-09-20 (Released:2023-09-20)
参考文献数
45

トラウマ体験をした後に経験されるポジティブな心理的変容である心的外傷後成長(Posttraumatic Growth: PTG)は,トラウマ体験で崩れた世界観を書き換える認知プロセスの副産物として得られる.この認知プロセスの促進要因は,当事者の社会的状況との組み合わせにより理解・解釈され,新たな認知的枠組みに組み込まれるため,軍人等においても独自の特徴があると考えられる.軍人等のPTGの促進要因に関する17件の文献を整理した結果,属性,苦痛・症状,ポジティブな文脈,個人の内面的性質およびネガティブな文脈の5つがPTGの促進要因となることが示唆された.軍人等のPTGを促進するためには,軍隊等における価値観を理解しようとする環境を整えて自発的な自己開示を促したり,逆境に意味を見出そうとする資源を増やしたりすることが有効である可能性が示唆された.
著者
吉田 省造 岡田 英志 土井 智章 中島 靖浩 鈴木 浩大 田中 卓 福田 哲也 北川 雄一郎 安田 立 水野 洋佑 宮﨑 渚 森下 健太郎 牛越 博昭 竹村 元三 白井 邦博 豊田 泉 小倉 真治
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.129-135, 2015 (Released:2015-02-28)
参考文献数
24

症例は50歳代の男性, キノコ狩りに行きキノコを焼いて食べた翌日に下痢・嘔吐などの消化器症状を自覚し近医を受診. 血液検査にて肝逸脱酵素上昇を認め入院となった. 翌日の採血で肝逸脱酵素の著明な上昇 (AST 5,000台, ALT 5,000台) を認め, 当院に搬送となった. 問診によりドクツルタケ摂取による肝障害を疑った. 入院当日より肝性脳症を認め, 昏睡型急性肝不全と診断. 挿管・人工呼吸管理として, 肝不全治療と同時に毒素除去, 高分子除去を目的として急性血液浄化療法を行った. 入院5日後に肝性脳症は改善し呼吸状態は良好で抜管, 経過良好にて入院9日後に転院となった. ドクツルタケ中毒における血液浄化療法は否定的な意見が多いが, 今回は肝不全を呈したドクツルタケ中毒に対し, 血液浄化療法を行い救命し得た. ドクツルタケの中毒を疑った場合には, 早急な血液浄化療法が有効である可能性が高いと考えられた.
著者
森 俊子 岡崎 哲也 蜂須賀 研二
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.281-286, 2013-07-25 (Released:2013-07-25)
参考文献数
8

要旨:前脳基底部健忘は,重度の前向性および逆向性健忘・人格変化を伴う作話・見当識障害・病識の欠如を特徴とする.今回経験した3症例では,前脳基底部に損傷が比較的限局した症例では,作話や記憶障害を認めたが遂行機能障害はなく,人格変化は比較的軽度で薬物により症状は改善した.一方前脳基底部を含めて前頭葉にまで病変が広がっている場合,遂行機能障害の合併,多動や多幸感などの人格変化,作話の持続が長い傾向があった.健忘の重症度やリハビリの効果においては両者で大きな違いはなく,エピソード記憶の改善は少なかったが,スケジュールノートを利用した反復訓練により日課的な日常生活は支障なく可能となった.
著者
名和 弘幸 山内 香代子 栁瀬 博 岡本 卓真 松野 智子 荒木 麻美 堀部 森崇 藤井 美樹 外山 敬久 藤原 琢也 後藤 滋巳 福田 理
出版者
一般社団法人 日本障害者歯科学会
雑誌
日本障害者歯科学会雑誌 (ISSN:09131663)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.426-431, 2016 (Released:2017-06-30)
参考文献数
14

上顎第二乳臼歯の晩期残存と上顎第二小臼歯の異所萌出,上顎前突を呈する11歳9カ月の自閉スペクトラム症男児の治療について報告する.患者の発達指数は,遠城寺式・乳幼児分析発達検査においてDQ:59で,歯科治療に対する協力性は比較的良好であった.患児は5歳11カ月から医療福祉センターの歯科にて,歯科治療への適応向上のために定期的な口腔衛生管理を受けていた.最初の治療計画として,口腔衛生管理のため上顎第二小臼歯を正しい位置へ移動することとした.初期治療が問題なく完了し,患者が矯正歯科治療を希望した場合,上顎前突の治療のために矯正歯科を紹介する予定とした.スプリントを作製し,患者が口腔内に装置を装着できるかどうか確認するため,自宅で装着するように指示した.3カ月後,スプリントの着用時間が長くなったので,固定式矯正装置を作製し口腔内に装着した.7カ月後,上顎第二小臼歯は歯列に移動して,口腔衛生管理が行いやすくなったので,装置を取り外した.咬合誘導は良好な結果であり,患者と両親は上顎前突の改善も希望したので,矯正歯科へ依頼をした.矯正歯科受診時の患者の暦年齢および精神年齢は13歳0カ月と7歳8カ月であった.この症例報告より歯科治療への適応向上ができた自閉スペクトラム症児は,矯正歯科治療を始められる可能性が示唆された.
著者
真野 隆司 水田 泰徳 森口 卓哉
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.219-225, 2012 (Released:2012-07-15)
参考文献数
19
被引用文献数
1 2

樹勢の異なるイチジク(Ficus carica L.,‘桝井ドーフィン’)に対し,不織布マルチの被覆とかん水が樹体の生育と果実品質に与える影響を検討した.不織布マルチは着色良好で糖度の高いイチジクを生産できるものの,いや地条件下やかん水量の少ない樹勢の弱いイチジクに対して行うと,一層樹勢を弱め,小玉果や変形果の発生を助長した.一方,密植栽培で樹勢の強いイチジクに対して不織布マルチをする場合,pF 2.5程度を維持できれば,密植樹の樹勢を抑制でき,収穫時期も早まるとともに果実品質も向上することが明らかになった.
著者
鈴木 秀明 森 貴稔 大淵 豊明 寳地 信介 田畑 貴久 池嵜 祥司 橋田 光一
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.238-243, 2011 (Released:2013-05-24)
参考文献数
15
被引用文献数
2

突発性難聴に対するステロイド鼓室内注入療法 (IT) の効果を、高気圧酸素療法 (HBO) と比較して検討した。対象は治療開始までが30日以内で初診時聴力が40 dB以上の突発性難聴患者240例で、全例においてステロイド全身投与を行い、これに加えて174例に対しHBOを (HBO群)、66例に対しITを (IT群) 併用した。聴力回復の評価は、厚生省研究班の診断基準に基づいた治癒率、著効率、有効率、および聴力改善率、治療後聴力レベル、聴力利得の計6指標について行った。その結果、症例全体の有効率は、HBO群に比べてIT群で有意に高く (81.8% vs. 68.4%、p=0.039)、多重ロジスティック回帰分析でも同様の結果が確認された。めまい (-) の場合および治療開始までが7日以内の場合の有効率もIT群において有意に高かった。以上より、HBOと比較してITのほうが突発性難聴に対してより有効であることが示された。
著者
川又 華代 金森 悟 甲斐 裕子 楠本 真理 佐藤 さとみ 陣内 裕成
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.260-267, 2023-09-20 (Released:2023-09-25)
参考文献数
16

目的:身体活動の効果のエビデンスは集積されているが,事業場では身体活動促進事業は十分に行われておらず,「エビデンス・プラクティスギャップ」が存在する.このギャップを埋めるために,本研究では,わが国の事業場における身体活動促進事業に関連する組織要因を明らかにすることを目的とした.対象と方法:全国の上場企業(従業員数50人以上)3,266社を対象に,郵送法による自記式質問紙調査を行った.調査項目は,身体活動促進事業の有無,組織要因29項目とした.組織要因は,事業場の健康管理担当者へのインタビューから抽出し,実装研究のためのフレームワークCFIR(the Consolidated Framework For Implementation Research)に沿って概念整理を行った.目的変数を身体活動促進事業の有無,説明変数を組織要因該当総数の各四分位群(Q1~Q4),共変量を事業場の基本属性とした多重ロジスティック回帰分析を行った.最後に,各組織要因の該当率と身体活動促進事業の有無との関連について多重ロジスティック回帰分析を行った.結果:解析対象となった事業所は301社であり,98社(32.6%)が身体活動促進事業を行っていた.Q1を基準とした各群の身体活動促進事業の調整オッズ比は,Q2で1.88(0.62–5.70),Q3で3.38(1.21–9.43),Q4で29.69(9.95–88.59)であった(傾向p値 < .001).各組織要因と身体活動促進事業との関連については,CFIRの構成概念のうち「内的セッティング」に高オッズ比の項目が多く,上位から「身体活動促進事業の前例がある」12.50(6.42–24.34),「健康管理部門の予算がある」10.36(5.24–20.47),「健康管理部門責任者の理解」8.41(4.43–15.99)「職場管理者の理解」7.63(4.16–14.02),「従業員からの要望」7.31(3.42–15.64)であった.考察と結論:組織要因該当数と身体活動促進事業の有無に量反応関連が認められ,組織要因の拡充が身体活動促進事業につながる可能性が示唆された.特に,社内の風土づくりや関係者の理解の促進が有用であると推察された.
著者
杉下 由行 林 邦彦 森 亨 堀口 逸子 丸井 英二
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.127-133, 2012-03-20 (Released:2013-04-12)
参考文献数
16

【目的】我が国では,結核予防対策の一環として BCG 接種が実施されている.これは他の予防接種と同様に市町村単位で実施され,その接種体制は各自治体で異なっている.本研究の目的は,BCG 接種体制の違いによるBCG 接種率への影響を明らかにすることである.【対象と方法】対象地域は東京都多摩地区の30 市町村とした.市町村の BCG 接種体制を5 つのグループに分類し,生後6 カ月に達するまでの BCG 累積接種率をグループ間で比較した.解析は,従属変数を生後6 カ月に達するまでの BCG 接種の有無,独立変数をBCG 接種体制とし,BCG 接種体制以外の BCG 接種に関係すると考えられる市町村特性を共変量として独立変数に加え,多変量ロジスティック回帰分析を行った.因子評価はオッズ比を用い 95% 信頼区間で検定した.【結果】調整オッズ比から,5 つのグループにおいて,乳児健診併用で毎月実施の集団接種を基準とした場合,BCG 未接種者の人数は,単独(乳児健診非併用)で毎月実施の集団接種 (adj. OR : 4.01 CI : 2.24~7.11),単独で隔月実施の集団接種 (adj. OR : 15.59 CI : 10.10~24.49),個別接種 (adj. OR : 15.61 CI : 9.05~27.26),単独で隔月未満実施の集団接種 (adj. OR : 48.17 CI : 29.62~79.75) の順に多くなる傾向にあった.【結論】BCG 接種体制が BCG 累積接種率に影響していた.集団接種での乳児健診併用や高い実施頻度の確保が BCG 接種率向上に役立つと考えられた.