著者
吉岡 基 幸島 司郎 天野 雅男 天野 雅男 荒井 一利 内田 詮三 大谷 誠司 小木 万布 酒井 麻衣 白木原 美紀 関口 雄祐 早野 あづさ 森 恭一 森阪 匡通
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ミナミハンドウイルカの保全のために必要な基礎情報を得るため,分布や移動経路の把握,地域個体群間の関係に関する検討,行動解析,繁殖生理値の収集を行った.その結果,(1)伊豆鳥島周辺に本種が分布し,その個体群は小笠原や御蔵島の個体群との間に関係を有すること,(2)奄美大島での調査により,本種が同島周辺を生活圏とすること,(3)御蔵島個体群の社会行動の分析から,その頻度が性や成長段階によって異なること,(4)飼育個体の性ホルモン分析から,オスの精子形成は春~秋により活発になることなどが明らかになった.
著者
小林 俊行 大島 利雄 関口 英子 寺田 至
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

表現の分岐則は、空間の対称性の破れを記述する数学理論である。本研究では、無限次元表現の分岐則の理論を指導原理の一つとし、幾何構造の対称性を用いた大域解析の基礎理論を推進した。特に、擬リーマン空間形における共形反転変換に対応し、二次錐上のフーリエ変換という概念を導入し、D型単純リー群の極小表現のシュレーディンガーモデルの理論を確立した。また、複素多様体における可視的作用という独自のアイディアを用いて「無重複表現」の基礎理論を推進した。
著者
関口 翔太
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

細胞質一核間の物質輸送は、核膜に存在する多数の孔(核膜孔)を通して行われている。この核膜孔は、細胞膜と共に遺伝子導入における障壁として存在し、このために効率的な遺伝子発現が行えないことが知られている。したがって、細胞膜や核膜孔を効率的に通過するマテリアルの作製及びその通過メカニズムの解明は、遺伝子導入における重要課題とされている。本研究は、これまで申請者が作製してきたナノ微粒子をツールとして、細胞膜や核膜孔を通過するマテリアルを作製し、それらの通過メカニズムを解明することが目的である。研究計画にしたがって、目的であるナノ粒子の核移行性の付与とそのメカニズム解明を達成することが出来た。本年度は更に、遺伝子導入におけるもう一つの障壁である細胞膜を通過するマテリアルの作製を行った。細胞膜は脂質二分子膜で構成されており、その内部が疎水性空間になっていることが知られている。しかしながら、ナノ粒子は一般に親水性であるため、この膜を通過することができない。そこでナノ粒子に、親水性、疎水性の双方に親和性のある両親媒性を付与することで膜の通過が可能になると考えた。作製した両親媒性ナノ粒子は、細胞膜のモデルとして知られているリボソームを、膜陥入によって通過することが分かった。この現象は実際の細胞膜でも観察され、両親媒性ナノ粒子は細胞内に効率的に取り込まれることが分かった。この粒子の細胞膜通過性とこれまでの成果である粒子の核移行性を合わせることができれば、遺伝子導入や核酸医薬へ応用する上で有用な手段となる。この成果は、現在論文としてChemical Communications誌に投稿中である。(S. Sekiguchi et al., Chem. Commun. 2013, in submission)
著者
尾関 高行 中垣 隆雄
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.76, no.763, pp.406-408, 2010-03-25

Electrochemical partial oxidation (EPOx) of methane can convert exhaust heat into electricity as much as difference between change of Gibbs free energy and change of enthalpy. In this paper, we considered 30kW power generation system combined Micro Gas Turbine and the Partial Oxdation Solid Oxide Fuel Cell using Gadolinium Doped Ceria as the electrolyte that has high oxide ion conductivity below 600℃. The cylindrical-shaped POSOFC is operated at 572℃ recovering turbine exhaust heat of 593℃ and accompanying production of hydrogen and carbon monoxide. According to the result of process simulation coupling with SOFC simulation including detailed polarization models, only addition of 16 liter POSOFC can increases the power generation efficiency by 8.5 points at fuel utilization of 80.1%.
著者
原 光生 福本 晴彦 溝下 倫大 永野 修作 関 隆広
出版者
日本液晶学会
雑誌
日本液晶学会討論会講演予稿集
巻号頁・発行日
no.2005, pp.327-328, 2005-09-05

We prepared silica films hybridized with a chromonic lyotropic liquid crystal, C. I. Direct Blue (B67), by spin-coating. The hybrid films with 2-(2-aminoethoxy) ethanol (AEE) had ordered structures templated by the columnar assemblies of B67. Such structure of the hybrid films was not observed without AEE. Moreover, we studied the hybrid films by dip-coating. As a result, the hybrid films possessed preferred orientation. The columnar assemblies of B67 were aligned to parallel to dipping direction.
著者
井関 正久
出版者
中央大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

平成17年度は、平成15-16年度に「地球の友・インターナショナル」アムステルダム本部、「地球の友・ヨーロッパ」ブリュッセル本部、ドイツ環境自然保護連盟BUND(「地球の友・ドイツ」)のベルリン連邦本部、ハンブルク州支部、リューベック地区支部、そしてウィーンの「グローバル2000」(「地球の友・オーストリア」)で収集した一次資料、および各団体の活動家や職員に対して行なったインタヴューを、昨年度から引き続いて整理・分析し、論文執筆に取り組んだ。そして、上述した「地球の友」とその加入団体を事例に、欧州におけるNGOの国際ネットワークの形成過程とその国際政治への影響に重点を置いて、実証的な論文を作成した。論文執筆の際、NGOを含む市民運動・社会運動全般、そしてそれを取り巻く国際関係について考察し、さらに理論的に吟味するために、政治学・社会学・歴史学等に関するさまざまな和書・洋書を購入した。それとともに、上述の各団体の現状について追加調査するため、インターネットを駆使して、各NGOのニュースレターや活動報告をはじめとする最新資料も収集した。このため、図書やコンピューター機器類・消耗品類といった物品購入費が、今年度の主要経費となった。研究成果をまとめた論文は、「欧州における環境NGOの国際連携-『地球の友』およびその加入団体を事例に」という題目で、日本国際政治学会編の政治学雑誌である『国際政治』に投稿し、論文は当雑誌の第142号に掲載された。さらに、平成18年3月20日、中央大学ドイツ学会研究会にて、「ドイツ環境NGOの国際連携プロセス」という題目で研究発表を行ない、とくにドイツの事例に焦点を当ながら、研究成果の一部について報告した。
著者
小関 悠 角 康之 西田 豊明 間瀬 健二
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.41-50, 2007-07-26
被引用文献数
2

本稿では研究発表会や博物館見学といったイベント空間において取得可能な体験データを,ユーザーが閲覧・編集するためのシステムを提案・実装する.種々のカメラやセンサー機器の発達により大量の取得が可能となった体験データを,ユーザーの扱いやすい形にすることで,その編集や共有を促すことが狙いである.システムは大きく二つの部分に分けられる.一つは体験データを自動的に要約してユーザーに提示するシステムであり,特にセンサー情報を用いることで映像データを「ぱらぱらアニメ」,すなわち,シーンを表現する複数枚の特徴的なスナップショットのセットへと変換する手法について述べる.もう一つは要約された体験データの鑑賞・編集システムであり,こちらでは「ぱらぱらアニメ」の特性を生かし漫画的なレイアウトを組むことで体験データを好みの観点で観賞・編集が出来ることを中心に述べる.本システムは体験データの閲覧や編集へのアクセシビリティを高めるため,Webアプリケーションとして実装した.
著者
加藤 哲郎 田中 ひかる 丹野 清人 堀江 孝司 小野 一 岡本 和彦 井関 正久 大中 一彌 高橋 善隆 鳥山 淳 島田 顕 許 寿童
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、研究代表者が長年進めてきた現代国家論研究と近年取り組んでいる情報政治研究の結節点で、経済のグローバル化と共に進行する国内政治の国際政治化、国際政治の地球政治化を解析した。モノ・カネ・ヒトが国境を越える「帝国」型グローバル政治の形成と、そのもとで進行する民衆の移動・越境・脱国家化の動きに注目し、既存の概念の変容と新しい課題を実証的な国際比較と歴史的・思想的系譜から考察した。
著者
中沢 正幸 向井 理朗 関 進 綿貫 啓子 三吉 秀夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.15, pp.35-35, 2000-02-04

In this paper we describe a multimodal human interface system MAICO (Multimodal Agent Interface for COmmunication) based on Dynamical Dialogue Model. This system not only integrates information of a speech processing and a gesture processing but also controls the response timing in order to realize a smoothness and a easy interaction between a user and a computer. Our approach consists of human-human dialogue analysis and computational modeling of dialogue.In this paper, we describe a multimodal human interface system, MAICO (Multimodal Agent Interface for COmmunication), based on Dynamical Dialogue Model. This system not only integrates information of a speech processing and a gesture processing, but also controls the response timing in order to realize a smoothness and a easy interaction between a user and a computer. Our approach consists of human-human dialogue analysis, and computational modeling of dialogue.
著者
松浦 正孝 山室 信一 浜 由樹子 土屋 光芳 中島 岳志 高橋 正樹 宮城 大蔵 WOLFF David 大庭 三枝 吉澤 誠一郎 姜 東局 大賀 哲 酒井 哲哉 後藤 乾一 都丸 潤子 関根 政美 矢口 祐人 高原 明生 遠藤 乾 松本 佐保
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、アジア各地における多様なアジア主義のビジョンと構造を解明し相互比較すると共に、アジア主義ネットワークの生成過程を解明した。方法としては、国内外から選ばれた各地域の専門研究者と各事例を議論することで、アジア主義に共通の構造と地域それぞれに固有の特徴とを明らかにした。そうすることで、各地域におけるアジア主義を相対化して民族中心的なバイアスから解放し、アジアにおける共同体の可能性と条件、各民族・国家の共生の可能性を探ろうとした。
著者
高村 昇 青柳 潔 関根 一郎
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1986年のチェルノブイリ原子力発電所の事故からすでに20年余りが経過したが、事故当時小児であった群は現在思春期から成人期へとシフトしてきており、現在この年齢層における甲状腺がんの発生が大きな問題となっている。一方で汚染地域の中で最も甲状腺がんの増加が見られたベラルーシ共和国は、旧ソ連邦時代の経済的混乱から抜け出しつつあるものの、地方ではまだまだ医療インフラの立ち遅れが見られ、その影響は医療・医学教育の分野にも深刻な影響を及ぼしている。本申請では、長崎大学と学術交流協定を締結しているベラルーシ共和国のゴメリ医科大学との共同事業による遠隔医療・教育ネットワークシステムのための準備を行った。具体的には平成17年6月に研究代表者がベラルーシ共和国を訪問し、ゴメリ医科大学の担当者と協議の上、ゴメリ州内における医療機関との調整を行い、ベラルーシ共和国ゴメリ州のホイニキ地区病院における、無線LANを用いたネットワーク構築の準備を開始した。本プロジェクトについては、ベラルーシ共和国日本大使館とも協議して、草の根無償協力でのプロジェクト形成を行うことにした。今後、ホイニキ地区病院とゴメリ医科大学関連病院との遠隔医療システムをモデルとして、他の地区病院とゴメリ医科大学との間にも同様のネットワークを形成し、早期診断、早期治療に役立てる予定である。さらに、遠隔講義システムの構築についても協議を行い、その結果として平成17年に長崎からゴメリ医科大学に対しての遠隔講義を開始することができた。すでに数回にわたって、インターネットを用いた遠隔講義を行い、大きなインパクトを与えることができた。遠隔講義はベラルーシにおいて大きくマスコミにも取り上げられ、研究代表者がゴメリ医科大学の名誉教授を授与されるなど、医学教育の分野における大学間連携の推進に大きく寄与した。
著者
森 和郷 小森 昭人 平沢 峻 倉増 敏男 横山 幸生 川瀬 哲彦 尾関 良隆 橋本 正淑
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.15, no.13, pp.1231-1236, 1963-11-01

昭和35年6月1日より昭和36年9月19日迄の約1年2ヵ月の間に, 札幌医科大学産婦人科外来に於て腟鏡診を中心として行った子宮頚癌の早期診断の結果について報告した. 対象患者は外来診察に於いて既に子宮口糜爛を有する者及び癌の精密検査を希望するもの2000例である. 検査方法は腟鏡診及び細胞診を行い, 腟鏡診にて必要を認めたものに照準切除診を行った. 腟鏡診に使用した機械はMollerの双眼コルポスコープである. 加工腟鏡診として錯酸診, 沃度診及びアドレナリン診を附加した, 判定規準は大凡Hinselmannの分類に従ったが, 一部改変した. 細胞診はPapanicolaouの原法に従い且判定規準も同氏のものを用いた. 組織診はHaematoxylin 染色, 必要に応じてVan Gieson染色を行い, 判定はMullerの分類に従った. 1) 検診患者の年令的分布は, 腟鏡診異常所見群のピークは36〜40才に, 癌性潰瘍群のピークは46〜50才であった. この両者の年代的差異は異常所見からの悪性化の年次的関係を暗示させるものと思われる. 2) 受診患者の自覚症状は不正出血38.5%で第1位, 順次帯下25.9%, 接触出血12.5%, 無症状14.3%, 腰痛5.9%, 月経異常2.8%となり, 接触出血を含めた性器出血が大半を占める. 又無症状のものから6.8%に腟鏡診的異常所見が発見された. 3) 腟鏡診所見の頻度については, 良性所見は全体の84.7%に見られ(転位帯25.9%, 変換帯38.5%, ポリープ5.1%, 腟炎6.0%, 真性糜爛9.1%), 異常所見は全体の15.2%に見られた. (白斑1.9%, 基底2.0%, 分野1.5%, 異型変換帯1.1%, 異型血管5.0%, 癌性潰瘍3.4%). 4) 肉眼的癌又は癌を疑わしめた140例中, 腟鏡診では119例に癌と診断したが, 組織診では117例に侵入癌があった. 即ち肉眼的に23例, 腟鏡診では2例の誤診があった. 5) 腟鏡診と細胞診との比較に於て, 腟鏡診のみで癌と診断したもの94.8%, 細胞診のみで癌と診断したもの97.4%であった. 両者を併用すると100%近い診断率が得られた. 6) 腟鏡診と組織診との関係を腟鏡診的癌母地と見做される所見について観察すると次の如くであった. 即ち白斑50例中侵入癌2例, 異型上皮4例, 基底66例中癌6例, 上皮内癌4例, 異型上皮5例, 分野50例中侵入癌2例, 上皮内癌3例, 異型上皮8例, 異型変換帯63例中上皮内癌2例, 異型上皮3例, 異型血管89例中侵入癌37例, 上皮内癌2例, 異型上皮5例を夫々組織学的に確診した. 又変換帯979例中30例0不穏上皮異型上皮11例が見られたことは注目に値する. 7) 腟鏡診に於ける血管像は特に観察した1433例中異型血管301例(21.0%)が見られた. これらを組織診にて検するに侵入癌78例, 上皮内癌6例が見出され, 悪性率27.9%であった. 以上の観点により, 腟鏡診は子宮頚癌の早期診断への補助診として, 細胞診及び組織診との併用が望ましいと思われる.
著者
関口 達彦 川畑 秀明
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.6, pp.1017-1024, 2011-06-01

脳活動の計測手法と解析手法の発展により,Brain-Machine Interfaceのように脳活動から情報を取り出す技術の研究が盛んである.本論文ではその手法を対象物に対する「選好」の推定に適用し,商品(腕時計)のデザインを脳活動から評価する可能性について検討を行った.機能的核磁気共鳴撮像法(fMRI)によって計測した全脳の活動信号データを対象として,提示された個々の腕時計の画像に対する被験者の選好(好き嫌い)を推定したところ,「好き/嫌い」の2択で74.4%,「好き/どちらでもない/嫌い」の3択で54.2%とチャンスレベルよりも統計的に優位に高い正解率で選好を推定できた.以上のことから,脳活動を用いて商品のデザインに対する選好の推定が可能であることが示された.この結果から,選好評価に応じた脳活動部位の解析の信頼性について検証する方法を提示するとともに,アンケート調査結果の信頼性を明らかにするものとして脳活動の多変量パターン解析が有効であることを議論する.
著者
五月女 格 鈴木 啓太郎 小関 成樹 坂本 晋子 竹中 真紀子 小笠原 幸雄 名達 義剛 五十部 誠一郎
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.451-458, 2006-09-15
参考文献数
21
被引用文献数
14 14

115℃のアクアガス,115℃過熱水蒸気ならびに100℃の熱水にてジャガイモの加熱処理を行った.加熱媒体からジャガイモへの熱伝達率を測定した結果,アクアガスの熱伝達率が最も高かったが,加熱処理中のジャガイモ中心部の温度履歴に加熱媒体間の差は見られなかった.また加熱処理によるジャガイモ中のペルオキシダーゼ失活の進行にも加熱媒体間の差は見られなかった.この原因は,いずれの加熱媒体による加熱処理においてもジャガイモ表面における熱伝達は十分に大きく,ジャガイモ内部温度変化はジャガイモ自身の熱拡散係数に律速されていたためであったことが,ジャガイモ内部における熱伝導シミュレーションの結果から確認された.<BR>また,それぞれの加熱媒体により加熱処理されたジャガイモの品質を比較した結果,アクアガスならびに過熱水蒸気により加熱処理されたジャガイモが熱水にて処理されたジャガイモと比較して,硬さも保たれ色彩も良好であった.走査型電子顕微鏡によるジャガイモ微細構造の観察結果,熱水により加熱処理されたジャガイモにおいては熱水への固形成分の溶出が推察された.このことから固形成分の溶出の有無が加熱処理されたジャガイモの品質に影響を及ぼしたと考えられた.またアクアガスによる加熱処理では過熱水蒸気処理と比較して質量減少を抑制することができた.更に,アクアガス処理によりジャガイモ表面に塗布した<I>B. subtilis</I>胞子を死滅させることが可能であった.<BR>以上のことからアクアガスを用いることにより,熱水による加熱処理と比較して良好な品質にて,また過熱水蒸気処理と比較して小さな質量減少にて,ジャガイモのブランチングを行うことが可能であると結論付けられた.またアクアガスを用いて加熱処理されたジャガイモを無菌状態にて保存することにより,高品質なジャガイモの長期間貯蔵が可能になると期待された.今後はジャガイモの酵素失活に必要な加熱温度条件等を詳細に検討し,アクアガスにより加熱処理されたジャガイモの貯蔵性ならびに貯蔵されたジャガイモの品質変化について解明していく予定である.