著者
原田 悠紀 青木 久
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2018年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.000213, 2018 (Released:2018-06-27)

1.はじめに 海水飛沫帯の岩石表面に形成される微地形に,タフォニやハニカム構造(以下,単にハニカムとする)がある.両者は塩類風化によって岩石表面の強度が低下した結果形成される窪みであるが,一般に,ハニカムはタフォニよりも窪みが浅く,蜂の巣状の平面形態を示す地形である.ハニカムはタフォニの生成初期の地形であると指摘する研究が存在するものの,両者の関係性を実証的かつ定量的に考察された研究はない.本研究では,海岸域に建設された砂岩塊からなる石垣表面にタフォニとハニカムがみられることに着目し,それらの分布,窪み深さ,および岩石強度を調べ,タフォニとハニカムの形成条件を明らかにすることを目的とする.さらにそれらの結果からタフォニとハニカムの関係性について考察する. 2.調査地域 千葉県銚子市海鹿島海岸は砂浜や波食棚が発達している.その波打ち際には全長約100 m,高さ約2.5 mの昭和初期に建てられた石垣が存在する.石垣は砂岩塊で積み上げられた最大7段の積み石からなっている.砂岩塊の大きさは,幅約40 ㎝,高さ約30 ㎝である. 3.調査方法 まず観察により,砂岩塊表面に見られる微地形について,窪みの有無,風化物質の有無,平面形態に基づき地形分類を行った.タフォニとハニカムのように窪んでいる地形については窪み深さを計測した.次にエコーチップやシュミットハンマーを用いて砂岩塊表面の強度計測を行った. 4.調査結果と考察砂浜背後の砂岩塊には,多くのハニカムが形成されており,波食棚背後の砂岩塊にはタフォニが卓越していた.潮間帯の砂岩塊は風化物質が付着しておらず,ほとんど窪んでいなかった.タフォニとハニカムの窪み深さを比較してみると,タフォニの方がハニカムよりも大きかった.風化していない砂岩塊(以下,未風化砂岩),タフォニ,ハニカムの岩石強度を比べてみると,岩石強度は,タフォニ<ハニカム≦未風化砂岩であった.この結果から,タフォニはハニカムに比べて,塩類風化によって強度が大きく低下した砂岩塊に形成される地形であり,ハニカムとタフォニの形成の差異は,砂岩塊表面の風化による強度低下量の違いに関係することがわかった.同一の砂岩塊においてハニカムとタフォニが共存していたり,ハニカムの側壁に穴が空いていたりする地形が観察された.以上のことから,塩類風化によってわずかに強度低下した砂岩塊に形成されたハニカムは,風化の進行に伴い,窪みがより深くなり,側壁が破壊されることによってタフォニに変化していくと推察される.付記 本研究は科研費(17K18524)の助成を受けて実施された成果の一部である.
著者
青木 秀男
出版者
日本都市社会学会
雑誌
日本都市社会学会年報 (ISSN:13414585)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.23, pp.57-73, 2005-09-05 (Released:2011-02-07)
参考文献数
35
被引用文献数
1 1
著者
蓑原 美奈恵 伊藤 宜則 大谷 元彦 佐々木 隆一郎 青木 國雄
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.607-615, 1988
被引用文献数
6 2

一地域住民38歳&sim;84歳の924名のうち,味質脱失者19名を除いた905名を対象とし,滴下法を用いて味覚検査を行った。味質は甘味:精製白糖,塩味:塩化ナトリウム,酸味:酒石酸,苦味:塩酸キニーネの4種に限定し,以下の結果をえた。<br>味覚識別能は4基本味質のいずれも,女性が男性より敏感に識別していた。また,男女とも味覚識別能検査値は,70歳代で最も鈍化し,80歳代ではやや敏感になる傾向など,加齢による変化を認めた。<br>また,総入歯群と義歯なし群や部分入歯群とを比較したが,義歯の状態による味覚識別能に対する影響は認めなかった。<br>喫煙による味覚識別能の影響は,喫煙量(本/日)の増加にともない,男女とも味覚識別能が鈍くなる傾向にあり,味覚識別能における性差は無くなった。塩味,酸味の識別能は喫煙量の増加にともない,男性が女性より敏感に識別し,性差が逆転したが,喫煙量の増加に従い鈍化する傾向は一致した。<br>さらに,味覚識別能に影響を認めた性,年齢を考慮した多変量解析を行った結果,喫煙量の増加にともない味覚識別能は鈍くなる量-反応関係が明らかとなった。その影響の強さは,苦味,酸味,塩味,甘味の順であった。
著者
平峰 玲緒奈 青木 かおり 鈴木 毅彦
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2020年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.238, 2020 (Released:2020-03-30)

1.はじめに火山砕屑物の一つである軽石は,多孔質であるために水に浮くこ とが多い.そのため,海域での漂流を開始した軽石は,海岸に打ち上げられるか,海底に沈むまで,漂流し続けると考えられている(加藤,2009).このような軽石は,「漂着軽石」や「漂流軽石」と呼ばれ, 海岸や地層中から発見・認定されてきた.地層中に認定される漂着軽石は,年代指標,古環境指標として利用できると期待される.しかし,漂着軽石に関する基礎的な研究は少なく,それらの漂流・漂着に関わるプロセスは明らかになっていない.日本列島とその周辺海域では,1986 年の福徳岡ノ場噴火以降, 大量の軽石を海域に供給する噴火は発生していないにもかかわらず,現在の日本列島の海岸には軽石が漂着している.これは,噴火活動以外に海域へ軽石を供給する仕組みがあること示唆する. しかし,日本の複数地点で,ほぼ同時期に漂着軽石を調査した例 は存在しない.また,軽石を海域へ供給する噴火が発生していない「平穏時」における漂着軽石の給源やそれらの地理的分布は不 明である.そこで,本研究では,記載岩石学的特徴に基づき日本列島の現世海岸における漂着軽石の給源とその地理的分布を明らかにし,海域への軽石供給の仕組みや,漂着軽石の漂流・漂着に関するプロセスを解明することを目的とした.2.研究手法沖縄県西表島から青森県下北半島にかけての,日本列島の海岸25 地点から採取した漂着軽石120 試料について,肉眼的特徴による分類を行い,個別に粉砕した試料を洗浄,ふるい分けし,63-120 μm サイズの火山ガラスを用いて主成分化学組成分析を実施した. 分析には高知大学海洋コア総合研究センターの共同利用機器であるEPMA(日本電子株式会社製 JXA-8200)を使用した.3.結果・考察漂着軽石は,幅の狭い浜など漂着物が保存されにくい海岸を除くと全ての海岸で確認された.浮遊しやすい発泡スチロールやクルミなどが多く漂着する海岸では,漂着軽石も多く見出された.EPMA 分析の結果,漂着軽石は13グループに分けられた.13グループの中で,給源が推定可能なものは4グループあり,その給源となるテフラは,姶良カルデラの約3万年前(Smith et al., 2013)の 噴出物である姶良Tnテフラ(AT:町田・新井,2003),十和田火山 の約1万5千年前の噴出物である十和田八戸テフラ(To-H:町田・ 新井,2003)と AD915 年の十和田aテフラ(To-a:町田・新井,2003),1924 年の西表島北北東海底火山噴出物,1986 年の福徳岡ノ場噴出物である.AT起源の漂着軽石は日本各地の海岸から見出され,青森県の下北半島を最北端,沖縄県の西表島を最南端として確認された.特に,西表島で見出されたAT 起源の漂着軽石は,周辺の海流系を考慮すると,黒潮,黒潮続流,北赤道海流等 での漂流を経て,再度,黒潮本流に合流し,当該地域に漂着した可能性がある.また,鹿児島県奄美大島の海岸から,十和田火山起源の漂着軽石も見出されており,AT起源の軽石同様に,漂着軽石は海流により太平洋上を循環している可能性が示唆される.現世の海岸に分布する漂着軽石は,噴火により直接海域に流入した可能性と、陸域に一次堆積した火砕物が,二次的な移動により海域に流入した可能性がある.約3万年前(Smith et al., 2013)の噴出物である AT起源の漂着軽石は,日本列島各地の海岸で見出さ れた.また,AT噴火の火砕流堆積物は,入戸火砕流堆積物 (A-Ito:町田・新井,2003)として給源近くに厚く分布し,火砕流台地であるシラス台地を形成しており,海岸沿いや開析谷沿いに広く露出している.以上を考慮すると,火砕流堆積物が海岸侵食や崩壊,土石流により二次的に移動し海域へ流入したものが,漂着軽石として現世海岸に分布すると考えられる.つまり,陸域に分布する軽石主体の堆積物の二次的な海域への運搬が,平穏時における軽石供給の主要なメカニズムであると考えられる.4.まとめ本研究結果から,軽石を海域に供給する噴火が発生していない平穏時であっても,現世海岸には漂着軽石が多く分布していることがわかった.給源テフラの推定結果から,最近100年間に発生した海底噴火に伴うものと1万年以上前の大規模噴火に伴うものが見出された.特に1万年以上前の大規模噴火に伴うものは,現在火砕流台地を広く形成しており,それらの二次的な移動が平穏時における継続的な軽石供給の重要なメカニズムであると考えられる.
著者
幸田 芳紀 伊藤 康一 青木 孝文
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.312-320, 2020-04-01 (Released:2020-04-01)
参考文献数
11

2015年に国連は,「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」(Transforming our world:the 2030 Agenda for Sustainable Development)を採択し,その中でSustainable Development Goals(SDGs)を発表した.このSDGsは17個のゴールと169個のターゲットで構成されており,その目標16ターゲット16.9では,「2030年までに,出生登録を含むすべての人に合法的な身元を提供する」ことを宣言している.これは,出生直後から全ての人が出生国の国民として登録されることで,国民として享受すべき社会保障サービスを受けられる環境を確立することにほかならない.国民の登録・管理に利用できる個人認証技術の一つとして指紋認証がある.現在までに数多くの国々が指紋認証に基づいた国民IDシステムを導入している.しかしながら,新生児に利用可能な指紋認証システムが開発されておらず,そもそも現状の国民IDシステムでは,新生児を含む5歳以下の子供を登録対象としていない.本稿では,SDGsターゲット16.9の実現に向け,指紋認証技術の適用範囲を出生直後の新生児にまで拡大する取組みについて述べる.
著者
田中 祥貴 青木 郁夫 石根 貴章 John J. Renger Christopher J. Winrow 久田 智
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.148, no.1, pp.46-56, 2016 (Released:2016-07-13)
参考文献数
31
被引用文献数
1 2

オレキシンは視床下部外側部の神経細胞で産生されるニューロペプチドで,動物の覚醒状態維持に重要な働きをしている.スボレキサントはヒトのオレキシン受容体(OX1R及びOX2R)に対する強力で選択性の高いアンタゴニストで,不眠症の経口治療薬として開発された.スボレキサントのヒトOX1R及びOX2Rに対する結合親和性は高かった(Ki値はそれぞれの受容体で0.55 nM及び0.35 nM).各種動物(マウス,ラット,ウサギ,イヌ及びアカゲザル)のOX1R及びOX2Rに対してもヒトと同程度の結合親和性を示した.ラットにスボレキサントの10,30及び100 mg/kgを投与すると,用量依存的に覚醒が減少し,同時にデルタ睡眠とレム睡眠が増加した.同様な覚醒の減少とノンレム睡眠及びレム睡眠の増加は,イヌにスボレキサントを1及び3 mg/kg経口投与したとき,及びサルにスボレキサントの10 mg/kgを経口投与したときにも認められた.臨床薬理試験の結果から,スボレキサント40 mgを非日本人健康非高齢被験者に単回経口投与した際のTmaxは約2時間で,終末相半減期は12.2時間であった.また,1日1回反復投与した際,投与3日目までに定常状態に達し,AUC及びCmaxの累積係数の推定値は1.2~1.6であった.スボレキサントを空腹時単回投与した際の薬物動態は,日本人健康男性被験者と非日本人健康男性被験者で大きな差はみられなかった.また,後期第Ⅱ相及び第Ⅲ相試験での不眠症患者の薬物動態より,非高齢者にスボレキサント20 mgを投与した際のAUC0-24h及びCmaxは,高齢者にスボレキサント15 mgを投与した際と同程度であった.臨床試験の結果から,スボレキサントは睡眠維持及び入眠のいずれの症状改善にも効果を有し,長期間投与で薬剤耐性もみられない.また,おおむね良好な忍容性が認められ,翌日への持越し効果も許容可能な程度であり,臨床上懸念される,投与中止による退薬症候や反跳性不眠は認められない.したがって,本剤は,不眠症の新たな治療選択肢の一つとなると考える.
著者
大久保誠也 小林 正人 本多 武尊 眞鍋秀聡 青木 輝人 柿下 容弓 小松原 頌之 西野 哲朗
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ゲーム情報学(GI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.20, pp.25-32, 2007-03-05
被引用文献数
7

本稿では,2006年11月18日にUEC(電気通信大学)で開催された,第1回UECコンピュータ大貧民大会(UECda-2006)の概要を報告する.大貧民は,日本で広く行なわれているトランプ・ゲームのひとつである.本大会は大貧民をプレイするコンピュータ・プログラムを対戦させる大会である.以下では,本大会の概要,本大会で採用した大貧民のルール,大会規模,使用したプログラム,および決勝戦の結果について述べる.In this talk, we give a summary report of the First UEC computer DAIHINMIN championship (UECda-2006) held at UEC (The University of Electronic-Communications) on November 18, 2006. DAIHINMIN is one of the most popular card game played in Japan. In this championship, computer DAIHINMIN engines compete against each other. We present the outline of the championship, the adopted rules, number of participants, used programs, and the result of the final match.
著者
三木 文雄 小林 宏行 杉原 徳彦 武田 博明 中里 義則 杉浦 宏詩 酒寄 享 坂川 英一郎 大崎 能伸 長内 忍 井手 宏 西垣 豊 辻 忠克 松本 博之 山崎 泰宏 藤田 結花 中尾 祥子 高橋 政明 豊嶋 恵理 山口 修二 志田 晃 小田島 奈央 吉川 隆志 青木 健志 小笹 真理子 遅野井 健 朴 明俊 井上 洋西 櫻井 滋 伊藤 晴方 毛利 孝 高橋 進 井上 千恵子 樋口 清一 渡辺 彰 菊地 暢 池田 英樹 中井 祐之 本田 芳宏 庄司 総 新妻 一直 鈴木 康稔 青木 信樹 和田 光一 桑原 克弘 狩野 哲次 柴田 和彦 中田 紘一郎 成井 浩司 佐野 靖之 大友 守 鈴木 直仁 小山 優 柴 孝也 岡田 和久 佐治 正勝 阿久津 寿江 中森 祥隆 蝶名林 直彦 松岡 緑郎 永井 英明 鈴木 幸男 竹下 啓 嶋田 甚五郎 石田 一雄 中川 武正 柴本 昌昭 中村 俊夫 駒瀬 裕子 新井 基央 島田 敏樹 中澤 靖 小田切 繁樹 綿貫 祐司 西平 隆一 平居 義裕 工藤 誠 鈴木 周雄 吉池 保博 池田 大忠 鈴木 基好 西川 正憲 高橋 健一 池原 邦彦 中村 雅夫 冬木 俊春 高木 重人 柳瀬 賢次 土手 邦夫 山本 和英 山腰 雅宏 山本 雅史 伊藤 源士 鳥 浩一郎 渡邊 篤 高橋 孝輔 澤 祥幸 吉田 勉 浅本 仁 上田 良弘 伊達 佳子 東田 有智 原口 龍太 長坂 行雄 家田 泰浩 保田 昇平 加藤 元一 小牟田 清 谷尾 吉郎 岡野 一弘 竹中 雅彦 桝野 富弥 西井 一雅 成田 亘啓 三笠 桂一 古西 満 前田 光一 竹澤 祐一 森 啓 甲斐 吉郎 杉村 裕子 種田 和清 井上 哲郎 加藤 晃史 松島 敏春 二木 芳人 吉井 耕一郎 沖本 二郎 中村 淳一 米山 浩英 小橋 吉博 城戸 優光 吉井 千春 澤江 義郎 二宮 清 田尾 義昭 宮崎 正之 高木 宏治 吉田 稔 渡辺 憲太朗 大泉 耕太郎 渡邊 尚 光武 良幸 竹田 圭介 川口 信三 光井 敬 西本 光伸 川原 正士 古賀 英之 中原 伸 高本 正祇 原田 泰子 北原 義也 加治木 章 永田 忍彦 河野 茂 朝野 和典 前崎 繁文 柳原 克紀 宮崎 義継 泉川 欣一 道津 安正 順山 尚史 石野 徹 川村 純生 田中 光 飯田 桂子 荒木 潤 渡辺 正実 永武 毅 秋山 盛登司 高橋 淳 隆杉 正和 真崎 宏則 田中 宏史 川上 健司 宇都宮 嘉明 土橋 佳子 星野 和彦 麻生 憲史 池田 秀樹 鬼塚 正三郎 小林 忍 渡辺 浩 那須 勝 時松 一成 山崎 透 河野 宏 安藤 俊二 玄同 淑子 三重野 龍彦 甲原 芳範 斎藤 厚 健山 正男 大山 泰一 副島 林造 中島 光好
出版者
Japanese Society of Chemotherapy
雑誌
日本化学療法学会雜誌 = Japanese journal of chemotherapy (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.526-556, 2005-09-25

注射用セフェム系抗菌薬cefozopran (CZOP) の下気道感染症に対する早期治療効果を評価するため, ceftazidime (CAZ) を対照薬とした比較試験を市販後臨床試験として実施した。CZOPとCAZはともに1回1g (力価), 1日2回点滴静注により7日間投与し, 以下の結果を得た。<BR>1. 総登録症例412例中最大の解析対象集団376例の臨床効果は, 判定不能3例を除くとCZOP群92.0%(173/188), CAZ群91.4%(169/185) の有効率で, 両側90%, 95%信頼区間ともに非劣性であることが検証された。細菌性肺炎と慢性気道感染症に層別した有効率は, それぞれCZOP群90.9%(120/132), 94.6%(53/56), CAZ群93.3%(126/135), 86.0%(43/50) で, 両側90%, 95%信頼区間ともに非劣性であることが検証された。<BR>2. 原因菌が判明し, その消長を追跡し得た210例での細菌学的効果は, CZOP群89.5%(94/105), CAZ群90.5%(95/105) の菌消失率 (菌消失+菌交代) で, 両群間に有意な差はみられなかった。個々の菌別の菌消失率は, CZOP群91.1%(113/124), CAZ群90.8%(108/119) で両群問に有意な差はみられなかったが, 最も高頻度に分離された<I>Streptococcus pneumoniae</I>の消失率はCZOP群100%(42/42), CAZ群89.5%(34/38) で, CZOP群がCAZ群に比し有意に優れ (P=0.047), 投与5日後においてもCZOP群がCAZ群に比し有意に高い菌消失寧を示した (P=0.049)。<BR>3. 投薬終了時に, CZOP群では52,4%(99/189), CAZ群では50.3% (94/187) の症例において治療日的が達成され, 抗菌薬の追加投与は不必要であった。治療Il的遠成度に関して両薬剤間に有意な差は認められなかった。<BR>4. 随伴症状の発現率はCZOP群3.9%(8/206), CAZ群5.0%(10/202) で両棊剤間に有意な差はなかった。臨床検査値異常変動として, CAZ群に好酸球増多がCZOP絆より多数認められたが, 臨床検査値異常出現率としては, CZOP群31.6% (65/206), CAZ群32.2% (65/202) で, 両群間に有意な差は認められなかった。<BR>以上の成績から, CZOPは臨床効果においてCAZと比較して非劣性であることが検祉された。また<I>S. pneumoniae</I>による下気道感染症に対するCZOPの早期治療効果が確認された。
著者
小林 宏行 武田 博明 渡辺 秀裕 太田見 宏 酒寄 享 齋藤 玲 中山 一朗 富沢 麿須美 佐藤 清 平賀 洋明 大道 光秀 武部 和夫 村上 誠一 増田 光男 今村 憲市 中畑 久 斉藤 三代子 遅野井 健 田村 昌士 小西 一樹 小原 一雄 千葉 太郎 青山 洋二 斯波 明子 渡辺 彰 新妻 一直 滝沢 茂夫 中井 祐之 本田 芳宏 勝 正孝 大石 明 中村 守男 金子 光太郎 坂内 通宏 青崎 登 島田 馨 後藤 元 後藤 美江子 佐野 靖之 宮本 康文 荒井 康男 菊池 典雄 酒井 紀 柴 孝也 吉田 正樹 堀 誠治 嶋田 甚五郎 斎藤 篤 中田 紘一郎 中谷 龍王 坪井 永保 成井 浩司 中森 祥隆 稲川 裕子 清水 喜八郎 戸塚 恭一 柴田 雄介 菊池 賢 長谷川 裕美 森 健 磯沼 弘 高橋 まゆみ 江部 司 稲垣 正義 国井 乙彦 宮司 厚子 大谷津 功 斧 康雄 宮下 琢 西谷 肇 徳村 保昌 杉山 肇 山口 守道 青木 ますみ 芳賀 敏昭 宮下 英夫 池田 康夫 木崎 昌弘 内田 博 森 茂久 小林 芳夫 工藤 宏一郎 堀内 正 庄司 俊輔 可部 順三郎 宍戸 春美 永井 英明 佐藤 紘二 倉島 篤行 三宅 修司 川上 健司 林 孝二 松本 文夫 今井 健郎 桜井 磐 吉川 晃司 高橋 孝行 森田 雅之 小田切 繁樹 鈴木 周雄 高橋 宏 高橋 健一 大久保 隆男 池田 大忠 金子 保 荒川 正昭 和田 光一 瀬賀 弘行 吉川 博子 塚田 弘樹 川島 崇 岩田 文英 青木 信樹 関根 理 鈴木 康稔 宇野 勝次 八木 元広 武田 元 泉 三郎 佐藤 篤彦 千田 金吾 須田 隆文 田村 亨治 吉富 淳 八木 健 武内 俊彦 山田 保夫 中村 敦 山本 俊信 山本 和英 花木 英和 山本 俊幸 松浦 徹 山腰 雅弘 鈴木 幹三 下方 薫 一山 智 斎藤 英彦 酒井 秀造 野村 史郎 千田 一嘉 岩原 毅 南 博信 山本 雅史 斉藤 博 矢守 貞昭 柴垣 友久 西脇 敬祐 中西 和夫 成田 亘啓 三笠 桂一 澤木 政好 古西 満 前田 光一 浜田 薫 武内 章治 坂本 正洋 辻本 正之 国松 幹和 久世 文幸 川合 満 三木 文雄 生野 善康 村田 哲人 坂元 一夫 蛭間 正人 大谷 眞一郎 原 泰志 中山 浩二 田中 聡彦 花谷 彰久 矢野 三郎 中川 勝 副島 林造 沖本 二郎 守屋 修 二木 芳人 松島 敏春 木村 丹 小橋 吉博 安達 倫文 田辺 潤 田野 吉彦 原 宏起 山木戸 道郎 長谷川 健司 小倉 剛 朝田 完二 並川 修 西岡 真輔 吾妻 雅彦 前田 美規重 白神 実 仁保 喜之 澤江 義郎 岡田 薫 高木 宏治 下野 信行 三角 博康 江口 克彦 大泉 耕太郎 徳永 尚登 市川 洋一郎 矢野 敬文 原 耕平 河野 茂 古賀 宏延 賀来 満夫 朝野 和典 伊藤 直美 渡辺 講一 松本 慶蔵 隆杉 正和 田口 幹雄 大石 和徳 高橋 淳 渡辺 浩 大森 明美 渡辺 貴和雄 永武 毅 田中 宏史 山内 壮一郎 那須 勝 後藤 陽一郎 山崎 透 永井 寛之 生田 真澄 時松 一成 一宮 朋来 平井 一弘 河野 宏 田代 隆良 志摩 清 岳中 耐夫 斎藤 厚 普久原 造 伊良部 勇栄 稲留 潤 草野 展周 古堅 興子 仲宗根 勇 平良 真幸
出版者
Japanese Society of Chemotherapy
雑誌
日本化学療法学会雜誌 = Japanese journal of chemotherapy (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.333-351, 1995-07-31
被引用文献数
2

新規キノロン系経口合成抗菌薬grepafloxacin (GPFX) の内科領域感染症に対する臨床的有用性を全国62施設の共同研究により検討した。対象疾患は呼吸器感染症を中心とし, 投与方法は原則として1回100~300mgを1日1~2回投与することとした。<BR>総投与症例525例のうち509例を臨床効果判定の解析対象とした。全症例に対する有効率は443/509 (87.0%) であり, そのうち呼吸器感染症432/496 (87.1%), 尿路感染症11/13 (84.6%) であった。呼吸器感染症における有効率を疾患別にみると, 咽喉頭炎・咽頭炎19/22 (86.4%), 扁桃炎17/18 (94.4%), 急性気管支炎53/58 (91.4%), 肺炎104/119 (87.4%), マイコプラズマ肺炎17/19 (89.5%), 異型肺炎5/5, 慢性気管支炎117/133 (88.0%), 気管支拡張症48/63 (76.2%), びまん性汎細気管支炎17/19 (89.5%) および慢性呼吸器疾患の二次感染35/40 (87.5%) であった。<BR>呼吸器感染症における細菌学的効果は233例で判定され, その消失率は単独菌感染では154/197 (78.2%), 複数菌感染では22/36 (61.1%) であった。また, 単独菌感染における消失率はグラム陽性菌48/53 (90.6%), グラム陰性菌105/142 (73.9%) であり, グラム陽性菌に対する細菌学的効果の方が優れていた。呼吸器感染症の起炎菌のうちMICが測定された115株におけるGPFXのMIC<SUB>80</SUB>は0.39μg/mlで, 一方対照薬 (97株) としたnornoxacin (NFLX), onoxacin (OFLX), enoxacin (ENX) およびcipronoxacin (CPFX) はそれぞれ6.25, 1.56, 6.25および0.78μg/mlであった。<BR>副作用は519例中26例 (5.0%, 発現件数38件) にみられ, その症状の内訳は, 消化器系18件, 精神神経系13件, 過敏症3件, その他4件であった。<BR>臨床検査値異常は, 490例中49例 (10.0%, 発現件数61件) にみられ, その主たる項目は, 好酸球の増多とトランスアミナーゼの上昇であった。いずれの症状, 変動とも重篤なものはなかった。<BR>臨床効果と副作用, 臨床検査値異常の安全性を総合的に勘案した有用性については, 呼吸器感染症での有用率422/497 (84.9%), 尿路感染症で10/13 (76.9%) であり, 全体では432/510 (84.7%) であった。<BR>以上の成績より, GPFXは呼吸器感染症を中心とする内科領域感染症に対して有用な薬剤であると考えられた。
著者
平峰 玲緒奈 青木 かおり 石村 大輔
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
pp.62.2204, (Released:2023-04-20)
参考文献数
36

青森県むつ市関根浜に露出する完新世堆積物から多数の軽石(SKN-1~6)を見出した.このうち2層の軽石濃集層(SKN-2とSKN-3)は,それぞれ鬱陵島U-2テフラ(U-2)と十和田中掫テフラ(To-Cu)の軽石で構成されていた.SKN-2とSKN-3は層相と層序,軽石の粒径・形状から,海域での漂流を経て堆積した漂着軽石と考えられる.また,SKN-2とSKN-3は,有機質シルト・泥炭層中に存在することと約6 kaの海水準や地形を考慮すると,海と繋がる小河川を経て潟湖に漂着したものと推測される.加えて,水平方向に連続的に堆積する様相は堆積当時の汀線付近に多数の軽石が分布していたことを示唆する.