- 著者
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青木 聖久
- 出版者
- 日本福祉大学社会福祉学部
- 雑誌
- 日本福祉大学社会福祉論集 = Journal social Welfare, Nihon Fukushi University (ISSN:1345174X)
- 巻号頁・発行日
- no.142, pp.131-144, 2020-03-31
本研究では,精神障害者(以下,本人)の障害年金の認定診査において鍵を握る,日常生活評価の指標としての,①適切な食事,②身辺の清潔保持,③金銭管理と買い物,④通院と服薬,⑤他人との意思伝達及び対人関係,⑥身辺の安全保持及び危機対応,⑦社会性,さらには,⑧就労に着目した.そして,これらの8 つの事柄を切り口にしながら,本人の日常生活に対する精神障害者の家族(以下,家族)の捉え方や思いを分析し,障害年金受給との関係について探索することを目的にして,8 名の家族から半構造的インタビューを実施した. 分析の結果,本人が【重圧を受けやすい日常生活実態】におかれていることがわかった.また,家族がこれらの事柄を捉えるにあたっては,【常態化によって生きづらさが潜む】ということと,【強力な社会的支援としての家族】という2 つの側面を持っていることがうかがえた.一方で,障害年金の日常生活評価にあたって,家族は,本人の日常生活の情報を医師から求められたとしても,必ずしも期待された役割を果たせるとは限らない.なぜなら,【できない証明とストレングス視点】として,家族は本人に対して,ストレングス視点で捉えることに馴染んできた結果,日常生活のできない証明をすることが難しい側面が認められたからである.