著者
阪田 史郎 青木 秀憲 間瀬 憲一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.89, no.6, pp.811-823, 2006-06-01
参考文献数
56
被引用文献数
54

インターネットや携帯電話網などの従来のネットワークにはない無線マルチホップの新しい形態で通信を行うアドホックネットワークは,ユビキタスシステムにおける重要なネットワークとして,特に1990年代末以降活発な研究がなされてきた.2003〜2004年にはユニキャストルーチングについて,IETF(Internet Engineering Task Force)のMANET(Mobile Ad hoc NETwork) WGにおいて三つのプロトコルがExperimental RFCになり,現在Standard TrackのRFCに向けた作業が進展している.また,大規模なテストベッドの構築が進展し,実用化への期待が高まっている.本論文では,アドホックネットワークについて,これまでの研究,標準化の動向を述べた後,MAC層でのアドホック(無線マルチホップ)ネットワークの実現技術として,2004年5月に検討が開始されたIEEE802.11sにおける無線LANメッシュネットワークに関する標準化状況,研究内容,アドホックネットワークの今後の進展を展望する.
著者
駒場 一貴 青木 啓一郎
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.294-300, 2023 (Released:2023-11-30)
参考文献数
14

厚生労働省は地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進し,その中で作業療法士が重要な役割を果たしている.地域の支援体制には医療が含まれ,昭和大学附属病院はその一環として地域で重要な役割を担う医療機関である.本稿では,昭和大学の特色である急性期を対象とした作業療法士の実践について考察する.作業療法は,「作業」,すなわち人々が目的や価値を見出す生活行為を中心とした治療,指導,援助である.この観点から,急性期作業療法の役割は,患者が自分らしい生活を早期に獲得できるように,実践的な評価とアプローチを提供することであると筆者らは認識している.日本における作業療法士の実践内容や介入体制には大きな差異があり,それはこの分野がまだ発展途上であることを示している.したがって,本稿を通じて,多職種の専門家には急性期における作業療法士の役割について理解を深めていただきたい.また,急性期で従事する作業療法士に対しては,本稿が実践の参考になることを期待している.
著者
土屋 篤生 青木 宏展 植田 憲
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.2_11-2_18, 2023-09-30 (Released:2023-10-25)
参考文献数
9

本稿は千葉県の鍛冶文化の維持・継承・発展に向けた一連の論文の第二報である。 鍛冶屋の「ふいご以外は自分で作れる」という矜持は、ものの本質を見極め理解する観察眼、作り方を考える段取りの自由と責任、それらを実行できる技術力のすべてを持っていることの表れであり、道具を自分で作ることが生活の基礎であることを示している。さらに、野鍛冶は生活者の求めに応じてさまざまな道具を製作する技術が必要とされる。高梨氏は、鍛冶屋の修行として、親方のそばで仕事を「見て盗む」訓練を積むことで、「見る目」を養った。そして、見様見真似で仕事をする実践の中で技術を身につけていった。これは生活の中に身を置くことで技術のみならず鍛冶屋としてのあり方を身につけていく「文化としてのものづくり」と言えるものである。高梨氏が身につけた鍛冶屋としてのものづくりの能力は、単なる技術的な能力ではなく、生活と仕事が一体となった「生業」の中で身についた生活者の姿であるといえよう。
著者
青木 栄一 荻原 克男
出版者
日本教育行政学会
雑誌
日本教育行政学会年報 (ISSN:09198393)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.80-92, 2004-10-08 (Released:2018-01-09)

Although several attempts were made to change educational policy in the 1970s and 1980s in Japan, substantial changes were not realized until the second half of the 1990s. Why did the change occur only in the late 1990s? One explanation has been that the Ministry of Education was forced to change its former policy because of external pressures brought by ad hoc committees and councils set up in the cabinet during the 1990s. This argument appears to exaggerate the strong tendency of the Ministry as a whole to preserve the status quo and often ignores internal processes that enable changes in attitudes within the Ministry. This paper attempts to explore such internal factors in terms of the power relationship between various bureaus in the Ministry. The paper focuses on the relation between the Minister's Secretariat ('kanbou') and other bureaus ('genkyoku') such as the Elementary and Secondary Education Bureau. These two types of bureaus entail a difference in responding to the demands for change. In contrast to the other bureaus that are responsible for the implementation of specific policy, the main role of the Minister's Secretariat (MS) is to exercise a comprehensive coordinating function over all bureaus ('kanboukinou') ; and thus, the MS is more flexible when it comes to policy change than are other bureaus. We hypothesized that the MS's coordinating function was strengthened during the 1990s and that this allowed the Ministry to change its overall behavior. To examine this hypothesis, we analyzed the status of the MS within the Ministry concerning three points: (1) changes in the organizational structure of the MS; (2) the career pattern of the Director-General, or the chief, of the MS; and (3) the frequency of contacts between the Director-General of the MS and the Prime Minister. Results of our research found that, first, the sections responsible for investigation, statistics, and policy planning within the Ministry were integrated into the MS by the 1970s; in the 1980s, a Senior Deputy Director-General was newly established in the MS; and the Deputy Director-Generals of the other bureaus were transferred to the MS. These reorganizations reinforced the structure of the MS. Second, through analyzing the career pattern of the people who were appointed as Director-Generals of the MS, the paper demonstrates that, though being equal in rank to other bureau chiefs, the position grew important during the late 1990s in terms of the status which it has related to its influence on the ministry's behavior. Third, whereas there was hardly any contact between the Director-General of the MS and the Prime Minister in the 1980s, such contact sharply increased in the late 1990s. These analyses revealed that whereas the structure of the MS was empowered during the 1980s, the position of the MS's Director-General remained unimportant within the Ministry. It was in the late 1990s that the MS properly performed its coordinating function attaining its high status among the bureaus as well as relying on its reinforced structure. This empowerment of the MS's function then enabled the Ministry to change its policy during the same period.
著者
青木 貴史 河合 隆裕 竹井 義次
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.299-315, 1993-11-12 (Released:2008-12-25)
参考文献数
23
著者
青木 拓也
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.40-44, 2015 (Released:2015-03-27)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

プライマリ・ケアの質を評価する重要性は一層高まっており, 海外ではプライマリ・ケアの原理およびタスクに関する質指標が, 政策決定や医療提供者の質向上等に活用されている. 中でもプライマリ・ケアの原理を評価する上で, 患者中心性は重要な概念であり, 欧米では質評価尺度を用いた患者経験調査が実施されている. 残念ながら, 我が国での質評価に関する実効的な取り組みは現状では乏しいが, 先行研究によれば, 我が国で重要なプライマリ・ケアの原理は, 近接性, 包括性, 協調性, 時間的継続性, 良好な患者医師関係 (対人的継続性) , 地域志向性, 家族志向性と考えられる. 今後患者中心性を始め, 有効性や患者安全等, 複数の側面からの評価を通し, プライマリ・ケアの質的整備を推進していく必要がある.
著者
青木 聖久
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal social Welfare, Nihon Fukushi University (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.142, pp.131-144, 2020-03-31

本研究では,精神障害者(以下,本人)の障害年金の認定診査において鍵を握る,日常生活評価の指標としての,①適切な食事,②身辺の清潔保持,③金銭管理と買い物,④通院と服薬,⑤他人との意思伝達及び対人関係,⑥身辺の安全保持及び危機対応,⑦社会性,さらには,⑧就労に着目した.そして,これらの8 つの事柄を切り口にしながら,本人の日常生活に対する精神障害者の家族(以下,家族)の捉え方や思いを分析し,障害年金受給との関係について探索することを目的にして,8 名の家族から半構造的インタビューを実施した. 分析の結果,本人が【重圧を受けやすい日常生活実態】におかれていることがわかった.また,家族がこれらの事柄を捉えるにあたっては,【常態化によって生きづらさが潜む】ということと,【強力な社会的支援としての家族】という2 つの側面を持っていることがうかがえた.一方で,障害年金の日常生活評価にあたって,家族は,本人の日常生活の情報を医師から求められたとしても,必ずしも期待された役割を果たせるとは限らない.なぜなら,【できない証明とストレングス視点】として,家族は本人に対して,ストレングス視点で捉えることに馴染んできた結果,日常生活のできない証明をすることが難しい側面が認められたからである.
著者
原 裕太 関戸 彩乃 淺野 悟史 青木 賢人
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.67-80, 2015 (Released:2015-08-27)
参考文献数
25
被引用文献数
1

本稿では,防風林の形成過程に着目することで,伊豆大島における地域の生物資源利用に関わる人々の知恵とその特徴を明らかにした.防風林の形態には気候,生態系,社会経済的影響などの諸因子が影響している.そのため,国内各地で多様な防風林が形成されてきた.防風林は,それら諸因子を人々がどのように認識し,生活に取り込んできたのかを示す指標となる.伊豆大島には,一辺が50 mほどの比較的小規模な格子状防風林が存在する.調査によって,防風林の構成樹種の多くはヤブツバキであることが確認され,事例からは,伊豆大島の地域資源を活かす知恵として,複数の特徴的形態が見出された.土地の境界に2列に植栽されたヤブツバキ防風林はヤブツバキの資源としての重要性を示し,2000年頃に植栽された新しいヤブツバキ防風林は古くからの習慣を反映していた.また,住民が植生の特性を利用してきたことを物語るものとして,ヤブツバキとオオシマザクラを交互に植栽した防風林が観察された.それらからは島の人々とヤブツバキとの密接な関係が推察された.
著者
内田 隆 青木 孝
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 43 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.483-486, 2019 (Released:2020-07-31)
参考文献数
6

本研究では,通電によるジュール熱でパンを作る電気パン実験の起源をあきらかにするため,電極式調理の歴史について文献調査と聞き取りを行った.その結果,電気パンの起源は陸軍の阿久津正蔵らが開発した炊事自動車で,電極式調理による製パンよりも前に炊飯が先に実用化されていたことがあきらかになった.終戦後にこの技術が活用されて家庭用電極式炊飯器である厚生式電気炊飯器やたからおはちが製造されたこと,さらに,現在はパン粉用パンの製造量の半分程度が電気パンと同じ電極式調理でつくられていることがわかった.
著者
青木 竜一
出版者
東洋文庫
雑誌
東洋学報 = Toyo Gakuho (ISSN:03869067)
巻号頁・発行日
vol.103, no.4, pp.1-31, 2022-03-17

It has frequently been characterized of imperial dynastic China that its main military objective was to maintain the institutions of the state and the social order based on the emperor and the bureaucracy that served him. This means that the military had to be a part of the bureaucracy to achieve that objective. That being said, this bureaucratization of the military did not entirely coincide with the establishment of imperial dynastic governance. It is therefore appropriate to ask when and how bureaucratization was actually achieved. This article focuses on the military under the Later Han Dynasty, in order to clarify aspects of its bureaucratic character. In particular, the author addresses the following point focusing on the notion of decorum: that is, whether it was regarded as proper for the military to be controlled by the emperor and the imperial court. The author begins with a review of the principle that “State affairs should not be interfered in by the military, and military affairs should not be interfered in by the state” and how it was perceived during the Later Han Period. The author then addresses the discussions in the White Tiger Hall held during the reign of Emperor Zhang, which were decisive for spreading the notion of decorum, and analyzes perceptions held regarding the military at the time based on Baihu Tong, which summarizes the results of those discussions. As described there, the philosophy of The Methods of Sima relates to “the principles in the Spring and Autumn Annals” and ideas in the weft texts. On the other hand, “military ritual” of the Han Dynasty had followed The Methods of Sima since the second half of the Former Han Period. The author concludes that Han perceptions from The Methods of Sima connected with “military ritual” and “the ritual regulations for meeting each other” determined the notion of decorum, which was developed during the Former Han period, and was then adopted by the Later Han Dynasty, leading to the bureaucratization of the military.
著者
一杉 正仁 有賀 徹 三宅 康史 三林 洋介 吉沢 彰洋 吉田 茂 青木 義郎 山下 智幸 稲継 丈大
出版者
一般社団法人 日本交通科学学会
雑誌
日本交通科学学会誌 (ISSN:21883874)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.53-58, 2020 (Released:2021-04-02)
参考文献数
12

緊急自動車に対する反射材の取り付けについて学術的に検討した結果、次のとおり推奨する。 1.反射材を車体に取り付けることは、視認性の向上に有用である。 2.反射材の選択においては、再帰性に富んだ反射材が望まれる。 3.反射材の取り付けにおいては、他の交通の妨げにならないこと、車両の前面に赤色の反射材を用いないこと、車両の後面に白色の反射材を用いないこと、が原則である。 4.車体の輪郭に沿って反射材が取り付けられること、車体の下部にも反射材が取り付けられること、は視認性の向上に有用である。 5.蛍光物質を含む反射材は、夜間のみならず、明け方、夕暮れ、悪天候などでの視認性向上に有用である。 6.今後は救急自動車以外の緊急車両、現場で活動する関係者が着用する衣服などで、反射材を用いた視認性の向上を検討する余地がある。
著者
青木 滋之
出版者
日本イギリス哲学会
雑誌
イギリス哲学研究 (ISSN:03877450)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.29-42, 2013-03-20 (Released:2018-03-30)
参考文献数
21

It is widely agreed that the British empiricism originated with John Locke (1632-1704). As is well known among the scholars, although Locke developed his matured empirical epistemology in his philosophical masterpiece An Essay concerning Human Understanding (1690), the main tenets of his epistemology had already been in shape in the Draft A and Draft B of the Essay both written in 1671. Essays on the Law of Nature (1663-4) is also known to have been the starting point of his empirical epistemology. This paper examines these two origins of the Essay and concludes that his debt to the experimental philosophy was decisive for the orientation of the British empiricism.
著者
青木 英孝
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.18-30, 2021 (Released:2022-01-11)
参考文献数
31

トップ・マネジメント特性,経営者インセンティブ,所有構造などの企業ガバナンス要因が,粉飾決算,産地偽装,実験データ改竄,カルテルなどの意図的不祥事,およびリコール,情報漏洩,集団食中毒などの事故的不祥事に与える影響を定量的に検証した.その結果,コーポレート・ガバナンスは企業不祥事に影響すること,不祥事の種類によって有効なガバナンスが異なること,ガバナンスでは防げない不祥事もあることが判明した.
著者
中井 靖 青木 勝也 松本 吉弘 篠原 雅岳 影林 頼明 三馬 省二
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.983-986, 2013-11-20

症例:44歳,男性。外尿道口より陰茎陰囊境界部までの尿道腹側をカミソリで鋭的に完全切開され,近医で尿道単純縫合を受けたが,尿道は完全哆開した。以後,無治療であったが,13年後,再婚を転機に尿道再建術を希望して当科を受診した。尿道粘膜は再建に使用可能と判断し,尿道下裂に準じてThiersch法により一期的尿道形成術を施行した。留置カテーテル抜去後,立位排尿が可能となった。外傷性前部尿道損傷の原因として,尿道カテーテルによる損傷や尿道異物による尿道皮膚瘻などの報告はあるが,われわれが調べた限りでは,自験例のように意図的に広範囲に縦切開された尿道に対して尿道形成術を施行した報告はなかった。