著者
中村 恭子 広沢 正孝 細見 修 山倉 文幸 鈴木 利人
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

統合失調症患者は中強度の歩行運動で快感情やリラックス感が増加し、不安感が減少、クロモグラニンA値やコルチゾール値が減少した。また、患者は一般成人より運動前から不安感やα-アミラーゼ値、クロモグラニンA値が有意に高く、運動後のアミラーゼ値の増加やクロモグラニンA値の減少が著しかった。患者は一般成人より体力が低いため、中強度の運動が精神的ストレス軽減をもたらす一方で身体的ストレスとなる可能性が示唆された。そこで、多様な運動強度に対するストレス反応を比較した結果、微細運動のフェルデンクライス・メソッドATMが低強度や中強度の運動よりも患者の心理的・生理的ストレス値の軽減に有効であることが判明した。
著者
中野 俊樹 白川 仁
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

魚類を含む脊椎動物の成長は,成長ホルモン(GH)‐インシュリン様成長因子系により制御されている.しかしGH遺伝子組換え魚におけるその系にかかわる代謝産物の動態については不明な点が多い。本研究ではGH遺伝子組換えギンザケを用い、メタボローム解析により代謝産物を非組換え魚と比較した。組換え区の筋肉では解糖系のアクティビティーが変化していた。TCA回路では一部の代謝産物レベルが組換え区で変化していた。また肝臓ではそれらの様相が異なっていた。さらにそれらの変化は絶食により顕著となった。以上よりGH遺伝子の組換えは特に筋肉において高成長のためのエネルギーの生産を増大させていると推察される。
著者
宮下 政司
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

研究1より、中年の肥満男性において、身体活動指針が推奨する最低限の運動量での一過性の30分の自転車漕ぎ運動は、食後毛細血管中性脂肪濃度を低減させることを明らかにした。この結果より、運動を定期的に行い習慣となれば、心血管疾患の予防のための運動療法となり得ることを示唆した。研究2より、食後毛細血管中性脂肪濃度は、非活動群と比較し、活動群で低値を示した。この結果より、急性的な身体活動による影響とは区別した習慣的な身体活動による食後中性脂肪の低減効果を明らかにした。
著者
内田 照久 石塚 智一 杉澤 武俊 伊藤 圭 内田 千春
出版者
独立行政法人大学入試センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

新しいコミュニケーション能力テストの可能性を検討した。従来からの論理的思考能力や表現応答能力といった言語能力の側面に加え,対人的な認知推論能力までを測定の対象とすることを目指した。1)音声の韻律的な特徴量と話者の性格印象の関係を明らかにするために聴覚実験を行ない,その関係性のモデルを提案した。それと並行して,2)リスニングテストと他教科の学力間の関係の布置とその推移を検証した。
著者
芳賀 紀雄 三木 雅博 村田 正博 新間 一美 内田 賢徳 小島 憲之 栗城 順子 内田 順子
出版者
筑波大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1988

当該研究の中心であり,初の試みでもある島田忠臣の漢詩集『田氏家集』(全3巻)の注釈は,昭和63年度に,巻之上の69首について,小島憲之の指導,芳賀紀雄のとりまとめのもとに,当初の実施計画通り,分担執筆が完了した。また,巻之中の60首についても,平成元年度に原稿を整えた。その成果は,『田氏家集注』と題して,『巻之上』は平成3年2月,『巻之中』は平成4年2月に出版した。さらに,『巻之下』の84首についても原稿の完成を目指しており,平成6年2月に出版の予定である。注釈と並行して作業を進めた『田氏家集』の索引作製は,昭和63年度に完成し,『田氏家集索引』と題して,平成4年2月に出版,また,紀長谷雄の作品集成・本文校定および索引作製も,実施計画通り平成元年度に完了し,『紀長谷雄漢詩文集並びに漢字索引』と題して,平成4年2月に出版した。一方,平安朝前期に至るまでの漢文学に大きな影響を及ぼしたと見られる唐鈔本『翰林学士集』『新撰類林抄』については,本文校定・翻刻ならびに索引作製を平成元年度に完了し,『翰林学士集・新撰類林抄 本文と索引』と題して,平成4年2月に出版した。研究期間中,月に一度ないし二度開いた定例の研究会における研究発表のうち,平成元年度までに執筆の準備がなされ論文として公にされたものは,別記「11」の11篇である。
著者
色川 卓男
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究の課題は、全国政令指定都市及び人口20万人以上の主要市区における消費生活センター及び消費者行政及び消費者教育・啓発施策の実態と課題を示すことにあった。政令指定都市は2008年に、主要都市は2010年に、いずれもアンケート調査及びインタビュー調査、施設調査を行い、その結果に基づいて分析を行った。典型的な例をまとめると、正規職員は人口20万人に1名配置されており10万人増えるごとに1名職員が増加していた。住民1人あたりの消費者行政予算は政令指定都市では50円を超えているが、主要都市では40~50円にとどまっていた。次に施設では、相談スペースとして、いずれも相談室を設置しており、政令指定都市では、閲覧スペース、消費者団体利用スペースと研修室がある。最後に相談では、平日はいずれも7時間以上相談を受け付けており、実質相談員数は人口10万人あたり0.6~1人ほど配置されている。また、消費者教育・啓発施策では、いずれの場合も消費生活センターを中心とする消費者行政担当部局による消費者教育・啓発施策は啓発施策がその中心であり,とりわけ出前講座が大きな比重を占める。しかし都市ごとに,取り組み状況が異なり,かなり格差がみられる。また消費者教育施策においては,多くの都市がなかなか実施できていない。
著者
新田 孝彦 坂井 昭宏 千葉 恵 石原 孝二 中川 大 中澤 務 柏葉 武秀 山田 友幸
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究プロジェクトは、認知と行為の総合理論の基礎を据えることを目的として発足し、行為の合理性の分析を軸として、隣接諸学との関連をも視野に入れた研究を行ってきた。認知と行為の関連は、古くは「知と徳」の問題として、あるいはカントにおいて「理論理性と実践理性」の問題として問われ続けてきたように、哲学の中心的な問いの一つである。本研究プロジェクトでは、研究成果報告書第I部に見られるように、プラトンの対話篇を素材としたシンポジウム及びその背景となった研究において、生全体の認知と、そのもとに営まれる行為との関連のありさまを、哲学的思索の根源的な形態において理解しようとした。また、「プラグマティズムと人間学的哲学」シンポジウムにおいては、外国人研究者の協力も得て、日本及び東アジアの思想とヨーロッパにおける合理性概念の検討を行った。ともすれば、近代ヨーロッパに起源をもつ合理性概念にのみ着目してきた従来の哲学研究を、このような形でいったん相対化することは、合理性概念そのものの深化にとって不可欠である。さらに、シャーバー氏のセミナー及びシンポジウムでは、道徳的実在論に焦点を当て、より直接的に行為の合理性理解の可能性を問題にした。また、研究成果報告書第II部では、行為の合理性の分析と並んで、本研究プロジェクトのもう一つの柱である、哲学的な合理性概念と隣接諸学との関連にかかわる諸問題が論じられている。それらは社会生物学やフレーゲの論理思想、キリスト教信仰、認知科学、メレオトポロジー、技術者倫理と、一見バラバラな素材を取り扱っているように見えるが、それらはいずれも価値と人間の行為の合理性を軸とした認知と行為の問題の解明に他ならない。認知と行為の関連の問題は、さまざまなヴァリエーションをもって問われ続けてきた哲学の根本的な問題群であり、さらにその根底には人間とは何か、あるいは何であるべきかという問いが潜んでいる。これについてはさらに別のプロジェクトによって研究の継続を期することにしたい。
著者
大貫 隆 北川 東子 黒住 真 杉田 英明 増田 一夫 村田 雄二郎 網野 徹哉 安西 信一 安岡 治子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

ユダヤ、キリスト、イスラームの三大一神教を「アブラハム的伝統」と捉え、そこに内在する差異、および他の宗教との差異を、地域文化研究に特有な多元的視点でもって分析、理論化した。その作業によって、「文明の衝突」論に見られるような、文明(西洋)/野蛮(非西洋)という図式の看過や行きすぎを指摘、訂正するとともに、世俗性もしくは世俗化についても、社会のあり方に応じて多様な形態がありうることを示した。
著者
堤 康央 角田 慎一
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、有効かつ安全な粘膜ワクチンシステムの開発を目的に、サイトカインアジュバントの最適化および、ナノキャリアによる抗原送達システムの構築を図った。その結果、粘膜ワクチンに最適なサイトカインアジュバントを探索し得る方法・基盤技術を確立すると共に、優れた粘膜ワクチン効果を発揮可能であること、ナノキャリアとの併用により、さらに効果が期待できることを先駆けて見出した。
著者
岩田 直也
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

今年度(2010年度)の主な研究成果は、8月に東京で開催された「国際プラトン学会」にて口頭発表を行った、プラトン『国家』第五巻末の議論での「対象」の意味の再検討である。プラトンは、ここでの議論において、「知識」と「思わく」を「能力」と定義し、そのそれぞれに「あるもの」と「ありかつあらぬもの」という異なる「対象」を振り分け、両者の心的状態を明確に区別した。しかしながら、多くの解釈者たちは、この「あるもの」と「ありかつあらぬもの」をそれぞれ「真実在」(イデア)と「感覚物」と伝統的にみなしてきた。その考えに従うならば、プラトンによるこの区別は「私たちが知りうるのはイデアのみで、自分たちの身の回りの世界については何も知りえない」といういわゆる「二世界説」に帰着する他はない。しかしながら、この「二世界説」は、われわれ現代の認識論的立場から到底受け入れられないばかりでなく、プラトン自身の他の対話篇、さらには『国家』における彼の哲人王のプログラム自体とも重大な齪齬をきたすため、それがプラトンの真意であったかどうかは慎重に判断する必要がある。私は今回の発表で、この「二世界説」問題に取り組む多くの論者の中でも、とりわけ影響力のあるファインとゴンザレスの解釈を詳細に分析し、両者の見解もまた伝統的解釈と同様に「対象」を「外延的」に捉えているために、問題解決に向けて不十分であることを指摘した。対して、私自身は「能力」の「対象」をその「仕事」と決して切り離すことができない「内包的対象」と捉えることで「二世界説」問題を根本的に解決することを試みた。この見解は、学会のProceedingsの形式で紙媒体としてすでに発表されている。なお、口頭発表での議論を踏まえた正式な論文は、本学会のSelected Papersに投稿し、現在はその査読結果を待っているところである。
著者
吉原 利忠
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

脂質膜,細胞内の酸素濃度を明らかにするためにレシオ法に基づいたプローブ分子を設計・合成した。合成したプローブ分子の発光は溶液,脂質膜中において酸素感受性の低いクマリン343の蛍光と酸素感受性の高いイリジウム錯体のりん光を示した。これらのプローブ分子のレシオ比(りん光強度/蛍光強度)は酸素濃度が減少するにつれて増加した。また,プローブ分子を培養細胞の培地に添加して蛍光顕微鏡で観察したところ,細胞から蛍光とりん光が観測され,細胞内酸素濃度計測のために有用な分子であることが明らかとなった。
著者
桑原 直巳
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

西欧における初等・中等学校の成立に際しては近代、カトリック修道会、特にイエズス会などを初めとする活動修道会(教育修道会)の役割は決定的であった。本研究では、従来我が国ではあまり顧みられなかった修道会の設立による初等・中等学校における教育活動およびその基盤としての修道霊性について、その倫理学的・倫理思想史的な意味を明らかにし、世俗的な「公教育」における道徳・倫理教育およびその理念との比較研究を行った。
著者
知念 宏司
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究においては、研究代表者が以前から関係している「剰余位数分布問題」において成果が得られた。これは、整数 a (2 以上で完全 h 乗数ではない)を固定し、素数 p に対して a の mod p での位数 D_a(p) の分布を調べる、より具体的には、D_a(p) を k で割ると l 余るような素数 p の自然密度を調べる問題である。この問題の拡張として、平方剰余の条件を付加した場合 (Chinen-Tamura, 2012)、および、mod p のかわりに mod pq とした場合 (Murata-Chinen, 2013) について成果が得られた。
著者
三島 好雄 北郷 邦昭 伊藤 雅史 仁瓶 善郎 西 直人
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1993

小口径血管手術後の長期開存率は極めて不良であり,本研究では臨床応用可能な小口径人工血管の作製と,閉塞原因としての仮性内膜肥厚などの出現機転の解明を目的として実験的臨床的に検討した.試作した人工血管は優れた抗血栓性を示す2-methacryl-oxyethyl phosphoryl-choline(MPC)ポリマーとsegmented polyur ethane(SPU)の混合溶液を直径2mmのDacr on人工血管に吸着させて作製し,長径2cmのMPC人工血管を,micr osur ger yによって家兎頚動脈に移植した.対象としてSPUのみを吸着させた人工血管を作製して,同様に移植した.コントール人工血管の内腔は移植90分で既に赤色血栓が形成され,全例3日以内に閉塞した.一方,MPC人工血管では,移植5日後の内腔面には血栓形成は認められず,移植1週後には内腔全体は薄いフィブリン様の膜で被われ,移植2ヶ月後には新生内膜の形成が認められ,直径2mmと極小口径であるにもかかわらず,移植後早期の開存率は良好であった.本人工血管は,仮性内膜のanchoringを改善することにより,臨床応用への可能性が示唆された.一方,閉塞原因としての仮性内膜肥厚は動脈壁に対する損傷の治癒過程であり,抗PDGF作用を有する薬剤の投与で抑制されたこと,異なるePTFE人工血管で内膜肥厚度に相違が見られるなど,薬剤投与とグラフト構造の改良により,遠隔成績の向上が示唆された.臨床例では晩期閉塞例の検討から,新たな閉塞機序として仮性内膜剥離が問題となる点が示唆された.本研究の課題は世界的にも活発な研究が進められており,今後,更に検討を要するものと考えられる.
著者
平出 隆俊 小澤 浩之 斉藤 茂 柴田 恭典
出版者
昭和大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

平成5年度は、平成4年度にまとめた『歯の健康に関するアンケート』から得られた、1.咬合ならびに顎機能異常の出現状況の精度を検討するため毎年実施している矯正専門医による歯科検診の『咬合異常の頻度』との比較検討を行った.その結果、高校3年次男子においては歯科検診:22%、アンケートによる自己申告性:26.5%とほぼ同程度の割合であった.従って、本アンケート調査結果は信頼性の高いものと判断できた.このことから次に2.スポーツ活動時に生じた歯・顎・顔面部外傷による咬合・顎機能異常の出現との関連を調査した.その結果、スポーツ外傷は男子:13.8%、女子:0%であった.男子のスポーツ外傷のうち外傷が原因となりその後、咬合・顎機能に異常を訴えたものは男子:41.7%であった.以上のことから活発な顎・顔面部の成長発育期における学童のスポーツ活動に対しては、安全性に対する歯科医学的に検討されるべき点が示唆される.1、2の調査結果をもとにスポーツ活動時における顎機能を調査するため、平成5年度は中学1年生から高等3年生までの6学年に『咬合圧シート』を配布し回収した.現在本資料を解析中である.このことによりスポーツ活動を積極的に行っているものとそうでないものの差異、ならびに各種スポーツ活動に特有に見られる顎機能を調査中である.
著者
重本 隆一 篠原 良章
出版者
生理学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

(1)方法の確立本研究ではまず、同側の神経線維の作るシナプスのみを調べるために、腹側海馬交連(VHC)をあらかじめ切断したマウスを作製した。このような動物から用意されたCA1領野のスライスから電気生理学的記録を行うとともに、シナプス蛋白質を精製しNMDA受容体の反応やサブユニットの定量を行った。また同様の動物から電子顕微鏡用の超薄切片を作成し定量的金標識法により個々のシナプスでのNMDA受容体の定量を行った。(2)グルタミン酸受容体の左右非対称性我々は既にNMDA受容体サブユニットNR2Bの左右のシナプスにおける局在の違いについて、postembedding法で解析し、錐体細胞のシナプス特異的に非対称性が存在し、介在神経細胞のシナプスは対称的であることを明らかにしていた(Wu et al., J Neurosci., 2005)。本研究ではシナプス全体としての左右差を明らかにするために、まずはシナプスに局在する蛋白質のうち量的な非対称性があるものを検索した結果、AMPA型グルタミン酸受容体GluR1サブユニットにNR2Bとは反対方向の左右非対称性がある事を定量的なWestern blotで明らかにした(Shinohara et al., PNAS, 2008)。その他のグルタミン酸受容体サブユニットには左右非対称性は認められなかった。(3)個々のシナプスにおけるNR2BとGluR1密度の逆相関当部門では、定量的な免疫電子顕微鏡法として凍結割断レプリカ免疫標識法の開発を進めている。すでにAMPA受容体については1チャネルを1つの金粒子で検出できる事を示しており(Tanaka et al., J Neurosci., 2005; Masugi-Tokita et al., J Neurosci., 2007)、NMDA受容体についても定量的な解析を進めた結果、NR2BとGluR1ではシナプスにおける密度に明確な逆相関が存在する事を明らかにした(Shinohara et al., PNAS, 2008)。(4)シナプス形態の左右非対称性また、我々は錐体細胞がシナプスを形成するスパインの構造自体に対応するシナプス間で大きな左右差が存在することを発見した(Shinohara et al., PNAS, 2008)。右側より入力を受けるシナプスの方が左側より入力を受けるシナプスよりも大きなスパインとシナプス面積を持っており、perforated synapseやmushroom型スパインの頻度が有意に高い。(5)その他のシナプス蛋白質の総量の左右非対称性NR2BとGluR1以外で、CA1によく発現しているイオノトロピック型グルタミン酸受容体、すなわちNR1, NR2A, GluR2, GluR3については、シナプス密度に左右非対称性は存在しないものの、これらの量はシナプス面積に比例していることが明らかになり、右側より入力を受けるシナプスの方が面積が大きい事を反映して、総量としてはこれらのシナプスでより多く発現していることが明らかになった。これはほとんどのPSD蛋白質にシナプスに含まれる総量としての非対称性が存在する事を示唆している。同様の理由により、NR2Bに関しては総量としての左右非対称性は打ち消されていることが明らかになった。逆にGluR1の非対称性は強調されており総量で2倍以上の差があった。(6)シナプス左右非対称性の生理的意義上記のようなグルタミン酸受容体やシナプス形態の左右非対称性の生理的意義を調べるためにマウス脳を左右で分断し、右の海馬を主に使うマウスと左の海馬を主に使うマウスの間で空間学習能を調べたところ、右は正常と差がなかったが左では障害が認められた。この結果はマウスでもヒトと同じように空間学習機能は右脳優位であることを示している。これは、右海馬シナプスに長期増強現象の結果増大するGluR1が密度が高いことと一致する結果である。
著者
江原 宏 三島 隆 内山 智裕 内藤 整 豊田 由貴夫
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

パプアニューギニア北部の東セピック州では,サゴヤシ民俗変種を,「大きい」(背が高い;樹高が大きい),「樹中の実(髄)が多い」といった樹体サイズなどを表す語,葉柄が白い,あるいは緑色といった特性,あるいは葉柄の基部の葉鞘に当たる部分の蝋状物質の蓄積程度の差を基準として仕分けているものと考えられた。同国ニューアイルランド島ケビエン地域においても,「木のように背が高い」との意味を示す語を名称とする民俗変種が分布するなど,樹体サイズの特徴が民俗分類で重要なことが明らかになった。また,胸高直径が特に大きな,多収性と考えられる民俗変種も認められた。ニューギニア島インドネシア領の西パプア州では,乾物率や澱粉収率の低い個体は,地下水位の高い地区に生育していたことから,生育環境が澱粉生産性に及ぼす影響の大きさが窺われた。一方,葉痕間隔が長いことは,生長速度が大きいことを意味するが,その値がニューアイルランド島の調査で幹胸高直径と負の関係にあることが窺われ,生長の早いタイプ,あるいは地域では,幹が細いということと考えられ,極めて興味深い結果を得ることができた。また,葉痕間隔とデンプン含量にも負の関係が認められ,生長の早いタイプでは低収傾向があることが窺われた。
著者
肥田 登 新見 治 HIRAOKA Mari MAIA Jose Gu 西田 眞 JOSE GUILHERME Maia
出版者
秋田大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

平成8年度の研究成果の概要については,リオ・ネグロ川の水位の年変化特性を中心に述べる。第1に,マナウス地点におけるリオ・ネグロ川の水位は,6〜7月頃に最高となり,10〜11月頃に最低となる。水位は11月頃から上昇に転じ,約8か月間を要してゆっくりと最高値に近づき,7月頃から約4か月間という短い期間の内で再び最低値にもどる。このように各年の水位は,主要因としては流域の雨季と乾季の降水量に反映されて,滑らかなサインカーブのように見える規則的な年変化をくり返す。この規則性は,20年平均のカーブで示すことによってより明瞭に見てとれる。第2に,年間を通しての最高水位の出現日は,1975年から1995年までの21年間の平均を算定した結果,6月22日となった。この間,最高水位の出現日の頻度は,10日間の間隔ごとに見ると次のようにほぼ正規分布を示す形で現れる。5月中:1回,6/01-6/10:3回,6/11-6/20:4回,6/21-6/30:8回,7/01-7/10:4回,7/11-7/20:1回。最高水位の出現日の最も早かったのは,5月20(1992年)であり,最も遅かったのは,7月16日(1986年)である。この間の開きは,約2か月である。なお,最高水位に達する日数は,多くの年の場合,2〜4日間程度は続くので,その間の第1日目を最高水位の出現日として採用した。第3に,年間を通しての最低水位の出現は,1975年から1995年までの21年間の平均を算定した結果,11月7日となった。この間,最低水位の出現日の頻度は,10日間の間隔ごとに見ると次のように現れる。10/01-10/10:1回,10/11-10/20:3回,10/21-10/31:5回,11/01-11/10:4回,11/11-11/20:2回,11/21-11/30:4回,12/01-12/10:1回,それ以降1回。最低水位の出現日の最も早かったのは,10月08日(1980年)であり,最も遅かったのは,暦年を越えた01月16日(1989年)であった。この間には,3か月余りの幅がある。最低水位の出現する期間の幅は,最高水位の出現する期間の幅よりも約1か月延びく。しかも,最低水位の出現日の頻度は,最高水位の出現日の頻度に比べてバラツイており正規分布を示す形ではない。上に示したとおり,最低水位が比較的多く現れる時期は,10月
著者
内田 裕之
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

純水素を高効率に大量製造可能な高温水蒸気電解(SOEC)、これを逆作動したSOFC発電用の高性能・高耐久性電極を研究開発し、以下の主な成果を得た。1)噴霧プラズマ合成法により、電子ーイオン混合導電性サマリアドープセリア(SDC)またはガドリニアドープセリア(GDC)粒子にNiやNi-Co合金ナノ粒子触媒を高分散することに成功した。2)固体電解質のイオン導電率が高いほどNi-Co/SDC水素極の性能が向上することを見出した。3)(Sr_<1-x> Ce_x) MnO_<3±δ>を合成し、SOFC酸素極として良好に作動することを見出した
著者
生駒 夏美
出版者
国際基督教大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

メディアや文学における危機の表象において、ジェンダーの要素が国家共同体の概念と深く結びつき、犯罪者のイメージが性的逸脱や規範的ジェンダー逸脱と関連していることが明らかになった。逸脱者を犯罪者として描き出し、罰することにより、他者として社会から排除し罰する機能を持つ言説は、同時にその社会の脆弱な規範や国民アイデンティティを保持しようとする意図に支えられている。