著者
木村 康義
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

パーキンソン病はいまだに確立された進行抑制治療や根本治療が無い、進行性の神経難病である。本研究では、再生誘導効果を持つペプチド(アミノ酸の短い鎖)をパーキンソン病を模した動物モデルに投与することで、治療効果を調べ、治療薬としての可能性を研究する。再生誘導効果とは、当該ペプチドが間葉系幹細胞という様々な細胞になることができる幹細胞を自分の骨髄から誘導する効果である。有効性がみられた場合は、どのような働きをもって効果を発揮しているかを解析することで、脳の機能を保つ機構の解明や他の治療薬の開発に有用な情報をもたらすことが期待される。
著者
藤井 雅留太
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では光学迷彩構造の1つであるカーペットクロークのトポロジー最適化を行い,複数の周波数において透明マント効果を出現させた.カーペットクロークは平坦面上の凸を無散乱化し,凸が無い場合と同じ平坦面による反射を実現することで.凸を不可視化することができる.形状表現方法としてはレベルセット法を用い,格子点上に配置したレベルセット関数を線形に補間し,レベルセット関数のゼロ等位面を誘電体構造の境界として有限要素モデルを作成した.複数の周波数において,散乱を数値化した評価関数の和を最小化する誘電体構造を設計した.得られた最適化構造の評価関数の周波数応答を計算し,複数の周波数で透明マント効果を確認できた.
著者
苧阪 満里子
出版者
大阪大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、情動評価をとりあげ、情動のフィルターを通したワーキングメモリの機能を、脳の神経基盤を基に解明することである。本年度は昨年度に続き、ワーキングメモリの中央実行系の機能を評価するリーディングスパンテスト(Reading span test)を用いて、その遂行に及ぼす情動の効果を、行動データとともに、fMRIによる神経基盤の検討を実施した。具体的には、RSTの刺激文に情動を喚起する文を用いて情動RSTを作成した。情動には肯定的情動(positive emotion)と、否定的情動(negative emotion)の2種類の情動を用いた。この2つのRSTと比較する統制群として情動の喚起の少ないRSTを作成して、遂行成績の比較を行なった。その結果、肯定的情動条件ではRSTの遂行成績に促進効果が認められた。一方、否定的情動条件では、成績の低下が認められた。また、このような情動が及ぼす影響は、若年者だけでなく、高齢者にも同様に認められた。その結果、fMRIによる神経基盤の検討の結果、肯定的情動は、脳の帯状回の活動を高めワーキングメモリの課題遂行に必要な注意の制御機能を促進することが、他方、否定的情動は、脳の扁桃体の活動を強め、帯状回を中心とする制御機能に干渉を起こして、課題遂行を妨害する知見を得た。このよう結果から、ワーキングメモリの神経基盤の核をなす前頭前野背外側領域や前部帯状回は情動制御とかかわりを持ち、注意の制御に関わる中央実行系の統御システムが、"うれしさ"や"怒り"などの情動の修飾を受けることがわかった。
著者
大塚 秀高
出版者
埼玉大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

江戸時代に、佐伯藩第八代藩主毛利高標が城中に創設した文庫にたくわえられた漢籍の一大コレクション、いわゆる佐伯文庫本は、そのほぼ半数が高標の孫の高翰の代に幕府に献上され、江戸城中の紅葉山文庫、ならびに昌平坂学問所・江戸医学館に分蔵された。この献上本は、明治維新以後いくたの変遷をへたが、今も独立法人国立公文書館附設の内閣文庫と宮内庁書陵部に、九割以上が遺されている。ところが、佐伯藩に残された非献上書の行方については、これまでよくわかっていなかった。非献上本は、幕末まで手厚く保存されていたようだが、維新後散逸する。きっかけは、文部省が、各府県から旧藩襲蔵書の目録を提出させ、そこから「聚珍書目一覧表」を作ろうとしたこと、にあった。明治四年のことである。各府県はきそって旧藩の蔵書を集めて目録化し、文部省に提出した。誕生したばかりの後の国会図書館、当時の書籍館は、自らの和漢書不足をこのリストから採選することによって補おうと考え、さっそくそれを実行に移した。この結果、国会図書館には今なお3種の存疑本を含む24種の佐伯文庫本が遺されている。このおり大分県に留め置かれた佐伯文庫本もあったが、洋書5種をのぞき、それらは戦災で焼失した。また、書籍館による採選の後、県下ならびに毛利家に留め置かれた佐伯文庫本の多くは、売却処分に附されたらしい。そして、その多くを購入したのが方功恵であって、方功恵に購入された佐伯文庫本は、再度海を渡り、多くは中国に戻ることになった。現在中国国家図書館・北京大学図書館などに蔵されているものがそれである。今回報告書の第一分冊として作成した「佐伯文庫旧蔵畳現存書目録(漢籍之部)」は、佐伯文庫本の、現所蔵機関をも明らかにしたユニオンカタログであり、第二分冊として作成した「方功恵碧琳瑯館旧蔵書総合目録(第二稿)」は、方功恵旧蔵書のユニオンカタログである。
著者
清水 節
出版者
金沢工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

オレゴン大学ナイトライブリーのスペシャルコレクションズに所蔵されている「ウッダード文書」の史料を調査した。この史料を用いて、従来、GHQの宗教政策史において基礎的な文献とされてきたウッダードの著作『The Allied Occupation of Japan 1945-1952 and Japanese Religions』(E. J. Brill 1972)を再検証した。これにより、本書の成立過を解明した。また、未掲載に終わった部分の解明と分析により、ウッダードの真意を理解する上での重要な手がかりを得ることができた。
著者
本間 真人
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

漢方エキス製剤のうち抑肝散製剤(抑肝散と抑肝散加陳皮半夏)について、患者389名(平均年齢:68.6歳)を調査し、副作用の低K血症の発現頻度とリスク因子を検討した。抑肝散製剤投与開始後の34日(1-1600日)に、94名(24.2%)が低K血症を発現していた。低K血症のリスク因子として、抑肝散の投与(抑肝散加陳皮半夏ではない)、K低下薬剤の併用、低アルブミン血症、満量投与の4つが同定された。甘草含量が少ない抑肝散製剤でも、低K血症の発症頻度が高いことが明らかとなった。その傾向は特にK低下薬の併用患者で顕著であり、低アルブミン血症や抑肝散の満量投与で注意が必要であると考えられた。
著者
安村 典子
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

プロメテウス神話について初めて言及しているのは紀元前7世紀のへーシオドスである。彼は『神統記』と『仕事と日』の両作品において、プロメテウスに関する物語を記している。『神統記』においては、プロメテウスとゼウスの知恵比べの物語が語られ、『仕事と日』では、ゼウスの火を盗んで人類に与えたプロメテウスに対する罰として、パンドーラが人類に送られたことが述べられている。本研究はこのプロメテウス神話を手がかりとして、(1)この神話のもつ意味を明らかにし、この神話を生み出した古代ギリシア人の精神を考察すること、(2)近代においてこの神話の意味が変容していったのはなぜであったのか、その理由を究明し、この神話のもつ今日的な意味を考察すること、以上の2点について研究することが、その目的である。
著者
久保田 均 久永 直見 高橋 幸雄 佐々木 毅
出版者
独立行政法人労働安全衛生総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

建築業従事者の職業性難聴について、三重県建設労働組合の男性組合員を対象に難聴の原因として考えられる各種有害因子へのばく露、或いは複合ばく露との関連を探る目的で調査研究を実施した。また聴覚に関して、従来の質問紙調査による自覚的聴覚と定期健診時の聴力検査結果(客観的聴覚)との関連を明らかにするための調査も行った。騒音ばく露に振動ばく露が加わると難聴発症のリスクが増幅、そこへ有機溶剤ばく露が加わることでリスクは更に増幅することがわかった。一方、難聴自覚症有り群となし群で、健診時聴力検査の有所見率に差があるか否かの検定を行ったところ、難聴自覚症無し群でも客観的聴覚の有所見率が高まる傾向がみられた。
著者
早川 清雄 高岡 晃教 亀山 武志
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

我々は、毎日、多くの食事を摂取している。食事には、ビタミン・ミネラル・タンパク質をはじめとした必須な栄養素が豊富に含まれており、それらが身体や健康の維持に重要であることが明らかにされている。しかしながら、食品に含まれる核酸による機能性は、ほとんど明らかにされていない。そこで、食品に含まれる核酸に注目し自然免疫応答に対する効果について検討を行った。免疫応答をつかさどるマクロファージ細胞に対して数種類の食品から抽出した核酸と口腔内に存在するペプチドを混合し処理を行うと、細胞質のセンサー分子を介して自然免疫応答が活性化されることがわかってきた。食品由来の核酸は、健康の一端を担っている可能性がある。
著者
島津 俊之
出版者
和歌山大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

十九夜講とは、月の十九日の夜に女性(おもに主婦)が当番の家や地域の公民館に集まって、如意輪観音の掛輔に念仏を唱えて安産や健康を祈る民俗行事である。これは一般に近世期に始まったとされ、如意輪観音の彫られた十九夜供養碑が建立されるのが通例である。それゆえこの行事は、ある種の<宗教景観>をつくりだす要因ともなる。講の行事を担う社会集団の規模は、近世の藩制村の構成要素としての、いわゆる村組レヴェルの小地域集団であることが多く、藩制村の枠を超えるケースはほとんどない。十九夜講は関東から東北にかけて盛んであるが、西日本では大和高原の北部地域(「東山中」と呼ばれる地域)に集中的にみられることが、これまでの研究からわかっている。それゆえ全国的にみると、東山中は十九夜講の分布における待異な飛び地をなしているといえる。この研究では、(1)<制度>としての十九夜講が、どの村落からいかなるかたちで空間的に伝播していったのか、(2)十九夜講が伝播した各村落において、いかなるレベルの社会集団が十九夜講の行事を担い行い、かつ十九夜供養碑の宗教景観をつくりだしたのかを、明らかにすることを目的とした。2年間の研究の結果、(1)については、十九夜講が現在の奈良市忍辱山地区からおおよそ同心円状に伝播してゆく過程が明らかになってきた。(2)については、十九夜講行事を担う社会集団は近世の藩制村レベルではなく、それを構成する小地域集団(村組や近隣組など)であるケースが多いことがわかっててきた。そのような小地域集団が、十九夜講伝播の担い手となり、十九夜供養碑の宗教景観をつくりだしたと考えられる。
著者
石橋 恭之 木村 由佳 佐々木 英嗣 千葉 大輔 石橋 恭太
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究の目的は、再生誘導医薬(HMGB1ペプチド)を用いて関節内組織修復を促進する新たな治療戦略を開発することである。関節軟骨は一度損傷すると自然治癒困難と考えられているが、HMGB1ペプチドにより関節内に間葉系幹細胞誘導することで組織修復を促進することが可能となる。このような治療戦略は従来の再生医療とは異なるコンセプトであり、関節軟骨のみならず、半月板や靱帯修復に応用できる可能性を含んでいる。
著者
安田 雅俊 田村 典子 関 伸一 押田 龍夫 上田 明良
出版者
国立研究開発法人森林研究・整備機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

大分県の無人島(高島)において特定外来生物クリハラリスの個体群を対象として①いかに個体数を減少させるか、②いかに残存個体を発見しするか、③外来リス根絶後の生態系の回復過程をいかに把握するかを検討した。異なる防除オプション(生捕ワナ、捕殺ワナ、化学的防除)の組合せが迅速な根絶達成に必要と結論した。クリハラリスの化学的防除の試験を行い、生態系への負の影響を最小化する技術を開発した。ベイト法は低密度個体群において有効と結論した。防除開始直後の高島の生物群集(鳥類と昆虫類)に関するデータを得ることができた。これは高島におけるクリハラリス地域個体群の根絶後における生態系回復の理解において重要となる。
著者
下崎 久美
出版者
東京藝術大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

20世紀初頭の民族音楽学者アルマス・ラウニス著『ラップランドのヨイク旋律集(1908)』(以下『ヨイク旋律集』)に掲載されている854のヨイクの譜例を対象に、研究者独自の観点から再分類および分析を行った。『ヨイク旋律集』は、1904年と1905年の7~8月に、イナリ、ウツヨキ、コウトケイノ、カラスヨキ、ポルマクの五つの地で23人以上の歌い手からラウニス自身が採譜した824の譜例に加え、他2名の採譜者による30の譜例を加えた計854の譜例をもとに、それらをフレーズ構成というラウニス独自の観点から712種に分類した旋律集である。本研究では、ラウニスが分類の基準としたフレーズ構成の他、各旋律の拍子、音域、音列といった音楽情報を抜き出し、また、それらを歌い手ごとに整理し直すことで、20世紀初頭の北サーミのヨイクの音楽的内容をより鮮明に浮かび上がらせることを試みた。考察の結果、20世紀初頭の北サーミのヨイクは、オクターヴ内の音域、2拍子または3拍子、D-G-A-Bを中心とする4音または5音の音列が典型的な例であることがわかった。これは、現在通説として語られている「オクターヴを超える音域と複雑な拍子」という特徴には当てはまらない。この理由はおそらく、これまでヨイク研究者が参照した録音資料の多くがサーミ人の日常生活において受け継がれてきた伝統的なヨイクではなく、1960年代以降レコード産業を通じて台頭した現代ヨイクの名手による技巧的に発展されたヨイクであるためと考えられる。本研究は、これまで先行研究において伝統的なヨイクと現代ヨイクの音楽的特徴が明確に区別されてこなかった問題点を示唆するものであり、伝統的なヨイクの音楽様式研究は、ラウニス以降に残された体系的な録音群や現代のフィールド調査で得られる録音の分析によって今後も発展の余地が十分にあるといえる。
著者
南 雅代 加藤 丈典
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

日本は舎利信仰が深く、火葬後の収骨儀礼も敬いの念があり、世界的にも亡骸を深く尊重する国であると言える。一方で、すべての遺骨が永続的に崇め祀られることはなく、弔い手のいなくなった放置遺骨が増えつつある。超高齢化社会になり、その数はさらに増え、社会問題になる可能性もある。まさに今、葬儀・埋葬様式を変えていかなければいけない過渡期にある。本研究においては、日本の埋葬文化を尊重しながら、新たな埋葬方式を導入することを目指す。つまり、①火葬骨を、急激にではなく、自然の土壌中の分解に似せて徐々に分解する手法、かつ、②普通に手に入る毒性のない化学試薬・反応を用いて環境に優しい手法、を確立する。
著者
入戸野 宏
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本研究では,近年注目されているハイレゾオーディオが聴取体験に影響する機序について検討した。脳波と誘発電位を測定した実験により,以下の3点が明らかになった。(1)高周波成分が含まれている音源を聴くと,それをカットした音源を聴くときより,聴取時の脳波パワーが増大する,(2)高周波成分をフィルタで除去すると音が時間的に歪む(立ち上がりがぼやける)が,その違いはサンプリング周波数が変わらなければ聴覚皮質では検出されない,(3)サンプリング周波数を下げると音のぼやけが聴覚神経処理に内耳のレベルから影響を与える。
著者
中村 和之 酒井 英男 小林 淳哉 小田 寛貴 浪川 健治 三宅 俊彦 越田 賢一郎 佐々木 利和 瀬川 拓郎 中田 裕香 塚田 直哉 乾 哲也 竹内 孝 森岡 健治 田口 尚 吉田 澪代
出版者
函館工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は、14~16世紀のアイヌ文化の状況を明らかにすることである。この時期は、近世のアイヌ文化の成立期であるが、文献史料と考古学資料が少ないため、状況がわかっていない。そのため、漢語・満洲語・日本語史料の調査を行うと同時に、遺物の成分分析や年代測定、それに遺跡の電磁探査など、さまざまな分析方法で情報を収集した。その結果、14~15世紀の北海道でカリ石灰ガラスのガラス玉が発見された。本州でほとんどガラス玉が出土しないので、アムール河下流域からの玉と考えられる。この時期は、元・明朝がアムール河下流域に進出した時期に重なるので、北方からの影響が強くアイヌ文化に及んだことが推定できる。
著者
篠田 謙一
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

今年度は昨年解析を行った中世集団墓地に隣接する由比ヶ浜南遺跡に埋葬された人骨のDNA分析を進めた。昨年分析を進めた集団墓地が複数個体の一括埋葬であったのに対し、由比ヶ浜南遺跡は、単体埋葬された人骨を分析の対象とした。昨年同様24体の人骨を対象に、DNAの抽出とミトコンドリアDNAの解析を行った。その結果、今年度は19個体の解析が可能だった。こちらは全部で27の変異箇所が検出され、16のタイプに分類された。こちらも同一配列を持ち、母系の血縁関係が予想されるものは2個体づつ3組で、特に特定の配列に集中すると言うことはなかった。双方の遺跡を通して見ても、D-loopの塩基配列が一致したものは2個体ずつ6組のみで、双方の遺跡に共通するのは1組だけであった。従って、特定の血縁集団の墓地ではないという昨年度の結果を追認するかたちになった。ハプログループ頻度を日本の他の集団と比較したところ、中世鎌倉のハプログループの頻度分布は、基本的には現代日本人に似ていることがわかった。しかしながら縄文人とは異なっており、一部の形態学者が言う中世鎌倉と縄文の共通性を示唆することはなかった。むしろ、現代の日本人に通じる遺伝子構成をしていたことが証明された。しかしながら中世鎌倉人骨の中には、日本人には非常に珍しいハプログループを持つ個体も存在しており、彼らは海外から渡来してきた人であった可能性もある。そうであれば中世鎌倉の国際性を示すものだと考えられるが、結論を確かめるためには、更に解析個体数を増やして、日本にはあまり多くないハプログループが更に出現するかを確かめる必要がある。今後の課題としたい。
著者
江藤 望 篠原 久枝 河原 聡 菅沼 ひろ子
出版者
宮崎大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

有用な母乳哺育を阻害する要因の一つとして乳腺炎が挙げられる。このうち、乳のうっ滞に起因する乳腺炎は、スクロースを摂食することで炎症が重篤化する事を見いだした。これは、我々の知りうる限り食品成分が乳腺炎発症あるいは重篤化と関連ある事を実験的に確認した最初の例である。
著者
竹内 賢吾 杉谷 巌
出版者
公益財団法人がん研究会
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

日本人の甲状腺乳頭癌における既知ドライバー変異分布に関して、BRAF V600Eが約80%、NRAS Q61Rが約1%、融合遺伝子が約6%に存在することが判明した(ドライバー変異不明 約13%)。未分化癌では、BRAF V600Eが約84%に存在することが明らかとなった。甲状腺葉切除術(LT)とするか甲状腺全摘出術(TT)とするかについて明確な適応基準が確定されていない1~4cmの甲状腺内乳頭癌(PTC)において、TERTプロモーター変異が陰性であれば、TTではなくLTを施行することで、治療成績を落とすことなく過剰治療の防止および術後の合併症の低減が期待できることを示した。