著者
藤元 優子 藤井 守男 山岸 智子 ターヘリー ザフラー 佐々木 あや乃 竹原 新 アーベディーシャール カームヤール 佐々木 あや乃 鈴木 珠里 竹原 新 タンハー ザフラー ターヘリー 藤井 守男 前田 君江 山岸 智子 山中 由里子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究はイランにおける多様な文学的言説を、ジェンダーを分析的に用いて総合的に検証することで、文化的周縁に置かれ、常に歪められてきたイラン女性の実像を明らかにし、ひいてはイスラーム世界に対する認識の刷新を図ろうとした。古典から現代までの文学作品のみならず、民間歌謡、民話、祭祀や宗教儀礼をも対象とした多様なテクストの分析を通して、複数の時代・階層・ジェンダーにまたがる女性の文学的言説の豊潤な蓄積を立証することができた。
著者
川嶋 辰彦 平岡 規之 山村 悦夫 田中 伸英 平岡 夫之
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

1.我が国の「都市圏システム」及び「都市圏の核都市システム」について:(1)都市圏システムは集中化段階をほぼ終えており、近い将来加速的分散化段階に入る可能性が大きい。(2)核都市システムは分散化段階をほぼ終えており、近い将来加速的再集中化段階に入る可能性が大きい。(3)核都市システムは、空間的循環過程に於いて都市圏システムより凡そ20年先行している。2.我が国の「巨大都市圏システム」及び「中小都市圏システム」について:(1)巨大都市圏システムは、減速的分散化段階の後半期にある。(2)中小都市圏システムは、減速的集中化段階の後半期にある。3.我が國の大都市圏人口の変化について:(1)三大都市圏(東京、大阪、名古屋)の人口増減は、米国大都市圏の人口増減動向を後追いしている。(2)「都市圏人口の純減過程」に対する先行指標と見做せる「核都市人口の純減過程」に目を遣ると、二大都市圏(大阪、名古屋)の核都市人口は既に比較的長期間に恒り続減している。(3)大都市圏の核都市は、空間的人口集散過程の文脈に於て、将来郊外部に対して相対的強者(即ち人口吸収力が相対的に勝る立場)となり得る。(4)大都市圏の核都市は将来、中小都市圏の核都市に対して相対的強者となり得る。(5)三大都市圏人口は1960年代以降続伸しているが人口成長率は三者とも0%に近づきつつあり、これら大都市圏は将来中小都市圏に対して暫らく弱い立場に立つとは言え、上述の諸点に照らすと比較的早い時期に中小都市圏に対して再び相対的強者となり得る可能性が小さくない。4.以上を踏まえて判断すると、大都市圏の核都市部が今後極めてクリティカルな都市機能的役割りを果たす可能性が大きく、その意味で特に東京都市圏中心地域の積極的な創造的都市投資が強く乞われている。
著者
柴田 史久 田村 秀行 木村 朝子
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

可搬移動型複合現実感システムに適した幾何位置合わせ手法の研究開発を推進し,複数の幾何位置合わせ手法を状況に応じて切り替えて利用できるような機構を提案・実装した.また,可搬移動型機器を用いた複合現実感システムを構築するための機能分散型フレームワークを設計・実装した.これを利用することで,コンテンツの動きが同期したMR空間を同時に複数のモバイル機器で共有可能なMRシステムを構築できる.
著者
前田 幸男
出版者
東京都立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究のデータ収集計画の過程で、従来とは異なる角度から政党支持・内閣支持の意味につき理論的に検討する必要を感じ、集計された世論調査データの推移を実際の国政の変化と対比させつつ検討する作業を行った。1993年以来の政党の離合集散は、政党支持の測定について、いわゆる五五年体制下では必ずしも明確に意識されなかった諸問題を認識する絶好の機会を提供していると考えたからである。その成果は、後掲の「中央調査報」論文に掲載した。また、内閣支持率の推移を検討する過程で、首相・内閣評価の問題について基礎的な情報を収集する必要を感じ、本調査の質問票には小泉首相を支持する・支持しない理由についての自由回答を付け加えた。本研究のデータ収集は計画より数か月遅れたが、予定された三重県松阪市で2004年12月に行われた。2005年1月末にデータは納品され、現在データ・クリーニングを兼ねた記述的分析が行われている。初期段階で注目するべき成果としては、A・Bの分割調査票形式で行った実験において、「政治」と「政府」では、有権者の反応に興味深い差が見られたことである。即ち、「政治」に対する信頼が「政府」に対する信頼よりも若干高めに出るのみならず、「わからない・答えない」の比率は「政治」についての信頼の方が低い。また、社会福祉質問では、「財政が苦しくても」と「増税してでも」という二つの似通った言葉を使い分けたが、そこにおいても統計的に有意な差が確認できた。今後は、分割票の特性を生かして、一体どのような属性の人々が、如何なる条件で異なる反応を示しているのか検討を続ける予定である。本調査で採用した政治知識尺度を利用することで、従来は得られなかった興味深い知見が得られるものと考えている。
著者
玉井 克哉 川村 一郎
出版者
東京大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1996

従来のマスメディアは、不特定多数に対する一方的な情報提供であり、かつ、運営のために莫大な資金を必要とするため、国民の意見を政府にフィードバックする点で一定の限界があったが、インターネットをはじめとするコンピュータ・ネットワークは双方向性を有するなどこれらの限界を克服する可能性を有している。また、電話など従来の通信手段に比べても様々な点で独自の優位性を持っている。このため、コンピュータ・ネットワークを政治的な活動に利用することは集団の意思形成に要する取引費用を削減し、国民の政治参加への道が大きく拓かれることが期待される。さらに、国民の政治的な意思決定の手段である選挙にもコンピュータ・ネットワークを活用した電子投票システムの導入が考えられる。電子投票システムは、(1)投票所を設けて投票及び開票手続を電子化する方式と、(2)投票所を設けずにネットワークの上で投票を行う方式とに大きく分けられる。(2)ネットワーク上で行う方式には、投票者及び開票者以外の第三者が投票者の本人確認を行うとともに投票の秘密を担保する方式と、当該第三者が本人確認を行い、投票者自身が投票の秘密を担保する方式が考えられる。これらの電子投票システムを実現するためには、投票の秘密を確保することと、選挙が公正に行われたことを担保することが重要な課題である。近年、欧米諸国のみならず日本においても、国や地方の重要な政策の決定に際し国民投票や住民投票を行うケースが増えている。電子投票システムの実現は投票や開票に要する経費や時間を大幅に削減することが期待できるため、国民投票や住民投票を行うことを極めて容易にするものである。しかしながら、このような直接投票の結果は世論操作の影響を受けやすいなどの問題点がかねてから指摘されており、電子投票の場合その傾向がさらに加速されるおそれがあると考えられる。
著者
谷垣 真理子 塩出 浩和 容 應萸 林 少陽 日野 みどり 神長 英輔 山本 博之 山本 博之 陳 広漢 毛 艶華 程 美宝 魏 志江 黄 紹倫 鄭 宇碩 ポール・バン ダイク 飯島 典子 小川 正樹 和仁 廉夫 崔 学松 内藤 理佳 八尾 祥平
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本プロジェクトは華南を起点とする華人ネットワークが北東アジアから東南アジアまでをどのように結びつけ、ヒト・モノ・金・情報の交流が行われているのかを検討した。本プロジェクトは北東アジアを視野に入れたことが特徴であり、現地調査を大きな柱とした。具体的には、北洋におけるコンブ貿易、北海道華僑社会、東南アジア華人の複合的アイデンティティ、広東省関元昌一族、マカオのハブ機能、珠江デルタにおける人材交流、台湾の客家文化運動、珠海の三竈島についての研究が実施された。この間、中国の厦門大学と中山大学、香港城市大学香港大学との研究交流が積極的に行われた。
著者
伊藤 圭一
出版者
明倫短期大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

低エネルギー電子線(low-energy electron beam : LEB)をメチルメタクリレート樹脂(MMA)に照射した際の物性を測定し、LEBがMMA樹脂に及ぼす影響を検討した。調査項目は表面硬さ、飽和吸水量、接着性である。それぞれの試験結果からはLEB照射と未照射の条件において有意差は認められなかった。本研究で実施した試験結果からは、対象とした義歯床用レジンに対してLEB照射を行っても物性を低下させないことが示唆され、LEBがMMA樹脂に与える影響を検討することができた。
著者
米田 稔 中山 亜紀 杉本 実紀 三好 弘一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究ではシリカナノ粒子を対象として、一般環境からのナノ粒子の曝露量評価を行った。シリカナノ粒子の生活環境中大気濃度をロープレッシャーインパクターで捕集し、ICP-AESで測定した。その結果、生活環境空気中シリカナノ粒子濃度として12. 7ng/m3という値を得た。この値をマウスの生体組織中シリカナノ粒子の分布モデルの計算に使用した結果、シリカナノ粒子の内、0. 3pgは肝臓に蓄積することが、また人間に対する分布モデルの計算では肝臓に1200pgのシリカナノ粒子が蓄積することが明らかとなった。
著者
長與 進 長縄 光夫 原 暉之 エルマコーワ リュドミーラ ミハイロバ ユリア 澤田 和彦
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

4年間(平成13-16年)にわたった科学研究費補助金による研究課題「来日ロシア人の歴史と文化をめぐる総合的研究」は、研究代表者1名と研究分担者11名(研究開始時の分担者1名が途中で逝去されたため、平成15年より新たに1名を補充)を中心として遂行された。具体的な研究活動は、このメンバーを中心として組織された「来日ロシア人研究会」を母体として、上記年度内に合計して20回開かれた定例研究会(うち2回は函館と長崎における研究合宿)を軸として進行した。定期的な研究活動をもとにして、平成15年3月に『共同研究 ロシアと日本』第5集を、平成17年3月に『共同研究 ロシアと日本』第6集を刊行することができた(「研究成果報告書」その1とその2として提出)。その1には聞き書き2編、論文14編、資料1編が、その2には聞き書き2編、論文19編が収録されている。両論文集は国内のみならず、国外の関連大学・図書館・研究所などに広く配布された。さらに「来日ロシア人研究会」のニューズレターとして、『異郷』を合計11冊(11-21号)刊行した。具体的成果の積み重ねによって、本研究課題を開始した際の「研究目的」-来日ロシア人の社会活動と文化活動が、わが国の文化・思想・宗教・教育・芸術などの学術分野と、さらに日常生活の次元において、どのような形で残され、継承されているかを検証すること-は、かなりの程度果たされたと考えている。
著者
小川 敦司
出版者
愛媛大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

特定の分子が存在する時にのみ、その濃度に応じてタンパク質が発現する仕組みを2つ作った。1つは原核細胞の翻訳システム中で働くもので、もう1つは真核細胞の翻訳システム中で働くものである。これらの分子応答性タンパク質発現システムは、生体システムを利用しているため、生体内外におけるバイオセンサーとして期待できる。また、簡単な調整によって、ターゲット分子を変換することができるため、汎用性も高い。
著者
白髭 克彦 広田 亨 須谷 尚史 伊藤 武彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2006

出芽酵母、分裂酵母を用いた解析により、基本的な染色体情報解析システムのパイプラインは構築され、染色体の基本的な構造、染色体機能の制御、そしてその連携機構についていくつもの新しい発見があった。特に、本研究が契機となりひと染色体構造の解析技術を構築できた意義は大きい。興味深い発見につながったものとして、1)ヒトに於いて、ChIP-chip解析が可能となったこと、および、2)ヒトコヒーシンのChIP-chip解析から明らかとなったコヒーシンの転写に於ける機能の発見、があげられる。当初、本研究を開始した時点では、ヒト染色体でChIP-chip解析を行うことは、ゲノムの5割を超える繰り返し配列がPCRで増幅する際のバイアスとなるため不可能であった。そこで、この増幅法の検討を重ね、DNAをin vitro transcriptionにより、RNAとして直線的に増幅し、リピート配列によるバイアスを抑制することで、ヒト染色体構造もChIP-chip解析可能な系を構築することが出来た。さらに、この技術を用いて、コヒーシンについて、効率の良い染色体免疫沈降が可能な抗体を取得し、ヒト染色体上における局在解析を行った。その結果、染色体分配に必須の役割を持つコヒーシンがヒトではその機能とは独立にインシュレーターとして転写制御に機能していることが明らかとなった。
著者
曽川 一幸
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

原発性肝細胞癌診断に用いる腫瘍マーカーは画像診断に及ばなく、新たなマーカーの探索が急務である。探索では原発性肝細胞癌患者術前後血清20組(計40検体)を使用し、血清中のメジャータンパク質12種類を除去し、MB-LAC ConA, MB-LAC LCAを使用し、N型糖タンパク質を抽出後、逆相HPLCで分画した各フラクションを二次元電気泳動で解析した。手術前後血清10組以上で、Desmoplakin、Elongation factor 2、Heat shock protein HSP 90-beta、Lamin-A/C、Involucrin、Serpin B3、Serpin B4、Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase、Protein S100-A9は手術前で発現量が高く、特にGrowth/differentiation factor 5の発現量の増加がみられた。検証では健常者血清、慢性肝炎患者血清、肝硬変患者血清及び原発性肝細胞癌患者血清各50検体を使用し、Growth/differentiation factor 5 のELISA kitを用いて解析した。肝硬変患者血清と原発性肝細胞癌患者血清との間で統計学的有意差(p<0.01)が認められた。
著者
吉村 武彦 杉原 重夫 加藤 友康 川尻 秋生 柴田 博子 市 大樹 加藤 友康 川尻 秋生 柴田 博子 市 大樹
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

墨書土器に関する研究文献データベースは、総計が1,866件になった(継続中)。墨書土器データベースは、全国簡易版(釈文・遺跡名・所在地・出典データ)が108,744点、詳細版は四国4県、鹿児島を除く九州6県と、北陸の富山、東海の静岡、および飛鳥・藤原・平城宮出土の墨書土器を公開した。この成果により、関東以西の墨書土器の全国的比較研究と都城との比較が可能になった。地域研究は、千葉県市川市を対象に進めている。
著者
廣瀬 憲雄
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本年度の研究目標は、特に隋代から宋代にかけて東アジア諸勢力間の外交関係として散見される「擬制親族関係」に注目して、東アジア地域の外交関係を検討することに加え、特別研究員としての研究成果全体をもとに、外交を通じた東アジア地域の連関を明らかにして、日本史を中心にした各国・各地域の歴史を、「東アジア」という地域の中に改めて位置付け直すことである。まず前者に関しては、以前に行った隋・唐代、および日本-渤海間の擬制親族関係についての予備的な検討をもとにして、時期を宋代にまで広げ、対象も中国王朝と西方・北方の諸勢力間や、日本-渤海間以外にも広げて擬制親族関係の事例を集積して、東アジア地域における実際の外交関係の全体像を明らかにした。その結果、従来説かれてきた日本・中国・朝鮮を中心とする、いわゆる「東アジア世界」に関しても、より広く中国の北方・西方を加えた「東部ユーラシア」という視点や、より狭く日本と朝鮮の類似性に注目するなど、複数の枠組を利用することで、より多様な理解が可能であることを提示した。また後者に関しては、宋代の外交文書・外交儀礼についての新たな研究を土台として、来る5月に歴史学研究会日本古代史部会において、「倭国・日本史と東部ユーラシア-6~13世紀における政治的連関再考-」と題する大会報告を行う機会を与えられた。当該報告では、従来「東アジア」という地域設定のもとに、西嶋定生・石母田正両氏の枠組で説明されてきた、7・8世紀を中心とする「東アジアの中の日本(史)」に対して、「東部ユーラシア」という新たな地域設定と、宋代を加えた新たな時期設定から再検討を加えていく。さらにこの作業を通じて、日本史も含めた広域の地域世界像についても言及していく予定である。最後に、今年度は中華人民共和国・北京大学中国古代史研究中心主催の国際シンポジウムに招かれ、本研究全体を通じた重要な検討課題である、日本-渤海関係の報告を行ったことを付記しておきたい。
著者
下田 慎治
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

原発生胆汁性肝硬変(PBC)は慢性非化膿性破壊性胆管炎を病理学的特徴とする臓器特異的自己免疫疾患である。今回胆管上皮細胞破壊におけるToll様受容体(TLR)リガンドとNK細胞の役割を明らかにした。TLR3リガンド刺激で単球から産生されるIFN-aの存在下で、TLR4リガンドで刺激されたNK細胞が、自己の胆管上皮細胞を破壊する事が明らかになった。実際に肝臓由来の単球からのIFN-a産生はPBCにおいてその他の疾患対照群と比較して亢進していた。また免疫染色の結果から破壊された胆管周囲にCD56陽性のNK細胞がPBCでより多く散在している事が明らかとなった。次にマウスモデルを用いて、病初期の免疫誘導にNK細胞のような自然免疫攻撃細胞の果たす役割を明らかにした。NK細胞を除去すると抗ミトコンドリア抗体の産生や自己抗原反応性T細胞からのサイトカイン産生が抑制された。しかし門脈域の炎症は対照群と比較して大きな差は認め得なかった。これらの結果は、PBCの病因病態は多段階あり、NK細胞は免疫寛容の破綻に関与している事が示唆された。
著者
松井 豊 望月 聡 山田 一夫 福井 俊哉
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

惨事ストレスへの耐性に関するプロアクティブな予測を行うために、消防署に配属された新人消防職員を対象にして、1年の間隔をおいて、心理検査・神経心理学的検査・脳科学的な検査を継時的に行った。2回の検査を受けたのは、消防職員7名と対照群として男子大学生2名であった。各神経心理検査得点について,大学生と消防職員を比較するために,Mann-Whitney検定を行った結果,各神経心理学検査得点には有意な差はみられなかった。職場配属から検査実施までの間で,衝撃をうけた災害へ出動経験があった消防職員が存在したので,被災体験があった消防職員(N=4)と被災体験がなかった消防職員(N=3)の神経心理学的検査得点を比較するために,Mann-Whitney検定を行った。その結果,Tapping Span(逆)に有意差傾向がみられ(p=.057),被災体験があった消防職員は,被災体験がなかった消防職員よりも得点が低かった。Tapping Span(逆)以外の神経心理学的検査得点には,被災体験による有無により,有意な差はみられなかった。また、効率的な検査実施のために、タブレット方パソコンを使って、検査過程を自動化するソフトの開発も行った。なお、研究協力者のスケジュールの調整がつかず、平成23年5月に検査が延びたため、研究終了が延期された。
著者
藤井 拓人
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

様々な癌細胞に異常発現するナトリウムポンプα3アイソフォーム(α3NaK)は、通常ナトリウムポンプが存在する原形質膜ではなく、rab10の存在する小胞に局在していた。ヒトおよびマウス癌細胞を用いたin vitro実験およびin vivo実験の結果、細胞内小胞に分布するα3NaKは、癌細胞の生存および成長に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
著者
石橋 寛二
出版者
岩手医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

口腔インプラント治療は、急速に適応が高まってきており、長寿社会へ貢献しつつある。近年、インプラント治療は中高齢者のQOLの向上とともにアンチエイジングにも貢献している。このようにインプラント適用患者が急速に高まっている現在においては、インプラント周囲に悪性腫瘍が発生して放射線療法が適用される場合が予測される。しかし、インプラント治療後の口腔領域に悪性腫瘍が生じ、腫瘍切除術に際して放射線療法が適用された場合におけるインプラント/骨界面に関する報告はなされていない。本研究では、インプラント埋入後に放射線療法が行われた場合における骨組織反応を明らかにすることを目的として、インプラント周囲骨組織の創傷治癒過程を想定した培養モデルを作成して解析した。平成21、22年度において、純チタン、表面処理チタン上で培養した骨芽細胞へ放射線照射を行い、細胞付着率、骨芽細胞分化マーカーを指標とした遺伝子発現について分析した結果、40,400mGy放射線量に比較して4000mGy放射線照射された骨芽細胞は、純チタン上と表面処理チタン上では共に細胞増殖速度の低下と細胞外基質生成、初期石灰化形成における細胞分化パターンの著しい低下を認めた。一方、40,400mGy放射線照射された骨芽細胞の分化は影響を受けず、純チタン上に比較して表面処理チタン上での骨芽細胞の分化は促進されることが認められた。本研究は、in vitro環境での一定条件下で骨芽細胞へ放射線照射を施したものではある。しかし、骨組織へ表面処理を施し骨伝導能を備えた純チタンインプラントを埋入後に放射線治療を余儀なくされた場合においては、表面処理を施さない純チタンインプラントに比較して骨のリモデリング時における骨基質生成と石灰化能の低下をある程度防ぎ、オッセオインテグレーションを恒常的に維持していくことができる可能性が細胞レベルで明かとなった。
著者
石川 永子
出版者
公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は,事前復興の概念と参加型まちづくり技術を用いて,地域に暮らす災害時要援護者(特に障がい者)の避難・避難生活・復興という各フェーズの支援計画を事前に立案・策定するための,市民参画のプロセス・デザイン手法の開発を目ざした.そのなかでも,第一段階として,災害発生から避難所等の避難生活の期間について,神戸市兵庫区での実践研究を行った.災害時に住民による避難所の運営に関して,障がい者と地域コミュニティ・専門家・行政等が協働するイマジネーションスキルを向上させるためのトレーニングプログラムを企画・実践し,そのプログラムの効果と課題をCBRの戦略の考え方を用いた訓練のプログラムの試行と参加者の評価に関する調査を行い,それらをCBRの戦略のなかで重要とされる事項を参考にしながら分析した.
著者
周 金枝 (2007) 周 金枚 (2006)
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本研究では、防火服着用時の生体負担軽減の方策を探求するため、異なる防火服等着衣時の生体負担の相違について検討することを目的に、消防隊員及び学生を対象に、暑熱ストレス軽減及び活動性の向上をめざした改良試作防火服、試作冷却装置および半ズボンなど異なる着衣条件下で、高温に設定された人工気候室内でトレッドミルによる運動を行った際の温熱負担について、生理・心理的指標の両面から検討した。さらに、改良した防火服、冷却装置及び半ズボンなど異なる着衣条件における着脱衣感、快適性、動作性について質問紙等を用い検討した。トレッドミルによる運動負荷実験では、試作防火服及び試作PCMの着用により、平均皮膚温の上昇がやや抑制されるこが示されたが、直腸温、心拍数及び体重減少量においては着衣条件間に有意な差は見られなかった。一方、心理反応においては、現防火服は、試作防火服及び試作冷却装置の着用よりも、主観申告は、「暑い側」、「不快側」、「湿っている側」になった。さらに、試作防火服、試作冷却装置及び半ズボンにおける活動性について評価したところ、消防訓練活動を行った際に、足の上げやすさの項目で、試作防火服、試作PCM、半ズボン着用条件の方が評価が高かった。しかし、運動負荷テストまたは消防訓練活動を行った際の動作性は、現防火服着用時に比べ、試作防火服、試作冷却装置、半ズボン着用時は、上半身の動きにおいて評価が悪く、脱衣感のアンケートにおいても現防火服の方が軽いという評価であった。これらのことから試作防火服及び試作冷却装置の使用が運動時の身体的温熱負担軽減に大きく関与することはなかったが、心理的な暑さ、不快感の軽減には効果があることが示された。