著者
今野 美紀 丸山 知子 和泉 比佐子 澤田 いずみ 上村 浩太
出版者
札幌医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は(1)入院児の親を対象に家庭における喫煙状況を調査し、子どもへの受動喫煙の実態を調査する、(2)入院児の親を対象に「禁煙と健康支援活動」を行い、その効果を親の変化と携わった看護師の変化から検討する、以上の2点を目的に調査と看護介入を行った。1.入院児をもつ親の家庭における喫煙状況入院児の喫煙する親50名への調査の結果より、児の殆どは家庭内で受動喫煙に曝露されていた。作成したパンフレットから「換気扇や空気清浄機ではタバコ煙の影響を無くせないこと」を新たに学んだ、と述べる者もおり、禁煙・分煙について正確な知識提供の必要性が示唆された。禁煙に無関心な親は「喫煙をストレス解消の手段」と捉えていたが、禁煙に関心ある親は子どもや家族、自分の健康への影響を案じており、医療者からの禁煙助言を希望する割合が増えた。2.入院児の親に行った「禁煙と健康支援活動」の効果平成17〜18年度に療育目的に母子入院した児の親61名を対象に「禁煙と健康支援活動」を行った。その結果、親の喫煙知識が増えたが、本人の喫煙本数、禁煙の準備性に変化は見られなかった。看護師の喫煙知識は有意に増え、禁煙に携わる自信も次第に高まった。看護師は無関心な喫煙者に対応する困難さや子どもの障害のリスクゆえに喫煙を話題にする躊躇を覚え、親の禁煙意思に影響を与える環境の大きさを感じながらも、入院児の親の禁煙試行を励まし、子どもの健康と関連づけて禁煙の動機付けを高めるよう情報提供をしていた。病棟としては親の禁煙への関心を喚起し、禁煙を話題にしやすい雰囲気を醸成していた。
著者
岡崎 敏雄
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

平成7年度より9年度にわたる資料・先行研究・茨城県下の面接調査の結果、当研究の目的「海外における年少者言語教育研究・日本における帰国子女教育研究の蓄積の結果提出されたCumminsの相互依存の仮説および小野の小学校時代1言語の仮説が、日本的条件下で学習する外国人年少者の諸ケースでどのように妥当しているか、また妥当していない部分についてどのような新たな検討すべき要因があるかを明らかにすること」に関して、両仮説が前提として取り上げた要因群の中に含まれていない(従って海外言語教育研究・帰国子女教育研究では取り上げられて来なかった)「1.日本人教師の外国人年少者の受け入れ観、日本語・母国語教育観」および「2.外国人年少者の父母の日本語・日本社会に対する姿勢、母国。日本語の必要観」の2要因が日本の条件下における年少者言語習得・保持に高い影響度を持つことが示された。以上に基づき、本研究では前者の要因に焦点を当て、これらの教師の持つ言語教育観、またそれらに影響を与える教師・学校の属性それぞれの特色に関わる調査を当研究の一環としてなされた諸ケーススタディを踏まえ、日本語教育を必要とする外国人小中学生の日本語教育担当教師及びクラス担任に対し質問紙調査を実施し、重回帰、クラスター、分散の各分析により分析。考察した。その結果、日本的条件下の教師の言語教育観は、全体として「継続的二言語併行型」を示し、同時に「少数散在型」、「受容型」、「短期滞在注目型」、「滞在エンジョイ型」、「現行制度枠内型」の特徴を示し、属性では「指導した外国人年少者数」、「父母との懇談経験」、「外国人年少者指導研修経験」が大きな影響力を持つことが明らかにされた。
著者
高井 治 APETROAEI NECULAI APETROAEI Neculai
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究では液中での放電現象(ソリューションプラズマ)を利用した金属ナノ粒子(主に銅ナノ粒子)の作製と形状制御を試みた。以下に本年度で得られた具体的成果を示す。(1)作製法ワイヤもしくはロッド電極には銅やタングステンを用い、平板電極に銅を使用した。放電が発生した領域において電極の溶融・蒸発が進行し、誘電液体中、核生成とそれに続く凝縮によりナノ粒子へと変化し液中に分散した。ナノ粒子生成の確認にはTEMを用いた。(2)形状制御誘電液体の種類を変えることで、生成するCuOナノ粒子の形状を制御した。純水中では幅10nm、長さ100nm程の針状構造を確認した。エタノールもしくはエチレングリコール中では銅-炭素合金状を、水-ヒドラジン系では多角形構造やロッド構造の生成を確認した。初期状態の形状は同じだが、最終的には液体自体の特性に因るところが大きいことが分かった。(3)電極表面銅、モリブデン、タングステンなど各種電極の表面形状をSEM観察したところ、放電前後で表面形態が変化していることが分かった。以上より、本年度はソリューションプラズマによるナノ構造制御の基礎的知見を得て、作製プロセスを確立することができた。
著者
山崎 古都子 田中 宏子
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、日本の住宅の長寿化と、減災を促進することである。本論では生活実務に内在するジェンダー性が、住宅管理行動の減衰と技術低下の傾向を生み、それが住宅の長寿化の阻害要因であることを検証した。また、居住者には根強い建て替え意識があることが減災に対する無関心を生んでいることを明らかにした。従って、住宅の長寿命化、減災両側面から住宅の管理責任意識を発揚する必要がある。そのために本研究では、地域と、学校が連携して居住者を育てる減災教育カリキュラムを開発した。
著者
安田 彰
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では, デジタル直接駆動スピーカの高性能化を図るため, マルチコイル型ダイナミックスピ. カユニット, 積層型圧電スピーカユニットおよび駆動系デジタル信号処理系に関する研究を行った. マルチコイル型では, サブユニット問のミスマッチが低減され高精度化を図り, 積層型では音圧の向上・実装面積の小型化が実現された. また, デジタル信号処理系でのミスマッチシェーパの性能向上により雑音特性の改善を実現した.
著者
松久 玲子
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

1920年代から30年代の広義のメキシコ革命期における公教育制度の形成過程で、女性の教育についても議論が行われた。職業教育として家庭学校が設立され、農村教育において、家庭科カリキュラムが策定された。フェミニスト教育官僚エレナ・トーレスの活動に沿って、主婦役割がカリキュラムにおいて定式化された過程を明らかにし、学校教育におけるジェンダー規範の形成を考察した。女性が家庭での再生産活動を通じ国家に接合されるとともに、一方で女性の自立的身体管理を含意する性教育が社会的反発により学校教育から排除された。
著者
堀口 郁夫 松岡 延浩 松村 伸二 谷 宏 町村 尚 内藤 成規 今 久
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1994

誰にでも使用できることを目標に、衛星赤外データ解析のシステム化の研究を行って一応の完成をみた。解析ソフトは、気象衛星ノア(NOAA)のAVHRRデータと気象衛星ひまわり(GMS)データについてである。これらはMicrosoft Windows 95のパソコン上で作動するようになっている。CPUはPentium 90MHz以上、メモリ16MB以上、ディスク50MB以上のハードウエアが必要である。また、光磁気ディスクなどの補助記憶装置を備える必要があり、表示装置としては256色以上のディスプレイが必要である。これらは最近価格が安くなっており、誰でも容易に備えることが出来る。気象衛星ノア(NOAA)のAVHRRデータについては、タンジェント補正、幾何補正、プロファイルの表示、植生指数の計算、表面温度の計算、これらの印刷、ファイル保存などの処理をするソフトで構成されている。また、気象衛星ひまわり(GMS)については、画像の切り出し、地図投影、海岸線や緯度経度の表示、ピくセルの情報、拡大縮小表示、大気補正、画像出力、などのソフトが組み込まれている。試作段階のソフトとデータをインターネット上で配布するため、千葉大学にfitサイトを設置した。同時に12名のモニターを選び、配布方法とソフトも使用感に関するアンケート調査をした。1997年1月30日からデータ配布用サーバの運用を開始した。試験配布の結果から、基本的にはfitソフトとデータの配信を行うこととした。なお、申請などはネットワーク上で行うこととし、WWWサーバを利用した。
著者
松居 竜五 奥山 直司 橋爪 博幸 安田 忠典 小峯 和明 千本 英史 横山 茂雄
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では南方熊楠の未公刊資料のうち、書簡、日記、ノート類など自筆原稿に関して、翻刻およびデータ編集をおこなった。またその結果に基づいて論文、展観、シンポジウムなどのかたちで南方思想の学際的かつ国際的な研究を進めた。このことにより、南方の比較説話学、仏教学、環境思想などに関して、従来よりも幅広く精緻な像を示し、今後の研究の方向性を切り開くことができたと考えている。
著者
若杉 昌徳 栗田 和好 野田 章 白井 敏之 頓宮 拓 玉江 忠明
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

短寿命不安定原子核の電荷分布を世界で初めて測定できる方法として、電子蓄積リングにおけるイオントラッピング現象を利用したSCRIT法を発明した。SCRITの原理実証を行うためプロトタイプを京都大学化学研究所の電子蓄積リングKSRに挿入して実験を行ってきた。その結果、わずか100万個のCs原子核を標的とした電子弾性散乱を起こさせ、その散乱断面積の測定に成功した。これによって数量の限られた短寿命不安定核の電子散乱実験法が確立した。
著者
富澤 芳亜 阿部 武司 金丸 裕一 久保 亨 桑原 哲也 萩原 充 吉田 建一郎 加島 潤 今井 就稔 芦沢 知絵 張 忠民 陳 慈玉 陳 計堯
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

主要なものとして、以下の3つがある。(1)社会経済史学会第78回全国大会におけるパネル・ディスカッション「両大戦間期・第二次大戦期の中国における在華日系企業の活動-内外綿会社の活動を事例として」(2009年9月27日)、およびシンポジウム「両大戦間期・第二次大戦期の中国における在華日系企業の活動」(2009年9月28日、東京大学社会科学研究所)の開催。(2)富澤芳亜、久保亨、萩原充編『近代中国を生きた日系企業』の刊行(平成23年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費)交付内定)。(3)在華紡関係者のインタビューの文字化とその校閲(一部は公刊済み)。
著者
丹後 弘司 重松 敬一 大竹 博巳 山田 篤史 荒井 徳充 大竹 真一 勝間 典司 加畑 昭和 川口 慎二 黒田 大樹 小磯 深幸 河野 芳文 酒井 淳平 辻 幹雄 槌田 直 中井 保行 二澤 善紀 長谷川 貴之 横 弥直浩 吉田 明史 吉田 淳一
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究グループが作成を進めてきた、理系分野への進学を目指した高校生を対象とし、より広い立場からの高等学校と大学との連携を意識した新しい高等学校数学の実験的教科書・教材を教育現場で使用し、具体的問題を抽出しつつ改善を図る研究を進めた。研究成果としては、教科書紙面、投げ入れ的な実践で教材として用いることができるコラム、授業実践で用いた教材がある。これらの成果は、生徒・授業実践者の感想や授業観察者の評価とともに報告書にまとめ上げた。
著者
山本 福壽 伊藤 進一郎 板井 章浩 小谷 二郎 伊藤 進一郎 板井 章浩 小谷 二郎
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ヒノキ科樹木の漏脂現象(ヒノキ漏脂病など)に関連した傷害樹脂道の形成機構を検討した。樹幹の連続的な漏脂現象には傷害刺激の伝達物質であるエチレン、ジャスモン酸、およびサリチル酸の濃度バランスが関与しているようであった。またエチレンの前駆物質であるACC合成酵素の遺伝子発現も確認した。さらにタイ王国においてAquilaria crassnaを用いて樹幹内の沈香成分沈着に関する刺激伝達物質の役割についても検討し、生産促進処理技術を開発した。
著者
伏見 正則 田口 東 大山 達雄 腰塚 武志 三浦 英俊 栗田 治
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

1.都市の平面交通に関する数理的研究:東京都のような放射・環状道路網を有する都市,あるいは札幌や京都のような直交格子状道路網を有する都市において、通勤や物資の輸送等のために生ずる交通量について、種々の特性を数理的に求め、それに基づいて、渋滞を避けるために必要な道路面積、就業地域と住宅地域の最適な配分等についての知見を得た。また、東京都を例にとって、実際のデータと理論の整合性についても検討した。2.都市の高層ビルにおける移動時間の分析と、ビルの効率的面積配分に関する研究:高層ビル内の移動に関して重要な役割を果たすエレベータとエスカレータに関して,適切な役割分担、ゾーニング方式の最適設計、移動に必要な部分の面積とオフイスに使える面積を考慮したビルの最適形状等について数理的な検討を行った。また、ビル間の移動に要する時間を考慮した場合に、交通路と居住地をどのように配分するのが適切かについても数理的に論じた。さらに、新宿の高層ビル群で移動に要する時間の実地調査を行い、数理的なモデルの妥当性を検証するためのデータを得た。3.都市間交通網の評価:道路網あるいは鉄道網による都市の結びつきの強さをグラフ理論を使って評価する方法を検討し、それを使って、北海道の道路網およびユーラシア鉄道網の評価を行った。このような研究は、新線建設の重要度評価などのために有用であると考えられる。4.公共施設の最適配置:高額な高度医療機器や老人福祉医療施設などの公共施設の配置に関する地域間格差を調査し、それに基づいて、施設を適正に配置するための数理的手法について検討を行った。
著者
吉本 敦 庄司 功 尾張 敏章 加茂 憲一 二宮 嘉行 木島 真志 庄司 功 加茂 憲一 尾張 敏章 柳原 宏和 二宮 嘉行 佐々木 ノピア 木島 真志
出版者
統計数理研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

1992年の生物多様性条約採択以降、生態系保全政策のグローバルな影響への関心が高まっている。このような保全政策はある地域の政策が他の地域の生産活動に及ぼす影響を考慮しながら、地域レベルの生態系サービス(多次元的な財)の生産調整を行う必要がある。その結果、地域的あるいは国際的に効果的・効率的かつ実行可能な保全政策を展開することが可能となる。本研究では、トルコ、韓国、日本を中心に、森林資源から供与される多次元的な財の中で、特に生息地供与機能、侵略的外来種防止機能、美的景観供与機能を特定するモデルを開発し、森林資源・生態系管理に対する時空間最適化モデルの構築により、それら機能を定量的に明らかにした。
著者
横山 裕一
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

軽度認知障害(mild cognitive impairment : MCI)は、その14%が1年で、40%が4年で認知症へ転換するといわれ、その予後の違いを予測する因子を明らかにすることが重要である。本研究は、認知障害の時間的推移と、認知症転換への予測因子を総合的に解析し、最終的には認知症への転換を予測するニューラルネットワークモデルを構築することを目的とした。レビー小体型認知症(Dementia with Lewy bodies : DLB)では早期から自律神経機能の障害が出現することが先行研究で報告されており、心臓交感神経機能を評価する目的で使用されているMIBG心筋シンチグラムを用いた先行研究では、DLBの病早期からMIBGの心筋への集積低下がみられることが報告されている。このため、心臓交感神経機能の障害はMCIからDLBへの転換を予測する因子となり得る。しかしながらMIBG心筋シンチグラムは国内では保険適応外であり、検査が非常に高額であるためスクリーニングとしては適さないのが現状である。その代替法を考案するため、心臓交感神経賦活と前頭葉ヘモグロビン濃度変化の関連について、近赤外線スペクトロスコピィNIRO200(Hamamatsu Photonics K.K., Japan)と心臓交感神経機能を反映すると考えられる心拍計R-R間隔変動の最大エントロピー法によるリアルタイム解析(MemCalc/Tarawa, GMS)を用い、健常対照群と患者群における比較研究を行い、その結果を第32回日本生物学的精神学会において発表した。結果としては残念ながら上記代替となる十分な指標は得られず、研究法の改善を今後の課題とした。研究者は、平成23年4月から更に研究を推進するべく大学院へ進学することとなり、本研究費を得る資格を失うこととなったが、今後も認知障害の研究に取り組んでいく所存である。
著者
数土 直紀 赤川 学 富山 慶典 盛山 和夫 金井 雅之 伊藤 賢一 樽本 英樹
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本プロジェクトは、期間中に合計12回の研究会を学習院大学において開催した。また、研究会での成果を、海外を含む各種学会・会議において発表報告をした。研究会での報告内容は、次の通りである。(1)「ウォルト・ディズニーの思想」、(2)"Evolution of Social Influence Networks in Unanimous Opinion Formation"、(3)「Social Capital概念の適用可能性」、(4)「階層意識上の性-権力」、(5)「Dunkan WattsのSmall Worldシミュレーションを応用して」、(6)"Independence of Protestantism and Capitalism"、(7)「規範性のメタ理論的考察」、(8)「『社会構造のモデル樽築』」、(9)"Evolution of Distributive Justice in Social Influence Networks"、(10)「政治的権力の正当性からの独立性」、(11)「後期ハーバーマスの展開の体系的分析」、(12)「都市型公共空間における不関与の規範の形成」、(13)「損害賠償額が上昇するメカニズム」、(14)「シミュレーションということ:く社会>の理解/記述/創出」、(15)「構成主義と構成されざる現実」、(16)「利他的な行為者はゲームをどうみているか」、(17)"Escape from Free-riders"、(18)「倫理的判断の不偏性」、(19)「ロマンティック・ラブの日本的受容〜『主婦の友』に見る「愛」と「恋愛」の変遷〜」、(20)「社会移動表における非対角セルの分析」、(21)「社会運動への動員における紐帯の効果」、(22)「メディアと「信頼」」。最終年度は、プロジェクト期間中に参加者が議論を基にした論文を収録し、計13本、約280ページの報告書を作成した。
著者
麻生 和江
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

知的障害を持った方々が大学生と,ともに楽しく過ごすためのダンスプログラムの開発に資する資料を得る事を目的とした取り組みである。大きなビデオ映像とのコラボレーションを取り上げた。本稿では練習会・発表会に用いた映像,映像とともに踊る練習会の様子を写真で紹介するとともに,大学生による知的障害者の映像の受け止め,映像の影響に対する観察資料,大学生自身の感想を問う意識調査から,知的障害者の行動を数値的に処理し,知的障害者と大学生が交流するためのダンスプログラムとしての映像の効果を考察した。平成18年から19年にかけて継続して実施した2つの実践的研究からから,以下のような結果を得た。1.知的障害者がダンスを一層楽しむ環境のひとつとして,大学生の存在は欠かせない。2.映像はまず,大学生の意欲向上に働きかける。大学生の意欲が高まることは,知的障害者への声かけ,動きの指導,表情などのひとつひとつの接し方に意気高揚の雰囲気を創出する。知的障害者はその雰囲気に包まれ,自ら意気高揚を招く。大きな映像は,知的障害者に間接的な意欲向上をもたらし,大学生と知的障害者が「楽しさ」を共有する拠点となりうる可能性を確認した。
著者
棚瀬 幸司
出版者
独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

花弁(がく片を含む)が脱離する花きは花弁と花床との間に離層が形成され、その後花弁が落下する。代表的な種としてバラ、デルフィニウム、チューリップ、ユリ、トレニアなどがあげられる。花弁の離層形成機構については園芸植物ではあまり調べられていない。また、ユリやチューリップなどの球根類はエチレン非感受性であり、エチレン阻害剤やエチレン生合成関連遺伝子のアンチセンス導入などによる花持ち延長効果は期待できない。そのため、離層の形成機構に関する基礎データを得る必要がある。そこで本研究では、離層形成に最も関連のある細胞壁分解酵素遺伝子のうち、セルラーゼ(β-1,4-グルカナーゼ)とペクチナーゼ(ポリガラクツロナーゼ)遺伝子のクローニングを行った。さらに、デルフィニウムからエチレン受容体遺伝子をすでにクローニングしていることから、合わせて発現解析を行った。始めに、デルフィニウムがく片の離層から5mm以内の組織を切り取り、RNAの抽出を行った。トマト、アラビドプシス等の植物間で保存されているセルラーゼとべクチナーゼ遺伝子の配列をもとにプライマーを作成し、RT-PCRを行った。増幅されたcDNA断片はpT7 Blue T-Vectorにクローニングし、塩基配列を決定した。クローニングしたcDNAの部分塩基配列を決定し、それぞれをBLASTを用いて推定されるアミノ酸配列を比較した。グルカナーゼのcDNAクローンは推定されるアミノ酸がトマトのグルカナーゼと88%、アボカドのグルカナーゼと86%、モモのグルカナーゼと86%類似しており、Del-cellはβ-1.4グルカナーゼであると考えられた。ポリガラクツロナーゼのクローニングを行ったところ、2種類のクローン(Del-PG1とDel-PG1-PG2)はβ-1,4-グルカナーゼであると考えられた(形)を得た。これらの推定されるアミノ酸の類似性は43%であった。それぞれをBLASTで検索したところ、Del-PG1はend型のポリガラクツロナーゼと、Del-PG2はexo型のポリガラクツロナーゼと類似性が高かった。一方、エチレン受容体遺伝子(D1-ERS1-3、D1-ERS2)の発現は花で高く、茎や葉では低かった。これらの遺伝子は花において老化にともなう変動が少なかったが、エチレン処理を行うとがくでのみ発現が高くなった。
著者
宮良 高弘
出版者
札幌大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

津軽海峡を挟む北海道側と本州側は、いわゆる異文化が相互に接する周辺地域(marginal area)であった。津軽海峡文化圏域を中心に、北方民族およびそれが担う生活文化が本州のどの地域にまで及び、また本州側の母村を異にする人々によって北海道にもたらされた生活文化が津軽海峡を隔てて北海道側のどの地域にまで及び、どのように複合・重層しているかを、機能から逆照射して探るのが本研究の目的であった。この地域は、(1)北方民族と和人が担う異文化が相互に接触する地域であり、遺跡から出土する遺物や、地名、民具などからその共通性が把握されている。アイヌのアトゥシは青森県や岩手北部などで近代まで庶民が着用していた。(2)和人相互の内的接触による文化複合がみられる地域である。人々は、にしんを追い弧を描くように、積丹半島、小樽、留萌、羽幌などへと北上し、遠くは礼文、利尻の両島にまで及んでいる。社会構造や網元を頂点とする労働組織は類似し、衣生活におけるドンジャとよばれる労働着、年中行事の食習では、正月のクジラ汁や一月十五日の女の正月のケの汁などが、荒馬踊りなどの民俗芸能や繁次郎に代表される口承文芸が、対岸の青森県各地と共通している。(3)藩制時代以降に、交易によって上方や北陸地方から受容した生活文化の重層構造の共通性である。下北半島の要のむつ市の田名部神社やその周辺にくり広げられている例大祭、江差町の姥神神社、福島町や乙部町など道南西域一円にみられる例大祭の山車に、京都祇園祭りの流れをくむ上方の生活文化の受容が濃厚にみられる。(4)北海道で用いられているデメン(出面=日雇い)という言葉は、お雇い外国人がもたらしたday's menに由来しているとされ、この造語が青森県地方に及んでいる点も無視できない。青森県の船大工は、北海道のにしん場で修行した者が多く、こうした出稼ぎ人による北海道側からの逆移入は、造船などの技術文化においてもみられる。
著者
西澤 隆 松嶋 卯月 川満 芳信 中西 友子
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1.メロンの生理障害の一つである「水浸状果」の発生メカニズムについて調べ,トリガーとしてのエチレンの働きと,細胞壁の崩壊に伴う細胞壁間隙の乖離,水移動に伴う,果肉の透明化のメカニズムを明らかにした.2.メロンの「水浸状果」発生には,嫌気的呼吸に伴う果実内部における発酵物質(アセトアルデヒドやエタノール)の蓄積が直接的な要因として関与しているのではなく,細胞壁の乖離に伴う水移動が直接的要因として関与していることを明らかにした。3.メロンの「水浸状果」発生には,必ずしも細胞壁にイオン結合するカルシウムが不足することにより細胞壁同士の乖離が生じる必要はなく,共有結合性ペクチン分子の低分子化に伴う細胞壁同士の乖離が原因として働くこともあることを明らかにした.4.作物の水移動に伴う生理的変化を,切り花,食用作物,青果物を使って検討し,水移動の可視化,細胞の構造的変化とテクスチャーとの関係を明らかにすると共に,農産物の新たな貯蔵法について提唱した.5.近赤外分光分析法,中性子イメージング,レーザードップラー等を用いた,新たな作物内部の非破壊検査法,水移動のリアルタイムな追跡法について検討し,測定技術の改善と応用性を広げることができた.