著者
渡辺 幸一 朴木 英治 久米 篤 青木 一真 中野 孝教 石田 仁 松木 篤 岩坂 泰信 松木 篤 田中 泰宙
出版者
富山県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

高所に出現する弱い黄砂(バックグランド黄砂)の動態やその自然環境へ及ぼす影響を評価するため、立山において、エアロゾル粒子、微量気体成分、降水、霧水、積雪などの観測・分析を行うと共に、植生への影響について検討した。年度による程度の違いはあるものの、毎年秋期に「バックグラウンド黄砂」の影響がみられることがわかった。立山山の植生は、大気汚染物質だけでなく、黄砂粒子の影響も大きく受けている可能性が示唆された。また、立山での観測と並行して、回転翼航空機による富山県上空大気観測も行った。観測結果から、高所では高濃度の光化学オキシダント物質に植生が晒させやすいと考えられる。
著者
亀田 貴之 早川 和一 鳥羽 陽 唐 寧
出版者
金沢大学
雑誌
新学術領域研究(研究課題提案型)
巻号頁・発行日
2009

本研究は,黄砂表面における多環芳香族炭化水素(PAH)誘導体の二次生成反応について模擬大気実験系を用いた実験を行い,黄砂表面が関与する大気内PAH誘導体生成反応過程を明らかにするとともに,実大気観測によって,長距離輸送中の黄砂表面における有害PAH誘導体生成を検証し,更にそれらによる生体影響の実態解明を試みた。
著者
木村 玲二 森山 雅雄 篠田 雅人
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

ダストの発生源であるモンゴル・中国の乾燥地域において,ダスト発生モニタリングに関する観測ステーションを設置し,春季における黄砂の発生と地表面の状態の関係に関するデータを得ることに成功した。その結果,黄砂の発生に対する植生(特に枯れ草)や土壌水分の効果が観測によって明らかにされるとともに,ダストの発生と地表面状態の関係について定式化し,黄砂被害の軽減資料として役立つ「黄砂ハザードマップ」の試作品を公表した。
著者
本田 靖 中井 里史 小野 雅司 田村 憲治 新田 裕史 上田 佳代
出版者
筑波大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2008

本研究は,東アジアにおけるエアロゾルの健康影響,特に死亡への影響を,疫学的手法を用いて明らかにしようとした.日本,韓国,台湾の主要都市における粒子状物質濃度,日別死亡数などのデータを収集した.福岡市など九州地域では粒子状物質濃度に越境汚染の影響が示唆されたが,東京などでは大きな影響は見られなかった.死亡への影響ははっきりしなかったが,福岡で大きいという可能性が示唆された.
著者
常松 展充
出版者
独立行政法人防災科学技術研究所
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究で開発した「黄砂発生輸送モデル」を用いて、地球温暖化に伴う気候変化の情報を反映させた長期間シミュレーションを一部実施した。このシミュレーションでは、全球気候モデル「MIROC」によるSRES-A1Bシナリオ実験の結果から得られた気候予測データと、20世紀再現実験結果から得られた気候再現データをモデルに組み込んだ。具体的には、気温・比湿・ジオポテンシャル高度・風のuv成分・地表面温度について、将来(2080-2100年)と近年(1980-2000年)の差分(以下「温暖化差分」と呼ぶ)を、全球気候モデルの各グリッド毎に算出し、6時間毎の温暖化差分データを作成した。そして、作成した温暖化差分を、黄砂の発生と輸送のシミュレーション(水平解像度:20km)の初期・境界条件となる数値データに加算した。高解像度シミュレーションの初期・境界条件となる数値データに温暖化差分を加算する方法は「擬似温暖化法」と呼ばれ、それが、全球気候モデルのもつバイアスへの依存を低減させたダウンスケーリングを可能にする手法であることから、気候変化予測に関する多くの先行研究で用いられているものの、それを黄砂等の大気汚染物質動態の将来変化シミュレーションに応用した先行研究はない。これにより、本研究では、全球気候モデルのバイアスを低減させた上で黄砂発生輸送の将来変化をシミュレートした。地球温暖化の進行に伴う気候の将来変化が黄砂の発生と輸送に及ぼす影響を予測した研究は現在のところ希少であり、本研究で実施した数値シミュレーションの結果を解析することで、黄砂の発生・輸送の将来変化が量的・空間的に明らかになるとともに、黄砂等のミネラルダスト、あるいは他の大気汚染物質の動態の将来変化に関する今後の研究に資する知見が得られることが期待される。
著者
市瀬 孝道 吉田 安宏 吉田 成一 山元 昭二
出版者
大分県立看護科学大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

1. 肺炎桿菌と黄砂曝露による培養細胞における炎症性サイトカイン・ケモカンの遺伝子発現とタンパク発現:黄砂は肺炎桿菌(Klebsiella Pneumoniae(KP))による肺の炎症を悪化させた(前年度)。このメカニズムを明らかにする目的で、BALB/cマクロファージ(MP)由来のRAW264.7細胞に黄砂と肺炎桿菌を曝露して、Toll-like receptor(TLR)2とTLR4mRNAの発現、炎症性サイトカイン・ケモカインのmRNA発現と培養液中のこれらのタンパク発現を調べた。またTLR2とTLR4の抗体を用いてこれらの発現への影響を調べた。肺炎桿菌を添加したRAW264.7細胞はTLR2mRNAの発現を高めたが、TLR4の発現はむしろ低下した。TLR2とTLR4の抗体を用いて、TLR2とTLR4のmRNA発現を調べた結果、TLR2抗体はTLR2mRNAの発現を抑えると共に、炎症性サイトカイン・ケモカインのmRNA発現と培養液中の炎症性タンパク発現を抑えた。しかし、TLR4抗体はこられの発現を抑えることができなかった。この結果からKPはRAW264.7細胞のTLR2発現を介して炎症性サイトカイン・ケモカイン類の発現を高めていることが分かった。RAW264.7細胞にKPと黄砂を添加してTLR2とTLR4mRNA発現、炎症性サイトカイン・ケモカインmRNA発現と培養液中のタンパク発現を調べた結果、黄砂は肺炎桿菌によるTLR2の発現と炎症性サイトカイン類のタンパク発現を更に高めたがTLR4は低下した。この結果から、黄砂の肺炎桿菌による炎症増悪作用はTLR2の活性化を介して肺の炎症を増悪している可能性を示唆した。2. 黄砂付着細菌の感染実験:日本に飛来した黄砂から分離したBacillus spと黄砂をマウスの気管内に投与して黄砂の炎症増悪作用を調べた。その結果、本実験に用いたBacillus spは病原性が低く、マクロファージ数は増加させるものの、炎症反応の誘導性(好中球数の増加)は低かった。またマクロファージに関連したサイトカインは誘導するが炎症性サイトカイン類の発現は低かった。今後は病原性の強い細菌による感染実験が必要である。
著者
王 青躍 鈴木 美穂 中島 大介 三輪 誠
出版者
埼玉大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2008

近年、黄砂の飛来とスギ花粉飛散ピークと重なって度々出現し、同時にスギ花粉アレルゲン含有粒子の高濃度現象が観測されているため、都市部において、黄砂がスギ花粉と接触し、スギ花粉アレルゲンの放出や修飾影響、アレルギーの増悪など、花粉症罹患への黄砂や汚染物質の複合影響を評価した。特に、スギ花粉アレルゲンの微小粒径への移行は降雨が影響しており、降雨のイオン成分やpHによるスギ花粉アレルゲンの溶出挙動とその活性変化を検討した。
著者
川崎 謙一郎 衛藤 和文 河上 哲
出版者
奈良教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本科学研究費助成により,ネーター局所環AのイデアルIが1次元のイデアルであるならば,余有限加群からなる圏M (A, I) cofはアーベル圏であることを証明することができた.
著者
神田 圭一 大場 謙吉 田地川 勉 高見沢 計一 渡辺 太治
出版者
京都府立医科大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

人工物を体内に埋入した際に、生体防衛機構の働きによって周囲に繊維芽細胞とそれが産出するコラーゲン線維によって構成されるカプセル状組織体を血管内治療に応用するための基礎的技術開発を行った。(1)基材・形状設計:鋳型基材の材質の違いが与える組織形成への影響を調べた。また、鋳型形状の設計により、目的とする形状が任意のサイズで構築できる事を確認した。(2)カプセル状組織体をカバードステントとして形成する技術の開発:金属製のステントを拡張した状態でシリコンチューブの周囲にマウントしてこれをウサギ皮下に埋入した。1ヶ月後にステントの間隙は自家結合組織で覆われ、カバードステントが形成された。(3)動物移植実験:ウサギの大腿動脈を切開し、病変の無い腹部大動脈に径3mmのカバードステント自家留置を行った。留置は問題なく行うことが出来、留置後の血管造影でも開存が確認出来た。更にカバードステントの内腔は完全に血管内皮細胞で覆われていた。(4)疾患モデルの開発:疾患モデルの開発に着手した。まずは、Bio-Covered Stentの為の動脈瘤・動脈損傷モデルと、大動脈瘤モデルの開発に着手した。ウサギ頸動脈に頸静脈をからなるパッチを用いて嚢状瘤を人工的に形成した。この部分にカバードステントを留置することにより瘤を血栓化させ縮小させることが出来た。また、血管を露出後故意に損傷させ出血部にカバードステントを留置して止血させることが出来た。小口症血管に対する新しい血管内治療の選択肢となり得ると示唆された。
著者
一色 大悟
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

平成二十年度当初においては『阿毘達磨倶舎論』第二章「根品」の因果論該当箇所のサンスクリット・テクスト再校訂を継続することと、有部系諸文献における縁起説の輪廻論的側面についての検討を行なうことを計画した。『倶舎論』第二章「根品」の因果論該当箇所のサンスクリット・テクスト校訂作業にあたって、まず『倶舎論』関係の和漢撰述・チベット撰述文献の資料収集を継続した。その結果として、存在は確認しつつも入手しえていなかった資料を数点複写の形で得ることができた。また『倶舎論』第四章「業品」、第五章「随眠品」、第九章「破我品」.において議論が関連する箇所、および『倶舎論』に対する反駁書として重要な『阿毘達磨順正理論』の三世実有説(説一切有部の存在論の基礎となる説、一切のものは一切時に存在すると説く)を論ずる箇所の訳注を行い、因果論に関するそれらの内容との比較検討を行なった。結果として「根品」因果論該当箇所のサンスクリット・テクスト校訂は、上記の情報収集に時間を費やす必要があったため、完遂し得なかったものの、精度の高い校訂のための基礎固めを十分に行なうことができた。第二に、縁起説の輪廻論的側面について検討し、『倶舎論』「破我品」における無我説を踏まえつつ、『阿毘達磨識身足論』『阿毘達磨大毘婆沙論』『阿毘達磨順正理論』などの有部系諸文献との比較検討を行なった。また、上記文献において対論者として現れる犢子部の議論については、さらに正量部の『三彌底部論』、及び後代に書かれた諸論書における議論を調査した。
著者
中塚 次郎 竹中 克行 横山 正樹 ヒガ マルセーロ 立石 博高 金七 紀男 山道 佳子 宮崎 和夫 川上 茂信 砂山 充子
出版者
フェリス女学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

地域の形成にはたんに経済的要因や地理的要因だけではなく、その地域に流入してきた人間集団の存在や、そこから出ていった移民たちの意識などが重要な役割を果たしている。たとえば、EU内を移動しそこを生活空間とする一方で、EU外の集団との差異を経験することで、人々はEUをひとつの「地域」と認識する、といった具合にである。このことは、国家内の「地域」にもあてはまる。本研究は、こうした観点を生かしながち、イベリア半島を対象にして、「ヒトの移動」と「地域」形成の関係を、歴史的に分析しようとするものである。共同研究の前提として、まず、大西洋をはさんだ、現代におけるイベリア半島とアメリカ大陸間のヒトの移動を中心にして、統計的な研究、地域意識の形成、移民先での移民の社会的地位といったテーマについて検討した。その後、対象を近代以前にまでひろげ、さらに移動の地域をピレネー山脈をはさんだ、イベリア半島とほかのヨーロッパ地域とのあいだの人の移動にまで拡大して、宗教意識の変容や言語の変化を含む、幅広い視,点から検討を行なった,また、強いられた移動である「亡命」についても、人々の帰属意識の変化の側面から分析を進めた。共同研究の最後に、アジアにおける人の移動を比較検討の対象としてとりあげ、いかなる分析方法が地域研究にとって有効であるか、といった総括的な作業を行なった。
著者
HIGA MARCELO G.
出版者
フェリス女学院大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

アルゼンチンに定住した日本人移民の間、「ニッケイ・日系」的なアイデンティティの登場は比較的遅く、80年代末から90年代初頭にかけて起こった日本への「出稼ぎ」移住の体験をきっかけに普及したのである。なお、ニッケイという範疇は彼らのアイデンティティ志向の中で重要な指標となって来たが、これを名乗る場所や文脈などによって意義が異なり、必ずしも統一した意味世界を指していると言えない。一方では、アルゼンチン出身者にとって、日本で日系人を名乗ることは合法的に労働する以外の意味が薄く、主観的な選択としてあまり採用されていない。日本人及び他の南米出身者に対しても従来の国籍の方が自他認識の方法としてむしろ有効である。さらに、南米出身者同士は確かに職場を始め様々な生活の場を共有するが、ニッケイとしての特別な連帯感は今のところそれほど強く表れていない。彼らはそれぞれの国籍に沿って結合する傾向があり、日系人・ニッケイよりも互いに外国人として接するのである。他方では、アルゼンチンにおいてニッケイたるものはアイデンティティを語る上で近年新たな意味をもつようになったことも否定できない。この現象の発生状況について前年度の報告で触れたが、今回の調査では「沖縄」に由来する要素について詳しく調べることができた。アルゼンチンの移民集団の構成からして、沖縄の存在は不思議ではないはずであるが、従来移民の子孫の間アルゼンチンに対して日本は対立の対象として認識され、沖縄は積極的な位置を占めていなかった。しかし、ニッケイの登場と共に、オキナワというものも再認識され、アルゼンチンで理解される「ハポネス」の重要な部分を示すようになった。アルゼンチン出身の日本人移民子孫のアイデンティティ志向には、様々な経緯を辿って来た要素が複雑に組み合わせられており、ニッケイとされるものもその中の一つの表現である。人々は定住民だと前提とする場合、国籍または固有文化は指標として採用しやすいが、移民は常の状態となる時その有効性は低下する、今後文化やアイデンティティの動熊を理解する上でこのようなケースを追求し続ける必要がある。
著者
樋口 咲子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究の研究成果は以下の4点である。一点目は、行書の書き方の課題解決法がわかる、書字動作に注目した資料集を作成したことである。二点目は、行書の書き方の課題解決法がわかる動画教材を作成したことである。三点目は、書字動作を理解しやすい行書規準文字(いわゆる手本)を提案したことである。4点目は、書字動作に注目した、行書の授業展開法を提案したことである。以上の研究成果により、課題解決学習の充実を目指した。
著者
小阪 美津子 水野 伸彦
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

幼弱期のマウス網膜組織内に、光受容体細胞(視細胞)の形質を獲得しているにもかかわらず、取り出して培養すると増殖を開始して他の網膜神経細胞へ分化転換するという細胞を発見した。その細胞は組織傷害時などに細胞分裂を開始し他の神経を生み出す幹細胞として機能しうる可能性が器官培養系の結果から得られ、全く新規の網膜幹細胞であることが示唆された。またその細胞の遺伝子発現を網羅的に解析し、網膜の発生・分化・疾患に関わる遺伝子候補を多数同定した。
著者
菊池 三穂子 平山 謙二 NGUYEN Huy Tien
出版者
長崎大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

住血吸虫症の家畜向けワクチン等の開発により、住血吸虫感染のコントロールに寄与することを目的として本研究を推進した。放射線照射セルカリア感染によるワクチン効果が確かめられたミニブタの血清中の特異抗体に反応する住血吸虫抗原分画を同定し、新規ワクチン候補分子を虫卵及び虫体の可溶性抗原分画を二次元液体クロマトグラフィーシステム(2D-PF, BECKMAN Courter社)で分画し、抗体の反応性が認められる分画蛋白から、感染防御に関わるワクチン候補分子として4分画の配列を決定し、相同性検索の結果と分子量、アミノ酸配列から想定される蛋白の等電点(pI)の情報を元に4候補分子を決定した。これらの候補分子の虫卵、幼虫、成虫の各ステージにおける発現を確認し、虫卵ステージ以外でも発現が確認できたAAW27472.1、AXX25883.1、AWW27690.1について組み換え蛋白を作成し、放射線照射セルカリア感染ミニブタ血清が反応し、通常感染ミニブタ血清では反応が認められないことを確認した。この新たなワクチン候補蛋白のうち、AWW27472.1は23%程度の日本住血吸虫のカテプシンB・エンドベプチターゼ、26%のマンソン住血吸虫のカテプシンBとの相同性が認められた。AXX25883.1はsimilar to syntaxinと83%、Glutathion S-transeferase (GST)と23%の相同性を、AWW27690.1はDehydrogenase subunit1と46%の相同性を示すことが確認された。これらの候補分子の組み換え蛋白質で、マウスを免疫し抗血清を作成し培養ソーミュラ幼虫での発現部位について解析を行ったところ、AWW27472.1、AXX25883.1はソーミュラ表面に発現していることが推察された。これらの候補分子のワクチン効果を判定するための予備実験として、候補分子をpcDNA/V5/GW/D-TOPO(Invitologen)に挿入しDNAワクチンを作成し、Balb/Cマウス(1群13匹)に3回免疫後、血中抗体価を確認し日本住血吸虫セルカリアを40隻感染させた。感染後6週目に灌流し、成虫虫体を回収しワクチン効果を判定した。陰性対象群(Empty plasmid DNA)と比較した結果、AAW27690.1とAAW27472.1には、感染防御効果が認められなかったが、AXX25883.1は27%程度の回収虫体数の減少が認められた。今後、候補ワクチンの局在、効果に関わる免疫応答の本態等についてさらに詳細な検討を進めて研究を継続する。
著者
熊ノ郷 直人
出版者
工学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

区分的に陪特性な経路を用いた時間分割近似法により、相空間(ハミルトン型)経路積分の理論を構成した。厳密に言えば、時間分割近似法が、運動量の始点と位置の終点に関して広義一様収束する、かなり一般的な汎関数のクラスを与えた。このクラスは不確定性原理にかかわらないように一部の汎関数を除外しているため、和や積という演算が自由にできる。応用として、ハミルトン型の摂動展開や準古典近似を証明した。
著者
日高 健 小野 征一郎 鳥居 享司 山本 尚俊 中原 尚知 北野 慎一
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

マグロ養殖業は、オーストラリア、メキシコ、地中海諸国、日本において行われており、現在では総生産量は約4万トンに達し、重要な産業となっている。クロマグロ養殖業は天然資源に原魚を依存したCapture-based aquacultureであり、天然資源との関わりが強い。さらに、長い価値連鎖のため、経済主体間の関係のあり方が養殖経営に与える影響が大きい。そこで、主要生産国における養殖管理制度と主要業者の経営管理を比較分析し、持続的なマグロ養殖管理のための要件抽出を目的として研究を行った。漁業資源管理では、オーストラリアが最も緻密な管理を行っており、養殖業者は各自のITQと自国EEZ内での原魚採捕によって優位性を持つ。これに次いで、スペインではマグロ漁業資源管理の強化が進んでいる。メキシコと日本では漁業資源管理の対象となっていない。価値連鎖における経済主体間関係を軸としたビジネスシステムをみると、スペインは生販統合型、オーストラリアは原魚供給確保型、メキシコの二事例は生販統合型と原魚供給確保型、日本は生販統合型である。これらの中では、メキシコ1のシステムが高いパフォーマンスを示しており、メキシコ2がこれに次ぐ。メキシコが有するビジネスシステムの優位性は、経済主体間の連携の強さに基づくものである。生産コストの低さに加え、生販統合による市場情報に応じた生産と出荷の体制は、日本市場における競争優位を確実にする。ただし、高い天然資源の豊度と緩い漁業資源管理に支えられたものであり、脆弱である。つまり,供給の不確実性に対応するためには、確実な資源管理制度を基盤に、原魚供給確保型と生販統合型の双方の性格を具備したビジネスシステムが必要である。原魚採捕者、養殖業者、流通業者の三者の戦略的提携関係をいかにして構築するか、それを政府がいかに支えるかが持続的な養殖マグロ産業を構築するための要件となる。
著者
藤田 昌宏
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究では、従来からハードウェアの設計支援や設計検証に用いられてきた手法によって、近年注日を集めているシステムバイオロジーにおけるシミュレーションや解析を効率的に行い、実験室で行う実験では観測が困難な現象の観測や生化学反応における内部状態の推定を実現することを目的としている。今年度は、まず、昨年度の一般的な調査の続きとして、ハードウェア実装による生化学システムのシミュレーションの高速実行に着目し、特に詳細な調査を行った。その結果として、既存研究lこよりNext Reaction Method(NRM)までの手法は高速なハードウェア実装が既に提案されており、それらにおいては浮動小数点演算処理の最適化が重要であることが分かった。次に、上記の調査結果を踏まえて、NRMよりも高速なシミュレーション手法であるTau Leaping(TL)に着目し、その高速なハードウェア実装について検討した。反応を一つずつ逐次処理しているNRMに対して、TLでは複数の反応が一つの時間区間で起こり得ることを前提としてそれらをまとめて処理している点に特徴がある。したがって、複数の反応を並列に処理することが可能であり、よりハードウェア実装に適していると考えられる。さらに、一つの反応あたりの除算処理数もNRMより少ない点も、ハードウェア実装に有利である。ただし、TLにはNRMには無い微分処理が含まれているが、差分式に近似して処理を行うことにより高速に実行可能である。比較実験として、実際のソフトウェアの生化学シミュレータであるStockSimによるシミュレーションと、FPGAであるVertex5によるハードウェア実行との比較を考えており、現在までにその環境構築が完了している。今後は、実際にシミュレーション速度を比較することにより、提案するハードウェア実装による高速化できていることを確認する予定である。
著者
村山 繁雄 齊藤 祐子 石井 賢二 初田 弘幸
出版者
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

レビー小体型認知症(DLB)、パーキンソン病(PD)の認知症の責任病巣として、特異な線条体へのアミロイドβ沈着が原因と、ペンシルベニア大学、ロンドン大学からの報告で示されたことを受け、高齢者ブレインバンクプロジェクトで、PIB PETとドーパミンPETによる臨床例における線条体の検討と、死後脳におけるアミロイドβ蛋白とリン酸化αシヌクレイン沈着を免疫組織学的に線条体で検討する二つの方法で行った。DLB、認知症を伴うPD(PDD)51例と、認知症を伴わないPD(PDNC)48例の神経病理学的差分の検討で、辺縁系(扁桃核、嗅内野、CA2)、線条体、新皮質のαシヌクレイン沈着が抽出された。老人班に関しては、新皮質については抽出されたが、線条体は抽出されなかった。また、新皮質のAβ沈着はαシヌクレイン沈着を誘導する傾向が確認されたが、線条体沈着への促進作用は確認されなかった。なおこの研究期間3年間の新規蓄積例は13例であった。またこの検討過程で、αシヌクレイン沈着のみが有意で、アミロイドβ沈着、タウ沈着が軽度であり、認知症を呈するいわゆる純粋型レビー小体型認知症が23例検出され、辺縁方20例、新皮質型3例であった。これらの症例は、線条体のAβ沈着はないかほとんどなく、責任病理としての意味は少ないと考えられた。DLB/PDDとPD 3例ずつの差分で、DAT Scan(^<11>C-CFT PET)で、尾状核の集積低下が検出された。しかし、^<11>C-PIBでは新皮質はDLBの一例のみ陽性所見が検出されたが、尾状核を含め、線条体は全例で検出されなかった。研究期間中PDD一例の剖検所見が得られたが、辺縁型に分類され、新皮質にごくわずかびまん性老人班を認めるのみであり、線条体にはAβ沈着は認められなかった。以上の検討より、新皮質のアミロイドβ沈着は、レビー小体病理の新皮質への進展を促進することで、レビー小体型認知症の認知機能低下に影響を与えうるが、線条体における存在が、積極的に認知機能に影響を与えている結論は得られなかった。ただし、DLB/PDDにおける尾状核のDAT scan低下は、PDDに関しては病気の進行期であるためとの説明が可能であるが、DLBの場合の原因は、課題として残った。
著者
高島 裕臣
出版者
県立広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

語彙情報処理の母語話者-学習者連続性を検証するため日本人学習者の英語語彙判定・音読実験を行い,結果を母語話者と比較した。語彙判定・音読潜時ともに母語話者と学習者との間で有意な相関があり,さらには,語彙判定・音読潜時への寄与が有意な変数の多くが母語話者-学習者間で重なることを見出した。学習者の語彙判定が音読よりも早く母語話者と逆であることなど相違の例も見出したが,総じて,英語語彙情報処理の母語話者-学習者連続性を支持する結果が得られた。