著者
門間 敏幸 梅本 雅 関野 幸二 磯島 昭代 後藤 一寿 安江 紘幸 吉永 貴大
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

農家が主体となって開発された農業技術を,技術特性・経営効果・普及可能性の3つの視点から総合的に評価した。具体的な成果は,次の通りである。1)篤農技術のデータベースの開発2)篤農技術の調査方法の開発3)農業技術の暗黙知の探索方法の開発4)経営管理能力,水稲代かき技術,大豆収穫技術,りんご剪定技術,知的財産管理技術,篤農技術の普及方法,新品種の普及ノウハウの整理。
著者
三浦 研
出版者
京都大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

前年度は、阪神大震災の被災者対策として設置され、異なる社会福祉法人に運営委託されたケア付き仮設住宅2棟を対象として、介助行為および入居者-職員間の会話から、両ケア付き仮設住宅において入居者-職員の関係性や雰囲気に違いが見られること、またそうした差異が職員のシフトやケアスタンスの相違に依ることを示し、同一設置形態のグループリビングユニット間に見られる差異を画タイ的に示したが、本年度は、引き続き両ケア付き仮設住宅がグループハウスに統合される過程を中心に調査を行い、小規模グループリビングにおけるケアの継続性と入居者の適応過程について、行動観察と入居者-職員間の会話内容に基づき考察し、小規模グループリビングの施設転居直後、居室滞在率が高まり「閉じこもり傾向」が見られること、入居者による自発的な会話が減少するだけではなく、その内容も介助に関連する割合が増え、より多くのサポートを必要とする受け身の状態となることから、平常時に増してケアが必要となること、また、適応過程全般にける入居者による自発的会話と日常会話の割合の時系列的変化から、入居者-職員の関係性が構築される過程を示した。また、ケアスタッフが変化しないグループとケアスタッフが新しくなるグループを比較し、施設転居に伴う影響がケアスタッフの変化したグループに強く現れることから、小規模グループリビングにおいて、ケア環境の継続性が物理的環境と同様に重要であることなどを、高齢者グループリビングの統合過程から示した
著者
黒川 雅代子 恒藤 暁 坂口 幸弘 恒藤 暁 坂口 幸弘
出版者
龍谷大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、平成18年度より3年間の計画で、第3次救急医療施設において、患者の治療中から死後までの継続した家族・遺族支援をおこなうための実践モデルを開発することを目的として実施した。主な研究成果は、第3次救急医療施設に心肺停止状態で搬送され、入院に至らずに亡くなった患者家族に対して現状調査を量的・質的に実施した。結果、救急医療施設における家族・遺族の現状及びニーズを明らかにした。また本研究と並行し、研究協力病院スタッフにより、看護師、医師、事務職員の家族・遺族支援についての現状調査が実施され、救急外来における医療従事者の対応について検討がなされた。これらの研究結果を踏まえて、現在「救急医療における遺族支援のための実践モデル」を試案作成し検討中である。
著者
二神 泰基
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

Desulfitobacterium hafniense Y51株は、還元的デハロゲナーゼ(PceA)により環境汚染物質であるテトラクロロエテン(PCE)とトリクロロエテン(TCE)をcis-ジクロロエテンへと脱塩素化する。この反応はPCEとTCEを最終電子受容体とする脱ハロゲン呼吸でエネルギー生産系と共役する。平成17〜19年度に、Y51株の継代培養後に脱塩素化能を失った2種類の株が出現することを見出し、SD株(Small Deletion)とLD株(Large Deletion)に分類した。Y51株、SD株、およびLD株のpceA遺伝子の周辺構造を解析した結果、Y51株のpce遺伝子群は2つの相同な挿入配列(ISDesp1とISDesp2)に挟まれており、複合トランスポゾンを形成していた。一方、SD株はISDesp1を欠失しており、LD株はpce遺伝子群をすべて欠失していた。次に、クロロホルム(CF)存在下でLD株が高頻度に出現する現象を見出した。本年度は、この原因が、CFがY51株のフマル酸呼吸を阻害し生育を阻害するのに対して、LD株の生育を阻害しないことにより、Y51株から自然誘発的に発生するLD株が優占種となるためであることを明らかにした。また、CFによるY51株のフマル酸呼吸の阻害は、PceAの基質であるTCE、あるいはPceA活性を阻害する2塩素化メタンの存在下では無効化された。従って、CFによる阻害効果は、Y51株でのみ発現するPceAへのCFの結合により生じると考察した。以上の研究成果は、脱ハロゲン遺伝子群の機能進化を考察する上で興味深く、また、CFとクロロエテン類の複合汚染時のバイオレメディエーションを効率よく遂行するための知見として重要である。
著者
山口 理沙
出版者
青山学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本年度は、前年度までの展開する教育関係について、総括的活動を試みた。その詳細は以下のとおりである。前年度より試みている『利休百首』について、論文の形にまとめることができた。茶の湯において文字として残された教育論を見出す作業として、道歌をその対象とし、検討を試みた。そのうえで、課題としていた『不白筆記』に見る教育論の位置づけを試みた。茶の湯における教育が、必ずしも口伝ではなく、テキストとして残されていた事実について、見出すことができた。関連して、茶の湯におけるテキストである茶書から教育論を見出す考察について、『不白筆記』を中心に、茶書の成立から位置づけをたどることから、教育史学会において提示した。教育史学へのアプローチを用いることによって新たに明らかとなったことは、ディシプリンとしての歴史、そして資料検討の重要性を重んじたうえで、教育史研究と教育思想研究の学際的見解から教育関係としての師弟関係の研究という展開余地である。教育学からの芸道教育の研究は先学に見出すことはできるが、それは方法論への還元を急いだ傾向がある。また、芸道広域を対象とするため、ひとつの技芸からの詳細な検討は展開余地がある。対象とする近世の茶の湯の教え学びの営みを「教育」のタームで扱うことについての妥当性については、「教育」の用語の成立背景を考えるならば、慎重にならねばならない。しかしながら、教え学びの営みという共通項を抽出することで、教育学の俎上で検討を試みることは、可能と考えられる。
著者
泉 安彦
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

1. 神経幹細胞賦活作用の評価系の構築中脳初代培養細胞を用いた神経幹細胞賦活作用の評価系の構築を目的とした。中脳初代培養細胞に神経幹細胞が存在することは確認できたが、神経幹細胞からドパミンニューロンへの分化は起こっていなかった。GABAAアンタゴニストであるビククルンおよびピクロトキンの処置により神経系細胞のうち成熟神経細胞の割合が上昇し、ドパミンニューロン数が増加した。このことから、GABAAアンタゴニストは中脳初代培養細胞において神経前駆細胞からニューロンへの成熟過程を促進することが示唆された。また神経系細胞のうち成熟神経細胞の割合を算出する方法は神経分化成熟過程を評価できることが分かった。2. 神経投射再生作用の評価系の構築黒質-線条体神経投射をin vitroで再構築し、評価系として有用であるか検証した。シリコン製隔離壁を用い領域内に中脳細胞を播種し、領域外へ進展した成長円錐の距離を測定する。この方法では、主に軸索を評価できていることが分かった。プロテインキナーゼ阻害薬スタウロスポリンおよび神経栄養因子GDNFがドパミンニューロンの突起伸長を促進することを確認し、さらに、薬剤処置による突起伸長様式の違いが観察された。また、前述のシリコン製隔離壁外に線条体細胞を播種したところ、線条体細胞に向けてドパミン神経突起が伸長することを明らかとした。したがって、本評価系は黒質から線条体へのドパミン神経投射をin vitroで反映しており有用なものであることが分かった。
著者
中井 直正
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本科学研究費補助金による研究の目的は、20GHz帯受信観測システムを開発製作し、筑波大学の近くにある国土地理院つくば32m鏡に搭載して電波望遠鏡として整備し、水メーザーの観測からセイファート銀河中心核の構造を明らかにすることである。特にセイファート銀河の1型(可視光のスペクトル線が極めて広い)と2型(狭い)の違いが従来言われていた降着円盤を見る角度が異なるため(統一モデル)だけではなく、降着円盤の厚さに薄いものと厚いものがあり、降着円盤を同じ斜めの方向から見たとしても薄いものは1型に、厚いものは2型に見えるという我々の仮説を立証することが目的である。研究成果の主なものは以下のとおりである。1.国土地理院32mアンテナに20GHz帯受信観測システムを開発製作し搭載した。アンテナの主ビームの半値幅(角度分解能)はHPBW=100"、主ビーム能率と開口能率は仰角40度付近でそれぞれ50%と42%である。受信機の周波数帯域は19.5-25.2GHzであり、中間周波数は4-8GHzである。大気込みのシステム雑音温度は冬季天頂で60-80K程度と良好な値が得られた。分光計はフーリエ変換型デジタル分光計で周波数帯域幅1GHzを1万6千点の分光を行う。望遠鏡制御ソフトウェアーシステムもVLBI(超長基線電波干渉計)観測とは独立に、単一鏡観測用に独自開発を行った。これらにより、22.235GHzにある水メーザーの定常観測が可能となった。2. 開発した上記観測システムによりセイファート銀河の水メーザーの速度モニターを開始した。またVLBI観測により2型セイファート銀河IC1481の水メーザー円盤が厚いものであることを明らかにし、我々の仮説を証明した。
著者
杉田 治男
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

アユ、ワカサギおよびキンギョの腸管内におけるAHL生産細菌の多くはAeromonas細菌であった。また、Shewanella属はAHLを分解する細菌としてキンギョから分離された。これらの結果は、AHLを分解するShewanella属細菌をプロバイオティクスとして利用することでAeromonas属細菌による日和見感染症が防除できる可能性が示唆された。
著者
坪内 俊二
出版者
名古屋市立大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

腰痛の発生にはいろいろな原因があるが、椎間板性の腰痛は最もよく知られているもののひとつである。現在までに椎間板そのものの神経支配についてはよく調べられており、線維輪の外側3分の1までしか神経の存在が認められないとされている。しかし、椎間板の上下にあたる椎体終板における神経支配はほとんど発表されていない。ここに神経、特に疼痛の伝達物質であるSubstance-Pをふくむ神経の存在を調べれば、腰痛の発生機序並びに椎間板の栄養の調節機構を解明する一助となると考えられ本研究を開始した。15EA02:本研究は免疫組織化学的方法がもとになっている。まずはじめにクライオスタットを用いて凍結切片を作成する技術を習得した。その後、家兎・剖検・手術材料などから得られた椎体終板・椎間板・棘上棘間靱帯・仙腸関節などに存在するであろうと思われる神経週末をsubstance-P,S-100蛋白,neurofilament,PGP9.5などに対する抗体を使いABC法にて染色した。現在までのところ、神経組織がうまく染色されたのはヒトの棘上靱帯のみであり、終板部ではまだみつかっていない。ヒトの骨は動物のものに比べて脱灰しにくく、クライオスタットで切っても軟部組織との境界部で固さの違いにより、うまく切れなかったり、切片を厚くすると染色時にはがれやすいなどの難点を抱えている。これらを試行錯誤により改善しつつ、本来の目標であるヒト椎体終板染色を行っているところである。当然調べられていいはずの椎体終板部での発表がないということは(ラットやマウスでは2-3みられる)、脱灰、染色などで同様の苦労をしていると考えられる。何とかこれを克服して神経終末の存在の有無を明らかにしたい。また、コンスタントに染色して神経の存在を確認することが出来るようになれば、変性を誘発するような処置、椎間板切開・振動させる・adjuvant-induced arthritis modelを作製するなどして神経分布の変化を調べることができる。
著者
井口 洋夫 直江 俊一 田中 桂一 城田 靖彦 中原 弘雄 三谷 忠興 丸山 有成 高塚 和夫 加藤 重樹 大峰 巌 中村 宏樹 諸熊 至治
出版者
岡崎国立共同研究機構
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

1. 分子計算化学に関する討論会に参加ならびに調査、共同研究計画打ち合せ(諸熊、中村、大峰、加藤、高塚)今回の日程は、9月19ー21日は第23回英国量子理論会議に出席して若手の理論化学研究者と交流を深めた後、週末をはさんで、日本側5人、英国側12人出席の小さな合同シンポジウムで、質の高い情報交換と交流打ち合せを2日間行うというもので、いずれも会場、宿舎ともオックスフォ-ド大の古いカレッジの1つであるJesus Collegeが使われた。日英シンポジウムでは、シミュレ-ション、電子状態、動力学の各分野とも現役のトップクラスと新進気鋭をそろえ、英国側の並々ならぬ意気込みがうかがわれた。また、交流を一層巾広くするため、英国側の講演者には比較的なじみのすくなかった若手が起用され、フレッシュなプレゼンテ-ションと高いレベルの討論が行われた。この分野におけるこの数年間の研究協力の成果をふるまえ、今回のシンポジウムは終始きわめてなごやかな雰囲気で行われた。特に、日英とも新しい世代のコンタクトが広がったことは今後の協力の発展の上に意味が大きいと思われる。2. 物質化学に関する日英討論会に参加、並びに大学・研究所訪問の調査、共同研究計画打ち合せ(丸山、三谷、中原、城田)「特異な物性をもつ有機分子性固体及び金属配位化合物」という主題に関する日英討論会が、1991年3月17ー20日の間英国バ-スにおいて開催された。日本側5名、英国側10名の招待者及びオブザ-バ-が参加し、5つにわけられたそれぞれのセッションで日本人1名、英国人2名の講演があり、活発な質疑応答が行われた。“高分子"のセッションでは光機能性ポリマ-の光電変換素子特性、高分子液晶などが報告され、“LB膜"では、膜構造の新しい評価法や機能性について議論がなされた。“分子性結晶"では導電性金属錯体及びその超伝導特性と電子構造との関連が考察された。午後のポスタ-セッションでは、多数の報告がなされ盛会であった。最終日の“フタロシアニン及び薄膜"では薄膜の構造と機能に関する最近の研究が紹介され、さらに新しいフタロシアニンの合成例も報告された。“混合原子価錯体"では、一次元遷移金属錯体のソリトン、ポ-ラロン状態及びそれに関連した光誘起構造相転移の可能性など最新の話題が紹介された。全体的な印象として、英国の現状はそれ程新奇な展開は認められないが独得な執拗さをもって新しい問題にとり組んでいる姿勢が印象に残った。3. 不安定分子の高分解分光法による研究(田中)1)速度変調法による分子イオンの赤外ダイオ-ドレ-ザ-分光本法は高電圧交流電場を用い放電によりイオンを生成すると同時に荷電子の併進速度に変調を加え選択的にイオン種を検出する方法である。赤外ダイオ-ドレ-ザ-分光法に速度変調を組合せ、H_2O^+,PO^+,CS_2^+イオンの検出を行い充分な経験と成果が得られた。2)金属カルボニル分子の超音速分子噴流中における赤外吸収分光法Ni(CO)_4,Cr(Co)_6,やV(Co)_6などの金属カルボニル化合物は比較的高い蒸気圧を持ち、レ-ザ-光照射による光分解反応との関連により興味が持たれている。これらの金属カル化合物をArガス中に気化させ超音速自由噴流として真空中に噴射し、赤外ダイオ-ドレ-ザ-分光法により主にCO伸縮領域の振動回転遷移を観測した。4. 軟X線分光に関する研究・調査(直江)800〜4000eVのsoft XーRay領域でのビ-ムポ-トの状況、特に調整技術及び測定法について、UVSORの二結晶分光器との比較を含め調査し、さらに半導体試料について測定を行った。上記エネルギ-領域でも特に800〜1500eVの領域は、照射損傷のため分光結晶としてベリルという天然の鉱物を使用する方法が唯一のものとなってきている。第一結晶の水冷や各種薄膜フィルタ-の複合使用によって約1年程度の結晶寿命を実現している。また90%透過の薄膜を10モニタ-として使用し、放射光ビ-ムの変動に対応している点は注目される。試料槽はタ-ボポンプのみの排気により10^<-7>〜10^<-8>torrの真空度とし、測定の迅速化に努めている。しかし、今回の一連の単結晶試料の測定によって試料槽内での表面処理が重要であり、測定の迅速化だけが視点ではないことが判明した。
著者
田中 孝夫 荻田 太 田巻 弘之 浜岡 隆文
出版者
鹿屋体育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

【目的】本研究は、一流競泳選手を対象とし、泳成績と生理的、力学的指標との関係からパフォーマンスの規定要因を解明し、さらに年間トレーニングにおける各指標の変化と泳成績の変化との関連性や、技術要因の数値化を試み、国際競技力向上に資するための実践的資料を得ることを目的とした。【方法】被検者は、オリンピック、アジア大会、ユニバーシアードなどの国際大会出場選手を含むインカレ3連覇中のチームに属する女子競泳選手であった。本研究では、生理的指標として最大酸素摂取量、最大血中乳酸濃度、OBLAが、力学的指標として抵抗-泳速関係、抵抗係数・指数、最大推進パワー、および推進効率が計測され、各距離種目の泳成績との関係、縦断的変化が検討された。力学的指標の測定は、本学で開発されたMAD(Measurement of Active Drag)システムを用いて行われた。【結果及び考察】一流選手における各距離種目の泳成績と、生理的および力学的指標との関係を検討した結果、体力の代表指標とされてきた最大酸素摂取量とは必ずしも相関はなく、短距離種目ではより大きな機械的パワー発揮と無酸素性エネルギー供給能力、さらにはそれを生み出すための大きな筋量(体格)が、長距離種目では低い乳酸蓄積と、抵抗係数を小さくする泳技術が重要な要因であることが示唆された。また、縦断的に同一選手の測定を行い、そのときの泳記録の変化との関係を検討した結果、記録の向上は最大努力泳時の抵抗の低下のみと有意な相関が得られ、エリート選手における記録の更新は、体力要因の維持向上はもちろんであるが、特に抵抗を軽減させるような泳技術の改善に起因していたことが示唆された。また、一流選手における規定要因については、年間のトレーニングを通じて有意差が出るほど顕著な変化が得られないこと、さらに本被検者における推進効率は73.2±8.3%であり、これまで報告されている値よりも高く、非常に優れた技術を有していることも明らかとなった。
著者
田口 信教 田中 孝夫 荻田 太
出版者
鹿屋体育大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

【目的】本研究は、昨年度の成果をもとに、低圧環境下を用いて一流選手にスプリントトレーニングを施し、エネルギー供給能力、泳パフォーマンスに対する有効性について検討することを目的とした。【方法】被検者は、年齢20±2歳、身長165.6±1.7cm、体重57.7±5.1kgの全日本学生選手権3連覇中の水泳部に所属する選手であり(女子4名、男子2名)、うち3名はリレーにおける日本記録保持者、1名はヨーロッパサーキットグランプリ出場、その他も全日本選手権、全日本学生に出場する選手であった。トレーニングは加減圧調整可能流水プールを用い、1日1回、週5回の頻度で4週間、海抜4000m相当の低圧環境下において行われた。トレーニング内容は、5秒の運動を10秒の休憩を挟み5回繰り返す間欠的運動とし、これを20分の休憩をはさんで2セット行った。強度は、常圧環境下において10秒程度で疲労困憊に至る強度とした。トレーニング効果は、常圧環境下における最大酸素摂取量、最大酸素借、最大推進パワー、50m、100m自由形泳記録の変化によって評価した。【結果および考察】4週間のトレーニング後、最大酸素摂取量に有意な変化は見られなかったが、最大酸素借は27%増加(前:2.85±3.57、後:3.57±1.56l)、さらに最大推進パワーも18%増加(前:90.1±45.2、後:106.4±40.4W)し、いずれの有意であった(P<0.01)。さらに泳記録についても50m(前:27.33±1.64、後:26.78±1.46秒)、100m(前:59.40±3.22、後:58.15±2.94秒)ともに有意に向上した(P<0.01)。以上の結果より、低圧環境下におけるスプリントトレーニングは、エリート選手に対してもエネルギー供給能力および泳成績の向上に有効であることが示唆された。
著者
蛇穴 治夫
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、動物園を活用した授業案と教材を作成し、学校現場に提供することを目的とした。授業案作成においては、「実物観察の重要性」、「進化の概念を意識させることの重要性」、「目的を持った観察の重要性」に特に留意した。教材としては、エゾシカとライオンの頭骨レプリカ、ブタ小腸の消化管プラスティネーション、ニワトリの手羽先骨格標本、イヌ・ライオン・ウシの足形レプリカ、脊椎動物の移動方法を比較できるビデオ教材を作製した。これらを用いて、「動物の体のつくりと働き」、「動物のなかま」における授業案を作成した。授業案においては、食性や脊椎動物の移動方法の違いに基づく動物の適応形に着目させるようにして、動物が共通の祖先から進化してきたことを理解させるようにした。そのことを通して、全ての動物には系統的なつながりがあることを実感させ、更には生命の連続性から生命尊重の意識を育てることをねらった。また、観察に目的意識を持たせるために、仮説から演繹的に推論させ、それを観察で確かめるという授業構成にした。一部は附属中学校において実践し、その有効性について検証を加えた。学校現場への研究成果の還元及び教材の普及活動のために、旭山動物園教育研究会の立ち上げと現職教員スキルアップ研修活動を実施し、さらに、平成17〜19年度の教員10年経験者研修を利用した。旭山動物園教育研究会では、動物園スタッフ、小・中学校の教員(現在約45名)と共に年2回のワークショップを行い、ニューズレターの発行も行っている。スキルアップ研修では、物理・化学・地学・理科教育の大学教員と共に、19年度に市内の教員向けの研修を各教科ごとに年1回ずつ開催した。以上の研究により、生物の学習並びに生命尊重の意識を育てることに必須となる、生物を進化という観点から見たり考えたりする力を育てる教材の開発とその普及を行うことができたと考える。
著者
吉川 麻衣子
出版者
九州産業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

平成18年度は,研究課題「沖縄県高齢者の戦争体験に関する臨床心理学的研究-調査研究と実践研究を通して-」の研究成果の報告と,本研究の実践研究の部分にあたる「戦争体験を語ることを中心としたグループ・アプローチ」(平成17年度実施)のフォローアップおよびフィードバックを行った。研究成果の報告に関しては,国内外の学会で口頭発表を行った。沖縄県の戦争体験者の心理構造や,戦争が終わって60年あまり経過した人びとの思いを紹介した。本邦では,戦争体験者に関する学術的研究がほとんど行われておらず,臨床心理学の分野における代表的な学会(日本心理臨床学会)での反響は大きかった。来年度以降,さらに発表の機会を増やし,学術雑誌等での発表にも取り組んでいく予定である。また,ドイツのポツダムで行われた「Person-Centered and Experiential Psychotherapy and Counselng」での発表では,参加者の多くがヨーロッパ諸国の人びとであったが,発表を通して,今なお世界各地で紛争が絶えず多くの尊い命が失われている現状の中,「いま,世界平和のためにできることはなにか」を共に考える機会となった。グループ・アプローチのフォローアップおよびフィードバックは,A地域(参加者11名)で3回,B地域(参加者8名)で3回,C地域(参加者9名)で3回,D地域(参加者12名)で3回,E地域(参加者10名)で3回,F地域(参加者8名)で4回,G地域(参加者15名)で4回実施し,平成19年3月までに全て計画通り終了した。数十ヶ月にもおよんだグループ・アプローチは,これまで戦争体験を安心して語れる機会がなかった参加者にとって有意義な時間となり,グループが終了した今でも,地域の高齢者の居場所として機能している。研究計画の段階で予想していた以上の効果が挙げられたものと考えられる。筆者は,10年間,沖縄県の戦争体験者の研究を継続してきた。これまでに500名以上に関わってきた。その1人1人の語りの中には,戦争の悲惨さや体験した者の悲しみや辛さ,そして,真の平和を願う未来への伝言が多く含まれていた。今後も戦争体験者の研究を継続し,色々な形で発表していくことで,貴重な話を聴かせてくれた人びとへの恩返しになればと考えている。
著者
浅井 圭介 永井 大樹 沼田 大樹 姜 欣 近野 敦 近野 敦 中北 和之
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

本研究は,航空機の非線形領域における動安定性を調べる実験技術として,ハイブリッド・アプローチによる次世代動的風洞試験法を開発することを目的としている.従来のシリアルロボットに加えて,新規にHEXA型パラレルロボットとその制御系を開発し,それらを用いて縦運動と横運動が連成する2自由度の加振実験を実施した.これと並行して,非定常感圧塗料や蛍光ミニタフトなどの先進的な光学計測手法を開発し,非定常運動するデルタ翼面上の前縁剥離渦の崩壊や空気力への周波数の影響を実験で明らかにした.これら一連の実験により,非線形飛行力学の研究を行うための基盤技術を構築することができた.
著者
松岡 延浩 今 久 松田 友義 木村 玲二 神近 牧男 王 秀峰 井上 京
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では,砂漠化とは本来気候的に決まる「気候生産要因(Climatic Production Factor)」が,農業・牧畜業による人為的因子(農業形態,牧畜形態)などの「阻害要因(Inhibition Factor)」を上回っている場合に植生は安定しているが,「阻害要因」が「気候生産要因」上回った場合に砂漠化が発生するという仮説を立てた。それの従って,砂漠化の危険度を評価するため,地点毎の「気候生産要因」と「阻害要因」を表現するモデルを作成した。阻害要因としては「土壌水分量」,「放牧強度と土地利用」を取り上げた。研究組織を以下の3班に分けて,砂漠化ハザードマップ作成に必要な「気候生産要因」と「阻害要因」を表現するモデルの妥当性の検討とハザードマツブ作成を行った。メッシュデータ整備班(松岡,王)研究期間に整備された自然的要因に関するデータを用いて,「気候生産要因」メッシュデータの作成を行った。また,メッシュデータの妥当性に問題があると判断される地域現地の気象データの再収集および地表面分類のグランドトゥルースを行った。農作業調査班(今,神近,木村,松田,井上,中野)観測期間内に,「阻害要因」のモデル化とメッシュ化を行った。メッシュデータの妥当性に問題があると判断される地域において,農業形態,特に作物の種類,栽培方法,灌概水量の聞き取り調査を行った。同時に,農業形態には,農家の経営状況が大きく影響するため,経営状況のメッシュ化を松田を中心に再検討した。牧畜調査班(小林,松田,野島)上記に出作成されたメッシュデータの妥当性に問題があると判断される地域において,砂漠化指標の1つである植生量と構成植物種に対する家畜密度の影響を,再度植生調査と聞き取り調査した。以上の結果を取りまとめ,黄河流域の10kmメッシュを作成して,現地地方政府など普及機関に配布するとおもに農牧畜民の砂漠化に対する教育普及に供試することができた。
著者
土井 元章 林 孝洋 細川 宗孝 水田 洋一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

花卉の香り育種に有用な知見を得るため,バラを用いて以下の実験を行った.芳香性品種の花弁からは,モノテルペノイド,セスキテルペノイド,芳香族アルコール,酢酸エステル,ジメトキシトルエンが検出された.また,これらのバラ切り花の香りには鎮静効果と精神的疲労低減効果が認められた.モノテルペノイド合成酵素遺伝子として2遺伝子がクローニングされた.このうちRhMTS2は被子植物の非環式モノテルペノイド合成酵素遺伝子群に分類され,芳香性品種のかたい蕾で高発現していた.ゲラニル二リン酸合成酵素としては,RhGPPS-LSU1,RhGPPS1が単離でき,前者は芳香性品種すべてと非芳香性の1品種で高発現していた.
著者
安藤 宏 GANG Q GANG Q.
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

今年度は、以下の四回にわたる学会・国際シンポジウムで研究発表・講演を行った。1、創価大学日本語日本文学会2006年春季大会発表(2006年5月19日)で、「芥川龍之介の上海・北京観劇」という題で研究発表した。2、「第一回国際芥川龍之介学会・シンポジウム」(2006年9月9日、韓国・延世大学、仁川大学)における講演題目「「南京の基督」における中国表象--同時代的言説の中で--」3、「東アジア日本学研究国際シンポジウム」(2006年10月14日、中国・洛陽)における研究発表題目「芥川龍之介における洛陽という場(トポス)」という題で研究発表した。4、「東アジアで村上春樹を読む国際シンポジウム」(2007年3月30日、韓国・高麗大学)における講演題目「戦後日本の歪みの中の村上春樹」今年度中に活字化した研究成果は、以下の通りである。1、論文「ジブリアニメと2005年の日本」(『日本学研究』2006年11月)2、討論「パネルディスカッション「ジブリアニメの力」」(『日本学研究』2006年11月)3、研究ノート「上海小新聞の一記事から中日文壇交渉を探る」(『日本近代文学』第75集2006年11月)4、論文「芥川龍之介と谷崎潤一郎の中国表象--<支那趣味>言説を批判する『支那游記』」(『国語と国文学』2006年11月)5、論文「芥川龍之介の中国旅行と『支那游記』」(『書品』2006年10月)6、訳書『支那游記』」(中華書局2007年1月)
著者
内藤 靖彦 ELVEBAKK Arv WIELGOLASKI フランスエミル 和田 直也 綿貫 豊 小泉 博 中坪 孝之 佐々木 洋 柏谷 博之 WASSMANN Pau BROCHMANN Ch 沖津 進 谷村 篤 伊野 良夫 小島 覚 吉田 勝一 増沢 武弘 工藤 栄 大山 佳邦 神田 啓史 福地 光男 WHARTON Robe MITCHELL Bra BROCHMANN Chirstian ARVE Elvebak WIELGOLASKI フランス.エミル 伊村 智
出版者
国立極地研究所
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

北極の氷河末端域における生態系の変動は温暖化に強く関連するといわれているがあまり研究はなされていない。とくに今後、北極は4〜5℃の上昇が予測されているので調査の緊急性も高い。本研究では3年間にわたり(1)植生及び環境条件の解明、(2)繁殖過程の解明、(3)土壌呼吸と温度特性の解明、(4)土壌節足動物の分布の解明、(5)人工環境下での成長変化の解明を目的として調査、観測が実施された。とくに気候変動がツンドラの生態系に及ぼす影響を、遷移初期段階である氷河モレーン上に出現する動物、植物の分布、定着、生産、繁殖、移動について研究を行った。調査、観測は海洋性気候を持つスバールバル、ニーオルスンの氷河後退跡地で実施した。初年度は植生及び環境条件の解明を目的として6名の研究者を派遣した。氷河末端域のモレーン帯の植物の遷移過程の研究では、氷河末端域から約50メートル離れたモレーンに数種の蘚類が認められ、これらはパイオニア植物として考えられた。種子植物は100メートル過ぎると出現し、地衣類の出現はむしろ遅いことが明らかになった。また、遷移段階の古いチョウノスケソウ群落は立地、土壌中の窒素量の化学的特性の違いによって7個の小群落に区分された。2年度は植生と環境条件の解明を引き続き実施すると共に、遷移初期段階における植物の繁殖、土壌呼吸と温度特性、土壌節足動物の生態の解明を目的として実施された。現地に6名の研究者が派遣された。観測の成果としては昨年、予備的に実施したスゲ属の生活形と種子繁殖の観察を踏まえて、本年度はムカゴトラノオの無性繁殖過程が調査された。予測性の低い環境変動下での繁殖特性や繁殖戦略について、ムカゴの色、大きさ、冬芽の状態が環境の変化を予測できるという実装的なアプローチが試みられた。パイオニア植物といわれているムラサキユキノシタは生活型と繁殖様式について調査され、環境への適応が繁殖様式に関係しているなど新たな知見が加わった。また、氷河末端域の土壌呼吸速度は温帯域の10%、同時に測定した土壌微生物のバイオマスはアラスカの10%、日本の5%程度であることが始めて明らかにされた。土壌節足動物の分布の解明においては、一見肉眼的には裸地と見なされるモレーン帯にもダニ等の節足動物が出現し、しかも個体数においては北海道の森林よりもむしろ多いなど興味深い結果が得られた。最終年度は2年度の観測を継続する形で、6名の研究者を現地に派遣した。実施項目は氷河後退域における植生と環境調査、土壌と根茎の呼吸調査、および繁殖生態調査が実施された。観測の成果としては植生と環境調査および土壌と根茎の呼吸速度の観測では興味深い結果が得られ、すなわち、観測定点周辺のポリコンの調査では植物および土壌節足動物の多様性が大きいことと、凍上および地温に関する興味深いデータが取得された。また、土壌および根茎の呼吸速度の観測では、実験室内での制御された条件での測定を行い、温度上昇に伴って呼吸速度は指数関数的に上昇するが、5度以上の温度依存性が急に高くなり、これは温帯域のものより高かった。これらを更に検証するためにより長期的な実験が必要であるが、今後、計画を展開する上で重要なポイントとなるものと考えられる。さらに、チュウノスケソウの雪解け傾度に伴う開花フェノロジー、花の性表現、とくに高緯度地域での日光屈性、種子生産の制限要因についての調査では、生育期間の短い寒冷地での繁殖戦略の特性が明らかにされた。初年度および最終年度には、衛星による植物分布の解析し環境変動、北極植物の種多様性と種分化について、ノルウェー側の共同研究者と現地で研究打ち合わせを持った他に、日本に研究者を招聘して、情報交換を行った。最後に3年間の調査、観測の報告、成果の総とりまとめを目的として、平成9年2月27、28日に北極陸域環境についての研究小集会、北極における氷河末端域の生態系に関するワークショップが開催された。研究成果の報告、とりまとめに熱心な議論がなされた。
著者
小川 知之 亀高 惟倫 永井 敦 小川 知之
出版者
大阪大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

本研究では工学に登場する非整数階微分方程式の解析およびその差分化を行った。また高階微分方程式の境界値問題のグリーン関数についてソボレフ不等式の最良定数計算への応用を中心に調べ、さらにパターン形成の問題と関連して分岐解析法を整備した。得られた結果は以下の通りである。1.流体力学に登場する非整数階微分方程式であるチェン方程式において、ピューズー展開法を用いてミッタークレフラー関数解を求めた。またこれらの初期値問題は、ミッタークレフラー関数の漸近挙動を用いることにより、(非整数階微分を含まない)2階および4階常微分方程式の境界値問題で近似されることを証明した。2.地球内部のマントルの運動に関連して,球面上でのラプラス作用素の有限要素法による差分化を行い、反応拡散系でのパターン形成の数値シュミレーションを行った.この問題はレーリー・ベナール対流のパターン形成などとも関連し,分岐理論による解析法を整備した.球面上に現れたパターンの球面調和関数による分岐解析などは今後の課題である.2.弾性理論に登場する4階常微分方程式の境界値問題のグリーン関数の区間長依存性を調べた。その結果、4階特有の興味深い現象が現れることを発見、解析的に証明した。同時に2M階常微分方程式のグリーン関数があるヒルベルト空間の再生核であることを証明し、この結果をソボレフ不等式の最良定数計算に応用した。