著者
玉城 司 平林 香織
出版者
清泉女学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

松代藩第六代藩主・真田幸弘の文芸について調査研究した。幸弘が一座した点取俳諧資料九万句の内、約三分の一の三万句を翻刻して、その一部を研究成果として作成したホームページ「松代藩第六代藩主真田幸弘の文藝」に写真と共に掲載した。これは、語彙索引機能を備えているので、点取俳諧資料として利用できるだけでなく、江戸時代の語彙を検索することができる。なお、ホームページは、幸弘の全体像を理解できる構造にした。
著者
神津 武男 黒石 陽子 井上 勝志 久堀 裕朗 鈴木 博子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

江戸時代・近世期の「人形浄瑠璃文楽」(義太夫節成立以後の人形芝居)の上演記録は、『義太夫年表 近世篇』(八木書店。1979~1990年)の成果を最新とする。しかしその完結から20年余を経て、少なくとも四次の補正更新情報が別々に報告されている点が、利用上の障壁となりつつあった。本研究課題としては最も基本的な資料である「番付 ばんづけ」についてデータベース化を進め、一元的な情報検索を可能とすることに努めた。
著者
松岡 心平 天野 文雄 磯田 道史 小川 剛生 落合 博志 小林 健二 高桑 いづみ 高橋 悠介 橋本 朝生 宮本 圭造 山中 玲子 横山 太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

観世文庫の能楽関係資料は、質・量ともに能楽に関する最重要の資料群である。本研究では、これらの資料の調査・研究に基づき、インターネット上で画像と解題を公開するデジタル・アーカイブ「観世アーカイブ」を拡充させると共に、これを活用して、近世能楽史の研究を大きく進めた。特に、15世観世大夫元章(1722~74)の能楽改革に関する研究に重点を置き、観世元章に関する用語集と関係書目、年譜をまとめ、刊行した他、元章による注釈の書入れが顕著な謡本『爐雪集』の翻刻と検討を行った。さらに、観世文庫に世阿弥自筆能本が残る「阿古屋松」の復曲を行い、観世文庫資料の展覧会でも研究成果を公開した。
著者
山田 修
出版者
東京芸術大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究の最大の目的は、3Dデータの活用を彫刻文化財の修理において日常的に用いる手法にし、作業効率を改善し、低コスト化、質の向上を目指し、より多くの彫刻文化財の修理を可能にすることである。実際の修理に対し手作業とデジタル操作に関わるコスト、時間といった諸要素の効果を可能な限り定量化し分析していくとともに、技術の伝承性を考慮した上で従来行われてきた伝統ともいえる作業方法と3D技術の共存できる接点を検討した。
著者
PATRICK Rebollar 松村 剛 丸岡 高弘 真野 倫平 クーロン ダヴィッド ペロンセル モルヴァン 一丸 禎子
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は東京大学総合図書館所蔵コレクション『マザリナード集成』約2700点を完全デジタル化し、世界に先駆けマザリナード文書のオンライン・デジタルコーパスとしてインターネット上に公開した。これにより世界的にも貴重な原資料の保護と継承のみならず、新たな学術研究の可能性を開くことに貢献した。本研究により実現したコーパスの特徴は従来型データ・ベースと異なり、研究者によって絶えず更新され、最新の知識が一般にも共有されることである。日本が発信したこの新しい知の共有・集積方法(マザリナード・プロジェクト)は最も先端的かつ学際的な「マザリナード文書の研究用プラットフォーム」として国際的に機能し始めている。
著者
下田 正弘 小野 基 落合 俊典 蓑輪 顕量 永崎 研宣 宮崎 泉 鶴岡 賀雄 中村 雄祐 MULLER Albert 苫米地 等流 三宅 真紀 田畑 智司
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

研究成果の概要(和文):知識の蓄積・発信の手段が紙からデジタル媒体へと大規模に移行し、ウェブをとおして知識が世界規模で連結されつつある現在、研究資源と研究成果の双方を適切に継承する知識の枠組みを構築することは、人文社会学における喫緊の課題となっている。本研究は、国内の学会や機関、およびドイツ、アメリカ等で進める関連諸事業と連携して、仏教研究の知識基盤をSATデータベースとして構築し、次世代人文学の研究モデルとして提供するものである。http://21dzk.l.u-tokyo.ac.jp/SAT/参照。
著者
村井 源
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

聖書など古典テキストに特徴的に見られる、構造的な記述(キアスムス、パラレリスムスなど)を科学的に分析するための基盤を構築した。まず個々の構造を納めるためのデータ構造を設計しソフトウェアを開発した。次に聖書の構造的な記述を(旧約39巻、新約27巻、旧約続編11巻の、約1500の構造と約7700の対応テキスト箇所の対)を分析し、データベースに納めた。また分析結果が妥当かを統計的に判定するためのプログラムを開発した。得られたテキスト中の構造のリストはホームページ上(http://www.valdes.titech.ac.jp/~h_murai/bible/bible.html)で公開している。
著者
三宅 真紀
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、聖書学におけるギリシャ語新約聖書の主要な校訂本を対象にして、写本の異読情報を付帯した意味ネットワークを構築し、グラフ理論に基づいたネットワーク分析を適用した。また、共通箇所が多い校訂本に埋もれている微小な違いに焦点をあてながら、類似テキストの差異の抽出を試みた。さらに、類似性を表す統計値とTEI(Text Encoding Initiative)エンコードガイドラインに準拠して作成したディジタル批判本を組み合わせた、異本比較研究ツール開発した。
著者
研谷 紀夫
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、歴史的な人名典拠情報を、APIを使用してDigital Cultural Heritageに提供し、利用することの妥当性を実証することを目的とする研究である。研究期間において行った実証実験では、歴史的な人名などを中心とした、人名典拠情報を典拠情報サーバ(A)からAPIを用いて文化資源をデジタル化したDigital Cultural Heritage(以下DCH)(B)に提供する実証実験を行い、その有効性を検証した。また、(A)において、複数の人名を検索し、それぞれの共通点や人間関係を介したつながりを明らかにするような検索機能を設けた。この機能は、典拠の履歴情報の掲載された、所属組織や家、生没年などから共通のバックグラウンドを導き出すとともに、これらの共通情報をヒントに、血縁や師弟関係などについて示された人間関係のつながりを最短の経路で導き出す機能を持っている。これらの機能を活用することによって、これまで、多くの時間が必要だった、人間関係のネットワークを明らかにする支援ツールとしても役立つデータベースである。そして、サーバの(A)に格納した具体的な人名としては、戦前期の皇族・華族と写真師に関する人名典拠情報をその対象とした。また、(B)のDCHには絵葉書や、歴史的な写真を格納して、各写真を用いた戦前期の皇族・華族・政治家の写真イメージとそれを担った写真師を対象とする表象文化研究に活用し、その有効性を実証した。本研究では、上述のように、一か所に集約した典拠情報を、APIによりDCHに配信し、活用するモデルを示すとともに、具体的な実証実験を通して、DCHにおけるその活用方法とその有効性を示した。本研究の成果は、今後の日本における人名典拠情報の具体的な整備方法と活用方法のあり方を示す点に意義がある。
著者
山中 秀夫
出版者
天理大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

NACSIS-CATに蓄積した書誌情報の分析をもとに,著作典拠コントロールとしての統一タイトルの課題を研究した。日本古典籍目録では,著作典拠コントロールは必要不可欠なシステムであるが,その際の課題を考えた。次に,共有する情報として出版者情報の分析を行った。識別情報としての出版者情報の重要性を確認するとともに,出版者名と時代,所在地,書名をキーとして探索できるシステムを試作した。
著者
杉本 重雄 逸村 裕 佐々木 秀康 永森 光晴 原 正一郎 池内 淳 上保 秀夫 阪口 哲男 新保 史生 鈴木 誠一郎 柊 和佑 森嶋 厚行 吉村 和真
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

ネットワーク環境におけるコンテンツ情報基盤に関する総合的取組として(1) ディジタルアーカイブの連携性向上のためのメタデータスキーマレジストリ技術(2) 図書館,文書館等における頑健なディジタルアーカイブのためのメタデータモデル(3) ディジタルマンガ等の新しい形態のコンテンツのためのメタデータモデル(4) これらを総合的にとらえたディジタルアーカイブ間連携等の課題に関する研究を進め, 公開シンポジウム等の機会も通じて, ネットワーク環境におけるディジタルアーカイブの相互運用性, 利用性向上のための情報基盤に関する知見を得た。
著者
林 晋 相原 健郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

人文学、特に史料ベースの人文学のための、ネット上分散協働作業用プラットフォーム HCP サーバを構築し、歴史研究用ツール SMART-GS を、そのクライアントに改造した。また、同クライアントによるオンサイト・リアルタイム協働の概念を導入し、そのための種々の機能を開発した。
著者
石村 哲代
出版者
四条畷学園女子短期大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

将来の家庭内エネルギ-源として、とりわけ高齢者世帯や高層住宅などでは、安全性やハイカロリ-といった面から、200V電圧の電気エネルギ-の利用が急速に進むことが予測される。既に一般家庭を対象に200V電圧の調理用加熱機器(以下200V機器と略)が市販され始めたが、その実用性についてのデ-タは未だ十分とはいい難い。そこでこれらの新しい電化調理機器について基礎的研究を進め、従来100V電圧の調理機器(以下100V機器と略)や都市ガスコンロ(以下ガスコンロと略)などと比較した場合の有効性や問題点を明らかにすることは極めて重要との考えから本研究を行った。本年度までに明らかになった点は次の通りである。1.ハロゲンヒ-タ-、シ-ズヒ-タ-、電磁調理器などの200V機器の調理機能は従来の100V機器に比べて明らかに有効といえ、中でも電磁調理器は、熱効率、水温上昇速度、食品投入後の水温回復時間などからみて、ガスコンロに匹敵する高温調理機能を備えた極めて有効な調理機器であることが判明した。ハロゲンヒ-タ-、およびシ-ズヒ-タ-については熱効率、水温上昇速度などからみて、経済性、実用性の両面で未だガスコンロの調理機能との開きが大きく、さらに改良の余地があると考える。2.各種200V機器を用いて、従来の100V機器では困難とされていた高温短時間を不可欠とする調理を行い、その加熱調理食品について化学的・物理的成分変化を測定した結果、「青菜を茹でる」など水を熱媒体とする調理では電磁調理器が「炊め物」や「焼肉」などの鉄板焼き調理ではハロゲンヒ-タ-が、ガスコンロに匹敵する有効性を示した。3.省エネルギ-の見地から、200V機器の特性である保温性能を利用した粥炊きを行い、通常の標準的な方法による粥と比較した結果、嗜好的に有意差のない粥が得られ、保温性能の調理への有効利用の可能性を見出すことができた。
著者
山本 雅 渡邊 俊樹 吉田 光昭 平井 久丸 本間 好 中地 敬 永渕 昭良 土屋 永寿 田中 信之 立松 正衛 高田 賢蔵 澁谷 均 斉藤 泉 内山 卓 今井 浩三 井上 純一郎 伊藤 彬 正井 久雄 村上 洋太 西村 善文 畠山 昌則 永田 宏次 中畑 龍俊 千田 和広 永井 義之 森本 幾夫 達家 雅明 仙波 憲太郎 菅村 和夫 渋谷 正史 佐々木 卓也 川畑 正博 垣塚 彰 石崎 寛治 秋山 徹 矢守 隆夫 吉田 純 浜田 洋文 成宮 周 中村 祐輔 月田 承一郎 谷口 維紹 竹縄 忠臣 曽根 三郎 伊藤 嘉明 浅野 茂隆
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

近年、がん遺伝子、がん抑制遺伝子の研究が進み、がんを遺伝子ならびにその産物の機能に基づいて理解することが可能になった。それと共に、細胞増殖のためのシグナル伝達機構、細胞周期制御の機構、そして細胞死の分子機構の解明が進んだ。また細胞間相互作用の細胞社会学的研究や細胞表面蛋白質の分子生物学的研究に基づく、がん転移の機構についての知見が集積してきた。一方で、がん関連遺伝子の探索を包含するゲノムプロジェクトの急展開が見られている。また、ウイルス発がんに関してもEBウイルスとヒトがん発症の関連で新しい進展が見られた。このようながんの基礎研究が進んでいる中、遺伝子治療のためのベクター開発や、細胞増殖制御機構に関する知見に基づいた、がんの新しい診断法や治療法の開発が急速に推し進められている。さらには、論理的ながんの予防法を確立するための分子疫学的研究が注目されている。このような、基礎研究の急激な進展、基礎から臨床研究に向けた情報の発信とそれを受けた臨床応用への試みが期待されている状況で、本国際学術研究では、これらの課題についての研究が先進的に進んでいる米国を中心とした北米大陸に、我が国の第一線の研究者を派遣し、研究室訪問や学会発表による、情報交換、情報収集、共同研究を促進させた。一つには、がん遺伝子産物の機能解析とシグナル伝達・転写調節、がん抑制遺伝子産物と細胞周期調節、細胞死、化学発がんの分子機構、ウイルス発がん、細胞接着とがん転移、genetic instability等の基礎研究分野のうち、急速な展開を見せている研究領域で交流をはかった。また一方で、治療診断のためには、遺伝子治療やがん遺伝子・がん抑制遺伝子産物の分子構造に基づく抗がん剤の設計を重点課題としながら、抗がん剤のスクリーニングや放射線治療、免疫療法に関しても研究者を派遣した。さらにがん予防に向けた分子疫学の領域でも交流を図った。そのために、平成6年度は米国・カナダに17名、平成7年度は米国に19名、平成8年度は米国に15名を派遣し、有効に情報交換を行った。その中からは、共同研究へと進んだ交流もあり、成果をあげつつある。本学術研究では、文部省科学研究費がん重点研究の総括班からの助言を得ながら、がん研究の基盤を形成する上述のような広範ながん研究を網羅しつつも、いくつかの重点課題を設定した。その一つは、いわゆるがん生物の領域に相当する基礎生物学に近いもので、がん細胞の増殖や細胞間相互作用等の分子機構の急激な展開を見せる研究課題である。二つ目の課題は、物理化学の分野との共同して進められる課題で、シグナル伝達分子や細胞周期制御因子の作用機構・高次構造に基づいて、論理的に新規抗がん剤を設計する試みである。この課題では、がん治療薬開発を目的とした蛋白質のNMR解析、X線結晶構造解析を推進する構造生物学者が分担者に加わった。三つ目は、極めて注目度の高い遺伝子治療法開発に関する研究課題である。レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクターの開発に関わる基礎側研究者、臨床医師、免疫学者が参画した。我が国のがん研究のレベルは近年飛躍的に向上し、世界をリ-ドする立場になってきていると言えよう。しかしながら、上記研究課題を効率良く遂行するためには、今後もがん研究を旺盛に進めている米国等の研究者と交流を深める必要がある。また、ゲノムプロジェクトや発生工学的手法による、がん関連遺伝子研究の進展によって生じる新しい課題をも的確に把握し研究を進める必要があり、そのためにも本国際学術研究が重要な役割を果たしていくと考えられる。
著者
岩附 研子 堀本 泰介
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

インフルエンザウイルスの核外輸送に関わるNS2蛋白質のN末側に、蛍光標識蛋白質(Venus)を組み込み、蛍光標識組換えウイルスの作製を行った。このウイルスを培養細胞(Madin-Darby Canine Kidney細胞)に感染させ、共焦点顕微鏡を用いてタイムラップス解析を行ったところ、NS2蛋白質が一度核内に集積した後、一気に核外に放出される映像をリアルタイムでとらえることに成功した。本研究で得られた蛍光標識組換えインフルエンザウイルスは、NS2蛋白質の細胞内輸送を解明する有効なツールとなることが期待できる。
著者
塩田 邦郎 高橋 英司 遠矢 幸伸 明石 博臣 高橋 英司 前田 健 宮沢 孝幸 塩田 邦郎 堀本 泰介
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

ネコ免疫不全ウイルス(FIV)は、後天性免疫不全症候群(エイズ)様症状のネコから分離され、ヒト免疫不全ウイルスと同じくレトロウイルス科レンチウイルス属に分類される。本研究はFIV感染防御上大きな役割を担っていると考えられるCD8陽性細胞およびNK細胞を中心に、そのphenotypeと抗FIV活性を解析することを目的としている。当該研究期間において以下の項目について研究を行い、新たな知見を得た。1.NK細胞マーカーの解析:ネコFcγRIII-Aの膜貫通型分子のクローニングとネコCD56抗原のバキュロウイルス組換え発現に成功した。CD56についてはモノクローナル抗体(MAb)も作製した。2.CD8α+β-or low細胞群の解析:ネコCD3εを組換え発現させた蛋白を抗原としてMAbを作製し、FIV増殖抑制活性を有するCD8α+β-or low細胞群のフローサイト解析に用いた。その結果、当該細胞群はT細胞系であると考えられた。3.ネコCD2の性状解析:免疫応答において重要なT細胞表面抗原CD2のネコホモローグをクローン化してその塩基配列を決定した。解析したcDNAには1008塩基対の翻訳可能領域が含まれており、336アミノ酸をコードし、その配列は他の動物と46〜57%の相同性を有していた。さらに、抗ネコCD2MAbを作製したところ、得られた抗体はネコCD2のEロゼット形成を阻止し、フローサイトメトリーによるネコ末梢血中のCD2陽性細胞の検出に有用であることが示された。4.ネコCD11aの抗体作製:CD2と同様、免疫応答に重要な接着分子CD11aのネコホモローグのcDNAをバキュロウイルスにより組換え発現させ、抗ネコCD11aMAbを作製した。T細胞の活性化に伴うCD11aの発現量増加が認められ、ネコ末梢血中の活性化T細胞の解析に有用であった。
著者
三田 智文 角田 誠 船津 高志
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

近年、分析化学におけるダウンサイズ化として、半導体微細加工技術を利用したマイクロ化学分析システムが注目されている。本研究では、微量生体成分の高感度分離検出系を組み込んだ液体クロマトグラフィー(LC)のマイクロチップ集積化を目的とした。最初に、高感度検出を目指して、ベンゾフラザン骨格を有する水溶性の蛍光標識試薬を開発した。水溶性の試薬はマイクロチップ上での分離において問題となる基板への吸着を防ぐことができると考えられる。さらに、核酸類似骨格を有する二環性化合物を合成しその蛍光特性を検討し、デオキシシチジン誘導体が強い蛍光性を有することを明らかにした。今後この骨格を有する蛍光標識試薬を開発する予定である。また、開発した試薬とLCを用いてペプチド類、微量生体成分および薬物の分析法を開発した。これら開発した分析法はマイクロチップ上に集積化可能である。マイクロチップLCの検出系として質量分析も有力視されている。そこで、質量分析用標識試薬を開発し、生体成分の分析法に適用した。本法もマイクロチップ上に集積化可能である。また、モノリス型キャピラリーカラムおよびチップ上でのモノリスカラムの作成に取り組み、分離系の微量化を検討した。さらに、チップ上でのLC用レーザー蛍光顕微検出法の開発に取り組んだ。溶液中の蛍光検出対象物質が対物レンズから近い距離に存在すれば、蛍光を十分に集光できるため高感度に検出できる。そこで流路の厚さが5μm程度以下の部分を作成し、この部分で検出を行うことにより高感度検出を可能にした。今後、これらの方法をマイクロチップ上に集積化する予定である。
著者
堤 博文
出版者
日本大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

歯の各組織のうち、主として歯髄についてDNAを抽出し、PCR法を応用してシングルローカスD1S80座位ならびにHLAクラスII抗原遺伝子DQα座位を増幅し、それらの多型について検討した。【試料】歯科診療時に採取した新鮮歯髄、ならびに1〜23年間室内保存の抜去歯から採取した陳旧歯髄を用いた。DIS80型では30例、HLADQα型では140例について検討した。【結果・考察】歯髄から得られたDNAは、低分子化している場合が多かった。D1S80型のallele sizeは約300〜800bpと比較的大であるので、歯髄DNAからの型判定はやや困難であり、また目的以外のバンドが多数認められた。そこでPCR条件を各種検討した結果、温度条件を変えたところ、多少エキストラバンドが減少する傾向が認められた。現在は、PCR増幅する際の鋳型DNAの濃度、プライマー、DNAポリメラーゼなどの至適濃度について、より詳細に検討中である。HLADQα型のallele sizeは242/239bpであり、低分子化した歯髄DNAからのHLADQα型判定は容易であった。しかし、検査時に非特異的反応が生じる場合が認められたが、鋳型DNA量を減らすことによって良好な成績が得られた。歯髄140例についてHLADQα型検査を行った結果、対立遺伝子の出現頻度は3型が48.2%、1.3型17.5%、1.2型14.3%、4型12.1%、1.1型7.5%および2型0.4%であった。また遺伝子型は、21type中16typeが出現し、その出現頻度は1.3-3型が31例(22.1%)と最も多く、ついで3-3型28例(20.0%)、1.2-3型24例(17.1%)の順であった。また、23年間保存した陳旧試料からもHLADQα型判定は十分に可能であったことから、法医鑑定には非常に有効な検査法と考えられる。
著者
中野 由美子
出版者
国立感染症研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

コレステロールは赤痢アメーバの生育に必須な因子の一つであり、赤痢アメーバは細胞外からのコレステロールの取込み、あるいは細菌や宿主細胞を貪食することによりコレステロールを摂取している。ヒトにおいて、コレステロールが局在するオルガネラは細胞膜であるが、赤痢アメーバではリソソームに局在していることが明らかになった。そこで、コレステロールの細胞内輸送の特殊性を理解するために、リソソーム輸送の制御機構について解析を行った。他種生物ではリソソームへの輸送は低分子量GTPaseであるRab7が膜融合を担っているが、赤痢アメーバゲノムにはRab7が9種存在した。そのうちの一つEhRab7AはエンドソームからTGNへの逆行輸送に関与することが以前に報告されていたが、EhRab7Aにもっとも高い相同性を示したEhRab7Bは赤痢アメーバ内で大量発現することにより、リソソームの肥大化を誘引ことが分かった。EhRab7Bの機能をさらに詳細に解析するために、EhRab7Bの優性変異であるH69L変異を発現させたところ、EhRab7B H69Lタンパク質の細胞内局在は膜から可溶性画分へと変化し、リソソームの形成が阻害された。さらにEhRab7B H69L変異発現株ではリソソーム酵素であるシステインプロテアーゼが細胞外に大量に分泌されていた。システインプロテアーゼの細胞内での発現はEhRab7B H69L変異株では僅かに減少しており、システインプロテアーゼのmis-secretionが起こっていると考えられた。以上の様に、赤痢アメーバのリソソーム輸送は、複数のRab7が異なるステップを調節しており、Rabの機能の細分化が起きていると考えられた。
著者
松野 真
出版者
千葉県健康福祉部児童家庭課
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

1研究目的本研究は、異性と付き合っている若者間の暴力(dating violence)の実態の把握やdating violenceに関する事項について,若年層の若者がどのように捉えているかについて明らかにすることで,今後のDV予防教育を効果的に進める要因について探ることを目的とした。2研究方法大学生255名(男子116名,女子139名)を対象に,DVやdating violenceの実態に関する質問紙を作成し実施した。また,上杉喬(1979)が提唱した感情イメージ調査法に基づき,DVやdating violenceに関連する10個の対象語(恋愛,結婚,デート,支配,セックス,無視,束縛,服従,暴力,対等)と8つの感情語(喜,望,愛,驚,悲,恐,怒,嫌)を対提示する「dating violenceイメージ調査票」を作成し実施した。調査票では,対象語と感情語のそれぞれをイメージさせ、両者がどのくらいピッタリするかを5段階で評価してもらった。10対象語ごとに,8感情の因子分析から抽出された第1因子(快-不快感情)の因子負荷量を重みづけとした8感情の合成得点である「感情価」を算出し,10対象語間におけるピアソンの積率相関係数を求め,対象語間の関連性について検討した。3研究成果10対象語ごとの感情価を基に,主因子法による因子分析した結果,固有値1.0以上を基準として2因子が抽出され,回転バリマックス解により「他者コントロール」(支配,服従,束縛,暴力,無視)と「親密さ」(対等,デート,恋愛,結婚,セックス)を反映する因子が得られた。因子間の関連性には,男女でその構造に差異が認められた。女性では、他者コントロール因子と親密さ因子には強い相関は無く,両者は独立した構造を示した。また,親密さに関する対象語では,対等が独立していることが特徴的だった。一方,男性では、他者コントロール因子と親密さ因子に強い負の相関があり,男性の方が,女性よりも暴力を通して相手をコントロールしやすい傾向にあると思われる構造が示唆された。特に,付き合い経験がある男性では,デートに対する感情イメージと暴力のそれとの間に強い負の相関があることが特徴的であった。以上のことから,一般的な若年層の男性において,潜在的に他者をコントロールすることと親密であることの関連性が強く,同様の特徴を有するDV加害者と一定の共通点を見出すことができた。従って,高校生や大学生等の若年層を対象に(特に男性),広くDV予防教育を実施する意義が確認された。