1 0 0 0 OA BPSDの薬物療法

著者
水上 勝義
出版者
一般社団法人 日本総合病院精神医学会
雑誌
総合病院精神医学 (ISSN:09155872)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.19-26, 2011-01-15 (Released:2014-10-11)
参考文献数
37

認知症の行動・心理症状(BPSD)に対する薬物療法について述べた。薬物療法を施行する前に,BPSDの多くは非薬物療法で改善するため,まずは非薬物療法を十分に行うことが重要である。その結果,改善が得られない場合に薬物療法が行われる。薬物療法では安全性への配慮が最も大切であり,副作用によって認知機能や身体機能の低下を来さぬよう注意する。本稿では,うつ,アパシー,幻覚,妄想,興奮,易刺激性,せん妄などの薬物療法についても例示した。アルツハイマー型認知症の治療薬であるドネペジルは,認知機能改善のみならず,BPSDのいくつかの症状に対しても効果を認める。したがってBPSDに対して薬剤を追加する前に,まずドネペジルの効果を評価する。また抗精神病薬を使用する前に,代替治療薬の可能性を検討することも有用である。特に漢方薬はBPSDに対する有力な選択肢の一つである。薬物療法が奏効すると,患者と家族の心理的苦痛を軽減し,家族関係の改善ももたらす。したがって安全に配慮した適切な薬物療法は認知症の診療に有用といえる。
著者
佐藤 勉 丹羽 源男
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.172-184, 1987 (Released:2010-10-27)
参考文献数
35
被引用文献数
1

The effects of fluoride (F) on the growth, protein synthesis, alkaline phosphatase (ALP) activity, cyclic adenosine 3', 5'-monophosphate (cAMP) levels and ultrastructure were examined in normal human diploid cells (NDU-1 cells, fibroblasts) derived from fetal lung tissue.Concentrations of F between 0.026mM-0.53mM had no effect on the growth of NDU-1 cells. However, 0.79mM F depressed the growth of the cells and 1.05mM F led to complete inhibition of growth. Reduced protein synthesis (incorporation of 14C-leucine) was observed with 0.79mM F, but, 0.026mM F and 0.53mM F slightly enhanced protein synthesis to 109% and 108% of the control, respectively.After 24 hours of exposure to concentrations of 0.026mM-1.05mM F, ALP activity in the cells was increased in a manner similar to that of control cells. However, ALP activity in cells treated with 2.63mM F seemed to be strongly depressed.The cAMP values increased rapidly after the addition of 2.63mM F.Cells cultured for 24 hours with 0.026mM F or 0.53mM F contained a well-developed, roughsurfaced endoplasmic reticulum (rER) when compared with control cultures. In cells treated with 0.79mM F or 1.05mM F, numerous lysosomes and a less-developed rER were observed. Many vacuoles were also observed in the 2.63mM F treated cells.In conclusion, the higher concentrations of F tested inhibited cell growth and protein synthesis, but the lower concentrations of F accelerated protein synthesis. These findings are supported by morphological investigation. Finally, F had a stimulatory effect on cAMP, but a depressant effect on ALP activity.
著者
李 東珉 Min Lee Dong
出版者
創価大学大学院
雑誌
創価大学大学院紀要 = The bulletin of the Graduate School, Soka University (ISSN:03883035)
巻号頁・発行日
no.42, pp.15-30, 2021-03

国際開発協力とは、先進国と開発途上国の間だけではなく、開発途上国内に存在する開発及び貧富の格差を減らし、開発途上国の貧困問題の解決を通じて人間の基本権を守ろうとする国際社会の努力と行動を意味する。そのため、国際開発協力の一つである開発援助の重要性は高い。先進国の援助は当時の韓国経済の復興にとって大きな支えとなり、その結果として韓国は2000年にDAC援助受入国リストから卒業できた。2010年には国際開発委員会(DAC)の24番目加盟国となり、G20ソウルサミット(2010)と釜山で主催された世界開発援助総会(2011)を通し、効率的な援助及び開発効力に向けて主体的な役割を果たしている。さらに2020年は韓国がDAC加盟国になってから10周年を迎える年であるため、「開発効果」を改めて考える重要な起点として認識し、国際開発協力において積極的に提議していくリーダーになる必要がある。
著者
中島 正光 玉田 貞夫 吉田 耕一郎 杉村 悟 沖本 二郎 二木 芳人 真鍋 俊明 副島 林造
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.32, no.11, pp.1109-1114, 1994-11-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
20

症例は39歳, 男性. 労作時呼吸困難, 胸部X線上異常陰影にて当科に紹介入院となった. 入院後経気管支肺生検にて肺胞蛋白症と診断し, 現在までに2回の全身麻酔下左肺洗浄を施行し, 軽快退院している. 今回再度肺胞蛋白症の増悪がみられたため入院となった. 血清中のCEAが高値であったため他の腫瘍マーカーの測定を行い, 血清中のCA153, TPAの高値を認めた. さらに肺洗浄液中の腫瘍マーカーの測定を行い, CEA, CA19-9, CA125, CA15-3, CA50, SLX, SCC, TPAが血清正常値以上を示した. 血清中高値の腫瘍マーカー全て肺洗浄後減少傾向を示した. そこで, 高値を示した腫瘍マーカーの産生部位を検索する目的で経気管支肺生検組織の免疫染色を行った. 肺胞上皮にCEA, CA15-3, SLXが陽性を示し, これらはII型肺胞上皮を含む肺胞上皮より産生されていることが示唆された. 本症の肺洗浄液中でCEAが高値を示すことは知られているが, その他の腫瘍マーカーについての検討は少なく興味ある症例と考えられた.
著者
山本 寛 長瀬 隆英 新藤 隆行
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

Adrenomedullin(AM)ヘテロ接合体ノックアウトマウス(AMKO)とその同腹子(野生型)を用いてOvalbumin(OVA)腹腔内投与により感作した喘息モデルマウスを作製した。対照群には生理食塩水の投与を行った。マウスを麻酔・人工換気下におき気道内圧、気流を測定し、肺抵抗、肺コンプライアンスを算出した。気道反応性を評価するためメサコリン(MCh)吸入負荷を施行した。その結果、AMKOマウスにおいて有意に気道過敏性が亢進していることが判明した(EC200RL : saline-treated・AM^<+/+>, 16.81±2.01mg/ml ; saline-treated AM^<+/->, 16.73±2.34mg/ml ; OVA-treated・AM^<+/+>, 7.95±0.98mg/ml ; OVA-treated AM^<+/->, 2.41±0.63*mg/ml, respectively, *P<0.05 vs. the other groups)。MCh負荷前後の組織AM濃度を検討したところ、AMKO群ではMCh負荷後のAM濃度が有意に低く、組織AM濃度の不足が気道反応性の亢進に関与している可能性が示唆された。また、肺組織の形態学的解析を行ったところ、OVA感作AMKO群では野生型群と比較して有意に気道内腔が狭窄しており、気道周囲の平滑筋層の面積の増加、気道上皮細胞層の面積の増加もあわせて認められた。したがって、AMの不足が何らかの機序で気道周囲の平滑筋を腫大・増生させたり気道上皮細胞を膨化させるため、結果として気道内腔が狭窄すると考えられた。なお、気道周囲の好酸球浸潤の程度、気道分泌・杯細胞増生の程度、TH1、Th2系サイトカイン、ロイコトリエンについても検討したが、AMKO群と野生型群の間に有意な差は認められなかった。
著者
Bukhary Essam
出版者
日本中東学会
雑誌
日本中東学会年報 (ISSN:09137858)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.39-84, 2007

本論文は、サウジアラビアと日本の戦略的なパートナーシップという枠組みの中で、両国の技術協力の現状と今後のあり方についての一見解を提示している。経済を中心に、サウジと日本の関係は非常に深いものとなっている。まず、サウジと諸外国における貿易では、日本は第2位の相手国である。とりわけ石油については、日本への最大の供給国はサウジとなっている。また、2005年の段階では、諸外国の中でも最大の直接投資国となっていた。同時に、日本はODA(政府開発援助)予算に基づくJICA(国際協力機構)を通じて、サウジに対して最も活発に技術支援を行ってきたのである。しかしながら、近年の石油価格の高騰とサウジの個人所得の増大により、2007年からサウジはOECD(経済協力開発機構)の下部機関であるDAC(開発援助委員会)が作成するリスト、すなわち被援助国リストから卒業する予定である。それはJICAがプロジェクトを終えることを意味しており、今後の両国間の技術協力の関係強化に関して、新しいアプローチを考案する必要が生じているのである。まず、サウジにおける経済発展の諸問題を振り返りつつ、石油に依存している経済を多様化する努力と、人口の55パーセントを占める若年層に向けた雇用創出の努力を支える恒常的な要因として、戦略の重要性を論じている。同時に、高等・技術教育制度の改善のために国際的協力の重要性を指摘する。次に、サウジにおけるJICAのプロジェクトを分析し、技術協力の現状を明らかにする。1970年代、それは開発調査に比重が置かれていたの対して、90年代には、技術訓練や職業研修へ比重が移されるようになった。最近は、サウジ側の意向もあって、プロジェクトの種類とその受益者の多様化が図られてきている。また、SJAHI(サウジ日本自動車高等研修所)およびHIPF(プラスチック加工高等研修所)の例に明らかなように、両国間が技術協力して実施した共同プロジェクトにおいて、両政府の支援が重要な役割を果たしたことが本研究で明らかとなった。一方、155力国におけるJICAの予算やプロジェクト数の統計分析によると、アジアや南米に比べて、中東は必ずしも最優先されている地域ではない。さらに、中東諸国の中で、サウジはJICAの予算と実施中のプロジェクト数で見れば第6位だが、石油輸出国の中では第1位であった。これに関して、関係者へのインタビューから、JICAは貧困国を重視してきており、サウジは豊かな国と見なされたことも、この結果を招いたということがわかった。さらに、サウジ側と所要経費を共同で負担するのみならず、将来的にはサウジ側の全額負担による技術協力の可能性も検討されてきていることが明らかになった。視点を改めて、両国間における技術協力の将来的な課題を取り上げている。そこでは、JCCME(中東協力センター)指導のもとで、中東諸国と日本の間の文化的交流や人材育成を推進するジャパンプログラムという新しい形態の事業が開始された。たしかに、2006年にはサウジを始め、その他の湾岸諸国も当プログラムがもたらした最大の恩恵を享受できた。しかしながら、当センターの予算とスタッフの制約もあり、JICAのプロジェクトの代替として考えるのは困難であることも判明した。また、両国の大学による学術協力にも光を当てている。今後、両国の大学間における学術協力や学生交流促進のために、インターネットによる両国間の講義の実施や、サウジの諸大学における英語による人文科学やイスラーム学の授業、また、日本の諸大学においても同じく英語による情報技術など工学関係の授業を実施することなどが提案できるだろう。結論として、サウジと日本の戦略的パートナーシップは、サウジから日本への安定的な石油の供給と、日本からサウジへの高水準の人材開発と技術移転をもたらすものとして理解されるだろう。それは、両国で持続的な経済発展を達成するためである。それは「石油と技術の交換」と換言できるだろう。つまり、サウジが求めているのは援助ではなく、パートナーシップと相互利益に基づく技術協力であるということを、日本側ははっきり認識することが重要であることを確信している。その一方で、サウジは最大の石油埋蔵量を誇り、世界で唯一の石油生産調整能力を持つ国である。日本は世界第2の経済大国であり、同時に技術帝国である。双方はそれぞれの状況を鑑みて、この戦略的なパートナーシップを成功に導くことができると言えよう。
著者
久保田 泉
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.243-246, 2013

気候変動影響への適応策に関する国際制度設計において,途上国への資金供与問題が注目されている。本研究では,適応関連資金配分の優先順位づけをいかに行うかについての示唆を得るため,京都議定書下の適応基金と「気候変動影響への対応力強化のためのパイロット・プログラム」(PPCR)の運用状況を,対象国/プロジェクトの選定に着目して比較検討した。その結果,適応基金の被支援プロジェクトのホスト国は,脆弱国への支援が謳われているにもかかわらず,各種指標で脆弱国リストの上位に入っていない国が多いことがわかった。今後の適応関連資金メカニズムには,脆弱性に着目したPPCR 類似の資金配分方法を確保することが重要である。
著者
馮 昭奎
出版者
愛知大学現代中国学会
雑誌
中国21 = China 21 (ISSN:13428241)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.175-196, 2009-12-30

訳=宮田千信
著者
大神 訓章 佐々木 桂二 児玉 善廣 吉田 健司
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 教育科學 (ISSN:05134668)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.35-47, 2006-02-15
被引用文献数
1

バスケットボールゲームは,対峙する2チーム間で,一定時間プレイし,得点の多寡を競う競技である。ゲームの勝敗を決定する要素として,シュート力,ボールキープ力,リバウンド力等の技術的要素と共に,プレイヤーの身長差等の体格的要素と多岐に亘る。そこで,本研究は,2004年に開催されたアテネオリンピックにおけるアメリカ男子バスケットボールチームの計8ゲームを分析対象とし,高さ(身長)とうまさを数量化し,チーム戦力の分析を試みた。分析方法は,ボックススコアを基に,キープ力,シュート力,リバウンド力を求め,オフェンス力とディフェンス力を算出した。次に,期待値として捉えた核とその変動の幅(ブレ),身長とリバウンド比による大きさ,それぞれの項目のうまさを数量化した。その結果,キープ力・シュート力・リバウンド力において,身長差をうまさで補うことは可能であり,また,身長とリバウンド比による大きさを基に,高さとうまさを分離することは,チーム戦力を高さ抜きで平等に評価するうえで,有効であると思われる。更に,ブレの数値を比較することで,そのチームがどのようなゲーム展開をしているかを推測でき,また,ブレの有無やその大きさによって,チームにおける戦力等の課題把握に客観的な資料を提供した。 This study was analyzed for USA men's team on the hight and skillfulness, about 8 games of the basketball championship on Athens Olympic in 2004. The results may be summarized as follows; 1. In the V score on the hight and rebound rate in USA team, it was 1.12 against PUE,1.19 against ANG, 1.09 against LIT, it was showed USA team was a high numerical value, so it was strong rebound. 2. In the skillfulness of keep, it was showed that ANG was 1.04 in the highest score as compared with the other team. In the skillfulness of shot, LIT was 0.73, so it seemed to show high the shot ability, and in the skillfulness of rebound, USA was the highest score. 3. It was showed that it is possible to the skillfulness cover a hight difference, and it was available to separate skillfulness from hight on equally estimation the value.
著者
服部 滋 浜島 求女
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子化學 (ISSN:00232556)
巻号頁・発行日
vol.27, no.307, pp.775-784, 1970
被引用文献数
7

分取用ゲルパーミエーションクロマトグラフィー (GPC) を用いてポリスチレン試料 (旭・ダウ, スチロン683-7) の分別を行ない, その実験条件および分別結果について検討した. 温度35℃でテトラヒドラフラン (THF) を溶媒として用いて, 2本の分取用GPCカラム (ボアサイズ3×10<SUP>6</SUP>Aおよび105A) を用いて分別を行なうと, 試料は9区分に分けられる. 最初と最後の区分の量は, 中心区分 (第4区分~第6区分) に比べると非常に少ない. 分析用GPCを用いて測定したそれらの各区分の分子量分布は, 高分子量区分ではかなり狭いが, 低分子量区分では広くなっている. また, 注入試料濃度 (0.5および1.0g/100ml), 流速 (20および30ml/min), および試料注入の回数 (1および15回) の三つの条件を変えた場合, あまり異なる結果は得られなかった.<BR>さらにもう1本のカラム (ポアサイズ10<SUP>4</SUP>A) を加え, 3本のカラムで分別を行なった場合, 分別区分の数は15個になった. 試料注入濃度1.0g/100mlの場合には, 2本のカラムの場合と同様に低分子量区分の分布は広くなるが, しかしそれらは濃度を低くすると狭くなり, 濃度0.2g/100mlの場合には, M<SUB>w</SUB>/M<SUB>n</SUB>の値はすべての区分において1.2~1.4であった. これらの結果から, GPCの濃度依存性について考察した.<BR>また溶媒としてトルエソを用いた場合は, 分別結果はTHFの場合とほとんど同じであるが, メチルエチルケトンを用いた場合は区分のMw/Mnの値も小さく, 他の二つの溶媒の場合よりやや良い結果が得られた. これはメチルエチルケトンが, 他の二つに比べてポリスチレンに対して貧溶媒であるためと考えられる.
著者
尾下 成敏
出版者
史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.92, no.5, pp.862-891, 2009-09

本稿の目的は、天正十年(一五八二) 六月から同十二年七月までの間の羽柴秀吉と徳川家康の関係に留意する形で、秀吉の東国政策の内容や、それを規定した背景を明らかにしようとすることにある。 検討の結果、(1)天正十年六月の本能寺の変後、北条氏の動向に対処すべく、秀吉と家康が提携し、対家康戦開始前の秀吉が徳川攻めを目論んではいなかったこと。(2)天正十年冬以降の秀吉が、家康の取り組む『惣無事』、すなわち織田信長在世時の停戦状態への回帰を掲げて北条方と反北条方の停戦を実現せんとする無事に関与し、北条氏の版図拡大の動きを封じようとしたこと。(3)秀吉の『惣無事』関与後も北条方と反北条方の抗争が続き、結果、関東で新たなる戦争が起こる可能性が浮上したこと。(4)こうした事情や織田信雄の勧誘を背景として、家康が対秀吉戦に踏み切ることなどを明らかにした。
著者
トーマス デレック・アシュリー 山本 貴博 多田 朋史 渡邉 聡
出版者
公益社団法人 日本表面科学会
雑誌
表面科学学術講演会要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, pp.57, 2011

コニカルカーボンナノ構造の熱伝導に関する非平衡シミュレーションを行った。カップ・スタックナ・ノファイバーはバリスティック熱伝導性を示すのに対して、ヘリカル・ナノファイバーでは拡散伝導性を示した。シミュレーションでは10nmの構造でもセーベック係数は小さく、熱電変換やナノ冷却が十分期待できる。
著者
伊藤 洋平 井上 仁人 高橋 厚史
出版者
社団法人 日本伝熱学会
雑誌
日本伝熱シンポジウム講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.226, 2009

長距離の弾道的熱伝導が行われていると考えられる結果が、カップスタック型カーボンナノチューブ(CSCNT)の熱伝導率計測から得られている。そこで、熱輸送の現象を明らかにするために、非平衡分子動力学法を用いたCSCNTの熱輸送解析を行った。カップ間結合にはレナードジョーンズポテンシャルを適用した。カップ3個の構造と5個の構造では系全体の熱抵抗はほとんど変わらず、フォノンが散乱されずに輸送されていることが示唆される。
著者
田中 観自 渡邊 克巳
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

ギャンブル依存症は今や大きな社会問題となっているが,健常者がギャンブル依存に陥る過程は未だに不明な点が多い.本研究では,感情抑制が後のギャンブル課題時のリスク選択に及ぼす影響を検討した.実験では,お笑い動画を実験刺激として呈示し,健常な実験参加者を自由に視聴させる統制群と笑うことを我慢させる実験群に分類した.動画視聴後,参加者は複数のリスクを考慮しながらサイコロの出目を選択できるギャンブル課題を行った.各リスクの選択回数に対して,実験条件と複数の性格特性を含めたモデリングを行ったところ,自己抑制ができると自己評価している参加者は,実験条件に関わらず低リスクの選択をする傾向にある一方で,統制群は実験群に比べて,全体的に低リスクの選択をしていることが明らかとなった.つまり,健常者は感情抑制を受けることで,性格特性とは半ば独立した形で,ギャンブル課題時に低リスクを選択しなくなることが示唆された.