著者
元 晶ウク
出版者
愛知大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、日中韓プロサッカー観戦者の消費動機測定のための尺度開発と妥当性の検証と3国のプロサッカー観戦者の観戦動機比較を目的としている。平成23年度には、中国プロサッカー観戦者の観戦動機測定のための尺度項目を開発した。また、韓国と日本の観戦者については、すでに開発された調査項目を用いて調査を実施した。平成24年度には、Kリーグ観戦者調査を実施した。対象になったのは、ソウル、大邱、プサン、インションのプロサッカー観戦者であり、各クラブのマーケティング担当者についてインタビュー調査も実施した。平成25年度には、JリーグとCリーグ観戦者調査と各クラブ担当者のインタービュー調査などを実施した。
著者
山田 量崇 Weirauch Christiane 蔡 經甫
出版者
徳島県立博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

ムクゲカメムシ下目の主要3科(ムクゲカメムシ科、オオムクゲカメムシ科、ノミカメムシ科)に対し、飼育実験系を確立し、交尾行動の観察を行った。3科ともメスの右側方からオスの腹部が挿入されて接合するオス上位の姿勢が観察された。ムクゲカメムシ科の交尾ペアの形態観察から、オスの腹部付属片の機能について検証した。第3~8腹節の付属片(側背板)がメスの腹部後方を背腹面に挟むように把握することがわかった。メス側には、把握される部位(背板の一部)がやや厚くなるなどの形態の変化が見られた。科ごとにオスの腹部第8側背板の機能が異なっていた。
著者
要 真理子 前田 茂
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

20世紀初頭に英国唯一の前衛芸術運動ヴォーティシズムを先導したウィンダム・ルイスが1940年代にメディア論におけるグローバリズムの先駆的思想を提示した経緯を明らかにし、そのうえで、今日のグローバリズムならびにナショナリズムの潮流を美学的/感性論的な観点から再検証する。これまでの予備的な研究を通じて、ルイスにおいては、未来派への不信感、ナチズムへの共感、そしてマーシャル・マクルーハンの「グローバル・ヴィレッジ」概念にも通じる思想には、共通する思想背景があることが明らかとなりつつある。政治学的には両立不可能にも見える以上の態度がいかにしてルイス個人において矛盾なく共存できたのかを明らかにする。
著者
竹内 常道
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

1)SHK-1ヘアレスマウスに3x10^5PFUの単純ヘルペスウイルス1型を初感染させた.2)以下の2群を用意し,初感染4週後に紅斑量以下のUVB,100J/m^2,200J/m^2,400J/m^2,800J/m^2,1600J/m^2をそれぞれ2匹ずつ照射した.(1)全身照射群:初感染部位をアルミ箔で覆い,全身に紫外線照射を受けた群.(2)局所照射群:初感染部位以外をアルミ箔で覆い,初感染部位のみに照射を受けた群.3)照射後は,全身照射群では100J/m^2と200J/m^2では皮疹の誘発は無く400J/m^2,800J/m^2,1600J/m^2では2匹とも小水疱が認められた.一方,局所照射群では400J/m^2以下では皮疹の誘発は無く,800J/m^2で1匹,1600J/m^2では2匹とも小水疱が認められた.4)皮疹が誘発されなかった群における,皮膚へのウイルスの排泄を免疫組織学的に検討した.全身照射群では100J/m^2ではウイルスは認められなかったが,200J/m^2では皮疹の誘発はなかったにもかかわらずウイルスの排泄が1匹でみられた.一方局所照射群では,皮疹の誘発がなかった400J/m^2以下ではウイルスの排泄も認められなかった.5)免疫組織学的にウイルスを認めなかった群において,更にPCR法を用いて検討した.HSV-1の1930-2191のpol geneをプライマーとして初感染部位周辺の皮膚をPCRにかけたところ,全身照射群のでは100J/m^2で,また局所照射群では100J/m^2と400J/m^2で各々1匹ずつウイルスの存在を確認した.
著者
柴田 弘紀 小川 智久
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

沖縄本島、小宝島、西表島産個体の全ゲノムアセンブリを取得し(先進ゲノム支援による)、金属プロテアーゼなどの毒液タンパク質遺伝子族で、集団間でクラスター構造が異なることを見出した。また14島計150個体のmtDNA配列を取得し集団遺伝学的解析を行い、ハブの集団構造には地理的要因が強く影響することを示した。また、9島47個体の毒腺のRNAseqで、集団間で有意に発現量の異なる遺伝子を同定したが毒液タンパク質遺伝子はほぼ含まれていなかった。一方毒液の2D解析では、集団間で発現パターンの明確な違いが観察された。そのため毒液タンパク質発現の集団間の差異は、翻訳/修飾レベルで生じている可能性が示唆された。
著者
工藤 勲
出版者
北海道大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

ホタテガイの中腸腺は、肥料・飼料としての有効利用の可能性があるにもかかわらず、カドミウムが高濃度に含まれていることが問題となっている。そこで、本研究では、ホタテガイに濃縮されるカドミウムを例にとり、魚介類に濃縮される金属の濃縮機構を解明することを目的とした。調査は、前年に引き続き北海道噴火湾森沖のホタテ養殖施設内と養殖の行われていない湾中央部の定点において5月から11月にかけて計10回の調査を行った。毎回、水温、塩分、栄養塩、基礎生産量、懸濁態有機炭素・窒素、植物プランクトン量とカドミウム含量、それとホタテ一年貝の成長速度、中腸腺量とそのカドミウム含量を測定した。【結果】ホタテガイの餌となる植物プランクトン現存量は、5月から8月にかけて横ばいであったが、プランクトン中のカドミウム含量は、8月に他の3倍程度と高濃度を示し、その後減少した。ホタテ1年貝の成長速度は、平均で0.35g/月でほぼ直線的に重量は増加した。殻長もほぼ同様に増加した。中腸腺中のカドミウムは今回の測定値とこれまでの報告値を総合すると春から夏にかけ増加し、その後、冬にかけ減少する傾向がある。これらは、ホタテガイが餌として主に植物プランクトンなどの懸濁態有機物を摂取していることを考えあわせると調和的な結果である。植物プランクトン中のカドミウム含量の変化の原因について、これまでの知見より、噴火湾では、植物プランクトンの種組成が、春から夏にかけて珪藻類から渦べん毛藻類へ遷移することが知られており、この植物プランクトン種の変化がホタテ中腸腺中へのカドミウムの蓄積に影響を与えている可能性が示唆された。また、海水中のカドミウムの濃度は、他の海域と比較して特に汚染されているわけではなく、また春から夏にかけて減少傾向にあるため海水中の濃度がこの濃縮に与えている影響は少ないと考えられる。
著者
川端 輝江 仲井 邦彦
出版者
女子栄養大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

授乳期間中の母親の魚介類摂取及びn-3系脂肪酸代謝と、出生児の成長と発達の関連性を検証した。その結果、n-3系脂肪酸であるドコサヘキサエン酸(DHA)の母乳組成及び濃度は、魚介類摂取量と正相関した。⊿5不飽和化酵素遺伝子型(rs174547)C/C群(対象者の約15%)では、T/T群に対して母乳中DHA組成が有意に低値であった。出生から7か月までに児が摂取したDHA濃度を推測し、その濃度別に児の発育について検討したところ、児の体重増加との間には関連はみられなかった。今後、DHA摂取と発達との関連においてさらなる検討が必要と考えている。
著者
渡邉 克昭 貴志 雅之 花岡 秀 辻本 庸子 中 良子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

アメリカをめぐる様々な「神話」をスパイラルに巻き込みつつ、銃は、政治的、社会的、文化的に幾重にも屈折した表象を担ってきた。銃は、近年メディアと共犯関係を結ぶことにより、「撃つ/写すシューティング」の射程は、個体間から国家間、さらには時空を超え、歴史性にまで及ぶようになった。このように重層的な象徴性を帯び、アメリカ的想像力を駆動してきた銃は、ジェンダー、エスニシティを横断し、屈折と変容を繰り返してきた合衆国そのものと怪しく重なり合う
著者
新井 典子 小林 麻衣子 杉浦 裕太 佐々木 恭志郎
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2023-04-01

本研究は赤ちゃんロボットを活用し,当事者だけではなく社会全体の子育て力の底上げを目的とする.まず,赤ちゃんの「泣き」に関する振る舞いを模したロボットの開発を目指す.さらに,開発したロボットを利用した子育てトレーニングプログラムの策定を行い,乳幼児に対するストレス緩和をはかり,適切なあやし行動を習得させる.このようなロボットを利用したトレーニングプログラムを様々な社会集団や虐待経験のある親や里親希望者に展開し,より効果的なものにブラッシュアップする.本研究は, 心理学とロボティックスを融合させた新しいトレーニングプログラムを提案するものである.
著者
藤原 進 中村 浩章 阿蘇 司 米谷 佳晃
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2021-07-09

福島での原発事故において、トリチウム汚染水の処理が社会的関心を集めている。トリチウム被曝では、従来の研究で考慮されてきた直接作用と間接作用に加えて壊変効果が存在するにも関わらず、これまで見落とされてきた。本研究では、トリチウム被曝の第三要素「壊変効果」に着目し、置換トリチウムのβ壊変によるDNA損傷の分子機構を分子シミュレーションにより解明する。具体的には、トリチウムの置換部位を特定するための分子動力学(MD)計算とDNAの壊変効果を解析するための反応力場MD計算の組合せにより、置換トリチウムの壊変効果を解き明かす。さらに、置換トリチウムの壊変効果も含めたGeant4-DNAの開発を進める。
著者
中山 敦雄 松木 亨
出版者
愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

人工多能性幹細胞(iPS細胞)作製技術により、脳機能障害での神経細胞解析が可能になった。しかし自閉症は症例ごとに遺伝学的原因と背景が多彩で、コントロールiPS細胞・誘導神経細胞と比較しても神経細胞の表現型の差が原因遺伝子に由来するのか遺伝学的背景の差に由来するかはわからない。我々は標準iPS細胞にゲノム編集で既知の自閉症原因遺伝子変異を導入し、コントロールと遺伝学的背景に差がない自閉症モデル細胞の作製を試みた。 iPS細胞610B1株でNLGN4X遺伝子ノックアウトに成功したが、神経細胞への分化誘導が困難であった。別に2つのiPS細胞株で同様のノックアウトが完了しモデル細胞として解析する。
著者
織田 裕行 中森 靖 木下 利彦 池田 俊一郎
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

「自殺企図男性のLOH(Late-Onset Hypogonadism)症候群に関する検証」の課題名で、関西医科大学総合医療センター倫理審査委員会に申請し、2017年9月19日に承認を得て本研究を継続してきた。その内容は、救命救急センターに自殺企図で搬入された男性のテストステロン値を測定し、日本において自殺率が最も高い年齢層である50歳代男性の自殺企図と加齢男性性腺機能低下症候群(Late-Onset Hypogonadism:LOH症候群)との関係を検証することにある。具体的には、救命救急センターに搬入された男性自殺企図者を対象として、総テストステロン値、遊離テストステロン値を測定すること、その検査結果と本人や家族から得た情報を踏まえLOH症候群による影響を検証する予定であった。しかし、予期できない研究環境の変化が生じた。そのため、現状の中で「自殺企図男性のLOH(Late-Onset Hypogonadism)症候群に関する検証」が達成できる方策を再度検討した。その結果、「自殺企図男性のホルモン値に関する検討」として関西医科大学総合医療センター倫理審査委員会に申請し、2019年7月23日に承認を得て救命救急センターに搬入された男性自殺企図者を対象とした総テストステロン値の調査を実施することとした。2021年度には、第40回日本性科学会学術集会において、「男性自殺企図者に対するホルモン値調査の結果報告 -男性ホルモンと甲状腺ホルモンの比較-」として一部報告を行った。さらに検討を加え、日本性科学会雑誌に投稿中である。
著者
茶園 梨加
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

最終年となる本年度は、今まで行ってきた北部九州のサークル誌に関する調査を続けながら、「サークル村」の一要素である水俣の問題について調査、考察、研究報告を行った。報告者(茶園梨加)は、本年度始めより「サークル村」同人であった石牟礼道子の『苦海浄土-わが水俣病』に関する調査を精力的に行ってきた。日本近代文学会秋季大会の研究発表が決定して以降は、熊本県立図書館(熊本市)や熊本学園大学水俣学研究センター(水俣市)、水俣病歴史考証館(水俣市)を中心に調査を行った。『苦海浄土』については、これまでさまざまな先行研究があるが、「サークル村」に初出「奇病」が掲載されたことを踏まえた研究は少ない。よって、報告では「サークル村」の存在がいかに石牟礼道子の創作過程に影響を及ぼしたのか、その過程を明らかにした。また、同内容をさらに発展したものを、「サークル村」終刊50周年記念集会(中間市)にて報告した。会では、森崎和江をはじめとした「サークル村」同人であった当事者たち、諸研究者たちと意見交換を行い、充実した報告となった。また、これまで資料調査を行った日炭高松の文化運動についても調査を進めた結果、資料発掘がまたれていた「月刊たかまつ」の総目次を「九大日文」16号に発表することができた。これは、研究代表者が一、二年目に行った法政大学大原社会問題研究所での調査に加え、遺族への聞き取りを実施した結果である。以上が本年度の主な研究成果である。より幅広く研究成果を報告することができ、有意義な年度であった。
著者
秋下 雅弘 江頭 正人 小川 純人 大田 秀隆 岡部 哲郎 喩 静 柴崎 孝二 孫 輔卿
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では性ホルモン様作用を有する漢方薬の成分を用いて血管、神経、乳癌、前立腺癌の細胞に対する作用を検討し、臓器別作用を網羅的に解析・分類した。具体的に、乳癌細胞ではエストロゲンと類似した細胞増殖能をもつ生薬成分ともたない成分で分類できた。前立腺癌細胞ではテストステロンと類似した細胞増殖能をもつ成分はなかった。血管ではすべての生薬成分が平滑筋細胞の石灰化を性ホルモンと同様に抑制する効果があった。神経細胞ではginsenoside Rb1がアポトーシスによる細胞傷害を保護する作用があった。このような成果からホルモン補充療法の代替薬として新規薬剤の開発へつながることが期待できる。
著者
長根 裕美 鈴木 潤 藤田 正典 隅藏 康一 富澤 宏之 永野 博 安田 聡子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では、日本の科学研究の低迷をもたらした研究システムの負のメカニズムを解明し、日本の科学研究界にブレークスルーをもたらす改善策を提案する。日本の科学研究の凋落がセンセーショナルに報道されている。その主な原因としては、経済の低迷のほか、近年の大学改革の失敗が挙げられるが、実際のところ、確たるエビデンスがあるわけでなく、あくまで示唆にとどまっている。なぜ日本の科学研究力は低下したのか?本研究は定量的に研究力低下の負のメカニズムを解明するとともに、定性的なアプローチでもってその定量分析の結果の確からしさを検証していく。
著者
清水 里美 郷間 英世 船曳 康子 米澤 朋子
出版者
平安女学院大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

(1)1歳6ヵ月児健診、3歳児健診、および5歳児健診時における発達スクリーニングに適した項目と保護者向けの発達評価に関する問診項目を選定し、タブレットで反応を収集分析できるシステムを開発する(2)開発したタブレット版発達スクリーニング検査を各健診の該当年齢児に実施し、新版K式発達検査の2020年版の標準化データと比較する。また、タブレット版実施時に行動を直接観察評価し、タブレットによる取得情報と比較する。以上の分析を通じてタブレット版の有効性について検討する(3)クリニック等に協力を求め、臨床事例にタブレット版発達スクリーニング検査をおこない、適用可能性を検証する
著者
竹本 浩典 北村 達也 足立 整治 モクタリ パーハム 田部 洋祐
出版者
独立行政法人情報通信研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

下咽頭腔は喉頭腔と左右の梨状窩からなり、音声の個人性(声のその人らしさ)の生成要因である。本研究では、まず下咽頭腔を3次元で音響解析し、声道伝達関数に2つの深い零点を生成するメカニズムを解明した。次に声道と音源の相互作用を考慮した声帯振動モデルを構築し、下咽頭腔が音源波形に与える影響を検討した。その結果、下咽頭腔は音源より声道伝達関数により多くの個人性の要因を与えることが明らかになった。
著者
福島 由依
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2019-04-25

本研究は、大学学部入学段階での競争的筆記試験を重視する「受験主義」という観点から、日本の教育選抜の特徴とその現代的変容を捉えることを目的とする。具体的には、1)「入試ミス」に関する報道記事の分析から、客観的で公平ゆえに「正統」とされる選抜が崩れる場面の言説に着目し、社会がもつ正統な選抜への期待や信頼を検討する。次に、2)「学歴ロンダリング」とよばれる就学行動に着目し、日本では「非正統」と捉えられる就学行動に対する社会的な評価を、日本にくらべ大学間での転学が一般的であるアメリカを参照しながら検討することで、日本の受験主義の特殊性を議論する。
著者
伊庭 幸人
出版者
統計数理研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

与えられた確率的な力学系(雑音を含む非線形のダイナミクス)に対して、珍しい現象(レアイベント)を効率的にサンプリングし、その確率をバイアスなしに計算する手法を研究し、「時間逆転シミュレーション」の方法を開発した。開発した手法は、ゴールとなる珍しい事象(たとえば東京に台風が来襲する)から初期値に向かって逆にパスを生成することで、ゴールの範囲が狭い場合の計算効率を高める点に特徴がある。逐次インポータンス・サンプリング法(SIS)を利用することで、適正な計算時間で確率をバイアスなく計算できることが示された。提案手法はさまざまな極端事象の解析に応用できることが期待される。
著者
庄司 順三 廣野 里美 宮腰 正純 村山 哲也
出版者
昭和大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

日本に自生するハリブキ(Oplopanax japonicus N_<AKAI>=Echinopanax japonicus N_<AKAI>)と中国産刺人参(Oplopanax elatus N_<AKAI>=Echinopanax elatum N_<AKAI>)はともにウコギ科(Araliaceae)植物であり、刺人参は解熱、鎮咳作用を有するとされ、中国の文献では薬用人参と作用が近似していることが記載されている。今回の研究では両者の成分を化学的に比較し、両植物の医薬品としての新たな応用・開発をはかることを目的として行った。日本産ハリブキ葉からは既知成分のフラボノイド配糖体2種、トリテルペン配糖体1種を単離・同定した。更に3種の新規トリテルペン配糖体を単離し構造を決定した。中国産刺人参葉を日本産ハリブキ葉同様に分離し構造決定を行ったところ、両者に共通する2種の既知フラボノイド配糖体、1種のトリテルペン配糖体を単離・同定したほか、新規トリテルペン配糖体8種を分離しその化学構造を決定した。さらに日本産ハリブキの葉以外の部分について検討を進めているが、根皮より2種の既知化合物を単離・同定するとともにダイイン化合物1種と、これとアグリコン部の構造が異なるダイイン化合物の配糖体1種を単離し化学構造を決定した。中国産の試料については入手が限定されているが、日本産ハリブキについては10種の化合物を単離し、5種類が新規化合物であるので、今後、十分な量を確保し生物活性を検討することにより本研究の目的が達成されるものと思われる。