著者
長嶋 一昭 今村 博臣
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

蛍光エネルギー移動(FRET)を利用した新規蛍光 ATP プローブを用いて各種刺激下での膵β細胞内 ATP 濃度変化を測定し、Fura2-AM を併用した細胞内 Ca2+濃度同時測定の系を構築し生理学的条件下での膵β細胞内イオン濃度変化を測定した。さらに、ATeam 遺伝子を導入した蛍光 ATP プローブ遺伝子導入(Tg)マウスを作成し、その単離膵β細胞で ATeam が機能し、細胞内 ATP 濃度に応じて FRET 反応を示すことを確認し、同マウス単離膵島を用いた解析を推進中である。
著者
吉村 浩一 関口 洋美
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

左右逆さめがねを2週間着用した女性が、正常視のときの生活と同じようなスタイルを獲得するという、きわめて知覚順応の進んだ状態を示した。これにより、逆さめがねの世界に順応することがどのような変化を引き起こすかを捉えることができた。この研究成果を踏まえ、子どもたちに人間の知覚の不思議さを体験してもらい、逆さめがねを通してものを見たり行動したりする際に起こることを予想し実際に体験することにより、その予想がどのように間違っているかを論理的に考えてもらうための科学イベントを構築した。
著者
箕浦 信勝
出版者
東京外国語大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

今年度、臨地研究としては、2008年8月8日から、9月6日までマダガスカル国マハザンガ市及び、首都アンタナナリブ市に滞在しました。マハザンガ市では、4年に1回開催される、マダガスカル全国ろう者大会に参加し、マダガスカル各地から集まったろう者達と交流を深めました。また、マダガスカル全国ろう者協会の支援国であるノルウェーからのろう者とも交流を持ちました。マダガスカル手話は、1960年にアンツィラベに最初のろう学校が設立されたときに、ノルウェーから多数の教師が赴き、そのせいでノルウェー手話の手話単語を多く受け入れているようです。これは、今後の研究課題になります。アンタナナリブでは、ミティアろう学校のラウベリナ・エバ先生から聞き取り調査を行ないました。マダガスカル手話は、管見の及ぶ限り、他の言語学者によっては研究されていません。ろう者自身の語彙集編算は、マダガスカル全国ろう者協会を中心に進められています。以上のことから、マダガスカル手話の文法、語彙、テクスト・談話収集などのすべての領域において、言語学的訓練を受けた人間によるさらなる研究が俟たれており、本研究は、その一端を担っています。なお、最終年度において、予算を大幅に消化せずに終わってしまいましたが、特に2008年度後半、2008年10月辺りから、2009年4月辺りまで、持病の鬱が重篤化し、物品を注文するなどの事務処理が、全くできない状況に陥ってしまったことによります。予算を大幅に使わなかったこと、および持病の鬱が重篤化したことで、本研究最終時期の研究および、今後の研究に少しく影響があったことは否めませんが、本研究の全体的な達成度については、発表論文などを、持病の鬱の重篤化以前に提出していたこともあり、おおむね順調であったと考えます。
著者
杉本 和弘
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、大学教育の質保証をいかに機能させ効果を高めるかを明らかにするため、「同僚制原理とそれを担保する組織・制度は歴史的にいかに変容しつつあるか、その考察から得られた知見を前提とするとき、大学を支えるアカデミック・リーダーはいかに育成されるべきなのか」を中核的な学術的問いに設定した上で、「ガバナンス」「同僚制原理」「アカデミック・リーダー育成」の3つの視点から、理念-実態-実践を接続させながら総合的に解明し、その知見を現場に還元しようとするものである。
著者
松村 博文
出版者
札幌医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は、東南アジアの人々と縄文人の起源と成り立ちを、古人骨の歯と頭骨の形態学的研究により明らかにするものである。この問題では、新石器時代以降の中国からの北方アジア系集団の拡散により、先住のオーストラロ・メラネシア系集団と混血し、現代東南アジア人に至ったとする「混血モデル」と、東南アジアにはもとよりいわゆる古アジア系集団が居住しており、現代に至るまで遺伝的に連続しているという「地域進化モデル」が提唱されている。これらの二大仮説のどちらが正しいのかを、形質人類学の立場から検証するための鍵となるのが、一つには歯の形態の解釈である。もう一つの重要なアプローチは、新石器時代以前の古人骨の形態分析であり、その頭骨などの形態がオーストラロ・メラネシア系集団の特徴を持つか否かが鍵となる。本研究による歯の形態学的データの解析からは、混血モデルを強力に支持する結果が得られた。Sundadontと称すべき歯列をもつ集団は、後期旧石器時代のスンダランドに起源をもつオーストラロ・メラネシア系集団と中石器時代の東南アジア先住民に限られ、現代東南アジア人の歯の形態は、後に移住してきたSinodont型歯列をもつ北方アジア人との混血により生じた両者の中間型歯列にすぎないという見方がなされた。現代東南アジア人と類似する歯の形態をもつ縄文人の成り立ちも、同様の解釈がなされた。一方、頭骨形態の分析からも、東南アジアでの新石器時代以前のマレーシアのグアグヌン遺跡、タイのモキュウ人遺跡やベトナムのボアビン文化期の遺跡などから出土している人骨は、オーストラロ・メラネシア系集団と強い類縁関係が示唆された。また新石器時代の東南アジア人や縄文人の頭骨は、これらのオーストラロ・メラネシア系集団と北方アジア系集団の中間的特徴をもっており、両者の混血の初期段階の集団と位置づけられた。
著者
吉川 裕之 八杉 利治 川名 敬 松本 光司 松本 光司
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

現在の子宮頸癌予防ワクチンはHPV型特異的で、HPV16/18感染だけを予防するので、子宮頸癌罹患の減少は最大70%である。HPV型共通であるL2領域の複数のペプチドをL1とともに発現させ、すべての発癌性HPVによる子宮頸癌を予防可能なHPVワクチンとして開発した。今後、臨床試験が必要である。
著者
榎本 剛
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

梅雨前線は,時間的にも空間的にもさまざまなスケールの現象から成り立っている。梅雨期は雨の多い期間であるが,同じような天候が日々持続するのではなく,活発期と不活発期がある。活発期には発達したメソ擾乱やそれに含まれる対流セルにより局地的な降水がもたらされ,不活発期には前線自体が不明瞭になる。本年度は,梅雨前線の消滅と再形成に着目し,そのメカニズムや予測可能性について調べた。分析したデータはAFES(地球シミュレータ用大気大循環モデル)を用いた高解像度(水平解像度約20km)シミュレーション及びALERA(AFES-LETKF実験的再解析)である。2005年6月下旬,梅雨前線の北上が遅れ,日本の南岸に停滞していた。6月26日前線は亜熱帯高気圧の強化に伴って,急に消滅した。華中で小低気圧が発生し,黄海,朝鮮半島から日本海へ進み,梅雨前線が再形成された。データを詳しく分析したところ,以下のことが明らかになった。亜熱帯高気圧の強化は西から伝播してきたロスビー波束によるものである。梅雨前線は亜熱帯高気圧の発達に伴って,暖かく湿った南西流が梅雨前線に収束しなくなり弱化していった。一方,偏西風の蛇行に伴ってできた大陸上の気圧の谷で低気圧が形成され,これが日本海上に進みながら,下層の不安定と結合し新たな梅雨前線を形成した。この現象に伴う流れの不確定性についても調べた。梅雨前線上の小低気圧には不確定性が伴っている。梅雨前線の消滅に前後して,南西流の先端で不確定性が増大していた。また,大陸上の低気圧発生に伴う不確定性の増大も見られた。今年度は、梅雨前線にとって重要である水蒸気の移流を精密化することを目的として,新たな空間内挿スキームを考察し,その精度について示した。本課題では,地球シミュレータ上の高解像度全球シミュレーションや再解析データ等を用いて,いくつかの事例について,梅雨前線の活動がアジア大陸上空を流れる偏西風に沿って伝播するロスビー波束の影響を受けていることを示すことができた。
著者
橋本 巌 澤田 忠幸 松尾 浩一郎
出版者
愛媛大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

本研究では、成人期および成人になろうとする青年期における感情経験(つらさや感動)によって「泣くこと」が、自己の内面や他者との関係を揺り動かし内省する機会となり、自他認識の変容をもたらすという可能性を検討した。19年度は、中年期(看護師、およびボランティア)を対象として、成人版の泣き経験状況と泣きによる心理的変化を調査・分析した。また青年対象では、つらさによる泣き(17、18年度)に加えて感動による泣きを検討した。本年度までの主要な成果を報告する:1.泣きを経験する状況本研究では、結果的な泣きの頻度ではなく、泣きそうになって自己抑制する喚起過程を考慮した新たな泣き経験尺度を開発した。自分の直接的つらさによる泣き状況には、青年・成人共通に、A愛着危機、B自己確信のなさ、があり、成人ではC対人的葛藤(対人的業務にかかわる)が見出された。一方、代理的(共感的)な泣き状況因子は、青年・成人ともにD身近な他者の肯定的(またはE否定的)感情、Fメディア・物語の他者の感情、の3因子が抽出された。代理的泣きの傾向は、過去の感動経験の影響を受ける。また代理泣き傾向は、感動時の実際の落涙を促すと実験的に実証された。直接・代理の泣き状況因子には年齢差を示すものがあった。2.つらい状況での泣きによる心理的変化は、(1)自己意識の変化(共通に、(1)解放・安堵、(2)自己の直視・意欲(3)否定的現実の実感、成人では他に(4)消極的態度、(5)絆の実感)と(2)他者への影響(6)泣きへの否定的評価、(7)被援助・慰め、成人では他に(8)他者の巻き込み)とから捉えられた。泣きによる他者への影響は自己意識の変化と相関した。心理的変化は気分変動だけでなく持続的な人格面も含み、肯定・否定両面がある。また上記の(1)、(2)、(5)は感動による心理的変化とも共通する。3.泣きによる心理的変化に影響する要因として、泣きエピソードにおける感情、出来事の種類や、泣く際の対人表出選択(ひとりで泣くか、他者の前で泣くか)、性別、パーソナリティ要因(多元的共感性、ストレス対処)の関与が示された。上記諸要因間の関係の考察・モデル化が課題である。
著者
小関 武史 深貝 保則 玉田 敦子 坂本 貴志 武田 将明 松波 京子 川名 雄一郎 長尾 伸一 屋敷 二郎 福島 知己 福田 名津子 逸見 竜生 坂倉 裕治 隠岐 さや香 飯田 賢穂
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

18世紀西洋の啓蒙は、科学、技術から政治思想に至る広範な領域で、19世紀以後の知の原型を与えたと考えられてきた。また20世紀後半以後の「近代」批判に対しては、啓蒙の現代的意義が主張されてきた。他方近年の啓蒙研究は、膨大な資料の丹念な発掘と読解、あるいはデジタル化などの新技術に基づき、当時のテクストを時代の文脈の中に位置づけ、多様で複雑な知の在り方を明らかにしてきたが、現代思想における近代批判や啓蒙の再評価に応える統一的な像を提起するには至っていない。本研究は啓蒙研究の現段階の方法と成果を総合し、「浮動する知の境界」という視点から多方面の貴重資料の分析を行い、啓蒙の知の総合的な解釈を試みる。
著者
木下 政人 豊田 敦 家戸 敬太郎 吉浦 康寿 岸本 謙太 村上 悠 片山 貴士 鷲尾 洋平
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

養殖魚の育種はほとんど行われていないのが現状である。伝統的な選抜育種法による育種は、長期間を要するという欠点があった。そこで、ゲノム編集法の一つであるCRISPR/Cas9を用いて、マダイとトラフグにおいてミオスタチン遺伝子を破壊することで筋肉増量品種作製を試みた。ミオスタチン遺伝子のエキソン1内の配列をターゲットを設定し、single guideRNAおよび Cas9 RNA を人工授精した1細胞期の受精卵にマイクロインジェクション法により導入した。その結果、いずれの魚種においても高効率でミオスタチン遺伝子破壊に成功し、筋肉量を増加した個体の作製に成功した。
著者
堀端 章 松川 哲也
出版者
近畿大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

紀の川流域の地域遺伝資源である薬用紫蘇の1系統について、外観特性および機能性成分含有量に関する遺伝を調査した結果、本系統は形態的特徴および機能性成分含有量に関して固定していると考えられた。一方、この高機能性シソの機能性向上と周年生産技術の確立を目指して、単色光補光による生育調節を試みたところ、青色光補光が花成を顕著に抑制し、ペリルアルデヒド含有量が高く維持する効果をもつことが明らかとなった。
著者
小西 行郎 秦 利之 日下 隆 諸隈 誠一 松石 豊次郎 船曳 康子 三池 輝久 小西 郁生 村井 俊哉 最上 晴太 山下 裕史朗 小西 行彦 金西 賢治 花岡 有為子 田島 世貴 松田 佳尚 高野 裕治 中井 昭夫 豊浦 麻記子
出版者
同志社大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-06-28

発達障害とりわけ自閉症スペクトラム障害(以下ASDと略す)について、運動、睡眠、心拍、内分泌機能、体温などの生体機能リズムの異常を胎児期から学童期まで測定し、ASDにはこうした生体機能リズムの異常が症状発生の前、胎児期からでも見られることを発見した。それによって社会性の障害というASDの概念を打ち破り、生体機能リズムの異常としてのASDという新しい概念を得ることができた。この研究を通して、いくつかのバイオマーカを選択することが可能になり、科学的で包括的な診断方法を構築すると共に、障害発症前に予防する先制医療へ向けて展望が開けてきた。
著者
諸熊 奎治
出版者
京都大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2014-04-01

1)不斉カウンターアニオン指向触媒(ACDC)の反応機構と制御ACDCを用いた立体選択的細見桜井反応は多成分反応であり、反応機構の全容を知るためには、どのような順番で反応が起こるのかを解析する必要がある。AFIR法を活用して複数の反応経路をもとめ、立体選択性の起源を調べた。立体選択性の起源はプレ触媒とシリルケテンアセタールの錯形成にあることがわかった。2)分岐アルデヒドのC-H結合の無金属活性化の反応機構超原子価ヨウ素化合物を用いたアルデヒドのCH結合活性化の機構を検討した。まず、光照射によりカルボキシラジカルが生成し、このカルボキシラジカルがアルデヒドのCH結合を切断することがわかった。生成したラジカルによる連鎖反応によりアシル化反応が進行する。
著者
池澤 優
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は死をめぐる宗教学的視点からのアプローチ、死者儀礼、死者崇拝、死生観などについてどのような研究がなされているか、全体像を把握することを可能にするような資料の整理を、できる限り偏らない統合的な視点から提供することを目的として開始された。本年度が研究の最終年度に相当する。本年度は前年度から引き続いて、資料の収集とその整理を行ったが、特に最終年度であることに鑑み、研究成果を報告書の形にまとめることに力点を置いた。本研究は、その目的に従い、二つの課題が設定されている。一つは、様々な研究分野・方法論における現在の死の状況に関する議論を広く収集し、それをビブリオグラフィー化すると同時に、各文献が基本的に生と死についてどのような見方を内包しているかを整理する作業である。研究報告書の第一部と第二部がそれに相当する部分である。第一部は本研究によって収集・整理した文献のビブリオグラフィーであり、第二部はそれらに対して行った整理の、いわばサンプルである。これらによって、死にかかわる宗教学的研究として、どのような文献が存在するのかを検索し、それらがどのような性格のものなのか、広く現在の研究状況を把握することが可能になっている。本研究のもう一つの課題は、様々な文化における死および死者に関する宗教的な現象・行為・観念の事例を収集し、人類文化全体として、それがどのような構造を持ち、またどのような可変性を持つのかを俯瞰できるような整理を試みることである。当然のことながら、単独の研究者が多くの文化に関してこの作業を行うことは不可能であり、先ず、研究代表者が専門とする文化について、一種のサンプルを提供するのが現実的である。研究報告書の第三部がこの部分に相当する部分であって、中国の古代から中世にかけて、死者の在り方がどのように変化していったか、それが何を表していたかを論じた。本研究担当者の視点が基本的に宗教学というディシプリンからのものである以上、本報告にも一定のバイアスが含まれることは否めないであろう。しかし、宗教的な死生観が死後の存続や他界の信仰といった表面的な特性によってのみ捉えられるべきではなく、死という破壊を有意義なものに変換するすることにより、生をも有意義なものにする営みでもあったこと、それ故に我々にとっても看過することのできない現代的な意義を有するものであることを示すことができたと思う。
著者
石黒 勝己
出版者
奈良県立橿原考古学研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2016-04-22

春日古墳(奈良県斑鳩町)を対象にしたミューオンラジオグラフィーに関して、画像の分解能を上げるために計測期間を3ヶ月間に延ばして観測を行った。さらに画像化の方法も最適化し、春日古墳墳丘内部画像の作成を行った。画像には埋葬施設による空洞と思われる領域があり、この評価を行うために、シミュレーションを行って古墳内構造の具体的な検討をした。墳丘の外形測量データに対し、色々な大きさ、方向の埋葬施設を墳丘内部に仮定してコンピューター上でミューオン計測を再現、どのような空洞を仮定したときに計測データと最も合うかを検討することで是を行った。結果として 古墳中心部分、南南西からに北北東方向に長さ6.1±0.5m,高さ2.0m,幅1.8mの空洞を想定した場合に最もデータと合うものであった。この結果は考古学者によって構成される春日古墳調査検討委員会および物理学の国際会議であるICMaSS2017で発表し高く評価された。また、観測に際し原子核乾板を固定して設置する治具の開発をした。野外にフィルム(原子核乾板)を垂直に縦置きして長期間固定する必要があるがフィルム取り換えが容易にできることも必要である(放射線の蓄積などによってフィルムが劣化することによる)。これに対応する冶具の設計としてレール加工をした冶具ににフィルムを貼り付けたアルミ板を差し込む構造を考案し製造した。冶具は 野外に土地の改変無く設置でき、斜面にも設置できるなど古墳特有の要求を満たすものになっている。
著者
野々山 恵章 今井 耕輔
出版者
防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

先天性免疫不全症である細網異形成症、GATA2欠損症、Wiskott-Aldrich症候群、Chediak-東症候群の患者由来iPS細胞を樹立した。これらの疾患由来iPS細胞の分化障害を、in vitro 分化系を用いて検討した。その結果、細網異形成症では血液前駆細胞の代謝障害があること、GATA2欠損症では造血幹細胞への分化障害があること、Wiskott-Aldrich症候群では血小板への分化障害があることを明らかにした。また、iPS細胞の遺伝子変異をゲノム編集により正常化して分化が正常化させ、RNA Seq.を行いmRNA発現が異なる遺伝子群を見出し、分化因子の同定に向けた実績をあげた。
著者
上地 宏一
出版者
大東文化大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

漢字字形データベースの運用、対外的な公開およびデータの追加収録を行った。国際文字コード規格等で規定される全 9 万漢字・異体字を含む 31 万種の字形を収録するまでに至った。登録字形データを動的に呼び出し表示するための機能を構築し、様々な漢字・異体字を含む Web ドキュメントを容易に作成できることとなった。登録されている大量の異体字を利用時に弁別するための基礎データとなる「漢字異体化データベース」をまとめた。
著者
岡部 繁男 橋本 浩一 渡辺 雅彦
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-06-28

学習や経験依存的な脳機能は、生後の臨界期に獲得され、この時期に脳回路はシナプスリモデリング・刈り込みを受ける。イメージングと電気生理学により、臨界期の回路改変へのグリアの影響を解析した。大脳皮質ではミクログリアが組織体積を複数の領域に区切り、それによって錐体細胞樹状突起をシナプス動態の異なる領域に分節することが明らかになった。一方で小脳の登上線維の刈り込みにおいてミクログリアが重要な役割を果たすことがミクログリア特異的なCsf1r-cKOマウスの関与により明らかとなった。ミクログリアによる制御は貪食以外の機序による可能性が高く、抑制性シナプスの機能を介して影響を与える可能性を示唆した。