著者
朴澤 泰男 白川 優治
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.78, pp.321-340, 2006-05-31 (Released:2011-03-18)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

This article explores factors that affect rates of financial aid receipt among private institutions of higher education in Japan, with the aim to understand whether academically well-prepared and needy students are awarded financial aid in those institutions. Using a survey dataset of chief financial officers of Japanese private four-year colleges and universities, an ordered logistic regression analysis of the rates of institutional aid receipt including tuition waivers and a linear multiple regression analysis of the percentage of recipients of Japan Scholarship Foundation (JSF) Scholarship Loans were conducted. The regression results are as follows:(1) the rates of institutional aid receipt are related to the age of the institution and the selectivity of students, but not to regional income levels or tuition amounts. The percentage of aid awardees is also not related to instructional costs. In institutions where many students receive institutional aid, there are a significant number of students who borrow JSF Type I Scholarship Loans (Interest-Free Loans).(2) While the rate of JSF Type IScholarship Loan recipients is related to the historical background of the institution, selectivity of students, and regional income levels, there is no correlation between JSF Type I Loan recipient rates and tuition. The type of departmentsand schools in an institution is also not relevant to that figure.(3) While the rate of JSF Type II Scholarship Loan (Interest Bearing Loan) recipients is not related to the historical background of an institution, the selectivity of students, regional income levels, tuition, and instructional costs affect it. The percentage of JSF Type I Scholarship Loan awardees is positively correlated to that of JSF Type II Scholarship Loans.
著者
羽生 春夫 佐藤 友彦 赤井 知高 酒井 稔 高崎 朗 岩本 俊彦
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.463-469, 2007 (Released:2007-09-06)
参考文献数
27
被引用文献数
4 7

目的:老年期の認知症患者について記憶障害に対する病識の程度や有無を比較検討した.方法:軽症のアルツハイマー病(AD)63例,レビー小体型認知症(DLB)17例,血管性認知症(VaD)14例および軽度認知障害(MCI)56例を対象とし,記憶障害によって日常生活上起こりうる問題点を標準化された質問票(日本版生活健忘チェックリスト,EMC)を用いて,患者と介護者から同時に評価し,両者の差から病識の程度や有無を判定した.結果:各群で患者EMCスコアに相違を認めなかったが,介護者EMCスコアはMCI群,DLB群,VaD群と比べてAD群で有意に高く,病識低下度(介護者EMCと患者EMCのスコア差)はAD群で有意に高くなった.有意な認知機能障害を認めない老年者コントロールの病識低下度の平均+2標準偏差を超えるものを病識低下ありと定義すると,AD群の65%,MCI群の34%,DLB群の6%,VaD群の36%が該当し,AD群が最も多く,DLB群は最も少なかった.AD群で介護者が配偶者による場合と配偶者以外による場合に分けて比較したが,両群で介護者EMCスコアに相違を認めなかった.結論:軽症のADやMCI患者の一部でさえも記憶障害に対する病識の低下を示す場合が少なくなく,有効かつ安全な治療や介護を行う上で留意する必要があると考えられた.一方,その他の認知症,特にDLBでは明らかな病識低下例を示す割合が少なく,ADとは異なる病態の相違が示唆されたのと同時に,この記憶障害に対する病識の相違が鑑別点の一つとして活用できる可能性が示された.
著者
ちきりん 小田 舞子
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネスassocie (ISSN:13472844)
巻号頁・発行日
vol.11, no.5, pp.140-143, 2012-06

月間ページビューが150万を超えるという大人気ブログ「Chikirinの日記」を書き、実売10万部を超えるベストセラー『自分のアタマで考えよう』の著者であるちきりんさん。騙されない「思考」のコツ、教えてください。text by 小田舞子 + photogragh by 大槻純一──著書のタイトル『自分のアタマで考えよう』に込めた思いを教えてください。
著者
鈴木 由紀乃 小林 康江
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.251-260, 2009 (Released:2010-04-06)
参考文献数
23
被引用文献数
6 10

目 的 出産後から産後4ヶ月間の母親としての自信を得るプロセスを明らかにすること。対象と方法 産後4ヶ月の初めての育児をしている母親10名を対象に半構成的面接によりデータ収集を行った。得られたデータは,逐語録化し,データ収集と分析を平行して行う継続比較分析を行った。母親の「子どもの求めることがわかるようになった」「子どもの求めることに対応できるようになった」という体験を中心に,母親としての自信を得るプロセスに関連があると思われるデータを抽象化しカテゴリーを導き出し,カテゴリー間の関係を検討した。結 果 母親としての自信を得るプロセスを構成する5つのカテゴリー【試行錯誤しながら子どもと自分に合わせた育児方法を確立する】【子どもの成長と自分の成長の実感を得る】【この子の母親であるという実感を得る】【育児優先の生活に家事を組み込み生活を新たに構える】【自分に確証を得るための拠り所を求める】が抽出された。産後4ヶ月間の母親としての自信を得るプロセスは,試行錯誤しながら自分なりの育児方法を確立していく中で,子どもの成長とその子どもの母親であることを実感しながら,家事と育児を両立させ,生活を再構していくプロセスであり,それらは他者からの確証を得ることで支えられていた。結 論 母親は試行錯誤する育児の中で,子どもの成長を実感することから,自分自身の成長と母親であることを認識するようになる。また,育児中心の生活から家事も行えるようになるという行動範囲の拡大から自己の成長の実感は強まる。母親としての自信を得るプロセスの援助として,育児技術の獲得に対する支援だけではなく,子どもの成長や母親自身の成長の変化を気付かせる関わりの重要性が示唆された。
著者
平田 昌弘 米田 佑子 有賀 秀子 内田 健治 元島 英雅 花田 正明 河合 正人
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.9-22, 2010

The reproduction and identification of ancient dairy products in East Asia were conducted based on "SEIMINYOUJYUTU" which is the order ancient document available in East Asia and contains detailed explanation about milk processing, and then the spread pathway of these milk processing techniques into East Asia was discussed in this paper. As the results of reproduction and identification experiments, RAKU was identified as sour milk, KANRAKU could not be identified, ROKURAKU was identified as unmatured type cheese such as KHOROOT of Mongolian pastoralists and KURUT of Turki pastoralists, and SO was identified as butter and butter oil. Since some imprecise descriptions were found in SEIMINYOUJYUTU through the reproduction experiment, it was considered that Kashikyou, the author of SEIMINYOUJYUTU, was the just editor to use various texts which were gathered from different ethnic origins on milk processing and did not conduct processing milk products by themselves. The milk processing such as sour milk (RAKU) making from raw milk, butter (SO) making from sour milk (RAKU) by churning, butter oil (SO) making from butter by heating are wide spread techniques and still used among the current pastoralists in West Asia, South Asia, Central Asia and Inner Mongolia. As the comparison with components in milk products and the milk processing techniques of pastoralists in the Asian continent, it was concluded that the milk processing techniques adopted in SEIMINYOUJYUTU were mainly influenced from the pastoralists in North Asia and/or Central Asia.
著者
池上 恒雄 古川 洋一 伊地知 秀明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究において我々は肝特異的Kras活性化及びPten欠損による新規肝内胆管癌マウスモデルを樹立した。Cre-loxPシステムにより活性化型Kras変異とPtenホモ欠損を胎生期の肝前駆細胞及び成体期の肝細胞に導入したところ、肝内胆管癌のみを生じた。一方、Kras変異とPtenヘテロ欠損では胆管癌と肝細胞癌を、Kras変異単独では肝細胞癌のみを生じた。タモキシフェン誘導性のCre-loxPシステムを用いることにより、肝内胆管癌は胆管上皮由来であることが示唆された。このマウスモデルはヒトの肝内胆管癌の発生メカニズムや治療法の研究に有用であると考えられる。
著者
森 貴久 伊部 弘 小倉 久美子 佐藤 誉康 大谷 結
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.61-70, 2010
参考文献数
17

沖縄島北部のやんばる地域にのみ生息しているヤンバルクイナGallirallus okinawaeの交通事故記録を解析し、事故地点の特徴と月別の事故件数に関連する要因を調べた。ヤンバルクイナの交通事故死は1995年6月〜2007年8月の間に69件報告されており、増加傾向があった。事故地点は県道70号線上と県道2号線上に多く、県道70号線では近年北上している傾向がみられた。事故記録数は、5月(30.4%)、6月(30.4%)、8月(13.0%)に多く、事故個体の成長段階は、性に関係なく、成鳥が最も多かった(78.3%)。成鳥以外では、雛が4月、幼鳥が5月、6月、若鳥が7、8、12、1月に確認された。ヤンバルクイナの目撃数は5月〜7月が多く、観光客数は8月が最も多かった。2006年7月〜2007年10月の期間について、月別事故数と目撃数、事故数と観光客数にはそれぞれ正の偏相関がみられた。2005年〜2007年に事故が起きた36地点については、長い直線あるいは緩やかなカーブで、ガードレールがない場所が多かった。県道70号線の事故現場付近で通過車両の速度を測定したところ、制限速度以下で走行していたのは全体の15%であり、また、23%が制限速度を15km/h以上超過していた。これらのことから、ヤンバルクイナの交通事故がどの時期にどこで発生するかについてのリスクに影響する要因として、(1)ヤンバルクイナの繁殖生態に関連した活動性、(2)やんばる域内での交通量、(3)走行のしやすさやヤンバルクイナの接近のしやすさなどの道路環境、が示唆された。ヤンバルクイナの個体数減少をもたらす交通事故を減らすためには、ヤンバルクイナの生態とやんばる域内での交通量を考慮しながら、ヤンバルクイナの交通事故リスクを減少させるための道路環境の改良を行うことが重要である。これまでの、ヤンバルクイナを認識しやすくする取組みに加えて、ヤンバルクイナが路上に接近しにくくする対策が有効かもしれない。
著者
Shingo Minatoguchi Takahiro Ando Toshiki Tanaka Yoshihisa Yamada Hiromitsu Kanamori Masanori Kawasaki Kazuhiko Nishigaki Shinya Minatoguchi
出版者
The Japanese Circulation Society
雑誌
Circulation Reports (ISSN:24340790)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.17-19, 2019-01-10 (Released:2019-01-10)
参考文献数
9
被引用文献数
3

Background: It is still unclear whether dynamic exercise increases the number of Muse cells, pluripotent stem cells, in the peripheral blood. Methods and Results: The number of Muse cells, SSEA3+ and CD105+ double-positive cells, in the peripheral blood was measured using FACS before and after 40 min of cardiac rehabilitation with dynamic exercise in 6 patients with heart disease. The number of Muse cells significantly increased after cardiac rehabilitation in all patients. Muse cell mobilization may be related to the beneficial clinical outcome of cardiac rehabilitation. Conclusions: Cardiac rehabilitation increases the number of Muse cells in the peripheral blood.
著者
申 龍徹 申 龍徹 SHIN Yongcheol シン ヨンチョル Shin Yongchel
出版者
山梨県立大学
雑誌
山梨国際研究 : 山梨県立大学国際政策学部紀要 (ISSN:21874336)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.45-56, 2017-03-05

This paper is an international comparison of the common use of personal information in the common number system South Korea, Singapore, and Australia. To compare the institutional mechanism of the common use of summary and personal information of the common number system in these three countries. In the following, an overview of the common number system, the characteristics of the type described. Finally, the analysis of the joint-use system of personal information in South Korea summarized its suggestion.
著者
榊原玄輔
出版者
巻号頁・発行日
vol.[10], 1000
著者
張 峻屹 藤原 章正 桑野 将司 杉恵 頼寧 李 百鎭
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.97-102, 2006-10-25
参考文献数
11
被引用文献数
2

本研究では世帯居住地選択における集団意思決定メカニズムに着目し,軌道系公共交通沿線への居住促進を念頭に,広島市アストラムライン沿線住宅への転居意向をSP調査によって調べてみた.転居意向をより的確に把握するために,インターネット調査を活用し,転居可能性のある被験者を効率的に抽出することに努めた.今回のケーススタディでは集団意思決定と個人意思決定で,40%もの世帯において世帯構成員の選好結果が変化することが分かった.世帯の代表的な構成員を選定し,世帯居住行動を調べる従来の調査・分析方法は間違った結論を導く恐れのあることが明らかとなった.居住地選択行動においても,多項線形効用関数を用いた集団離散選択モデルによる集団意思決定メカニズムを表現することの有効性を統計的に確認することができた.アストラムライン沿線での居住を促進するには,アストラムラインの駅近辺に集合住宅の建設を政策的に押し進めることが効果的であることが分かった.
著者
橋本 栄莉
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.200-220, 2015-09-30 (Released:2017-04-03)

本論の目的は、独立後南スーダンで流通する予言を事例として、様々な出来事に直面するヌエルの人々が、予言やその背後にあるクウォス(神、神性)を介してどのように新しい経験の可能性を見出しているのかについて検討することにある。100年以上にわたり語り継がれる予言は、内戦や開発援助、国家の独立など、ヌエルの人々が直面する新しい状況を把握する方法と密接に開わってきた。予言の総体は知られていないものの、予言は人々の関心のありようや出来事とともに日々発見され、語り直されている。エヴァンズ=プリチャードとリーンハートのナイル系農牧民の宗教性に関する議論は、当該社会の変化と不可分に結びついた神性と経験のありようを、対象社会の人々の視点から抽出しようとするものであった。彼らの議論を手がかりとしながら、本論では、ヌエルの人々がどのような要素を検討することで予言や予言者の「正しさ」を見出していたのかに着目する。予言に関する人々の語りと対話、予言者を祀った「教会」の実践、近年の武力衝突という異なる場面で人々が吟味していたのは、過去に自分たちの祖先がクウォスに対して犯してしまった過ちや自身の周辺で生じるクウォスの顕れ、そしてその中で再び見出される自分たちの新しい「経験の領域」であった。本論は宗教性や経験に関する理論的検討を行うものではないが、南スーダンで生じている暴力や混乱を理解する上で、二人の人類学者が取り組んできた問題系がいかに無視しえないものとして残されているのかを例示するものである。