著者
垣内 幸夫
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究は、明治期に始まり今日まで文楽の舞台に継承されている「彦六系」の芸について、その伝承を支えた文楽三味線奏者・故六世鶴澤寛治(重要無形文化財=人間国宝)の残した芸談『鶴澤寛治の芸道生活と意見』(文部省委託・朝日放送製作/昭和43年1月)の全内容を分析し、「彦六系」の芸の伝承の実態を明らかにする事を目的に行ったものである。鶴澤寛治の実子であり文楽三味線の弟子である八世竹澤団六師(重要無形文化財=人間国宝)とともにこれらの記録テープを聞き、内容の正確な理解に努めた(竹澤団六師も鶴澤寛治と同じく「彦六系」の芸の伝承者である)。その結果、以下の点が明らかとなった。1.六世鶴澤寛治の芸を形成するに至った師匠について指導を受けた「彦六系」の三味線奏者 (1)初世豊澤松太郎(2)三世豊澤団平(3)初世鶴澤道八指導を受けた「文楽系」の三味線奏者 (1)六世豊澤廣助(2)二世鶴澤寛治郎(3)六世鶴澤友次郎指導を受けた大夫 (1)三世竹本大隅太夫(「彦六系」)(2)三世竹本越路太夫(「文楽系」)2.六世鶴澤寛治が継承する「彦六系」の芸の伝承曲について「堀川猿廻しの段」「寺子屋の段」「山科閑居の段」「沼津の段」「岡崎の段」「宿屋の段」「澤市内の段」「新口村の段」「熊谷陣屋の段」「阿古屋琴責の段」「志渡寺の段」等3.六世鶴澤寛治が相三味線を勤めた大夫について(1)三世竹本津太夫(2)七世竹本源太夫(3)五世竹本錣太夫(4)七世豊竹駒太夫(5)四世竹本津大夫
著者
石井 聡
出版者
大阪市立大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

疲労感の神経メカニズムの解明するために、疲労感の古典的条件付け、あるいは疲労のミラーシステムを用いた課題を開発し、従来の疲労研究とは根本的に異なる脳磁図研究を実施した。健常被験者を対象にした結果からは、後帯状回が疲労感の神経メカニズムに関わっていることが示唆された。また疲労感の古典的条件付けや、疲労のミラーシステムによるアプローチが疲労研究に有効であることが示された。
著者
岡田 光弘 金子 洋之 峯島 宏次
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

計算論的・構成主義的算術の算術証明論を展開したHusserlの構成可能的多様体論、Wittgensteinの帰納的証明論などの構成的証明論を明らかにした。直観主義論理可能世界意味論を通じて、強制法の古典論理モデルの新しい確率論的・計算論的解釈を与え、情報セキュリティ分野への具体的応用を示した。証明論的正規化定理から線形論理、直観主義論理の意味論と証明論が構成されることを示した。これまで意味論的分析が主流となっていた図的論理分野において、証明論分析手法を発展させた。日常論理推論プロセスの構成的側面の理解のために、認知心理学的手法、行動遺伝学的手法、社会心理学的手法を導入して多くの新しい知を得た。
著者
田川 正毅
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

子どもの外遊びが全国的に減少し、積雪寒冷地では冬の外遊びの減少が顕著である。子どもの外遊びを促すきっかけや仕掛けとなる環境形成の知見を、保育や教育関係者・環境の計画者・そして子どもとその保護者が共有する方法を、パタンランゲージを元に開発した。それをホームページ(http://kodomo-snowland.net)で公開し、家の周り・公園・まちの段階的な広がりの中で示した。この方法を活用した外遊びの展開が期待される。
著者
近藤 浩文 福森 義信 平塚 純一
出版者
神戸学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

【研究の目的】メラノーマ細胞に特異発現し、その放射線抵抗性に関与すると考えられているTRP-2遺伝子の発現を抑制することによって、メラノーマ細胞の放射線抵抗性・DNA障害型化学療法剤への抵抗性を減弱させることの可能性を検証する第一段階として培養癌細胞レベルを実施し、「ブラックデビル」と恐れられているメラノーマに対する粒子線・放射線・化学療法等の治療効果増強法(増強剤)開発に結びつけることを目的とした。【研究実績】研究実施計画に基づき以下の研究を実施した。平成17年度は各種基盤評価技術の確立と検討する対照となる細胞系の確立に重点をおいた。(1)各種悪性黒色腫細胞を用いてTRP-2発現抑制法を検討した。Tyrosinase遺伝子発現欠損黒色腫細胞にTRP-2発現抑制shRNA発現プラスミドを導入した細胞株を作製した。(2)TRP-2遺伝子発現抑制による殺腫瘍細胞効果評価系の確立するため、X線に対する感受性評価系、紫外線に対する感受性評価系、およびDNA障害型抗癌剤であるシスプラチン系抗癌剤に対する感受性の評価系を確立した。(3)放射線感受性変化の機序を解明するため、TRP-2遺伝子発現量・黒色腫細胞内メラニンモノマー量と放射線感受性の相関関係解析のためHPLCを用いたメラニンモノマー定量系を確立した。平成18年度は、TRP-2発現と放射線抵抗性の関係を明確に出来る細胞系確立と評価に重点をおいた。(4)TRP-2遺伝子発現抑制による放射線感受性変化の機序を解明するため、TRP-2遺伝子を非メラノーマ系細胞であるHeLa細胞に導入安定発現する細胞を作成した。本細胞を用いれば、TRP-2遺伝子による放射線抵抗性がTRP-2蛋白質のみに依存するのか、それともメラニン生成機構と関連するのかを明確にできる。本細胞の色素細胞学的性質、細胞生物学的性質および分子生物学的性質を解析評価した。(5)作成した上記2種の細胞を用いて、紫外線抵抗性・放射腺抵抗性およびDNA障害型抗癌剤であるシスプラチン系抗癌剤に対する感受性を親株細胞と比較検討したが、現在までのところ、明確な結果は得られなかった。評価条件・手法を変更・改良して評価試験継続中である。
著者
土谷 真紀
出版者
学習院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本年度は、初期狩野派の絵巻物に加え、狩野派の図像摂取の様相をたどるべく、土佐派の涅槃図について調査・分析・発表を行った。特に、「釈迦堂縁起絵巻」第二巻第七段に描かれる涅槃場面に注目し、その図像典拠となっている土佐派系の涅槃図(山口県・周防国分寺本、滋賀県・興善寺本、米国・個人蔵本)を調査し、考察内容を「土佐派による仏涅槃図について」と題して発表した。調査の過程において土佐派の手になると判断された作例もあり、今後さらに関連作例が見出される可能性がある。一連の土佐派系仏涅槃図作例の分析は、狩野派の仏画制作における、先行図像の受容問題を検討していく上で極めて有益なものとなった。本研究の主軸である狩野派絵巻の分析と発表は次の通り行った。「二尊院縁起絵巻」については、「『二尊院縁起絵巻』について一作品紹介とその特質」と題する発表を行い、画風の検証結果を報告するとともに、二尊院の寺史を軸として縁起が構成されていることを指摘した。「酒飯論絵巻」については、文化庁本とやまと絵系絵師の手になる静嘉堂文庫美術館本「酒飯論絵巻」との比較を行い、文化庁本では総じて絵画としての有機的構造が企図されていることを「狩野派における『酒飯論絵巻』の位置」と題した発表において報告した。狩野派絵巻の中で最も重要な作例である「釈迦堂縁起絵巻」については、画面の大部分を占める異国表現について「『釈迦堂縁起絵巻』における中国美術の援用と中国イメージ」と題して発表した。これらの発表については、現在公刊が決定しているものを含め、論文化を進めている所である。さらに、狩野派における物語表現の分析を進めるべく、毛利博物館蔵「源氏物語絵巻」(全五巻)を調査し、現在分析中である。本作例は狩野派における「源氏絵」の意義を明らかにするだけではなく、室町後期から江戸初期にかけての「源氏絵」の展開を考える上でも重要な作例である。
著者
小谷 一郎 古厩 忠夫 丸尾 常喜 丸山 昇 佐治 俊彦 尾崎 文昭 伊藤 虎丸
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

1.研究会の開催、研究者のネットワーク化私たちは研究計画に基づき、メンバー以外の研究者にも呼びかけながら研究会を組織、開催した。この研究会は平成11年度に4回、12年度に3回、13年度に3回、つごう10回開かれた。研究会には毎回メンバー以外の多くの研究者が参加され、その数は40名前後にも及ぶ。また在中国の研究者からも積極的な支援、協力を得ることができた。その結果、研究者の学際的ネットワーク作りが基本的に終了し、今後の研究発展に向けて大きな足掛かりを得ることが出来た。2.関係資料の発掘、収集、整理、データベース化 本研究の遂行、発展のためには 次資料の発掘、収集が不可欠である。私たちは研究計画に基づきメンバー以外の研究者の協力を得ながら資料の発掘、収集に当たった。その結果、これまで日本国内になかった1920年代から40年代の資料をマイクロフィルムなどのかたちで100点近く入手することが出来た。これらの資料は現在も分析、データベース化が進行中であるが、複製があり埼玉大学に集中してあるので、要請があればいつでも提供可能な状態にある。3.成果の公開私たちは研究会の開催以外に本研究の成果を論文等のかたちで公開してきた。その詳細は別記の通りである。また私たちは発掘、収集した資料のうちすでに,データベース化を終えた13種について、それを『1920-40年代中文稀観雑誌目録・第一集(附著者別索引)』のかたちで公刊した。このデータベース化は現在も進行中である。私たちは本研究の成果を基に今後も研究の発展に努めていく所存である。
著者
田端 英雄 柴坂 三根夫 藤田 昇 田中 歩
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

ミズゴケ湿原の水質とミズゴケの消長の関係を調べるために、京都市深泥池浮島高層湿原に生育するハリミズゴケとオオミズゴケの成長実験をpH緩衝液と深泥池の水とで行った。緩衝液で培養すると両種ともに水のpHが5.9を越えると枯死した。カルシウムイオンは従来言われているようなpHの中性化と相乗したミズゴケ類への阻害作用はなく、逆にpH上昇による枯死作用を緩和した。pHの上昇以外にリン酸イオンがミズゴケに有害であった。深泥池集水域っからの降水時の様々な流入水で培養した場合はpHが6前後でも電気伝導度が50(μS/cm,25C)より小さいとミズゴケは健全に生育し、大きいと枯死した。ミズゴケ自体は周りの水を酸性にする働きをもっているので、同じpH6の水でも電気伝導度が大きくて緩衝能が高い水だと枯死し、電気伝導度が小さくて緩衝能が低い水だと生育が可能になる。ただ水質の安定した静水と違って流入水の場合は採水後に可溶化してイオンになる物質が多く含まれており、流入後に電気伝導度とpHが高くなることに注意する必要がある。都市域にある深泥池でも降水はもちろん降水が二次林林床からの地表水やチャート基岩からの湧水として集水域の低山から流入する水はpHが5台で、電気伝導度が30より小さく、ミズゴケの生育に十分な水質であった。一方、開発された集水域や自動車道路からの流入水はpHが6以上、電気伝導度が50以上でミズゴケを枯死させる水質であった。以上のことから、ミズゴケ湿原は直接の降水および自然度の高い集水域からの降水によって涵養されている限り健全に発達するが、火開発された集水域からの汚染水や地下水、河川水などpHと電気伝導度が高い富栄養化した水が集水域から流入すると衰退し、消滅していくことが明らかになった。
著者
堀切川 一男 山口 健 柴田 圭
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では,一般的に高摩擦を示すゴム材料と低摩擦を示すプラスチック材料に対して,「摩擦調整剤」として,安価で低環境負荷な植物由来の低密度粒子系材料を充填することにより,低摩擦ゴム複合材料と耐滑プラスチック複合材料を開発した.また,同複合材料の摩擦・摩耗特性の体系的な解明を行った.その結果,米ぬかを原料とする炭素粒子を充填することで,無潤滑下,水潤滑下においてゴム材料では成し得ない低摩擦を得ることが可能であり,また,竹粉粒子を充填することにより,水濡れ,油濡れ時に未充填の樹脂よりも高摩擦を得ることが可能であることが分かった.
著者
望月 俊男
出版者
専修大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

教育実習生が,児童・生徒の多様な態度や考えを踏まえた授業シミュレーションを行えるようにすることを目的に,協調的な参加型授業シミュレーション支援システムを開発した.授業シミュレーションを人形劇で行い,AR マーカー等を活用してその過程を記録した後,記録された人形劇を Web サイトにログインして再生し,相互コメントすることで,授業展開の省察・改善を協同で検討することが可能な学習環境である.このシステムの予備的評価を行った結果,通常のマイクロティーチングでは生じない,多様な子どもの役割演技を引き出すことができることが分かった。
著者
劉 暁輝
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

リガンド未知の「オーファン核内受容体」に対して、トレーサーとする標準化学物質がないため受容体結合試験ができず、困難な研究課題となっている。本研究では、複数のヒト核内受容体について、表面プラズモン共鳴法(SPR)を利用した分子間相互作用解析装置Biacore T100を用いて低分子量化学物質と核内受容体の結合試験系を確立し、強く結合する化学物質を見出した。そして、放射標識体を用いた受容体結合試験系の構築にも成功し、これまでに全く知られていない化合物が受容体と非常に強く結合することが判明した。
著者
稲葉 陽二 菅野 剛 石田 祐 小藪 明生 石田 光規 露口 健司 西川 雅史 市田 行信
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-10-31

経済格差とSC:経済格差が大きいとSCは壊れる。認知的SCよりも構造的SCが関連しており、所得格差よりも資産格差が大きく負の相関がある。また、市町村レベルの所得格差の拡大と認知的SCと構造的SCの低下は、生活満足度の低下と関連している。教育とSC:SCの醸成を規定するのは量的側面ではなく質的側面であり、質的側面が高いと孤立化しにくい。また、学習の社会的成果は、地域の特性を強化する上で普遍的な影響を与える。地域の歴史的・文化的背景とSC:地域の歴史的経緯がSCに影響を与え、既存地区のほうが近隣と距離を置き、地域参加や地域への愛着も低いため、行政を通じた地道な啓蒙活動が重要である。
著者
朝倉 敏夫 太田 心平 岡田 浩樹 島村 恭則 林 史樹 韓 景旭 岡田 浩樹 島村 恭則 林 史樹
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

東アジアのコリアン・ネットワークについて、既存の研究では明らかとなっていなかった、ないし否定されてきた3点が明らかとなった。越域性、多重性、主体性の3点である。この研究成果の主たる報告書、および現地還元活動として、『韓民族海外同胞の現住所―当事者と日本の研究者の声』(學研文化社、2012)を、韓国語にて出版した。
著者
佐野 比呂己 本橋 幸康 井口 貴美子 太田 幸夫 大村 勅夫 菅原 利晃 花坂 歩 谷口 守 増子 優二
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

これまで研究されてこなかった柳田国男監修高等学校国語科教科書について、その所収教材を中心に研究を進めてきた。所収教材そのものを分析、考察するとともに、分析・考察をもとに、研究協力者である高等学校教員との連携により高等学校国語教室での実践を行った。実践を検討する中で、教材としての有用性、問題点を抽出し、教材価値の検討を行い、時代は経過しても現代の高校生の国語教室において価値ある教材であるという共通認識を持ち、実践研究報告を学術雑誌に投稿、掲載された。
著者
青山 謙二郎
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本プロジェクトでは、人間と動物の両方を対象として、「食べ止む」要因について検討した。人間では、食べ物のカロリー量を知らせない場合には、食物のカロリー量は食べ止むことに影響しなかった。ラットでは、食物の現在のカロリー量ではなく、過去のカロリー量に関する経験が食べ止むことに影響した。これらの結果は、「食べ止む」ことの直接の要因は、食物のカロリー量に関する過去の経験であることを示唆している。
著者
大野 朋子
出版者
大阪府立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

地域固有の植物景観を形成する要因の一つとして、人間とタケ類との関わりと植物としてのタケ類がどのように伝播し、拡散しているのかを東南アジアにおける少数民族にみられるタケ類の利用をモデルとして調査した。リス族、ラフ族、モン族、アカ族は10種程度のタケ類を利用に合わせて使っている。4つの民族は共通して竹製の笙を使うが、材料のタケの種類は、ラフ族、リス族、アカ族では共通して自生種を使い、モン族では自生ではない温帯性のタケ類を栽培し、使用する。モン族は、文化的背景のもと笙を葬儀に使う特別なものとして扱うためにその材料となるタケを伴って居住地を移動し、資源供給の確保のために栽培することが明らかになった。
著者
井上 久美子
出版者
西南学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、幼児及び児童の身体感覚への意識性と共感性の関連を検討することであった。その結果、幼児においては、身体の感じに気づき、身体の状態の変化を正確に表現できることと共感的応答との関連が窺えた。児童においては、小学4年生及び6年生において、身体のありのままの感覚を感じられることが、共感的関心や視点取得といった共感性と関連する可能性が示された。したがって、幼児期から児童期にかけての時期においても、豊かな身体感覚への気づきを促すことが重要であることが示唆された。
著者
岩井 郁子 佐藤 紀子 豊増 佳子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

看護記録は、保健師助産師看護師法の規定や概念がない。診療報酬の算定要件として看護計画と経過記録が求められ、施設毎に記載内容と様式を決め標準化がなされていない。診療記録開示において看護記録は診療記録に含まれ、また、個人情報として位置づけられた。このような中で、診療記録開示の目的にかなう標準化された看護記録が求められている。本研究では、診療記録開示の目的を踏まえ、アメリカ、イギリスの看護記録の実際と記録指針から、カルテ開示の目的にかなう看護記録モデルの本質を検討し、また、74病院の看護記録の分析と109名の看護記録記載を指導する看護師の指摘から、現状の看護記録をめぐる課題を明らかにした。これらの結果を踏まえて、厚生労働省、関連団体である日本看護協会、日本医療機能評価機構の指針や保健師助産師看護師法、医療法等の法的な記述から看護記録の概念を抽出し、概念モデルを作成した。概念は、看護記録記載の目的と内容を示し、看護記録は、看護者としての倫理・業務上の責務の遂行、質を証明するものと位置づけた。さらに電子カルテ時代、患者を中心に、医療チームメンバーが共同で記載できる標準化された記録として、日本において一般化可能な記録枠組みを選択し、関連団体の指針を活かした構成要素およびその概念から看護記録モデルおよび記載基準を作成した。この基準は全国52の社会保険病院の看護記録記載基準に活かした。基準だけでは、記載内容の標準化は困難である現状から、基準に基づく具体的な記載例を含む看護記録モデルを提示した。このモデルは診療記録開示の目的にかなうしかも記録時間の削減に貢献できる内容をめざした。
著者
山本 健 坪川 恒久
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

脳磁図を用いて意識・記憶・痛みによる脳活動の変化を観測し,その結果を脳波に応用することにより,周術期にベッドサイドで使用することができるモニタリング手法を開発することを目指した.MRIまたは脳磁図装置の中で被検者を全身麻酔により無意識状態として観察することは倫理委員会の許可が得られなかったため,睡眠による意識消失状態での観察をおこない睡眠時紡錘波,θ波,δ波の発生部位を明確にすることができた.記憶に関するモニタリングに関しては,記憶形成時,想記時ともに記憶に特徴的な脳の反応を捉えることができなかった.痛みに関しては,扁桃体や海馬,島皮質などに特異的な反応を見出すことができた.
著者
宮口 和義
出版者
石川県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

近年、日本では子どもの体力・運動能力の低下に比例して転倒による子どもの事故や怪我が増えている。以前に比べ咄嗟時の反応が鈍くなっていると思われる。保育園で有効な運動プログラムを提供するためにも、遊びの反応時間への影響について検討しておく必要があろう。鬼ごっこやサッカーのような動的な遊びは、反応スピードと全身運動の敏捷性を発達させることがわかった。特に鬼ごっこを好む園児は左右の切り替え動作を含む敏捷性能力に優れているといえる。また、ラダー運動は今日の子ども達の各反応動作の改善に有効であることが示唆された。さらに、草履の着用はバランス能力に関わる足裏形成や立位姿勢の改善に有効であることがわかった。