著者
金沢 創 作田 亮一 山口 真美
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

摂食障害者において自己の顔画像と他者の顔画像を観察している際の脳活動を、NIRSを用いて検討した。具体的には自己顔を観察している際の脳活動を、摂食障害者とコントロール群との間で、比較検討した。その結果、定型発達群では、自己顔にのみ特異的な脳活動がみられたが、摂食障害群では、自己顔および他者顔の双方に対して、側頭部の脳活動が見られた。この結果は、摂食障害者の特殊な自己認知を意味している。また、ADHD児を対象に表情認知を、これもNIRSを用いて検討し、ADHD児では、笑顔に対してのみ、脳活動が観察された。さらに定型発達乳児においても、質感知覚やカテゴリカル色知覚について検討した。
著者
本城 秀次 金子 一史
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

1812名の中学生に対してネット利用状況の質問・日本語版インターネット中毒テスト・Strength and Difficulties Questionnaire(SDQ)を行った。その結果,中学生の半分以上が1週間に1回以上ネットを利用していることが分かり,中学生においてもネット文化が浸透していることが示唆された。また,女子中学生にネット依存傾向が強いことも示された。
著者
沈 振江 川上 光彦 杉原 健一 黄 光偉 馬 妍 鈴木 克徳
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では、2007 年から国土主体機能区計画における中国の環境問題の取り込みを明らかにした上、2009 年5 月から国家戦略として発足した海西経済区を取り上げ、発展計画の段階にCO2の排出量削減を計画し、地域開発の事業地区のエネルギ評価指標を事業評価にしていることを明らかにした。低炭素都市づくりの実現には、持続可能な開発モデル地区として選ばれた平タン実験区、アモイ市では、地域開発のフレームワークの検討には、国の21Agendaによって作成された持続可能な開発の評価指標を適用していること、都市空間戦略レベルでは、新材料、グリーン建築、公共交通などの面で計画基準を設けていることを明らかにした。
著者
松澤 佑次 船橋 徹 斉藤 昌之 矢田 俊彦
出版者
大阪大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2003

本研究は脂肪細胞機能を解析し過栄養を原因とする動脈硬化、糖尿病、癌戦略を打ち立てんとするものである。(1)脂肪細胞の起源と発生分化:生体の三次元的な組織変化追跡法が開発され、血管新生が脂肪組織増大に必須であること、単球接着など動脈硬化巣と類似した変化が肥満脂肪組織におこることが示された。侵入したマクロファージはアディポサイトカイン分泌に影響を与え、脂肪組織リモデリングという現象が起こる。局所酸化ストレス物質や低酸素状態がアディポサイトカイン分泌異常をおこすことも明らかになった。(2)脂肪細胞の基本生命装置:アディポソームと呼ぶ膜小胞が新たな分泌機構として明らかにされた。著しく変化する脂肪細胞容積感知分子として容積感受性クロライドチャネルが同定された。水チャネル分子であるアクアポリンが脂肪細胞グリセロール分泌に関与し、その欠損により飢餓時の糖新生不足がおこり低血糖をきたすことを示され脂肪細胞におけるグリセロールチャネルの概念が確立された。(3)機能破綻による病態発症機構の解明とその制御:アディポネクチンの生理的意義に関する多くの研究成果が得られ、単に代謝性疾患にとどまらず、循環器疾患、消化器疾患、炎症性疾患、さらには腫瘍など、主要な疾患と生活習慣の関連を解明する上で大きく貢献し、アディポネクチン学(Adiponectinology)という一つの学問分野を形成するに足るものとなり、わが国から世界に向けた大きな発信となった。以上より、多分野の研究者が参入し脂肪細胞生物学(アディポミクス)という分野が急速に立ち上がった。本領域研究は科学領域に大きな成果をもたらしたと考えるが、加えて国家的課題となっている多くの生活習慣病対策に対し、メタボリックシンドローム概念確立の科学的基盤の一つとなったと考える。
著者
武島 玲子 福田 友秀 瀧本 幸司 大澤 侑一 正田 傑
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

都市型地震発生直後の出血・骨折、熱傷の傷病者の災害時外傷看護プログラムを作成した。傷病者搬送までの初期対応とトリアージのシナリオで、看護に必要な動作と目標を分析し、達成度、目標、シミュレーション前の事前学習内容、目標に準じた学習者への期待、指導者の留意点、シミュレーション実施時の設営、指導者の役割、デブリ―フィングの目標とポイントを作成した。作成した内容をシミュレータに連動させ本教育法を完成した。
著者
木村 博子
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

3年間にわたり、在宅高齢者の地域復帰支援として行なっているコミュニティ音楽療法を122回、阿蘇市仮設住宅におけるコミュニティ音楽療法を10回実施し、その発展形としてのコンサートを6回実施した。それにより、参加高齢者の心身の活性化、自己尊厳の回復、社会意識の向上に有効な効果がみられた。またコンサートにおける地域在住の音楽家の出演は、地域住民の地元音楽文化の再発見ならびに演奏家自身の社会的意識の向上を促し、新しい療法的視点に基づいた演奏活動が始動する等、音楽活動における波及効果が確認された。音楽療法の知見を持つ学生たちによるコンサート企画運営は高齢者理解、異世代間交流の契機となった。
著者
久保 加津代 西島 芳子 曲田 清維
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

温暖地域(九州・四国地方)の,地域に根ざした伝統的な住生活法について調査した結果,つぎの点があきらかになった。1.掃き出しの開口部や3本溝などを活用して開放的な間取をもち,高床に風を通し,深い軒の出をもって日照を遮っている,ハード面での工夫だけではなく,夏には,窓を開け,植栽や軒先に仕込んだ日よけ障子の活用や打ち水などのソフト面でも「気を用いて」「ていねいに」暮らしている。2.縁側やミセやショウギやオキザなどを活用して,夕涼みやひなたぼっこなどを楽しみ,地域に根ざした住生活は地域コミュニティをも育んできた。3.世代間による環境適応力の違いは大きく,子どもや若者の季節感・住環境適応力低下傾向は著しい。地域差もみられる。4.世代間交流の視点で,「庚申庵伝統文化こども教室」「ふれあいセンターもやい」の活動や家庭科の授業やケーブル・テレビについて,具体的に検討することができた。異世代間交流の可能性は大きい。5.高等学校家庭科『家庭総合』の教科書は,地域に根ざした住生活や健康的で持続可能な住生活についての記述が豊富になりはじめている。地域に根ざした,健康で持続可能な住生活をするために,ゆっくり,ていねいに日常生活を営むことの重要性を世代間で交流していきたい。
著者
馬場 昌範
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

研究代表者が1999年に武田薬品工業との共同で,世界で最初に報告したCCR5を標的とする抗エイズ薬TAK-779(Baba et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:5698)は経口吸収性がなく,毒性の問題から臨床開発を断念した。その後,経口吸収性を有し,臨床試験が可能な薬剤の探索を続けた結果,新規化学構造を有するCCR5拮抗薬TAK-220およびTAK-652の同定に成功した。TAK-220とTAK-652とは基本化学構造が全く異なる化合物で,TAK-220はCCR5に対するリガンドであるケモカインの結合を数nMの濃度において阻害する能力を有していた。しかしながら,TAK-220はCCR5以外のケモカインレセプターに対するそれぞれのリガンド結合を抑制しなかった。一方,TAK-652の場合は,CCR2bに対するリガンドの結合もかなり低い濃度で抑制することが分かった。また,TAK-220およびTAK-652は,CCR5をコレセプターとする(R5)種々の臨床分離株の増殖を非常に低い濃度(数nM)で抑制したが,CXCR4をコレセプターとして用いる(X4)HIV-1に対しては抗ウイルス効果を全く示さなかった。さらに,異なるサブタイプのエンベロープ蛋白を有するR5 HIV-1は,これらの薬剤に対して等しく感受性を有することも分かった。さらに,TAK-652に関しては,健常人に対する単回経口投与を行ったところ,100mgの投与量まで,安全で望ましい体内動態を示した。25mgの投与24時間後の血中濃度は,薬剤が抗HIV-1効果を示す濃度をはるかに上回ることから,TAK-652は1日1回経口投与可能な新規抗HIV-1薬として,臨床試験においてその有効性を証明する価値があると思われた。
著者
大石 美緒子
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

今回の研究では、まずcaerulein投与後の膵組織で炎症を分子レベルで確認した後、このモデルが急性膵炎の疼痛を再現しているか否かを検討した。その結果、内臓痛・関連痛ともにcaerulein群と対照群間で有意差を認め、本モデルを疼痛面をも再現する急性膵炎モデルとして確立した。この動物モデルを使用し、急性膵炎における疼痛発現機序の検討を行った。その結果、末梢知覚神経系におけるBKやTRPV1、ならびに中枢神経系におけるcox-2が本モデルにおける疼痛に関与する可能性が示唆され、急性膵炎における疼痛のメカニズムの一部を解明した。
著者
片山 悠樹
出版者
名古屋商科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、日本における中退者の職業移行パターンを分析することである。分析にあたり、JSGGのデータセットを使用し、次の3つの仮設の妥当性を検証した。(1)「高学歴化」説、(2)「若年労働市場の弱体化」説、(3)「学校経由」説。分析結果によれば、中退者は、経済不況といった問題だけでなく、「学校経由」というシステムそのものが要因となって、無業になる可能性が高まることが明らかとなった。
著者
山田 園子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

『統治二論』における君主制論を読み解く際に不可欠なロックの教会論を解明し、それについての論文を公刊した『統治二論』の研究状況について日本政治学会で、ロック研究の視点を確保するべく、トマス・ホッブズの歴史認識等との対比を、日本ピューリタニズム学会で報告したロック『統治二論』にかかわる戦前日本での研究史の追跡と確認を行なった
著者
福士 慈稔
出版者
身延山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

高麗及び日本の章疏目録の整理により、各時代の目録に収録された朝鮮章疏の実数、日本各宗に重用された朝鮮章疏、及び新出の朝鮮章疏を明らかにし、その上で日本各宗諸師章疏の新羅・高麗章疏の引用整理を行い、各宗の新羅・高麗仏教認識を窺った。結果として、三論宗では9世紀の願暁1人が元暁、憬興、勝荘、円測、太賢等の新羅章疏を中国章疏と同様に重用しているが、三論宗全体としては、吉蔵三論学の解釈を旨としているため元暁・太賢章疏以外は注目していなかったことが明らかとなった。法相宗では善珠が中国の基や慧沼章疏に次ぐ2次資料として新羅章疏を肯定的に引くが、善珠以降の法相宗諸師は新羅章疏を批判の対象として捉えていたことが明らかとなった。天台宗では新羅諸師の法華経関係章疏への関心はないが、新羅での密教隆盛という認識と共に天台密教相承系譜上に存する新羅密教僧に対する敬意が窺えること、また新羅で基法相学と異なる玄奘系法相学が隆盛していたと捉えていたことが明らかとなった。真言宗では他宗と比べて新羅章疏の引用が少ないこと、空海入唐時に中国で活躍していた新羅僧がいるにも拘わらず新羅密教僧を黙殺し、その他の新羅章疏にも関心を抱かなかったことが明らかとなった。華嚴宗では8世紀の寿霊が中国章疏と同様に新羅章疏を重用しているものの、寿霊以降は法藏章疏研究が盛んになると共に新羅章疏に対する関心が少なくなっていったことが明らかとなった。また律宗では12世紀末までは新羅章疏の引用が皆無であることが明らかとなった。しかし、華嚴宗、律宗、及び他の日本各宗でも13世紀から戒律研究及び自宗所依経論章疏の再研究が活発となり、それに伴い新羅章疏に対する再評価が行われたことも明らかとなり、日本各宗の朝鮮仏教認識を明確にするためには、13世紀以降の日本章疏研究が必要であることも明らかとなった。
著者
跡見 順子 清水 美穂 秋光 信佳 廣瀬 昇 跡見 友章 長谷川 克也 藤田 恵理 菊池 吉晃 渡邊 敏行 竹森 重 中村 仁彦 井尻 憲一 吉村 浩太郎 高野 渉 神永 拓 江頭 正人
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

1Gという重力への適応を通して地球上で進化してきた人間は、動くことで重力を活用して身体を賦活化し、健康な状態を維持することができる。新しい健康科学イノベーション"重力健康科学"研究では、生命科学、脳科学、理学療法学、機器開発者が連携し、これまで皆無だった"ホメオスタシス範囲の評価系構築"に向けた研究に取り組んだ。いかに自重支持を行いながら運動し転倒しないようにするか?細胞と身体をつなぐ緊張性収縮のダイナミック制御システムを研究することが鍵でありかつ可能であることを、この萌芽的研究が明らかにした。
著者
橋本 周司 松島 俊明
出版者
早稲田大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1994

過去2年間の研究により、右手による指揮棒の動きおよびデータグローブにより入力される右手の動きによって、音楽演奏を制御するシステムはほぼ完成している。また、発生する音響の音色をジェスチャーのよって実時間で制御する基礎実験を終了している。本年度の主な成果は以下のとおりである。1.これまでに開発した音響制御システムを改良し、基本周波数、振幅、倍音の振幅、スペクトル分布などを任意に実時間で指定できる音響発生システムを作成し、ジェスチャーによりこれを制御するシステムを感性させた。2.FM音源のパラメーターを遺伝的アルゴリズムで最適化する対話型の音色生成システムを作製し、喜び、悲しみ、怒り、嫌悪などを表す音色の音源パラメータの主成分分析を行い、2次元感性空間での関係を調べた。3.画像処理でのジェスチャー解析を行うと共に、新たに加速度センサーを用いた手振りの自動解析を試み、指揮の動作および音楽演奏における感情表現の自動認識についての知見を得た。4.ニューラルネットを用いて、ジェスチャーと音響の対応付けを行い、接続係数によってジェスチャーと音響の感性的な意味での変換関係の定式化を試みた。5.作製したシステムの演奏家および作曲家による評価については、現在予備的な実験を終了し、本格的な実験を計画中である。
著者
冨山 太佳夫 川津 雅江 大石 和欣 梅垣 千尋 吉野 由利 山口 みどり 高橋 和久 川島 昭夫
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

18世紀後半から19世紀前半にかけてのイギリスにおいて、社会の多様化や消費文化の進展、国外への帝国主義的覇権の伸長が起こった結果、イギリス国内にいる女性にとっても公共圏が複層的、複次元的に展開していった。「私/公」の境界線は、ジェンダーによってはもとより、社会階層によっても、また家族構成によっても、まったくそうなる形で形成され、その複層性・多元性の実態を文学および歴史資料の中から精査した。同じ女性であっても状況によって複数の境界線が存在し、意識されていたのであり、さらにはその境界線自体が明瞭なものではなく、曖昧なグレイ・ゾーンであったことである。Mary WollstonecraftやCharlotte Smithのような女性とHannah MoreやJane Austenそれぞれが、一定の範囲内であいまいな「公共圏」を想定し、そこに共存しつつも、消費、政治、宗教、情報、地域といった様々な領域において異なるpublic/privateの境界線を意識し、言説として公表してきた。全体として、家庭イデオロギーが19世紀初頭にかけて支配的になっていくのは明らかであるが、しかしその状況において女性たちは異なる「公/私」の境界線上を往還運動していたのである。
著者
徳見 道夫 冨浦 洋一 田中 省作 宮崎 佳典 小林 雄一郎
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

科学論文の執筆や論文の読解において求められる重要な英語語彙は,分野や組織によって異なるため,分野や部局等の組織別に選定されることが望ましい.本研究は,近年,大学などの主要な研究機関で整備されている機関リポジトリ(自機関の著作物を電子アーカイブし公開するオンラインデータベース)を活用し,大学・部局別の重要語彙リストを効率的に作成する方法を提案した.実際に,九州大学を対象として,提案手法による部局別重要語彙リストを作成し,その有用性を確認した.
著者
古川 裕佳
出版者
都留文科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

日本近代文学において、志賀直哉をはじめとする若い男性作家の作品に、家の女中と性的関係をもったことに苦悩する主人公像が描かれていることに注目し、罪意識と逸脱者意識の混交の果てに超越的な自己を見出そうとするような、共通した機構があることについて考察した。女中と関係してしまう「不良」のような、<家庭>イデオロギーからの逸脱者を描くことが、当時の文学にとって重要な課題であったことを明らかにし、家庭において家族と他人の中間的な存在であった「女中」の表象がどのように変容するのかを、当時の女中をめぐる言説および具体的な小説の表象に即して検討した。家庭にとっての異物であり、悪役とされる「妾」がお家騒動においてどのように機能したかを検討した。
著者
寺西 克倫
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、ホタルイカ生物発光の分子機構の解明を目的に行った。この発光機構に関しては、すでに発光に必要な化学成分は明らかにされていた。しかし、発光にかかわる成分が極めて不安定であるため、発光に関する研究は進んでいなかった。申請者は、この発光にかかわる成分の安定化法を見出し、また、簡便な租精製法を見出し、in vitroで発光反応を再現できるようにした。これにより、この発光反応に関する各種の基礎的データを取得し、その発光の特性を明らかとした。
著者
片山 晶子 寺沢 拓敬
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

この研究は、日本において誰にとってどのような英語力が利益になるのかを、社会学者ピブルデューのいう「資本」の観点から量的質的に探求することを目的でとしておこなわれた。日本版総合的社会調査(JGSS)の2次分析から導き出された日本人英語使用者「男性40代半ば・高学歴・都市在住・有職者」、「女性30代後半・高学歴・無職者」というプロファイルからあてはまる男女6人を録音インタビューし、日本人英語使用者の現実を本人の立場から検討した。データから英語は日本人にとって極めて限定的かつ複雑な交換がなければ資本にはならないと予測され、「国際語としての英語」が事実ではなく言説であるという説を裏付ける結果となった。
著者
山下 樹三裕 谷山 紘太郎 山下 康子
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

ダイオキシン(2、3、7、8-テトラク口口ジベンゾ-p-ジオキシン;TCDD)の摂食、飲水、運動活性に及ぼす影響を、ラットを用いて20週間にわたり検討した。7週齢のWistar系雄性ラットにTCDD1μg/kg/weekを経口投与し、摂食・飲水・運動活性測定装置に入れ、経時的に各パラメーターを測定した。その結果、TCDD投与群の体重増加は対照群に比較して、投与4週後より有意に抑制され、9週以降その差はより顕著であった。また、TCDD投与群は対照群に比べ、概して運動量の増加が認められ、特に16週目以降有意な増加が認められた。しかし、運動量の日内リズムに変化ま認められなかった。なお、摂食および飲水量についてはTCDD投与の影響は認められなかった。これらの結果より、TCDD摂取による体重増加抑制は摂食・飲水行動の抑制によるものではないこと、および成熟ラットにおいてもTCDD摂取により活動性が高まることが示唆された。次に、コミュニケーションボックスを用いて、ラットに精神的ストレスまたは身体的ストレスを負荷し、血液-脳関門の透過性に変動をきたすかどうかを検討した。透過性は静脈内にエバンスブルー色素を投与し、その脳実質内への移行の度合いを脳各部位について測定し、インタクト群と比較した。その結果、大脳皮質においてストレス負荷群で明らかな血液-脳関門の透過性の亢進が認められ、その程度は精神的ストレス負荷群の方がより高かった。また、海馬においてもストレス負荷により透過性亢進の傾向を示した。したがって、ストレス負荷により血液-脳関門の透過性が亢進し、普段では透過しえない物質でも脳内に移行しやすくなることが示唆される。このことより、TCDD投与群に精神的または身体的ストレスを負荷した場合、TCDDの運動活性に及ぼす影響がさらに大きくなる可能性が示唆された。