著者
宇佐美 慧
出版者
日本行動計量学会
雑誌
行動計量学 (ISSN:03855481)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.33-50, 2011 (Released:2011-07-04)
参考文献数
50
被引用文献数
5 4

This study investigated measurement problems of essay test data from various perspectives, controlling length of essays. Two sets of essay test data (A:about early introduction of English education, and B:about differences between the sexes in nurturing) were obtained from 303 high school students. Students were divided into 2 groups:one group (N=155) took essays A and B within 400 and 800 words respectively, and vice versa for another group (N=148). 4 raters evaluated 606 (303×2) essays both holistically and analytically (11 or 12 items). From factor analysis and covariance structure analysis of analytically-evaluated data, it was statistically confirmed that 2 factor (“linguistic ability factor” and “writing ability factor”) model was valid regardless of length of essays and raters. Reliability of evaluation between raters and within raters varied depending on items, and length of essays showed different effects for different items. From the view of internal consistency, the result based on multivariate generalizability theory indicated, regardless of length of essays and evaluation methods, that increasing the number of tests is more effective than adding raters for improving internal consistency. Propensity score analysis, with analytically-evaluated scores as covariates, showed that “beauty of handwriting” and “direction of opinion” might bias holistic scores.
著者
夏目 里恵 阿部 学 菅井 智昭 葉山 文恵 崎村 建司
出版者
新潟大学
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.119, no.12, pp.730-734, 2005-12-10

グルタミン酸興奮毒性は,脳虚血やてんかんなどの急性疾患ばかりでなく,長い過程を経る神経変性疾患による神経細胞死の原因としても注目されている.グルタミン酸受容体チャネルは,興奮毒性発現機序において中心的な役割を果たしていると考えられてきた.とりわけ,高いCaイオンの透過性を持つNMDA型グルタミン酸受容体はその鍵を握る分子として注目されてきた.この受容体の機能特性を決定する4種類のGluRεサブユニットノックアウトマウスを用いて,カイニン酸急性毒性におけるNMDA型受容体の関与を検証した.その結果,GluRε1サブユニットがカイニン酸による興奮毒性発現に最も重要な役割を果たしていることが明らかになった.さらに,小脳顆粒細胞に有意に発現するGluRε3や幼者期に主な発現があるGluRε4にも毒性発現への影響力が有ることから,NMDA型受容体は様々な機序で興奮毒性に関与していることが示唆された.
著者
奥住 秀之
出版者
東京学芸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は,知的障害者の身体バランスの制約のメカニズムを解明し,その支援方法を考案することの一環である.今年度の目的は,知的障害者の測定事態と日常事態におけるバランス能力の差異を,関連する要因に注目しながら検討して,その教育支援原則を考案することであった.検討項目は以下の通りである.まず,測定事態の評価のために,平均台歩きと片足立ちというバランス運動課題を行い,日常事態の評価のために,歩行評価を行った.歩行については,普通歩行に加えて,コップ運び歩行と最速歩行も行い,様々な日常の歩行バリエーションについて吟味した.その結果,以下のことが明らかになった.まず,多くの場合,自閉症者は,もっているバランス運動それ自体は発達的に高い水準にあり,活動の文脈が理解しやすい場面では,そのパフォーマンスをかなり発揮できる.一方,ダウン症者は,そもそもの運動パフォーマンスが低いのであるが,その低さゆえ,安全性や正確性を重視する運動ストラテジーをとるために,さらに運動の力が低いようにみなされてしまう.教育支援法として,自閉症者については,活動の文脈がわかりやすい環境を呈示する.例えば,歩行の目的地や運搬する物体を明示するという支援が有効であった.平均台歩きのように,活動を具体物で補償するという支援も重要であろう.一方,ダウン症者については,なかまや教師がともに活動して,楽しくやりがいのある活動と結びつけて行うこと,次の運動の繋がる声がけなどの支援が有効であることが明らかになった.
著者
山下 淳志郎 堤 史朗 中田 重厚
出版者
明星大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

この研究の目的は1890年代における近代製糸業の展開に伴う岡谷地域社会の構造転換の構造発生的把握である。その為1)岡谷近代製糸業成立・展開の構造的・機能的契機把握の問題、2)岡谷近代製糸業と経営・労務管理の展開、3)製糸労働力市場の再編と地主制共同体規制の三論点に焦点を絞り、国家・地域相互の媒介的規定関係を解明把握せんとした。岡谷近代器械製糸業は、地域レベルの自然的、社会構造的条件によるだけではなく、むしろ早急の近代化を目指す国家レベルにおける殖産興業政策の一環たる官による県営製糸場の設立、指導と民営育成促進の如き誘導勧業に応じ展開するが、国家独占資本蓄積機構整備上設置された国立銀行、その背後の日本銀行等金融関係による淘汰過程を通じて、片倉等大製糸の集中化とこれによる地域社会支配の構造基盤形成が現実化して行くのである。岡谷製糸業の労務管理施策は、その方向づけが農家経済の低生産性に依存する官僚主導案の中に先取り的に示され、その先導のもとで1870年代後半の開明社、80年の友誼社(工女取締り規則)、87年の共同揚返場の設立を経て、1902年の製糸同盟規約(女工登録制度)において整備され、工女労働力の確保は差別的に賞罰規定を含んだ等級賃金制によって果され、この事はまた貧困農家に原料繭の買い叩きを受認ならしめた。かくして製糸業労資関係は低生産の農家経済と封建的なイエ制度を構造的に組み込み、前近代性を性格付けられた。しかしこの前近代性の可能契機を成したのが、原料繭と工女労働力市場の調達を容易ならしめた地主制共同体規制の存在であるが、工女労働力市場の外延化に伴う労働力市場及び企業内支配秩序の機能的使い分けに依拠した地主制共同体規制の再編が、地域社会の全面的支配を完遂させ、岡谷近代器械製糸業の産業資本的発展を可能としたのである。
著者
服部 龍二
出版者
中央大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本年度は、占領期における幣原喜重郎の内外政上の役割を研究した。まず、戦後政治全般における幣原の動向については、首相期を中心としながら、天皇制の擁護や日本国憲法の制定過程について論じた。その主要な成果としては、拙稿「幣原喜重郎と戦後政治」(『人文研紀要』、第55号、2005年10月、1-37頁)において刊行してある。次に、最晩年の衆議院議長時代については、ダレスの訪日に端を発する超党派外交を分析してある。これについては、アメリカのナショナル・アーカイヴスにおける史料調査を踏まえて、拙稿Shidehara Kijuro and the Supra-Party Diplomacy,1950(『中央大学政策文化総合研究所年報』、第8号、2005年6月、171-187頁)として公にした。1920年代の外相期については、主に政策と人脈の形成と展開という視点から研究を行った。その成果については、拙稿「幣原喜重郎の政策と人脈」を『中央大学論集』第27号に投稿してあり、今年中には刊行予定である。そのほか、幣原の外交思想を伝えるものとして、拙稿「幣原喜重郎講演『外交管見』」を執筆した。これについては、『総合政策研究』第13号に投稿してあり、やはり今年中には刊行予定である。これらの集大成として、拙著『幣原喜重郎と20世紀の日本--外交と民主主義』(有斐閣)を今年中に刊行する。なお、一般向けに書き下ろしたものとしては、拙稿「ワシントン会議--海軍軍備制限条約、九国条約への調印」および「幣原喜重郎外相と南京事件--対中政策をめぐる論争」があり、いずれも鳥海靖編『日本近代史の転機』上巻(吉川弘文館、2006年刊行予定)に収録される。
著者
和田 正広 米津 三郎 曹 瑞林 金 鳳徳 李 世成 鄒 煥壬 山下 睦男 市川 信愛 ZUO Han Ran LI Shi Chang CAO Rui Lin JIN Rang De 王 勇 夏 春玉 李 成起 清水 憲一 喜田 昭治郎 和田 正広
出版者
九州国際大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

本研究の目的は、近・現代及び近代以前の海域経済文化圏の交流史を解明すること、並びに北九州市と大連市の今後の発展への基礎的資料と展望を得ようとするものである。日・中両国の大学研究者は、平等・互恵の原則に立ち、ミクロ・マクロな分析方法によって、国際的・学際的(経済学・社会学・歴史学)に共同研究を行なった。両大学の研究協議会は、1991年度は3回(北九州2回、大連1回)、1992年度は3回(北九州1回、大連1回、北京1回)、1993年度は1回(北九州市)、それぞれ行なわれた。又、資料輯集は、初年度と中間年に日中双方で行なわれた。それに関連する成果としては、『日本未現存大連側輯集経済文化断片資料集』及び『東北地方文献聯合目録』(近・現代)の複刻、『門司新報(1883-1945)』の複刻〈継続中〉、『泰益号関門書簡の内容摘録ノート』の作成、蘇崇民『満鉄史』の翻訳(出版中、葦書房)、があげられる。両大学の研究会は、日本側は訪中の際、大連・北京において開催すると同時に、大連側の訪日の際や、国際シンポジウム実行委員会(1993年度、計12回)のなかで、研究スタッフ以外の講師も加えて行なわれた。研究会の一環として開催した国際シンポジウムは、11月25日(木)の専門家会議(北九州国際交流村)と、翌26日(金)の公開国際シンポジウム(北九州国際会議場:学・官・業界より計800余名参加)として行なわれた。前者の報告レジュメは、『東アジア海域と華商ネットワーク』(九州国際大学・国際商学部)として、後者の報告書は、現在編集中である。本年度の個別研究成果は、日本側では大学・研究所の紀要等に発表された。鄒煥壬の報告「歴史上の東アジア海域経済文化圏における中国の日本・朝鮮との経済貿易関係」は、漢・魏から明・清に至る中国朝貢体制下の日本・朝鮮との経済・貿易関係を概観したものである。李世成の報告「東アジア文化圏『四元構造』の形成と展開」は、中国唐時代を中心にみた東アジア文化圏を、儒家・漢字・仏教・芸術の各文化圏の四元構造として把え直したものである。和田正広の報告「福建税監高〓の海外私貿易」は、大航海時代のオランダによる台湾占領直前期における明末の中国沿海密貿易について検証したものである。市川信愛(戴一峰論文の校閲)の報告「近代中日海上貿易史研究および旧税関保存書類の利用について」は、中日海上貿易史研究に価値をもつ旧厦門税関に保存された税関文書の内容と利用方法についての紹介である。曹瑞林の報告「大連を東北アジア地域の商業・貿易・金融・観光・情報等の中心としてその背景、予測及び若干の留意点について」は、東北アジア地域の商業・貿易・金融・観光・情報等のセンター化が進む大連経済の現状と将来予測を概観したものである。山下睦男の報告「中国型求償取引による物資協力について」は、物資と物資の物々交換や、物資と資金・技術・人材などの生産要素間の協力を意味するところの、条件付き取引きであると同時に、見返りの取引きでもある特殊な中国的取引きである「物資協力」の歴史や現状を分析したものである。金鳳徳の報告「東アジアの新時代」は、冷戦体制崩壊後の東北アジア地域(中国・香港・台湾・蒙古・日本・韓国・北朝鮮・ロシア)における経済圏の現状について、それを新「雁行型」の形成過程として把えたものである。市川信愛の報告である「近代中国海域交易圏の変容構造と在日華商」は、当該テーマについての共同研究による個別成果の概括と、残された課題に言及したものである。
著者
中北 英一 田中 賢治 坪木 和久 大石 哲 中川 勝広 鈴木 善晴 大石 哲 坪木 和久 鈴木 賢士 川村 誠治 高橋 劭 田中 賢治 中川 勝弘 市川 温 杉本 聡一郎 鈴木 善晴 出世 ゆかり 大東 忠保 山口 弘誠
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

豪雨災害の軽減を目指して、次世代型偏波レーダーの降水量推定・降水予測への利用を目的に、偏波レーダーとビデオゾンデの同期集中観測を実施し、その結果、降水粒子の粒径と種類の推定手法を構築することに成功した。さらに、モデル予測への応用や現象の理解を深めることで降水量推定・降水予測の高度化を実現した。
著者
森井 俊廣
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

これまで単なる「捨石」として,斜面表面における雨水浸食防止の役割しか与えられてこなかったリップラップ工に対し,オーバートッピング(堤体越流)に対する水理抵抗機能を開発し,その設計法を明らかにすることを目的とした。リップラップを構成する粗粒礫材を対象に,越流条件下における通水性能と水理学的特性を明らかにするとともに,リップラップ工の基盤となる土砂層の透水性の測定法の開発に取り組んだ。2年度にわたる研究により次の成果を得た。ア)室内水路実験により,締固められた捨石(粗粒材)構造体を通過する流れの水頭損失モデルを明らかにした。このモデルの特徴は,流れの非線形水頭損失特性を記述するパラメータを,粗粒材構造体に分布する間隙の水理学的平均径とユニークに結びつけた点である。これにより,土質材料の浸食によって生じる捨石工の目詰まりとそれに伴う流れの変化を適切に予測することが可能となった。イ)また流量の測定値から上記のパラメータを精度よく推定する数理計算システムを開発した。ウ)リップラップ工の安定性は,礫構造体自体はもちろん,基盤となる土砂層部の安定性と密接な関連性を持つ。後者の侵食性は透水性能に支配されることから,礫混じり土砂の透水性能を原位置で精度良く推定できる透水係数モデルならびに試験法について検討した。2年間にわたる研究とその成果を通して,今後検討を加えていく必要があると考えられる課題が明らかとなった。つまり,(1)流水条件下での礫材個々の粒子安定性に関する力学的・水理学的モデルの開発と設計法への導入,ならびに(2)礫構造体を通過する流れと慣性力を伴う構造体の越流を考慮したThrough+Overflowの数理モデルの開発と設計法への導入の2点である。これらについて,今後,鋭意,検討を進めていく予定である。
著者
大月 淳
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

イタリアを対象とし、そこでの(1)民営化の変化に対応する劇場のあり方、(2)個別の劇場と地域の関わり方、(3)劇場間の関係性のあり方、をエミリア・ロマーニャ州を中心に明らかにし、今後の地域における劇場のあり方に関する知見を得た。国を中心とする公共セクターの影響力を強く残す形での民営化(=財団化)の経緯と現状、劇場と地域及び劇場間の関係性を規定するジャンルを軸とした「劇場活動カテゴリー」のあり方は、現在、公共劇場の再構築が課題となりつつあるわが国において参照に値する。
著者
中井 誠一 星 秋夫 寄本 明 新矢 博美 芳田 哲也
出版者
京都女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

わが国の運動時熱中症予防指針は発表以来18年を経るに至り,様々な研究成果が積み上げられ,熱中症予防に関する新たな知見が得られたと考えられる。熱中症発生実態では子どもと高齢者に多いこと,暑熱順化や着衣条件が関係することが発生要因として指摘された。そこで,WBGT28℃以上を厳重注意(激しい運動は中止)とし,暑熱順化不足,子どもと高齢者および全身を覆う着衣の場合については従来の基準1 段階下げるWBGT25℃以上(気温では28℃以上)を厳重注意とすることを提案した。
著者
野平 慎二
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.281-290, 2000-09

この論文は、ハーバーマスのコミュニケーション的行為の理論を手がかりとして、教育の公共性の問題について論じるものである。従来、教育の公共性の問題は、学校と国家との関係の問題として論じられ、国家による公共性の独占と、国家権力による学校教育への干渉を国民の側でいかに防ぐかが大きな論点であった。しかしながら今日では、むしろ国民として一括されてきた人々の多様性が前面に現れ、そのことによって教育の公共性が揺るがされるとい事態が生じている。例えば、さまざまな共同体のアイデンティティーの承認の要求と公教育の中立性をいかに調整するのか、自由主義的な教育における選択拡大の要求と、教育の共同性をいかに調整するのか、といった事態である。ひるがえって、ハーバーマスは、市民的公共圏の理念を現代社会の条件のもとで実現させるべく、コミュニケーション的行為の理論とディスクルス原理を提示している。市民の公論による権力のコントロールという公共圏の理念が教育の分野においていかなる形で実現可能なのかを探ることは、なお問うに値する問題であろう。以下ではまず、ハーバーマスの説く政治的公共圏の可能性について、自由主義および共同体主義との対比を通して考察したい(I)。続いてその政治的公共圏を担うコミュニケーション的主体とその形成について論じる(II)。この作業を通して、教育の公共性とは、共通善や普遍的人権といった、教授可能な実体が備える性格として考えられるべきではなく、私的であると同時に公的であるという主体の両義性をつねに保持してゆくために遂行される議論と実践の過程を停滞させないための一種の仕掛けとして捉えられるべきであることを示したい。
著者
芳田 哲也 中井 誠一 新矢 博美 寄本 明
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

体重計測より測定した成人男女における水分出納の結果について, 季節(環境温度)別に発汗と不感蒸泄による水分損失量(ΣS)と身体活動量(エネルギ消費量)との相関を求めた.この回帰式からに季節別・身体活動レベル別にΣSを算出し, さらに排便・排尿による水分損失量(ΣU)を加えて身体活動レベル毎の水分摂取基準を季節別に示した. また生活現場応用を目的として, 冬季の身体活動レベルが低い(I)時のΣSを基準として, その差分を季節・身体活動レベル別に求めた. その結果, 標準体重を有する普通の活動レベル(II)である日本人では, 冬季の低い活動レベル(I)に比べて夏季では男性1.1kg, 女性0.9kg程度多く水分を摂取する等, 現代日本人(成人男女)における具体的な水分摂取基準を作成・提示できた。
著者
平井 清子 岡 秀夫 鈴木 広子 河野 円 金丸 芙美 飯田 深雪
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

日本の英語教育が海外の言語教育から学べる点をバイリンガリズムの視点で分析した。その結果、言語を介して新しい概念を習得させ、考えていることや理解したことを言語で「話す」、「書く」ことを通して表現させるCALPを養成することが重要であり、思考を伴う言語教育が高いコミュニケーション能力を育成する上で重要であることが示唆された。その方法として、認知的に深い思考を要求し、比較・評価・判断という活動を可能にする、内容重視の教授法(content-based instruction)やイマージョン教育など、学習内容を中心とした学習者主体の授業の有効性が実証された。
著者
井上 裕匡
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

熱中症診断の有効な所見として肺脂肪塞栓の有無が利用できるか否かを昨年度より解剖症例数を増やし検討した結果、肺脂肪塞栓は熱中症の陽性所見よりはむしろ生前の高温暴露を示唆する所見として有用である可能性が示された(現在投稿中)。これまでは熱中症診断は除外診断として行われてきたが、今回の結果より肺脂肪塞栓はこれまで死後の高体温でしか証明なしえなかった生前の高温暴露を示唆する所見として利用可能であり、熱中症診断の上で非常に有用な所見であると考える。一方、これまで肺脂肪塞栓の原因として指摘されていなかった病態においても肺脂肪塞栓が見られており、このことは肺脂肪塞栓が高温暴露以外にも死者の生前の状態を示唆する所見として利用できる可能性を示している。しかし、これらで見られた肺脂肪塞栓は致死的なものではなくいずれにおいても直接死因が肺脂肪塞栓であることは否定的である。肺脂肪塞栓が直接死因となるには実験的には60ml程度の脂肪の流入が必要であり、骨盤骨折など広範囲の骨折を生じるものではそれによって生じた肺脂肪塞栓症が直接死因の可能性もあることを示した。しかし、法医解剖事例では実際は20ml程度でも死亡しうるといわれており、この実験的肺脂肪塞栓との差は肺脂肪塞栓を生じる原因となった損傷や疾病によって引き起こされる炎症反応などの生体反応の状態に影響を受けていると仮説を立て、現在検証中である。
著者
緒方 政則 川崎 貴士 南立 宏一郎
出版者
産業医科大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

暑熱環境によるエンドトキシン(LPS)の感受性変化と致死率について興味深い結果が得られた。実験1.暑熱環境による致死率と体温変化エンドトキシン感受性マウス(C3H/HeN)とエンドトキシン非感受性マウス(C3H/Hej)の2群に分け、人工気象室にて、42℃、湿度50%で2から3時間飼育し、室温(27℃)に戻した。(結果)LPSに反応する遺伝子を有するC3H/HeNマウスとLPSには反応しない遺伝子を持つC3H/HeJマウスに暑熱環境下で熱暴露すると、C3H/HeJマウスが生存率を有意に改善した。この両群のマウスの熱暴露後の両群の直腸温を径時的に測定すると、両群ともに、体温上昇が急で、41℃以上の異常高体温に至ったマウスが死亡していることがわかった。また、41℃以上(異常高体温)と41℃未満(適応群)で熱暴露後の生死についてカイ二乗検定すると、有意に異常高体温が死に関与していることがわかった。これらの結果より、LPS遺伝子も生死に関与するが、異常高体温を引き起こす因子が生死に関与していることが推察された。実験2.暑熱環境によるエンドトキシン(LPS)の感受性変化エンドトキシン感受性マウス(C3H/HeN)を2群に分け、人工気象室にて、42℃、27℃の2群に分け、湿度50%で2時間飼育し、致死量以下および致死量のLPSを投与し、その後3日間、生死を観察した。(結果)42℃で2時間暑熱環境下に曝した後に、エンドトキシン(LPS)を投与すると、熱非暴露群に比べて、エンドトキシンの感受性が高まることがはじめて明らかにした。また、経時的にサイトカインであるIL-6,TNFを測定すると、TNFは両群ともに、有意な差は認めなかったが、IL-6は、熱暴露群の方が有意に高かった。
著者
小作 浩美 内山 将夫 井佐原 均 河野 恭之 木戸出 正継
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.225-233, 2004 (Released:2004-05-07)
参考文献数
15
被引用文献数
3 4

We have been developed a support system to interactively search certain articles of users' interest on the World Wide Web (WWW) without their hesitating over query choices. Especially we have been implementing an effective application system to enable tourists to easily find special event information of their interest and to enjoy their own tours. This system also enables developers of each system to provide them with the means of easily constructing an initial database and automatically updating it. As events are generally held cyclically, we have assumed events or keywords related to the events will appear in each term. If we can extract keywords that appear cyclically in a corpus including date information, we can obtain event keywords easily. The system can extract event information using the event keywords as queries for WWW information retrieval systems, and update the database automatically. In this paper, we introduce our support system with a focus on a concept to extract event keywords and event information through the appearance of keywords periodically. We found our approach effective by some experiments.