著者
狩野 千秋
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.366-392, 1980-03-31

With the development of sedentary agriculture based on the cultivation of maize in the New World, the Feline cult emerged with the new agricultural ceremony. There are many archaeological remains related to the Feline cult, especially in the Andes and Mesoamerica where the cult flourished. The Feline cult reached its peak in the Chavin and Olmec cultures, and succeeding cultures were very much influenced by its religious beliefs and customs until the time the Spaniards arrived on the continent, though the character of the Feline god did change by the addition of some new attributes and by its absorption into the more complicated pantheon system. However, there is reliable evidence, such as the ceramic and bone objects representating the feline found in the Huallaga River basin, in the Central Highlands of Peru, which indicates that the custom of worshipping the feline animal had already begun during the pre-Chavin cultures. During this same pre-Chavin period, and separate from the agricultural ceremony, traces of special funeral rites for the local chiefs, etc., have been found. Magnificent stone tombs were constructed and among the items of offering for funeral use have been found vessels which on one side show a representation of the human face and the other side a face which is Jaguar-human ; the two effigies contrast with each other and are evidently a reflection of some dualistic idea. Such dualistic aspects can also be seen in the representations of' Chavin and Olmec art. The main theme of this paper is to inquire into the meaning and character of this kind of dual concept as it was expressed through the Feline cult. As the best examples to demonstrate this theme, I have chosen and reviewed ceramic wares and stone sculptures from Chavin art and stone effigy axes and masks from Olmec art. Also, I have revised prevailing ethnographic data on the Jaguar animal ancestor mythology, the Jaguar-Shaman transformation story, and the relationship between the Feline cult and shamanism in the New World. Through consideration of both archaeological materials and ethnological data, I have concluded that the dual aspect representation of the Feline cult must correspond to the dual role that would have been played by the chief-shaman priest in ancient times.
著者
熱田 裕司 後藤 英司 武田 直樹 松野 丈夫 佐藤 雅規 猪川 輪哉
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

今年度においてはin vivoにおいて神経根由来の異所性発火を観察できる実験モデルを作成し、以下に述べる2種類の検討を行った。実験にはラットを用い、除脳後に後枝腓腹神経より双極電極にて知覚神経を逆行する神経発火活動を導出記録した。この手法によって、腰部神経根が刺激されることに基づいて発生する異所性発火が評価できることを確認した。(1)実験1:髄核投与による異所性発火の発現ラットの第5、6腰部神経根を露出し、尾椎から摘出した髄核を留置した。その後1、2,4週において腓腹神経から異所性発火にもとづく自発性神経活動を導出し、発火頻度を測定した。無処置対照と比較していずれの時期においても発火頻度は有意に増大しており、2週で最大値をお示した。一方、馬尾刺激により坐骨神経で得られた誘発電位を用いて神経伝導速度を測定すると、その値に低下は見られなかった。これらのことから、髄核は神経根に作用して異所性発火を誘発するが、伝導障害を引き起こすことは無いと考えられた。(2)馬尾圧迫による一酸化窒素感受性変化ラット馬尾レべルにおいてシリコンチューブを脊柱管内に挿入し、1週間経過させた馬尾圧迫モデルを作成した。1週間後の観察において、腓腹神経の活動は有意に増大しており、異所性発火が発現していることが確認された。この動物において神経根に一酸化窒素やセロトニンを作用させると、著名な発火増大が見られた。このような変化は馬尾圧迫の無い動物では少なかった。以上の結果は坐骨神経痛の発生機序を理解する上で重要な、髄核の影響、ならびに物理的圧迫と化学的刺激の相互関係、を明らかとしたと考えられた。
著者
藤原 洋志
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では効用関数の考え方を応用したオンライン最適化問題を考察する。ミクロ経済学では、次元の異なる量を組み合わせて効用関数が定義されている。しかし、アルゴリズムの性能評価尺度としてはほとんど使われてこなかった。我々は、制約条件として扱われていたものを目的関数に取り入れたり、性能評価尺度の期待値を目的関数としたりして問題再設定を行う。結果、一方向通貨交換問題に対しては、どのような効用関数の設定をするかに依存して最適戦略が大きく変わってくることを実証できた。また、オンライン・オフライン混合ジョブスケジューリング問題に対しては実用的かつ頑強なアルゴリズムが得られた。
著者
下村 匠 細山田 得三
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究は、飛来塩分環境下におかれた構造物が受ける環境作用を実験室内において再現する装置を作製することを目的としている。平成19年度より製作に着手した実験装置が、平成20年度に完成し、予定通りの性能を発揮することが確認され、有効な実験を行うことができた。実験装置は、断面1m×1m、一周約10mの風洞の中に、プロペラ、塩水粒子発生装置を組み込んだもので、風洞内に設置したコンクリート供試体に、設定された量の飛来塩分を連続的に作用させることができる。このことにより、実環境下ではさまざまな不確定要因の影響を受けるため精度のよいデータの取得が困難であったコンクリートに到達する飛来塩分量とコンクリート内部へ浸透する塩分量との関係が、理想的な条件下で測定することができる。合理的で実現象をよく表す塩分浸透の境界条件の形式の検討、理想的な飛来塩分環境下におけるコンクリート中の拡散係数など、この装置により明らかになることは多いと期待される。水セメント比が40、50、60%のコンクリート供試体に、本装置により継続的に飛来塩分を作用させ、定期的に供試体内部の塩分量の分布を測定した結果から、ボルツマン変換を用いてコンクリート中の塩分拡散係数を塩分濃度の関数として求めた。塩分濃度が増加するにつれて拡散係数が小さくなる結果が得られた。塩分拡散係数のより的確な表現方法の検討は、本装置を用いた今後の継続研究課題である。また平成20年度には、本装置を用いた応用研究として、飛来塩分にさらされたコンクリート構造物の表面を高圧水で洗浄することにより塩分侵入抑制効果が得られるかどうかを実験的に検討した。洗浄頻度が多いほど、内部への塩分侵入を抑制する効果が認められた。
著者
梅木 定博 後藤智範
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.33, pp.113-118, 2008-03-28
参考文献数
8
被引用文献数
3

日本語のテキストにおいて、主要な概念・テーマは漢字熟語または漢字熟語を含む名詞句に表現されることが多い。特に数文字以上の漢字熟語は、より短い漢字熟語、すなわち語基(word base)から構成され、統語的、意味的構造を有している。大規模な漢字熟語集合について、これらの構造を分析することは漢字熟語の造語構造、形態素解析、関連語の選定、未知語の推定など様々な自然言語解析に有用な基礎データを提供するものと考えられる。本研究は、一般辞書および専門用語辞書の見出し語から7文字の漢字熟語を対象に、構成語基の観点から品詞列パターンおよび構成語基の係り受けパターンについて調査・分析した。Kanji compound words or noun phrase consisted in them intend to explain key concepts or themes in Japanese texts.. Especially long kanji compound words have these characteristics in academic papers or patent documents. Long kanji compound word, which has five letters more consists of short word bases and have syntactically and semantically structures. It should be much beneficial to study to a large set of long kanji words based on word base sequence patterns.Our research examines the patterns of the large set of kanji compound words with seven letters which are contained in entry terms of the various kinds of dictionaries. This paper reports the occurrences of kanji compound words and the number of parts of speech sequence per a word base sequence pattern.
著者
松田 忠典
出版者
豊田工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究の成果は、大きく分けて二つある。一つが、構造化特異値の計算法に関する成果、もう一つがロバスト安定な行列システム設計に関する成果である。2009年度は、これらの研究成果を大阪市で行われた国内学会「第38回制御理論シンポジウム」と米国で行われた国際会議「The Twelfth IASTED International Conference on Intelligent Systems and Control」で発表した。2010年度は、台湾・台北市で行われた国際会議「SICE2010 Annual Conference」、台湾・台中市の国立中興大学で行われたワークショップ「Workshop on Recent Advances in Control and Robotics」、そして大阪市で行われた国内学会「第39回制御理論シンポジウム」で成果発表を行った。さらに、構造化特異値の計算法に関する成果についての査読付き学術論文が2010年12月に「システム制御情報学会論文誌」に掲載された。
著者
寺崎 文生 藤岡 重和 河村 慧四郎
出版者
大阪医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

1.研究成果:末期的拡大不全心に対する治療として左室部分切除術が開始された。心臓移植の機会の少ない我が国の現状に於いて本手術に対する期待は大きい。現在の課題は手術適応基準と予後の検討である。本研究では左室部分切除術を施行された拡張型心筋症患者の切除心筋標本を用いて、心筋 in situ での免疫組織細胞化学的、ウイルス学的解析を行った。その結果、一部の拡張型心筋症の心筋において活動性炎症とエンテロウイルス(EV)持続感染が認められ、慢性心筋炎が一部の拡張型心筋症の病因・病態に関与することが明らかにされた。また、サイクルシークエンス法によるEVゲノムの核酸塩基配列の決定により、殆どがコクサッキーB群ウイルスであることが明らかになった。さらに、拡張型心筋症における炎症やEVゲノムの存在は、左室部分切除術に際して術後早期予後不良の因子になる可能性が示唆された。2.今後の展望:我々は拡張型心筋症患者の切除心筋を多数保有している。これを用いてin situ hybridizationによりEVゲノムの心筋内での局在を検討することで、ウイルスによる心筋細胞障害機序を明らかにできる。また現在、左室部分切除術をうけた患者数が増加し、術後の長期成績を明らかにする時期にある。切除心筋の免疫組織化学的、分子生物学的検索を継続し、それらと術後長期予後や臨床諸検査指標とを比較検討することで、左室部分切除術の適応決定に価値ある情報を提供することが期待される。
著者
天野 晃 松田 哲也 水田 忍
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では,臓器としての生物学的知見が豊富な心臓を対象として,近年急速に解明が進み実現されるようになった,タンパク分子機能に基づく精密な細胞モデルを元に,心筋細胞の配列,組織の微小循環,冠動脈血流,心筋組織の力学的特性に基づいた心臓の3次元拍動モデルの実現を目指した.まず,左心室3次元拍動モデルの編集ツールを実現し,シミュレーションアルゴリズムとして,心筋細胞のタンパク分子機能に基づいたモデルが生成する収縮力と,材料特性に基づく3次元形状の変形を精密に計算する連成シミュレーションアルゴリズムを提案した.次に,心臓拍動モデルの形式的記述と,実験プロトコルの形式的記述言語としてPSPMLを設計した.さらに,日々蓄積される生物学的知見を容易に導入し,有効性等を評価するシステムとして,形式的に記述された心筋細胞モデルを非専門家が安全に編集可能で,さらに実験プロトコルの修正も可能な編集システムを実現した.また,心臓拍動の精密な再現に不可欠な血管系のモデルとの連成計算を行うシステムを実現した.このシステムにより,様々な細胞モデル,左心室モデル,血管系を用いたシミュレーションにおいても,自由に組み合わせを変更して循環動態シミュレーションが可能となった.最後に,これらのシステムを用いて,左心室構造力学モデルにおける応力評価を行った.心臓は拍動に伴う能力や効率を最大化するため,収縮末期における応力分布が均等化するように細胞配列が最適化されているという仮説があるが,実際の心臓で心壁内部の応力が評価できないため,仮説の検証にはシミュレーションモデルが利用されるようになってきている.構築したシステムを用いて,収縮末期における心壁の応力分布を評価した.この結果,従来の報告で評価が困難であった心尖部において,明瞭な応力集中を確認できた.これは,バチスタ手術等の外科手術において,経験的に重要性が認識されている心尖部の重要性を示唆する結果であると考えることができる.
著者
黒澤 馨
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

放送型暗号系においては、センタは加入者に復号鍵を配布する。しかし、不正な加入者はそれらから海賊版の復号器を生成し、非加入者に与えてしまうかもsれない。n人の加入者のうち高々k人が結託して海賊版の復号器を作ったとしても、その海賊版の復号器から犯人を割出せる方式を(k,n)閾値追跡可能暗号系と呼ぶ。筆者は、Eurocrypt'98という国際会議において、鍵サイズ、暗号文サイズの下限を導出すると共に、これらの下限を等号で満たす最適な方式を提案した。この方式に対し、Stinson and Weiは、SAC'98という国際会議において線形攻撃と呼ばれる攻撃法を示した。本研究では、まず、筆者のEurocrypt'98の方式に対し、新しい犯人追跡アルゴリズムを開発し、このようにすればStinson and Weiの攻撃のみならず、全ての攻撃に対し安全であることを示した。一方、ペイテレビ等においてセンタは、N人の契約者の内、受信料未納のc人の契約者には見えない様に、コンテンツを暗号化して放送したい。この様に、N人中c人以下のユーザを排除できる放送型暗号系を、(c,N)閾値排除可能暗号系と呼ぶ。本研究では、次に、cover free familyという組合せデザインを使うと、(c,N)閾値排除可能暗号系が得られることを示した。また、almost strongly universal hash関数を利用したoverhead=O(c^2)となる(c,N)閾値排除可能暗号系の構成法を示した。最後に、本構成法により得られる(c,N)閾値排除可能暗号系は、追跡可能暗号系としても優れていることを示した。
著者
中窪 裕也 野田 進 中内 哲 柳澤 武 矢野 昌浩 丸谷 浩介 吾郷 眞一 井原 辰雄
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、わが国の雇用保険制度の現状と課題を考えるための素材として、失業保険制度の国際比較を行ったものである。対象国として、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、中国の5か国を取り上げている。本研究において行った活動は、次の4点である。第1に、基礎的な作業として、わが国の雇用保険制度の内容を精査したことである。この間、雇用保険法の2007年改正も行われたが、それを含むいくつかの事項について、論考を発表した。第2は、本研究の本体にあたる、5か国の失業保険制度の研究である。各国について、書籍やインターネットで入手できる資料をもとに基本調査を行ったうえで、担当者が現地を訪問し、ヒアリング調査と資料収集を行った。その内容は、研究成果報告書の中に収められている。各国ごとに制度の様相はさまざまであるが、欧州諸国における早期再就職の促進に向けての失業認定や給付の再編、アメリカにおける州法の多彩な内容、中国における制度創設と定着の努力などが分析されている。第3は、関連事項として、日本および各国の最低賃金制度についても検討を行ったことである。両制度は、労働者にとって就労時の所得保障と失業時の所得保障という形で連続するものであるが、各国における最低賃金制度の概要を、上記の研究成果報告書の中に織り込んだ。第4は、以上を踏まえたうえで、わが国の雇用保険制度(および最低賃金制度)について、体系的な現状分析と将来の方向性の検討を行ったことである。これに関しては、日本労働法学会の114回大会のシンポジウムで報告する機会が与えられ、「労働法におけるセーフティネットの再構築-最低賃金と雇用保険を中心として」というタイトルの下に、6名が報告を行った。このときの報告内容とシンポジウムでの討論の模様は、日本労働法学会誌111号(2008年)に収められており、本研究の一部をなす。
著者
鬼木 甫
出版者
大阪学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、「既得権(vested interest)問題」を経済理論の立場から分析し、これを合理的に解決・処理するための経済システムを設計・提案することである。本研究ではまず、理論的基盤となるべき「既得権の経済モデル」を構築する。次いで具体的な分析対象として、多数種類の既得権のうち(1)電波利用、(2)土地所有と利用、(3)職位保持の3ケースそれぞれについて分析とシステム設計を行うこととした。前年度においては、上記のうち(1)電波利用にかかる既得権について研究成果を発表し、さらに(2)土地利用と所有にかかる既得権について文献調査をおこない、(3)労働者についての「職位保持」に関する制度の概要を調査した。これに引き続き、本年度においては、(4)電波利用に関する研究成果をさらに2件発表し(本様式p.2の#207、#210)、(2)土地所有に関する既得権について日本経済学会で招待講演をおこない(同上#210)、さらに(3)テレビ電波利用の既得権に関連して「アナログテレビ停止」についての研究を発表した(同上#211)。
著者
長沢 伸也 石塚 隆男
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.50, pp.67-68, 1995-03-15

今日、情報技術はデジタル化が可能な多くのメディアを創出しつつある。いわゆるマルチメディアにより、従来のメディア上の情報をコンピュータにより統合的に扱うことが可能となり、日常生活においてもお仕着せの受け身的な情報利用からメディアを超えて主体的、能動的に必要な情報を編集し、活用できる能力が必要となってきている。さて、文字放送は国際的にはテレテキストと呼ばれ、わが国ではニューメディアのひとつとして1985年にハイブリッド伝送方式による文字放送が開始された。文字放送は文字や図形で構成されるカラー静止画像情報を通常のテレビ信号に多重伝送することにより、受信側で復号してテレビ受像器に表示する放送システムである。文字放送は、ヒデオテックスやパソコン通信のように双方向性はないが、テレビ受信料以外には通信料が不要であるという大きなメリットがある。さらに、パソコン用文字放送受信デコーダー・ボードが発売されており、デジタル情報として記録・利用が可能になったことから、マルチメディアのひとつとして利用が拡大していくことが期待できる。亜細亜大学経営学部では、文字放送情報を活用した情報教育を試行的に開始し、特に情報検索教育について有効性を確認したので報告する。
著者
鈴木 秀美 山田 健太 砂川 浩慶 曽我部 真裕 西土 彰一郎 稲葉 一将 丸山 敦裕 杉原 周治 山本 博史 本橋 春紀 岩崎 貞明 笹田 佳宏
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

日本の放送法は, 放送事業者の自律を前提としているため, 放送事業者が政治的に偏った番組や虚偽の事実を放送して番組内容規制(番組編集準則)に違反しても, 放送法には制裁がなく, 電波法による無線局の運用停止や免許取消は強い規制であるためこれまでに適用されたことがない。結果として, 違反があると, 行政指導として, 実質的には行政処分である改善命令に近い措置がとられているが, このような手法には表現の自由の観点からみて重大な問題があることが明らかになった。日本では現在, 通信・放送の融合に対応するため通信・放送法制の総合的な見直しが行われている。本研究は, 現行法制が内包している憲法上の問題を新しい法制に積み残さないために, 問題点を整理・分析したうえで, ありうる改善策を提示した。
著者
生塩 正義
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.95-"98-2", 1976

西南日本に分布することが確認されたトリハダゴケ属地衣2種, Pertusaria haematommoides ZAHLBR. と P. nagasakensis NYL. について報告した。どちらも, 1点の資料にもとづく原報告があるのみで, これまでその実態が不明確であった種である。Pertusaria haematommoidel ZAHLBR. は, 1933年に A. ZAHLBRUCKNER が朝比奈博士採集の台湾蓮花池 (Lienhuach) 産の資料に基づいて記載した種である。今回, 本種が日本(沖縄本島, 徳之島, 種ケ島)に分布していることが確認された。いずれも樹皮に着生していた。低く小さいレカノラ型の子器を多産する灰白色の明るい地衣体と未知の地衣成分(C+赤色)を含むことから, P.velata (TURN.) NYL. や P. philippina VAIN. と混同されやすい種であるが, 1胞子性の P. velata とは, 皮層を失った薄い托線を有する小さい子器とより小さい長楕円形の2重膜胞子(40-60×125-200μ)によって, また, P. philippina とは, 後者が2胞子性の種であることによって区別される。Pertusaria nagasakensis VAIN. は, E.ALMQUIST の採集品に基づいて W.NYLANDER が記載した種である。顆粒を散在する灰色の粗雑な地衣体, 数個の子器を容れる大きく不整な瘤状隆起(径5mm, 高さ3mmにも達する)とその上部のくぼみに数個開く点状の暗い子器孔, そして子のう内に一列に並ぶ有筋紋2重膜の8胞子 (35-45×70-110μ) が本種の特徴である。加えて, K, C, KCおよび PD による呈色反応がすべて陰性であること, そしてまた, リケキサントンを含むことによって, 日本産の他のトリハダゴケ属地衣と区別される。
著者
文 光喜 四分一 平内 柏谷 博之
出版者
国立科学博物館
雑誌
Bulletin of the National Science Museum. Series B, Botany (ISSN:03852431)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.113-119, 2002-12

Eight species of the genus Pertusaria in the family Pertusariaceae are reported from the Cheju Island in Korea. Among them four species are newly recorded for the Korean lichen flora. P. coreana Rasanen is reduced to a synonym of P. astomoides Nyl. The presence of pseudocyphellae is reported in P. laeviganda and P. sublaevigand. An artificial key for all species of the genus known to occur in Korea is provided.