著者
佐賀 一郎
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.53-62, 2009-07-31 (Released:2017-06-29)
参考文献数
31

明治初期に登場した近代的新聞は,1869(明治2)年から1870(明治3)年にかけてに上海美華書館からもたらされた活版印刷技術の技術的発達を牽引した。本稿では,近代的日刊新聞としてはじめて鉛活字を全面的に使用した『東京日日新聞』(1872〔明治5〕年2月21日創刊)を対象にその内容と意義を検討する。『東京日日新聞』の創業者らは,近代的新聞の発行の条件のひとつに活版印刷を数え,上海美華書館から輸入した五号相当の鉛活字を使用したが,必要字種の不足,活字の形状の問題等によって,ごく短期間で頓挫した。本稿では同紙の印刷面を確認し,その内容と,この経験が後にどのような影響を与えたのかを検討する。上海美華書館の印刷技師からもたらされた外来技術である活版印刷技術は,特に草創期においては,これをいかにして実地に利用するかが問題とされていた。短期間に終わったとはいえ,『東京日日新聞』において行われた鉛活字の使用は,競合紙と同様の自家印刷環境の整備を促しただけでなく,後に多くの新聞が追随して使用した五号活字を基準とした紙面体裁の整備を促した。
著者
富岡 克寛
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3-4, pp.71-72, 1971-12-31 (Released:2017-08-10)

アオスジアゲハ(Graphium sarpedon nipponum FRUHSTORFER)の越冬蛹は,幼虫期の短日条件が主な要因で生じる休眠蛹であることを,すでに報告した.この時の短日飼育による休眠蛹は,野外において秋に形成されるものとは異なる時期のものがあった.これらの休眠蛹が翌年の春までに羽化する時期を観察して,野外における経過と合わせて考察を行なったので報告する.
著者
乾 陽子
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.413-419, 2016 (Released:2016-08-24)
参考文献数
35

ランビルの森に優占するフタバガキ科の林冠木の樹冠には、シダやランなどの着生植物が多く見られる。こうした着生植物が提供する微小生息場は、主として樹上性のアリ類が占有している。特に、着生のシダ(ウラボシ科)2種は、明瞭なドマティア(空隙構造)を有し、そこに著しく攻撃性の高いシリアゲアリが排他的に営巣する。このアリ種により、他の樹上性のアリ類やシロアリ類が少なくなるだけでなく、シダや林冠木の食害も低く抑えられていることがわかった。極めて多様性の高い樹冠において、シリアゲアリと着生シダのコンビネーションは多様な他種を排除し画一化を促進しているようにも見えるが、着生シダのドマティアには、この強力なアリの攻撃をかわし好適な微小生息場を得る好蟻性の節足動物が複数生息していた。そのなかで極めて豊富だったのが新属新種のゴキブリである。特筆すべきはこのゴキブリ種が自身の化学的プロフィールをアリコロニーに蔓延させ、多くの好蟻性昆虫に知られる化学擬態とは異なる方法でアリ巣に潜入していたことである。シリアゲアリ種は、着生シダさえあれば樹冠に君臨し高い排他性を示す一方で、化学的セキュリティーを致命的に欠くように見える。一方、同じ調査地に分布する亜高木のオオバギ属(トウダイグサ科)アリ植物にも植物を防衛するアリの攻撃をかわし、特定のオオバギ種を専食するムラサキシジミ類(シジミチョウ科)の幼虫が知られている。このムラサキシジミ類もまた、よく知られた好蟻性昆虫の化学擬態とはまったく異なる特徴的な化学的戦略をもつと示唆される化学プロフィールを示した。熱帯雨林地域にのみ進化したアリ植物の共生系は、単に防衛アリと植物の相利的関係としても種間関係の強度が多様であることがこの十数年で明らかになったが、さらにその共生系に便乗する好蟻性昆虫も非常に多様であり、そのなかにはこれまで知られていなかった種間関係やその化学的な維持機構が潜んでいる。
著者
KAWASE Hiroaki SASAI Takahiro YAMAZAKI Takeshi ITO Rui DAIRAKU Koji SUGIMOTO Shiori SASAKI Hidetaka MURATA Akihiko NOSAKA Masaya
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
pp.2018-022, (Released:2018-01-30)
被引用文献数
27

Geographical distributions of heavy snowfall, especially in the Pacific Ocean side of Japan, have not been elucidated due to low occurrence frequency of heavy snowfall and limited number of snow observation points. This study investigates the characteristics of synoptic conditions for heavy daily snowfall from western to northeastern Japan in the present climate, analyzing high-resolution regional climate ensemble experiments with 5-km grid spacing. The Japanese 55-year Reanalysis (JRA-55) and the 10-ensemble members of the database for Policy Decision making for Future climate change (d4PDF) historical experiments are applied to the lateral boundary conditions of the regional climate model. Dynamical downscaling using d4PDF (d4PDF-DS) enables us to evaluate much heavier snowfall events than those simulated by dynamical downscaling using JRA-55 (JRA55-DS). Over the Sea of Japan side, heavy snowfall occurs due to cold air outbreaks, while over the Pacific Ocean side, heavy snowfall is brought by extratropical cyclones passing along the Pacific Ocean coast. A comparison between JRA55-DS and d4PDF-DS indicates that heavier snowfall can occur due to more developed extratropical cyclones and enhanced cold air damming in the Tokyo metropolitan area. The geographical distributions of extremely heavy snowfall are different between two typical synoptic conditions, i.e., cold air outbreaks and extratropical cyclones. The difference is much clearer in the extremely heavy snowfall events than in all snowfall events. Heavy daily snowfall occurs in January and February on the Pacific Ocean side, in December and January on the Sea of Japan side, and in November and March in high mountainous areas. Saturated water vapor pressure is largest around 0 ℃ under the snowing conditions. Synoptic conditions from late fall to winter are closely related to preferable conditions for heavy snowfall over the mountainous areas where the surface air temperature is much less than 0 ℃ in the heavy snowfall events.
著者
西田 菜津美 鮫島 由香 田畑 麻里子 松井 徳光
出版者
日本きのこ学会
雑誌
日本きのこ学会誌 (ISSN:13487388)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.80-84, 2015-07-31 (Released:2018-03-15)

一般的に,ヨーグルトの物性及び風味は凍結保存を行うことで変化する.しかしながら,ヨーグルトにきのこ麹を加えることで,ヨーグルトの物性や風味,乳酸菌の生菌数は維持された.
著者
Dominique N. Price Nitesh K. Kunda Pavan Muttil
出版者
Hosokawa Powder Technology Foundation
雑誌
KONA Powder and Particle Journal (ISSN:02884534)
巻号頁・発行日
pp.2019008, (Released:2018-03-31)
参考文献数
95
被引用文献数
27

Significant progress has been made over the last half-century in delivering therapeutics by the pulmonary route. Inhaled therapeutics are administered to humans using metered-dose inhalers, nebulizers, or dry powder inhalers, and each device requires a different formulation strategy for the therapeutic to be successfully delivered into the lung. In recent years, there has been a shift to the use of dry powder inhalers due to advantages in the consistency of the dose delivered, ease of administration, and formulation stability. Numerous preclinical studies, involving small and large animals, have evaluated dry powder drugs, vaccines, and immunotherapeutics delivered by the pulmonary route. These studies used different dry powder delivery devices including nose-only, whole-body, and intratracheal administration systems, each of which works with different aerosolization mechanisms. Unfortunately, these delivery platforms usually lead to variable powder deposition in the respiratory tract of animals. In this review, we will discuss obstacles and variables that affect successful pulmonary delivery and uniform powder deposition in the respiratory tract, such as the type of delivery device, dry powder formulation, and the animal model used. We will conclude by outlining factors that enhance the reproducible deposition of dry powders in the respiratory tract of preclinical animal models and identifying knowledge and technology gaps within the field. We will also outline the important factors necessary for successful translation of studies performed in preclinical models to humans.
著者
脇本 由佳
出版者
日本西洋古典学会
雑誌
西洋古典学研究 (ISSN:04479114)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.28-39, 1997-03-10 (Released:2017-05-23)

『イーリアス』においてアイネイアースは,トロイア方でヘクトールに次ぐ重要な英雄として扱われている.しかし,『イーリアス』の中でのアイネイアースの活躍は,意外なまでに少ない.本稿では,この矛盾を解決しうる一つの仮説を提示するべく,『イーリアス』におけるアイネイアースの描かれようを観察し,そこから,ホメーロス以前のトロイア伝承で,主にアイネイアースがどのような位置づけをなされていたかを探る試みを行う.
著者
小森 政嗣 山本 靖典 長岡 千賀
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.64-69, 2006-04-15 (Released:2010-03-15)
参考文献数
15
被引用文献数
1

音声情報を短時間で呈示するために音声を高速で再生すると, 同時に談話理解が難しくなる. 本研究では, 音声中のポーズ長に操作を行うことで, 聴取者の談話理解を促進し, より高速での録音音声の呈示を可能にする手法を提案する. 音声中のポーズ長の変動は談話構造の手がかりとなっていることから, ポーズ長の違いを明確にすることで談話理解を促進することができると考えられた. そこで, ポーズ長の変動を明確化する二つの手法の有効性を話速判断課題により検討した. 実験1では, ポーズ長を全体的に延長することで, より弁別能の高い時間範囲にポーズ長分布をシフトさせる手法を検討した. しかし音声再生時間を短縮する上で有効とは言えなかった. 実験2では, ポーズ長の変動を誇張する手法を検討した. この手法は聴取者が音声内容を理解できる話速を向上し, かつ, 音声をより短時間で呈示できることが結果から示された.
著者
香川 尚徳
出版者
Ecology and Civil Engineering Society
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.141-151, 1999-11-19 (Released:2010-03-03)
参考文献数
72
被引用文献数
7 5

本総説では,はじめに,過去20年間に提唱された河川生態系に関する三つの重要な概念すなわち,河川連続体,不連続結合,栄養素らせんの各概念と,それらの概念によるダムの取り扱い方とを概観した.次に,これらの概念に基づき,ダムを河川連続体に対する不連続発生の場とみなす立場で,ダムによる河川水質の変化,すなわち,不連続発生の実状を,ダム下流の河川生態系に及ぼす影響を考慮しつつ,水温,粒子状物質,クロロフィルa,栄養素,嫌気的水質環境の5項目について検討した.最後に,不連続軽減対策について,ダム湖水の滞留時間を短くして河川的性質を保つことは必ずしも出来ることではないので,下流の生態系に重大な影響を与える水質変化を中心に不連続発生を軽減することが現実的であると考察した.特に,自然に備わった水の動きや物質を利用することが望ましいとの観点に立って,富栄養化対策における二つの方法,密度流と選択取水の統合的利用と分解中の麦藁や落葉落枝が示す藻類増殖阻止作用の利用とを今後の検討課題にあげた.
著者
佐々木 亮
出版者
特定非営利活動法人 日本評価学会
雑誌
日本評価研究 (ISSN:13466151)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1_63-1_73, 2010 (Released:2014-05-21)
参考文献数
42

貧困アクションラボがリードする「エビデンスに基づく開発援助評価」には、少なくとも3つの起源がある。それらは、ランダム化実験デザインの是非を議論してきた評価研究の系譜、独自の発展を遂げてきた開発援助評価の系譜、そして新しく当該分野をリードし始めた経済学の系譜である。それぞれの歴史的背景および現状を論じたうえで、ランダム化実験デザインの優位性と制約に関するスクリヴェンとバナージェの考え方の比較を行う。結論は、開発援助評価において、独占的というわけにはいかないが、ランダム化実験デザインが利用できるし利用すべき余地が確かに存在すると言うことである。そしてランダム化実験デザインを適用することにより、すべてというわけにはいかないが「機能する援助」が確かに存在することが証明されてきており、今後は、効果が証明された援助活動に対してより多くの資源を投入していくことが求められていくであろう。
著者
齋藤 彰
出版者
農業食料工学会
雑誌
農業機械学会誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.11-15, 2013-01-01 (Released:2014-12-03)
参考文献数
9
著者
加藤 榮一
出版者
The Iron and Steel Institute of Japan
雑誌
鉄と鋼 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.764-775, 1988-05-01 (Released:2009-05-29)
参考文献数
30
被引用文献数
2 3
著者
古関 喜之
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.261-279, 2017 (Released:2017-12-16)
参考文献数
20

バナナの生産・流通・消費においてグローバル化が進んでおり,多国籍アグリビジネスは重要な役割を演じている.しかし,日本と台湾との間には,植民地時代を背景として,独特な生産と流通の仕組みが維持され,日本市場は台湾バナナにとって依然として重要な存在である.日本市場がグローバル化の影響を受けて多様化する中で,台湾はバナナの生産と輸出において大きな変化を迫られている.本稿では,輸出自由化後の日本向けバナナ産業の特徴について検討した.輸出自由化後,台湾では,国内価格の影響を受けて輸出価格が決定されるようになった.日本では,台湾バナナの品質が向上し,流通過程の統合の動きがみられた.しかし,依然,伝統的な流通が残っており,川下主導で価格決定される日本側との差異が浮き彫りになった.製糖会社の土地による輸出用バナナ栽培では,借地面積に上限があり,生産者を保護しながら輸出強化を図るという新たな局面を迎えている.
著者
安藤 和代
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.65-85, 2015 (Released:2016-02-29)
参考文献数
83

近年、企業はターゲット層に向けて大量のサンプル配布や試用イベントを行ったり、記者発表会と並行してアルファ・ブロガー向け商品説明会を開催したりしている。商品を提供することで消費者の認知や商品理解を高めることに加え、対面あるいはソーシャルメディアを用いて使用後の感想が広まることを期待してのことである。クチコミマーケティングを実践する企業の関心は、潜在顧客である情報受信者の態度や行動に対してプラス影響を及ぼすことにある。したがって、クチコミ研究の多くは受信者に及ぶ影響に焦点をあてたもので、発信者におよぶ影響には注意が払われてこなかった。そこで本研究では、クチコミマーケティングで目指されるポジティブなクチコミを語る行為が、発信者の評価や行動や記憶に与える影響を明らかにすることを目的とする。口述・記述することで理解(センス・メイキング)が進み、既存の知識や経験で解釈が可能になると、対象の新奇性や驚きが薄れ、発信者の対象に対する評価やクチコミ意向は時間の経過の中で低下する(仮説 1・2)。またクチコミの骨格に沿った情報が限定的に処理されるため、記憶される内容は正確だが限定的である(仮説 3・4)といった仮説を設定し、実験データを用いて検証したところ、仮説は支持された。顧客維持の観点から、発信者に及ぶ影響を考慮したマーケティング計画の策定が重要であることが示された。