著者
副島 美由紀
出版者
小樽商科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

ヴァイマール文化を準備した揺藍ともなったドイツ19世糸昧における生活改革運動に関する研究は、まずドイツ産業革命以降に始まった社会改革運動の様々な形態を把握することから始まった。つまり、住宅改革、土地改革、田園都市運動、菜食主義運動、禁酒運動、裸体運動、芸術教育運動など個別の改革運動の性質や背景、また各運動間の関連等についてまず概括を行い、その後「あらゆる生活改善思想が結実する場」と言われた田園都市運動に特に着目してその歴史に関する研究を行った。その結果として明らかになったのは、住宅改革の一種である田園都市構想はそもそもヨーロッパにおいて長い歴史を持つユートピア構想の一形態であり、イギリス、フランス、イタリアなど個々の国にはそれぞれのユートピア的社会改革構想の系譜が存在するという事実である。ドイツにおけるその系譜は、宗教的ユートピアや労働者コロニーの建設、またアフリカ植民コロニー構想等を経由しながら緑の党などの革新的政治運動にまで連なっている。13年度までの研究成果発表においては、それらユートピア構想の背景を概説しながらドイツ最初の田園都市であると同時に芸術家コロニーでもあったヘレラウ建設の歴史までをたどり、紹介することができた。これらの実績を踏まえ、今後はさらにヘレラウ以外の田園都市構想や芸術家コロニー運動を始め、その他の文化現象と生活改革運動との関連について研究を続け、成果を発表していくつもりである。
著者
米田 翼
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2015-04-24

(1)自然的システム論とその生物学的背景:①ル・ダンテクの老化理論への反論を通して練り上げられるシステムの「構成」に関する理論、②ジェニングスの微生物の行動学を参照しつつ、『物質と記憶』の感覚運動システムと『創造的進化』の自然的システムを接続することで提示される、システムの「行動」に関する理論、これらからベルクソンの自然的システム論=生物個体論を再構成した。本研究の意義は、これまで不明瞭であった生物個体という存在者に関するベルクソンの理論を理解するためのモデルを提示したことである。(2)シモンドンとの比較研究:①ベルクソンとシモンドンは、個体化を連続的進展として記述するためにヴァイスマン遺伝に依拠しつつも、前者は個体に内在する遺伝的エネルギーに関する自説を通して、後者はフレンチ・ネオ・ラマルキズムの群体論に由来する個体-環境の理論を通して、これに修正を加える。②これに相関して、刺激-反応連合のデカップリングを、前者は刺激=入力と反応=出力との間の「遅延」の効果として説明し、後者は個体-環境のトポロジカルな関係の変容として説明する。本研究の意義は、シモンドンとのこうした相違点を明らかにすることで、ベルクソンの個体化論の内在主義的性格と、その射程および限界を明らかにしたことである。(3)創発主義との関係:先行研究ではモーガンの哲学・心理学のうちにベルクソン主義的側面が看取されてきたが、①モーガンこそがベルクソンの心の哲学(特に表象の理論)の最大の批判者であること、②アレクサンダーの時空の形而上学の鍵となる「継起」や「神性」概念の練り上げにベルクソンからの本質的影響が見られることを明らかにした。本研究の意義は、これまで不透明であった20世紀初頭の英仏の哲学の交流の一端を明らかにしたこと、また、アレクサンダーを介してベルクソンを創発主義的に再読しうる可能性を示したことである。
著者
堀江 俊治
出版者
城西国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

申請者は「炎症性腸疾患モデル動物の結腸粘膜における知覚過敏性には、熱感を感受するTRPV1チャネル発現神経線維の数の増大が関与している」ことを明らかにした。当該研究では、機能性消化管疾患である過敏性腸症候群および非びらん性胃食道逆流症のモデル動物を作製し、その消化管組織において、TRPV1チャネルおよびTRPM8チャネル発現神経の数が増加しているか、その増加に関連して知覚過敏反応が亢進しているかどうかを明らかにしていく。さらに、その知覚過敏にマスト細胞や好酸球の関与を検討する。この研究成果によって、微細炎症を抑える薬物は機能性消化管疾患の知覚過敏を改善するという新たな治療法を提案できる。
著者
岡邊 健 平井 秀幸 西本 佳代 竹中 祐二 相良 翔 藤間 公太 都島 梨紗 山口 毅 相澤 育郎 宇田川 淑恵
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、非行からの離脱の具体的態様(離脱を促したり困難にしたりする諸要因)を明らかにすることを主目的とする。第一に、批判的犯罪学と呼ばれる研究群の知見に基づいて、離脱をめぐる諸課題について、理論的・規範的な検討を行う。第二に、非行からの離脱プロセスの態様を探るために、少年院出院者、元非行少年に対する就労支援に関わる当事者へのインタビュー調査を行う。第三に、非行からの離脱における規範(望ましい離脱のあり方)の形成・発展過程を明らかにするために、新聞・雑誌記事の内容分析を行う。
著者
渡辺 努 青木 浩介 梶井 厚志 宇井 貴志 上田 晃三 水野 貴之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

家計の物価予想の形成メカニズムに関する研究の一環として約8000の家計を対象にアンケート調査を2018年5月に実施し、家計が将来の物価や景気についてどのように情報を取得しているのか、家計は中央銀行の存在をどの程度認識しているか、中央銀行の政策にどの程度の関心をもっているか、中央銀行からのメッセージはどのような経路で家計に伝わっているかを調べた。また、中央銀行コミュニケーションに関する理論と実証の最近の研究動向を調べるために、渡辺努がジュネーブの国連統計局主催の会議に2018年5月に出席し最近の研究成果(Storable Goods, Chain Drifts, and the Cost of Living Index)を報告したほか、渡辺努と西村はSEM(Society for Economic Measurement)主催の会議に出席し論文報告を行った(渡辺の報告論文"Product Turnover and the Cost of Living Index: Quality vs. Fashion Effects"、西村の報告論文"Incorporating Market Sentiment in Term Structure Model")。また梶井は、市場と予測に関する理論研究に関して欧州で情報収集と討論を行った。ヨーク大学ではゲーム理論の観点からの討論を行い、その後初期の研究成果をセミナー報告したほか、ウォーリック大学、ベニス大学でも研究報告と意見交換を行った。本科研の研究費は上記の研究活動に加えて、データ収集・加工のための作業謝金、英文校閲謝金等に使用した。なお、本研究課題は基盤研究(S)として採択されたため、基盤研究(A)の研究成果を基盤研究(S)に引き継ぐこととした。
著者
澤西 祐典
出版者
龍谷大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

芥川龍之介・菊池寛共訳『アリス物語』および『ピーターパン』は、興文社と文藝春秋社による『小学生全集』シリーズの一環として刊行された。この<共訳>は、『不思議の国のアリス』の文豪訳などとして好事家の関心を引いてきたが、これまで芥川あるいは菊池の訳業として両作が取り上げられることはほとんどなかった。本研究では<共訳>の分担や翻訳の特徴について明らかにし、創作童話の発表や『小学生全集』を刊行など、児童文学の普及にも貢献してきた芥川・菊池の功績の中で、両作をどう捉えるべきか明らかにしたい。また、この二作を一般読者が親しめる形で普及したい。
著者
綿引 宣道
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

新潟県の明治25-44年における会社間で役員の兼任ネットワークは、地域性があることが分かった。必ずしも富裕層が多いあるいは人口規模や密度が高ければネットワークが作りやすいいとは言えず、ネットワークつながり方は各地域の産業の種類、街道や汽船や鉄道といった交通手段に大きく依存する。ネットワークの形成のきっかけについては、士族が多く、異業種交流あるいは学校を通じた繋がりの影響が大きいことが分かった。
著者
黒田 基樹
出版者
駿河台大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

実績概要今年度における史料蒐集については、白河市小峰城博物館、静岡市徳願寺、藤枝市郷土博物館、藤枝市円領寺、静岡県立中央図書館静岡県歴史文化情報センター、弘前市立図書館、日光市歴史民俗資料館、高岡市立博物館、糸魚川市歴史民俗資料館において調査・撮影し、関係史料を蒐集した。またさくら市ミュージアムで古河公方足利家関係展示の見学を行った。このうち白河市小峰城博物館においては「結城白河文書」の調査を行い、室町期・戦国期の関東に関する史料について熟覧のうえ撮影を行った。その他、静岡市安養寺、御前崎市中山家文書、彦根城博物館所蔵井伊家文書・木俣家文書・三浦家文書について、写真提供をうけた。これらの調査・蒐集により、重要文書の確認、実見を行うことができ、貴重な史料の蒐集と調査を行いえた。刊本史料集の検索については、前年度に引き続いてすすめた。刊本史料集から関係文書を検出し、入力作業をすすめている。研究会についてはコロナ禍のため開催することはできなかった。ただし研究成果の蓄積はすすめており、その成果については、今年度刊行を予定している『古河公方足利成氏・政氏とその時代』『北条氏康とその時代』を編集し、原稿を出版社に入稿済みである。またそこにおいて、足利成氏・政氏の発給文書の総編年化作業についてはほぼ完了するものとなっている。
著者
大島 一正 佐藤 雅彦 大坪 憲弘 武田 征士
出版者
京都府立大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2017-06-30

植物を餌とする昆虫類の中には,単に植物を食べるだけでなく,自身の住処となり,かつ自らが欲しい栄養成分をふんだんに含んだ「虫こぶ insect gall」と呼ばれる構造を作らせる種が知られている.このような巧みな植物操作がどのように行われ,そしてどのような昆虫の遺伝子が関与しているのかに関しては,興味は持たれていたが,そもそも実験的に飼育できる虫こぶ誘導昆虫自体がほぼ無かったため,大部分は未解明のままであった.そこで本研究では,実験室内で飼育可能な実験系の立ち上げと,モデル植物を用いた虫こぶ誘導能の実験手法を確立することで,虫こぶ形成の謎を解明する突破口を開いた.
著者
石坂 和夫 加藤 幸次 浅沼 茂 清水 克彦 高浦 勝義 樋口 信也
出版者
国立教育研究所
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1993

本研究の目的は、日米の「初等・中等カリキュラム」の実態を把握するための事前準備研究である。そのため、将来、科学研究費補助金(国際学術研究)の申請をするために必要な情報・資料を収集し、日米の協力研究が円滑に実施できるような準備資料を作成することである。1 研究遂行に必要な研究協力校として、研究分担者加藤が、愛知県の公立小学校2校、岐阜県の公立小学校1校、東京都の公立小学校2校、愛知県の公立中学校2校を対象校として研究の協力いただいてきた。これらの学校教師ならびに個性化・個別化に取り組んでいる教師・教育関係者の研究協力をいただき、必要な情報を収集・整理してきた。2 アメリカ側の研究協力者との情報交換を行った。たとえば、米国教育省のロバート・リースマ博士、イリノイ大学のジャック・イーズリ教授、ミシガン州教育委員会のジョン・チャブマン博士、オハイオ州教育委員会のケント・マイナー博士、ペンシルバア州立大学のジェイコブ・サスカインド博士、ボストンの教育開発センター(EDC)等との情報交換を行った。3 日本の教育に関するアメリカ側の代表的なものとして、次の研究物を検討した。【.encircleda.】 R.Leestma &H.Walberg,“Japanese Educational Productivity"【.encircledb.】 H.W.Stevenson & J.W.Stigler,“The Learning Gap"【.encircledc.】 Jack & Elizabeth Easley,“Kitamaeno school* as an Environment in which Children Study Mathematics Themselves"4 ワークショップに必要な日英両文の調査票を作成し、将来の共同研究の準備をした。以上の研究実績を発展させた研究を今後進めたいと考えている。
著者
武本 京子 伊藤 康宏 石原 慎 川井 薫 飯田 忠行
出版者
愛知教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

これまでの研究結果をもとに、新たにソルフェジオ音階を用いた楽曲を作曲し、これを実験に供した。ソルフェジオ音階とは174Hz、285Hz、396Hz、417Hz、528Hz、639Hz、741Hz、852Hz、963Hzの9種の音を指す。これらの音を用いた楽曲は、聴き心地が良く心身に何らかの良好な影響をもたらす可能性がある。近年、何の根拠もなくソルフェジオ音(単音)が身体に良いというマスメディアによる誇張が広がり、商品化さえされている。しかし、消費者に受け入れられること自体が何らかの効果を生じている証拠ではないかとも考えられる。したがって、本研究課題を進めるのにあたり、本年度はソルフェジオ音階による楽曲を用いた。実験方法は「イメージ奏法」を用いたイメージファンタジー(イメージ画像+演奏)を実験参加者に供与し、これまでと同じ実験方法により質問紙による状態不安得点と、唾液中生理活性物質の濃度変化を指標にソルフェジオ音階の効果の解析を行った。今回は新たに実験参加者の一部に目隠しをし、聴覚のみの入力と視聴覚入力との差異も含めて検討した。その結果、気分(mood)に関しては、目隠しした方が負の感情・気分が低下しなかった。一方、陽性の気分「活気」、「友好」については視聴覚対聴覚に差はなかった。すなわち、負の感情である「怒り」、「不安」などの亢進は音楽による誘導ではなく、色彩・言語による知覚感情効果であったと考えられた。逆に、陽性の気分は音楽だけで誘導されたことが示された。これは、音楽が喜びや幸福感をもたらすことを意味しており、個人の持つ記憶やそれらに裏打ちされた共感性に基づくものと考えられる。
著者
大槻 耕三 田口 邦子
出版者
京都府立大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

ビタミンUは別名Sーメチルメチオニンといいアミノ酸誘導体であって、抗消化器カイヨウ因子であり食物では野菜に遊離状で含まれている。本研究では、従来のガスクロマトグラフィーによる間接的定量法とは異っていて、野菜抽出液をLi系アミノ酸分析機に直接インジェクトしビタミンUを直接分離定量することに成功し分析方法を確立した。この方法を用いて各種食品に含まれるビタミンUをスクリーニングしたところセリ科やナス科やユリ科の野菜には湿潤量あたり1〜4mg%、緑茶は乾物量あたり1〜9mg%、アブラナ科の野菜には湿潤量あたり4〜20mg%含有されていた。アブラナ科野菜中でもクレソン、白菜、キャベツは2〜4mg%と比較的少なく、カリフラワー、ブロッコリー、コールラビ、菜の花は10〜20mg%と多く含有されていた。野菜以外では青のり、ほしのりについて分析したところ乾物量あたりそれぞれ7mg%、3mg%であった。その他「あまちゃづる」については乾物量あたり4.5mg%であったがクロマトグラム上で溶出時間が標準ビタミンUからわずかに異なり、他の分析法によるクロスチェックが必要と思われる。次にビタミンUは溶液状でpH1〜6では24時間は安定であったが食品分析表の総アミノ酸分析条件(6NHCl、110℃、24時間)では40%がメチオニンになることが判明した。また逆にペクチンの存在下では約4%のメチオニンがビタミンUに変化することを見い出した。栄養的効果を知るためビタミンUのD型L型の分離をHPLCで試みたところ、市販のビタミンV製剤はDL型であることをクロマトグラム上で明らかにした。天然のビタミンUはこのHPLCにかけたところ、ピークがL型のみが検出された。以上の方法を用いて、市販ビタミンU製剤を実験動物に投与し、尿を採取してD型L型の分析定量を行う予定である。
著者
徳田 篤志
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

人工呼吸器を装着した患者に気管支拡張薬やステロイド吸入薬等を投与する際、定量噴霧式吸入器(MDI)やネブライザーを用いて薬物をエアゾル化し蛇管の側管から投与を行う。しかし、経験上意図した薬物量が肺内に到達しないため、人工呼吸器を装着した患者に吸入薬を投与する際には、添付文書に記載されている必要量以上の薬物量が投与されているケースがしばしば見受けられる。このように薬剤の投与量を増加することにより、有効性が得られるのは事実であるが、全身への副作用などが問題となってくる。そこで、本研究では、人工肺を用いて人工呼吸器を装着した患者モデルを作成し、回路内に薬物を投与して人工肺部に到達する薬物量を測定した。使用薬物は、臨床現場で使用頻度の高い硫酸サルブタモールを用いた。また、薬物のエアゾル化にはMDIと超音波ネブライザーであるエアロネブとウルトラソニックネブライザーの3種を使用した。この方法でエアゾル化した硫酸サルブタモールをそれぞれテスト肺内に設置したフィルターに吸着させ抽出後、HPLC法により定量を行った。その結果、MDI、エアロネブ、ウルトラソニックネブライザー使用における硫酸サルブタモールの肺への到達率は、それぞれ0.95%、0.88%、2.02%とかなり低い用量であることが確認された。これは、3種の投与法によって放出されるサルブタモールの粒子径がほぼ変わらない事から、蛇管内に小さな水滴を多く含む人工呼吸器下では、薬物が蛇管や回路に吸着し到達量が減少したと考えられた。さらに、呼吸器回路や蛇管の長さや肺への到達までにかかる時間等の問題も原因の一つであると示唆された。人工呼吸器回路内のエアゾル沈着には多くの因子が影響するが、今回の条件下ではどれも数%しか吸入されないことから、人工呼吸器を装着した環境下では、吸入薬の肺への到達性が低下するために、添付文書の用量も考慮した上で薬物量を増加させる必要があると考えられた。
著者
竹谷 裕之
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

1.自動車関連企業の海外進出や部品の海外調達の進展に伴う、雇用・労働市場への影響について、各種統計調査結果の解析を進めた結果、1991年以降は年を経るに従い、雇用指標は悪化し、特に95年から96年にかけ、東海などが有効求人倍率の落ち込み、製造業の労働時間の非自発的圧縮、パート労働者比率の増大、倒産の増大など、深刻であった。2.愛知県の県内2000の事業所アンケート結果等によれば、最近3年間で、非海外シフト企業の余剰人員発生状況は、海外シフト企業より遙かに深刻な事態にあることが判明。農村部に多い非海外シフト企業における雇用環境の悪化は顕著である。3.3次以下の下請を対象にヒヤリングを進めた結果、受注量の減退や単価の押し下げが顕著であり、今後5年間では事業規模の拡大や高付付加値生産への転換を進める下請もあるが、規模を縮小し、或いは転・廃業する企業が1/3を越えそうなことが判明した。4.農村部の下請雇用の再編に伴い、農村労働力の農業回帰という形での就業再編が、新規参入にも刺激され起こっているが、量的には多くない。高齢者の農業就業の増加が目に付く。定年退職者が従来であれば再雇用されるケースが多かったのと対照的である。5.雇用条件悪化の中、終了機会を自ら創出する起業活動の展開は多様である。村興しと結合させ、定年、間近な壮年層、女性を中心に「百年草」、「山紫庵」などの保護・加工販売・文化を結びつけた交流型 施設経営、「荷互奈」などの生産・加工産直施設経営、名古屋市農業文化圏と提携した食材提供の「つくばね」「ひこばえ」グループなど、都市農村交流型のものが多い。経営管理面は概して脆弱であり、地域差も大きく、農村就業の新機軸を担う点からみればまだ補完的である。
著者
佐藤 雅俊
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

廃棄バイオマス資源の一つであるケナフ心材部の有効利用の一つとして、バインダーレスボードの開発について検討し、製造条件、特に圧締温度が高いほど耐水性が向上し、最適条件下では、ユリア・メラミン共縮合樹脂接着剤と同等かそれ以上の性能を有することが認められ、さらに、一年間の暴露試験においても材料の劣化は少なく、バインダーレスボードが耐水性に劣るという概念を覆す結果となった。一方、ケナフコアボードを用いたバインダーレスボードの自己接着機構に関する検討を、化学的手法と物理的手法を用いて実施した。化学的分析結果から、自己接着には、熱によるリグニンの軟化及びリグニンの縮合型構造の形成が確認された。また、カルボン酸類によるエステル結合の生成の可能性も示唆され、このような変化を生ずる要因は、製造時における圧締温度であり、適切な温度条件下において自己接着機構が発現していることが推測された。また、廃木材および竹を爆砕処理したパルプ等の化学分析あるいは走査型電子顕微鏡を用いた分析からは、爆砕によりパルプ表面に析出し遊離したリグニンが自己接着に関与していることが明らかとなり、この結果からも上述したリグニンの関与が明らかとなった。バインダーレスボードの製造条件に関しては、圧締圧力および圧締温度が木質系ボードの製造条件と比較しても差異がないことから既存のボード製造装置を用いたバインダーレスボードの製造が可能であり、今後、各種のバイオマスの有効利用に適用可能と思われる。
著者
亀岡 智美 齋藤 梓 友田 明美 八木 淳子 岩垂 喜貴 井野 敬子 酒井 佐枝子 飛鳥井 望 新井 陽子 成澤 知子 田中 英三郎 山本 沙弥加 高田 紗英子 浅野 恭子 島 ゆみ 中島 淳 竹腰 友子 西村 悠哉 三宅 和佳子 野坂 祐子 小平 雅基 市川 佳世子 岩切 昌宏 瀧野 揚三
出版者
公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、欧米で子どものPTSDへの第一選択治療として推奨されているTF-CBT(Trauma-Focused Cognitive Behavioral Therapy)の我が国における効果検証に取り組んだ。兵庫県こころのケアセンターと被害者支援都民センターにおいて実施した無作為化比較試験が終了し、先行研究と同様に、わが国においてもTF-CBTの有効性が検証された。結果については、論文にまとめ、報告する予定である。その他の研究分担機関においても、TF-CBTの終了例が蓄積された。TF-CBT実施前後のMRI画像分析については、福井大学子どものこころの発達研究センターで7例を分析した。
著者
渡辺 祐基
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2017-04-26

チビタケナガシンクイは、わが国において、伐採後の乾燥竹材を食害する特に重要な昆虫種として知られている。本種は一生の大部分を竹材内部で過ごし、直接観察が困難であるため、総合的な防除策の確立に不可欠な生態や食害行動に関する知見がほとんどない。本年度は、X線CTおよびアコースティック・エミッション(AE)モニタリングを使用し、本種の生活史および食害行動の解明を試みた。デンプンおよび糖を含ませ、積層したろ紙を使用することで、容易に卵を採取することができた。孵化直後から羽化まで定期的にX線CT撮像を行うことで、幼虫の体サイズの変化や移動範囲、摂食量を定量的に明らかにした。幼虫の摂食活動を連続計測するために、幼虫の摂食活動に伴い発生する弾性波(AE波)の検出を利用したAEモニタリングを適用した。孵化直後の幼虫を個別に接種した材に対して、長期連続的にAEモニタリングを実施した結果、幼虫は各齢期においては連続的に摂食活動を行うこと、AE停止期は脱皮や蛹化に対応することが明らかとなり、幼虫の齢数を非破壊的に測定できるようになった。半数の幼虫は蛹化までに7齢を経過し、他の半数は8齢を経過したことが明らかになった。さらに、幼虫の摂食活動には一定の周期性が存在すること、AE振幅は齢期とともに増加することなどが明らかになった。X線CTおよびAEモニタリングを使用して、竹材内部における成虫の産卵行動の非破壊評価を試みた。AEモニタリングによって、産卵期間中の雌は昼夜を問わずほぼ連続的に穿孔活動を行うことが示唆された。X線CTによって、1個体の雌による合計産卵数および産卵に伴う食害の程度が定量化された。以上のように、本種のライフサイクルを通じた詳細な生活史および食害行動を非破壊的に明らかにすることに成功した。
著者
太田 智彦
出版者
聖マリアンナ医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

申請者らは、乳がんの内分泌療法感受性を制御するメカニズムとしてFbxo22による転写調節因子KDM4Bの分解がエストロゲンシグナルの停止およびエストロゲン受容体(ER)モジュレーター(SERM)のアンタゴニスト作用に必須で、Fbxo22陰性乳がんは内分泌療法抵抗性となり、予後不良であることを見出した。本研究ではこのメカニズムの異常がER経路とHER2/PI3K経路のクロストークのキーイベントであることを証明し、HER2/PI3K経路が活性化したLuminal乳がんに対する内分泌療法感受性マーカーおよび治療薬を開発するための基盤とする。
著者
谷口 歩 今村 亮一 阿部 豊文 山中 和明 玉井 克人 新保 敬史
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

腎不全は腎の線維化を中心とした不可逆な臓器不全である。間葉系幹細胞移植が腎に対して保護的に作用することが注目されているが、その臨床応用においては幹細胞移植に伴う取り扱いの煩雑さが問題である。我々は骨髄間葉系幹細胞を血中さらに障害部位に動員させる物質を特定し、これを利用した再生誘導医薬を開発した。化学合成された薬剤を静脈へ注射するのみで骨髄間葉系幹細胞を障害された腎臓に集められることが予測されるため、煩雑な幹細胞移植を伴わずに腎再生医療を臨床に応用できる可能性がある。本研究では腎障害動物モデルに対する再生誘導医薬の効果に関して、病理学的評価、分子生物学的評価および次世代シーケンス解析を行う。
著者
宮岸 哲也 李 紹恩
出版者
安田女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、チベット=ビルマ語派のゾゾ語について、民話の音声データと、基本動詞と授与補助動詞構文の用例データを収集した。これらのデータに基づき、ゾゾ語の格助詞、名詞句構造、連体修飾構造、体言化、授与補助動詞構文について詳細に記述した。特に、ゾゾ語の授与補助動詞構文については、与益・与害の用法のみならず、非意図的な事態を表わす非能動的用法があることを見つけた。更に、これらを同様の授与補助動詞構文を持つ他の諸言語と対照した結果、授与補助動詞構文における文法化の過程の類型的規則性を示すことができた。