著者
小野寺 淳 渡辺 英夫 吉田 敏弘 岩鼻 通明
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

1.出羽国絵図・陸奥国絵図の所在調査と写真撮影東北地方の所蔵機関のみならず,現存の可能性がある機関でも調査を行い,出羽国絵図160点,陸奥国絵図164点の所在を確認した。このうち今年度は弘前市立図書館所蔵の津軽領国絵図の撮影を実施したほか,東北歴史博物館,宮城県図書館,国立公文書館所蔵の国絵図の写真版なども収集した。2.現存国絵図の年代推定とデータベースの作成国絵図の原本調査を行い,環境・景観復原を行うために不可欠な絵図の作成年代を推定し,出羽・陸奥国絵図の所在データベースを作成した。さらに,本研究の目的には含めていなかったが,撮影した国絵図の画像データベースの作成も進め,一部完成している。3.環境・景観変化の復原作業画像処理によって正保・元禄国絵図の図形の歪みを修正し,さらに現況の図形に変形した上で,東北地方の平野部について,明治後期測量の旧5万分の1地形図をベースにした正保または元禄期の環境・景観の復原作業を実施した。その一部を報告書に掲載したが,いずれ何らかの方法で公開していきたい。
著者
吉田 敏弘 石井 英也 松村 祝男 吉田 敏弘 林 和生 小野寺 淳 小倉 眞 松村 祝男 小倉 眞 古田 悦造 林 和生 野間 晴雄 小野寺 淳 松尾 容孝 原田 洋一郎
出版者
国学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

文化財保護法や景観法に基づく文化的景観の保全事業実施にあたり、保全対象となる文化的景観の選定にあたっては、文化的景観のAuthenticityを学術的・客観的に評価する必要がある。本研究では、「一関本寺の農村景観」と「遊子水荷浦の段畑」を主たる事例として、景観の価値評価を試行し、次のような5つのステップから成る基礎調査が有効であると判断した。(1)明治初期地籍図などに記録された伝統的景観の特質の解明、(2)伝統的景観(地籍図)と現景観との精密な比較、(3)近代以降の景観変化の過程とメカニズムの解明(土地利用パターンや作物、地割など)、(4)伝統的な景観要素残存の背景を地域の社会・経済・文化的側面から考察、(5)現景観の活用可能性の考察と保全の方向性の提示。なお、上記の作業をヴィジュアルに活用するため、GISの導入と時系列統合マップの構築が有効であることも確認した
著者
小林 和幸 奈良岡 聰智 大石 眞 森山 優 小宮 京 原口 大輔
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究は、「河井弥八関係文書」を中心として帝国議会・国会関係者の資料を総合的に分析・検討しようとするものである。本年度は、下記の通り、研究を進めた。まず、「河井弥八関係文書」の調査分析ならびに河井日記の刊行であるが、本年度は、河井日記中の昭和30年から32年について、翻刻と内容分析を行い『河井弥八日記 戦後篇4』を刊行した。また、河井日記の内、未刊行の明治、大正期の河井が貴族院書記官を務めた時期の日記についても翻刻作業を行った。なお、河井日記の昭和16年分についても研究分担者の森山優にグループが中心となって静岡県立大学の「Working Paper Series」により翻刻公開を行った。次に、「河井弥八関係文書」をより総合的立体的に分析するため、議会官僚や政治家の個人資料の調査・分析を行った。これでは、河井の女婿で、戦前の内務官僚で戦後衆議院議員を務めた舘林三喜男の日記の一部について、舘林家所蔵史料を複製収集した。さらに帝国議会貴族院関係では、貴族院議員多額納税者関係資料について長野県選出の「山田荘左衛門関係文書」につき調査し、初期の貴族院の政治会派に関する研究を進めた。また研究分担者の原口大輔は、河井弥八日記を利用した貴族院議長に関する研究書を刊行した。そのほか、研究分担者・協力者は、議会史に関する研究を進めている。なお、研究分担者間での連携を深めるために、2018年9月青山学院大学において研究会を行い、貴族院事務局に勤務し初代の参議院事務総長を務めた小林次郎の史料に関して、研究協力者の今津敏晃からの報告を聴取し知見を深めるなどの研究活動を進めた。さらに年度末の2019年3月には、静岡県掛川市の河井弥八記念館にて公開講演会と意見交換会を行い、河井弥八研究の進展を図った。
著者
岩崎 稔 八尾師 誠 今井 昭夫 金井 光太朗 篠原 琢 米谷 匡史 工藤 光一 小田原 琳 土田 環
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

東アジアを中心とした集合的記憶の動態を、「自己確証的想起」及び「脱中心化的想起」という対概念を方法論として解明した。また分析地域を拡大し、ジェンダー論等の具体的成果の再定義や表象文化分析を行った。その結果、集合的記憶の脱中心化的機能は、ナショナル・アイデンティティを相対化・異化し、支配・被支配関係を転換する効果を持つことが明らかになった。脱中心化的想起という視点を通して、正統的歴史叙述から排除された「消去された声」の再生だけではなく、集合的記憶の動態の中に起こりうるイデオロギーを超えた自己撞着や恣意的操作、アイデンティティポリティクスへの批判的な分析視点をより明確に提示できるようになった。
著者
雲財 悟 朴 三用 小見山 上
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

SynGAP遺伝子は、ヒトの精神疾患リスク遺伝子の代表的なものの1つで、その遺伝子産物蛋白質の具体的な働きや構造、変異型SynGAPがどのような異常を引き起こすかなどの情報は、創薬など精神疾患治療法開発に重要であるため近年注目されている。本研究では、SynGAPおよびパートナー蛋白質のRap1Bを大腸菌発現系で大量に調製し、構造生物学的手法で研究を行った。結果、Rap1Bの結晶構造解析によりその詳細なスイッチ機構の解明に成功した。また、マラカイトグリーン法を利用して、SynGAPによるRap1BのGTPase活性促進を小スケールで測定できる系を確立した。
著者
伊藤 公孝 居田 克巳 杉田 暁 神谷 健作 佐々木 真 伊藤 早苗
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

昨年度までに、バリア構造のモデルを開拓し、乱流輸送の抑制の検証法を構想した。そして、電場形成・遷移および乱流抑制の実験検証を進めた。また、電場曲率効果について、当初定式化した機構だけではなく、独立な機構の重要な働きも見出した。計画は極めて順調に進展し、予想以上の広がりが実現している。非線形構造である振動型の帯状流によって、乱流塊が捕捉され輸送障壁内に侵入する現象も解析し、輸送障壁内部での揺動の起源の一つとして定式化した。さらに何十年も未解明だった問題(装置容器の材料や給気法が主プラズマの閉じ込めに影響する実験事実)にも研究を拡張した。かねてより代表者らは閉じ込め装置の壁材がH-モードの閉じ込め改善度に影響する上で中性粒子の役割を指摘してきた。その考えを拡張し、粒子補給によって生み出される乱流揺動を解析した。その結果、粒子補給量がプラズマ閉じ込めに影響すること、この機構が生成されたH-モードをより安定状態ならしめることなどを見出した。別の未解明問題としては、H-モード遷移の閾値より低い入力状態でプラズマ中央部での崩壊現象が起きると、それに付随してH-モード遷移が起きるという実験観測が30数年知られて居る。従来は、崩壊現象による熱パルスが「不足していた」パワーを補うことが原因だろうと考えられていたが、大型装置での実験の詳細分析の結果、乱流塊と急峻な径電場の伝播が遷移を引き起こして居ることを実証した。こうした改善閉じ込め現象などに関する成果は、何十年来知られていた未解明問題に取り組む新たな糸口となると期待される。さらには、乱流がプラズマ中のプラズマ断面の一部分に乱流が局在すること(H-モードに重要な働きを持つ可能性を代表者らが理論的に指摘している)のレビューを出版し、今後の研究者への指針を与えた。
著者
本庶 佑
出版者
京都大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
1982

リンパ球分化過程において、抗原認識物質である抗体とT細胞抗原受容体(TCR)とは遺伝子の再構成によって著しく多様性を増巾する。我々は、抗体遺伝子の多様性発現機構を解析するために、【◯!1】マウスおよびヒトの抗体遺伝子のコスミッドクローンを単離し、その解析を行なった。この結果、マウス、ヒトおよび類人猿の【C_H】遺伝子群のほぼ全貌を明らかにした。さらに、ヒト【C_H】遺伝子の主要なものを単離し、その一部については全構造を明らかにした。次に【◯!2】抗体遺伝子の再構成にかかわる酵素系の解析を行ない、マウスおよびニワトリ組織よりJ領域を特異的に切断するendonuclease-Jを単離し、その性質を調べた。【◯!3】クラススイッチ組換えに関して、遺伝子の欠失を伴なう前の中間段階として、多数の【C_H】遺伝子を含んだ長い転写産物のできるモデルを提唱し、これを支持する結果を多数のヒト白血病細胞のDNA解析から得た、【◯!4】TCR遺伝子の再構成に関して、抗体遺伝子と基本的に同じでありながら、体細胞突然変異が非常にまれであるという興味ある知見を得た。また、ヒトTCRのJ遺伝子が逆位による再構成を行なうことを見出した。TおよびB細胞間の情報伝達に関与する免疫系制御物質として、リンフォカインとその受容体が重要な役割をする。【◯!5】我々は、T細胞増殖因子受容体(IL-2)のcDNAとその遺伝子の構造を明らかにした。IL-2RcDNAは、Tリンパ球に導入した場合にのみ活性ある受容体を発現した。このことから、T細胞にはIL-2Rの機能に不可欠な別の因子(corverterと命名)が存在することを推測した。【◯!6】さらに初めて、B細胞増殖因子(IL-4)のcDNAの単離とその構造決定を行なった。IL-4はT細胞や肥満細胞にも増殖因子活性を持つことが明らかとなった。
著者
大谷 元
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

平成8年度及び9年度に「乳汁κ-カゼインの免疫抑制作用に関する研究」という課題のもとに研究を行い、得られた成果は以下の通り要約される。1.牛乳κ-カゼインのTーリンパ球増殖抑制メカニズムについて検討を行い、κ-カゼインはそのκ-カゼイノグリコマクロペプチド(CGP)域(106-169域)のシアル酸を含む糖鎖を介して単球・マクロファージに結合し、IL-1レセプターアンタゴニストの大量生産を誘導することと、CD4+Tーリンパ球に直接結合し、その膜表面へのIL-2レセプターの発現を阻害することにより、Tーリンパ球の増殖を抑制する。なお、CGPは、IL-1レセプターアンタゴニストと同じIL-1ファミリーのサイトカインであるIL-1αやIL-1βの生産には影響を与えない。2.κ-カゼインは本来、マクロファージの食作用や活性化を抑制する作用を有しているが、その作用はペプシン消化では直ちに消失するが、トリプシンやキモトリプシン消化を行っても殆ど変化しない。3.CGPをマウスの飼料に混合し、経口投与すると、経口投与抗原や腹腔内投与抗原に対する特異抗体の生産が顕著に低下し、その原因はサブレッサーTーリンパ球の数が機能、あるいはその双方が増大していることによる。4.人乳CGPはマウスのT、B、両リンパ球に対してアポトーシス誘導能を有する。5.牛乳κ-カゼインをトリプシンで消化するとアポトーシス誘導能を有するペプチドが生じ、そのペプチドはパラ-κ-カゼイン(1-105)域とCGP域の双方から生じる。以上のように、牛乳κ-カゼインによるTーリンパ球の増殖抑制メカニズムを明らかにするとともに、人乳κ-かゼインのペプシン消化により生じるCGPにはアポトーシス誘導能があることや、牛乳κ-カゼインでも直接、トリプシン消化するとアポトーシス誘導ペプチドが生じることを明らかにした。
著者
岡崎 篤行 野澤 康 井上 年和 今村 洋一 川原 晋 大場 修 澤村 明 岡村 祐 池ノ上 真一 井上 えり子 松井 大輔 西尾 久美子
出版者
新潟大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

元来、料亭は宴席以外にも冠婚葬祭や公式会合、商談など日本人の生活と密着していた。しかし、現在ではその役割が他施設へ移り、都市の料亭街が消滅しつつある。一方で、和食や料亭の価値は見直され、重要な観光資源にもなっている。ひとつの重要な建築類型といえる料亭は、あらゆる日本の伝統文化を包括的に継承する場であり、花柳界や業界団体、支援・連携する行政、民間組織など様々な組織が関わっている。このように、ひとつの地域文化システムといえる料亭について網羅的視点で捉え、関連組織・活動の変遷、料亭の分布とその変遷、料亭建築の規模と保全活用の実態を明らかにする。
著者
大串 和雄
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

当初の計画通り、平成30年度は現地調査を実施せず、前年度の現地調査のインタビューを整理するとともに、文献資料に基づいて研究を進めた。平成30年度は、コロンビアの動きを追うことにやや多めに時間を割いた。コロンビアでは、国内最大のゲリラ勢力FARCと政府との2016年の和平合意に基づき、移行期正義のシステムが設置された。中でも、ゲリラ及び治安部隊の人権犯罪を修復的正義のアプローチで裁き、加害者が真実の解明と賠償に協力すれば服役を免れるという「特別和平司法」(JEP)の仕組みは、国論を二分し、2018年の大統領選挙の争点となった。大統領選挙ではJEPが「ゲリラに甘い」として反対する勢力が勝利し、現在では、国際社会を含むJEPを支持する勢力と、JEPを骨抜きにしようとする政府及び与党との綱引きが続いている。このような流動的状況を背景として、コロンビアでは全国レベルでは和解どころかJEPをめぐってヘイトスピーチが飛び交う状況が続いている。ただその一方で、ミクロなレベルでは、旧武装勢力と犠牲者との和解の実践も観察される。コロンビアとともに本研究が重点を置くペルーでは、移行期正義は多くの国民の関心事ではない。人権侵害等の罪で収監されていたアルベルト・フジモリ元大統領が、当時の大統領とフジモリ派との政治的駆け引きの結果として2017年末に特赦を受けた際には、犠牲者たちと彼らを支援するNGOが米州人権裁判所にアピールし、結果的にペルーの最高裁が特赦を無効とした。この件に見られるように、ペルーでは移行期正義は、犠牲者を含む一部の活動的なアクターにおおむね限定された関心事となっている。また、ミクロなレベルにおける和解の実践もペルーではあまり観察されない。農村では元ゲリラが出身の共同体に再び受容されていることがあるが、和解というよりは緊張を孕む共存として描写されている。
著者
吉内 一浩 山本 義春
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

日常生活下の情報取得法であるEcological Momentary Assessment(EMA)を発展させ、摂食障害患者の過食行動治療のため、ス マートフォンによるEMAで得られたデータを機械学習を用いてリアルタイムに解析し、その場で治療介入するEcological Moment ary Intervention(EMI)のシステムの開発を行うことを目的として以下を実施する。 1.過食衝動・行動の評価・介入システムの開発:コンピューター適応型質問票を含めて症状・行動の評価システムとEMIを行う ための機械学習を用いたシステムの開発を行う。 2.身体活動度による過食衝動・行動の予測モデルの開発:EMAで得られた情報を用いて、身体活動度による過食の予測モデルの 開発を行い、治療介入タイミングの同定を行う。 3.摂食障害患者における使用感の調査とマイクロランダム化試験による有効性の検証を行う。2018年度は、過食症状の評価・介入システムの開発を行った。具体的には、スマートフォンを用いて、過食衝動 ・行動、排出行動、気分の記録システムを実装した。そして、機械学習を用いた介入システム開発のための基礎的データを収集するために、日常生活下において、スマートフォンによる症状・行動の記録と、加速度計による身体活動度の記録、自律神経機能の評価のためのRR間隔の記録、過食の前の唾液中のコルチゾールとアミラーゼの記録のシステムのセットアップを行い、倫理委員会での承認を得た。現時点で、4名の被験者からのデータの取得が終了しており、2019年度中にデータの取得を終了させ、介入システムの開発を行う。
著者
吉内 一浩 山本 義春 米田 良 大谷 真
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

ストレス関連疾患の治療法の一つにリラクセーション法があるが、習得の補助および習熟度の評価が困難であった。本研究では、EMAを応用したスマートフォンによるツールの開発を行うことを目的とした。方法は、スマートフォンによる自覚的習熟度や気分を入力するシステムを開発し、日常生活下においてリラクセーション法の前後における心拍変動による自律神経機能と自覚的な習熟度や気分との関連を検証した。結果は、習熟度の得点が高いほど、LF/HFが有意に低く、充実度が有意に高いという関連が認められた。従って、自覚的習熟度は、習得の程度を評価することが可能で、リラクセーション習得のための補助ツールとなることが示唆された。
著者
山本 義春 北島 剛司 佐々木 司 森田 賢治 吉内 一浩 中村 亨
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

うつ病の予防を目指した日常生活下における行動・心理動態のモニタリングシステムを構築するとともに、疾患発症・病態変化に伴う行動・心理動態の変容を評価・予測する客観的・定量的指標の開発を行った。さらに、行動・心理動態の変容とその移現象に関わる背後の生体システムの動力学的構造をデータ駆動型で推定することにより、開発指標の動力学的意味付けを行った。また、疾患発症・病態遷移の早期検知に資する動力学的機序に関する知見を得た。
著者
古澤 拓郎 石田 貴文 塚原 高広 ピタカカ フリーダ ガブリエル スペンサー
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

海面上昇は各地で生活や生業に影響を及ぼしていた。ソロモン諸島の技術的・財政的事情により、調査期間内に移住計画が実行に移されることはなかったために、移住された後にどのような影響がでるかまでを明らかにすることはできなかった。一方、移住計画がなく、隔絶された地域で、人口過密、海面上昇、資源不足などを抱える社会ではメンタルヘルスの問題を抱えていることが明らかになった。都市部での生活習慣病リスクを抑えるととももに、このような地域でのメンタルヘルスを解消することも今後の公衆衛生上の課題である。そして海面上昇対策においては、これらの健康問題を解消する適応策が立案される必要がある。
著者
野村 和晴
出版者
独立行政法人水産総合研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、ニホンウナギにおいて2世代でクローン系統作出を可能にする雌性発生条件について検討した。ウナギ精子を遺伝的に不活性化する紫外線の照射条件は400 μW cm-2 s-1 の強度で35~75秒間(1,400~2,800 erg/mm2)だった。第二極体放出阻止は、受精後3分に、水温0℃の海水に、5~15分間浸漬という低温処理で可能だった。さらに、第一卵割阻止を可能にする高圧処理条件について検討したところ、受精後40~45分に、9,000~10,000 psiの圧力条件で、4分間という条件によりゲノムを倍加した4倍体の作出が可能であった。
著者
西舘 泉
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究課題では、ディジタルカラーCCDカメラにより取得したヒト皮膚のRGB画像から皮膚表在毛細血管の酸素化・脱酸素化血液量を求め、動脈血酸素飽和度のイメージングと脈拍数の計測を行なう新しい方式を開発した。吸入酸素濃度が異なる条件下のラットを用いた動物実験およびヒト皮膚に対する実験により脈波伝搬の時空間計測と動脈血酸素飽和度のイメージングが可能であることを確認した。これにより、RGBカメラを基盤とした動脈血酸素飽和度と容積脈波の非侵襲・非接触イメージングが実証され、新しいバイタルサイン計測法の可能性が得られた。
著者
坂田 完三 CHO Jeong-Yong CHO Jeong-Young
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

台湾烏龍茶(東方美人)は、他の烏龍茶と異なりウンカに吸汁されたチャ葉を摘採して作られ、独特な香気を生み出す。こでまでに東方美人茶の独特な香気成分として2,6-dimethylocta-3,7-diene-2,6-diol(diol)とhotrienolが検出された。本研究では、東方美人茶の原料であるウンカ加害チャ葉でdiolとhotrienolの生合成に関与する酵素遺伝子を明らかにすることを目指した。ウンカ加害チャ葉でモノテルペン酸化酵素活性を有するシトクロムP450がlinaloolを酸化してdiolやhotrienolを生成すると考えられ、様々なP450遺伝子の探索を行った。昨年度、烏龍茶製造工程中のチャ葉についてdifferential screening分析の結果から得られた P450ホモログ(TOBA)はモノテルペン水酸化に関与するP450と比較的高い相同性を示し、diol及びhotrienolの生合成に関与する可能性が高いと考えられた。そこで、ウンカ加害チャ葉で3_-RACEおよび5_-RACEを行い、TOBAの全長cDNAを単離した。RT-PCRによりウンカ無加害チャ葉に比べてウンカ加害チャ葉でTOBAの転写量は増加していた。一方、他の植物でモノテルペン水酸化に関与することが知られているP450遺伝子から作成したプライマーを用いて、RT-PCRに行い、ウンカ加害新鮮チャ葉からTOBAと異なる8種のP450ホモログ遺伝子を見出した。これらのP450ホモログについてRT-PCRを行った結果、3種のP450(候補P450)の発現が無加害チャ葉に比べてウンカ加害チャ葉で増加していた。また、見出した8種のうち3種の候補P450はモノテルペン水酸化に関与するP450と比較的高い相同性を示し、diolおよびhotrienolの生合成に関与する可能性が高いと考えられた。現在、候補P450遺伝子の全長cDNAを取得するため、ウンカ加害チャ葉を用いて、cDNA libraryを構築し、候補P450の全長cDNAの単離を行っている。さらに、TOBAと候補P450遺伝子を昆虫細胞あるいは大腸菌を用いて大量発現し、得られた酵素のlinaloolに対する酸化反応を検討する。
著者
森部 豊 山本 明代 小沼 孝博 宮野 裕 舩田 善之
出版者
関西大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は,東ユーラシア世界で見られる草原世界と農耕世界との境界域,すなわち「農業・牧畜境界地帯」の歴史的性格・特質が,ユーラシア全域で普遍的に見られるかを検証し,将来的に,ユーラシア史の歴史像を書き換えるための準備作業を行った。その結果,「農業・牧畜境界地帯」という概念は,ユーラシア史を叙述する上では再定義する必要があるという結論に達した。
著者
原島 文雄 金田 輝男 柳父 悟 永田 宇征
出版者
東京電機大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

電気関連7学会が連携して67名の碩学に対するオーラルヒストリーを実施してその記録を残すことができた。また、このオーラルヒストリーを通じて、インタビュイーの選定から成果のまとめに到る一連のプロセスについて方法論を学び、ノウハウを蓄積することができ、更に、各学会においてオーラルヒストリーに対する理解が深まり、自主的継続の機運が生じたことも本計画研究のもうひとつの成果であった。
著者
常深 祐一郎 加藤 豊章 森村 壮志
出版者
東京女子医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

表皮で産生されたケモカインCCL17が皮膚での免疫・炎症・再生に及ぼす影響を検討した。創傷治癒においてはCCL17は線維芽細胞の遊走を促進し、CCR4を発現したNGF産生リンパ球や肥満細胞を集めることにより創傷治癒を促進していることが示唆された。腫瘍免疫においてはCCL17が皮膚での腫瘍免疫を抑制している可能性が見いだされた。また抗アレルギー薬は表皮細胞ならびに真皮線維芽細胞からのCCL17産生を抑制した。CCL17は創傷の治療薬の候補となること、抗アレルギー薬を含めCCL17やその受容体であるCCR4の阻害薬は皮膚のリモデリングや皮膚腫瘍の治療薬となりうることが示唆される。