著者
阿部 英彦 谷口 紀久 稲葉 紀明 中島 章典 佐藤 良一 INABA Noriaki TANIGUCHI Norihisa
出版者
宇都宮大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1985

道路や鉄道が互いに鋭い斜角で交差する場合、門型の中間橋脚とそれに載る桁高の小さい橋桁を必要とするが、これらに綱部材とコンクリートを適宜合成して建造することにより、力学的挙動が良く、工事がし易く、環境に適し、かつ、経済性が優れた構造物が実現すると考え、その開発の為に2年に亘り種々、実験的研究を行った。実験は主として綱部材とコンクリート部材の結合、あるいは両者の一体化について試験した。(1)鋼部材同志をコンクリートと鋼材を介して結合し、これに引張外力を加え、その性状を調べた。コンクリート継手部の中にスタッド付き鋼板を埋込んだものと異形鉄筋を埋込んだものを試みた。鋼部材とコンクリートの重なり部の長さ、フープ筋の量、スタッドの配置等を変えて挙動を調べ、適当なプロポーションを見出した。(2)コンクリート部材に鋼梁の先端部を埋込んだ試験体に曲げを加えた。鋼梁の埋込み長さ、スターラップの量、スタッドの量等を種々変えて、それらが継手部にどの様に影響するかを調べた。埋込み長が短いと、そこのコンクリートに大きなせん断力が作用するので、スターラップを増さなければならないが、鋼梁にスタッドを設けると作用するせん断力を減少する効果がある。(3)H形鋼をコンクリート中に埋込んだ橋桁で、両者の一体化のためのずれ止めをフランジでなく、ウエブに設けても有効であるならば、桁高を減少できて有利である。そこで鋼梁の種々の位置に量を変えてスタッドを設け、また、スターラップの量も変えて曲げ試験を行った。スタッドもスターラップも少ないと充分な曲げ耐力を発揮する前にせん断破壊することがわかり、また、ウエブに設けたスタッドも充分有効であることがわかった。更に鋼梁のウエブに適当な穴をあけるだけでもずれ止めの作用を表すことが確められた。以上により、現場での施工許容誤差が緩く、工事の安全性の高い構造物の可能性の目途が見究められた。
著者
佐藤 努 小暮 敏博 名和 豊春
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、福島第一原子力発電所事故で環境中に放出されたセシウムを固定している粒子を明らかにし、それを基に、土壌の減容化を可能とする分級方法や合理的で安全なセメント固化法について提案することを目的とした。その結果、放射性セシウムを多く吸着している粒子は、複数の鉱物の凝集態、有機物と鉱物の複合体、風化雲母片に大別され、これらは多孔質天然材料である珪藻土、あるいは通常の湿式分級法により分級可能であることが明らかとなった。さらに、固定化されていないセシウムはゼオライトで吸着除去した後に処分することが予想されるが、通常のスラグセメントで浸出性の低い安全な固化体となることが明らかとなった。
著者
荻野 和子
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

1. 高校化学のマイクロ及びスモールスケール実験教材の開発次の(1)〜(4)のテーマについて,培養用のマイクロプレートを使う実験を開発し,実践した。(1) 酸化還元反応についての実験教材の開発:さまざまな酸化剤,還元剤の反応のようすを明確に示す教材を開発した。(2) 電池と電気分解:特別な装置も使わず,失敗なく短時間でいろいろな電気分解や電池について実験できる方法を工夫した。(3) 無機イオンの定性分析についての実験教材の開発:いろいろな金属イオンの性質をプレートを使って示し,未知試料の定性分析に応用する実験を開発した。(4) アルコールの実験:ポリスチレン製の器具で実験できる,アルコール類についての実験を開発した。本研究代表者らによる一連のスモールスケール実験教材は平成9年度東レ理科教育賞佳作賞を受賞した。2. 大学一般化学のマイクロスケールの実験教材の開発スピロピランのフォトクロミズムを利用した反応速度についてのマイクロスケール実験等を開発した3. 高校化学におけるスモールならびにマイクロスケール実験の実施面および普及に関する研究我々が開発したスモールスケール実験教材を,東北各県および栃木県のいくつかの高校の化学担当教師に依頼し,授業として実施した。その際,試薬,器具をキット化し,生徒用ワークシートとともに配布した。また,教師ならびに生徒を対象にアンケートを行った。アンケートは,のべ9校14名の教師,840名の生徒から回収された。実施したテーマは,(1)金属イオンの性質,(2)化学平衡の実験,(3)中和滴定ならびに(4)電気分解の実験である。その結果,(1)生徒の積極的な取り組み,(2)実験準備,指導,片付けにかかる教師の負担の軽減.(3)廃液の減量,(4)短時間で実施できる等高い評価が得られた。
著者
島立 理子 八木 玲子 小田島 高之
出版者
千葉県立中央博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

この研究は市民、地域の人々と連携して地域にある「資料」を掘り起こし共有することを通して、日本におけるエコミュージアムのあり方について検討する実践的な研究である。千葉県立中央博物館が行っているフィールド・ミュージアムにおいて、博物館行事参加者との連携、博物館・公民館・図書館との連携、地域の人々との協働調査を実施した。連携にあたっては、それぞれの機関の得意分野を活かした連携が必要であることがわかった。また、地域の人々との連携にあたっては知識を一方的に伝えるのではなく、ともに活動することで新たな資料の掘り起こしが可能となることがわかった。
著者
千葉 雅也
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、「ポスト構造主義以後」の存在論の顕著な動向である「思弁的実在論」の分析と紹介を行った。なかでもフランスのカンタン・メイヤスーを中心的に扱い、英語圏のグレアム・ハーマンらと比較しつつ、思弁的実在論の核心を「絶対的無関係」として明確化していった。かつ、その考察のなかで、ジル・ドゥルーズにおける関係の「切断」の重要性を示す議論の練り上げもなされた。最終的には、思弁的実在論における「無関係論」は、事物についての多様な解釈可能性を擁護する従来の人文学からは区別され、それに並置される哲学的観点として、事物の「無解釈的」な存在様態を捉えるものである、という結論に至った。
著者
大橋 英寿 安保 英勇 吉原 直樹 大渕 憲一 石井 宏典 中村 完
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

1.ボリビアのオキナワ移住地出身者が組織する関東ボリビア親睦会の参与観察、および会員の追跡調査を実施し、移民労働者の移民コミュニティの形成過程、日本と南米を結ぶインフォーマルなネットワークについて分析した。2.日系外国人労働者の人口比率が全国-高い群馬県大泉町において、日系外国人労働者の子弟教育をめぐる問題、とくに学校不適応や非行行動についてフィールド調査を行い、外国人労働者の定住化傾向が子弟に与えている影響について検討した。3.宮城県多賀城市に在住する-日系人家族について一年余にわたるインテンシブな事例研究を継続し、労働観、子弟教育問題について、家族ダイナミクスの観点から分析した。4.1990年代初頭から岡山県総社市で働く日系出稼ぎ青年の事例研究を行い、日本国内で形成された互助ネットワークとそこから析出される生活戦略について検討した。5.沖縄県において1950年代から1960年代のボリビア移民送出に関する資料を収集した。また若干名のボリビアから沖縄県への帰郷者の事例研究を実施した。6.ボリビアからアルゼンチンへ転住した沖縄系移民の独立自営過程を互助集団「講」に焦点をあてて調査研究し、その組織原理がエスニシティよりも対面関係にもとづく信頼性であることを明らかにした。7.オキナワ移住地内および周辺ボリビア人の保健行動とヘルスケアシステムを把握するために実施したアンケート調査結果の集計・分析を行った。
著者
藤山 静雄
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

1999年度には塩尻市東部、鉢伏山一帯で成体が、すなわち霧ヶ峰から美ヶ原に至るヴィーナスライン沿いで成体の大発生が観察された。特に9-10月にかけて側溝、コンクリート製の切土斜面に多数の成体が観察された。鉢伏山の周辺では比較的密度が低く、森林内、道路周辺では成体が散見されたに過ぎなかった。これらの調査では、採集個体はすべて成体であり、幼虫は全く観察されなかった。一方、霧ケ峰から蓼科高原に至る一帯では、7齢幼虫が大発生した。観察された幼虫は大部分が白色の個体で成体のように黄赤褐色をした個体はごく少なかった。これらの個体も含めて観察されたものは全て7齢幼虫の個体で成体や6齢の個体は全く見られなかった。採集された成体については、交尾個体は全く見られず性成熟していないことは明らかである。染色体調査では、分裂像が観察できず、染色体数を確認することは出来なかった。これらの結果はこれまで交尾等の繁殖行動の1過程としての群遊行動であるとする説と、分布拡大を主体とする分散行動であるとする説があるが、後者の説を支持する有力な証拠である。また、成体、7齢幼虫の存在など8年周期は今回の調査でも厳密に維持されておりその周期性の厳密さは筆者がこれまで指摘してきた周期決定メカニズムが良く働いていることを示すものである。また、それらの分布域は24年前の分布域の境界線とほとんど変わっていない。このことは本種が土壌中に生息することを考えれば当然といえるが、近隣の個体群が他の個体群の発生経過に何らの影響も及ぼしてはいないことを示すと考えてよいだろう。次ぎに、岐阜県側での調査では6齢幼虫が見つかっているがヒダヤスデと考えられる。シ化し厳密な同定は出来ていない。その他、伊那地方では1齢幼虫が、山梨県塩山市では3齢幼虫が観察され、それぞれ8年周期の発生が予想される齢の個体群が生息していた。今後、地域の個体群間の関係、染色体数の決定等さらに詳しく解析する必要がある。
著者
中路 重之 梅田 孝 坂本 十一 高橋 一平 辨野 義己
出版者
弘前大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本研究では、各食物繊維摂取後の呼気中に排出される水素、メタン濃度から、大腸内の発酵の有無と程度を推測し、腸内細菌叢をいくつのパターンに区分することを目的とする。平成19年度は、ラフィノース、難消化性澱粉の検討を行ったが、20年度はペクチン、セルロース、ラクツロースその検討を行った。平成21年度の実験手順は以下の様であった。(1) 対象者を3グループ(ペクチン、セルロース、ラクツロース)にわけ、各グループに各食物繊維20グラムを摂取させる。(2) 食後呼気採集バックで終末期呼気を300cc採集。操作を39分毎に食後15時間迄実施。(3) 呼気ガス中の水素、メタン濃度をガスクロマトグラフィーにて測定。(4) 同時に全対象者の腸内細菌(光岡方式による13種類)を培養法で同定。(5) その結果、水素発酵の有無で以下の3パターンに分類された。1群 : ラクツロース・ペクチン発酵、セルロース非発酵群(4例)2群 : ラクツロース発酵、ペクチン・セルロース非発酵群(7例)3群 : ラクツロース・ペクチン・セルロース非発酵群(3例)腸内細菌叢に関して3群を比較すると、Clostridia(lecithinase negative)が1群で他の群より有意に高い陽性率を示した。そのためクロストリジウムが呼気水素の上昇(発酵の有無)に関係する可能性が示唆された。以上より、食物繊維摂取後の呼気水素を測定することで、腸内細菌の状態を推測する可能性が示唆された。
著者
五十嵐 悠紀
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究はシミュレーションとモデリングを同時に行うことにより,物理的な制約条件を加味した3次元形状モデルを作成することを目的とする.予め物理的制約条件をデザインプロセスに組み込むことで,モデリング後に制約条件を評価してい従来手法に比べて効率よくモデリングすることが可能になる.我々はシミュレーションとモデリングを並行して行うというフレームワークを利用して,物理的制約付の3次元形状デザインという研究テーマに取り組んだ.今年度はカバーデザインという制約付のモデリングに関する研究を行った.カメラやティーポット,車など,日常の3次元物体にはカバーが存在する.各々の持ち物に応じて自分だけのカバーをデザインしたい場合もあるだろう.しかし,既存の3次元オブジェクトを包むためのカバーをデザインすることは素人には難しい.そこで我々は既存3次元モデルを包むカバーをデザインするシステムを提案し.既存3次元モデルからカバー形状を計算し,領域分割をした後,2次元へと展開し型紙を生成する,また,ユーザによってデザインされた取り出し口から3次元モデルを取り出すことが可能か否かを取り出しテストによって検証した.また,制約付きモデリングを2次元に適用した例として,ステンシルデザインのためのドローエディタの研究開発を行った,ステンシル型版は常に1枚につながっているという制約を満たすようにデザインしていかなくてはいけないため,素人がオリジナルなステンシル型版をデザインすることは大変難しい.そこで我々はステンシル型版を生成するための手法を提案した.
著者
五十嵐 悠紀
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究ではコンピュータを用いて手芸作品の設計を支援する研究を行っている.学術的にはモデリングを行いながら並行してシミュレーションを行うことで,布や毛糸など素材の特性を活かしたモデリングを効率良く行うことができることを提案してきている,身近な手芸作品を例に挙げ,スケッチインタフェースを用いて物理的制約の下でのモデリングツールをいくつか提案することでこの手法の有効性を示してきた.本研究によりこれまで初心者ではできなかった手芸作品の設計(デザイン1をコンピュータで支援することが可能になり,これは手芸分野への大きな貢献であると言える.今年度は昨年度から引き続き、ビーズデザインの設計支援および制作支援について研究を行った.我々の開発したBeadyシステムを利用することで,子どもや主婦でも簡単に自身のオリジナルのビーズデザインを設計することができる.また,従来の2次元の制作図ではなく,3次元CGを用いた制作支援により制作も簡便になるように工夫した.以下に詳細を記す.3次元ビーズ作品のデザインおよび制作のためのインタラクティブなシステムを提案した.ユーザはまずビーズ作品の構造を表すメッシュモデルを制作する.それぞれのメッシュの辺はビーズ作品のビーズに対応している.システムはユーザのモデリング中に常に近傍のビーズとの物理制約を考慮して辺の長さを調整する.システムは次にメッシュモデルを適切なワイヤーつきのビーズモデルへと変換する.ワイヤー経路の計算のためのアルゴリズムも提案した.システムは手動でビーズ作品を制作するための1ステップごとの制作手順ガイドを提示する.前年に研究開発したインタラクティブにデザインするインタフェースの他に,主に六角形から成るようにデザインしやすい六角形メッシュモデル用インタフェースの提案,既存3次元モデルからの自動変換アルゴリズムの提案を行った.
著者
五十嵐 悠紀
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究ではコンピュータを用いて手芸作品の設計を支援し、製作過程も支援する研究を行ってきた.今年度はパッチワークを題材にデザイン・製作を支援するシステムPatchyを作成し、研究・開発を行った。パッチワークは布をつなぎ合わせてデザインを作成する広く普及している手芸の1つである。ところが、出来上がり図は縫い合わせたあとでしか見ることができず、色合わせや柄合わせなどはあらかじめ出来上がりを想像してデザインするしかなかった。通常は鉛筆画でデザインをしたあと、色鉛筆で布に対応するような色を塗って配色を確かめてから実際に作ることが多く、初心者はデザインに長けた人がデザインした図柄を真似て作ることが多い。そこで我々はシステムを使って外形をデザインし、デザインした閉じた領域の中に、画像ファイルをドラッグアンドドロップすることで出来上がり図を試行錯誤してみることのできるシステムを提案する。画像ファイルには、実際に使いたい布をスキャンしたテクスチャ画像を用意し、これを用いる。ユーザは布と布の切り替え線(実線)の他、ステッチとしての縫目(点線)もデザインすることができる。既存研究のつまんで引っ張る機能[Igarashi et al. 2005]を実装してあり、ユーザが外形をつまんでひっぱることで、テクスチャもリアルタイムに追従する。内部的なデータ構造としては2次元であるが、ピクセルごとに擬似的な法線方向を計算し、法線と光線方向を加味した色合いを計算し、描画している。このようにすることで、あたかも実際に縫い合わせたかのようなぷっくりとした立体的な描画を、一般家庭に普及しているような安価なノートPCにおいてリアルタイムで実現している。
著者
南 範彦
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

F_1-スキームの基礎的初等整数研究で、F_1(一元体)-的な見方が前面に出した論文が、Journal of Number Theoryに掲載された。A_1-ホモトピー論に関して基本的だが難解なMorel-Voevodskyの論文の理解が進み,そのサーベイ論文がRIMS Kokyuroku Bessatsuに掲載された.自由ループ空間の研究からBockstedt-Hsiang-MadsenのNovikov予想代数的K類似と,トポロジカル絶縁体のdisorderの有る場合に興味を持ったが,これら共通の先に非可換幾何のBaum-Connes予想が有ることを認識した.
著者
大浦 弘樹
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は,統計的思考の育成を目標に「データ分析と論証活動を支援する探究型学習環境」を開発することである.平成28年度は「未来の学習のための準備(Preparation for Future Learning: PFL)」の支援原理をもとに,学習者が講義などの説明を受ける前に学習者が他の学習者とデータ分析と論証を通した統計的問題解決を体験できるノベルゲーム型の学習環境を構築し,小規模の評価実験を実施した.29年度の研究計画として,1)学習コンテンツの制作と2)学習環境(システム・コンテンツ)の評価の2つがあった.まず1)について,28年度の実験結果の詳細な分析から既存のシステムではにPFLに必要な足場かけが十分でなかったと判断し,システムとコンテンツの仕様を変更して修正を行った.具体的には,既存のシステムでは統計的問題解決を体験できるものの,サンプリング(対象とサイズの選択)と収集したデータに対する統計量の選択のうち,サイズの決定しか学習者側で指定できない仕様だった.そこで,サンプリングの対象や統計量の選択も学習者側で指定できる仕様に変更してシステムとコンテンツを修正した.これにより,学習者は問題解決型シナリオの中での意思決定機会が増え,統計的問題解決のプロセスをより深く体験できるようになった.一方,2)については,修正したシステム・コンテンツで評価実験を実施した結果,想定した人数の被験者が集まらなかったため,実験計画を練り直し30年度に評価実験を再実施することにした.
著者
大浦 弘樹
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、学習者自身のデータまたはシミュレーションによって生成したデータから統計的表象を生成可能なWebベース学習支援システムを開発した。本システムでは専門的な知識やスキルがなくとも平均値や標準偏差といった代表値の計算や、ヒストグラムや箱ひげ図といった統計的表象を生成することができ、パラメタを指定することで理論分布からデータを生成することも可能である。本システムの評価実験の結果、被験者は自ら生成した図表の解釈やその比較をしながらデータの解釈に向けた会話が起きることが確認された。
著者
藤井 恵介 川本 重雄 平山 育男 溝口 正人 後藤 治 大野 敏 藤川 昌樹 光井 渉 大橋 竜太 清水 重敦 藤原 重雄 加藤 耕一 角田 真弓 野村 俊一 上野 勝久
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、日本の建築と都市にかかわって、<天災・人災→被害→修理・再建・再生>というプロセスについて、日本の7世紀から20世紀まで、実例を調査、収集する。そして特にその際に起きた技術革新と建築様式の変化を明らかにすることが目的である。主要な成果は以下の通り。①安元3年(1177)に起きた京都大火と治承4年(1180)の南都焼討は、大仏様を誘発する契機となり、和様を中心様式から引きずり下ろした。②明治24年の濃尾地震(1891)は、その後の近代建築の耐震性上昇などの大きな誘因となった。しかし、被害が過剰に報告されるなど、情報が操作された点も多い。
著者
堀川 直顕 三宅 和正 林 良一 福井 崇時 森 邦和 中西 彊
出版者
名古屋大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1986

この研究はスピン偏極した陽子をつくり、高エネルギ-実験に利用することを一つの動機として原子状水素ガスの生成を目指した開発研究である。このため、いくつかの装置の製作、測定手段の開発を手がけ、原子状水素発生のテストに入る段階にきた。ここで、これまでの成果をまとめておく。(1)超伝導電磁石の冷却と励磁。最高6.4テスラを得、軸上磁場分布を測定。(2)磁場モニタ-用ホ-ル素子(Matsushita OHOO3)の低温での較正。(3)希釈冷却器の製作とテスト(ヘリウムー3ガスで0.4Kまで冷却)。(4)ヘリウムー3ガス循環精製器の製作とテスト。(5)冷却系、磁場強度等の自動モニタ系製作。(6)ラジオ波による水素ガスの放電効離条件のテスト。(7)原子状水素検出のためのボロメタ-の製作とテスト。ヘリウム超流動膜の消滅を示す信号を検出。(8)スピン偏極原子状水素をNMRで検出するための回路の製作。最終年度の報告が遅れたのは、上記の項目等を達成するのに時間がかかったためである。現状では希釈冷却器での水素解離は行っていないが、ガラスデュワ-中で超伝導磁石を冷やして励磁し水素ガス解離と検出のテストをくり返しており、希釈冷却器については機能向上のための改造を施している。今後の予定としては、(1)ガラスデュワ-中での原子状水素の確認、(2)希釈冷却器の希釈モ-ドテスト、(3)希釈冷却器内での原子状水素の貯蔵と検出、(4)ボロメタ-による密度測定、(5)ESR又はNMRによるスピン偏極度に測定、(6)マイクロ波による原子状水素ガスの取出し、等のテストに進んで行くことになる。なお、この研究と並行して高エネルギ-スピン実験も実行した。
著者
北居 明 山田 幸三 伊藤 博之 河合 篤男 吉村 典久 井上 達彦 石川 敬之
出版者
大阪府立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

前年度の研究成果を踏まえ、中部地方を中心に蔵元へのヒアリング調査を行った。また、丹波杜氏記念館へのヒアリング調査も併せて行った。研究者グループが全員集合した研究会を、神戸大学と大阪府立大学中之島キャンパスで計2回行った。中之島キャンパスの研究会では、静岡県立大学の尹大栄准教授を研究会に招聘し、静岡県における酒造りについて研究発表をお願いした。このような研究活動の結果、まず杜氏と蔵元の関係の地域ごとの違いが明らかになった。桶買いが主な製造方法となった灘においては、主な杜氏供給元であった丹波は徐々に杜氏の数を減らして行き、平均年齢も高くなっていることがわかった。また、蔵元へのヒアリング調査からは、桶売り依存度が高い蔵元は、衰退する傾向があることも明らかになった。一方、蔵元の地域にこだわらない杜氏供給によって、南部杜氏は杜氏の数をあまり減らしておらず、若い杜氏も育ちつつあることがわかった。また、杜氏も、複数の蔵元を経験しつつ、ある蔵元での在籍期間が長い方が品評会で高い評価を受けることが明らかになった。その一方で、独自の酵母や発酵技術の開発により、杜氏を用いない蔵元も出現しつつあることが明らかになった。前述の尹准教授による静岡における酒造産業の研究からは、近年独自の酒造りによって品評会で高い評価を受けたり、国内での売上を伸ばしつつある蔵元には、このような蔵元が多いことも示唆された。このように、日本酒産業全体の衰退の中で、伝統的な事業システムである杜氏と蔵元の関係は、近年変貌を遂げつつあり、このような変化が次世代の酒造りに対しても、杜氏への依存度が低い事業システムへの圧力となりうることが予想される。
著者
稲垣 良典
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

(1)オッカムの認識理論に関しては, まず感覚と知性との関係, および人間的認識の生成ないし展開における両者の役割をあきらかにすることを研究目標とした. 13・14世紀において感覚的認識の生成を説明するために広く援用されたスペキエス理論(species sensibilis可感的形象)をオッカムが斥けた理由をあきらかにするため, ロバート・グローステスト, ロージャー・ベイコンなどにおけるスペキエス理論を原典について考察した. その結果, スペキエス理論は当時, 物理的因果作用の一般理論にまでたかめられる傾向があったことをつきとめたが, すでにJ.ドゥンス・スコートウスにおいてこのような物理的(自然学的)因果作用の理論によっては認識の生成は解明できないことが洞察されており, オッカムも基本的にスコートウスのスペキエス否定の立場を継承しつつ, それを更に徹底せしめているとの見通しをえた. しかし, オッカム自身が認識の生成を説明するために導入している因果性の概念については, それをいかに理解すべきかは今後の課題として残っている.(2)感覚的認識と知性的認識との関係については, オッカムにおいては感覚的認識から出発しつつ, いかにして知性的認識が形成されるかという問題, すなわち知性認識の可能性もしくは成立根拠の問題は問題として提起されていないことが注目される. このため, たとえばトマス・アクィナスにおいて見出されるような抽象理論はオッカムにおいては不在であり, いわゆる能動知性による抽象は明確に斥けられている. 認識理論における中世から近世への大きなパラダイム変換は, おそらくトマスとオッカムの間に起っているのではないかと想定される.(3)学問論においてはトマスにおける中心概念である形相的対象(objectum formale)の概念はオッカムにおいて完全に排除されており, ここにもパラダイム変換が推定される.
著者
笠原 稔 宮町 宏樹 日置 幸介 中川 光弘 勝俣 啓 高橋 浩晃 中尾 茂 木股 文昭 加藤 照之
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

ユーラシアプレートと北米プレートの衝突帯には、2つの巨大プレートとは独自の変動をするオホーツクプレートとアムールプレートの存在が提案されてきた。そこで、実際の観測の手薄な場所でもあったこの地域での境界域テクトニクスを検討するために、想定アムールプレート内のGPS観測により確認することと、この地域での地震観測の充実を意図して、この研究計画は進められた。1995年以来進めてきた日口科学技術協力の一環として、この地域での共同研究の推進に関するロシア科学アカデミーと日本側大学連合との合意を元に、2002年から2004年の計画で、GPSの可能な限りの多点化と連続観測を主として極東ロシアでの観測を進めてきた。また、地震観測は、サハリン島の衝突境界としての特徴を明らかにするために、南サハリン地域での高感度高密度観測を推進してきた。結果として、アムールプレートの動きは想定していたほど単純なものではなく、計画の3年間では結論付けられなかったが、その後の日口での観測継続の結果、サハリンでの短縮はかなり明瞭ながら、その原因をアムールプレートの東進とするには、まだ難しいということになっている。今後、ロシア側の観測網の充実が図られつつあり、その解決も時間の問題であろう。一方、サハリンを含む、日本海東縁部に相当する、2つのプレートの衝突帯と想定される場所での地震活動は高く、2000年8月のウグレゴルスク南方地震の後も、中越地震、留萌支庁南部地震、能登半島沖地震、そしてネベリスク地震、と引き続き、これらの地震発生帯が、2つのプレートの衝突境界域であることを示していると思われる。また、南サハリンでは、高感度高密度地震観測が続けられ、明瞭な南北延長の地震活動帯が認識できるようになってきた。これらは、北海道の地震活動帯の延長と考えられ、今後より一層、衝突帯のテクトニクスを考える上でのデータを提供できたものと評価できる。