著者
日野林 俊彦 南 徹弘 安田 純 志澤 康弘 赤井 誠生 新居 佳子 南 徹弘 安田 純 志澤 康弘 赤井 誠生 新居 佳子 山田 一憲 加藤 真由子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

2008年2月に日本全国より41,798人の女子児童・生徒の初潮に関わる資料を収集した。プロビット法による日本女性の平均初潮年齢は12歳2.3ヵ月(12.189歳)で、現在12歳2.0ヵ月前後で、第二次世界大戦後二度目の停滞傾向が持続していると考えられる。初潮年齢は、睡眠や朝食習慣のような健康習慣と連動していると見られる。平均初潮年齢の地域差は、初潮年齢が各個人の発達指標であるとともに、国内における社会・経済的格差や健康格差を反映している可能性がある。
著者
小崎 隆
出版者
京都大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本研究では、児童・学生および一般市民などの利用者を対象として、また、初等・中等教育現場や家庭などのさまざまな生活の場で、グローバルコモンズと地域環境資源を構成する重要な要素である「土」に関わるこれまでの知見を、平易かつ多面的に理解せしめることを通して、人と環境のあるべき姿を考える契機を与えるような環境教育補助ツールであるバーチャルミュージアム「土の不思議館」を試作することを目的とした。本年度は以下の研究を実施するとともに最終年度の取りまとめを行った。1)ペテルブルク大学土壌博物館と京都大学で協同してバーチャルミュージアム「土の不思議館」を製作した。2)海外の研究実施地域で追加資料の収集を行うとともに、国内の研究機関等で上記ソフトウエアの必要な改訂のための意見を聴取した。3)ペテルブルク大学および周辺の科学アカデミー研究機関においてソフトウエア試作版のデモンストレーションを行い、必要な改訂のための意見を聴取した。その後、ペテルブルク大学附属土壌博物館において、研究協力者Aparin館長ならびにAbakumov博士とともに、それまでに得られた評価に基づいてソフトウエアの改訂を行った。4)成果報告書を作成し提出するとともに、収集資料およびこれまでの現地調査で得られた成果を原著論文として公表した。
著者
原田 浩徳
出版者
広島大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

RUNXファミリー因子異常による新たな造血器腫瘍発症機序を明らかにするために、エピジェネティック異常に基づく遺伝子発現の違いに注目した。本年度は造血器腫瘍患者のCD34陽性細胞RNAを用いてRUNX1アイソタイプの定量およびRUNX3の定量を大規模に行い、その結果をもとに生物学的解析を行った。RUNX1アイソフォーム発現はエピジェネティック制御機構の異常により変化すると考えられるが、正常造血幹細胞においてはRUNX1bが優位であるにもかかわらず、一部のMDS症例において短躯型アイソタイプRUNX1a発現の亢進が見られた。RUNX1aを正常造血幹細胞に導入したところ増殖能の亢進を認めたことから、下流標的遺伝子を同定して機能解析を行った。その結果、最終的にHOXA9の発現を誘導し、MDS発症・進展の一因となっていることが明らかになった。一方、RUNX3の発現を造血器腫瘍においてさらに検討したところ、一部低発現症例が認められたものの、逆に高発現の症例を多く認めた。特に、MDSから白血病への進展に伴って発現が亢進することが明らかになり、MDSから白血病への進展に関与することが示唆された。RUNX3ノックアウトマウスの表現型が高齢マウスのMPN様細胞増殖であることを考えあわせると、がん抑制遺伝子と考えられていたRUNX3が過剰発現によって白血病進展に関与するという新たな制御機構が明らかとなった。そこで臍帯血よりCD34陽性細胞を分取し、レトロウイルスベクターを用いてRUNX3過剰発現を行い、vitroでの増殖能・分化能を検討した。また、RUNX3が過剰発現しているK562細胞を用いて、RUNX3ノックダウンを行い、影響を検討した。これまでの結果、RUNXファミリーの遺伝子異常に依らない制御異常によるMDS・白血病の発症機構が明らかになった。
著者
宮川 禎一
出版者
京都国立博物館
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

日本国内に所蔵された銅鼓のうち、東京国立博物館、東京大学、浅草太鼓館、浜松市楽器博物館、野洲町銅鐸博物館、泉屋博古館、辰馬考古資料館、国立民族学博物館、大阪音楽大学付属楽器博物館、九州歴史資料館に収蔵されている銅鼓を観察し一部実測などの資料収集と分析検討をおこなった。その結果は以下のようなものである。1、西盟型銅鼓については、その施文技術の変化、すなわち蝋原型のうえにどのような手法で施したのかの違いにより、時間的な先後関係を推測することが可能となった。その順序は(1)砂土製外型に対してスタンプ押しをおこなう失蝋法導入以前の段階(日本国内には実例は無い)。(2)失蝋法の導入直後で文様は単体スタンプ押捺によっておこなう段階(浅草太鼓館例など少数)。(3)失蝋法を用い、文様は回転押捺技法も加わった段階(東京国立博物館例など多数)。(4)失蝋法を用いるが、文様は単体スタンプ押捺と長分割型によるもので、回転押捺は見られなくなる段階(野洲町銅鐸博物館鼓、浜松市楽器博物館鼓など)。この結果は未解明であった西盟型銅鼓の前後関係を明らかとした点で重要である。2、麻江型銅鼓についてはその鼓面の文様構成の検討によって、ひとつの基本形から時間の経過によって拡散展開してゆく過程をたどることができた。具体的にはウイーン1号鼓の文様構成が最も厳格であり、その他の麻江型銅鼓はこのユィーン1号鼓より後続することが明らかとなった。その時間的距離は文様配置原則からどのくらい逸脱しているかによってはかられる。具体的にはウイーン1号鼓→辰馬2号鼓→東博2号鼓→東大教養鼓→東大文学部鼓、のような順序で変遷をとげたことが推測される。この結果は麻江型銅鼓の展開を研究するうえで基本的な骨格となるものである。
著者
佐々木 丞平 西上 実 若杉 準治 山本 英男 山下 善也 大原 嘉豊 赤尾 栄慶 羽田 聡 淺湫 毅 中村 康 久保 智康 尾野 善裕 山川 曉 永島 明子 宮川 禎一 森田 稔 小松 大秀 村上 隆 呉 孟晋 水谷 亜希 難波 洋三 伊東 史朗 井上 一稔
出版者
独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、木を単に造形作品の素材・材料としての視点から捉えるのではなく、樹木そのものを信仰の対象として崇拝し、美の対象として描いてきた、日本人の樹木に対する精神のありようにまで踏み込んで調査し考察することが主たる目的であった。このような視点から調査研究を進めてきた結果、たとえば山形・熊野神社の伝十王坐像にトチ、静岡・建穂寺の千手観音立像にクスノキがあえて用いられている背景には、用材としての性能ではなく、信仰的な意味合いが強く意識されていたことなど、日本人と樹木の関係にかかわる貴重な成果が得られた。
著者
高井 伸彦
出版者
長崎国際大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

認知機能の低下は,脳腫瘍や小児白血病における放射線療法に限らず肺がんにおける化学療法においても生じる副作用の一つである。炭素線および陽子線を脳局所に照射した脳腫瘍治療モデル動物の場合,晩発期では実際の治療線量の1/2〜1/3線量である15-30Gyの照射により,記憶の獲得過程の障害が生じることを明らかにし,またその障害の要因として,海馬神経細胞数の選択的な減少が関連していることを明らかにした。
著者
岩下 孝 関谷 紀子
出版者
(財)サントリー生物有機科学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

膜タンパク質に^<19>F固体NMR法を適用して構造解析を行うためにフッ素化トリプトファンのバクテリオロドプシンへの取込み実験を計画した。バクテリオロドプシンには8個のトリプトファンしか含まれていないが、化学シフトの重なりが予想されるので分散性を期待して4-F、5-F、6-F-トリプトファンについて取込み実験を行い、それぞれのトリプトファンが標識されたフッ素化バクテリオロドプシンを得た。その中で6-F-トリプトファンを含むバクテリオロドプシンはスクロースグラジエントやMALDI-TOF MSの挙動からタンパク質と膜との複合的な構造に根本的な違いがある可能性が示唆された。そこで、これら3種のF-トリプトファン含有バクテリオロドプシンのX線回折実験およびCDスペクトルの測定を行ったところ、6-F-トリプトファンを含むバクテリオロドプシンについてはX線回折像が全く得られず、またCDスペクトルからも非結晶性であることが明かとなった。タンパク質内での核間距離の測定を目指してレチナールクロモフォアのシクロヘキセニル部分をCF3基を持つベンゼン環に置換した合成レチナールを調製し、5-F-トリプトファンを含むオプシンとの再構成を行った。トリプトファンのインドール環上にあるフッ素と天然レチナールと置き換えた合成レチナールのCF3基との間に双極子-双極子相互作用による磁化移動が起こるかどうか実験を行った。1次元RFDR実験と2次元CP_EXCY実験によって磁化移動が起っていることが示唆されたので、2次元MELODRAMA実験を行ったところ、両者の化学シフトが交差する位置にダイアゴナルピークとは逆位相のクロスピークを観測し磁化移動が起っていることを確認した。
著者
山内 博 網中 雅仁 荒井 二三夫 吉田 勝美 中井 泉 斉藤 秀
出版者
聖マリアンナ医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究は、急性や慢性砒素中毒患者の妊婦が高濃度な無機砒素を摂取した場合、胎児の脳中枢神経障害は発生するか否かについて、動物実験モデルを用いて解明を試みた。妊娠ラット(妊娠17日目)に投与した三酸化二砒素量はLD_<50>の1/4(三酸化二砒素として、8.5mg/kg)である。三酸化二砒素投与後、12、24、48時間目にラットを屠殺し、脳中の砒素を化学形態別に測定、そして、組織診断(タネル法でのアポトーシス細胞診断)を行った。他方、自然出産させた群(生後5週齢)を用いて、自発行動量(Animex)と7項目(潜伏時間、歩行量、立ち上がり回数、毛繕い回数、洗顔回数、脱糞回数、排尿回数)のOpen-field testを実施した。脳血液関門が未成熟な段階において、胎仔の脳へ三酸化二砒素もしくはその最終代謝産物であるジメチル化砒素(DMA)が増加し、脳細胞は損傷を受けた現象が観察された(アポトーシス細胞;12時間目が最も発生し、時間の経過と共に減少傾向)。この作用は母獣では認められず胎仔のみであった。脳細胞への損傷は三酸化二砒素によるものか、それとも代謝物であるDMAによる作用であるか、新たな研究の必要性が提起された。行動学(Open-field test)の7項目の結果は、三酸化二砒素投与群と対照群の二群間を比較すると、歩行量と潜伏時間に二群間で有意差が認められた。立ち上がり回数、毛繕い回数、洗顔回数、脱糞回数、排尿回数に関しては、二群間で差が見られなかった。しかし、三酸化二砒素投与群の雌では立ち上がり回数の減少、毛繕い回数の増加がそれぞれ統計学的に有意差が認められた。自発行動量の結果は、三酸化二砒素投与群と対照群の休眠期の活動に差は認められなかった。しかし、活動期では三酸化二砒素投与群は午前4:00〜午前8:00の時間帯での活動量の減少を認めた(t-testとANOVA)。今日、飲料水の無機砒素汚染からの高濃度な無機砒素暴露者は世界的な規模では約1300万人存在し、妊婦、胎児や乳児への暴露が存在している。また、急性砒素中毒患者の妊婦から生まれて来た赤ん坊も存在している。本研究において、胎児期の砒素暴露による脳障害の発生は、組織診断と行動学的な検査結果において示唆され、今後、この分野の研究は十分に発展させる必要性があると考えた。
著者
伊藤 壽啓 喜田 宏 伊藤 啓史 大槻 公一 堀本 泰介 河岡 義裕
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

1997-1998年にかけて香港において鶏由来高度病原性インフルエンザウイルスがヒトに伝播し、18名の市民が感染し、うち6名を死に至らしめた。このウイルスはいずれの株も鶏に対しては一様に全身感染を引き起こし、高い致死性を示したが、哺乳動物に対する病原性では明らかに2つのグループに区別された。すなわちグループ1は50%マウス致死量(MLD_<50>)が0.3から11PFUの間であり、もう一つのグループ2はMLD_<50>が10^3以上であった。この成績から鶏由来高度病原性インフルエンザウイルスの哺乳動物に対する病原性にはウイルス蛋白の一つであるヘマグルチニンの開裂性に加えて、さらに別の因子が関与しているものと推察された。一方、野生水禽由来の弱毒インフルエンザウイルスを鶏で継代することにより、弱毒株が強毒の家禽ペストウイルスに変異することが明らかとなった。この成績は自然界の水鳥が保有している弱毒のインフルエンザウイルスが鶏に伝播し、そこで受け継がれる間に病原性を獲得し得る潜在能力を保持していること、また鶏体内にはそのような強毒変異株を選択する環境要因が存在することを示している。また、この過程で得られた一連の病原性変異株はインフルエンザウイルスの宿主適応や病原性獲得機序のさらなる解明のための有用なツールとして今後の研究に利用できる。そしてそれはプラスミドから変異インフルエンザウイルスを作出可能なリバースジェネティクス法の併用によって、さらに確実な研究成果が期待されるであろう。現在はその実験系を用いた人工ウイルスの作出に成功しており、今後、最終段階である感染実験による病原性獲得因子の解析を計画している。
著者
堀本 泰介 五藤 秀男 高田 礼人 安田 二郎 下島 昌幸 高田 礼人 安田 二郎 下島 昌幸
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

人畜共通新興再興感染症は人類の脅威である。特に、H5N1 高病原性鳥インフルエンザの世界的な蔓延とヒトへの感染は、インフルエンザの新たな世界的大流行(パンデミック) を危惧させている。本研究では、こういった世界情勢を鑑み、H5N1 ワクチン開発のための基礎研究を実施した。その結果、不活化ワクチン製造のためのシードウイルスの発育鶏卵ならびにMDCK 細胞における増殖基盤を明らかにし、その知見をもとに高増殖性シードウイルスの作出に成功した。本成果は、今後のインフルエンザワクチン開発におおいに貢献することが期待される。
著者
栗原 秀幸
出版者
北海道大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

食後高血糖抑制効果を期待できるα-グルコシダーゼ阻害物質を水産食品中に見いだす研究はほとんどなされていない。その萌芽的研究として、本研究により海藻食品のヒジキからα-グルコシダーゼ阻害物質を初めて単離し、構造、阻害活性および様式を明らかにした。まず、寒天平板を用いたα-グルコシダーゼ阻害性試験を指標として、阻害成分の分画をおこなった。市販乾燥ヒジキの含水メタノール抽出物から各種クロマトグラフィーにより分画し、二種類の阻害物質を単離した。得られた両阻害物質はともに糖および含硫化合物呈色試験に陽性で、GCにより脂肪酸残基の存在が明らかとなった。各種臓器分析(IR、UV、MS、NMR)の結果から、両阻害物質の構造を植物の主要な糖脂質である6-スルホ-α-キノボビラノシルジアシルグリセロール(SQDG)およびそのリゾ型の6-スルホ-α-キノボビラノシルモノアシルグリセロール(SQMG)と決定した。速度論的解析により、SQDGの酵母α-グルコシダーゼに対する阻害物質定数(Ki)を3.0μMと、阻害様式を拮抗型阻害とそれぞれ明らかにした。SQMGの単離量が少なく、Kiを求めることができなかったので、SQMGとSQDGの同濃度での酵素阻害率を比較したところ、SQMGの阻害活性が2.5倍強かった。以上のように、ヒジキから新タイプのα-グルコシダーゼ阻害物質として糖脂質を得た。本研究では、SQDGとSQMGの酵素阻害性は始めて明らかにされ、糖脂質研究の中でも遅れていたグリセロ糖脂質を対象とした研究発展の端緒となるに違いない。今後、スルホキノボ-ス類縁体の酵素阻害性や単離した阻害物質のin vivoでの有効性を検討する必要がある。
著者
人見 裕江 中村 陽子 小河 孝則 畝 博 井上 仁 仁科 祐子
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

グループホームやデイサービスにおける痴呆症高齢者ケアの実態と美容を取り入れたケアの効果について、事例分析、免疫機能、動脈硬化指数、家族に及ぼす美容の効果、およびスタッフをはじめとするケア提供者へ及ぼす影響について検討した。免疫機能、動脈硬化指数では変化が明らかではなかったが、認知症高齢者の表情が豊かになり、言語も増す傾向が示され、スタッフや家族への相互作用があることが示唆された。化粧が及ぼす生理・心理的反応に関する基礎的研究(北川・人見、2006)を行い、手軽にできる口紅について、心理的変化および脳活動・自律神経機能に与える影響について検討した。口紅をつけた結果、これまでの報告にもみられるように、化粧による気分の高揚や積極性の向上などの心理的変化が認められた。しかし、このような心理的変化では、脳活動。自律神経機能には有意な影響を与えないことが示唆された。京都、イスタンブール、ベルリンにおける第20-22回アルツハイマー病協会国際会議に参加し、世界の認知症ケアに関する情報を得た。A老年性痴呆疾患治療病棟における攻撃的行動のある認知症高齢者に対するスタッフの態度とバーンアウト症候群との関係をパイロットスタデイとして調査した。攻撃的行動を否定的に捕らえるスタッフはバーンアウト傾向にあることが示唆され、認知症ケアにおける看護介入の方策、およびスタッフ教育について、検討する必要性が急務であることが示めされた(人見・中平・中村・他、2006)。そこで、大阪および山陰地方の介護施設のスタッフ約1、500人を対象に、調査研究を行った。また、代替療法を用いた介入研究を地域の病院における療養型治療病棟や特養において実施し、本人だけでなくスタッフおよび家族への波及効果がある傾向が示された。今後、全国の痴呆症ケアに関わる病院や施設および事業所等に勤務するスタッフの態度とバーンアウト症候群との関係を明らかにし、介護提供者の教育システムを構築に関する示唆を得ると共に、提言をする予定である。
著者
笹川 寿之 浜 祐子 GIGA-HAMA Yuko
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

高リスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)のHPV16が子宮頚癌の発生を誘発することが明らかになっている。したがって、HPV16に対して有効な免疫を誘導することが感染防止や将来の癌発生防止に有効であると考えられている。米国のグループがHPV16型L1蛋白を酵母で発現させて作成したウイルス様粒子(VLP)をワクチンとして人に免疫したところ、100%その感染は抑えられたと報じられた。このワクチンは注射ワクチンで、精製したウイルス様粒子を計3回の注射を行っている。効果はみとめられたが、このワクチンは単価が高く、また、低開発国など医療設備が充実していない地域において、このワクチンの保存や注射そのものが難しいなどの問題点がある。そこで、安価で経口投与出来るワクチンの開発が期待されている。最近、我々はHPV16型様粒子を産生する酵母を経口投与した後にごく少量のVLPを鼻粘膜に投与することで、HPV16型特異的な抗体が誘導されることを発見した。本研究では、この研究を発展させ、HPV16型感染の防御のみならず、HPV16型特異的なキラーT細胞を誘導し、治療を目的としたワクチンの作成を試みた。S.pombeの発現ベクターにHPV16L1-E7(L1を短くしたC-末に全長のE7を導入したもの)を組み込んで発現させたところ、57kD,63kD,67kDの蛋白発現に成功した。このHPV16L1-E7を発現する酵母を凍結乾燥させ、マウスに食べさせたところ、HPV16様粒子(VLP)に反応することを確認した。このことから、この融合蛋白がL1だけで構成される粒子と同じような粒子を形成し、それによって抗体産生が誘導されることが示唆された。E7に対するキラーT細胞が誘導されているかどうかについて今後検討する予定であり、もしこれが誘導されれば、予防的かつ治療的ワクチンとして有望となる可能性がある。
著者
中村 征樹
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、研究不正問題が国際的にももっとも早い時期に「問題化」された米国の事例に着目し、研究不正行為が研究者コミュニティのみがかかわる問題としてではなく、科学者コミュニティの外部(社会)にとっても重要な問題として認識され、研究不正への取り組みが開始し、研究者倫理が生成・制度化してきた経緯を明らかにした。また、1990年代以降の研究倫理問題の国際化の進展についても明らかにすることで、研究者倫理の国際比較を行い、米国における「研究者倫理」の生成プロセスの特質を浮き彫りにした。
著者
村脇 有吾
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

諸言語の系統的な関係を解明するための計算集約的な統計手法を開発した。この問題は長年言語学者が人手によって取り組んできたが、過去に復元する問題は本質的に不確実であり、統計的推論が適していると考えている。成果は多岐に及ぶが、特に言語類型論の特徴列を潜在空間に写像するベイズ統計の手法は、複数の特徴が連鎖的に変化し得るという類型論的特徴の特性を捉えることを可能にしたという点で重要である。
著者
佐々木 節
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

初期宇宙における量子トンネル現象には,場の真空の相転移をはじめとして,インフレーション宇宙における様々な位相的欠陥の生成などがあり,それらは宇宙の大域的構造形成に深く関わっている.本研究では,こうした宇宙特有の環境下での量子トンネル現象の一般的・系統的な解析を目指して研究を進めた.以下はその成果である.前年度までに偽の真空の背景時空がド・ジッター時空であることを考慮した真空のモード関数を求めることに成功した.そして通常の双曲空間では規格化できないモード(超曲率モード)が曲がった時空上では不可欠であることを発見したが,今年度,泡自身の壁の揺らぎも考慮に入れた定式化を行なった結果,そのモードも超曲率モードであり,その泡の内部状態への寄与が,一般には無視できないことが判明した.これらの結果とインフレーション宇宙モデルを組み合わせ,新たに開いた宇宙の「一つ泡インフレーションモデル」を提唱した.また,(1)で判明した超曲率モードの宇宙背景放射の大角度温度揺らぎへの影響を簡単な宇宙モデルについて解析し,モデルへの制限を調べた.その結果,現在の大域的構造を説明する開いた宇宙のインフレーションモデルが十分可能であることを確かめた.
著者
若林 功 小松 啓一 田代 俶章 間下 克哉 和田 倶幸 横手 一郎
出版者
東京農工大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

1.解析関数の代数点における値が超越数とならないとき, その代数点は例外点と呼ばれるが, 例外点の個数を上から評価するシュナイダー・ラング型定理の拡張を研究した.(1) リーマン面への拡張. 複素平面の場合の完全な拡張が得られ, 裏面の第1論文で発表した.(2) 単位円上の関数に対しては, 知られている結果より良い評価式を得ることができていたが, その改良をできるだけ一般の形に拡張し第2論文とした.(3) 上記(1)(2)の結果等は若林の東京大学学位論文としてまとめられ既に審査済みで, 63年3月に学位授与の予定.(4) 若林は(1)(2)について口答発表を行った.(i) 函数論分科会シンポジウム, 於長崎大学, 62年7月.(ii) ディオファントス近似国際会議, 於Oberwolfach, ドイツ, 63年3月.2.超越数論で有名な「四指数問題」を研究した. 上記(2)て考案された方法の考え方を適用し若干の進展が得られた.3.多変数関数の場合のシュヴァルツの補題を研究したが, 状勢を調べたに留る.4.間下は四元数射影空間およびケーリー射影平面から球面への標準的極小はめこみの剛性について研究し, 裏面の第3論文とした.
著者
關 雄二 井口 欣也 坂井 正人 鵜澤 和宏 米田 穣 清水 正明 長岡 朋人
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本プロジェクトでは、アンデス文明初期にあたる形成期(前3000年~紀元前後)に焦点を絞り、ペルー北高地に位置するパコパンパ祭祀遺跡を調査し、遺構、出土遺物の分析を考古学のみならず理化学を含む分野横断的体制の下で進め、経済面以上に、イデオロギー面基盤を持つ社会的リーダーが紀元前800年頃に出現したことをつきとめた。またその権力形成過程や基盤に地域的多様性が認められることが判明した。この成果はアンデス以外の世界の古代文明においても適用できる可能性があり、その点で唯物史観に依存してきた文明研究に新たな視座を与えることができたと考えられる。
著者
内藤 健
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

通常、連続体力学(流体力学)では、数千個程度以上の分子群を巨視的にみて流体粒子と呼んで、その運動を記述している。生命体においそ、例えば、塩基分子の運動をみてみると、塩基の周囲に多数存在する水分子群と相互作用があるので、これらの分子群をひとつの仮想的な"粒子"と考えて、連続体力学によって分析することを試みた。まず本研究では、事前に、以下の知見を得て、それをキーとした。・塩基分子は大別して、プリンとピリミジンである。プリンのサイズはピリミジンの1.5倍程度である.塩基分子以外でも、例えば、細胞サイズにも分布があり、1.5倍程度までサイズに差異があることがある。そこで、サイズ比が1.5付近である理由とそのメカニズムの解明を目指した。その結果、・理論、コンピュータモデルと実験を総合すると、1.5付近が必ずしも最適というわけではなく、1.0〜約1.5の間で単純な優劣はつけにくい.このことが、サイズ比、つまり、分子種の多様性を生み出し、環境変化への対応能力をあげている.・様々なRNA分子の構造の必然性が明らかにされた.RNAの複雑なクローバー構造は、プリンとピリミジン塩基分子のサイズに由来している.・n次のルートnという数列のすべての値が1.0〜約1.5の間にあり、この数列で、生命に見られるサイズ比を表すことができる可能性がある.・この研究で対象としていた微生物研究の中から、80℃以上を好む好熱菌が同レベルの温度で作動する燃料電池で増殖する可能性が見出された。各種燃料電池材料の微生物劣化に関する評価法を提示するといったことなどの成果も生まれた.
著者
久我 隆弘
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

従来のものに比べてはるかに簡便かつ安価な単一光子発生装置を開発した。化学的に多量に合成できる半導体ナノ粒子(直径数nm程度)をポリマー薄膜中に固定し、その中の1個に着目してレーザー光を照射する。1個のナノ粒子からは、量子閉じ込め効果により一度に1個の光子しか放出されないため、この系はそのまま単一光子源となる。1秒あたり1万個を超える光子を光ファイバーに導き、単一光子の証であるアンチバンチングを確認した。