著者
辻 久生 谷 由美 上田 博夫
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.609-615, 1977
被引用文献数
3

セイタカアワダチソウ(<i>Soliclago altissama L.</i>)の乾燥根茎のメタノール抽出物を,その抗菌活性を検索しながら分割した.抽出物を水蒸気蒸留し,蒸留液より淡黄色針状結晶で分離された<i>cis</i>-dehydromatricaria ester(1)は,抗菌性を示さないが,結晶母液には活性が認められた.根茎に含まれる1の含量は,植物の生育中に変化し,開花前に最大となる.水蒸気蒸留残渣をエーテルで抽出し,得られた抽出物の酸性部より分離されたkolavenic acid (2)は,グラム陽性菌に対し強い抗菌活性を示し,その最小発育阻上濃度は,6~10 ppmであった.2より誘導された数種の化合物について,その抗菌性を検討した結果,2が抗菌性を示す化学構造上の要因として,2のkolevane骨格に存在する環構造部分と,側鎖に存在する遊離の形のカルボキシル基とが認められ,このカルボキシル基に共役する二重結合によって,活性が強められると考えられる.
著者
坪木 和久 上田 博 篠田 太郎 出世 ゆかり 中北 英一 林 泰一 中北 英一 林 泰一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

2006年にドップラーレーダを、宮古島と多良間島に移設し観測を行った。2006年は梅雨、台風3、5、13号の観測を実施した。2007年は台風12号と15号の観測を行い、これらの台風の詳細な構造を明らかにした。観測領域の36時間予報実験を毎日行った。雲解像モデルを用いて観測された台風の超高解像度のシミュレーションを行い、発達メカニズムや構造を明らかにした。レーダデータの雲解像モデルへのデータ同化法を開発し、高精度量的予測に向けた開発を行った。台湾の研究者と国際協力を進めた。
著者
小林 文明 菊地 勝弘 上田 博
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.125-140, 1996-02-25
参考文献数
11
被引用文献数
6

1988年9月22日13時すぎ石狩平野内で発達したsevere stormに伴って千歳市内で発生した竜巻を, 詳細な現地調査, 連続写真, ビデオテープやドップラーレーダー観測データから解析した. この千歳竜巻は20分間のライフタイム, 漏斗雲(funnel)の直径150mを有しF1スケールの被害をもたらした. ライフサイクルは漏斗の形状と被害特性の顕著な変化から, 発生期, 最盛期, 衰弱期および消滅期の4つに分けられた. この竜巻の発生には直径7kmのメソサイクロン(mesocyclone)が高度2〜3km程度で時間的に先行して存在していた. 雲底における漏斗雲の形状とメソサイクロンの北西象限で発生した直径1kmのマイソサイクロン(misocyclone)とはほぼ同時に観測され, 発生場所も一致していた. 地上の被害, 漏斗雲および親雲の時間変化の特徴もまた明らかにされた. すなわち地上の被害幅(200m)は高度400mまで舞い上がった "dust cloud(土挨)" のスケールと一致し, dust cloudおよび雲底の竜巻渦(1km)はそれぞれ地上と雲底における漏斗雲の直径のほほ10倍のスケールを有していた. 竜巻の発生時点では, 地上と雲底の竜巻渦の位置はほぼ一致していたが, 両者の移動速度の違いから時間とともに雲底下の漏斗雲および竜巻渦の挙動はかなり異なった様相を呈した.
著者
高橋 暢宏 上田 博 菊地 勝弘 岩波 越
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.539-561, 1996-08-25
参考文献数
32
被引用文献数
5

1988年7月に梅雨末期集中豪雨の特別観測(浅井, 1990)が行われ, ドップラーレーダーや時間・空間的に密なサウンディングデータ(〜100km, 3〜6時間)が得られた. 本論文では, 主にドップラーレーダーのデータを用いて梅雨末期の豪雨現象のメソスケールと対流スケールの特徴を下層の風系に着目して解析した. 用いたデータは主に長崎県西海町に設置した北大理学部のドップラーレーダーのデータである. 解析した事例は, 1988年7月17, 18日に観測した梅雨前線に伴う降水イベント, 2例(ケース1, ケース2)である. これら2つのケースともクラウドクラスターに伴う降水イベントであった. 降水はメソスケール現象として現れ, 降水量はケース1, ケース2それぞれ局所的に100mmを超した(例えば, 諌早で3時間にそれぞれ165mm, 104mm). ドップラーレーダーの観測からそれぞれのケースをまとめると, ケース1では大雨をもたらすエコーの組織化の原因としては, 発達したエコーから発生したガストフロントによる梅雨前線帯の収束の強化, 及び梅雨前線上に発達したレインバンドと南西海上で発生した孤立したエコーとの合流によるエコーの発達の効果であった. その結果としてレインバンドは大きく発達した. ケース2では, ケース1の約4時間後にケース1で大雨がもたらされた領域とほぼ同じ所に, 弧状に組織化したエコーによって大雨がもたらされた. エコーの弧状に組織化するプロセスにはやはりガストフロントが重要な役割を果していた. さらに, エコーの組織化の直前に暖かく湿った南西風の流入があり, これもエコーの発達に大きく貢献していた. これらの事例解析から明らかになったメソスケールと対流スケールの特徴は, (1)ガストフロントによる梅雨前線帯の収束の強化, (2)エコー同士の合流によるエコーの発達, (3)メソスケールの場での気温, 降水量のコントラストであった.
著者
高橋 暢宏 上田 博
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.427-442, 1995-06-15
被引用文献数
3

TOGA-COAREの集中観測期間中には様々なタイプの雲がマヌス島に設置したドップラーレーダーによって観測された。本論文では孤立対流雲と2種類のレインバンドを解析し、それらの特徴をエコー面積、エコー頂高度、最大反射強度の時間変化の観点から明らかにした。ケーススタディから得られた共通する特徴は、1)最大反射強度のピークはライフサイクル中の早いステージで現れ、それは下層の循環によってもたらされた。2)エコー頂のピークは最大反射強度のピークにやや遅れて現れ、これは上層の循環のステージの急激な発達に対応していた。3)アンビルの出現によるエコー面積のピークが最後に現れた。孤立エコーのケースでは、上記の特徴が運動学的に細かく解析された。このケースでは下層の循環のステージから上層の循環のステージへの移行が現れた。これらは、ドップラー速度場の解析から運動学的にも矛盾なく説明された。また、上層の循環のステージで最大エコー頂までに発達した後にアンビル雲が発達しエコー面積が最大になり、層状降水をもたらした。2つのレインバンドのケースは、ノンスコールタイプに分類された。一方は遅く伝播し、継続的な下層の後面から前面に向かう流れが成熟期に現れた。もう一方は、やや速い伝播速度を持っていたが、後面から前面へ向かう流れは継続的でなかった。それぞれは、GATE期間中に観測されたものの特徴と必ずしも一致していなかった。また、convective outflowは、いずれのケースにも観測され、2つめのレインバンドのケースではガストフロントとして観測されたものもあった。このガストフロントは0.5km〜1kmの厚さを持ち伝播速度は8〜10m/sであり、これは、レインバンドの伝播速度よりやや速く、ガストフロントはレインバンドのすぐ前方に位置していた。
著者
上田 博 遊馬 芳雄 高橋 暢宏 清水 収司 菊地 理 木下 温 松岡 静樹 勝俣 昌己 竹内 謙介 遠藤 辰雄 大井 正行 佐藤 晋介 立花 義裕 牛山 朋来 藤吉 康志 城岡 竜一 西 憲敬 冨田 智彦 植田 宏昭 末田 達彦 住 明正
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.415-426, 1995-06-15
参考文献数
26
被引用文献数
11

2台のドップラーレーダーを主に用いた熱帯の雲やクラウドクラスターの観測を、TOGA-COARE集中観測期間内の1992年11月12日から約2カ月半に渡って、パプアニューギニア、マヌス島で行った。観測期間中に、スコールライン、クラウドクラスターに伴う対流雲や層状雲、及び、日中のマヌス島上に発生する孤立対流雲等の種々の異なるタイプの雲について、ドップラーレーダーで観測した。マヌス島における観測の概要と観測結果の要約について述べる。観測データについての解析結果の予備的な要約は以下の通りである。1)レーダーエコーの発達の初期には暖かい雨のプロセスが支配的であり、最大のレーダー反射因子はこの時期に観測された。2)エコー頂高度の最大は最初のレーダーエコーが認められてから3時間以内に観測された。3)レーダー観測範囲内における、レーダーエコー面積の最大値はクラウドクラスターの大きさに対応して最大のエコー頂高度が観測された時刻より数時間遅れて観測された。4)長時間持続する層状エコー内の融解層の上部に、融解層下層の上昇流とは独立した上昇流が観測された。これらの観測データを用いてさらに研究をすすめることにより、熱帯のクラウドクラスターの構造や発達機構を解明できると考えられた。
著者
井上 芳光 古賀 俊策 近藤 徳彦 上田 博之 石指 宏通 芝崎 学 近江 雅人
出版者
大阪国際大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

ヒトの環境適応能の老化機序を解明するため,全身協関的視点から検討した結果,以下のことが示された.体温調節機序は男女とも,入力系→効果器系→出力系→中枢系の順序で老化し,下肢の汗腺機能は下腿が大腿より,下肢の後面が前面より早期に老化する.老化に伴い非温熱性要因の複合的入力に対する反応が小さくなる.若年者でみられた熱放散反応の性差は老化によって小さくなる.高齢者の汗腺機能の夏へ向けての亢進が若年者より遅延し,また,暑熱下の起立耐性に影響する皮膚血流量調節の関与は高齢者では小さく,夏季における高齢者の血栓形成は若年者より促進される.体温調節機序の入力系や出力系に対して老化遅延策は見出せなかったが,効果器系では運動習慣の確立が有効である.
著者
柴垣 佳明 山中 大学 清水 収司 上田 博 渡辺 明 前川 泰之 深尾 昌一郎
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.69-91, 2000-02-25
参考文献数
34
被引用文献数
4

1991年6月17日〜7月8日にMU(VHF帯)・気象(C・X・C / Ku帯)レーダーを用いた梅雨季対流圏の同時観測を行った。MU・C / Ku帯レーダーは風速の3成分と雨雲の鉛直分布をそれぞれ観測した。また、C・X帯レーダーはメソα, メソβスケールの雨雲の水平分布をそれぞれ調べた。この3週間の中で最も激しい降雨が観測された7月4〜5日の期間には、メソαスケール低気圧近傍でいくつかのメソβ, メソγスケールの雲システムが観測された。これらはi)温暖前線、ii)寒冷前線付近の対流雲およびiii)寒冷前線の北西側の層状雲として分類された。i)では、高度14km付近まで発達した降水雲内の顕著な上昇流は高度4〜5kmにおける前面・後面からの吹き込み成分の収束と中部対流圏の強い南風によって生成された。ii)では、寒冷前線の前面にガストフロントを持った狭いレインバンドがみられた。そのレインバンドの前方とその中では、メソγスケールのローター循環がそれぞれ発見された。iii)では、南東風(北西風)は高度9km付近まで延びた寒冷前線面の上側に沿って(その内部および真下で)上昇(下降)していた。その前線面下側には降雨を伴わない乾燥域が存在し、そこでは前線面に沿って下降した西風の一部が雲システムの後方へ吹き出していた。本研究では、晴天・降雨域の両方で観測された詳細な風速3成分を用いることで、上で述べたような特徴的なウインドフローをもったメソβ, メソγスケールの雲システムの鉛直構造を明らかにした。これらの構造は日本中部で観測されたメソαスケール低気圧近傍のクラウドクラスターの階層構造の中のより小さな雲システムとして示された。
著者
菊池 勝弘 早坂 忠裕 梶川 正弘 桜井 兼市 遊馬 芳雄 上田 博 バジルド C.E. ベロツェルコフスキイ A スチュアート R.E. ムーア G.W.K. 佐藤 昇 バジルド C.
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

北極圏の水循環・エアロゾル等の物質循環,低温下での雪結晶の形成メカニズムの解明のために,スカンジナビア北極圏のスウェーデン・キルナのスウェーデン国立宇宙物理学研究所において,Xバンド鉛直ドップラーレーダー,レーザー・シ-ロメーター,マイクロ波放射計,全天日射・長波放射計,メソネット気象観測,エアロゾルサンプリング,それに,雪結晶の地上観測を1997年12月14日から1998年1月20日まで行った.観測期間を通して暖冬であったが,さまざまなタイプの降水現象を観測することができた.12月中は快晴時が多く,あまり降雪現象は観測されなかったが,1月に入ると休むことなく降雪が続き,強度は弱いが10分程度の強弱を持っ山岳性の降雪現象や,ノルウェー海を進行する低気圧に伴う背の高い降水エコーを持つ降雪現象を観測することができ,観測時間は600時間を超えた.これらのデータは現在解析中である.一方,マイクロ波放射計による水蒸気量および雲水量の観測から,以下のことが明らかになった.1)水蒸気量の鉛直積分値は,快晴時の0.4cmから降雪時の0.7cm,濃密雲粒付雪結晶や霰の降る時には,1.0cmに達し,幅広い変動を示した.2)雲水量(鉛直積分値)は,雲粒付雪結晶の時は0.01cm以上となり,霰の時には0.04cm程度まで増加した.また,降雪をもたらす擾乱のタイプにより大きく変動することが分かった.雪結晶の観測では偏光顕微鏡により35m/mフィルム95本,レプリカは500枚作成することができた.各種の低温型雪結晶の他,針状結晶から霰まで,ほとんどの結晶形を記録することができた.
著者
上田 博 梶川 正弘 早坂 忠裕 遊馬 芳雄 菊地 勝弘 和田 誠 ソラス M.K.
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

北極域の気候変動や水循環を解明する上で、ポーラーローを含む北極低気圧の発生・発達過程と北欧北極圏やノルウェー海上での水蒸気輸送や雲、降水粒子の形成過程を明らかにするために、地上リモートセンサーを用いた現地観測を行なった。1999年1月から4月までスウェーデン・キルナで現地のスウェーデン宇宙物理研究所の協力を得て気象観測用Xバンド鉛直ドップラーレーダーのデータを取得した。得られたデータを解析した結果、スウェーデン・キルナ地方の降水はスカンジナビア山脈の影響を強く受け、空気塊の斜面上昇による山岳性降水やノルウェー海上を北上する低気圧に伴う上層の前線からの弱い降水と山脈の強制上昇の影響を受けた下層雲との相互作用によって降水が増強されている様子が観測された。また、1999年10月にノルウェー海の中央に位置するベアー・アイランドのノルウェー気象局の観測所、スピッツベルゲン島・ニーオルセンの国立極地研究所の観測施設に出かけ、北極圏の低気圧に関する資料やデータを収集した。また、その際に簡易気象観測機器を設置して北極圏の低気圧に関してのデータを取得した。これらのデータは厳冬季を含む北欧北極圏やノルウェー海上での雲や低気圧の構造・発達過程、水循環・輸送過程が明らかになり、ポーラーローを含む北欧北極圏での気象擾乱の構造や水・エネルギー循環を明らかにするための基礎データとなることが期待される。
著者
柴垣 佳明 山中 大学 橋口 浩之 渡辺 明 上田 博 前川 泰之 深尾 昌一郎
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.569-596, 1997-04-25
参考文献数
39
被引用文献数
4

1991年6月17日〜7月8日にMU・気象(C・X・Ku帯)レーダーを用いた梅雨季3週間連続観測を行った. MUレーダーの観測データから, 下部対流圏の降雨エコーの影響を完全に除去して, 信頼性の高い高分解能の3次元風速のデータセットを作成した. 梅雨前線は最初の約1週間(6月17〜24日)はMUレーダー観測所の南方にあり, その後一旦(6月25〜28日)は北方に移動した. 6月29日以後は中間規模低気圧の地上の中心がレーダー観測所近傍を次々と通過し, その際の水平風の変化は, 下層から圏界面ジェット高度にかけて高度とともに遅れて強まる傾向がみられた. 次に, 中間規模低気圧との相対的位置関係に基づいた数時間スケールの鉛直流と降水雲との対応を(i)低気圧を伴った梅雨前線の北側, (ii)地上の低気圧中心付近, (iii)低気圧からかなり離れた梅雨前線南側の3領域について調べた. (i,(ii)のケースでは, 上昇流領域は対流圏界面付近の層状性乱流下端高度(LSTT)と前線面高度に大きく依存し, その後者のケースの上昇流は温暖前線北側では発達した降水雲を伴い, 寒冷前線北側では中規模スケールの領域にわたって卓越しているが, 降雨を伴わないことが多かった. さらに, (iii)の期間ではいくつかの上昇流領域はLSTTを突き抜けていた. これらの中規模変動は, 積雲規模擾乱に対応する上昇流領域のピークを含んでおり, またそれらのいくつかは地上降雨と一致していた. 以上の観測事実に基づき, 梅雨前線近傍の鉛直流変動の階層構造の概念図を作成した. この特徴は, よく知られている中間規模低気圧, 中規模クラウドクラスター, 積雲規模降水雲から成るマルチスケール構造と部分的には一致しているが, 本観測で得られた結果は過去の研究で主に用いられている気象レーダー・気象衛星では観測できない晴天領域についてもカバーしている.
著者
上田 博人
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

今回の研究の目的は,現代スペインの演劇作品の語彙総合コンコーダンスを完成させることにある.これは全部で12の冊子(1冊600頁)からなる大部のものであるが,すでに3冊は刊行されているので,残りの9冊を1年につき3冊ずつ刊行することとなった.平成6年度.スペイン現代演劇の30作品の総合コンコーダンスの第4分冊(E),第5分冊(F〜K),第6分冊(L〜M)を完成した.現在,他のコーパスによる分析資料との比較検討を行った.平成7年度.総合コンコーダンスの第7分冊(N〜O),第8分冊(P),第9分冊(Q〜R)を完成した.動詞活用形認識プログラムの開発に着手した.平成8年度.総合コンコーダンスの第10分冊(S),第11分冊(T〜U),第12分冊(V〜Z)を完成した.動詞活用形認識プログラムのバ-ジョン1を完成した.これまでのスペイン語研究の資料は,母国語話者の直感や面接方式のチェック,文学作品などの用例採集,そして一部の研究者によるフィールドワークに基づくものであった.近年コンピューターが言語研究に使用されるようになって,コーパス言語学という新しい方法が注目されるようになったが,コーパスそのものは個人の研究の範囲内に留まり,あまり公開されてこなかった.また,その規模も小さかったことも問題点として挙げられるだろう.この研究は現代スペインの30の演劇作品全体を扱い,50万語の言語コーパスと総合コンコーダンスを完成させるという規模の大きなものである.今回,科学研究費の助成によって完成したスペイン語言語資料な内外の研究者に供されて,今後のスペイン語の言語研究や辞書学の発展に寄与できるものと信じている.
著者
上田 博史 橘 哲也
出版者
愛媛大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

二者択一の選択試験は,飼料原料の嗜好性や動物の栄養素摂取調節能力を調べるために有効な方法である.しかし,単飼したヒナに同じ飼料を2つの給餌器から与えると,試験開始直後,半数のヒナは右側の給餌器から(右利き),残りの半数は左側の給餌器から飼料を摂取する(左利き).右利きと左利き,あるいは同じ利き腕をもつヒナを2〜4羽群飼して改めて選択試験を行うと,単飼のとき右利きだったものが右側から,左利きが左側から食べるということはなく,常に連れ添って食べる.好みの給餌器の位置が群飼するとリセットされるということは,右利き・左利きが先天的な行動というよりは他の因子によって引き起こされている可能性を示唆する.特定の給餌器に対する固執は時間の経過に伴い消失するが,例外も存在する.単飼ケージは10〜12個が一つの棚に配置されているが,両端にあるケージで飼育されたヒナでは固執の解消が見られないことがある.両端に置かれたヒナの左右の一方にはケージが置かれていない.一般に,体重の等しいヒナを並べて選択試験を行うと,両端のヒナは隣人のいる内側の給餌器から摂食する.しかし,体重の大きなヒナを内側のケージに入れると,内側の給餌器からの摂取量は減少する.したがって,隣人との社会的な関係によって,好みの給餌器は変わるものと考えられる.このような行動は,塩酸キニーネを添加した嗜好性の低い飼料を選択させたときにも見られ,選択試験の精度を低下させることも明らかになった.本研究課題では,脳質内投与法を用いたヒナの摂食調節物質の検索も同時並行して行ってきたが,脳内のガラニンやノルアドレナリンが摂食促進作用をもつこと,また一酸化窒素の食欲促進作用が副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンと関連していることも明らかにした.
著者
長屋 茂喜 宮武 孝文 藤田 武洋 伊藤 渡 上田 博唯
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.568-576, 1996-04-25
被引用文献数
51

本論文では, シーンの構造や照明条件が大きく変化する環境下で, 映像中から移動物体を検出する新しい方式を提案する. 本方式の特長は, 各フレーム画像の移動物体領域を探索する代わりに, 時間相関の変化パターンを用いて映像中での移動物体が存在する時間区間を判定する点にある. 本方式はリアルタイムで移動物体を検出でき, 天候 (雨・雪など) や照明条件等の環境の変化に対してロバストである. また, カメラ位置や移動物体の進行方向等の制約がほとんどない. 屋外全天候・昼夜間を含む踏切映像 (撮影期間1年) から選択した代表的な六つのシーン (各10分合計60分) に対して評価実験を行い, 1組の固定したしきい値だけで, 大幅な環境変動が生じる映像に対して, 95%の正検出率を得た.
著者
菊地 勝弘 太田 昌秀 遠藤 辰雄 上田 博 谷口 恭
出版者
北海道大学
雑誌
海外学術研究
巻号頁・発行日
1987

今日まで研究代表者によって報告された低温型雪結晶は, ー25℃以下の比較的低温下で成長し, その頻度は, 時には結晶数全体の10%を占めることが明らかにされたが, これらの結晶形は, 複雑多岐で, まだ, 十分分類もされておらず, 「御幣型」や「かもめ型」は便宜上名付けられたもので, 正式の名称はない.一方, 極域のエアロゾルはその季節変化, 化学成分に注意が払われてきてはいるが, 降水粒子の核としての性質, つまり低温型雪結晶の結晶形, 成長との関連については全く注目されていない. この研究では, 低温型雪結晶を極域エアロゾルの性質を加味して総合的に研究し, 低温型雪結晶の成長機構を行らかにしようとするものである.昭和62年12月17日成田を出発した一行は, オスロで機材の通関を行い, ノールウェイ極地研究所で研究計画の打合せを行った後, 12月22日アルタおよびカウトケイノの研究観測予定地に機材と同時に到着した. 両観測地点共, 翌12月23日より観測を開発した. 第1図に観測地の地図を示した.今冬のヨーロッパは, ノールウェイを含め暖冬で, 観測期間中気温がプラスになったり, みぞれが降ることもあり, 必ずしも低温型雪結晶の観測に恵まれた条件とは言えなかったが, 以下に示すような膨大な試料を得ることができ, 必ずしも低温型雪結晶の観測に恵まれた条件とは言えなかったが, 以下に示すような膨大な試料を得ることができ, 成功であった. 得られたデータは次のようなものである. 偏光顕微鏡写真35ミリカラーフィルム65本, 35ミリモノクロームフィルム:2本, レプリカスライドグラス:340枚, 電顕用レプリカフィルム:205枚, ミリポアフィルターによるエアロゾル捕集:110枚, テフロンフィルターによるエアロゾル捕集:40枚, 降雪試料瓶:60本.この内, 低温型雪結晶を110個観測することができた. 特に今回は, 低温型雪結晶の「御幣型」に特徴的な成長がみられた. 即ち, 結晶成長の初期の段階であると考えられている凍結雲粒が1対の双晶構造をもって凍結し, それから両側に御幣成長したと思われる結晶が数多く発見された. 第2図はアルタで, 第3図はカウトケイノで今回新らたに観測された御幣型の雪結晶である. 更に地上気温が高かったためであろうか, それぞれのスクロール(渦巻状)から板状成長しているものも認められた.極域エアロゾルに関するアルタの観測では, 南側の内陸からの風系で直径0.3μm以上の粒子濃度は10個/cm^3であったが, 強風の場合は1個/cm^3まで減少し, カナダ北極圏よりやや少な目であった(第4図). 一方, 北側の海からの風系では, 1μm以上の粒子が増加した. これらの風系に対するエアロゾルと低温型雪結晶の中心核との関係については, 昭和63年度の調査総括により解析され, 明らかにされるであろう.