著者
戸波 江二 薬師寺 公夫 北村 泰三 建石 真公子 江島 晶子 小畑 郁 鈴木 秀美
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

2年間の共同研究では、(1)ヨーロッパ人権裁判所の判例研究、(2)ヨーロッパ人権裁判所の組織、権限に関する研究、(3)ヨーロッパ人権条約締約国の側から見たヨーロッパ人権条約の実施、とくにヨーロッパ人権裁判所判決の執行の研究、のそれぞれについて研究分担者が分担して研究するとともに、(4)ヨーロッパ評議会の組織と活動、およびそれがヨーロッパにおける人権保障の進展において果たしてきた役割についての研究、(5)その他の国際的・地域的人権保障制度に関する研究についても分担して研究を進めた。具体的には、平成16年度より引き続き、各研究分担者が上記各分野について割り当てられた自己の研究テーマについて各自研究を深めるとともに、全体の研究会を開催し(7月30日、31日・明治大学、10月22日・明治大学、1月28日・法政大学)、各自の担当判例および研究テーマについて報告を行い、全員で検討を行った。これらの結果、人権の国際的・地域的保障のあり方、人権保障の国際水準を確保するための裁判所による審査の意義、国際人権裁判所の人権規定の解釈・適用の実際、国際的視点からの各国内での人権保障の実施の促進の方法など、人権の国際的・地域的保障の理論と実践について、より明確な問題意識を共同研究者間に形成することができた。同時に、ヨーロッパ人権裁判所判例集の編集を進めた。掲載判例・解説執筆者を確定するとともに、原稿依頼を行った昨年度に引き続き、今年度は、編集会議を適宜開催し、査読の態勢を整え、現在、提出された原稿の査読の段階に至っている。
著者
太田 至 内海 成治 佐藤 俊 北村 光二 作道 信介 河合 香吏 内海 成治 佐藤 俊 北村 光二 作道 信介 河合 香吏 曽我 亨 湖中 真哉 内藤 直樹 孫 暁剛 中村 香子 波佐間 逸博 佐川 徹 白石 壮一郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、第一に、アフリカの乾燥地域に分布する牧畜社会の人々が歴史的に培ってきた知識や技術、社会関係や文化など(「ローカル・プラクティス(LP)」)を再評価すること、第二には、この社会の開発=発展のためにLP を活用する道を探究することである。東アフリカの4カ国、12民族について現地調査を実施し、人々がLPに基づきながら激動する生態・社会環境に対処している様態を解明し、LPが開発=発展に対してもつ潜在力を総合的に再評価し、それを援用する道に関する考察を深めた。
著者
ウィワッタナカンタン ユパナ 浅子 和美 北村 行伸 小田切 宏之 岡室 博之 伊藤 秀史 福田 慎一 小幡 績 寺西 重郎 伊藤 秀史 福田 慎一 小幡 績 久保 克行
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究プロジェクトは、東アジアにおける企業の大株主のさまざまな役割について明らかにした。企業を支配している大株主は、ファミリー、銀行、政府であり、モニタリング、企業・グループの組織構造、所有・経営権の構造、政界進出等の大株主の行動が、企業パフォーマンスに与える影響を動学的に分析した。これらの企業レベルの行動は、経済政策、経済危機といったマクロ経済レベルにまで影響を与えていることがわかった。
著者
吉野 博子 北村 英子 星野 守利 小松崎 聡 竹内 憲 太田 宏平 大澤 美貴雄 相川 隆司 村上 博彦 山根 清美 岡山 健次 小林 逸郎 武宮 敏子 丸山 勝一
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.1022-1022, 1983-09-25

東京女子医科大学学会第253回例会 昭和58年5月19日 東京女子医科大学本部講堂
著者
澁谷 博孝 北村 千浪 大橋 一慶 石津 隆 スダルソノ リスワン パルトムアン シマンジュンタク
出版者
福山大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

本学術調査は、インドネシアのバリ島及びロンボク島に生活するヒンズー教徒が伝承する、薬物治療に関する古文書「ウサダ・ロンタール」の実態調査を行い新しい天然薬物の発掘を指向するとともに、日本・インドネシア両国間の共同研究による学術交流における発展に寄与することを目的としている。バリ島及びロンボク島各地に散在している「ウサダ・ロンタール」の実態状況の把握のため、ヒンズー教徒の集落を訪ねるとともに、バリ島の北部のシンガラジャ市にある「ロンタール博物館」、及びロンボク島のマタラム市にある「西ヌサ・テンガラ州立博物館」のそれぞれの学芸員に協力を依頼し、「ウサダ・ロンタール」の保存状況を含めた実態を詳細に調査した。その結果、各地で重複する「ウサダ・ロンタール」の存在が明らかになるものの、これまで各研究機関が別個に情報収集を行ってきたために判らなかった「ウサダ・ロンタール」の全体像が明らかになり、所在を記した一覧表の作成を行うとともに、数種の復刻判を入手した。また、古代バリ語からインドネシア語への翻訳及び、インドネシア語から英語への翻訳を行い、数種のウサダ・ロンタールに関する翻訳資料を作成した。さらに、翻訳したウサダ・ロンタールに記述された薬用植物名と、現在バリ島に自生する植物との比較を、植物学及び民族学的な見地から同定するとともに、それらの用法について検討を行い、種々の知見を得た。
著者
畑 雅恭 井手口 哲夫 安川 博 内匠 逸 奥田 隆史 北村 正 足立 整治 山口 栄作 田 学軍
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

1.大気環境で計測される放射電磁波の一部は、地殻からの放射である事が観測と研究を通じて明らかになった。高感度な観測機器システムを開発し、北海道釧路から九州熊本まで中部日本を中心に約40個所の観測点を配置し、3軸磁界6秒毎の観測を24時間体制で実施し、地震・火山噴火活動に対応した電磁波前兆を検出し、事象との対応の調査と取得データの解析を行った。2.2000年夏の三宅島火山噴火活動、2001年春の静岡県中部地震活動、秋から暮れにかけて富士山低周波地震活動、2002年春より伊勢湾周辺の潜り込むフィリピン海プレート境界での地震の多発、2002年2月中旬より宮城県北部や県沖での地震活動、2003年初めより東海道沖地震活動など多くの地殻活動イベントが発生したが、それらに対応した特異な電磁放射を観測でき、多くのデータを収集した。大規模な平成15年5月の三陸南地震M7.0では、宮城県北部で約1年3ヶ月の長期の電磁波前兆が観測され、事態の推移をフォローした。観測点周辺の地殻異常の判断が正しかったことと、1年程度の事前放射異常の存在が確認された。観測事象のネットワーク公開も平成13年秋より実施し多数の閲覧を得ている。3.電磁波の放射状態から地殻歪の集積状態やその移動・推移状態が推定できれば、事態を予測する上で意義が高い。音響学的解析により、放射特徴量の抽出とパターン化、およびそのデータベース化を行った。地震の前に標準パターンからの偏移異常が発生したことを確認した。また、デジタル信号処理による独立成分解析によって熱帯雷放射雑音の分離除去が可能となった。また主成分解析によって前兆放射の特徴抽出、電磁放射領域の特定について評価し成果を得ることができた。4.活動の予測される地域を垂直電磁放射波の検出範囲である約20kmメッシュ毎に詳細観測すれば、地震・火山噴火の規模と活動域のほか事態の推移について多くの情報が得られることがわかった。今後、関東南部、東南海等の活動の予測される地域において、電磁波前兆観測の性能と限界を評価する必要がある。
著者
北村 有紀子
出版者
拓殖大学
雑誌
拓殖大学論集. 人文・自然・人間科学研究 (ISSN:13446622)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.45-57, 2005-03-20

This study aims to investigate how the Jewishness is portrayed in Anita Brookner's seventeenth novel, Visitors. The protagonist, Dorothea May, is "English," and her late husband, Henry, and his relatives are "Jewish." However, it is Dorothea who is mentally the outsider. Moreover, after a dream about a sunless vision of Heaven, which is reminiscent of a painting by L.S. Lowry, Dorothea starts to seek for another Heaven in the sun, i.e., the Israelite vision of the Old Testament. It is clear that Dorothea possesses both "Englishness" and "Jewishness." This contradictory situation of Dorothea's identity could be explained as characteristic of Brookner's diasporic British-Jewish writing.
著者
落合 謙太郎 近藤 恵太郎 北村 晃
出版者
独立行政法人日本原子力研究開発機構
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

核融合炉のプラズマ対向壁内のトリチウムは、その多くが表面付近に存在する。この様な表面のトリチウム密度分布を知ることは核融合トリチウムの安全評価の観点から重要である。それゆえ、固体表面のトリチウム保持量の絶対測定法が必要である。核融合炉のプラズマ対向壁表面のトリチウム保持密度深さ分布の高精度な測定法の開発として、DT核反応を利用した核反応分析法(DT-NRA)高精度化を実施した。昨年度課題であった実験室壁等から発生する散乱中性子成分の測定除去としてベリリウム体系による散乱中性子抑制法を検討し、抑制効果の検証実験を原子力機構核融合中性子源施設FNSで実施した。その結果、上記ベリリウム体系を用いることで、核反応分析法をDT核反応の放出粒子である3.5MeVアルファ粒子と14MeV中性子のコインシデンス測定に高精度に行うことが可能となり、NRAの中性子散乱抑制法としてベリリウム等の減速材抑制体系が必要であることが分かった。
著者
澤村 明 寺尾 仁 寺尾 仁 杉原 名穂子 鷲見 英司 松井 克浩 渡邉 登 伊藤 亮司 岩佐 明彦 福留 邦洋 中東 雅樹 西出 優子 北村 順生 澤村 明
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

新潟県の北部に位置する高根集落(村上市、2008年の合併までは朝日村)と、逆に西部に位置する桑取川流域(上越市)である。具体的な集落の分析を通じて、結束型、橋渡し型、連結型というソーシャル・キャピタルの基本概念や、コミュニティとアソシエーションという組織のありかたの基本概念を深化させる手がかりを提供した。
著者
林 幹治 坂 翁介 北村 泰一 湯元 清文 田中 義人 國分 征 山本 達人
出版者
東京大学
雑誌
試験研究(A)
巻号頁・発行日
1990

グローバル地球変動磁場観測システムの開発を行なった。リングコアーによるフラックスゲート磁力計に組み合せるディジタルデータロガーのタイプ、設置地域の違いによる次の3タイプがある;モデルA(オーロラ帯など高緯度用、委託観測による1カ月週間毎のテープ交換)、モデルC(中緯度を中心とした日本周辺用、委託観測による3週間毎のテープ交換)、モデルE(赤道地域でのデータ取得のために半無人記録装置、一部フラッシュメモリーカードの導入)。記録感度とサンプリングレイトはA、C、Eモデル各々について、125pT-1Hz,50pT-1Hz,7.5pT-3秒とした。開発の仕上げとして、各地でのフィールド観測を実施した。想定した問題が実地観測では予想以上の複雑さで現れた。電源関係(停電対策,蓄電池充電,データ取得の停止と再開),機器温度環境(過剰対応),機器の操作ミス(合理的な操作性)など,各モデルとも,半年以上の期間に渡り,問題への対応を現地との連携で(主にプログラムROMの改良交換)進めた結果,不可抗力と思われる(落電,盗難,重機器による地下埋設部の破損)を除けば,安定にデータが取得することのできる水準に達した。遠隔地データ取得の将来を目指した実験として,静止衛星(ひまわり)を利用して北海道(女満別)よりの磁場データの取得実験を開始した(郵政省通信総合研究所,運輸省気象庁地磁気観測所の関係者の協力を得る)。観測データは,貴重な高時間分解能データとして超高層物理研究に各分担者が利用するとともに一部は学術情報ネットワーク上に公開され,国内外の研究者の利用に供されている。
著者
北村 嘉章
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

スギ花粉症患者において、ヒスタミンH_1受容体拮抗薬による初期療法群は無治療群と比べ、くしゃみ、水様性鼻汁などのアレルギー性鼻炎症状が抑制され、同時にその鼻粘膜のヒスタミンH1受容体遺伝子発現が抑制された。花粉症に対するヒスタミンH_1受容体拮抗薬による初期療法の分子メカニズムとして、鼻粘膜におけるヒスタミンH_1受容体遺伝子発現の亢進を抑制し、効果を発現することが示唆された。
著者
生田 久美子 北村 勝朗 前川 幸子 原田 千鶴 齊藤 茂
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は,スポーツ・看護・芸能領域の伝承場面における修辞的な言語(わざ言語)の分析を通して,「わざ」の伝承における「わざ言語」の意義を問い直し,学びの可能性を考究することにある。実際に卓越的技能の指導現場に触れている「わざ言語」実践者を対象とし,「わざ言語」が生起する文脈や役割の分析が行われた。本研究の成果として,行為の発現を促す役割,身体感覚の共有の役割,及び到達した状態の感覚へといざなう役割,を確認した点があげられる。
著者
佐藤 和秀 孔 幼眉 王 喜栄 ぱん 国良 趙 玉友 李 山 荒木 信夫 佐藤 國雄 山口 肇 KONG Youmei WANG Xirong PANG Guoliang ZHAO Yuyou JI Shan 季 山 〓 国良 北村 直樹
出版者
長岡工業高等専門学校
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

中国大陸東北部は水循環、大気循環の立場からも日本への大きな影響を有している。中国内においては経済発展に伴う種々の雪氷災害が問題となっている。このような状況の下に日本と中国の共同研究を企画し、中国東北部の雪氷災害に関しての本研究を実施した。本研究による成果の概要は以下の通りである。1.黒龍江省の地勢と気候特性黒龍江省の西北部と北部および東南部に山地があり、広大な松嫩平原と三江平原を有している。黒龍江省は季節凍土と多年凍土が存在し、冬は長くて寒く夏は短い。1月の平均気温は省内の北西から南東にかけて-30℃から-18℃で、7月の平均気温は+18℃から+22℃である。降水時期は夏期に集中し、冬期の降水量は少ない。三江平原北西部の宝泉嶺国営農場に無人気象観測装置を設置し、気温、地温、日射量、風向、風速等の測定を行った。1992年冬期の気温はかなり規則正しい日変化を示し、最低気温-36℃を記録した。そのスペクトル解析は1日と1〜2週間の卓越周期を示した。1〜2週間の卓越周期は日本でもみられた、シベリア高気圧の勢力に影響した季節風の変動に対応するものと考えられる。総距離2000km以上のルートで測定した積雪深分布の単純平均値は約17cmであった(1994年2月の例)。雪質は新雪、クラストで汚れた堅いしもざらめ層、発達した骸晶上のしもざらめ層に区分できた。調査ルート上の積雪は概ね似た構造であったことから黒龍江省の降雪時期と冬期の気象-積雪環境を推定できた。日本と比べ、著しい寡雪で寒冷気候が特徴である。2.雪氷、低温災害特性(1)涎流氷:山地部で湧水が冬期の寒期によって凍結し、氷丘となって発達する。この現象を中国では涎流氷と呼んでいる。これが道路上まで発達して各地で交通障害をもたらしている。本研究でも黒龍江に近い山地部に観測され、幾つかの涎流氷について調査を行った。崖際に発達するもの、平坦地であるが泉や河川などに関連して発達するものなど、場所と発達条件によって幾つかの種類に分類できた。防止対策については、大がかりな対策工法でほとんど解決できると思われるが、中国における雇用等の問題を考えると同時に安価な対策方法をとる必要性を提案した。また防壁などの素材として日本のトンネルなどに使用されている新素材の利用も提案した。(2)地ふぶきと吹きだまり:日本に比べ積雪量は非常に少なく、地ふぶきによる吹きだまりから生じる道路交通障害、及び吹きだまりによる春の畑の耕作の遅れなどが問題となっている。道路地形や並木と吹きだまりの形態の関係を調査した。並木と道路間の距離、道路の高さ、風向を考えた並木の位置などを考慮すれば、かなりの対策となる。また農場地における防風林と風速分布および吹きだまりの関係を測定調査した。本研究の期間では短かすぎ、防風林の構造と適正配置の結論を出せなかった。今後、観測例をふやし継続する必要がある。(3)道路および構造物の凍結特性:哈尓濱から中国国境に至る数カ所で道路および構造物の凍結調査を実施し、橋脚の凍上や建築物のクラック、ダム取水塔コンクリートの劣化が観測された。しかし寒冷地における凍害対策はかなり進んでおり、財政的問題を除けば、基礎の設計や地盤改良技術、コンクリートの配合設計などの技術的問題はかなりクリアされている。(4)酸性雪(雨):黒龍江省の各地で採取した降積雪の化学分析を行った。1994年の例では総サンプル数44のpH単純平均値は61、同時期の長岡のそれは4.7であった。またCa^<2+>とMg^<2+>の含有率が非常に高かった。この地域のアルカリ性の土壌が強風で舞い上がり降積雪中に取り込まれたこと、冬期暖房の主役の石炭の燃焼による灰などの比重の重い煤煙が発生源近くに落下し、アルカリ性を強めたことが推定された。同時に石炭の燃焼によって発生する揮発性の硫黄酸化物などの微粒子は大気中に拡散し長距離輸送され日本にも飛来するものと推定される。今後も国境を越えた共同研究が必要である。その他、凍土地帯のメタン濃度、融雪水の地中浸透と水質変動などに関して多くの知見が得られた。3年間の最後の年である本年度は、共同観測研究結果について日本でシンポジウムを開催し、成果報告書を刊行した。
著者
平井 英二 山口 幸祐 北村 守次 丁子 哲治 村本 健一郎 上木 勝司 全 浩 李 敏熙 宮崎 元一 QUAN Hao LEE Min-Hee 庄田 丈夫 李 敏煕 小村 純子 山口 幸裕 鍛治 利幸
出版者
北陸大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

1.吉林省環境保護局吉林省の劉 淑塋副省長,吉林大学環境科学系の杜 尭国教授らによれば,同省は人口約2,500万人,面積約19万km^2であり,両者とも中国の約2%である。東部は長白山を望み,櫟などの木材資源が豊富であり,中部は松遼平原が広がり,農業が発達している。西部は大草原であり,羊・馬の放牧地である。基幹産業は長春市の自動車,吉林市の化学工業である。大気汚染は,従来から低硫黄(0.4%以下)の石炭を使用せていたが,工業の発展にともない省外の石炭を輸入のため,低硫黄の石炭の確保が困難となり,大気汚染が進行中である。水質汚濁として,地表水のCODは8ppm程度であり,有機物による汚染が進んでいる。さらに,同省の図們江開発にも言及した。また。吉林大学の環境関係の研究は太陽光,粉塵,微生物等の自然界由来の物質を有効利用して汚染物質を低減する研究が集中的に行なわれている。図們江開発にも関係するので,吉林省からの帰路を利用して,大連経済技術開発区を見学と調査を実施した。2.研究成果森林衰退の原因は多くの研究者が様々な地域で研究している。観測,測定が行なわれた地域によって,気象,土壌,樹種,大気中の汚染物質濃度などが異なるため,重要な因子が異なってくる。即ち,土壌酸性化/アルミニウム毒作用説,オゾン説,マグネシウム欠乏説,ストレス説,窒素栄養過剰説があるが,関与している因子が多いことが,この問題を難しいものとしいる。酸性降水は土壌と接触することによって速やかに中和される。この中和反応は多岐であり,炭酸塩の溶解反応,陽及び陰イオンの交換反応,アルミニウムの溶出反応,二酸化炭素の溶解反応がある。これらの反応を総合的にを数式化し,実験と比較し,酸性降水による河川水質のメカニズムを正確に解明できた。β線吸収法による浮遊粒子の解析から黄砂現象の評価するに,黄砂の彼来により酸性雨の成分であるSO_4^<2->とNO_3^-に影響を及ぼし,日本海側における冬期のSO_4^<2->濃度が異常に高い原因の一つに黄砂が関与している可能性が高いことが明らかになった。酸性雨・雪の現象をレーダによって定量的に観測するため,一般的に地上観測データとの重畳によって行なう.そして両者の観測から,レーダ観測で得られるレーダ反射因子(Z)と地上観測で得た降雨や降雪強度(R)の関係を求める。このZ-R関係が求まればレーダ反射因子(Z)から降雨や降雪強度を推定できる。研究ではXバンドレーダを使用し,降雪についてZ-R関係を求めた。短い期間に分割すると良い相関がえられた。3.STRATEGY FOR AIR POLLUTION CONTROL IN EAST ASIAの刊行特に中国は硫黄酸化物が主成分である大気汚染物質の影響が深刻である。よって大都市である重慶市での研究・調査を1991年度から実施すると同時に,大気汚染とその対策のついてのシンポジウムを,重慶市環境保護局と平井班が主催し,1992年10月に同市で「中日大気汚染防止対策シンポジウム-重慶‘92」を開催した。本研究班の全員と四川省,重慶市の研究者や行政担当者が多数参加し,重慶市のマスコミにも大きな関心をあたえた。これらの発表は大気汚染のデータも含むが,大気汚染についての基礎的な事項や環日本海各国の酸性雨の現状,酸性雨の分析,土壌の中和反応機構,湖沼・森林への影響,環境行政,火力発電所の排ガスや環境保全などの多方面にわたっている。これらの発表論文に最近の研究成果を追加して翻訳し,1冊の書に纏めて刊行し,今後に工業化される東アジアの諸国の大気汚染対策に役たてれば,かけがえのない地球のボ-ダレスな環境の解決の一つとなると考えた。これが1994年度の科学研究補助金研究成果公開促進費に採択され,今春に刊行する。東アジア諸国に配布するが,平成8年度の国際学術研究にも活用する予定である。
著者
中井 裕一郎 坂本 知己 寺嶋 智巳 北村 兼三
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.581-588, 1995-11-01
被引用文献数
2

常緑針葉樹林では森林樹冠層の冠雪量が多いことから,降雪期における遮断蒸発量が大きくなる可能性がある。これは水資源としての積雪水量の損失であり,このような降雪の遮断蒸発量を気候条件や森林状態によって評価することが森林管理上重要である。このため,降雪の遮断蒸発量を調べることを目的として,札幌市の密な21年生トドマツ林において冠雪量の収支に関する観測を行った。まず,冠雪重量の連続測定の結果,冠雪量の時間変化から蒸発量の日変化および冠雪量の冬期間を通じた変動特性が得られた。冠雪としての保水量は最大20mm以上になった。真冬日の連続する厳冬期は冠雪が長期間継続して維持されたが,より温暖な時期には降雪中と降雪直後をのぞいて冠雪の完全な消失がしばしばみられた。次に,森林内外の降水量の収支によって1〜2月の8〜14日間ごとの積算蒸発量を求めた結果,各期間の平均蒸発量は0.7〜2.3mm・d^<-1>の範囲にあった。
著者
北村 強 静野 隆之 岡部 稔哉 谷 英明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.524, pp.141-144, 2008-02-28

SIP (Session Initiation Protocol)は3GセルラやNGN (Next Generation Network)でも用いられるシグナリングプロトコルであり,アプリケーションレイヤにおける制御プロトコルとして様々な利点を有する.しかし,CPU処理負荷が高く多くの通信帯域を必要とするため,小型センサ端末といった低性能な端末への適用が困難である.これまで,パケットサイズを削減する様々なヘッダ圧縮アルゴリズムの研究が行われてきた.しかし,これらはパケットサイズを小さくし帯域使用量を削減する一方で,圧縮等に要するCPU処理負荷が増加してしまう問題がある.そこで本稿では,SIPとの親和性が高く,かつCPU処理負荷を増加させずに帯域使用量を削減する,SIPプロキシエージェントを用いた軽量シグナリングプロトコルを提案する.評価の結果,提案プロトコルの適用により,端末のCPU処理負荷を増大させずに帯域使用量を削減できることを示す.
著者
小泉 智恵 菅原 ますみ 前川 暁子 北村 俊則
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.272-283, 2003-12-05
被引用文献数
4

働く母親における仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバーが母親自身の抑うつ傾向にどのような過程を経て影響を及ぼすのか,そのメカニズムを検討することを目的とした。仮説として仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバーの抑うつ傾向に対する直接的影響と,仕事ストレツサー,労働時間,子どもの教育・育児役割負担によって生起した仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバーが子育てストレス,夫婦関係を介して抑うつ傾向に及ぼすという間接的影響が提出された。方法は,小学校高学年の子どもをもつ有職の母親で配偶者のある者(246名)と同学年の子どもをもつ無職の母親で配偶者のある者(131名)を対象として質問紙調査をおこなった。有職母親群の分析結果で,分散分析により仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバーが多くなると抑うつ傾向が高くなるという直接的影響がみとめられた。パス解析により仕事ストレツサー,労働時間の増加によって生起した仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバーが多くなると,夫婦間の意見の一致を減少させ,子育てストレスを高めることを介して抑うつ傾向を上昇させるという間接的影響がみとめられた。考察では仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバーが抑うつ傾向に影響しないようにするには,夫婦関係と子育てに関して介入,支援をおこなうこと,仕事ストレツサーの低減と労働時間の短縮が有効である可能性が論じられた。