著者
石原 康成 水池 千尋 水島 健太郎 三宅 崇史 稲葉 将史 久須美 雄矢 堀江 翔太 立原 久義 橋本 恒 山本 昌樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1028, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】小・中学生の投球障害肩・肘症例の中には,棘下筋(以下,ISP)の筋力低下や筋萎縮が生じている例が存在する。これらISPの機能不全は肩甲上腕関節の不安定性に影響をもたらし,永続的な障害の一因となりうるため,早期発見の重要性が高い。しかし,投球障害肩・肘症例の中でもISPの筋力低下や筋萎縮を生じているものと,生じていないものが存在する。そこで今回,小・中学生の投球障害肩・肘症例におけるISPの状態を明らかにすることを目的として,小・中学生の野球選手を対象として調査を行った。併せて投手と投手以外のポジション(以下,野手)で比較し,ISPの状態の差が下肢タイトネスに由来している可能性を考え,これに関しても分析を行ったので,ここに報告する。【方法】対象は,少年野球団,シニアリトル,中学校野球部に所属している小・中学生の男子66名(平均年齢12.7±2.2歳)。肩もしくは肘に疼痛があり病院を受診した障害群は33名(以下S群,平均年齢12.9±2.3歳),で内訳は投手17名,捕手4名,外野手3名,内野手9名であった。投球障害のない対照群は33名(以下C群,平均年齢12.6±2.2歳)で,内訳は投手13名,捕手1名,外野手6名,内野手13名であった。方法は,対象者に対して,ISP筋萎縮の有無,下肢のタイトネスの指標として両側の下肢伸展挙上角度(以下,SLR),股関節内旋角度(以下,Hip IR)を測定した。SLR,Hip IRは投球側と非投球側に分けて検討を行った。ISP筋萎縮の有無の判定は,ISPの触診と視診により行い,投球側上肢と非投球側上肢で比較し判定を行った。統計解析には,ISP筋萎縮の有無についてはχ2検定,2群の測定値の比較には対応のないt検定を用いた。有意水準は5%未満とした。【結果】全体におけるISP筋萎縮は,S群では20名(60.6%),C群では9名(27.2%)であり,有意にS群での割合が高かった。投手におけるISP筋萎縮は,S群17名のうち11名(65%),C群13名のうち3名(23%)で,有意にS群での割合が高かった。野手におけるISP筋萎縮は,S群17名のうち6名(35%),C群13名のうち10名(77%)で,両群間に有意差は認められなかった。投手のSLRは,投球側のISP筋萎縮ありで69.3±9.2°,筋萎縮なしで72.8±8.4°,非投球側の筋萎縮ありで71.1±8.6°,筋萎縮なしで71.6±8.3°と,有意差を認めなかった。Hip IRは投球側の筋萎縮ありで17.9±11.6°,筋萎縮なしで26.3±9.8°,非投球側の筋萎縮ありで17.9±11.9°,筋萎縮なしで26.3±10.1°と,両側Hip IRともに筋萎縮あり群が有意に低値を示した。野手のSLRは,投球側の筋萎縮ありで65.7±11.2°,筋萎縮なしで63.6±11.8°,非投球側の筋萎縮ありで64.3±10.8°,筋萎縮なしで64.2±10.6°と,有意差を認めなかった。Hip IR(投球側)は筋萎縮ありで19.7±7.1°,筋萎縮なし20.1±8.7°,非投球側は筋萎縮ありで20.3±9.7,筋萎縮なしで21.9±9.6°と,有意差を認めなかった。【考察】本調査の結果,小・中学生の投球障害肩・肘症例において,ISP筋萎縮は投手に多いことが明らかとなった。次に,筋萎縮のある選手の下肢のタイトネスは,SLRにおいて投手と野手とで両群間に有意差を認めなかったが,Hip IRにおいて投手が有意に低値を示した。投球動作は全身の運動連鎖から成り立つため,上肢帯だけでなく下肢の柔軟性が必要とされる。投手は野手に比べて投球数が多い。ISPはフォロースルー時に加速された上肢の減速のために遠心性収縮を強いられることが要因として考えられた。ISPの負担を軽減するには,フォロースルー時の上肢の減速に非投球側のHip IRが関わる可能性が考えられる。したがって,股関節の内旋制限のある投手は,投球動作の中で生じるISPへの負担が大きい可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】小・中学生の野球選手に対して潜在的に投球障害肩・肘を評価する方法としてISPの筋萎縮の有無が有用である可能性がある。SLRとHip IRは投球障害の機能的検査法である原テストの検査項目でもある。本研究により小・中学生の投手における投球障害肩・肘症例に関してはSLRよりHip IRを優先的に改善する機能強化やアプローチが投球障害をより早期に改善させる一助になる可能性がある。
著者
山森 光陽 伊藤 崇 中本 敬子 萩原 康仁 徳岡 大 大内 善広
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.501-510, 2018-03-01 (Released:2018-03-16)
参考文献数
16

児童の授業参加や課題従事行動を,観察対象学級の児童全員について即時的・経時的に把握するために,身体の揺れ,すなわち身体が1秒間に繰り返し運動する回数(周波数)を指標とすることが有効と考えられる.本研究は,授業参加や課題従事行動を加速度計で計測された3軸加速度から求めた周波数で把握できるようにするために,授業中の児童の様々な行動と,それらの行動に伴う身体の揺れの周波数との対応を示すことを目的として実施された.小学校第3,5学年を対象に授業を模した活動を実施し,一般的な授業に近い形で様々な行動を起こさせ,各々の動きに伴う身体の揺れを加速度計で即時的・経時的に計測し,それらの周波数を求めた.行動の種別ごとに,各々の児童がとり得る周波数の最大値の範囲を一般化極値分布に当てはめて検討した結果,当該行動をとっているかを判断するための周波数の範囲が示された.さらに,課題従事とは見なせない児童の行動の周波数はほぼ0Hz であるか2.5Hz を上回るかのいずれかになることも示唆された.
著者
神原 康介 窪田 亜矢 黒瀬 武史 萩原 拓也 福士 薫 田中 暁子
出版者
Architectural Institute of Japan
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.79, no.701, pp.1593-1602, 2014
被引用文献数
4

Many elderly people were killed by Tsunami during Great East Japan Earthquake in Akahama, Otsuchi town, Iwate prefecture. The purpose of this paper is to describe the evacuation behaviors by interviews with residents in Akahama which is along the rias Coast and clarify how the built environment influence on the evacuation behaviors of the elderly. It is found that 1) geographical features such as nearness of a rising ground, sloping road to the sea and a narrow plain land are good for evacuation, 2) the towns background such as past tsunami, seawall construction and elementary school which has never been damaged in a few hundred years influence on evacuation behaviors and 3) family network and local community led to an influence on a turning point of an evacuation behavior, but there were younger people who tried to help the elderly and damaged or killed.
著者
青山 興司 中原 康雄 片山 修一 浅井 武 後藤 隆文
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.1018-1024, 2015-10-20 (Released:2015-10-20)
参考文献数
9

現在,日本の鎖肛の手術においては,Pena 術式が広く使用されている.この手術には視野の展開が容易であるという非常に優れた点もあるが,排便機能に最も重要な括約筋群を切開するという致命的な欠陥がある.これらを考慮し各症例においてPena 手術が適応かどうかを十分に考慮した上で使用すべき,との結論に達した.
著者
門脇 孝 齊藤 康 篠原 康雄 武田 健
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.36, no.9, pp.759-764, 2000-09-01

現在, 日本人の死亡原因のうち, 心臓病, 脳卒中など血管病といわれる病気の占める割合は極めて大きいものがある.肥満はこれらの血管病の他にも糖尿病など多くの生活習慣病のリスクファクターになっており, 肥満制御は21世紀の医療を考える上で必須の課題と思われる. 本日は3人の先生方に, 最近飛躍的に進んだといわれる肥満の分子機構に関する研究結果をもとに肥満と生活習慣病の関わり, 創薬への展望を語って戴いた.
著者
野原 康弘 Yasuhiro Nohara 桃山学院大学経営学部
出版者
桃山学院大学総合研究所
雑誌
英米評論 = ENGLISH REVIEW (ISSN:09170200)
巻号頁・発行日
no.17, pp.49-78, 2002-12-20

Traditionally people usually recognize adverbs by the commonest suffix -ly : absolutely, abruptly, absently, accurately, etc. There are many adverbs, however, which are not recognizable in this way : indeed, now, often, soon, etc. And there are also a lot of adjectives which have the same suffix -ly (which is called 'adjectival -ly'): brotherly, friendly, ugly, weekly, etc. And some adverbs have two forms, each of which has a different meaning : dear
著者
松原 康介
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 第38回学術研究論文発表会 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
pp.155, 2003 (Released:2003-12-11)

本稿では、モスクの建設と利用を通した、新市街の現代モロッコ都市への再編過程の一端を明らかにし、モスクを核とした複合文化空間の意義の検討を目的とする。新市街は西欧型生活様式に即した空間であったが、今日の課題は既存ストックとしての新市街の、現代モロッコ本来都市への再編である。宗教生活の根幹としてのモスクは、小モスクの胎動期を経て少数で大規模な近代建築として普及したが、その存続のためにハブース店舗を埋設した点で、計画された複合施設としての発展形態をとっている。空間的特質としては、ブロック上で中庭をもたないが、複数の入口を通して外部へと開放されている。また、ハブース店舗が周辺の一般商店街と連坦し、かつ道路が露店スークとして利用され、商業を通した広場・道路との連携が見られる。バロック型の既存ストックを積極的に活用して、フランス文化とモロッコ文化の複合文化都市を目指すことが考えられる。
著者
岡田 憲治 牧原 康隆 新保 明彦 永田 和彦 国次 雅司 斉藤 清
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.349-356, 2001-05-31
参考文献数
16
被引用文献数
17
著者
伊藤 詩乃 田中 佑岳 狩野 芳伸 榊原 康文
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.F-AI30Ge_1-10, 2017-03-01 (Released:2017-03-01)
参考文献数
22

31 巻6 号AI30-G(2016 年)の論文において、本文引用箇所がすべて[?]として公開されているため、正しい情報を次ページより掲載します.
著者
藤原 康宏 大西 仁 永岡 慶三
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.29, no.Suppl, pp.109-112, 2006-03-20 (Released:2016-08-02)
参考文献数
7
被引用文献数
4

情報処理入門科目において,オンライン個別学習システムを利用した授業実践を行った.今回開発したシステムは,個々の学習者にあった教材の提示及び練習問題と,教師に学習者の理解状況を提供することができる.システムを使って個別に学習し,必要に応じて教員が個別に説明することで,能力のばらつきが大きい集団に対して,学習効果が確認された.しかし,下位の学習者に対しては,学習に必要とされる時間が多くなるため,より効率よく学習できるアルゴリズムが必要であると考えられる.
著者
安藤 満代 椎原 康史 伊藤 佐陽子
出版者
聖マリア学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

がん患者へのマインドフルネスは、患者の抑うつ感と不安感を低減させ、さらにマインドフルネスを体験した後は肯定的な心理変化がみられた。また、マインドフルネスプログラムは、気分のなかの緊張を低減し、活力を維持することに効果があること、さらに精神的健康度が低い人に対してより効果があることが明らかになった。
著者
篠原 康男 前田 正登
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
pp.13007, (Released:2013-10-11)
参考文献数
35
被引用文献数
3

The forces applied to the starting blocks are an important aspect of a sprint start. For achieving the most effective start, however, the relationship between these forces and block clearance has not been clarified. In this study, an experiment was conducted with collegiate sprinters in order to elucidate this relationship. The 19 male participants performed a start dash from the blocks as in a typical sprint race, and the forces applied to the front and rear starting blocks, as well as to the ground during the first step, were measured with force plates. The following results were obtained. Based on the impulses applied to the starting blocks, the horizontal impulse component had a greater effect than the vertical impulse component at block clearance. Furthermore, at block clearance, the horizontal component of the impulse applied to the front block accounted for a large proportion of the total horizontal impulse applied to the starting blocks. However, there was a significant correlation between the horizontal component of the impulse applied to the rear block and the total horizontal impulse applied to the starting blocks. The horizontal component of the impulse was affected by the duration of force application to the blocks. Moreover, the horizontal component of the impulse applied to the starting blocks was unrelated to block placement. This indicates that the component was affected by the position of the sprinter relative to the front and rear blocks. Lastly, the horizontal impulse component at block clearance affected the sprint start until grounding of the first step, after which this relationship differed according to the starting strategy and grounding skill of individual participants.
著者
松原 康介
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.213-218, 2013

2011年3月に勃発したシリア内戦は今日まで終わりの気配がみられない。これまでの都市計画分野における協力の実績を考えると、内戦終了の折には戦災復興都市計画において日本が協力していくことが考えられる。この観点から、本稿はベイルートの都市計画通史の分析を行う。オスマン帝国時代の計画、フランス委任統治領時代の計画、あるいはエコシャールや番匠谷といった都市計画家の存在など、シリア主要都市との共通項が多いためである。エコシャールによる1943年の計画は、今日に至るまで後継計画に影響を与えており、ガルゴールとサイフィ二地区の再開発は、ハリーリー及びその後継者達による強いリーダーシップの下で現在進行中である。
著者
水池 千尋 石原 康成 堀江 翔太 大谷 豊 水島 健太郎 久須美 雄矢 立原 久義
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0271, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】可動域制限を伴う肩関節疾患では,結帯動作が障害され,日常生活動作に支障をきたすことがあるが,その改善に難渋することが多い。肩関節の可動域制限に対するアプローチは徒手療法,物理療法などがあり,近年では機器を用いた運動もセルフエクササイズとして行われている。これまで我々は,機器を用いたディップ運動が肩関節可動域に及ぼす影響について調査し,肩甲上腕関節(glenohumeral joint:以下,GHj)よりも肩甲胸郭関節(scapulothoracic joint:以下,STj)の可動域が拡大すると報告してきた。しかしながら,男女では筋骨格系に違いがあるため,同様の運動を行っても効果に差が生じる可能性が考えられる。そこで,本研究の目的は,機器を用いたディップ運動による肩関節可動域の変化とその性差について検証することとした。【方法】対象は,肩に整形外科的疾患を有さない健常成人20名40肩[男性:11名,女性:9名,平均年齢:33(21-50)歳]とした。運動に使用した機器は,Hogrelディッピングミニ(是吉興業株式会社製)である。運動は,機器のシートに着座した状態で肩のディップ運動を実施した。速さは対象者自身のタイミングとし,回数は40回,負荷は約50N,時間は3分程度であった。運動前後に,肩関節自動挙上角度(以下,挙上角度),第7頸椎棘突起から母指先端までの距離(以下,指椎間距離)を測定した。指椎間距離は結帯動作の指標として用いた。また,上肢下垂位と挙上時における肩甲棘と上腕骨長軸のなす角度(spino-humeral angle:以下,SHA)を測定し,上肢下垂位と挙上時の値の差によって,GHjの可動範囲を評価した。挙上角度とSHAの測定はゴニオメーターを用い,指椎間距離の測定にはメジャーを用いた。統計学的処理は,運動前後の比較には対応のあるt検定,男女間の比較には対応のないt検定を用いた。なお,有意水準は危険率5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,ヘルシンキ宣言に基づき,対象者には事前に研究の目的や手順を十分に説明し,口頭にて同意を得た。また,本研究は所属する職場の倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】男女の比較では,運動前のSHAは男性:103.9±12.7°,女性:106.8±12.9°であり,女性が大きかった(p<0.05)。その他の値に差はなかった。すなわち,女性ではGHjの可動範囲が大きかった。運動前後の比較では,挙上角度は男性:運動前158.2±8.5°,後162.3±7.4°,女性:運動前157.5±8.3°,後160.3±7.8°であり,男性は運動後に拡大した(p<0.05)が,女性は差が無かった。すなわち,男性で挙上角度が拡大していた。指椎間距離は男性:運動前150.9.±57.9mm,後137.5±52.7mm,女性:運動前120.8±37.7mm,後111.1±38.0mmであり,男女ともに短縮した(p<0.05)。すなわち,性別によらず結帯動作は改善していた。SHAは男女とも運動前後で差はなかった。すなわち,性別によらずGHjの可動範囲は変わらなかった。【考察】本研究の結果,男女の比較では運動前の挙上角度は差が無く,SHAは女性が大きかった。すなわち,女性の方がGHjの動きが大きく,STjの動きが小さいことが示された。三次元CTを用いた解析から,上肢挙上時に女性では肩甲骨の上方回旋角度が小さいため代償的に肩甲上腕運動での動きが大きくなることが報告されており,本研究もこれを支持する結果となった。次に,運動後に男女とも指椎間距離は短縮し,挙上角度は男性のみ改善がみられた。ディップ運動では僧帽筋上部線維,菱形筋,前鋸筋,上腕三頭筋に強い筋活動がみられたという報告があり,これらの筋の反復収縮と相反神経抑制によって肩甲骨周囲筋の柔軟性の向上が引き起こされたと考えられる。女性の挙上角度は変化が無かったが,120°以上の挙上では肩甲骨の動きに加え,胸椎伸展運動の連動が必要とされる。元々胸郭と肩甲骨の可動性が低く,筋力が小さい女性にとって,本研究の負荷設定では,肩甲骨と胸椎周辺の可動性の改善度が少なかったと推察された。以上から,ディップ運動を実施する際は,男女の特性に適した負荷設定と効果判定を行うことで,より効果的な介入ができる可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】男女の筋骨格系の違いによってディップ運動の効果に差が生じることが示唆された。このことから,男女の特性に適した負荷設定を行うことが効果的な介入方法に繋がる可能性を見出したことに意義があると考えられる。